説明

半径方向リプル・アーティファクトを低減するMR撮像の方法及びシステム

【課題】磁気共鳴撮像において、PROPELLER法又は類似の撮像プロトコルの応用を、頭部アキシャル走査以外のスライス配向及び他の解剖学的部位まで拡張することを可能にする。
【解決手段】スライス配向又は関心のある解剖学的構造とは独立にPROPELLER撮像を現実的に実行することを可能にするMR撮像の方法及びシステムを開示する。本発明は、k空間の中央領域(88、91)の周りに回転されるMRデータのブレード(82、90)の取得、及びMRデータのブレード(82、90)から、スライス平面の視野の外部の組織からの位相エイリアシングに起因する半径方向リプル・アーティファクトを実質的に含まない任意のスライス配向の画像を再構成すること(94)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、診断撮像に関し、さらに具体的には、磁気共鳴(MR)撮像において位相エイリアシング(半径方向リプル)アーティファクトを低減する方法及び装置に関する。本発明はまた、k空間の部分的に充填されたブレードを充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体組織のような物質が一様な磁場(分極磁場B0)を受けると、組織内のスピンの個々の磁気モーメントはこの分極磁場と整列しようとするが、スピン固有のラーモア周波数で乱雑な秩序で磁場の周りで歳差運動する。物質すなわち組織が、xy平面に位置しておりラーモア周波数に近い周波数の磁場(励起磁場B1)を受けると、整列後の正味のモーメントすなわち「縦磁化」MZが、xy平面に向かって回転し又は「傾斜」して正味の横磁気モーメントMtを発生する。励起信号B1が停止された後に、励起したスピンによって信号が放出され、この信号を受信し処理して画像を形成することができる。
【0003】
これらの信号を用いて画像を形成するときには、磁場勾配(Gx、Gy及びGz)が用いられる。典型的には、被撮像領域は、用いられている特定の局在化方法に従って上述の各勾配を変化させる一連の測定サイクルによって走査される。結果として得られるNMR受信信号集合をディジタル化し処理して、多くの周知の再構成手法のいずれかを用いて画像を再構成する。
【0004】
高速スピン・エコー(FSE)撮像は、アーティファクトを最小限にしてMRIデータを収集する効率的な方法として広く用いられているMR撮像手法である。しかしながら、FSE画像でも、画像取得は通常数分間を要するため随意又は不随意の患者の運動から生ずるゴースト・アーティファクトを生ずる。
【0005】
FSE画像の運動アーティファクトを低減する多くの撮像手法が開発されている。かかるFSE手法の一つはPeriodically Rotated Overlapping Parallel Lines with Enhanced Reconstruction(周期的に回転する重畳平行線による改良型再構成、PROPELLER)撮像と呼ばれ、エコー鎖においてk空間の中心を通る矩形の短冊すなわち「ブレード」を測定するようにデータを収集することにより、MR信号を符号化する。この短冊は、続いてのエコー鎖では原点を中心としてk空間内で漸進的に回転され、これにより、所望の分解でにk空間の所要の領域の十分な測定を可能にしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
周期的に回転する重畳平行線による改良型再構成は、頭部の近アキシャル走査において被検体の不慮の並進運動及び回転運動に関連したアーティファクトを低減させる場合には極めて実効的であることが判明している。k空間の中心は取得中に多数回サンプリングされるため、PROPELLERは運動に対する感受性が比較的低い。加えて、回転及び移動に対する明示的な補正を用いて運動アーティファクトをさらに低減している。これらのPROPELLER撮像の利点にも拘わらず、この手法の応用は、主にサジタル走査、コロナル走査及び斜方(アキシャル方向から著しく変化した配向)走査では半径方向リプル・アーティファクトが観察される結果として、頭部アキシャル走査に限られている。これらのアーティファクトは、肝臓及び脊椎のPROPELLER撮像でも観察される。PROPELLERの応用を他のスライス配向及び他の解剖学的部位まで拡張するためには、これらの半径方向リプル・アーティファクトを低減しなければならない。
【0007】
