説明

半径方向カーカス補強材を備えたタイヤ

本発明は、特に、クラウン補強材が3つの別々の要素から成る乗用車用タイヤであって、3つの別々の要素は、タイヤの2つのビードを互いに連結する補強要素で形成された半径方向カーカス補強材(2)と、本質的に、タイヤの周方向に平行な補強要素から成るクラウンベルト(4)と、本質的に、タイヤの周方向と10°〜80°の角度をなす補強要素(55)から成るクラウン三角形構造形成層(5)とから成り、三角形構造形成層(5)の補強要素(55)は、平べったくなった断面を有することを特徴とするタイヤに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、特に半径方向カーカスを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に「ラジアルタイヤ」と呼ばれている半径方向カーカスを備えたタイヤは、大抵の市場において、特に乗用車用タイヤ市場において次第に標準となっている。この成功は、特にラジアルタイヤ技術が備えている耐久性、快適さ、軽量及び低転がり抵抗に起因している。
【0003】
ラジアルタイヤは、本質的に、柔軟性のあるサイドウォール及びこれよりも硬質のクラウンで構成され、サイドウォールは、ビードからショルダまで半径方向に延び、ショルダは、これらの間に、クラウンを画定し、クラウンは、タイヤのトレッドストリップを支持している。タイヤのこれら部分の各々がそれ自体の特定の機能を備えているので、各部品は又、それ自体の専用の補強材を有している。ラジアルタイヤ技術の一特徴は、これら部分の各々の補強材を比較的互いに独立して正確に適合させることができるということにある。
【0004】
乗用車用ラジアルタイヤ(一般に「乗用車用タイヤ」と呼ばれている)のクラウン補強材は、公知の仕方で、次の要素、即ち、
・タイヤの2つのビードを互いに連結する補強要素(一般に、テキスタイル)で形成された半径方向カーカス補強材、
・本質的に、各々がタイヤの周方向と約30°の角度をなす補強要素(一般に、金属)から成る2つのクロス掛けされたクラウン三角形構造形成層(又はプライ)、
・本質的に、タイヤの周方向にほぼ平行な補強要素、(0°補強要素と呼ばれる場合が多い)から成るクラウンベルトを有し、但し、一般に、補強要素は、周方向とゼロではない角度、例えば0°〜10°の角度をなしている。
【0005】
広義には、カーカスは、タイヤの内圧を封じ込める最も重要な機能を有すると言われており、クロス掛けされたプライは、タイヤにそのコーナリング剛性を与える最も重要な機能を有し、クラウンベルトは、高速時にクラウンに加わる遠心力効果に抵抗する最も重要な機能を有する。さらに、これら全ての補強要素相互間の相互作用は、クラウン三角形構造と呼ばれる状態を作る。種々の応力が加わるにもかかわらず、比較的円筒形の形状を保持する能力を与えるのは、この三角形構造である。
【0006】
クラウン補強材のこれら要素の各々は、一般に、圧延によってゴムコンパウンドと組み合わされる。次に、これら要素のスタック(積重ね体)をタイヤの加硫中、互いに接合する。
【0007】
ラジアルタイヤアーキテクチャの数十年にわたる研究、技術的進歩及び開発後に、ラジアルタイヤがこれを現状の成功に導いた申し分のない快適さ、長寿命及びコストパフォーマンスを達成することができるようにしたのは、これら全ての補強要素(カーカス、クロス掛け層、ベルト)の組み合わせである。この開発全体を通じて、例えばタイヤの重量及び転がり抵抗の観点でタイヤの性能を向上させる試みが行なわれた。かくして、ラジアルタイヤのクラウンの厚さは、次第に減少した。というのは、ますます高性能の補強要素が採用されると共にますます薄い圧延ゴム層が用いられたからであり、その結果、可能な限り軽量のタイヤを製造することができるようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、乗用車用タイヤの性能を減少させないでクラウン及びかくして乗用車用タイヤの重量を一段と大幅に減少させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明によれば、クラウン補強材が3つの別々の要素から成る乗用車用タイヤであって、3つの別々の要素は、
・タイヤの2つのビードを互いに連結する補強要素で形成された半径方向カーカス補強材と、
