説明

半自動式電線ストリップ方法及び装置

【課題】高精度のストリップ長に剥離でき、その剥離カスを確実・容易にエア吸引可能にするように、手作業により電線をセットした後は自動作動する半自動式電線ストリップ方法を提供する。
【解決手段】シーケンス制御始動信号に応答して電線把持爪を閉鎖駆動により電線9を把持させるステップと、ブレード22を電線先端よりも前寄りの端末部カット位置にスライド駆動させるステップと、電線ストッパ24を逃げ位置に後退駆動させた状態でブレード22を端末部カット位置で閉鎖駆動して芯線9aを含めて完全カットさせて吸引回収させるステップ(図6B)と、ブレード22をストリップ長規定位置にスライド駆動させて、被覆の厚みに応じて閉鎖駆動させて被覆9bをカットさせるステップ(図6C)と、ブレード22を被覆カット状態で端末部カット位置よりも後方位置にスライド駆動させて、ストリップ長の剥離被覆9bを電線カスとして吸引回収させるステップ(図6D)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両側一対の電線把持爪に手作業により被覆電線をセットして、対面する電線ストッパへ電線先端を当接させ、その当接の感触により作業者によるスイッチ操作或いは電線当接センサによる検知により発生されるシーケンス制御始動信号に応答して、自動的に電線を把持爪に把持させ、次いで両側一対のブレードを電線方向に沿ってストリップ長に応じてスライドさせ、続いて被覆を所定のストリップ長に剥離して剥離被覆を背後へ吸引回収させる半自動式電線ストリップ方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により、操作軸に連動して回転するコマ受けと、このコマ受けへのノブに揺動可能に遊設された電線コマとを備えると共に、その内面に螺旋状突起が形成された電線挿通孔内に臨出して剥離除去する刃体が、電線周囲を回転しながら剥離除去し、前方のストリップ長調整用ストッパに電線を当接して推力が停止して剥離除去するようになり、作業者の手で電線を電線コマにセットして自動的に所定のストリップ長に剥離を行う電線被覆の皮むき工具が開示されている。
【0003】
このような半自動式に対して、電線を把持位置に自動搬送するのを前提として、特許文献2により、ベース盤の一端側上面に固定され、カッター刃を備えた電線固定部と、ベース盤に設けられたガイドレールに沿って移動可能で回転軸に電線端部を挟持する挟持手段を備えることにより、絶縁体を回転しながら引き抜く絶縁体剥離装置が、また特許文献3により、被覆電線を把持する固定部材と、被覆電線の被覆に切込みを形成する一対のストリップ刃とを備え、ストリップ刃で被覆電線の被覆に切り込みを形成して、固定部材を切込位置から後退させることにより、被覆部分を抜き取る被覆電線用ストリップ装置が、さらに特許文献4によれば、電線把持を行う電線ホルダに搬送機で電線が搬送されると共に、ストリップ刃のみならず、剥離部分に端子を圧着する圧着機構も電線ホルダに対面するストリップ機構併設の圧着機等が開示されている。
【0004】
これらの位置固定の電線把持爪に対してセットされる電線方向に沿った離接方向へストリップ刃であるブレードをスライドさせて被覆部分を抜取る方式の半自動式電線ストリップ装置として、図7に示すように、作業者が手で持った電線9を電線把持爪60にセットし、電線当接位置及び電線先端を開放する逃げ位置間を進退駆動される電線ストッパ61への電線先端の当接が作業者の感触又はセンサで検知されると、その際発生されるシーケンス制御始動信号に応答して、それ以降は自動作動により電線9が把持され(同図A)、スライド開閉式の一対のブレード62が、逃げ位置に移動した電線ストッパ61と連動スライドし、ストリップ長規定位置で被覆9bの厚みに応じて互いにスライド式に閉鎖駆動されてカットを行い(同図B)、次いで原位置に復帰する過程で芯線9aを所定のストリップ長に露出させ(同図C)、続いてブレード62を待機位置に開放駆動させた状態で被覆9bを背後に回収(同図D)する類のものも周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−163740号公報
【特許文献2】特開平8−308053号公報
【特許文献3】特開平9−182235号公報