従って、半径方向リプル・アーティファクトを低減してPROPELLER又は類似の撮像プロトコルを具現化したMR撮像のシステム及び方法を提供することができると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、MR画像が半径方向リプル・アーティファクトを実質的に含まないようにして、改良型PROPELLER取得を用いて取得されたMRデータからMR画像を再構成するシステム及び方法での上述の欠点を克服するものである。
【0009】
スライス配向又は関心のある解剖学的構造とは独立にPROPELLER撮像を現実的に実行することを可能にするMR撮像の方法及びシステムを開示する。本発明は、k空間の中央領域の周りに回転されるMRデータのブレードの取得、及びMRデータのブレードから、従来は所与のFOVの外部に解剖学的構造を有する被検体のコロナル又はサジタルPROPELLER画像に見受けられていた位相エイリアシング・アーティファクトを実質的に含まない任意のスライス配向の画像を再構成することに関する。
【0010】
従って、本発明の一観点では、MR撮像装置が、磁石のボア(中孔)の周りに配置されており分極磁場を印加する複数の勾配コイルを含んでいる。RF送受信器システム及びRFスイッチが、パルス・モジュールによって制御されて、RFコイル・アセンブリへ及びRFコイル・アセンブリからRF信号を送受してMR画像を取得する。MRI装置はまた、FOVから任意のスライス配向に沿ってMRデータのブレードを取得し、隣り合ったブレードがスライス平面において互いから回転されるようにしてMRデータのブレードでk空間を充填するようにプログラムされているコンピュータを含んでいる。さらにもう一つの観点では、コンピュータはまた、k空間データの各々のブレードを画像空間へ変換し、幾つかの補正を施して、画像空間をk空間へ変換して戻し、このとき半径方向リプル・アーティファクトを実質的に含まない画像が再構成されるようにプログラムされている。
【0011】
もう一つの観点では、本発明は、MRデータ取得の方法を含んでおり、この方法は、FOVからのMRデータ取得のためのサンプリングを行なうようにエコー鎖を励起するステップと、k空間の中央領域を通って延在する複数のk空間データ線を有するk空間ブレードを部分的に充填するようにエコー鎖をサンプリングするステップとを含んでいる。この方法はさらに、部分的に充填されたk空間ブレードの残りを、エコー鎖からサンプリングされたデータから決定されるデータで充填するステップを含んでいる。励起するステップ、サンプリングするステップ、及び充填するステップは、各々のk空間ブレードがk空間の中央領域を通って延在し、且つ隣り合ったk空間ブレードがk空間の中央領域の周りに互いから回転されるようにして、複数のk空間ブレードがk空間において充填されるまで繰り返される。
【0012】
もう一つの観点では、本発明は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されたコンピュータ・プログラムとして具現化され、このコンピュータ・プログラムは、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、エンコードされたFOVを超えて延在する部分を有する対象からk空間の複数のブレードを取得して、これらのk空間のブレードを撮像する、ことを行なわせる命令を有する。コンピュータはさらに、FOVの位相エンコード方向での中心部分を記述するブレード画像を単離して、FOVの位相エンコード方向での中心部分の外部に位置する位相エンコード位置からデータを除去するようにブレード画像を切り取る、ことを行なう。命令はまた、コンピュータに、切り取られたブレード画像をk空間の切り取られたブレードへ変換して、単離されたブレード画像に対応するk空間のブレードをk空間の切り取られたブレードで置き換える、ことを行なわせる。
【0013】
本発明のその他様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【0014】
