説明

半押し焼き積層食品の製造法

【課題】従来の押し焼きを施された積層食品と、押し焼きの施されていない積層食品の長所をあわせ持ち、押し焼きほど堅くなく、通常のものとは異なった食感で、折り込み油脂の良好な風味を持ち、見た目が新規な積層食品を提供する。
【解決手段】生地の層断面を上面に配置し焼成する積層食品に於いて、焼成中に焼成前の生地厚の100%〜20%になるまで押圧の後、焼成中に押圧を解くことを特徴とする積層食品の製造方法。なお、押圧天板と焼成天板の間に焼成前の生地厚の100%〜20%の厚さの治具を設置し、層状生地の上部に天板を置くことで生地に対して150〜10g重/cm2で押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半押し焼き積層食品及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層生地とは小麦粉主体のドウ生地で油脂を包み込み、圧延−折りたたみ操作を行って 得られるベーカリー食品用生地のことで、小麦粉層と油層が積層した生地のことであり、この生地を焼成した食品は、独特の食感と特異な外見をもたらし、広く一般に親しまれている。
一方、押し焼きとは、ベーカリー食品の焼成時に天板等を生地の上部に置き、その天板の圧力でベーカリー生地を押圧しながら焼成する方法である。
通常焼成中にオーブン等を空けたりすることはオーブン内の温度が下がる為、それと意図しない限りは行われないため、焼成前から焼成終了まで鉄板を乗せたまま、すなわち押圧を受けた状態になる。こうして焼成されたベーカリー食品は、膨化を押さえた堅い食感のものとなる。
【0003】
またこの押し焼きを積層パンに用いたものも検討されている。たとえば生地表面が部分的に押圧され焼成されたパイ菓子(引用文献1)があり、これはバラけが防止された、積層したパイ生地1枚で、菓子表面に焼色の違いと凹凸(浮き具合)の違いで自由にデザインされた模様を持つ珍しいパイ菓子である。またそのまま又は積層した折り込みペーストリー生地を、該折り込み生地を構成する層面を横切ってスライスし、次に層断面をさらに押圧することを特徴とするペーストリー生地(引用文献2)は外見上特異な層が露出するが、焼成中は首尾一貫一様に押圧を受け続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2003−52302号公報
【特許文献2】特開平2−128643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の積層生地を押し焼きした食品は堅い食感が長所でもあり、短所でもあった。また、押し焼きすると、積層を形成している折り込み油脂が流れだしてしまい、風味が著しく損なわれるという短所があった。
【0006】
そこで、本発明は従来の押し焼きを施された積層食品と押し焼きの施されていない積層食品の長所を併せ持ち、押し焼きほど堅くなく、通常のものとは異なった食感で、折り込み油脂の良好な風味を持ち、見た目が新規な積層食品を得ることを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、生地の層断面を上面に配置し焼成する積層食品に於いて、焼成中に焼成前の生地厚の100%〜20%になるまで押圧の後、焼成中に押圧を解くことにより、前記課題を解決できる積層食品の製造方法を得た。
【0008】