【特許文献4】特開2005−19027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この種の図7による半自動式電線ストリップ装置では、電線9の電線ストッパ61への当接に応答してブレード62が予め設定されたストリッ長に応じてストリップ長規定位置にスライドして被覆をその厚みに応じてカットする場合、特に細い電線について先端部分が電線ストッパへの当接時に曲がるとストリップ長に誤差が生じることになり、改良の余地が残されている。また、剥離被覆9bを回収するのに抜取り用挟持機構を用いること無く、より構造的に簡単なエア吸引で回収しようとすると、ブレード62が電線ストッパ61に対して接近位置の原位置に剥離被覆9bを連行して復帰するとしても簡単なパイプ吸引では回収ミスが生じ易く、さらに一対のブレード62は通常互いに対向するV字形であり、被覆9bに正方形状にカット残り被覆部分9cが生じ、その芯線9aへの付着等に起因する回収ミスも懸念される。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて、高精度のストリップ長に剥離でき、しかもエア吸引による回収を前提にしても剥離カスを確実、かつ容易に回収可能にする手作業による電線セットを前提にした半自動式電線ストリップ方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この目的を達成するために、請求項1により、開閉駆動される両側一対の電線把持爪に手作業により電線をセットした状態で、電線把持爪に対面し、かつ電線の先端を当接させる電線当接位置及び電線先端を開放する逃げ位置間を進退駆動される電線ストッパに電線先端を当接させると、その際発生されるシーケンス制御始動信号に応答して、電線を把持した位置固定の電線把持爪に対して離接する前後方向にスライド可能で、かつ待機位置及びカット位置間で開閉駆動される両側一対のブレードをスライド駆動させて、電線の被覆をブレードにより所定のストリップ長に剥離し、電線ストッパを逃げ位置に後退させた状態で剥離被覆を背後へ吸引回収させる半自動式電線ストリップ方法において、シーケンス制御始動信号に応答して電線把持爪を閉鎖駆動することにより電線を把持させるステップと、ブレードを電線先端よりも僅かに前寄りの端末部カット位置にスライド駆動させるステップと、電線ストッパを逃げ位置に後退駆動させた状態でブレードを端末部カット位置で閉鎖駆動して芯線を含めて電線の端末部を完全カットさせて電線カスを吸引回収させるステップと、ブレードをストリップ長規定位置にスライド駆動させるステップと、ブレードを被覆カット位置に被覆の厚みに応じて閉鎖駆動させて被覆をカットさせるステップと、ブレードを被覆のカット状態で端末部カット位置よりも後方位置にスライド駆動させて、端末部カット位置及びストリップ長規定位置間の長さに相当するストリップ長を有する剥離被覆を電線カスとして吸引回収させるステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1による電線ストリップ方法を実施する装置としては、請求項2により、手作業により電線がセットされ、かつ待機位置及び電線把持位置間で互いに開閉駆動される両側一対の電線把持爪を有する電線把持部と、この電線把持部に対して離接する前後方向に予め設定されたスライドストロークに応じてスライド駆動させるスライド制御機構が付属するスライド台とを備えると共に、このスライド台に、電線把持爪に対面し、かつ電線の先端を当接させる電線当接位置及び電線先端を開放する逃げ位置間を進退駆動される電線ストッパと、待機位置及び閉鎖位置が制御されるカット位置間で開閉駆動を行わせる開閉制御機構が付属する両側一対のブレードとが搭載されると共に、電線把持爪、スライド制御機構、電線ストッパ及び開閉制御機構をシーケンス制御するシーケンス制御手段を備えることにより、電線先端が電線ストッパに当接された際に発生されるシーケンス制御始動信号に応答して、電線把持爪で電線を把持させた状態で、ストリップ長に応じてスライド台をスライド駆動してブレードで電線の被覆をカットして、その電線カスを吸引により背後に回収するようになった半自動式電線ストリップ装置であって、開閉制御機構が、ブレードを被覆の厚みに応じた被覆カット位置に加えて、芯線を含めて電線をカットさせる完全カット位置に閉鎖駆動し得るように構成されると共に、シーケンス制御手段が、シーケンス制御始動信号に応答して電線把持爪に対して電線把持位置に閉鎖駆動させるステップと、スライド制御機構に対してブレードを電線先端よりも僅かに前寄りの端末部カット位置に移動させるようにスライド台をスライド駆動させるステップと、電線ストッパに対して逃げ位置に後退駆動させた状態で、開閉制御機構に対してブレードを完全カット位置に閉鎖駆動して完全カットを行わせてその電線カスを吸引回収させるステップと、閉制御機構に対してブレードを待機位置に開放駆動させた状態で、スライド制御機構に対してブレードをストリップ長規定位置に移動させるようにスライド台を前進方向へスライド駆動させるステップと、開閉制御機構に対してブレードを被覆カット位置に閉鎖駆動させて被覆のカットを行わるステップと、スライド制御機構に対してブレードの被覆カット状態で端末部カット位置よりも後方位置に移動するようにスライド台を後退駆動させることにより、端末部カット位置及びストリップ長規定位置間の長さに相当するストリップ長を有する剥離被覆を電線カスとして吸引回収させるステップとを逐次実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1又は請求項2の発明によれば、手作業で被覆電線を把持爪にセットして電線先端を電線ストッパへの当接させた以降後は、自動的に予定のストリッ長に被覆を剥離させる際に、電線の端末部分を端末より僅かに前方寄りで完全カットすることにより、電線ストッパへの当接時に生じる可能性のある端末曲がりの影響を回避して、線径の小さな電線であっても正確なストリップ長の被覆剥離が可能になる。また、ブレードを被覆剥離位置から端末部カット位置を越えて後退させた位置で吸引回収することにより、カット残り被覆部分の芯線への付着の影響も回避して、簡単、かつ容易にエア吸引による剥離被覆の回収が可能になる。
【0011】
請求項3の発明によれば、吸引パイプ先端がブレードの背後位置に接近した状態で、電線の完全カット及び被覆カットが行われることにより、吸引力或いは構造に特に配慮しなくても単に吸引パイプのみで確実に回収可能となる。請求項4の発明によれば、シーケンス制御の始動信号が、作業者によるスイッチ操作、電線ストッパへのタッチセンサ或いは電線による光反射もしくは光遮断式の光センサにより発生される。請求項5の発明によれば、電線の線径の変化に伴う把持爪による被覆の損傷が簡単に回避可能になる。請求項6の発明によれば、電線ストリップ装置の側方に圧着装置を並置することを前提に、電線が把持された状態で、端子のセットされた圧着位置に、そのまま側方移動量及び下降量を正確に設定されて剥離芯線が位置付けされるために、上方から圧着具で圧着される際に、ストリップ部分は、屈曲することなく電線に沿った直線状態で端子が圧着される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電線ストリップ方法の実施の形態による半自動式電線ストリップ装置の要部を縦断面図にした概略側面図である。
【図2】同装置の電線把持部の正面図である。
【図3】同装置の剥離部要部の一部横断面図にした平面図である。
【図4】同装置に付設される圧着装置構造の原理図である。
【図5】同装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】同装置の動作を説明する図である。
【図7】従来の半自動式電線ストリップ装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図6を基に本発明の半自動式電線ストリップ方法の実施の形態による半自動式電線ストリップ装置を説明する。この電線ストリップ装置は、図1に示すように、電線9を把持する電線把持部10と、ステップモータ4で駆動され、内蔵のネジ棒、ボールネジ等で構成されるスライド制御機構を備えることにより、ベース盤1の上面で電線把持部10に対して離接する前後方向にスライド駆動されるスライド台2上に構成された被覆剥離部20と、同様にスライド台2上に構成されてカットされた電線カスをエア吸引する電線カス回収部30とを備えると共に、剥離された電線9の芯線9aに端子を圧着する圧着装置40(図4参照)が並置されている。
【0014】
