説明

半導体集積回路用トレー

【課題】
自動機によってトレーの収納用ポケットに収納しようとするボールグリッドアレイ型の半導体集積回路のコーナ部分が収納用ポケット内底面における凹部内のコーナ部分に落ち込んだ場合でも、同半導体集積回路をポケット内の適正な収納位置に補正できる半導体集積回路用トレーを提供できるようにする。
【解決手段】
半導体集積回路用収納トレー1の収納用ポケット2内に有する凹部5に、内方に向かって下傾するテーパ状の内側面9を形成し、かつ、各々隣接するテーパ状の内側面9のコーナを湾曲線で接続するテーパ状の湾曲面10を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体集積回路を収容するためのトレーに関し、より詳しくは、端子を底面に多数備えるボールグリッドアレイ型の半導体集積回路を収納するのに好適なトレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールグリッドアレイ型の半導体集積回路は、例えば、特許文献1に開示される構成のトレーに収納して、保管や運搬をしている。
【0003】
このトレーは、図11に示すように、トレー11上面の縦横方向に配設した仕切り枠12、13で矩形に区画してなる複数のポケット14に、各1個ずつ半導体集積回路を収納するようになっている。
【0004】
また、図12に示すように、ポケット14の内底面には、平面形状が半導体集積回路の底面よりも若干小なる略相似形にして同半導体集積回路の底面に配設される端子の高さよりも深さが大なる凹部15を形成している。
【0005】
したがって、ポケット14の上方より収納される半導体集積回路は、図13に示すように、ポケット14における凹部15内の空間に半導体集積回路16の底面に配される端子17が収納され、かつ、凹部15と前記仕切り枠12、13との間に有する段部18に半導体集積回路16の底面周縁部分が支持された状態で収納される。
【0006】
しかしながら、自動機によって半導体集積回路をトレーのポケット上方よりこのポケット内に収納する際、半導体集積回路に、同上下面に対して水平方向の回転ずれ等が生じている場合は、図14に示すように、半導体集積回路16のコーナ16a部分を同ポケット14の凹部15内におけるコーナ部分に落ち込ませてしまい、かつ、この状態が補正されないまま半導体集積回路16をポケット14に収納したトレー11が保管されてしまうことがあった。
【0007】
これにより、トレーを積み重ねた際に半導体集積回路を破損したり、あるいは自動機による実装工程において実装不良が生じる確率が大になる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−145315号公報(第1〜7頁、図1〜7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的とするところは、自動機によってトレーの収納用ポケットに収納しようとする半導体集積回路のコーナ部分が収納用ポケット内底面における凹部内のコーナ部分に落ち込んだ場合でも、半導体集積回路のコーナ部分を収納用ポケット内底面における凹部内のコーナ部分より脱出させることができ、また、半導体集積回路のコーナ部分を収納用ポケット内底面における凹部内のコーナ部分に落ち込ませた状態で同半導体集積回路が収納されている場合でも、トレーの搬送による振動によって、導体集積回路のコーナ部分を収納用ポケット内底面における凹部内のコーナ部分より脱出させることができて、半導体集積回路をポケット内の適正な収納位置に補正できる半導体集積回路用トレーを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る半導体集積回路用トレーは、少なくとも上面に、縦横の仕切り枠で矩形に区画した半導体集積回路の収納ポケットを多数備えており、同ポケットは、内底面に平面形状が半導体集積回路の底面よりも若干小なる略相似形にして同半導体集積回路の底面に配設された端子の高さよりも深さが大なる凹部を有するとともに、同凹部と前記仕切り枠の基部との間に前記半導体集積回路の底面周縁を支持する支持段部を有してなる半導体集積回路用収納トレーであって、前記凹部の内側面を内方に向かって下傾するテーパ状に形成し、かつ、各々隣接する内側面のコーナを湾曲線で接続したものとしてある。