・本質的に、タイヤの周方向に平行な補強要素から成るクラウンベルトと、
・本質的に、タイヤの周方向と10°〜80°の角度をなす補強要素から成るクラウン三角形構造形成層とから成り、三角形構造形成層の補強要素は、平べったくなった断面を有することを特徴とするタイヤを提案することによって達成される。
【0010】
好ましくは、三角形構造形成層の平べったくされた断面の補強要素は、ポリマーで作られ、より好ましくは熱可塑性ポリマーフィルムで作られる。
【0011】
好ましくは、熱可塑性ポリマーフィルムは、多軸延伸を受けたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0012】
本発明の第1の変形例によれば、クラウン三角形構造形成層は、クラウンベルトの半径方向外側に位置している。
【0013】
好ましくは、クラウン三角形構造形成層は、クラウンベルトの半径方向内側に位置する。
【0014】
好ましくは、クラウンベルトの補強要素の引張り弾性率は、25GPaを超える。より好ましくは、クラウンベルトの補強要素は、スチール又はアラミドを収容している。
【0015】
好ましくは、三角形構造形成層の平べったくされた断面の補強要素の引張り弾性率は、1GPaを超える。
【0016】
本発明の一変形例によれば、三角形構造形成層の平べったくされた断面の2つの補強要素相互間の間隔は、補強要素の幅の半分の合計よりも大きく、間隔は、補強要素を横断する方向に測定される。
【0017】
本発明の別の変形例によれば、三角形構造形成層の平べったくされた断面の2つの補強要素相互間の間隔は、補強要素の幅の半分の合計よりも小さく、間隔は、補強要素を横断する方向に測定される。また、好ましくは、間隔は、補強要素の半分の幅の合計よりも、補強要素の最大厚さの少なくとも4倍に等しい値だけ小さい。
【0018】
好ましくは、三角形構造形成層の平べったくされた断面の補強要素の幅は、補強要素の最大厚さの少なくとも5倍に等しく、好ましくは、補強要素の最大厚さの少なくとも20倍に等しい。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態では、三角形構造形成層は、本質的に、タイヤの周方向と25°〜60°の角度をなす補強要素から成る。
【0020】
本発明の内容は、以下の図を参照して行なわれる本明細書の残りの部分から良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】先行技術のタイヤのアーキテクチャを概略的に示す切除図である。
【図2】本発明の第1の実施形態としてのタイヤのアーキテクチャの切除図である。
【図3】本発明の第2の実施形態としてのタイヤのアーキテクチャの切除図である。
【図4】本発明の第3の実施形態としてのタイヤのアーキテクチャの切除図である。
【図5】図4の詳細Aの図である。
【図6】本発明の第4の実施形態としてのタイヤのアーキテクチャの切除図である。
【図7】本発明の第5の実施形態としてのタイヤのアーキテクチャの切除図である。
【図8】本発明の第6の実施形態としてのタイヤのアーキテクチャの切除図である。
【図9】本発明の第7の実施形態としてのタイヤのアーキテクチャの切除図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、先行技術の乗用車用ラジアルタイヤの概略切除図である。ビードワイヤ31の周りに形成された2つのビード3を互いに連結するタイヤのカーカス補強材2が見える。カーカス補強材は、半径方向に差し向けられた補強要素21で形成されている。補強要素21は、テキスタイルコード(例えば、ナイロン、レーヨン又はポリエステルで作られている)である。カーカスは、サイドウォール8の単一の補強材を構成し、これに対し、クラウン中には、即ち、タイヤの2つのショルダ相互間では、カーカスの上には2つのクロス掛け三角形構造形成層51,52及びベルト4が載っている。
【0023】
2つのクロス掛けクラウン三角形構造形成層51,52は、タイヤの周方向の各側で一般に20°〜40°の角度をなして差し向けられた補強要素(それぞれ、511,521)を有する。クロス掛け層中の補強要素は、本質的に金属コードである。
【0024】