すなわち、この発明は、(1)としては、生地の層断面を上面に配置し焼成する積層食品に於いて、焼成中に焼成前の生地厚の100%〜20%になるまで押圧の後、焼成中に押圧を解くことを特徴とする積層食品の製造方法であり、(2)としては、押圧天板と焼成天板の間に焼成前の生地厚の100%〜20%の厚さの治具を設置する(1)記載の積層食品の製造方法であり、(3)としては、層状生地の上部に天板を置くことで生地に対して150〜10g重/cmで押圧する(1)乃至(2)記載の積層食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、積層食品の層面が上部に露出し、しかも押圧しない場合に比べ層がはがれにくく、完全に押圧した場合に比べ内部の油脂が搾り出されて必要以上に硬いものになりにくい積層食品を、複雑な作業や新規な装置を新たに付加することもなく、きわめて平易な方法で製造することが可能となる。このことは、市場からの要望にこたえるという意味においても極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の積層食品の無押圧焼成のイメージ図である。
【図2】従来の積層食品の完全押圧焼成のイメージ図である。
【図3】本願発明の半押圧焼成のイメージ図である。
【図4】実施例1のパイ生地の作製方法のイメージ図である。
【図5】実施例1の焼成後のパイの図面代用写真である。
【図6】比較例1の焼成後のパイの図面代用写真である。
【図7】比較例2の焼成後のパイの図面代用写真である。
【図8】実施例2の焼成後のパイの図面代用写真である。
【図9】実施例4の焼成後のパイの図面代用写真である。
【図10】実施例5の焼成後のパイの図面代用写真である。
【図11】実施例9の焼成後のパイの図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明における積層食品とは、デニッシュ、クロワッサンなどに代表されるペストリー生地や、折りパイ生地などに代表されるパイ生地などを指し、さらに具体的には、フラワーシートを折りこんだペストリーなど、小麦粉および水を必須成分とする混捏物の層面と、固状ないし塑状の油脂組成物やジャムやフラワーシートによって構成される層とが交互に層をなした生地を焼成し調製したものを指す。
この積層食品に用いる生地は特に限定はされないが、望ましくはイーストを含まないもののほうが好ましい。イーストを含むものは、小麦粉および水を必須成分とする混捏物の層面に対して垂直な方向以外にも膨化しやすいため本願発明の効果が得られにくい。
イーストを含まない積層食品の一例としてパイが挙げられる。
【0012】
この積層食品は、生地の層断面を上面に配置し焼成する必要がある。従って層面が鉛直方向な状態となる。
本発明の積層食品は、従来の積層生地の製造法を途中まで利用して作ることができる。一般的な積層生地の製造法としては、油脂組成物を小麦粉および水を必須成分とする混捏物の層に包み込んだ後、折り重ねて展延する事で得られ、その調製方法一般は公知であり、配合・折り畳み・展延・ねかし等の作業は公知方法に依拠して実施することができる。
本願の積層食品に用いる積層生地は、生地を折り重ねた状態で極端に薄く展延することをせず、目的とする積層食品の幅に準じた厚さに調節したのち、構成する層面を横切ってスライス、あるいはさらにスライスにより発生した面(層断面と称する)をさらに押圧することで得られる。
【0013】
小麦粉および水を必須成分とする混捏物とは小麦粉及び水に、必要に応じて砂糖、卵、食塩を適宜配合してなるものであり、以降これを捏粉層と称する。捏粉層における小麦粉は強力粉,薄力粉,中力粉から適時1種以上を選択・併用することも可能であり、それらの配合比によって積層食品の硬さが調製される。積層食品においてはこの捏粉層と、固状ないし塑状の油脂組成物によって構成される油性層とが交互に層をなしている。捏粉層を併せて含み、積層生地の折数は望ましくは120〜8000折、さらに望ましくは300〜4000折、さらに望ましくは600〜6000折である。折数が多いほど膨化は安定するが、層の目がつまり外見上の特徴が薄れる。少なすぎると層がはがれやすい。
調製された積層生地は層断面を上方に向け天板(焼成天板と称する)の上に置く。積層生地の層断面同士の距離を生地厚と称するが、焼成前の生地厚は望ましくは4〜50mm、さらに望ましくは6〜20mm、もっとも望ましくは8〜10mmである。上限の50mmを上回ると押圧の際に層が乱れやすくなる。4mmを下回ると均一な幅でスライスしにくくなり、また押圧開始から押圧が解かれる厚みまでの差が小さくなりがちとなり本願発明の効果を得られにくい。