図面は、本発明を実施するのに現状で想到される好適な一実施形態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、本発明を組み入れた好ましいMRイメージング・システム10の主要な構成要素を示す。このシステムの動作は操作コンソール12から制御され、操作コンソール12は、キーボード又は他の入力装置13、制御パネル14及び表示画面16を含んでいる。コンソール12はリンク18を介して別個のコンピュータ・システム20と交信し、システム20は、操作者が表示画面16での画像の形成及び表示を制御することを可能にする。コンピュータ・システム20は、バックプレイン20aを介して互いに交信する幾つかのモジュールを含んでいる。これらのモジュールには、画像プロセッサ・モジュール22、CPUモジュール24、及び画像データ配列を記憶するフレーム・バッファとして当技術分野で公知のメモリ・モジュール26が含まれる。コンピュータ・システム20は、画像データ及びプログラムの記憶のためのディスク記憶装置28及びテープ・ドライブ30に結合されており、高速シリアル・リンク34を介して別個のシステム制御32と交信する。入力装置13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、指触起動式画面、光ワンド、音声制御、又は任意の類似の若しくは等価の入力装置を含むことができ、これらの入力装置を用いて対話型での幾何学的構成指定を行なうことができる。
【0016】
システム制御32は、バックプレイン32aによって共に接続された一組のモジュールを含んでいる。これらのモジュールには、CPUモジュール36及びパルス発生器モジュール38が含まれており、パルス発生器モジュール38はシリアル・リンク40を介して操作コンソール12に接続している。リンク40を介して、システム制御32は、実行すべき走査シーケンスを指示する操作者からの指令を受け取る。パルス発生器モジュール38はシステムの各構成要素を動作させて所望の走査シーケンスを実行すると共に、生成されるRFパルスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ取得ウィンドウのタイミング及び長さを指示するデータを生成する。パルス発生器モジュール38は、走査中に発生される勾配パルスのタイミング及び形状を指示する一組の勾配増幅器42に接続している。パルス発生器モジュール38はまた、患者に取り付けられた電極からの心電図(ECG)信号のように患者に接続された多くの様々なセンサからの信号を受け取る生理学的取得制御器44から患者データを受け取ることができる。最後に、パルス発生器モジュール38は、患者及び磁石システムの状態に関連する様々なセンサから信号を受け取る走査室インタフェイス回路46に接続している。また、走査室インタフェイス回路46を介して、患者配置システム48は、走査に望ましい位置まで患者を移動させる命令を受け取る。
【0017】
パルス発生器モジュール38によって発生された勾配波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する勾配増幅器システム42に印加される。各々の勾配増幅器は、参照番号50で全体的に示す勾配コイル・アセンブリ内の対応する物理的な勾配コイルを励起して、取得された信号を空間的に符号化(エンコード)するのに用いられる磁場勾配を生成する。勾配コイル・アセンブリ50は、分極用磁石54及び全身型RFコイル56を含む磁石アセンブリ52の一部を成す。システム制御32の送受信器モジュール58がパルスを発生すると、パルスはRF増幅器60によって増幅されて、送受信(T/R)スイッチ62によってRFコイル56に結合される。患者の体内の励起した核によって放出される結果信号は同じRFコイル56によって感知されて、送受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合される。増幅されたMR信号は、送受信器58の受信器部で復調、濾波及びディジタル化を施される。送受信スイッチ62はパルス発生器モジュール38からの信号によって制御されて、送信モード時にはRF増幅器60をコイル56に電気的に接続し、受信モード時には前置増幅器64をコイル56に接続する。送受信スイッチ62はまた、送信モード又は受信モードのいずれでも分離型RFコイル(例えば表面コイル)を用いることを可能にする。
【0018】
RFコイル56によって捕えられたMR信号は、送受信器モジュール58によってディジタル化されて、システム制御32のメモリ・モジュール66へ転送される。生(未処理)のk空間データの配列がメモリ・モジュール66に取得されると走査が完了する。この生のk空間データを構成し直して、再構成したい各々の画像毎に別個のk空間データ配列とすることができ、これらの配列の各々をアレイ・プロセッサ68に入力すると、アレイ・プロセッサ68はデータをフーリエ変換するように動作して画像データの配列を生成する。この画像データはシリアル・リンク34を介してコンピュータ・システム20へ伝送され、ここで、ディスク記憶装置28のようなメモリに記憶される。操作コンソール12から受け取った命令に応じて、この画像データをテープ・ドライブ30のような長期記憶装置に保管してもよいし、或いは画像データを画像プロセッサ22によってさらに処理して操作コンソール12へ伝送し、表示器16に表示してもよい。