電線把持部10は、側方に並置される圧着装置40への搬送装置として、ステップモータ49で駆動されるスライド機構を内蔵するベース盤41に載置されて、側方へスライド駆動されるスライド台42に構成されている。即ち、このスライド台に取付けられた基台19には、電線等を置く作業板11が載置されると共に、電線把持部本体10Aの基部10aが取付けられている。これにより、電線把持部10は、電線把持位置から圧着位置の直上位置に対応する予め設定されたスライドストロークに応じて駆動制御される。
【0015】
電線把持部本体10Aは、基部10aに設けられたガイド棒12に昇降可能にガイドされる昇降基部10bに支持された進退駆動用アクチュエータとしてのエアーシリンダ17で開閉駆動され、かつ互いに対向するV字形把持面を有する一対の電線把持爪15を備えている。即ち、図2に示すように、これらの電線把持爪は、下端が昇降基部10bの背面板10cにピンP2でそれぞれ枢着された支持アーム16に設けられると共に、その途中位置がエアーシリンダ17のシリンダロッドにボルト17aで取り付けられた上下可動子18にピンP1でそれぞれ枢着されたリンクアーム19の他端をピンP3で枢着されることにより、一対の電線把持爪15は、エアーシリンダ17の進退作動により待機位置及び電線把持位置間で開閉駆動される。一対の爪支持アーム16の一方にはボルト18aがねじ込まれ、そのボルトヘッド18cの突出量がナット18bの回転操作で調整されて、他方に設けられたボルトヘッド18dに当接することにより、閉鎖位置が電線の損傷を回避し得るように線径に応じて調整されるようになっている。
【0016】
また、基部10aのガイド棒12には、電線セットプレート13が、電線把持爪15に前置されるように取付けられている。その正面視形状は、図2に二点鎖線で示すように、線径の変化に対応して、電線把持爪15のV字形把持面に沿って電線中心が電線中心ラインL1に誘導され、V字形の最深部で把持されるように形成されている。
【0017】
基部10aには、昇降基部10bを圧着装置40の圧着位置に整合させるように下降駆動用アクチュエータとしてのエアーシリンダ13が下設され、昇降基部10bに突設された突子13bにボルト13aがねじ止めされ、ナット13cの回転操作により、基部10aに設けられたストッパ10dに拘束されるボルト下端の高さ位置が調整されることにより、図示の把持位置から圧着位置への下降ストロークが調整されるようになっている。
【0018】
スライド台2には、図1に示すように、前方から順に電線ガイド板21、刃の板厚分だけ僅かに前後方向に互いにシフトされ、かつ電線中心ラインL1をカット中心位置として互いに対向するV字形の先細刃形を有して上下方向に対向する一対のブレード22、照射光の遮断により電線9を検知する発光23a及び受光部23bよりなる光センサ23(図3参照)及び電線先端を当接させる電線ストッパ24とを備えた被覆剥離部20と、吸引パイプ34が突設され、回収袋37が背後に取付けられた吸引ポンプ31を有する電線カス回収部30とが搭載されている。
【0019】
一対のブレード22は、その開閉制御機構を構成するように、スライド台2に設けられたガイド棒22aに沿って昇降する上下一対のスライダ22bにそれぞれ取付けられると共に、スライド台2に取付けられた基部2aに、電線中心ラインL1に沿って進退駆動を行うステップモータ22cが取付けられ、その駆動ヘッド22dに上下両側に斜めの対称形状に形成されたガイド溝22eに、スライダ22bに設けられたピンP22が相対的に滑動可能に係入している。したがって、一対のブレード22は、スライダ22bが駆動ヘッド22dの前進により電線中心ラインL1に向けてカット位置に互いに接近し、後退駆動により待機位置へ離反するように開閉駆動される。
【0020】
電線ガイド板21は取付け板23cに取付けられ、想定される直径の電線9を挿通させる形状で、かつ一対のブレード22のスライド閉鎖時にそのV字形に沿って電線9を電線中心ラインL1に誘導させ得る高さ位置の開口部21aを備えている。電線ストッパ24は、図3に示すように、基部2aに設けられた進退駆動用アクチュエータとしてのエアシリンダ24aのシリンダロッドに取付けられて、電線当接位置及び電線先端を開放する逃げ位置間で水平方向へ進退駆動される。
【0021】