【0014】
積層生地中の油脂組成物は焼成前の状態での生地全体重量に対し、12重量%〜60重量%が望ましく、さらに望ましくは18重量%〜54重量%、さらに望ましくは30重量%〜42重量%である。油脂量が少なくなると、油脂が生地に染み込み、積層を成さない生地になる。
油脂量が多いと積層生地がべたつき、成型が困難になる。また、多量の油脂が染み出し、積層された生地どうしが剥がれ易く、積層を維持できない。
【0015】
調製された積層生地は層断面を上方に向け天板(焼成天板と称する)の上に置く。このまま特に押圧をかけずに焼成をすると従来の焼成方法(無押圧焼成と称する)になり(図1)、単純に層状生地の上部に天板(押圧天板と称する)を置くと焼成中から焼成が終わるまでの間押圧がかかり続ける従来の押圧焼成方法(完全押圧焼成と称する)になる(図2)。
(押圧後の生地厚)/(焼成前の生地厚)×100を圧縮比率と称するが、焼成中にこの圧縮比率が100%〜20%になるまで押圧の後、焼成中に押圧を解かれることで本願発明の積層食品である積層生地焼成物が得られる。本願発明においてはこの焼成方法を半押圧焼成と称する。
積層生地は層面に垂直以外の方向にもわずかに膨張する場合があるが、圧縮比率が100%を超えると押圧の効果は得られない。
一方100%であった場合、焼成直後の食品がわずかに膨張している間にその膨張(縦横方向ともに)を抑え表面が焼成されている時間があるということであり、その間の効果が得られるが、望ましくは圧縮比率20〜100%、さらに望ましくは35〜90%、もっとも望ましくは40〜80%であることが好ましい。圧縮比率が小さいほど押圧を長い時間受けていることになる。一方で20%を下回るとあまりに長時間押圧を受けすぎてしまい押圧が解かれる前に積層食品の全体が焼き締まってしまい、押圧が解かれた後の膨張する余地が少なくなる。焼成前の生地圧の硬さにもよるが従来の最後まで押圧が解かれない焼成方法と変わらない結果になりかねない。
【0016】
上記押圧方法は特に特定はされないが、焼成中に押圧を解く必要があるので、従来のように単純に押圧天板を置くことでもかまわないが、釜内を監視するのは手間がかかるし、時間で押圧を解くために釜を開けると釜内の温度が下がり、焼成に影響を与えかねない。まして自動的に押圧を解く為の装置を考案すると設備にコストがかかりかねない。本願において途中で押圧を解く方法として、焼成前の生地厚の100%〜20%の厚さの治具を押圧天板と焼成天板の間に設置することが望ましい。
また、治具の水平方向の位置は、積層生地が最大まで膨化しても治具に突き当たらない程度には離れていることが望ましい。
【0017】
治具は押圧天板と焼成天板の間に設置してあれば特にどのような形状や材質のものでもかまわない。また固定されていてもいなくてもかまわない。押圧天板の下面に接着していてもよいし、焼成天板の上に固定せずにおいてあってもいい。
材質は具体的には割り箸や金属製の角柱形状のものなど、パン・パイ類の焼成温度域での使用に連続して耐えることができる材質のものが望ましい。
【0018】
積層生地は焼成中に層面に垂直な方向に主に膨張するため、本願のような層面が鉛直方向の層状生地は、水平方向の特定の方向に膨張しようとするが、押圧を受けた状態では、層状生地は押圧天板からの押圧の圧力により積層生地上面と押圧天板との接触面に、さらにはその押圧の圧力に生地自体の重量も加わった圧力により積層生地底面と焼成天板との接触面に、押圧のない状態の生地に比べるとはるかに大きい摩擦力が発生し、十分に膨張することなく押圧天板と焼成天板に表面が焼成されていくことになる(図3(ホ))。なお、完全押圧焼成の場合も原理は同じである(図2(ハ))。
【0019】