【0019】
PROPELLERに基づく取得に関して本発明を説明するが、本発明は他の撮像手法にも応用可能であり得るものと思量される。この点で、走査時間を短縮し、SNR及び空間分解能を高めて、位相エイリアシングを低減するのに有利な本発明は、PROPELLER以外の多くの撮像手法にも応用可能であり得る。また、本発明が、分割ブレード式PROPELLER及びTURBOPROPのようなPROPELLERの変形にも応用可能であり得ることが認められよう。
【0020】
図2について説明する。同図には、PROPELLERパルス・シーケンス70の一部が示されている。パルス・シーケンス70は、図示の例では、関心領域から12本のスピン・エコー72を取得するように設計されている。これらのスピン・エコーは全て単一の軸、例えばGxに対して収集される。各々のスピン・エコー72は、RF再収束パルス74に続いて周波数エンコード・パルス76の間に取得され、これら一連のパルスは、定常状態の条件で印加されている。このスピン・エコー・データを用いてk空間を充填し、これを図3に模式的に示している。パルス・シーケンスはk空間が充填されるまで繰り返されるため、k空間の中央領域では過剰サンプリングが生ずる。
【0021】
図3は、図2に関して説明したPROPELLERパルス・シーケンスの反復印加の結果として取得されたMRデータで充填されたk空間78を模式的に示す。PROPELLERでは、取得される各々のエコーはk空間76の単一の線80に対応する。このようなものとして、12本のスピン・エコー・データ取得では、k空間の各々のブレード82が12本のデータの線を含む。PROPELLERに基づく撮像は、各々のエコー鎖でのk空間データのブレードの回転を具現化している。この点で、k空間のブレードは、k空間が充填されるまで各々のエコー鎖取得によってk空間の中心88の周りで漸進的に回転される。
【0022】
図3について説明したように、k空間78はPROPELLER取得を用いて充填される。この取得を通じて、k空間の中央領域を通って延在する所与のブレード全ての位相エンコード位置は個々にサンプリングされる。すなわち、k空間の各々の縦列が位相エンコード位置に対応し、各々の横列が周波数エンコード位置に対応する。従って、k空間の各々の点を位相エンコード位置及び周波数エンコード位置によって識別することができる。位相エンコード位置(又はk空間内の縦列)の数は、1本のエコーのサンプリング中に印加される位相エンコード勾配の数の関数である。位相エンコード位置の数が増すにつれて、必要な位相エンコード・ステップの数も増す。このようなものとして、位相エンコード位置の数が増加すると、走査時間も必然的に増加する。位相エンコード位置の数が減少すると走査時間は短縮するが、信号及び分解能の損失を伴う。従って、一実施形態では、本発明は、k空間のブレードのホモダイン処理を含んでいる。この処理を図4に示す。説明の目的でk空間の単一のブレードについて説明するが、当業者は、k空間の各々の取得されたブレードに対して本書で説明するホモダイン処理手法を応用し得ることを認められよう。
【0023】
k空間ブレード90は、k空間の中央領域91又は原点を通って延在しており、ブレード90の連続的な回転時に中央領域91は過剰サンプリングされる。k空間ブレード90は好ましくは、所定の数のk空間データ線92によって画定され、各々の線92がサンプリング済み(実線)又は未サンプリング(破線)のいずれかとして特徴付けられる。さらに、図4には、k空間ブレード90の全てに満たない位相エンコード位置(ビュー)が、サンプリング済みのMRデータによって充填されていることが示されている。全てに満たない位相エンコード位置がサンプリングされるので、位相エンコード・ステップの数を減少させることができる。代替的には、各々のk空間データ線の部分的充填の後に、位相エンコード・ステップの総数が、ホモダイン処理を行なっていない取得のステップ数と等しくなるようにして、位相エンコード位置(従って位相エンコード・ステップ)の数を増加させることもできる。後に改めて説明するが、未サンプリングの位相エンコード位置は、サンプリング済みの位相エンコード位置に基づくデータで充填される。
【0024】
