説明

半硬質ポリウレタンフォーム形成組成物

【課題】高温・高湿度条件下でも高い強度性能を維持することができる、自動車車両用内装材の製造に適した半硬質ポリウレタンフォームを製造する手段を提供する。
【解決手段】 1,3-プロパンジオールの重合体であるポリトリメチレンエーテルグリコールからなるポリエーテルポリオール(a1)を含有することを特徴とする半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)、水を含有する発泡剤(D)、触媒(E)、およびポリイソシアネート(C)を含む半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物、ならびに該半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を発泡・硬化させる工程を含むことを特徴とする、半硬質ポリウレタンフォームの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルなどの自動車車両用内装材の製造に適した半硬質ポリウレタンフォームおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリウレタンは、ポリオール成分およびイソシアネート成分またはポリイソシアネート成分を主原料とし、これらに触媒およびその他の助剤を適宜追加したものを原料として製造されるポリマーである。使用される前記成分を適宜選択することによって、熱硬化性から熱可塑性まで、またはソフトからハードまでのように、様々な特性をポリウレタンに付与することができる。それ故、ポリウレタンの用途も、フォーム(発泡体)、弾性体、塗料、接着剤、繊維など、その特性に応じて多岐にわたる。
【0003】
ポリウレタンフォームは、衝撃吸収体として極めて優れた物性を有するため、自動車車両用内装材、特にインストルメントパネルのクラッシュパッドとして慣用されてきた。インストルメントパネルのクラッシュパッドは、例えば成形型内に、あらかじめポリ塩化ビニル製の表皮をセットし、その中にポリウレタンフォーム原液を注入して硬化させ、成形する方法が一般的である。例えば、特許文献1には、上記のような方法によってポリウレタンフォームを成形してクラッシュパッドを製造する方法が記載されている。特許文献2には、ボイド不良が少なく、成形性のよい半硬質ポリウレタンフォームの製造方法が記載されている。また、特許文献3には、特定の構造を有するポリオールからなるポリオール成分と、特定のイソシアネート成分を組み合わせることによって製造される、キュア性、成形性のよい半硬質ポリウレタンフォームが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-146916号公報
【特許文献2】特開2001-342236号公報
【特許文献3】特開2001-354746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ポリウレタンフォームは自動車車両用内装材として慣用されている。しかしながら、自動車使用環境は、使用される季節やユーザーの使用態様によって様々であり、直射日光に曝されることにより車内温度が100℃付近の高温条件となる場合や、長雨により車内湿度が90%RH付近の高湿度条件となる場合がある。このような高温・高湿度条件では、ポリウレタンフォーム中のエーテル結合が酸化的に開裂して低分子化することにより、劣化反応が進行する。かかる劣化反応は、ポリウレタンフォームの強度低下に加え、凹みなどの外観品質低下の原因となるため好ましくない。それ故本発明は、高温・高湿度条件下でも高い強度性能を維持することができる、自動車車両用内装材の製造に適した半硬質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、ポリウレタンフォームを製造する際のポリオール成分として、1,3-プロパンジオールの重合体からなるポリトリメチレンエーテルグリコールを使用することにより、高温・高湿度条件下でも高い強度性能を発揮することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリエーテルポリオール(a1)、(a2)および(a3)、ならびに重合体ポリオール(A1)を含有する半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)であって、
ポリエーテルポリオール(a1)が、植物原料由来である1,3-プロパンジオールの重合体からなる、30〜180 mg KOH/gの水酸基価を有するポリトリメチレンエーテルグリコールであり;
ポリエーテルポリオール(a2)が、2〜8の平均官能基数、20〜50 mg KOH/gの水酸基価および8〜30重量%の末端オキシエチレン単位の含有率を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールであり;
ポリエーテルポリオール(a3)が、2.5〜3.5の平均官能基数、100〜1,000 mg KOH/gの水酸基価および8〜30重量%の末端オキシエチレン単位の含有率を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールであり;
重合体ポリオール(A1)が、ポリエーテルポリオール(a2)中でビニル系モノマー(b)を重合させることによって得られる重合体ポリオールである;
ことを特徴とする、半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)。
【0008】
(2)ポリエーテルポリオール(a1)、(a2)および(a3)、ならびに重合体ポリオール(A1)の合計重量に対して、(a1)を1〜50重量%、(a2)を10〜80重量%、(a3)を1〜15重量%、および(A1)を10〜30重量%の含有率で含むことを特徴とする、前記(1)のポリオール組成物(A)。
【0009】