ガイド棒22aの上端に取付けられた取付け板23cには、図3に示すように、ブレード22の背後位置で、かつ電線ストッパ24の前側至近位置において電線中心ラインL1の両側で水平方向に対向するように電線当接センサとして発光部23a、受光部23bで構成される光センサ23が配置されている。これにより、電線ストッパ24の前側至近位置に沿って光照射され、電線ストッパ24に対して例えば1mm程度よりも十分接近した狭い領域での電線9による光遮断を検知できるようになっている。尚、シーケンス制御始動信号を発生させる電線当接センサとしては、発光・受光部が一方側に並置される光反射型光センサ或いは電線ストッパ24の表面で当接を直接検知するタッチセンサの採用も可能であるが、光遮断式の光センサ23により、前者に対して周辺物での反射による誤検知を確実に回避でき、後者に比べて当接感度を考慮することなく至近位置で実質上の当接状態を確実、かつ安価な構成で検知可能になる。
【0022】
電線カス回収部30の回収部本体としての回収袋37付きの吸引ポンプ31は、図1に示すように、スライド台2に設けられたレール32に前後にスライド可能にガイドされるスライド基部30aに支持されると共に、スライド台2に設けられた取付け板2bに取付けられた進退駆動用アクチュエータとしてのエアーシリンダ33により、図示の待機位置から吸引時に吸引パイプ34の先端がブレード22の背後の至近位置を占め得るように前進駆動される。
【0023】
電線把持部10は、図4に示すように、剥離動作の終了後、スライド台42の側方へのスライド駆動により、圧着装置40の正面にスライドし、次いでエアーシリンダ13の作動により昇降基部10bの予め設定された下降ストロークに応じた下降により受台43にセットされた端子44に、剥離された電線9の芯線9aをセットさせる。続いて、アクチュエータ付きの昇降制御機構45により、圧着爪46が端子44を圧着させ、その際高さ位置の整合により剥離芯線9aの屈曲が回避される。
【0024】
本発明の半自動式電線ストリップ装置には、図1に示すように、キー、ディスプレイ部等を有する入力部51での入力操作により、一対のブレード22の開閉駆動用ステップモータ22cに対して線種に対応する被覆の厚みの被覆カット位置及び完全カット位置へブレード22をスライド開閉させる開閉制御用設定データ及びスライド台2のスライド駆動用ステップモータ4に対して電線9の端末部カット位置、ストリップ長規定位置等に応じた前後方向のスライドストローク及びそのスライド方向並びに圧着装置40用のステップモータ49のスライドストローク等を規定するスライド制御用設定データを設定させて保持する設定データ保持手段52と、各ステップ動作用駆動部に対してそのステップ動作の始動或いは復帰を指令するステップ指令信号及び設定データに対応する制御信号を逐次出力するシーケンス制御手段53を構成するようにプログラムされたコンピュータ利用の装置制御部50が付属している。
【0025】
即ち、図5に示すように、次に説明するステップ動作を逐次実行させる。電線当接センサとしての光センサ23の当接検知信号によるシーケンス制御始動信号に応答して、所属のステップ指令信号を送出してエアシリンダ17を閉鎖駆動させることにより、把持爪15を逃げ位置から閉鎖方向へ移動させて電線9を把持させる(ステップS1)。動作時間を見込んだ直後の内蔵タイマのタイマ時間経過後に、スライド駆動用ステップモータ4に対して予め設定されたストロークに対応するパルス数で、かつ後退指示用のパルスを制御信号として送出して、ブレード22を動作基準位置(図6A参照)から電線先端よりも僅かに前寄りの端末部カット位置(同図B参照)に後退させるようにスライド台2をスライド駆動させると共に、所属のステップ指令信号によりエアシリンダ24aに対して電線ストッパ24を逃げ位置に後退駆動させる(ステップS2)。
【0026】
パルスの送出直後に、電線ストッパ24が逃げ位置に後退した状態で、所属のステップ指令信号によりエアーシリンダ33に対して吸引パイプ34の先端をブレード22の背後の至近位置に接近させるように前進駆動させると共に、吸引ポンプ31に対してエア吸引を行わせ、直後のタイマ時間経過後に送出される回転方向に対応の所定数のパルスである所属の制御信号によりステップモータ22cに対してブレード22を完全カット位置にスライド式に閉鎖駆動して完全カットを行わせて(同図B参照)、芯線9aを含む電線カスを吸引パイプ34から回収袋37に吸引回収させる(ステップS3)。