多くの部分的フーリエ再構成手法を用いて未サンプリングの位相エンコード位置のデータを決定することができるが、好ましい一手法はホモダイン処理である。ホモダイン処理は、エルミート共役対称性のための一対のフィルタを用いて、サンプリング済みの位相エンコード位置のデータに基づいて未サンプリングの位相エンコード位置のデータを決定する。未サンプリングの位相エンコード位置のデータを提供することに加え、ホモダイン処理はまた、サンプリングされたデータに含まれて共鳴周波数、流れ及び運動の変動にしばしば帰属可能な位相の誤差又はばらつきを補正する。ホモダイン処理又は他の部分的フーリエ再構成手法では、他の場合であれば要求されるような位相エンコード・ステップを必要とせずに、未サンプリングの位相エンコード位置(図4では「U」として示す)を「実効的に」サンプリングすることができる。加えて、1本のエコーをサンプリングするのに必要な時間(TE)が実効的に短縮され、これによっても走査時間を短縮して被検体スループットを増大させることができる。
【0025】
好ましくは、サンプリング済みの位相エンコード位置は、k空間の横列1列の二分の一よりも僅かに多い部分を含む。この点で、k空間データ線の中心の周りの位相エンコード位置について空間周波数データが取得される。このようにして、位相エンコード・ステップの数を二分の一よりも僅かに少ない分だけ減少し得るものと思量される。一方、印加される位相エンコード勾配の数を減少させずに定義し直して、殆ど全てのサンプリング済みの位相エンコード位置がk空間データ線の二分の一よりも僅かに多い部分に配置されるようにする。結果として、走査時間は短縮せず、信号対雑音が増大して空間分解能が高まる。事実上、位相エンコード・ステップの数を倍増せずに位相エンコード位置の数を倍増することができる。実際に、本発明によって、位相エンコード位置(位相FOV)の数の倍増を上回ることが可能になるものと思量される。
【0026】
図5には、PROPELLER取得によってMRデータを取得して、半径方向リプル・アーティファクトを実質的に含まない画像を再構成する手法の各ステップが掲げられている。工程94(コンピュータで実行可能な言語で具現化されており、1台又は複数のコンピュータによって実行され得る)はステップ96で開始して、PROPELLER取得の設定を行なう。ステップ96では、PROPELLER取得のパラメータを、所定数の利用者入力から読み込むか又は自動的に決定する。これらのパラメータとしては、繰り返し時間(TR)、視野(FOV)の大きさ、及びスライス配向、例えばアキシャル、頭部、コロナル又は斜方等の諸設定がある。上述のように、本発明は特に、コロナル、サジタル又は斜方PROPELLER走査で取得されたMRデータから再構成される画像での半径方向リプル(位相エイリアシング)アーティファクトを低減することに関する。
【0027】
PROPELLER走査のパラメータを入力し、設定し、また他の場合には決定した後に、ステップ98においてMRデータを取得する。エンコードされて励起されたエコーをサンプリングして用いて、互いから回転されておりk空間の中央領域を通って延在するk空間のブレードを部分的に充填する。次いで、ブレード・ホモダイン処理ステップ900を実行して、図4に関して説明したように、サンプリング済みの位相エンコード位置から、未サンプリングの位相エンコード位置のデータを決定する。ブレード・ホモダイン処理100の後に、ステップ102において画像空間位相補正を行なって、画像空間データの位相誤差を補正する。位相誤差補正102の後に、ステップ104において逆高速フーリエ変換(FFT)を用いて、位相を補正した画像空間を下降(ダウン)サンプリングする。ステップ104において下降サンプリングが実行されて、FOVの位相エンコード方向での中心部分のみを記述するk空間のブレードを決定する。このステップは、中心部分以外からのデータが画像再構成時に除外されるように、FOVの位相エンコード方向での中心部分に対応するk空間のブレードを切り取ることにより達成される。このように、ブレード画像空間を切り取った後に、得られたブレード画像に逆FFTを施してk空間ブレードを復元する。次いで、このk空間ブレードをPROPELLER再構成工程の残りの部分に通すと、工程が実行されて全てのk空間ブレードからの画像を再構成する。
【0028】
明確に述べると、下降サンプリング104の後に、所定数のPROPELLER再構成ステップを実行して運動を補正する。これらの運動補正ステップは、回転補正106、並進補正108、相関加重110、及び最後に、画像再構成112を含んでいる。画像再構成112の後に、ステップ114において工程は終了する。以上の各ステップの結果として、得られた再構成画像は半径方向リプル(位相エイリアシング)アーティファクトを実質的に含まない。
【0029】