(3)前記(1)または(2)のポリオール組成物(A)、水を含有する発泡剤(D)、触媒(E)、およびポリイソシアネート(C)を含む半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物であって、ポリイソシアネート(C)が、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートおよびそれらの変性物からなる群より選択される少なくとも1種類の成分を、ポリオール組成物(A)の重量に対して50重量%以上の含有率で含むことを特徴とする、半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0010】
(4)前記ポリオール組成物(A)を、半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物の重量に対して50〜80重量%の含有率で含むことを特徴とする、前記(3)の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【0011】
(5)前記(3)または(4)の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を発泡・硬化させることによって得られる、半硬質ポリウレタンフォーム。
【0012】
(6)前記(3)または(4)の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を成形型に注入し、成形型内で発泡・硬化させる工程を含むことを特徴とする、半硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0013】
(7)前記(5)の半硬質ポリウレタンフォームを含む車両用内装材。
【0014】
(8)前記(5)の半硬質ポリウレタンフォームを含む車両用インストルメントパネルのクラッシュパッド。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、高温・高湿度条件下でも高い強度性能を維持することができる、自動車車両用内装材の製造に適した半硬質ポリウレタンフォームを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のポリウレタンフォームを温度110℃で処理した場合における引張強度の経時変化を示す図である。
【図2】本発明のポリウレタンフォームを温度110℃で処理した場合における引張伸び率の経時変化を示す図である。
【図3】本発明のポリウレタンフォームを温度80℃、相対湿度95% RHで処理した場合における引張強度の経時変化を示す図である。
【図4】本発明のポリウレタンフォームを温度80℃、相対湿度95% RHで処理した場合における引張伸び率の経時変化を示す図である。
【図5】様々な含有率でポリエーテルポリオール(a1)を含む組成物を成形して得られた本発明のポリウレタンフォームについて、初期引張強度を比較した結果を示す図である。
【図6】様々な含有率でポリエーテルポリオール(a1)を含む組成物を成形して得られた本発明のポリウレタンフォームについて、成形収縮による外観品質を比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
1.半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物
本発明の半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)は、必須成分としてポリエーテルポリオール(a)および重合体ポリオール(A1)を含有する。各成分の詳細について、以下に説明する。
【0019】
1−1.ポリエーテルポリオール(a)
本発明の半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)に含まれるポリエーテルポリオール(a)は、ポリエーテルポリオール(a1)、(a2)および(a3)を含む。
【0020】
ポリエーテルポリオール(a1)は、1,3-プロパンジオールの重合体からなる、ポリトリメチレンエーテルグリコールである。ポリトリメチレンエーテルグリコールは、1級アルコールである1,3-プロパンジオールをモノマー単位とするため、2級アルコールをモノマー単位とする他のポリエーテルポリオールに比べて、エーテル結合の酸化開裂が抑制される特性を有する。上記の酸化開裂は、特に高温・高湿度条件下において発生する問題である。それ故、ポリトリメチレンエーテルグリコールをポリエーテルポリオール(a1)として半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)に使用することにより、高温・高湿度条件下において発生する、酸化開裂によるポリウレタンフォームの劣化を抑制することが可能となる。
【0021】
モノマー単位である1,3-プロパンジオールは、限定するものではないが、例えばトウモロコシ油、大豆油などの植物原料由来であることが好ましい。前記1,3-プロパンジオールを酸触媒存在下で重合することによって、本発明のポリエーテルポリオール(a1)として使用されるポリトリメチレンエーテルグリコールを製造することができる。植物原料由来の1,3-プロパンジオールを使用してポリトリメチレンエーテルグリコールを製造することにより、ポリウレタンフォーム製造に必要な石油資源の削減を図るとともに、処分の際に排出される二酸化炭素量を、いわゆるカーボンニュートラル効果によって相殺することが可能となる。
【0022】
本発明のポリエーテルポリオール(a1)の数平均分子量は、650〜3,000であることが好ましく、2,000〜3,000であることがより好ましく、2,000であることが特に好ましい。また、ポリエーテルポリオール(a1)の水酸基価は、30〜180 mg KOH/gであることが好ましく、35〜75 mg KOH/gであることがより好ましい。ここで、数平均分子量は分子量分布測定機により、水酸基価はJIS K1557などの公知の方法により、それぞれ決定することができる。なお、水酸基価は、試料1 gを中和するのに必要となるKOHの重量 (mg) に相当する値であって、(水酸基価=56,100 / 水酸基1個当たりの分子量)の式により算出することができる。水酸基価が30未満の場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームのボイド面積が大きくなるため好ましくない。一方、水酸基価が180を超える場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームの伸び物性が低下するため好ましくない。それ故、上記の好適な構成のポリエーテルポリオール(a1)を半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)に使用することにより、これらの好ましくない現象を生じることなく、半硬質ポリウレタンフォームを得ることが可能となる。
