説明

半径方向供給式の高温軸流蒸気タービン

【課題】供給される蒸気が第1の翼列を通過し熱エネルギが取り除かれる前の領域の、蒸気タービンのロータへの熱応力という問題を解決することである。
【解決手段】ロータ軸線回りを周方向に延在し、低温蒸気(45)を周方向に分割する低温蒸気を受ける低温流入螺旋部(46)を備え、低温蒸気のための低温流入通路(40)を備え、低温流入通路は流入端部(31)で低温流入螺旋部の下流側の端部に接続され、高温流入通路(30)から軸線方向にずらされ、高温流入通路は低温流入通路と静翼・静翼列(25)との間に設けられ、低温流入通路は高温流入通路に流出端部(42)を有し、流出端部はロータ(5)を囲み、低温流入通路の流出端部と動翼・静翼列との間の周面(6)上に低温蒸気の境界層の形成に適し、低温流入通路の流出端部と動翼・静翼列との間のロータ周面は、境界層を促進し維持することに適しているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半径方向供給式の高温軸流蒸気タービンに関する。特に開示されている構成は、高温蒸気によるロータの熱応力に関する。
【0002】
本願の明細書において、蒸気及び蒸気タービンとの関係において「高温」とは一貫して650℃以上の温度として規定されている。
【背景技術】
【0003】
蒸気タービン装置の出力を改良する絶え間ない努力において、タービンを高い温度において運転するということは望ましいことがある。しかし従来の材料は650℃より上、特に700℃より上では劣悪な特性を示している。この理由から、タービン部分、例えばロータ、ケーシング、翼は一般的に高価なエキゾチック合金(exotic alloy)から製造されていた。このような合金の例が、特許文献1に記載されている。コストの理由から、幾つかの構成要素を少なくとも部分的に従来の材料から製造することが有利であることがあり、この利点は、例えばロータといった大きな構成要素、及び翼といった複雑な構成要素においては極めて重要である。
【0004】
構成要素部材を高い温度に曝すことを最小限に抑えることが1つの手段である。特許文献2には、例えば第1の段において大きな温度降下がもたらされ、第1の段だけが及びこの段の上流側の全ロータ構成要素が高温に曝されている配置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公告第20040253102号明細書
【特許文献2】米国特許公告第20070207032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高温タービン領域に冷却媒体を提供する別の手段がある。しかし、例えばロータといった大きなタービン構成要素に十分な冷却を提供するとことは技術的に困難なことがある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、1つの態様において、供給される蒸気が第1の翼列を通過し熱エネルギが取り除かれる前の領域の、蒸気タービンのロータにおける熱応力という問題を解決する特徴を備えた半径方向供給式の高温軸流蒸気タービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、半径方向供給式の高温軸流蒸気タービンであって、軸流蒸気タービンは、回動軸線と周面とを備えた回転可能なロータを備え、ケーシングを備え、ケーシングはロータとケーシングとの間において環状室が形成されているようにロータを囲み、軸線方向に分配された動翼・静翼列を備え、動翼・静翼列は環状室においてロータに設けられており、高温蒸気のための高温流入通路を備え、高温流入通路はロータ軸線を中心に周方向に延在しており、かつ、ロータを囲む半径方向の流入端部を有し、ロータを囲み、かつ、動翼・静翼列の直ぐ上流側の環状室に軸線方向で接続されている流出端部を有している、半径方向供給式の高温軸流蒸気タービンにおいて、ロータ軸線を中心に周方向に延在していて、低温蒸気を周方向に分配するように形成されている、低温蒸気を受容する低温流入螺旋部を備え、低温蒸気のための低温流入通路を備え、低温流入通路は流入端部において低温流入螺旋部の下流側の端部に接続されており、かつ、高温流入通路から軸線方向にずらされており、高温流入通路は低温流入通路と静翼・静翼列との間に設けられており、低温流入通路は、高温流入通路に流出端部を有しており、流出端部はロータを囲み、かつ、低温流入通路の流出端部と動翼・静翼列との間における周面上に低温蒸気の境界層を形成することに適しており、低温流入通路の流出端部と動翼・静翼列との間のロータ周面は、境界層を促進しかつ維持することに適していることによって解決される。