本発明の一つの利点は、ブレード・ホモダイン・ステップ及び下降サンプリング・ステップを従来のPROPELLER再構成手法にシームレスに挿入し、しかもSNR及び空間分解能を高めて、各々の半径方向PROPELLERブレードに沿った位相エイリアシングを除去し得ることである。このように、典型的には位相FOVを超えて延在する解剖学的構造から画像に現われる半径方向リプル・アーティファクトが低減する。すなわち、本発明は、PROPELLERブレード同士の間の位相折り返しの組み合わせの結果として現われる得る位相エイリアシング・アーティファクトを低減する。
【0030】
図6及び図7では、2枚のブレード画像が、図4に関して上で述べたブレード・ホモダイン処理ステップを示している。図6は、k空間の半部で8枚のビュー及びk空間の残り半部で2枚のビューを示す10枚のビューでのブレード画像である。ホモダイン処理の後に、10枚のビューを、k空間の半部で8枚のビュー及びk空間の残り半部で8枚のビューを示す16枚のビューでのブレードへ変換する。ブレード・ホモダイン処理の結果として、6枚の追加のデータのビューが画像再構成に用いられ、これにより、データ取得時に6回分の追加で時間を費やす位相エンコード・ステップを行なわないでもSNR及び空間分解能が高まる。
【0031】
図8には、従来のPROPELLER取得を用いてFOVを超えて延在する部分を有する球形ファントムから再構成される画像を示す。図示のように、位相エンコード方向に沿ってエイリアシングが生じている。一方、図9では、同じ球形ファントムを本発明に従って撮像したときに、図8で優勢であった位相エイリアシング・アーティファクト又は半径方向リプル・アーティファクトが除去されている。この点で、対象がFOVを位相エンコード方向に超えて延在するにも拘わらず、位相エンコード方向には位相折り返しが生じない。尚、図8の画像は、PROPELLERに基づく取得を用いて、エコー鎖長さ(ETL)を24、full NEX、及び位相FOVを20cmとして撮像されたことを特記しておく。図9の画像は、PROPELLERを用いて、ETL=24、half NEX、及び位相FOVを40cmとして取得した。このように、図5に関して説明したホモダイン工程を用いて、FOVを位相エンコード方向に実効的に倍増させた。
【0032】
図10及び図11はさらに、本発明によって達成される利点を示す。明確に述べると、図10に示すように、FOVを位相エンコード方向に超えて延在する対象から取得される全てのブレードの従来のPROPELLER再構成は、画像にリプルを生ずる。これらのリプルは、位相折り返しエイリアシングの結果である。一方、図11は図10で撮像した同じ対象の画像であるが、本書で説明した改良型PROPELLER取得を用いており、位相エイリアシング・リプルが存在しない。図11の画像は、図10の画像よりも遥かに一様であり、従って診断的価値が高い。
【0033】
図12及び図13はさらに、本発明によって達成される利点を示す。明確に述べると、図12に示すように、サジタル平面に沿って得られた脊椎画像の従来のT2−PROPELLER再構成は、図面では脊柱領域の縞として現われている半径方向リプル・アーティファクトを生じ得る。一方、本書で開示している改良型PROPELLER取得は、本発明によれば、図13に示すようにこれらの半径方向リプル・アーティファクトを低減する。明確に述べると、図12で見られる「縞」が図13には存在しない。
【0034】
従って、MRI装置が、磁石のボアの周りに配置されており分極磁場を印加する複数の勾配コイルを含んでいる。RF送受信器システム及びRFスイッチが、パルス・モジュールによって制御されて、RFコイル・アセンブリへ及びRFコイル・アセンブリからRF信号を送受してMR画像を取得する。MRI装置はまた、FOVからコロナル・スライス配向及びサジタル・スライス配向のいずれかに沿ってMRデータのブレードを取得し、隣り合ったブレードが互いから回転されるようにMRデータのブレードでk空間を充填するようにプログラムされているコンピュータを含んでいる。コンピュータはまた、k空間データを画像空間へ変換して、画像空間から半径方向リプル・アーティファクトを実質的に含まない画像を再構成するようにプログラムされている。
【0035】
また、MRデータ取得の方法が開示されており、この方法は、FOVからのMRデータ取得のためのサンプリングを行なうようにエコー鎖を励起するステップと、k空間の中央領域を通って延在する複数のk空間データ線を有するk空間ブレードを部分的に充填するようにエコー鎖をサンプリングするステップとを含んでいる。この方法はさらに、部分的に充填されたk空間ブレードの残りを、エコー鎖からサンプリングされたデータから決定されるデータで充填するステップを含んでいる。励起するステップ、サンプリングするステップ、及び充填するステップは、複数のk空間ブレードがk空間において充填されるまで繰り返されて、各々のk空間ブレードがk空間の中央領域を通って延在し、且つ隣り合ったk空間ブレードがk空間の中央領域の周りで互いから回転されるようにk空間を充填する。
