説明

半導体電力変換装置の冷却装置

【課題】半導体電力変換装置内に設けられた半導体スイッチを冷却するヒートシンクと半導体電力変換装置内の空気との温度差により発生するヒートシンク表面の結露を防止する。
【解決手段】半導体スイッチを冷却するヒートシンク周囲に設けられたヒートシンク周囲の空気の温度を検出するヒートシンク周囲温度検出器と、ヒートシンク表面温度を検出するヒートシンク表面温度検出器により検出されたそれぞれの温度から、ヒートシンク表面温度とヒートシンク周囲温度との差を所定の値となるようにヒートシンクへ供給される冷却液の量を可変することで、ヒートシンク表面に発生する結露を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体電力変換装置内の半導体スイッチを冷却するヒートシンク表面に発生する結露を防止する半導体電力変換装置の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体電力変換装置の一例として、図2に示すものが特許文献1に報告されている。
【0003】
図2において、1は半導体電力変換装置で、この半導体電力変換装置1内に半導体スイッチ2及び半導体スイッチ2から発生する熱を冷却するヒートシンク3が設置されている。
【0004】
図2の半導体電力変換装置1の冷却系としては、冷却ポンプ8により冷却液が冷却液流入側配管12を通して半導体電力変換装置1内に設置された半導体スイッチ2を冷却するヒートシンク3内に導入され、ヒートシンク3より半導体電力変換装置1の外部に流出する冷却液は冷却流出側配管13を通じ、外部の熱交換器9を介して冷却ポンプ8へ戻る冷却液循環系が構成されている。
【0005】
また、冷却ポンプ8の冷却液吐出口側には、半導体電力変換装置1の入口側の冷却液温度を検出する冷却液水温検出器11が設けられ、冷却液水温検出器11で検出された冷却液水温検出信号は熱交換器9に入力される。
【0006】
半導体電力変換装置1の周囲には、半導体電力変換装置1の周囲温度を検出する半導体電力変換装置周囲温度検出器10が設けられ、半導体電力変換装置周囲温度検出器10で検出された半導体電力変換装置周囲温度検出信号は熱交換器9に入力される。
【0007】
熱交換器9は、冷却液水温検出信号と半導体電力変換装置周囲温度検出信号とを比較し、温度差を検出し、その温度差に基づき冷却液水温を温度調節して半導体電力変換装置周囲温度と冷却液水温が一致するようにすることで温度差を可及的に解消し、半導体電力変換装置内の結露を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−261621
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図2の半導体電力変換装置1にあっては、次のような問題があった。
図2の半導体電力変換装置1の冷却装置とすれば、ヒートシンク3により半導体スイッチ2の発熱を冷却することは出来るが、冷却液水温は半導体電力変換装置周囲温度と同程度の温度となるため、半導体電力変換装置周囲温度より低い温度で冷却可能な液冷装置の特徴は生かされない。
【0010】
また、熱交換器9の冷却液水温の調整時定数が半導体スイッチ2の温度変化時定数よりも大きく、半導体スイッチ2に流れる電流が急激に増加した場合、冷却能力が不足する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
半導体スイッチをスイッチングすることによって、出力電圧もしくは出力電流を制御する半導体電力変換装置で、該半導体電力変換装置内の前記半導体スイッチにより発生する熱を、前記半導体スイッチに取り付けられたヒートシンク内に前記半導体電力装置外に備えられた冷却ポンプにより冷却液を供給することによって冷却する冷却装置において、前記ヒートシンクの周囲の空気このため、液冷装置の特徴を生かしつつ、半導体電力変換装置1の周囲温度および運転状態に関わらず、ヒートシンク3に発生する結露を防止することができる。
温度を検出するヒートシンク周囲温度検出器と前記ヒートシンクの表面温度を検出するヒートシンク表面温度検出器を設け、前記ヒートシンク表面温度検出器の検出温度と前記ヒートシンク周囲温度検出器の検出温度との温度差を所定の値にするための前記冷却ポンプの流量を演算する冷却ポンプ流量演算器と該冷却ポンプ流量演算器により演算された値となる様に、前記冷却ポンプの流量を制御する冷却ポンプ流量制御装置を具備する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、半導体スイッチを冷却するヒートシンクの周囲温度と、ヒートシンク表面温度よりヒートシンクへ供給される冷却液の流量を可変することでヒートシンクの周囲温度とヒートシンク表面温度との温度差を所定の温度にするように制御するので、ヒートシンク表面に発生する結露を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】請求項1の構成を示した構成図である。(実施例1)
【図2】背景技術の構成を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