【0009】
有利な構成が従属請求項に記載されている。
【0010】
好ましくは、低温流入通路の流入端部は半径方向の流入端部である。
【0011】
好ましくは、低温流入通路は、半径方向の区分と、軸線方向の区分と、軸線方向の流出端部とを有している。
【0012】
好ましくは、低温流入通路の流出端部は高温流入通路に対して平行に設けられている。
【0013】
好ましくは、流出端部は、ほぼ平行でかつ凸部がなく、低温流入通路内に延在している真っ直ぐな複数の側壁を有していることにより、低温流入通路の流出端部と動翼・静翼列との間に低温蒸気の境界層を形成することに適している。
【0014】
好ましくは、ロータ周面はエッジを有していない滑らかな表面から成っていることにより、境界層の形成を促進することに適している。
【0015】
好ましくは、蒸気タービンは高温流入螺旋部を有しており、高温流入螺旋部はロータ軸線を中心に周方向に延在しており、かつ、高温流入通路の流入端部に接続されている下流側の端部を有している高温流入螺旋部を備えている。
【0016】
好ましくは、高温流入管を有しており、高温流入管は高温流入螺旋部に接続されており、連続して高温流入管と、高温流入螺旋部と、高温流入通路とを通る動翼・静翼列への高温蒸気の貫流を可能にし、低温流入管を有しており、低温流入管は低温流入螺旋部に接続されており、連続して低温流入管と、低温流入螺旋部と、低温流入通路とを通る高温流入通路への低温蒸気の貫流を可能にする。
【0017】
好ましくは、低温流入管は高温流入管に対して平行である。
【0018】
好ましくは、低温流入管は高温流入管から少なくとも90°だけ半径方向に曲げられている。
【0019】
好ましくは、蒸気タービンは複数の高温流入管と、複数の低温流入管とを有している。
【0020】
さらに、上記目標は、上記蒸気タービンを運転する方法において、低温流入通路を通る低温蒸気と、高温流入通路を通る高温蒸気とを同時に導入し、低温蒸気の温度は高温蒸気の温度よりも小さいことにより達成される。
【0021】
好ましくは、高温蒸気の温度は650°よりも高く、低温蒸気の温度は650°よりも低い。
【0022】
好ましくは、高温蒸気の温度は700°よりも高く、低温蒸気の温度は600°よりも低い。
【発明の効果】
【0023】
1つの態様において、ロータと、ケーシングと、軸線方向にずらされている動翼・静翼列と、高温流入通路とを有している半径方向供給式の高温軸流蒸気タービンが提供される。ロータは回動可能であり、軸線方向に延在している表面を有している。環状室をロータとケーシングとの間に形成するためにロータをケーシングが取り囲む。環状室には動翼・静翼列が設けられている。高温蒸気を受容する高温流入通路は、ロータの一区分上で動翼・静翼列の直ぐ上流側に隣接している流出端部へ向かって延在している。高温流入通路の目的は、高温蒸気を動翼・静翼列に案内することである。さらに、蒸気タービンは低温流入通路を有している。低温流入通路は低温流入螺旋部の下流側の端部に接続しており、高温流入通路から軸線方向にずらされており、高温流入通路は低温流入通路よりも軸線方向において第1の翼の近くに配置されている。低温流入螺旋部は、高温蒸気よりも低温である低温蒸気を受容するために設計されている。低温流入通路は流入端部と流出端部とを有しており、ロータと高温流入通路の流出端部との間に形成されている。流出端部の領域において、低温流入通路はロータ周面に対して平行である。こうして、低温蒸気が低温流入通路の流出端部から高温流入通路を通って動翼・静翼列へと移動する間に、低温蒸気はロータ周面の一区分にわたって移動することができる。
【0024】
高温流入通路におけるロータ周面の一区分にわたって低温蒸気を供給することにより、ロータは高温蒸気温度に曝されておらず、したがって、高温性の低い材料からロータを製造することができるということを保証する。
【0025】
別の態様において、低温流入通路は半径方向において高温流入通路に対して平行であることによりコンパクトな構成が提供される。
【0026】
さらに別の態様において、蒸気タービンは周方向でロータ軸線を中心に延在している高温流入螺旋部を有している。高温流入螺旋部は高温流入通路の流入端部に接続している。
【0027】