【0036】
本発明はまた、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されたコンピュータ・プログラムとして具現化され、このコンピュータ・プログラムは、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、FOVを超えて延在する部分を有する対象からk空間の複数のブレードを取得して、これらのk空間のブレードを撮像する、ことを行なわせる命令を有する。コンピュータはさらに、FOVの位相エンコード方向での中心部分を記述するブレード画像を単離して、FOVの位相エンコード方向での中心部分の外部に位置する位相エンコード位置からデータを除去するようにブレード画像を切り取る、ことを行なう。命令はまた、コンピュータに、切り取られたブレード画像をk空間の切り取られたブレードへ変換して、単離されたブレード画像に対応するk空間のブレードをk空間の切り取られたブレードで置き換える、ことを行なわせる。
【0037】
本発明は好適実施形態について説明されており、明示的に記載した以外の均等構成、代替構成及び改変が可能であり特許請求の範囲内にあることが認められよう。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明と共に用いられるMRイメージング・システムの模式的ブロック図である。
【図2】本発明で応用可能なPROPELLERパルス・シーケンスの例の一部を示す図である。
【図3】図2のPROPELLERパルス・シーケンスの例を用いて取得されたMRデータで充填されるk空間の模式図である。
【図4】本発明のもう一つの観点に従ってホモダイン処理を用いて充填されるk空間の単一のブレードの模式図である。
【図5】本発明のもう一つの観点によるPROPELLER再構成の各ステップを示す流れ図である。
【図6】k空間の部分的に充填されたブレードを示す画像である。
【図7】元々部分的に充填されており、続いてホモダイン処理を用いて充填されたk空間のブレードを示す画像である。
【図8】位相FOVを超えて延在する部分を有する球形ファントムから従来のPROPELLER取得を用いて再構成される単一のブレード画像である。
【図9】本発明の一観点に従って位相エイリアシングを低減した図8で撮像された球形ファントムから再構成される単一のブレード画像である。
【図10】様々な配向で取得されたデータのブレードから従来のPROPELLER再構成手法を用いて再構成されたファントムの画像である。
【図11】図10で撮像されたファントムの画像であるが、本発明の一観点による改良型PROPELLER再構成手法によって様々な配向で取得されたデータのブレードからの画像である。
【図12】従来のPROPELLER取得を用いてサジタル平面に沿って得られた脊椎画像である。
【図13】本発明の一観点による改良型PROPELLER取得を用いてやはりサジタル平面に沿って得られた脊椎画像であって、図12の画像に見られる半径方向リプル(位相エイリアシング)アーティファクトの存在しない画像である。
【符号の説明】
【0039】
10 MRイメージング・システム
12 操作コンソール
13 入力装置
14 制御パネル
16 表示画面
18 リンク
20 コンピュータ・システム
20a、32a バックプレイン
22 画像プロセッサ・モジュール
24、36 CPUモジュール
26、66 メモリ・モジュール
28 ディスク記憶装置
30 テープ・ドライブ
32 システム制御
34 高速シリアル・リンク
38 パルス発生器モジュール
40 シリアル・リンク
42 勾配増幅器
44 生理学的取得制御器
46 走査室インタフェイス回路
48 患者配置システム
50 勾配コイル・アセンブリ
52 磁石アセンブリ
54 分極用磁石
56 全身型RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 送受信(T/R)スイッチ
64 前置増幅器
68 アレイ・プロセッサ
70 PROPELLERパルス・シーケンス
72 スピン・エコー
74 RF再収束パルス
76 周波数エンコード・パルス
78 k空間
80 データ線
88 k空間の中心
90 k空間ブレード