【0027】
直後のタイマ時間の経過後に、パルス状制御信号によりステップモータ22cに対してブレード22を待機位置にスライド式に開放駆動させた状態で、ステップモータ4に対してブレード22をストリップ長規定位置に移動させるように、設定されたパルス数の前進用の制御信号に応じて前進ストローク(同図C参照)分だけスライド台2をスライド駆動させる(ステップS4)。ステップモータ22cに対して所属のパルス状制御信号によりブレード22を被覆9bの厚みに応じた被覆カット位置(同図C参照)に閉鎖駆動させて被覆9bのカットを行わせる(ステップS5)。
【0028】
そのパルス状制御信号の送出直後に、ブレード22が被覆カット位置に閉鎖している状態で、ステップモータ4に対してブレード22を端末部カット位置よりも後方位置に移動させるように、所属の後退用のパルス状制御信号に応じた後退ストローク分(同図D参照)だけスライド台2をスライド駆動させ、吸引状態で連動する吸引パイプ34から端末部カット位置及びストリップ長規定位置間の長さに相当するストリップ長の剥離被覆9bを電線カスとして吸引回収させる(ステップS6)。
【0029】
続く所属の復帰用のステップ指令信号及び制御信号に応答して、被覆剥離部20のスライド台2及びブレード22、電線カス回収部30のスライド基部30aを原位置へ復帰させる(ステップS7)。さらに所属の制御信号及びステップ指令信号により、圧着装置40のベース盤41に内蔵のステップモータ49で電線把持部10を圧着装置30へ側方スライドさせ、直後のステップ指令信号により電線把持部本体10Aをエアシリンダ13で下降させてストリップ長の芯線9aを受台43にセットさせて、圧着装置40を始動させる。続くステップ指令信号により、次の電線9の剥離処理のために電線把持部10を原位置へ復帰させる(ステップS8)。
【0030】
このように構成された本発明の半自動式電線ストリップ装置の動作を図5及び図6を参照して説明する。予め所定の長さに切断された被覆電線9を手作業にて電線セットプレート13にセットし、開放状態の把持爪15を経由させて電線ガイド板21を挿通させ、電線中心ラインL1に沿って動作位置に在る電線ストッパ24に電線先端が当接すると、光センサ23が、電線ストッパ24に例えば1mmよりも十分近く接近している電線部分を検知して、ステップS1により、把持爪15が電線9を自動的に把持して(図6A参照)、以後自動的に剥離動作が進行する。
【0031】
ステップS2により、スライド台2が僅かに後退することにより、一対のブレード22は、把持された電線9の先端よりも例えば1mm程度前寄りの端末部カット位置に後退し、電線ストッパ24は逃げ位置に後退する。ステップS3により、吸引パイプ34の先端がブレード22の背後の至近位置に接近すると共にエア吸引も開始した状態で、ブレード22が完全カット位置にスライド閉鎖して電線9の端末部分の完全カットが行われて(同図B参照)、その電線カスが吸引パイプ34を経由して回収袋37に回収される。
【0032】
ステップS4により、ブレード22は、待機位置にスライド開放した状態で、端末部分の端末部カット位置からストリップ長に応じて、例えば5mm程度前進してストリップ長規定位置に前進し、ステップS5により、ブレード22が被覆9bの厚みに応じた被覆カット位置(同図C参照)に閉鎖駆動されて被覆9bがカットされる。
【0033】
ステップS6により、ブレード22が、被覆カット位置に閉鎖している状態で、端末部カット位置よりも例えば数mm程度後方位置に後退することにより(同図D参照)、吸引状態で連動後退する吸引パイプ34から例えば5mm程度のストリップ長の剥離被覆9bが電線カスとして吸引回収され、ステップS7により、被覆剥離部20の各部及び電線カス回収部30が初期状態に復帰する。
【0034】
最後に、ステップS8により、電線把持部10が側方の圧着装置30へスライドし、次いで電線把持部本体10Aが下降して、被覆9bの剥離された芯線9aは圧着位置にセットされて端子44の圧着が行われ、その際正確な高さ位置により圧着部分は曲がることなく電線9の直進方向に沿って直線状のままであり、続いて電線把持部10及び電線把持部本体10Aは原位置に復帰する。