【0023】
ポリエーテルポリオール(a2)は、例えば、多価アルコール、多価フェノールなどを開始剤として、これにアルキレンオキシドを付加重合することによって形成される重合体である。前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、2-メチルプロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールおよび1,9-ノナンジオールなどのような炭素数2〜12の2価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グルコース、フラクトース、ショ糖およびジペンタエリスリトールなどのような炭素数3〜12の3〜8価またはそれ以上の価数を有するアルコール類を挙げることができる。前記多価フェノールとしては、例えばハイドロキノンのような単環多価フェノール、例えばビスフェノールAのようなビスフェノール、例えばフェノール、クレゾールのようなフェノール化合物のホルマリン低縮合物およびこれらの2種以上の併用などを挙げることができる。本発明のポリエーテルポリオール(a2)は、多価アルコールを開始剤として使用する重合体であることが好ましい。なお、前記開始剤は、1種類の化合物のみを使用してもよく、または2種類以上を使用してもよい。
【0024】
本発明のポリエーテルポリオール(a2)を形成する際に使用されるアルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシド(PO)およびエチレンオキシド(EO)を挙げることができる。アルキレンオキシドの付加方法としては、ブロック付加でもランダム付加でもよく、ブロック付加したものが好ましい。また、前記アルキレンオキシドは、ポリエーテルポリオール(a2)の末端および所望により内部に付加されることが好ましい。本発明のポリエーテルポリオール(a2)がEOおよびPOのブロック付加物である場合において、末端オキシエチレン単位(EO単位)の含有量は、8〜30重量%であることが好ましく、10〜20重量%であることがより好ましい。ここで、末端EO単位および内部EO単位の含有量は、ポリエーテルポリオールの1H-NMRスペクトルから取得される、プロトンシグナルの積分値に基づいて算出される。具体的には、酸を添加した重水素化クロロホルム中でポリエーテルポリオールの1H-NMRスペクトルを測定し、δ=1.1 ppm付近に観測されるシグナル(PO由来のメチルプロトン)の積分値(I)と、δ=3〜6.4 ppm付近に観測されるシグナル(POおよびEO由来のメチレンプロトン)の積分値(II)をそれぞれ取得し、この値を用いて以下の式により算出することができる。
【0025】
EO含有量(重量%)=100×33×(II-I) / (33×(II-I) + 58I)
【0026】
本発明のポリエーテルポリオール(a2)の平均官能基数は、2〜8であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。ここで、平均官能基数は、原料の平均官能基数から算出される理論値を、実際の平均官能基数とみなした値である。ポリエーテルポリオール(a2)の数平均分子量は、1,000〜10,000であることが好ましく、3,000〜9,000であることがより好ましい。また、ポリエーテルポリオール(a2)の水酸基価は、20〜50 mg KOH/gであることが好ましく、25〜40 mg KOH/gであることがより好ましい。平均官能基数が2未満の場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームの硬化時間が長くなり、結果として該ポリウレタンフォームの実用性が低下するため好ましくない。一方、平均官能基数が8を超える場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームの伸び物性が低下するため好ましくない。また、水酸基価が20未満の場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームのボイド面積が大きくなるため好ましくない。一方、水酸基価が50を超える場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームの伸び物性が低下するため好ましくない。それ故、上記の好適な構成のポリエーテルポリオール(a2)を半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)に使用することにより、これらの好ましくない現象を生じることなく、良好な物性を具備する半硬質ポリウレタンフォームを得ることが可能となる。
【0027】
ポリエーテルポリオール(a3)は、例えば、多価アルコール、多価フェノールなどを開始剤として、これにアルキレンオキシドを付加重合することによって形成される重合体である。多価アルコールおよび多価フェノールとしては、ポリエーテルポリオール成分(a2)について列挙した上記の化合物と同様のものを挙げることができる。本発明のポリエーテルポリオール(a3)は、多価アルコールを開始剤として使用する重合体であることが好ましい。なお、前記開始剤は、1種類の化合物のみを使用してもよく、または2種類以上を使用してもよい。
【0028】