焼成中に押圧天板が従来の押し焼きと同様に押圧して生地厚が減少していくが、治具の厚みまで押圧されたたあと、その治具の厚み以下に天板は下がらず、生地に接触はしているが押圧はされない状態になる(図3(ヘ))。押圧が解けた状態になった積層生地は押圧天板・焼成天板との間の摩擦力が減り、抑制されていた膨張が始まるが表面が焼成されているため、膨張が緩やかでかつ層同士が剥がれにくくなる(図3(ト))。
一方、無押圧焼成の場合は、最初から押圧がないため積層生地は焼成天板との間の積層生地本体の自重由来の小さな摩擦力しか生じない為、(図1(イ))、水平方向に膨張を抑制せず、表面が焼き絞まっていない状態での膨張は油性層が流れ出してしまい捏粉層同士を結着しきれず剥がれたりしがちとなる。(図1(ロ))。
また、完全押圧の場合は上記押圧が焼成の最後まで持続するため、層状生地は水平方向に膨張し難い。その状態で押圧を受けると積層を形成している折り込み油脂が流れ出しやすく、特に層面が鉛直方向である為その流出が顕著となり、風味が著しく損なわれたり、油性層が流れ出してしまい捏粉層同士を結着しきれず剥がたりしがちとなる。
【0020】
押圧の圧力は(押圧天板の重量)/(押圧天板と生地の接触面積)で求められる。積層生地は最終的には扁平になるので押圧天板と生地の接触面積と焼成天板と生地の接触面積はほぼ等価となる。ただし、(押圧天板の重量)、(押圧天板と生地の接触面積)は共に焼成開始時点におけるものとする。
押圧天板の重量はその上に別の重量物が載っている場合は当然その重量も含んだ値になるが、荷重が偏らないよう均等に圧力がかかるようにすることが望ましく、また別の重量物が上部からの加熱の妨げにならないようにするほうが望ましい。また焼成天板上の生地の大きさや数により押圧天板との接触面積は変動するので、一定の押圧条件を得たい場合は生地の大きさや数、そして焼成天板の重さを調整することが望ましい。
押圧の圧力は望ましくは150〜10g重/cm2、さらに望ましくは100〜15g重/cm2、もっとも望ましくは50〜20g重/cm2で行うことが好ましい。
積層生地の硬さにもよるが、押圧の圧力が150g重/cm2を上回ると押圧の圧力が大きくなりすぎて焼成前に積層生地に押圧天板を乗せた時点で治具の厚みまで押圧されてしまいかねず、焼成前に生地をシーター(生地を展延する機械)などでその治具の厚みまで展延する場合と同様の、従来よりある単に薄平たく展延した積層生地と同じ結果になりかねない。
尚、本明細書では、治具等を用いて焼成中に圧力を抜く場合を「半押圧」、焼成終了時まで圧力をかけた場合を「完全押圧」と記載している。
またこちらも積層生地の硬さにもよるが、押圧の圧力が10g重/cm2を下回ると押圧の効果があらわれにくく、焼成終了までに押圧天板が治具の厚みまで押圧しきれず、従来の治具の無い押圧をする場合と同様の結果になりかねない。
【0021】
本願発明は焼成中に押圧がされている状態と、治具により押圧が妨げられている状態が双方とも存在することが必要であるため、焼成終了時点で押圧天板が治具の厚みの上にあると、当然従来型の押し焼きでしかなく本願発明の効果はえられない。
その点で焼成の最後まで押圧を受けた場合の層状生地厚(最大押圧生地厚と称す)より治具の厚みは大きい必要があり、望ましくは1.5倍、さらに望ましくは2倍以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の積層食品は、焼成中に圧縮比率が特定の値の範囲になるまで押圧の後、焼成中に押圧を解かれること以外には特に焼成条件に限定はされず、従来の積層食品の焼成条件を適宜利用して作ることができる。一例としては焼成温度170℃〜220℃ 焼成時間10分〜25分が良い。さらに望ましくは180℃〜200℃ 15分〜20分である。