【0035】
尚、前述の実施の形態において、シーケンス制御始動信号は、電線当接センサにより自動的に発生されるのを前提に説明したが、この半自動装置の別の実施の形態として、作業者が、被覆電線9を電線セットプレート13にセットし、開放状態の把持爪15を経由させて電線ガイド板21を挿通させ、電線ストッパ24への電線先端の当接を感知した時点で、フットスイッチ或いは押しボタンスイッチ等の作業者によるスイッチ操作でシーケンス制御始動信号を発生させて、電線把持以降のシーケンス動作を自動的に行わせるように構成することもできる。
【0036】
また、被覆剥離部20のスライド台2のスライド制御機構、一対のブレード22の開閉制御機構及び電線把持部10の圧着装置40へのスライド機構には、制御信号に応答して位置制御可能なステップモータをそれぞれ付属させて制御駆動部を構成したが、サーボモータにより、それぞれ設定された目標位置検知のフィードバック信号に応答させて制御駆動を行うことにより、シーケンス制御を逐次実行させるようにもできる。
【符号の説明】
【0037】
L1 電線中心ライン
2 スライド台
4、22c、49 ステップモータ
9 電線
9a 電線の芯線
9b 電線の被覆
10 電線把持部
10A 電線把持部本体
13 電線セットプレート
15 電線把持爪
17、24a、33 エアーシリンダ
18c ボルトヘッド
20 被覆剥離部
21 電線ガイド板
22 ブレード
23 光センサ
24 電線ストッパ
30 電線カス回収部
30a スライド基部
31 吸引ポンプ
34 吸引パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉駆動される両側一対の電線把持爪に手作業により電線をセットした状態で、電線把持爪に対面し、かつ電線の先端を当接させる電線当接位置及び電線先端を開放する逃げ位置間を進退駆動される電線ストッパに電線先端を当接させると、その際発生されるシーケンス制御始動信号に応答して、電線を把持した位置固定の電線把持爪に対して離接する前後方向にスライド可能で、かつ待機位置及びカット位置間で開閉駆動される両側一対のブレードをスライド駆動させて、電線の被覆をブレードにより所定のストリップ長に剥離し、電線ストッパを逃げ位置に後退させた状態で剥離被覆を背後へ吸引回収させる半自動式電線ストリップ方法において、
シーケンス制御始動信号に応答して電線把持爪を閉鎖駆動することにより電線を把持させるステップと、ブレードを前記電線先端よりも僅かに前寄りの端末部カット位置にスライド駆動させるステップと、電線ストッパを逃げ位置に後退駆動させた状態で前記ブレードを前記端末部カット位置で閉鎖駆動して芯線を含めて前記電線の端末部を完全カットさせて電線カスを吸引回収させるステップと、前記ブレードをストリップ長規定位置にスライド駆動させるステップと、前記ブレードを被覆カット位置に被覆の厚みに応じて閉鎖駆動させて前記被覆をカットさせるステップと、前記ブレードを前記被覆のカット状態で前記端末部カット位置よりも後方位置にスライド駆動させて、前記端末部カット位置及び前記ストリップ長規定位置間の長さに相当するストリップ長を有する剥離被覆を電線カスとして吸引回収させるステップとを備えることを特徴とする半自動式電線ストリップ方法。
【請求項2】
手作業により電線がセットされ、かつ待機位置及び電線把持位置間で互いに開閉駆動される両側一対の電線把持爪を有する電線把持部と、この電線把持部に対して離接する前後方向に予め設定されたスライドストロークに応じてスライド駆動させるスライド制御機構が付属するスライド台とを備えると共に、このスライド台に、前記電線把持爪に対面し、かつ前記電線の先端を当接させる電線当接位置及び電線先端を開放する逃げ位置間を進退駆動される電線ストッパと、待機位置及び閉鎖位置が制御されるカット位置間で開閉駆動を行わせる開閉制御機構が付属する両側一対のブレードとが搭載されると共に、前記電線把持爪、前記スライド制御機構、前記電線ストッパ及び前記開閉制御機構をシーケンス制御するシーケンス制御手段を備えることにより、前記電線先端が前記電線ストッパに当接された際に発生されるシーケンス制御始動信号に応答して、前記電線把持爪で前記電線を把持させた状態で、ストリップ長に応じて前記スライド台をスライド駆動して前記ブレードで前記電線の被覆をカットして、その電線カスを吸引により背後に回収するようになった半自動式電線ストリップ装置であって、