本発明のポリエーテルポリオール(a3)を形成する際に使用されるアルキレンオキシドおよびその付加方法としては、ポリエーテルポリオール成分(a2)について列挙した上記の化合物および付加方法と同様のものを挙げることができる。本発明のポリエーテルポリオール(a3)がEOおよびPOのブロック付加物である場合において、末端オキシエチレン単位(EO単位)の含有量は、8〜30重量%であることが好ましく、8〜25重量%であることがより好ましい。
【0029】
本発明のポリエーテルポリオール(a3)の平均官能基数は、2.5〜3.5であることが好ましい。ポリエーテルポリオール(a3)の数平均分子量は、100〜5,000であることが好ましく、200〜2,000であることがより好ましい。また、ポリエーテルポリオール(a3)の水酸基価は、100〜1,000 mg KOH/gであることが好ましく、200〜500 mg KOH/gであることがより好ましい。平均官能基数が2.5未満の場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームの硬化時間が長くなり、結果として該ポリウレタンフォームの実用性が低下するため好ましくない。一方、平均官能基数が3.5を超える場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームの伸び物性が低下するため好ましくない。また、水酸基価が100未満の場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームのボイド面積が大きくなるため好ましくない。一方、水酸基価が1,000を超える場合、これを用いて製造されるポリウレタンフォームの伸び物性が低下するため好ましくない。それ故、上記の好適な構成のポリエーテルポリオール(a3)を半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)に使用することにより、これらの好ましくない現象を生じることなく、良好な物性を具備する半硬質ポリウレタンフォームを得ることが可能となる。
【0030】
1−2.重合体ポリオール(A1)
本発明の半硬質ポリウレタンフォームに含まれる重合体ポリオール(A1)は、ポリエーテルポリオール成分(a)中でビニル系モノマー(b)を重合させることによって得られる重合体である。例えば、上記のポリエーテルポリオール(a1)、(a2)および(a3)から選択される少なくとも1種類のポリエーテルポリオール中で、ラジカル開始剤の存在下、少なくとも1種類のビニル系モノマー(b)を重合させることによって製造することができる。ビニル系モノマー(b)としては、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、炭素数2〜5のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2〜5のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、パーフルオロオクチルエチルメタアクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート、ノルボルネン、シクロペンタジエンおよびノルボルナジエンのようなビニル化合物を挙げることができる。本発明の重合体ポリオール(A1)の製造に用いられるポリエーテルポリオール成分(a)は、ポリエーテルポリオール(a2)であることが好ましい。また、ビニル系モノマー(b)は、アクリロニトリルおよび/またはスチレンであることが好ましい。ビニル系モノマー(b)がアクリロニトリルおよびスチレンの混合物からなる場合において、アクリロニトリルおよびスチレンは30:70〜90:10の重量比で使用されることが好ましく、2:1の重量比で使用されることがより好ましい。また、ビニル系モノマー(b)の重合体単位の含有量は、重合体ポリオール(A1)の重量に対して20〜50重量%であることが好ましい。
【0031】
本発明の半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)は、ポリエーテルポリオール(a1)、(a2)および(a3)、ならびに重合体ポリオール(A1)の合計重量に対して、(a1)を1〜50重量%、(a2)を10〜80重量%、(a3)を1〜15重量%、および(A1)を10〜30重量%の含有率で含むことが好ましい。上記の好適な構成のポリオール組成物(A)を用いることにより、成形初期の強度物性ならびに高温および/または高湿度条件における強度物性が高く、かつ成形時の収縮による変形が少ない半硬質ポリウレタンフォームを得ることが可能となる。
【0032】
2.半硬質ポリウレタン形成用組成物
本発明の半硬質ポリウレタン形成用組成物は、ポリオール組成物(A)に加え、水を含有する発泡剤(D)、触媒(E)、およびポリイソシアネート(C)を含む。前記半硬質ポリウレタン形成用組成物は、ポリオール組成物(A)を、半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物の合計重量に対して50〜80重量%の含有率で含むことが好ましい。上記で説明したポリオール組成物(A)を除く各成分の詳細について、以下に説明する。
【0033】
2−1.ポリイソシアネート
本発明の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物に含まれるポリイソシアネート(C)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)およびそれらの変性物(変性MDI)からなる群より選択される少なくとも1種類の成分を含む。この場合において、ポリイソシアネート(C)は、上記の成分を、ポリオール組成物(A)の重量に対して50重量%以上の含有率で含むことが好ましく、50〜70重量%の含有率で含むことがより好ましい。上記の好適な構成のポリイソシアネート(C)を半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物に使用することにより、フォーム製造時の生産性および作業環境を向上することが可能となる。
【0034】
2−2.発泡剤