請求項1の実施の形態に係る半導体電力変換装置1の冷却装置の構成を示す図である。
【実施例1】
【0015】
図1に示す半導体電力変換装置1は、半導体スイッチ2の発熱を半導体電力変換装置1の外部から供給された冷却液の循環により冷却するヒートシンク3と、半導体電力変換装置1のヒートシンク3の冷却液を循環するための冷却ポンプ8と、冷却ポンプ8の流量を制御する冷却ポンプ流量制御装置7と、ヒートシンク3の表面温度を検出するヒートシンク表面温度検出器4、ヒートシンクの周囲の空気温度を検出するヒートシンク周囲温度検出器5からなっている。
【0016】
以下、図1を参照して、半導体電力変換装置1の冷却装置に関する詳細な動作について説明する。
【0017】
半導体スイッチ2のスイッチングにより発生する熱を冷却するヒートシンク3は、半導体スイッチ2を物理的に接触させる。
また、ヒートシンク3は、半導体電力変換装置1の外部から供給された冷却液の循環により冷却される。
【0018】
ヒートシンク表面温度検出器4は半導体スイッチ2の近傍のヒートシンク3の表面温度を検出する。
【0019】
ヒートシンク周囲温度検出器5はヒートシンク周囲の空気温度を検出する。ヒートシンク周囲の空気とは、雰囲気からヒートシンクの周囲に流入してくる空気をさす。
【0020】
冷却ポンプ流量制御装置7は、冷却ポンプ流量演算器6を備えている。
【0021】
冷却ポンプ流量演算器6は、ヒートシンク表面温度検出器4とヒートシンク周囲温度検出器5の温度差が設定値になるように、ヒートシンク表面温度検出器4、ヒートシンク周囲温度検出器5で検出された両者の温度から温度差を求め、冷却ポンプ流量指令として出力する
【0022】
冷却ポンプ流量制御装置7は、冷却ポンプ流量演算器6からの冷却ポンプ流量指令に従ってヒートシンク3へ供給される冷却液の流量を可変する。
【0023】
冷却ポンプ流量演算器6では、冷却ポンプ流量指令を(1)式および(2)式に基づいて演算する。
【0024】
(数1)
TH>Tの場合
Q=K(TTH−T) (1)
TH≦Tの場合
Q=0 (2)
【0025】
ここで、Qは冷却ポンプ流量指令、Kは調整係数、TTHはヒートシンク表面温度検出器4により検出された温度、Tはヒートシンク周囲温度検出器5により検出された温度を表す。
【0026】
TH>Tの場合、つまり、ヒートシンク周囲温度検出器5で検出した温度がヒートシンク表面温度検出器4により検出した温度より低い場合は、冷却ポンプ8によりヒートシンク3へ冷却液を供給する。
【0027】
また、TTH≦Tの場合、冷却ポンプ8によるヒートシンク3への冷却液の供給を停止する。
【0028】
本実施例によれば、冷却ポンプ流量制御装置7による冷却ポンプの流量調整は熱交換器9の冷却液の水温調整よりも温度時定数が短く、ヒートシンク周囲温度と半導体電力変換装置1の出力電流に応じて温度変化するヒートシンク表面温度より、冷却ポンプのからヒートシンク3へ供給される冷却液の流量を可変させるため、急激な電流増加にも十分な冷却能力を発揮できる。
【0029】
このため、液冷装置の特徴を生かしつつ、半導体電力変換装置1の周囲温度および運転状態に関わらず、ヒートシンク3に発生する結露を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
半導体電力変換装置内に設けられた半導体スイッチを冷却するヒートシンクと半導体電力変換装置内の空気との温度差により発生するヒートシンク表面の結露を防止するとともに、半導体スイッチに流れる電流が急激に増加した場合の冷却不足を回避できる。
【符号の説明】
【0031】
1 半導体電力変換装置
2 半導体スイッチ
3 ヒートシンク
4 ヒートシンク表面温度検出器
5 ヒートシンク周囲温度検出器
6 冷却ポンプ流量演算器
7 半導体電力変換装置制御装置
8 冷却ポンプ
9 熱交換器
10 半導体電力変換装置周囲温度検出器
11 冷却液水温検出器
12 冷却液流入側配管
13 冷却液流出側配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチをスイッチングすることによって、出力電圧もしくは出力電流を制御する半導体電力変換装置で、前記半導体電力変換装置内の前記半導体スイッチにより発生する熱を、前記半導体スイッチに取り付けられたヒートシンク内に前記半導体電力変換装置外に備えられた冷却ポンプにより冷却液を供給することによって冷却する冷却装置において、前記ヒートシンクの周囲の空気温度を検出するヒートシンク周囲温度検出器と前記ヒートシンクの表面温度を検出するヒートシンク表面温度検出器を設け、前記ヒートシンク表面温度検出器の検出温度と前記ヒートシンク周囲温度検出器の検出温度との温度差を所定の値にするための前記冷却ポンプの流量を演算する冷却ポンプ流量演算器と前記冷却ポンプ流量演算器により演算された値となる様に、前記冷却ポンプの流量を制御する冷却ポンプ流量制御装置を具備したことを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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