【0011】
また、前記凹部の内方に向かって下傾する内側面のテーパ角度を、20度以上にして半導体集積回路をポケットに収納した際に同半導体集積回路の底面に配設された端子に接触しない角度の範囲内にしたものとしてある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る半導体集積回路用トレーによれば、トレーのポケット内底面における凹部の内側面を内方に向かって下傾するテーパ状にするとともに、同凹部内の各々隣接する内側面のコーナを湾曲線で接続しているので、半導体集積回路のコーナ部分がポケット内底面における凹部内のコーナ部分に落ち込んだ場合、同半導体集積回路のコーナ部分に続く辺部がポケット内底面における凹部の内側辺部に接触することなく半導体集積回路のコーナ部分が前記凹部の内側面における湾曲するコーナ面に1点で接触し、この接触状態は摺動抵抗が小なる点接触状態となり、例えば寸法が15×15mm以上の比較的大なる半導体集積回路のコーナ部分が前記凹部内のコーナ部分に落ち込んだ場合は、前記テーパ状の内側面における湾曲するコーナ面に1点接触する半導体集積回路のコーナ部分が、半導体集積回路が収納された時の振動や半導体集積回路の自重によって前記コーナ面のテーパ状斜面を滑り上がって凹部内より脱出し、同半導体集積回路の底面に配される端子がポケット内底面の凹部内に収容されるとともに、半導体集積回路の底面周縁部分が同凹部とポケット周囲の仕切り枠との間に有する段部上に置かれて、半導体集積回路を同ポケット内の適正な収納位置に補正することができる。
【0013】
また、例えば寸法が10×10mm以下の比較的小なる半導体集積回路のコーナ部分がポケット内底面における凹部内のコーナ部分に落ち込んだ場合は、前述するように、同凹部の内方に向かって下傾するテーパ状の内側面における湾曲するコーナ面に同半導体集積回路のコーナ部分が1点接触していても、半導体集積回路の自重が軽いので凹部内におけるコーナ面のテーパ状斜面を滑り上がって同凹部内より脱出できる確率は低下するが、トレーに半導体集積回路を収納する本収納工程から次の工程にトレーを搬送する際の振動によって、前記コーナ面に1点接触する半導体集積回路のコーナ部分が同コーナ面のテーパ状斜面を滑り上がって凹部内より脱出し、同半導体集積回路の底面に配される端子がポケット内底面の凹部内に収容されるとともに、半導体集積回路の底面周縁部分が同凹部とポケット周囲の仕切り枠との間に有する段部上に置かれて、半導体集積回路を同ポケット内の適正な収納位置に補正することができる。
【0014】
したがって、トレーを積み重ねた際に半導体集積回路を損傷したり、あるいは自動機による実装工程における実装不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る半導体集積回路用トレーの一例を示す平面図。
【図2】図1の半導体集積回路用トレーにおけるポケットの拡大平面図。
【図3】図2中に示したA−A部分の拡大断面図。
【図4】ポケットに収容した半導体集積回路の正常な収容状態を示す断面にしたポケットの側方より見る図。
【図5】ポケットに収容した半導体集積回路の正常な収容状態を示すポケットの上方より見る図。
【図6】ポケットに収容した半導体集積回路の異常な収容状態を示すポケットの上方より見る図。
【図7】図6のB−B線上におけるEで囲んだ部分を同B−B線で断面にしたポケットの側方より見る図。
【図8】図6のC−C線上におけるEで囲んだ部分の半導体集積回路とテーパ湾曲面との接触状態を示す断面図。
【図9】図6のD−D線上におけるEで囲んだ部分を同D−D線で断面にしたポケットの側方より見る図。
【図10】半導体集積回路用トレーにおける補正性能の比較試験結果。
【図11】従来の半導体集積回路用トレーにおける一例を示す平面図。
【図12】図10の半導体集積回路用トレーにおけるポケットの同図中に示したB−B部分の拡大断面図。