本発明の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物は、フォーム形成のために発泡剤(D)を必須成分として含有する。前記発泡剤としては、水を使用することが好ましい。水を発泡剤として使用する場合、前記半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物は、ポリオール組成物(A)の合計重量に対して1〜5重量%の発泡剤を含有することが好ましい。上記の構成の発泡剤を半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物に使用することにより、良好な密度と物性を有するフォームを形成することが可能となる。
【0035】
2−3.触媒
本明細書において、「触媒」は、ポリウレタン形成における縮合反応を制御するために使用される材料を意味する。本発明の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物に含まれる触媒成分(E)としては、当業界で慣用されるあらゆる触媒を使用することができる。一例として、限定するものではないが、N,N-ジメチルアミノプロピルジプロパノールアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテルおよびN,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどのアミン系触媒、カルボン酸金属塩およびジブチルチンラウレートなどの有機金属化合物、ならびに酢酸カリウム、オクチル酸カリウムおよびスタナスオクトエートなどを挙げることができる。上記の触媒を半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物に使用することにより、ポリウレタン形成における縮合反応を適切な状態に制御することが可能となる。
【0036】
2−4.整泡剤
本明細書において、「整泡剤」は、フォーム形成における気泡の形状を調整するために使用される材料を意味する。本発明の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物は、任意成分として整泡剤(F)をさらに含んでもよい。かかる場合、整泡剤(F)としては当業界で慣用されるあらゆる整泡剤を使用することができる。一例として、限定するものではないが、SRX-253(トーレダウコーニングシリコーン(株)製)、F-122(信越化学工業(株)製)などのジメチルシロキサン系整泡剤、L-5309、SZ-1311(日本ユニカー(株)製)などのポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤を挙げることができる。上記の整泡剤を半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物に使用することにより、フォームの物性をさらに良好なものとすることが可能となる。
【0037】
2−5.助剤
本発明の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物は、所望により1以上の助剤をさらに含んでもよい。一例として、限定するものではないが、接着剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤のような安定剤、無機塩および無機繊維のような充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、抗菌剤ならびに抗カビ剤などを挙げることができる。上記の助剤を半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物に適宜使用することにより、半硬質ポリウレタンフォームの特性をさらに改変することが可能となる。
【0038】
3.半硬質ポリウレタンフォーム
本発明の半硬質ポリウレタンフォームは、上記の半硬質ポリウレタン形成用組成物を発泡・硬化させることによって得ることができる。上記で説明した好適な構成の半硬質ポリウレタン形成用組成物を使用することにより、成形初期の強度物性ならびに高温および/または高湿度条件における強度物性の高い半硬質ポリウレタンフォームを得ることが可能となる。
【0039】
4.半硬質ポリウレタンフォームの製造方法
本発明の半硬質ポリウレタンフォームは、上記の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を用いて製造することができる。例えば、ポリオール組成物(A)、水を含有する発泡剤(D)、および触媒(E)を所定量混合する。次いで、この混合物を、イソシアネート(C)と急速混合することによって半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物とする。得られた半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を、直ちに成形型に注入し、成形型内で発泡・硬化させ、一定時間経過後脱型して半硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。本発明の製造方法において、ポリオール組成物(A)からなるポリオール成分とイソシアネート(C)からなるイソシアネート成分の配合比率を表すイソシアネート指数(インデックス)は、[(イソシアネート成分のNCO基)/(ポリオール成分の活性水素含有基)]の当量比×100で表され、70〜140であることが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法において、前記急速混合に用いる装置としては、限定するものではないが、低圧もしくは高圧発泡機のようなポリウレタン発泡機または攪拌機が好ましく、高圧発泡機がより好ましい。前記成形型は、用途に応じてオープン注入タイプまたはクローズ注入タイプのいずれかを選択することができる。クローズ注入タイプの金型を使用することが好ましい。反応射出成形(RIM)のためのRIM成形機をクローズ注入タイプの金型と組み合わせて使用することがより好ましい。本発明の製造方法において、成形型温度は20〜50℃であることが好ましい。クリーム時間は5〜30秒であることが好ましい。キュア時間は30〜120秒であることが好ましい。なお、本明細書において、「クリーム時間」は、ウレタン化反応直前の原料温度が25℃、成形型温度が40℃のときに、発泡剤とイソシアネートが反応して発泡が始まる時間を意味する。また、本明細書において、「キュア時間」は、前記クリーム時間と同じ条件において、原料を成形型に注入開始してから脱型するまでの時間を意味する。上記の好適な条件で本発明の半硬質ポリウレタンフォームを製造することにより、製造工程における破損、ボイド不良の発生や変形を生じることなく、所望の物性および外観品質を有する半硬質ポリウレタンフォームを得ることが可能となる。