91 中央領域
92 k空間データ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石(54)のボアの周りに配置されており分極磁場を印加する複数の勾配コイル(50)と、無線周波数(RF)コイル・アセンブリ(56)へ無線周波数信号を送信して磁気共鳴画像を取得するようにパルス・モジュール(38)により制御される無線周波数送受信器システム(58)及び無線周波数スイッチ(62)と、
任意のスライス配向に沿って視野(FOV)から磁気共鳴データのブレード(82、90)を取得し、
隣り合ったブレード(82、90)が互いから回転するようにして磁気共鳴データの前記ブレード(82、90)でk空間(78)を充填し、
前記k空間(78)を画像空間へ変換して、
前記画像空間から半径方向リプル・アーティファクトを実質的に含まない画像を再構成する
ようにプログラムされているコンピュータ(20)と、
を備えた磁気共鳴(MR)撮像装置。
【請求項2】
前記コンピュータ(20)はさらに、各々のブレード(82、90)がk空間(78)の中央領域(88、91)を通って延在するように磁気共鳴データの前記ブレード(82、90)を配向させるようにプログラムされている、請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項3】
前記コンピュータ(20)はさらに、位相エイリアシング・アーティファクトを実質的に含まない前記画像を再構成するようにプログラムされている、請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項4】
前記コンピュータ(20)はさらに、磁気共鳴データのブレード(82、90)を部分的に取得するようにエコーを部分的にサンプリングして、該エコーから部分的に取得されたデータから磁気共鳴データの前記ブレード(82、90)の残りを決定するようにプログラムされている、請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項5】
前記コンピュータ(20)はさらに、
磁気共鳴データの各々のブレード(82、90)についてブレード画像を形成し(102)、
前記視野の位相エンコード方向での中央領域に対応する前記ブレード画像を単離し(104)、
前記視野の前記位相エンコード方向での前記中央領域の外部から位相エンコード・データを除去するように前記ブレード画像を切り取り(104)、
前記切り取られたブレード画像を磁気共鳴データの切り取られたブレード(82、90)へ変換し(14)、
前記単離したブレード画像を形成した元となった磁気共鳴データの前記ブレード(82、90)を磁気共鳴データの前記切り取られたブレード(82、90)で置き換えて、
磁気共鳴データの前記切り取られたブレード(82、90)を画像空間へ変換する(106〜112)
ようにプログラムされている、請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項6】
前記コンピュータ(20)はさらに、前記切り取られたブレード画像を磁気共鳴データの前記切り取られたブレード(82、90)へ変換する逆高速フーリエ変換(FFT)を施す(104)ようにプログラムされている、請求項5に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項7】
前記コンピュータ(20)はさらに、画像再構成の前に運動アーティファクトを補正する(102)ようにプログラムされている、請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項8】
前記コンピュータ(20)はさらに、前記視野の外部に少なくとも部分的に延在する任意の解剖学的関心対象から磁気共鳴データを取得する(98)ようにプログラムされている、請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項9】
前記コンピュータ(20)はさらに、PROPELLER取得により磁気共鳴データの前記ブレード(82、90)を取得するようにプログラムされている、請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−223864(P2006−223864A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36016(P2006−36016)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】