以上により本発明の目的とする積層生地焼成物である積層食品を製造することができるが、得られた積層食品はさらにその商品価値を高めるべく、表面をチョコレートやグレーズでコーティングしたり、表面に粉末状のチーズやペースト状のバタークリーム等のトッピングを付着させたり、折り込み用油脂としてキャラメル、メープルシロップ、ミルク、練乳、チョコレート、アーモンド、レモン、はちみつ等の風味が着味された油脂を使用して積層食品の風味をバラエティ化したり、複数個の積層食品を上記トッピングで接着し大きさを工夫する等して最終製品として仕上げることもできる。
【0023】
[実施例1]
<パイ生地の作製方法>
強力粉40重量部、薄力粉60重量部、グラニュー糖5重量部、食塩0.8重量部、マーガリン5重量部、水55重量部のうち水以外の材料をミキサーに入れ、低速1分ミキシング。水を加え、さらに低速3分ミキシングする。冷蔵で2時間生地を休め、折り込み油脂を生地対比30%折り込む。3つ折り一回、4つ折り一回行い、冷蔵で2時間生地を休ませる。その後、4つ折り一回、3つ折り一回、4つ折り一回行う。折り数を576層とし、冷蔵で2時間生地を休ませた後、20mm圧に展延し(図4(チ))。生地厚8mmにスライスし、長さを50mm(図4(リ)にカットする。ミキサーは愛工舎製作所製「マイティ30」、シーターはSEEWER RONDO製「エコノム/エコマット」を使用した。)
<パイ生地焼成方法>
焼成天板の上にカットしたパイ生地の層断面が上になるように並べる(図4(ヌ)。焼成前の状態の生地厚は8mm、面積は20mm×50mm=1000mm(10cm)であった。焼成天板、押圧天板はフランス天板(スチール製)を使用した。その重量は一枚当たり2685gであり、焼成天板上の生地の数は10で生地当たりの圧力(以降「押圧圧力」と称する)は(押圧天板の重量)/(押圧天板と生地の接触面積)で求められ、この場合は26.9g/cmであった。
焼成天板の両端に金属製の角柱形状の治具(厚さ5mm)をおき、その上に押圧天板をおいて、焼成する。焼成条件は上火/下火=180℃/180℃ 20分。オーブンは七洋製作所製、「南蛮窯バッケン」を使用した。
焼成中に生地は治具の厚さである5mmまで押圧された状態で焼成を受けた後、押圧天板からの押圧は止まり、その後は天板に接触しているだけで押圧を受けない状態で焼成を受けた。
焼成後の生地厚は治具の厚さである5mmになり、その圧縮比率は62.5%で、層断面の層がきれいに見えた良好な半押し焼きパイが得られた。ただし、圧縮比率=(押圧後の生地厚)/(焼成前の生地厚)×100である。
【0024】
[比較例1]
焼成天板上に実施例1と同様に作製したパイ生地を層断面が上になるように並べ、治具をおかずに押圧天板を上から重ねて完全押圧にて焼成した。焼成後の生地厚は3mmまで押圧され、圧縮比率は37.5%となった。積層生地の層と層の間に隙間ができ、非常に剥がれ易く取り扱いにくいものとなった。食感としては硬く、風味は折り込み油脂が流れだしてしまったことにより、著しく損なわれている。
【0025】
[比較例2]
焼成天板上に実施例1と同様に作製したパイ生地を層断面が上になるように並べ、押圧天板を置かない以外は実施例1と同様の焼成条件で焼成した。押圧比率はパイ生地は層面に垂直な方向以外はほとんど膨張せず、100%であった。抑えるものがないため、積層生地の層と層の間に隙間ができ、非常に剥がれ易く取り扱いにくいものとなった。
【0026】
[比較例3]
焼成天板上に実施例1と同様に作製したパイ生地を、層面が水平(層断面が鉛直)になるように並べる以外は実施例1と同様の焼成条件で焼成した。焼成天板に対し、水平方向に積層されている状態である。焼成天板の両端に金属製の角柱形状のもの(厚さ5mm)をおき、その上に押圧天板をおいて、焼成したところ、層が見えず、食感としては非常に硬くなった。
【0027】
<表1>

【0028】
[実施例2]
実施例1のパイの折り数を3つ折り二回、4つ折り二回行い、折り数を144層とする以外は実施例1と同様の条件でパイ生地の作製と焼成をした。
【0029】
[実施例3]
実施例1のパイの折り数を3つ折り二回、4つ折り二回行い、2つ折りを一回行い、288層とする以外は実施例1と同様の条件でパイ生地の作製と焼成をした。