前記開閉制御機構が、前記ブレードを前記被覆の厚みに応じた被覆カット位置に加えて、芯線を含めて前記電線をカットさせる完全カット位置に閉鎖駆動し得るように構成されると共に、前記シーケンス制御手段が、前記シーケンス制御始動信号に応答して前記電線把持爪に対して前記電線把持位置に閉鎖駆動させるステップと、前記スライド制御機構に対して前記ブレードを前記電線先端よりも僅かに前寄りの端末部カット位置に移動させるように前記スライド台をスライド駆動させるステップと、前記電線ストッパに対して前記逃げ位置に後退駆動させた状態で、前記開閉制御機構に対して前記ブレードを前記完全カット位置に閉鎖駆動して完全カットを行わせてその電線カスを吸引回収させるステップと、前記閉制御機構に対して前記ブレードを前記待機位置に開放駆動させた状態で、前記スライド制御機構に対して前記ブレードをストリップ長規定位置に移動させるように前記スライド台を前進方向へスライド駆動させるステップと、前記開閉制御機構に対して前記ブレードを前記被覆カット位置に閉鎖駆動させて前記被覆のカットを行わるステップと、前記前記スライド制御機構に対して前記ブレードの前記被覆カット状態で前記端末部カット位置よりも後方位置に移動するように前記スライド台を後退駆動させることにより、前記端末部カット位置及び前記ストリップ長規定位置間の長さに相当する前記ストリップ長を有する剥離被覆を電線カスとして吸引回収させるステップとを逐次実行させることを特徴とする半自動式電線ストリップ装置。
【請求項3】
電線カスを吸引する電線カス回収部が、前方へ吸引パイプが突設され、かつスライド台に搭載された状態でスライド台上で前後方向へスライド可能な吸引ポンプと、この吸引ポンプを前記スライド台上で前後方向へ進退駆動する進退駆動部とを備えると共に、シーケンス制御手段が、電線ストッパが逃げ位置に後退駆動されるのに次いで前記吸引パイプ先端がブレードの背後位置を占めるように、前記進退駆動部が前記吸引ポンプを前方へスライド駆動させることを特徴とする請求項2記載の半自動式電線ストリップ装置。
【請求項4】
シーケンス制御始動信号が、作業者により操作されるスイッチ、電線ストッパへの電線先端の当接を検知するタッチセンサ及び前記電線ストッパの前側至近位置で電線を検知する光センサのいずれかで発生されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の半自動式電線ストリップ装置。
【請求項5】
一対の電線把持爪の一方に、他方の前記電線把持爪に対する突出量を回転操作により調整し得るようにボルトがねじ込まれることにより、他方の前記把持爪へ当接する前記ボルトヘッドの突出位置が、電線の線径に応じて調整されることを特徴とする請求項2乃至又は請求項4のいずれか記載の半自動式電線ストリップ装置。
【請求項6】
請求項1乃至又は請求項5のいずれか記載の半自動式電線ストリップ装置電線の側方に、剥離芯線に端子を圧着する圧着装置が並置されると共に、電線把持部が、圧着装置の圧着位置に対応する予め設定されたスライドストロークに応じて側方へスライド駆動させるスライド制御機構が付属するスライド台に搭載され、
さらに、電線把持爪を有する電線把持部本体が、下降駆動用アクチュエータにより、前記電線把持爪を圧着動作に整合する予め調整された高さ位置に電線把持位置から下降し得るように、前記スライド台に昇降可能に構成され、
シーケンス制御手段が、ストリップ長を有する剥離被覆を電線カスとして吸引回収させるステップに続いて、前記スライド台をスライド駆動させるステップと、前記下降駆動用アクチュエータを作動させるステップとを逐次実行させることを特徴とする半自動式電線ストリップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−234597(P2011−234597A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105677(P2010−105677)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(505033466)株式会社エルメック (2)
【Fターム(参考)】