説明

半調理食品及びその製造法

【課題】所望の料理を構成する複数種類の食材を組合せて提供し、需要者が加熱調理をするだけで、最良の調理状態を実現できる半調理食品を提供する。
【解決手段】煮込み時間の掛かる食材は味付け調理程度が大きな下味付け調理を施し、煮込み時間の掛からない食材は調理程度が小さな下味付け調理を施し、下味付け調理を施した複数種類の食材を組合せ、真空パック状態で急速冷凍する。組合せる食材によって、野菜類には略20%、魚介類には略30%、畜産物には略40%、練り製品には略25%の下味付け調理を施す。需要者は、添付した調味液を加えて加熱することによって、短時間で全体の食材が最適状態に味付けされた状態の煮込み料理が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半調理状態の食品を例えば老人世帯や単身者や多忙な人に提供し、より簡単な加熱調理を行うことによって、主として鍋料理などの煮込み料理を美味しく食することができる完全な調理状態とすることができる半調理食品及びその製造法を提供することを目的とする発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から、老人世帯や単身者などに対し、料理に必要な食材を組合せて提供するサービスや、調理済み食品を冷凍し、電子レンジや湯煎によって加熱することによって食することができる商品が知られている。特許文献1には、生の食品素材と調味料を組合せた電子レンジ用調理食品の発明が開示されている。特許文献2には、食材と調味料を組合せた包装体であって、電子レンジで加熱する発明が開示されている。このとき、牛肉に予め焦げを付けておく発想が示されている。特許文献3には、生の具材と調味料とをスチームパックに詰めて冷凍し、電子レンジで加熱調理をする冷凍食品が開示されている。
【特許文献1】特開2003−180263号公報
【特許文献2】特開2005−350109号公報
【特許文献3】特開2006−211970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている発明は、一体化した各種の食材を電子レンジで加熱して食するものであり、味の染み込んだ煮込み料理を実現することはできない。特許文献2に記載された発明は、食材と内袋に包装された調味液を外袋に収容しておき、電子レンジで加熱することによって調味液の内袋が破れ、外袋内で食材と調味液が混合し、包装袋から取り出して調理をする必要がないというものである。特許文献3に記載された発明は、具材と調味料をスチームパックに密封した状態で冷凍し、電子レンジで加熱調理を行うものである。特許文献1ないし3に記載された発明は、いずれも電子レンジによって食材全体を加熱するものであるため、食材の種類の違いによる加熱調理の程度を変化させることができず、特に最適に調理された鍋料理などを再現することはできなかった。
【0004】
従来、各種料理を完全に調理した状態で冷凍し、電子レンジや湯煎などによって加熱して食する食品も知られているが、このようなものでは調理の完了から冷凍状態で長時間が経過しているため、調理直後の新鮮な状態を再現することができない。勿論、調理済み状態で長時間が経過したものでは、野菜などの新鮮さを再現することはできず、適度に調理された新鮮な鍋料理を実現することは出来なかった。また、新鮮な食材をセットして提供するサービスであっても、少量の食材を同じ条件で加熱調理を行うと、食材によって調理程度の進行が異なるため、全体を美味しく調理することが困難であるとともに、調理に時間を要する欠点があった。
【0005】
上記、従来技術の欠点に鑑み本発明は、少量ずつ複数種類の食材を組合せた状態で提供し、提供された食材を調味液で全体を煮ることによって、食材全体が新鮮で最も美味しい状態に短時間で調理することができる半調理食品、及び半調理食品の製造法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、複数の食材をそれぞれに下味付け調理を施したものを、所望の料理に応じて複数種類の食材を組合せ、真空パック状態で急速冷凍したものである。この際、煮込み時間の掛かる食材は味付け調理程度を大きく、煮込み時間の掛からない食材は調理程度が小さな下味付け調理を施しておく。
上記、半調理食品を食する場合は、組合された食材全体を別に提供する調味液で煮立てることによって、食材全体が最適の状態に加熱調理される。調味液は、例えば味付けされた出し汁を利用する。