さらに別の態様において、蒸気タービンはさらに高温流入管と低温流入管とを有している。高温流入管は高温流入螺旋部に接続されているので、連続的に高温流入管と、高温流入螺旋部と、高温流入通路とを通って動翼・静翼列へと向かう高温蒸気の貫流を可能にする。これに対して、低温流入管は低温流入螺旋部に接続されているので、連続的に低温流入管と、低温流入螺旋部と、低温流入通路とを通る低温蒸気の貫流を可能にする。1つの配置形式において、低温流入管は高温流入管に対して平行であり、別の配置形式においては、低温流入管は高温流入管から少なくとも90°だけ半径方向に曲げられている。さらに別の配置形式においては、低温流入管はコンパクトな構成を提供する適切な所定の角度下で配置されている。上記配置形式は軸線方向の蒸気タービンの長さ及び弁の設計に関する利点を提供する。
【0028】
さらに別の態様では、蒸気タービンは複数の高温流入管と複数の低温流入管とを有している。
【0029】
さらに別の態様は、先行技術の欠点を排除しかつ不足を補うか、又は少なくとも部分的に改良するか、又は択一的な有利な構成を提供する。
【0030】
本発明のさらに別の態様及び利点は、添付の図面に関連して、本発明の実施の形態を例示的に開示している以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】例示的な実施の形態の半径方向供給式の軸流蒸気タービンの断面図である。
【図2】別の例示的な実施の形態の半径方向供給式の軸流蒸気タービンの断面図である。
【図3】流入管の例示的な配置を示す、図1に示すIII−IIIにおける断面図である。
【図4】流入管の別の例示的な配置を示す、図1に示すIII−IIIにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
本発明の有利な実施の形態が図面に基づいて記載されており、同一又は類似の部材には同一又は類似の符号を一貫して使用している。以下、説明のために複数の具体的な構成を記す。これにより本発明が根本的に理解される。しかし、本発明は上記具体的な構成に限ることなくとも実施できる、ということは明らかである。
【0034】
本願において、「高温」及び「低温」の記載は相対的な関係を形成するものであって、特定の記述がない場合に何ら特定の温度又は特性を意味するものではない。したがって、そのような記述がない場合には高温蒸気35は、例えば低温蒸気45よりも高い温度を備えた蒸気のことである。したがって、蒸気に関して上記相対的な相違は、低温蒸気45が他の場合には高温蒸気35に曝されているような領域に導入される場合、冷却媒体の機能を発揮するということを意味する。
【0035】
図1,2には、半径方向に供給される軸流蒸気タービン1が記載されている。タービン1は軸線方向ADに延在している回転軸線を備えたロータ5を有している。ロータ5をケーシング10が取り囲む。ケーシング10は囲いを提供するために形成されている。囲い内においては、混在した動翼・静翼列25の軸線方向の列が配置されている。さらに、タービンはロータ軸線を中心とした周方向に延在していて、高温蒸気35を動翼・静翼列25に案内する高温流入通路30に接続されている高温流入螺旋部36を有している。
【0036】
高温流入螺旋部36は高温蒸気35を周方向に、高温流入螺旋部36の下流側の端部に設けられている高温流入通路30の半径方向の入口31に向かって分配する。さらに高温流入通路30はロータ5を取り囲むので、高温蒸気35の周方向における均等な分配を保証する。高温流入通路30への半径方向の進入後に、高温蒸気35は高温流入通路30を通って軸線方向の流出端部32にさらに案内される。流出端部32は動翼・静翼列25の直ぐ上流側に隣接して終わっており、高温蒸気35は高温流入通路30から直接動翼・静翼列25内に流入する。
【0037】
さらに、図1,2の例示的な実施の形態は、低温蒸気45のための低温流入螺旋部46を有している。低温流入螺旋部46は同様にロータ軸線を中心に周方向に延在しており、高温流入螺旋部36と同心的であるが、高温流入螺旋部36の軸線方向上流側にずらされている。低温流入螺旋部46の下流側の端部は、低温流入通路40の流入端部41に接続されている。低温流入通路40は、低温蒸気45を低温流入螺旋部46から流出端部32を通って高温流入通路30に案内するために構成されている。例示の実施の形態においては、流入端部41は半径方向の流入端部である。ロータ5の包囲により、低温流入通路40は、低温蒸気45を周方向において高温流入通路30内に提供するように構成されている。低温流入螺旋部46のように、低温流入通路40は高温流入通路30から軸線方向上流側にずらされている。図1に示したように、このことは例示の実施の形態において、高温流入通路30が低温流入通路40よりも動翼・静翼列25の近くに配置されていることに繋がる。他の実施の形態において、さらに低温流入通路40は、図1に記載されているように、ロータ5のピストン領域8と高温流入通路30との間に配置されている。