クラウンベルト4は、本質的には、タイヤの周方向に平行に差し向けられた補強要素(「0°補強要素」とも呼ばれている)から成る。これら補強要素は、一般に、金属コード、テキスタイルコード(例えば、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アラミドで作られている)又はハイブリッドコードである。
【0025】
内部内張りゴム7の層がタイヤのキャビティを覆い、トレッドストリップ6がクラウンベルト又は補強材に被さっている。
【0026】
図2は、本発明のタイヤの第1の実施形態を示している。
【0027】
本発明のタイヤのクラウン補強材は、半径方向カーカス2及び周方向ベルト4を有し、これらは、先行技術のタイヤに関して説明したものとほぼ同じである。対照的に、先行技術の2つのクロス掛け層51,52に代えて、単一の三角形構造形成層5が用いられている。
【0028】
三角形構造形成層5中の補強要素55は、平べったくされた形状の断面を有し、これら補強要素は、タイヤの周方向に対して角度“α”だけ傾けられている。図2の例では、角度αは、45°である。平べったい補強要素55の幅は、この場合、約30mmである。補強要素の横断方向に測定した補強要素55の配置間隔は、補強要素の幅の半分の合計よりも大きく、このことは、平べったい補強要素がオーバーラップなしに並置されていることを意味している。1〜2mmのオーダーの隙間“J”が補強要素相互間に存在している。この隙間は、この例の場合のように三角形構造形成ストリップ55がショルダの近くに僅かに減少する幅を備えている場合、クラウンの幅全体にわたって実質的に一定であるのが良い。これとは対照的に、ストリップが一定幅のものである場合、隙間は、クラウンの曲率に鑑みて、ショルダの近くのところよりもクラウンの中間部のところの方が大きいであろう。
【0029】
驚くべきこととして、かかるタイヤは、タイヤの厚さ及び重量が非常に大幅に減少している場合であっても、技術の現状のタイヤで得られるコーナリング剛性性能と同等のコーナリング剛性性能を達成することができる。
【0030】
図3は、平べったい補強要素55の層5がこの場合ベルト4の頂部上に位置決めされた本発明の別の実施形態を示している。この構成の一利点は、層5が又、ベルト及びカーカスを攻撃(穴あけ、切断)から保護するということにある。
【0031】
また、図3で理解できるように、平べったい補強要素は、タイヤの周方向に対して著しく傾けられている。この場合の角度αは、80°であり、隙間“J”は、図2の隙間とほぼ同じである。ストリップ55の幅は、約35mmである。また、当然のことながら、図2に示されているクラウン要素レイアウトをこの図3に示されている傾斜角と組み合わせること及び図3に示されているクラウン要素レイアウトを図2に示されている傾斜角と組み合わせることが可能である。
【0032】
図4は、図2の実施形態の変形例を示しており、この変形例では、周方向ベルト4は、その中央部分が2倍の数の周方向補強要素を有している。補強要素42がこの中央部分で補強要素41に追加されている。補強要素が個々に又はストリップの状態で配置される場合、必要なことは、例えば、追加の補強要素(巻回体)を中央部に配置すること又はこの部分の布設ピッチを減少させることだけであることが理解されよう。図5に示されている詳細Aを参照すると、この変形例の原理を良好に理解できる。
【0033】
図6は、三角形構造形成層が互いに異なる長さ及び向きで2つの一連の重ね合わされた平べったい補強要素55,56を有する本発明の別の実施形態を示している。ストリップ55は、80°の角度α1をなし、ストリップ56は、70°の角度α2をなしている。補強要素56は、補強要素55相互間の隙間を覆っている。
【0034】
図7は、三角形構造形成層5が平べったい補強要素55相互間に介在して配置されたコード57を更に有する本発明の別の実施形態を示している。これらコードは、例えば、カーカスコード又はベルトコードとほぼ同じであるのが良い。これらコード57を設けた場合の一利点は、これらコードにより、ガスを加硫中に抜き出すのが容易になるということにある。これらコードは又、三角形構造形成層の補強機能の一部を担うことができる。
【0035】