【0007】
請求項2記載の発明は、半調理食品として組合せる食材が、野菜類、魚介類、畜産物、練製品に属する食材を含むものであって、野菜類は略20%、魚介類は略30%、畜産物は略40%、練り製品は略25%の下味付け調理を施すことを特徴とする請求項1記載の半調理食品である。
【0008】
請求項3記載の発明は、上記半調理食品の製造法に係るものである。請求項1記載の半調理食品を製造するには、複数種類の食材を、食材ごとに下味付け調理を施す予備調理工程と、予備調理工程によって下味付けされた食材を組合せて容器に収容する組合せ盛り付け工程と、複数種類の食材を組合せて盛り付けた状態で真空パックをする真空パック工程と、真空パックがされた食材全体を急速冷凍する急速冷凍工程とによって製造することができる。請求項2記載の半調理食品を製造するには、複数種類の食材として、野菜類、魚介類、畜産物、練製品に属する食材を含み、加熱時間の設定によって野菜類には20%程度、魚介類には30%程度、畜産物には40%程度、練製品には25%程度の下味付け調理を施す。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、複数種類の食材を組合せた冷凍状態の本発明品を鍋に入れて調味液によって煮立てると、全ての食材が食べごろで、味が適度に染み渡った状態に調理される。すなわち、下味付けされた食材を、単に調味液を含む状態で加熱することによって味付けが完了し、味付け不足の部分と過剰部分が生じることなく、最適の状態で食することができるものである。また、組合わされた食材は、半調理の状態で急速冷凍しているため栄養分が損なわれることなく、新鮮さを維持することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、野菜類、魚介類(海産物)、畜産物、練製品などを組合せて、各種の鍋料理を提供することができる。そして、食材ごとに請求項2記載の調理程度の下味付けをしておくことによって、煮立てるだけで最適の調理状態とすることができるものである。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、合理的な方法によって、請求項1記載の半調理食品を製造することができる。また、食材ごとに下味付け調理をした食材を任意に組合せることによって、種類の異なる料理、例えば魚チリやかき鍋、ちゃんこ鍋などを効率的に供給することができる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、各食材を上記程度に下味付けすることによって、煮込むことなく、煮立てるだけの短時間で最適の調理状態を実現することができる。そして、野菜類、魚介類(海産物)、畜産物、練製品によって調味程度を大別して下味付け調理をすることによって、効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る半調理食品及びその製造法の実施形態を、添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る半調理食品の製造工程を示す流れ図である。図1においては、食材として大別して野菜類、魚介類、畜産物、練製品を例示している。これらの食材は、調理しようとする料理によって、複数種類を任意に組合すことができる。
【0014】
食材1は、予備的な調理として、下味付け調理を行う。下味付け調理工程2は、食材ごとに調味料を加えた加熱調理であって、各食材が完全に味付け調理される調理時間よりも短い加熱時間の調理を意味する。このとき、食材の性質によって、味が染み易く火の通りの良い食材は短時間の調理を、味が染み難く火の通りの悪い食材は多少長時間の加熱調理を行う。各食材の調理程度は、解凍後の再度の短時間の加熱調理によって最適の調理状態となるように調整する。
【0015】
具体的には、野菜類には略20%、魚介類には略30%、畜産物には略40%、練り製品には略25%程度の下味付け調理を施す。上記調理程度は、各食材の加熱調理に必要な時間を基準として、調理時間によって調整することができる。もっとも、一概に野菜類や魚介類といっても、具体的な食材によって必要な調理時間は異なるものであり、よりきめ細かに食材ごとに下味付け調理工程の調理時間を設定するのが好ましい。しかしながら、全体の食材を上記食材に大別して調理時間を設定すると、取扱い上便利で、全体として大過なく最終的な解凍後の加熱調理によって良好な状態に調理を完了させることができる。上記魚介類には、海産物を含む。