【0038】
低温流入螺旋部46及び低温流入通路40に対する、高温流入螺旋部36及び高温流入通路30の相対的な配置は、図1,2に記載されている実施の形態において、蒸気タービン1の長さが最小限にされているということを保証する。低温流入螺旋部46を有するさらなる利点は、周方向における低温蒸気45の均一な分配である。低温流入螺旋部46が周方向における均一な分配をもたらす。これにより、低温蒸気45を最適に利用することができる。
【0039】
図1,2に記載されているように流入螺旋部36,46は、ロータ軸線を中心に周方向に流れを別個の入口により均一に分散するための従来の方法を使って形成されている限りは、典型的な蒸気タービン流入螺旋部である。このことは、図3,4に記載されているように、流入螺旋部36,46が、有していてよい1つの別個の入口又は各別個の入口から離れて延在して、流れ方向に螺旋部の横断面が減少することにより達成される。
【0040】
低温流入通路40の目的は、低温流入通路40の出口と動翼・静翼列25との間においてロータ周面にわたって低温蒸気45の境界層を形成することである。このことは、ロータ区分が上記領域において高温蒸気35に曝されておらず、したがって、ロータ区分が低い耐熱性を持った材料から製造することができる、ということを保証する。
【0041】
適切な境界層を提供するために、低温蒸気45をロータ周面6上に十分に供給する必要がある。このことは低温流入通路40の適切な設計を必要とする。低温流入通路40が極めて小さい場合、低温蒸気45の流量は、必要な境界層を形成するには十分ではない。低温流入通路40が極めて大きく設定されている場合には、タービン効率に不都合な影響を与える。1つの実施の形態において、従来の技術を使用した低温流入通路40は、低温流入通路40を通ってタービン供給量の全体の5〜12%が供給されるように寸法設定されている。タービンの構造及び設計に基づいて、他の流量の割合が最適度を提供してよい。しかし、いずれにしても低温蒸気45の最低限必要とされる流量を得るために、及び必要とされる流れ分配を保証するために、低温蒸気45は流入螺旋部から供給しなければならない。
【0042】
さらに重要な要因は、低温流入通路40の流出端部42の形状である。低温蒸気45をロータ5の全周面を巡って供給するためには、ロータ5を取り囲む他に、流出端部42が、低温蒸気45によってロータ5上に境界層が形成されることを保証するように形成されている。このことは、複数の従来の構成により達成することができる。このような構成のうちの1つが図1に記載されている。図1には、低温流入通路40が記載されている。低温流入通路40は低温流入通路40の流出端部42の構成及び配置により、ロータ周面6上に低温蒸気45の境界層を形成するように構成されている。つまり、真っ直ぐな面を有していて、別の実施の形態においてはロータ周面6に対して平行で、かつ、例えばシールエレメントのように凸部のない壁を有しているように流出端部42を形成する。ロータ周面6はさらに別の実施の形態において、例えばエッジを有していない滑らかな表面の形成により、境界層が得られるように形成されている。「滑らか」は上記関係においては絶対的ではなく、むしろ粗い表面歪みを有していない表面が想定されていると理解することができる。図1に記載されているような滑らかな表面は、乱流及び境界層分離を最小限に抑えるために、従来の方法を使用して形成されている滑らかな湾曲を含むこともできる。別の構成も可能である。例えば空気力学の分野においては、境界層形成を促進し維持するために、凹凸付けされた表面及びエッジを備えた表面も含む複数の他の表面構成が公知である。上記各従来の構成は、低温流入通路40の流出部と動翼・静翼列25との間においてロータ周面上の低温蒸気45の境界層を促進し維持するという基準を満たす限りは、本願発明の実施の形態に使用することもできる。
【0043】
図1,2に記載されているように、低温流入通路40の流出端部42を、軸線方向及び半径方向の種々異なる配向において配置することができる。図1に記載されている実施の形態において、低温流入通路40は流れを単に半径方向に導き、半径方向に配向されている流出端部42で終わるように構成されている。この配置はピストン領域8を備えた蒸気タービンにとっての典型であり、低温流入通路40の区分の鋳造を一部材において可能にする。つまり、低温流入通路40の流出端部42の端部は、ピストン領域8上において伸びていない。
【0044】