図8は、三角形構造形成層5の平べったい補強要素55がこの例では2〜3mmオーダーのオーバーラップ“R”を定めるよう互いに部分的にオーバーラップした本発明の別の実施形態を示している。補強要素の幅は、約40mmである。したがって、平べったい補強要素の横断方向で測定したこれら平べったい補強要素の配置間隔は、この場合、補強要素の幅の半分の合計よりも小さい。好ましくは、オーバーラップは、補強要素55の最大厚さの2倍を超える。
【0036】
図9は、図4及び図5の実施形態の変形形態を示しており、この変形形態では、平べったい補強要素55の幅は、約10mmまで減少し、隙間“J”は、約1mmである。
【0037】
本発明のタイヤの有利な一特徴は、クラウンの気密性が平べったい補強要素の存在により高められるということにある。内側ライナ(図2〜図9には示されていない)の厚さは、クラウンの下ではかなり減少するのが良い。したがって、この特徴により、クラウンの厚さ及び全重量を一段と減少させることができる。
【0038】
平べったい補強要素は、金属補強要素、複合補強要素又はポリマー補強要素であるのが良い。
【0039】
好ましくは、平べったい補強要素は、ポリマーで作られ、より好ましくは熱可塑性ポリマーで作られる。例えば、多軸延伸を受けた、即ち、2つ以上の方向に延伸されると共に配向された熱可塑性ポリマーフィルムを用いるのが良い。多軸延伸を受けたかかるフィルムは、周知であり、本質的には今日、包装業界、食品業界、電気分野において又は磁気コーティング用支持体として用いられている。
【0040】
かかるフィルムは、種々の周知の延伸技術を用いて調製され、これら延伸技術は全て、溶融状態における紡糸時に周知の仕方で単軸延伸を受ける従来型熱可塑性ポリマー繊維(例えば、PET又はナイロン繊維)の場合と同様、たった1つの方向ではなく、幾つかの主要な方向に良好な機械的性質をフィルムに与えるようになっている。
【0041】
かかる技術は、幾つかの方向に多数回の延伸作業を必要とし、延伸は、長手方向延伸、横断方向延伸、平面延伸であり、例えば、特に二方向における延伸吹き込み成形技術を挙げることができる。
【0042】
多軸延伸を受けた熱可塑性ポリマーフィルム及び熱可塑性ポリマーフィルムを得る方法は、多くの特許文献、例えば、仏国特許第2539349号明細書(又は英国特許第2134442号明細書)、独国特許第3621205号明細書、欧州特許第229346号明細書(又は米国特許第4876137号明細書)、欧州特許第279611号明細書(又は米国特許第4867937号明細書)、欧州特許第539302号明細書(又は米国特許第5409657号明細書)及び国際公開第2005/011978号パンフレット(又は米国特許出願公開第2007/0031691号明細書)に記載されている。
【0043】
延伸作業を1つ又は幾つかの段階で実施することができ、延伸作業は、これら延伸作業のうちの幾つかが存在する場合、同時に実施することができ又は連続して実施することができ、適用される1つ又は複数の延伸率は、標的となる最終の機械的性質に応じ、一般的には2を超える。
【0044】
好ましくは、用いられる熱可塑性ポリマーフィルムは、考慮される引張り方向がどのような方向であれ、500MPa(特に500〜4000MPa)、好ましくは1000MPaを超え(特に、1000〜4000MPa)、より好ましくは2000MPaを超えるEで示された引張り弾性率を有する。2000〜4000MPa、特に3000〜4000MPaのE弾性率値が本発明のクラウン三角形構造形成層として特に望ましい。
【0045】
別の好ましい実施形態によれば、考慮される引張り方向がどのような方向であれ、熱可塑性ポリマーフィルム中のσmaxで示された最大引張り応力は、好ましくは80MPaを超え(特に、80〜200MPa)、より好ましくは100MPaを超え(特に100〜200MPa)である。150MPaを超え、特に150〜200MPaの応力値σmaxが特に望ましい。
【0046】
別の好ましい実施形態によれば、考慮される引張り方向がどのような方向であれ、熱可塑性ポリマーフィルムのYpで示された塑性変形しきい値(これは「降伏点」とも呼ばれる)は、3%伸び率を超え、特に3〜15%伸び率である。4%を超え、特に4〜12%のYp値が特に望ましい。
【0047】
別の好ましい実施形態によれば、考慮される引張り方向がどのような方向であれ、熱可塑性ポリマーフィルムは、40%を超え(特に40〜200%)、より好ましくは50%を超えるArで示された破断点伸び率を有する。50〜200%のAr値が特に望ましい。