【0030】
[実施例4]
実施例1のパイの折り数を3つ折り二回、4つ折り4回行い、2304層とする以外は実施例1と同様の条件でパイ生地の作製と焼成をした。
【0031】
実施例2〜4まで良好な結果となった。積層生地は折数が少ない場合は膨張方向の辺の中央が膨らんだ形状になりがちであるが、折り数を増せばその傾向は抑えられ、安定した四角形になる。
【0032】
<表2>

【0033】
[実施例5]
実施例1のパイ生地を288層に折り込み後、20mm厚に展延し、生地厚10mmにスライス、長さ50mmにカットした。焼成天板の上にカットしたパイ生地の層断面が上になるように並べた。焼成天板の両端に置いた金属製の角柱形状のものが厚さ10mmのものを用いる以外は実施例1と同様の条件でパイ生地の焼成を行った。圧縮比率は100%であった。
【0034】
[実施例6]
生地厚12mmにスライスする以外は実施例5と同様の配合・条件でパイ生地を作製し、焼成した。圧縮比率は83.3%の状態であった。
【0035】
[実施例7]
実施例5と同様の配合・条件で作製したパイ生地を、焼成天板の両端に金属製の角柱形状のものが厚さ5mmのものを用いる以外は実施例5と同様の条件でパイ生地の焼成を行った。圧縮比率は50%の状態であった。
【0036】
[実施例8]
生地厚20mmにスライスする以外は実施例7と同様の配合・条件でパイ生地を作製し、押圧の圧力が89.5g/cmである以外は実施例7と同様の条件でパイ生地の焼成を行った。なお、押圧の圧力は焼成天板上に置かれた生地の数を10から3に減らすことで生地あたりの押圧圧力を大きくした。圧縮比率は25%の状態であった。
【0037】
<表3>

【0038】
実施例5〜9まで良好な結果となった。なお、押圧圧力を上げないと焼成中に目標とする圧縮比率にならないため実施例8は押圧圧力が高い状態とした。圧縮比率が低くなると完全押圧に近くなる。押圧圧力が高いと早々につぶれてしまうのでこれも完全押圧に近くなる。高押圧圧力で圧縮比率を低いものとするといよいよ完全押圧に近くなる。圧縮比率が高い状態であると無押圧に近いがそれでも一瞬押圧で焼き固められる効果はあった。
【0039】
[実施例9]
生地厚20mmにスライスする以外は実施例7と同様の配合・条件でパイ生地を作製し、焼成天板の両端に金属製の角柱形状のものが厚さ10mmのものを用いる以外は実施例7と同様の条件でパイ生地の焼成を行った。圧縮比率は実施例7と同じ50%の状態であったが、押圧圧力は実施例7の26.9cmに対して、実施例9は89.5cmであった。
【0040】
[実施例10]
押圧圧力が134.3cmであること以外は実施例9と同様の配合・条件でパイ生地を作製した。
【0041】
<表4>

【0042】
実施例9は実施例7と同じ圧縮比率ではあるが、押圧圧力が違うとため、押圧されていた時間が異なり、焼成の早期の段階で強く圧縮を受けていたため、食感がやや詰まったものとなったが、層断面は良好な結果となった。
実施例10は実施例9と押圧圧力が違うため、焼成の早期の段階でより強く圧縮を受けていた。食感が詰まったものとなったが、層断面は良好な結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地の層断面を上面に配置し焼成する積層食品に於いて、焼成中に焼成前の生地厚の100%〜20%になるまで押圧の後、焼成中に押圧を解くことを特徴とする積層食品の製造方法。
【請求項2】
押圧天板と焼成天板の間に焼成前の生地厚の100%〜20%の厚さの治具を設置する請求項1記載の積層食品の製造方法。
【請求項3】
層状生地の上部に天板を置くことで生地に対して150〜10g重/cmで押圧する請求項1乃至請求項2記載の積層食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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