図2に記載されている例示の実施の形態において、低温流入通路40は半径方向から軸線方向へ低温蒸気45の流れ方向を変更するように構成されている。こうして、低温流入通路40は半径方向の区分48と軸線方向の区分49とを備えて構成されている。ロータ周面6上での境界層の形成に不都合な影響が及ばないように、低温流入通路40は滑らかな移行湾曲部を備えている。
【0045】
図1,2に記載の例示の実施の形態は、650℃よりも高い温度、例えば700℃を有する高温蒸気35と、650℃よりも低い温度、典型的には600℃の低温蒸気45とを用いて使用することに適している。低温蒸気45の温度は典型的には、コストに関する利点を与えるためにロータ5における非エキゾチック合金の使用が可能になるように選択される。
【0046】
図3,4に記載されているように例示の実施の形態においては、高温流入管37は高温流入螺旋部36に接続されている。こうして、高温蒸気35は連続して、高温流入管37と、高温流入螺旋部36と、高温流入通路30とを通って、動翼・静翼列25へと流れることができる。類似の配置において、低温流入管47は低温流入螺旋部46に接続されており、低温蒸気45を連続的に、低温流入管47と、低温流入螺旋部46と、低温流入通路40とを通って高温流入通路30へ流すことができる。
【0047】
図3,4に記載されている例示の実施の形態においては、複数の低温流入管と複数の高温流入管とが設けられており、これらの低温流入管47と高温流入管37とは、図4に記載されているように平行に配置することができ、これにより、軸線方向の最小のタービンの長さに必要な構成が達成される。
【0048】
図3に記載されている例示的な択一的な実施の形態においては、複数の低温流入管47は、複数の高温流入管37に対して半径方向に約90°の角度をもって配置されている。単に1つの高温流入管37と低温流入管47としか有していない、図示されていない実施の形態においては、流入管37,47は互いに半径方向に少なくとも90°の角度を形成する。上記構成は、一般的に蒸気タービンケーシング10の外側に取り付けられている、典型的な図示されていない流入管−弁装置のための付加的な空間を形成する。
【0049】
最も有利と見なされる例示の実施の形態を開示したが、本発明は別の特殊な形態において具体化することもできる、ということが当業者には認識される。単流蒸気タービンの例示的な実施の形態が示されたが、実施の形態を複流蒸気タービンにも使用することができる。したがって、目下開示した実施の形態は例示として見なされるのであって、減縮とは見なされない。
【符号の説明】
【0050】
1 半径方向供給式の軸流蒸気タービン、 5 ロータ、 6 周面、 8 ピストン領域、 10 ケーシング、 25 動翼・静翼列、 30 高温流入通路、 31 流入端部、 32 流出端部、 35 高温蒸気、 36 高温流入螺旋部、 37 高温流入管、 40 低温流入通路、 41 流入端部、 42 流出端部、 45 低温蒸気、 46 低温流入螺旋部、 47 低温流入管、 48 半径方向の区分、 49 軸線方向の区分、 AD 軸線方向、 RD 半径方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向供給式の高温軸流蒸気タービン(1)であって、該軸流蒸気タービン(1)は、
回動軸線と周面(6)とを備えた回転可能なロータ(5)を備え、
ケーシング(10)を備え、該ケーシング(10)はロータ(5)とケーシング(10)との間において環状室が形成されているようにロータ(5)を囲み、
軸線方向に分配された動翼・静翼列(25)を備え、該動翼・静翼列(25)は前記環状室においてロータ(5)に設けられており、
高温蒸気(35)のための高温流入通路(30)を備え、該高温流入通路(30)はロータ軸線を中心に周方向に延在しており、かつ、
ロータ(5)を囲む半径方向の流入端部(31)を有し、
ロータ(5)を囲み、かつ、動翼・静翼列(25)の直ぐ上流側の前記環状室に軸線方向で接続されている流出端部(32)を有している、
半径方向供給式の高温軸流蒸気タービンにおいて、
前記ロータ軸線を中心に周方向に延在していて、低温蒸気(45)を周方向に分配するように形成されている、低温蒸気(45)を受容する低温流入螺旋部(46)を備え、
低温蒸気(45)のための低温流入通路(40)を備え、該低温流入通路(40)は流入端部(41)において低温流入螺旋部(46)の下流側の端部に接続されており、かつ、高温流入通路(30)から軸線方向にずらされており、高温流入通路(30)は低温流入通路(40)と静翼・静翼列(25)との間に設けられており、
低温流入通路(40)は、