【0048】
上述の機械的性質は、当業者には周知であり、かかる機械的性質は、例えば1mmを超える厚さのストリップについて規格ASTM・F638‐02に従って測定され又は変形例として厚さがせいぜい1mmの薄いシート又はフィルムについて規格ASTM・D882‐09に従って測定された力‐伸び率曲線から導き出され、MPaで表された弾性率E及び応力σmaxに関する上述の値は、引張り試験用試験片の初期断面に関して計算される。
【0049】
用いられる熱可塑性ポリマーフィルムは、好ましくは、熱安定化型のものであり、このことは、延伸後、周知の仕方で熱可塑性ポリマーフィルムがその高温熱収縮(又は縮み)を制限することを目的とする熱処理を1回又は2回以上受けたことを意味しており、かかる熱処理は、アニーリング(焼なまし)又はテンパリング(焼もどし)作業又はかかるアニーリング作業とテンパリング作業の組み合わせから成るのが良い。
【0050】
かくして、好ましくは、用いられる熱可塑性ポリマーフィルムは、150℃における30分後、5%未満、好ましくは3%未満のその長さの相対的収縮率を呈する(これは、ASTM・D1204に従って測定される)。
【0051】
用いられる熱可塑性ポリマーの融点(“Tf”)は、好ましくは、100℃を超え、より好ましくは150℃を超え、特に200℃を超えるよう選択される。
【0052】
熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ポリアミド、ポリエステル及びポリイミドから成る群から選択され、特に、ポリアミド及びポリエステルから成る群から選択される。ポリアミド群では、特に、ポリアミドナイロン4‐6、ナイロン‐6、ナイロン6‐6、ナイロン‐11又はナイロン‐12を挙げることができる。ポリエステル群では、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)、PPN(ポリプロピレンナフタレート)を挙げることができる。
【0053】
熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ポリエステルであり、より好ましくはPET又はPENである。
【0054】
多軸延伸を受け、本発明のクラウン三角形構造形成層に適したPET熱可塑性ポリマーフィルムの例は、例えば、“Mylar”及び“Melinex”(デュポン・テイジン・フィルムズ(DuPon Teijin Films)製)又は変形例として“Hostaphan”(ミツビシ・ポリエステル・フィルム(Mitubisi Polyester Film )製)という名称で市販されている二方向延伸を受けたPETフィルムである。
【0055】
本発明のクラウン三角形構造形成層では、熱可塑性ポリマーフィルムの厚さは、好ましくは、0.05〜1mm、より好ましくは0.1〜0.7mmである。例えば、0.20〜0.60mmのフィルム厚さは、完全に適しているものであることが判明した。
【0056】
熱可塑性ポリマーフィルムは、特に熱可塑性ポリマーフィルムの形成時にポリマーに添加された添加剤を含むのが良く、これら添加剤は、老化に対する保護をもたらす作用剤であるのか良く、例えば、可塑剤、充填剤、例えばシリカ、クレイ、タルク、カオリン又は単繊維であり、充填剤は、例えば、フィルムの表面を粗くし、かくしてフィルムが接着剤を保持すると共に/或いはこれが接触するようになったゴムの層へのくっつき具合の向上に寄与する。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態によれば、熱可塑性ポリマーフィルムは、これが接触関係をなすゴムコンパウンドの各層に向いた接着剤の層を備える。
【0058】
ゴムを熱可塑性ポリマーフィルムにくっつけるため、適当な接着系、例えば少なくとも1つのジエンエラストマー、例えば天然ゴムを含むRFL(レソルシノール‐ホルムアルデヒド‐ラテックス)型の単純なテキスタイル接着剤又はゴムと従来型熱可塑性繊維、例えばポリエステル又はポリアミド繊維との間に満足の行く接着を提供することが知られている任意の同等な接着剤を用いることが可能である。
【0059】