【0041】
5.自動車車両用内装材
本発明の半硬質ポリウレタンフォームを用いて、クラッシュパッド、ヘッドレスト、アームレストなどの車両用内装材を製造することができる。衝突時の衝撃を吸収するために用いられる、インストルメントパネルのクラッシュパッドを製造するために用いることが好ましい。本発明の半硬質ポリウレタンフォームを含む車両用内装材、特にインストルメントパネルのクラッシュパッドは、上記で説明した高い強度物性、とりわけ高温および/または高湿度条件における高い強度物性を備えることとなる。
【0042】
本発明の半硬質ポリウレタンフォームをインストルメントパネルのクラッシュパッドに使用する場合、インストルメントパネルの表皮および基材となる部材を、成形型の片面ずつにそれぞれセットした後に、上記で説明した半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を注入することによって製造することが好ましい。前記表皮としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリウレタンまたはポリオレフィンを使用することができる。表皮の厚さは0.5〜2 mmであることが好ましい。また、前記基材としては、例えばポリプロピレンまたはASGを使用することができる。上記の構成の表皮および基材を有するインストルメントパネル用のクラッシュパッドは、高い強度と良好な外観を兼ね備えることとなる。
【0043】
以上説明したように、本発明の半硬質ポリウレタンフォームを自動車車両用内装材に使用することにより、高温多湿環境で使用するのに適した内装材を備える自動車を製造することが可能となる。特に、本発明の半硬質ポリウレタンフォームをインストルメントパネルのクラッシュパッドとして用いることにより、高温および/または高湿度条件の使用環境においても高い強度物性を維持する、耐久性に優れた製品を製造することが可能となる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。なお、ポリエーテルポリオール(a4)は、本発明の効果を示すために比較例として使用した、従来技術のポリエーテルポリオール成分である。
【0045】
[原料]
実施例および比較例に使用した半硬質ポリウレタンフォームの原料は以下の通りである。
(1)ポリエーテルポリオール(a1-1):トウモロコシ油より得られる1,3-プロパンジオールの重合体である、ポリトリメチレンエーテルグリコール(水酸基価56 mg KOH/g)。
(2)ポリエーテルポリオール(a1-2):トウモロコシ油より得られる1,3-プロパンジオールの重合体である、ポリトリメチレンエーテルグリコール(水酸基価175 mg KOH/g)。
(3)ポリエーテルポリオール(a1-3):トウモロコシ油より得られる1,3-プロパンジオールの重合体である、ポリトリメチレンエーテルグリコール(水酸基価35 mg KOH/g)。
(4)ポリエーテルポリオール(aa1-1):パーム油より得られるパルミチン酸を主成分として、これを重合させることによって得られるポリエーテルポリオール(水酸基価100 mg KOH/g)。
(5)ポリエーテルポリオール(aa1-2):大豆油より得られるリノール酸を主成分として、これを重合させることによって得られるポリエーテルポリオール(水酸基価55 mg KOH/g)。
(6)ポリエーテルポリオール(a2-1):グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価34 mg KOH/g、末端EO単位の含有率=14重量%)。
(7)ポリエーテルポリオール(a2-2):グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価36 mg KOH/g、末端EO単位の含有率=16重量%)。
(8)ポリエーテルポリオール(a2-3):ペンタエリスリトールのPO・EOブロック付加物(水酸基価28 mg KOH/g、末端EO単位の含有率=14重量%)。
(9)ポリエーテルポリオール(a3-1):グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価280 mg KOH/g、末端EO単位の含有率=10重量%)。
(10)ポリエーテルポリオール(a4-1):プロピレングリコールのPO・EOブロック付加物(水酸基価28 mg KOH/g、末端EO単位の含有率=10重量%、内部EO単位の含有率=10重量%)。
(11)重合体ポリオール(A1-1):ポリエーテルポリオール(a2-3)中で、アクリロニトリルとスチレンを質量比2:1で重合させることによって得られる重合体ポリオール(重合体の含有率=30重量%)。
(12)触媒(E-1):N,N-ジメチルアミノプロピルジプロパノールアミン〔サンアプロ(株)社製「UCAT2024」〕。
(13)触媒(E-2):トリエチルアミン。
(14)触媒(E-3):ビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテルの70%ジエチレングリコール溶液〔東ソー(株)製「TOYOCAT-ET」〕。
(15)触媒(E-4):3級アミン触媒〔(株)花王製「カオライザーP-200」〕
(16)接着剤(G-1):変性ポリカプロラクトンポリオール〔三洋化成工業(株)製「エステルD」〕。
(17)ポリイソシアネート(C-1):変性MDI〔日本ポリウレタン(株)製「CEI-264」〕。
【0046】
[半硬質ポリウレタンフォームの製造方法]