高温流入通路(30)に流出端部(42)を有しており、該流出端部(42)はロータ(5)を囲み、かつ、低温流入通路(40)の流出端部(42)と動翼・静翼列(25)との間における周面(6)上に低温蒸気(45)の境界層を形成することに適しており、
前記低温流入通路の流出端部(42)と動翼・静翼列(25)との間のロータ周面(6)は、前記境界層を促進しかつ維持することに適していることを特徴とする、半径方向供給式の高温軸流蒸気タービン。
【請求項2】
低温流入通路(40)の流入端部(41)は半径方向の流入端部であることを特徴とする、請求項1記載の蒸気タービン。
【請求項3】
低温流入通路(40)は、半径方向の区分(48)と、軸線方向の区分(49)と、軸線方向の流出端部(42)とを有している、請求項1又は2記載の蒸気タービン。
【請求項4】
低温流入通路(40)の流出端部(42)は高温流入通路(30)に対して平行に設けられていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載の蒸気タービン。
【請求項5】
流出端部(42)は、ほぼ平行でかつ凸部がなく、低温流入通路(40)内に延在している真っ直ぐな複数の側壁を有していることにより、低温流入通路(40)の流出端部(42)と動翼・静翼列(25)との間に低温蒸気(45)の前記境界層を形成することに適していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項記載の蒸気タービン。
【請求項6】
ロータ周面(6)はエッジを有していない滑らかな表面から成っていることにより、前記境界層の形成を促進することに適していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載の蒸気タービン。
【請求項7】
蒸気タービン(1)は高温流入螺旋部(36)を有しており、該高温流入螺旋部(36)は前記ロータ軸線を中心に周方向に延在しており、かつ、高温流入通路(30)の流入端部(31)に接続されている下流側の端部を有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項記載の蒸気タービン。
【請求項8】
高温流入管(37)を有しており、該高温流入管(37)は高温流入螺旋部(36)に接続されており、連続して高温流入管(37)と、高温流入螺旋部(36)と、高温流入通路(30)とを通る動翼・静翼列(25)への高温蒸気(35)の貫流を可能にし、
低温流入管(47)を有しており、該低温流入管(47)は低温流入螺旋部(46)に接続されており、連続して低温流入管(47)と、低温流入螺旋部(46)と、低温流入通路(40)とを通る高温流入通路(30)への低温蒸気(45)の貫流を可能にすることを特徴とする、請求項7記載の蒸気タービン。
【請求項9】
低温流入管(47)は高温流入管(37)に対して平行に設けられていることを特徴とする、請求項8記載の蒸気タービン。
【請求項10】
低温流入管(47)は高温流入管(37)から少なくとも90°だけ半径方向に曲げられていることを特徴とする、請求項8記載の蒸気タービン。
【請求項11】
前記蒸気タービンは複数の高温流入管(37)と、複数の低温流入管(47)とを有していることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか一項記載の蒸気タービン。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項記載の蒸気タービンを運転する方法において、低温流入通路(40)を通る低温蒸気(45)と、高温流入通路(30)を通る高温蒸気(35)とを同時に導入し、低温蒸気(45)の温度は高温蒸気(35)の温度よりも低いことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項記載の蒸気タービンを運転する方法。
【請求項13】
高温蒸気(35)の温度は650°よりも高く、低温蒸気(45)の温度は650°よりも低いことを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
高温蒸気(35)の温度は700°よりも高く、低温蒸気(45)の温度は600°よりも低いことを特徴とする、請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80471(P2011−80471A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−229299(P2010−229299)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】