一例を挙げると、接着被覆プロセスは、本質的には、以下の連続して行われるステップ、即ち、接着剤の浴の通過ステップ、過度の接着剤を除去する延伸作用を加える作業ステップ(例えば、ブローイング(blowing)、グレーディング(grading)による)、例えばオーブンに通す(例えば、180℃で30分間)ことによる乾燥ステップ、最後に熱処理ステップ(例えば、230℃で30分間)を含むのが良い。
【0060】
接着剤の上述の塗布前に、例えば、フィルムによる接着剤の保持具合及び/又は最終のゴムへのフィルムの接着具合を向上させるよう機械的且つ/或いは物理的且つ/或いは化学的プロセスを用いてフィルムの表面を活性化することが有利な場合がある。機械的処理は、例えば、表面を艶消しし又は引っ掻く事前ステップから成り、物理的処理は、例えば、放射線、例えば電子ビームによる処理から成り、化学的処理は、例えば、エポキシ樹脂及び/又はイソシアネート化合物の浴の事前通過から成るのが良い。
【0061】
熱可塑性ポリマーフィルムの表面は、一般的に言って、特に滑らかなので、フィルムを接着剤で被覆しているときにフィルムによる接着剤の全体的保持具合を向上させるために増粘剤を用いられる接着剤に追加することも又有利な場合がある。
【0062】
当業者であれば容易に理解されるように、熱可塑性ポリマーフィルムとこれが接触関係をなす各ゴム層との連結は、タイヤの最終の硬化(架橋)時に最終的に得られる。
【0063】
本発明のタイヤでは、ベルト中の周方向補強要素(41,42)は、好ましくは、比較的硬質であり、これらの弾性率は、好ましくは、25〜250GPa、好ましくは40GPa〜250GPaである。
【0064】
用いることができる周方向補強要素の例としては、炭素鋼コード、ステンレス鋼コード、互いに撚り合わされた繊維で構成されるテキスタイルコード、特に温度及び/又は水分に対して寸法安定性があることが知られているコードが挙げられる。これらコードのテキスタイル繊維は、例えば、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド(又は「アラミド」)繊維、脂肪族ポリアミド(又は「ナイロン」)繊維、ポリエステル(例えば、PET又はPEN)、芳香族ポリエステル、セルロース(例えば、レーヨン、ビスコース)、ポリフェニレンベンゾビソキアゾール、ポリケトン、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維から成る群から選択される。特に好ましくは、特に炭素鋼、アラミド、ポリエステル、ナイロン、セルロース、ポリケトン強化要素及びこれら種々の材料、例えばアラミド/ナイロンコードで構成されたハイブリッド補強要素が挙げられる。
【0065】
カーカス中の補強要素又は周方向ベルト中の補強要素は、任意公知の形状を採用することができ、これら補強要素は、例えば、かなり大きな直径(例えば、好ましくは50μm以上の直径)の単位モノフィラメント、マルチフィラメント繊維(小径の、典型的には30μm未満の複数本の単位フィラメントで構成される)、互いに撚り合わされた数本の繊維で形成されたもろよりテキスタイルヤーン、互いにケーブリングされ又はツイスティングされた数本の繊維又はモノフィラメントで形成されるテキスタイル又は金属コードであるのが良い。
【0066】
図2の実施形態に類似した実施形態としてのタイヤを先行技術の乗用車用タイヤと比較した。
【0067】
試験したサイズは、205/55R16であった。三角形構造形成層5中の平べったい補強要素55は、40°の角度αをなして配置された厚さ350μmの二軸延伸PETフィルムのものであり、各幅は、30mmであった。このようにして形成された三角形構造形成層の幅は、180mmであった。クラウンベルトは、アラミドコードを用いた。かくして、本発明のタイヤの重量は、8kgであり、先行技術のタイヤ(MICHELIN ENERGY(登録商標)Saver 205/55R16)の重量は、6.8kgであり、即ち15%高かった。
【0068】
1°のスリップ角度での運転時に600daNの垂直荷重Fzを受けたタイヤによってコーナリング剛性、即ち横力Fyが生じた。先行技術のタイヤ(MICHELIN ENERGY(登録商標)Saver 205/55R16)が生じさせた横力は、1700Nであり、本発明のタイヤが生じさせた横力は、1650Nであった。
【0069】