ポリ塩化ビニル製の表皮(厚さ1 mm)およびポリプロピレン製の基材(厚さ1 mm)を、200×1000×10 mmのオープン注入タイプの金属製成形型の片面ずつに、それぞれセットした。RIM成形機(3Bヘッド;PEC社製)を用いて、表1に示す組成物となるように各成分を混合した後、該組成物を前記金属製成形型に注入し、直ちに密閉した。成形型内で発泡・硬化させてポリウレタンフォームを成形し、キュア時間1分で脱型した。
【0047】
[初期物性の評価]
上記の方法で得られた各ポリウレタンフォームの各物性値を、以下に示す方法を用いて測定した。
全密度(g/cm3) :JIS K6401
引裂強度(N/cm) :JIS K6401
引張強度(kPa) :JIS K6401
引張伸び率(%) :JIS K6301
C硬度(アスカC) :アスカC型硬度計による測定
各ウレタンフォームの初期物性値の測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように、実施例1〜4のポリウレタンフォームは、強度および伸び率に関する物性値について、比較例1〜3に比べて高い値を示した。また、実施例1〜4のポリウレタンフォームの物性値を互いに比較すると、引張強度を除いていずれの物性値もほぼ同等の値を示した。上記の結果から、ポリエーテルポリオール(a1)を含む組成物を成形して得られるポリウレタンフォームは、該成分を含まない組成物を成形して得られるポリウレタンフォームに比べて高い強度を有することが明らかとなった。また、ポリウレタンフォーム形成用組成物に含まれるポリエーテルポリオール(a1)の水酸基価が35〜175 mg KOH/gの範囲では、ほぼ同程度の効果を奏することが示された。
【0050】
[高温および高湿度耐久性の評価]
実施例1および4ならびに比較例1のポリウレタンフォームについて、高温または高湿度条件下における物性値の経時変化を測定した。測定する物性値としては、引張強度および引張伸び率の2種類とした。各実施例および比較例のポリウレタンフォームを、恒温装置内に静置し、温度110℃で1,000時間、または温度80℃、相対湿度95% RHで1,000時間処理した。実験開始時(0時間)ならびに実験開始から400時間および1,000時間経過時に各試料を回収し、それぞれについて、上記の方法を用いて引張強度および引張伸び率を測定した。温度110℃で処理した結果を図1および2に、ならびに温度80℃、相対湿度95% RHで処理した結果を図3および4にそれぞれ示す。
【0051】
図1および2に示すように、実施例1および4のポリウレタンフォームを温度110℃で処理した場合、その引張強度および引張伸び率は処理時間経過に伴って徐々に低下するものの、1,000時間経過後に至るまで、同様の条件で処理された比較例1のポリウレタンフォームの引張強度および引張伸び率のそれぞれの値を常に上回った。
【0052】
これに対して、実施例1および4ならびに比較例1のポリウレタンフォームを温度80℃、相対湿度95% RHで処理した場合、それらの引張強度の経時変化は図1の場合とほぼ同様の傾向を示した(図3)が、引張伸び率はそれぞれの初期値からほとんど低下せず、1,000時間経過後もほぼ同等の値で推移した(図4)。この場合においても、実施例1および4の引張伸び率は、比較例1の値を常に上回って推移した。
【0053】
以上の結果を考察する。実施例1および4の各値と比較例1の各値とをそれぞれ比較すると、高温および高湿度のいずれの条件下でも、ポリエーテルポリオール(a1)を含む組成物を成形して得られるポリウレタンフォームは、これを含まない組成物を成形して得られるポリウレタンフォームを上回る強度および伸び特性を維持していた。それ故、ポリエーテルポリオール(a1)を含む組成物を用いることによって、結果として得られるポリウレタンフォームは、高温および高湿度耐久性を具備すると考えられる。また、かかる効果は、ポリエーテルポリオール(a1)の水酸基価が高い場合により顕著となったことから、ポリエーテルポリオール(a1)、すなわちポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が低い場合に、より高い効果を奏するものと考えられる。
【0054】
[強度物性および外観品質の評価]
表2に示す含有率でポリエーテルポリオール(a1)を含む組成物を成形して得られたポリウレタンフォームについて、各ポリウレタンフォームの初期引張強度を測定した。結果を図5に示す。
【0055】
図5に示すように、ポリエーテルポリオール(a1)の含有率と初期引張強度との間には一定の相関が認められた。すなわち、ポリウレタンフォーム形成用組成物に含まれるポリエーテルポリオール(a1)の含有率が上昇するにしたがって、結果として得られるポリウレタンフォームの引張強度は向上し、特に、ポリオール組成物(A)の合計重量に対するポリエーテルポリオール(a1)の含有率が25重量%より高い場合には、ポリエーテルポリオール(a1)含有率の上昇に伴って引張強度は直線的に向上した。
【0056】
次に、表2に示す含有率でポリエーテルポリオール(a1)を含む組成物を成形して得られたポリウレタンフォーム製品について、目視によりその外観品質、特に成形収縮による外観品質の変化を評価した。結果を表2および図6に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
ポリエーテルポリオール(a1)含有率:ポリオール組成物(A)に含まれる成分の合計重量に対するポリエーテルポリオール(a1-1)の重量百分率
外観品質の評価:
− 評価せず。
◎ 収縮無く、良好な外観である。
○ フォーム単体では少し収縮するが、表皮がついた状態では収縮が無い外観である。
△ フォーム単体でも収縮し、かつ表皮がついた状態でも少し収縮した外観である。
× フォーム単体でも収縮し、かつ表皮がついた状態でも収縮している。好ましくない外観である。
【0059】
表2に示すように、ポリエーテルポリオール(a1)の含有率が上昇するにしたがって、結果として得られるポリウレタンフォーム製品には、成形収縮による外観品質の低下が発生した。上記のように、フォーム単体の場合と比較すると、ポリ塩化ビニル製の表皮がついた状態で成形した場合には成形収縮がやや抑制されるが、かかる状態であっても、ポリエーテルポリオール(a1)の含有率が45重量%を超えると成形収縮が観察された(図6)。