【図13】ポケットに収容した半導体集積回路の正常な収容状態を示す断面にしたポケットの側方より見る図。
【図14】ポケットに収容した半導体集積回路の異常な収容状態を示す断面にしたポケット側方より見る図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る半導体集積回路用トレーの実施例を、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
【0017】
本発明の半導体集積回路用トレーは、ボールグリッドアレイ型の半導体集積回路を収納し、複数のトレーを積み重ねて使用するものとしてあり、トレーの上面は半導体集積回路を収納する収納容器としての機能を有し、下面は収納容器の蓋としての機能を有する。
【0018】
図1に示すように、トレー1の上面には半導体集積回路を収納するためのポケット2を多数配設していて、このポケット2は、下方を広くした上向きの仕切り枠3、4によって収納する半導体集積回路の平面形状に合わせて区画している。
【0019】
またポケット2には、図2、3に示すように、内底面に凹部5を形成していて、この凹部5は、同平面形状が収納する半導体集積回路6(図4参照)の底面よりも若干小なる略相似形にして同半導体集積回路6(図4参照)の底面に配設された端子7(図4参照)の高さよりも深さが大なるものとしている。
【0020】
さらにポケット2内の凹部5と仕切り枠3、4の基部との間に、半導体集積回路6(図4参照)の底面周縁を支持するための段部8を設けている(図4参照)。
【0021】
そして、同図2、3に示すように、ポケット2内の凹部5における内側面を内方に向かって下傾するテーパ状の内側面9に形成しているとともに、各々隣接するテーパ状の内側面9のコーナを湾曲線で接続してテーパ状の湾曲面10にしている。
【0022】
以下、上述のように構成した本発明に係る半導体集積回路用トレー1の作用について説明する。
【0023】
通常、正常な状態で半導体集積回路用トレー1のポケット2に収納された半導体集積回路6の収納状態は、図4、5に示すように、半導体集積回路6の底面に配設している端子7がポケット2の凹部5内に収容されるとともに、底面の周縁部分が凹部5と仕切り枠3、4との間に有する段部8上に支持された状態になっている。
【0024】
上記正常な収納状態に対し、半導体集積回路6に同上下面に対し水平方向の回転ずれが生じたすなわち異常状態で半導体集積回路用トレー1のポケット2に収納された半導体集積回路6の収納状態は、図6に示すように、半導体集積回路6に有する4コーナのうちの1つのコーナ6aが、ポケット2内の凹部5内におけるコーナ部分たるテーパ状の湾曲面10に落ち込んだ状態になる。
【0025】
また、この異常状態で収納された半導体集積回路6のコーナ6aは、図7、8に示すように、ポケット2内の凹部5内におけるテーパ状の湾曲面10に1点で接触する。
【0026】
さらに、図9に示すように、図7、8の状態では湾曲面10に接触しているコーナ6aに続く2辺部(実施例は1辺部だけを図示)は、ポケット2内の凹部5内におけるテーパ状の内側面9に接触することがない。
【0027】
したがって、異常状態で収納された寸法が15×15mm以上の比較的大なる半導体集積回路の場合は、同半導体集積回路が収納された時の振動や半導体集積回路の自重によって、ポケット2内の凹部5内におけるテーパ状の湾曲面10に1点で接触する半導体集積回路6のコーナ6aが湾曲面10のテーパ状斜面を滑り上がって凹部5内より脱出する。
【0028】
また、異常状態で収納された寸法が10×10mm以下の比較的小なる半導体集積回路の場合は、同半導体集積回路をトレーに収納する本収納工程から次の工程にトレーを搬送する際の振動によって、ポケット2内の凹部5内におけるテーパ状の湾曲面10に1点で接触する半導体集積回路6のコーナ6aが湾曲面10のテーパ状斜面を滑り上がって凹部5内より脱出する。
【0029】