したがって、本発明のタイヤは、コーナリング剛性をそれほど低下させることなく、先行技術のタイヤよりも重量がかなり軽いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウン補強材が3つの別々の要素から成る乗用車用タイヤであって、前記3つの別々の要素は、
・前記タイヤの2つのビードを互いに連結する補強要素で形成された半径方向カーカス補強材と、
・本質的に、前記タイヤの周方向に平行な補強要素から成るクラウンベルトと、
・本質的に、前記タイヤの周方向と10°〜80°の角度をなす補強要素から成るクラウン三角形構造形成層とから成り、前記三角形構造形成層の前記補強要素は、平べったくなった断面を有する、タイヤ。
【請求項2】
前記三角形構造形成層の平べったくされた断面の前記補強要素は、ポリマーで作られている、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記三角形構造形成層の平べったくされた断面の前記補強要素は、熱可塑性ポリマーフィルムで作られている、請求項2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーフィルムは、多軸延伸を受けたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、請求項3記載のタイヤ。
【請求項5】
前記クラウン三角形構造形成層は、前記クラウンベルトの半径方向外側に位置している、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記クラウン三角形構造形成層は、前記クラウンベルトの半径方向内側に位置している、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記クラウンベルトの前記補強要素の引張り弾性率は、25GPaを超える、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記クラウンベルトの前記補強要素中にはスチール又はアラミドが入っている、請求項7記載のタイヤ。
【請求項9】
前記三角形構造形成層の平べったくされた断面の前記補強要素の引張り弾性率は、1GPaを超える、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記三角形構造形成層の平べったくされた断面の2つの補強要素相互間の間隔は、前記補強要素の幅の半分の合計よりも大きく、前記間隔は、前記補強要素を横断する方向に測定される、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記三角形構造形成層の平べったくされた断面の2つの補強要素相互間の間隔は、前記補強要素の幅の半分の合計よりも小さく、前記間隔は、前記補強要素を横断する方向に測定される、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記間隔は、前記補強要素の半分の幅の合計よりも、前記補強要素の最大厚さの少なくとも4倍に等しい値(“R”)だけ小さい、請求項11記載のタイヤ。
【請求項13】
前記三角形構造形成層の平べったくされた断面の前記補強要素の幅は、前記補強要素の最大厚さの少なくとも5倍に等しく、好ましくは、前記補強要素の最大厚さの少なくとも20倍に等しい、請求項1〜12のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記三角形構造形成層は、本質的に、前記タイヤの周方向と25°〜60°の角度をなす補強要素から成る、請求項1〜13のうちいずれか一に記載のタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−523340(P2012−523340A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503987(P2012−503987)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054482
【国際公開番号】WO2010/115860
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)