【0060】
以上の結果を考察する。ポリウレタンフォームは、高温・高湿度条件下において、樹脂中のエーテル結合が熱によって酸化的に開裂して低分子化することにより、劣化反応が進行することが知られている。本発明の半硬質ポリウレタンフォームは、実施例の結果から明らかなように、従来技術の半硬質ポリウレタンフォームに比べて、成形初期の引張強度、引張伸び率および引裂強度が高いだけでなく、高温および高湿度条件下においても高い引張強度および引張伸び率を有している。これは、本発明の半硬質ポリウレタンフォームが、1級アルコールである1,3-プロパンジオールをモノマー単位とする、ポリトリメチレンエーテルグリコールをポリエーテルポリオール(a1)として含むことにより、上記の劣化反応の発生が抑制されたためと考えられる。また、本発明の半硬質ポリウレタンフォームは、半硬質ポリウレタンフォームを製造する際のポリエーテルポリオール(a1)の含有率の上昇にしたがって引張強度が直線的に向上する反面、成形収縮の発生による外観品質の低下が顕著となった。それ故、ポリエーテルポリオール(a1)の含有率を適宜設定することにより、良好な外観品質と強度特性を兼ね備えた半硬質ポリウレタンフォームおよびその成形品を製造することができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の半硬質ポリウレタンフォームは、ポリトリメチレンエーテルグリコールをポリオール成分として含むことにより、引張強度などの強度物性について従来技術を上回る性能を具備する。それ故、本発明の半硬質ポリウレタンフォームをインストルメントパネルのクラッシュパッドなどの自動車車両用内装材に使用することにより、高温および/または高湿度条件のような過酷な使用環境における、該内装材の外観品質や衝撃吸収性能の低下を防止することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルポリオール(a1)、(a2)および(a3)、ならびに重合体ポリオール(A1)を含有する半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)であって、
ポリエーテルポリオール(a1)が、植物原料由来である1,3-プロパンジオールの重合体からなる、30〜180 mg KOH/gの水酸基価を有するポリトリメチレンエーテルグリコールであり;
ポリエーテルポリオール(a2)が、2〜8の平均官能基数、20〜50 mg KOH/gの水酸基価および8〜30重量%の末端オキシエチレン単位の含有率を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールであり;
ポリエーテルポリオール(a3)が、2.5〜3.5の平均官能基数、100〜1,000 mg KOH/gの水酸基価および8〜30重量%の末端オキシエチレン単位の含有率を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールであり;
重合体ポリオール(A1)が、ポリエーテルポリオール(a2)中でビニル系モノマー(b)を重合させることによって得られる重合体ポリオールである;
ことを特徴とする、半硬質ポリウレタンフォーム製造用ポリオール組成物(A)。
【請求項2】
ポリエーテルポリオール(a1)、(a2)および(a3)、ならびに重合体ポリオール(A1)の合計重量に対して、(a1)を1〜50重量%、(a2)を10〜80重量%、(a3)を1〜15重量%、および(A1)を10〜30重量%の含有率で含むことを特徴とする、請求項1のポリオール組成物(A)。
【請求項3】
請求項1または2のポリオール組成物(A)、水を含有する発泡剤(D)、触媒(E)、およびポリイソシアネート(C)を含む半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物であって、ポリイソシアネート(C)が、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートおよびそれらの変性物からなる群より選択される少なくとも1種類の成分を、ポリオール組成物(A)の重量に対して50重量%以上の含有率で含むことを特徴とする、半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項4】
前記ポリオール組成物(A)を、半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物の重量に対して50〜80重量%の含有率で含むことを特徴とする、請求項3の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物。
【請求項5】
請求項3または4の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を発泡・硬化させることによって得られる、半硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項3または4の半硬質ポリウレタンフォーム形成用組成物を成形型に注入し、成形型内で発泡・硬化させる工程を含むことを特徴とする、半硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
請求項5の半硬質ポリウレタンフォームを含む車両用内装材。
【請求項8】
請求項5の半硬質ポリウレタンフォームを含む車両用インストルメントパネルのクラッシュパッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−21073(P2011−21073A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165534(P2009−165534)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】