上述する半導体集積回路6のコーナ6aが脱出する際、導体集積回路6のコーナ6aに続く2辺部がポケット2内の凹部5内におけるテーパ状の内側面9に接触することがないので、脱出する際の摺動抵抗は、摺動抵抗が小なる点接触状態にある同コーナ6a部分だけなので、図10の半導体集積回路用トレーにおける補正性能の比較試験結果より、寸法が15×15mm以上の比較的大なる半導体集積回路の場合では半導体集積回路が収納された時の振動や半導体集積回路の自重によって、また、寸法が10×10mm以下の比較的小なる半導体集積回路の場合ではトレーに半導体集積回路を収納する本収納工程から次の工程にトレーを搬送する際の振動によって容易に脱出できることを確認できる。
【0030】
図10に示した半導体集積回路用トレーにおける補正性能の比較試験における試験条件を以下に示す。
図10(a)は、本発明のポケットと従来のポケットに対し、半導体集積回路に、同上下面に対して水平方向の回転ずれを生じさせた状態でポケット内に収納(落下)する。
図10(b)は、本発明のポケットと従来のポケットに対し、半導体集積回路における一つのコーナ部分を、ポケット内底面における凹部内のコーナ部分に落ち込ませた状態で搬送時の振動と同じ振動を与える。
そして、この条件にて各寸法の半導体集積回路に対し試験を10回行い、補正率100%を「○」、50〜90%を「△」、10〜50%を「▽」、0%を「×」とした。
【0031】
そして、前述するポケット2内の凹部5内における内側面のテーパ角度は、20度以上とするのが好適であるが、収納する半導体集積回路6の底面に配設された端子7に接触しない角度の範囲内にするので、テーパ角度の上限は設計に依存するものである。
【0032】
また、ポケット2内の凹部5内におけるテーパ状の湾曲面10における湾曲部の範囲や曲率は、同凹部5内に落ち込んだ半導体集積回路6のコーナ6aに続く2辺部が、ポケット2内の凹部5内におけるテーパ状の内側面9に接触することがないように設定する。
【0033】
また、実施例で示している仕切り枠3、4の形態は一例であって、同実施例で示したポケット2の全周を連続して囲む形態の他にも、4角を不連続に囲ったり、辺部のみ囲ったり等各種あり、半導体集積回路6を安定して囲むような態様であればよい。
【0034】
実施例における図1中の符号1aは、半導体集積回路用トレー1を持ち運ぶ際の持ち手である。
【符号の説明】
【0035】
1 トレー
1a 持ち手
2 ポケット
3 仕切り枠
4 仕切り枠
5 凹部
6 半導体集積回路
6a コーナ
7 端子
8 段部
9 内側面
10 湾曲面
11 トレー
12 仕切り枠
13 仕切り枠
14 ポケット
15 凹部
16 半導体集積回路
17 端子
18 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上面に、縦横の仕切り枠で矩形に区画した半導体集積回路の収納ポケットを多数備えており、同ポケットは、内底面に平面形状が半導体集積回路の底面よりも若干小なる略相似形にして同半導体集積回路の底面に配設された端子の高さよりも深さが大なる凹部を有するとともに、同凹部と前記仕切り枠の基部との間に前記半導体集積回路の底面周縁を支持する支持段部を有してなる半導体集積回路用収納トレーであって、前記凹部の内側面を内方に向かって下傾するテーパ状に形成し、かつ、各々隣接する内側面のコーナを湾曲線で接続してなる半導体集積回路用収納トレー。
【請求項2】
前記凹部の内方に向かって下傾する内側面のテーパ角度を、20度以上にして半導体集積回路をポケットに収納した際に同半導体集積回路の底面に配設された端子に接触しない角度の範囲内にしてなる請求項1に記載の半導体集積回路用収納トレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−238660(P2011−238660A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106539(P2010−106539)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(592180476)シノン電気産業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】