【0016】
下味付け工程2によって、予備的な調理が完了した食材は、提供しようとする料理に応じて食材を組合せて盛り付ける、組合せ盛り付け工程3に供給する。組合せ盛り付け工程3において盛り付けられた半調理状態の食品は、真空パック工程4において真空パックされ、風味や新鮮さを閉じ込め、急速冷凍工程5によって冷凍し、風味や新鮮さを維持させる。
【0017】
すなわち、図3に示すように、容器6に半調理状態の食材1を収容した状態で真空パック7をし、需要者に提供される。提供された需要者は、真空パック7から取り出して食材を鍋に入れ調味液を加えて加熱することによって、最適の状態に加熱調理された料理を食することができる。
なお、本発明は、長期保存のための保存食品を目的とするものではなく、日常の料理としての手軽さを提供するものであるため、冷凍後可及的速やかに需要者に提供し、提供された需要者はできるだけ早い期間に利用するのが好ましい。しかしながら、例えば生の生鮮野菜を冷凍保存することはできないが、半調理状態で冷凍するものであるため、比較的長時間新鮮な状態を維持することができる。
【0018】
〔実施例1〕
図2には、容器6に食材を盛り付けた料理の一例を示している。図2において、8は南瓜26g、9はむきえび9g、10は小芋19g、11は鶏肉27g、12は大阪はんぺい37g、13はだし巻き38g、14は焼きあなご7g、15はかまぼこ4g、16はしいたけ22g、17は竹輪15g、18は人参18g、19はたこ6gである。容器6の内底面には、白菜136gや高野豆腐19g、戻したキザミ昆布5gを配置してあり、このままの状態で鍋に移して調味液を加えて加熱調理するだけで、あっさりとした低カロリー(317kcal)の鍋料理が完成する。
調味液は、出し汁200グラムに醤油8グラム、砂糖3グラム、みりん6グラムを使用する。
【0019】
〔実施例2〕
容器に収容する食材として、白菜147g、キザミ昆布5g、竹輪15g、かまぼこ8g、しいたけ28g、人参16g、玉ねぎ17g、糸こんにゃく27g、牛肉34g、だし巻き12g、焼き豆腐26g、ほうれん草12g、しめじ13g、調味液として、出し汁100グラムに醤油8グラム、砂糖3グラム、みりん6グラムを組合せることによって、低カロリー(322kcal)の新鮮なすき焼き料理を提供することができた。
【0020】
〔実施例3〕
容器に収容する食材として、白菜130g、キザミ昆布5g、しいたけ25g、カニ爪28g、つみれ40g、しゅうまい40g、山菜17g、焼き豆腐27g、豚肉23g、人参18g、しな竹19g、調味液として中華だし汁200g、醤油5gを組合せることによって、低カロリー(303kcal)の新鮮な中華鍋料理を提供することができた。
【0021】
〔実施例4〕
容器に収容する食材として、キザミ昆布5g、高野豆腐24g、しいたけ30g、人参16g、さきがけゴボウ21g、かき100g、キャベツ140g、しめじ15g、玉ねぎ40g、ほうれん草12gと、調味液として出し汁200グラムに醤油8グラム、みりん10グラム、砂糖7グラムを組合せることによって、低カロリー(216kcal)の新鮮なかき鍋料理を提供することができた。
【0022】
本発明は要するに、食材ごとにした味付け調理の程度を異ならせた複数種類の食材を組合せて一つの料理を完成させて真空パックし、冷凍状態で提供するものであり、需要者が調味液を加えて加熱することによって、最適の味付け状態で調理完了するものである。そして、半調理の状態で冷凍して需要者に提供するため、生の食材を提供するよりも保存性に優れ、多忙な人でも野菜を中心とした新鮮な料理を、手軽に食することができるものである。
【0023】
実施例に示すような、生鮮食材を中心に組合せることによって、従来の冷凍食品にはない、低カロリーで新鮮な鍋料理などを提供することが可能であり、糖尿病の人や老人家族でも安心して食することができる日常食を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明に係る半調理食品の製造工程を示す流れ図、
【図2】図2は、容器に食材を盛り付けた状態の一例を示す斜視図、
【図3】図3は、容器に食材を盛り付け真空パックした状態の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…食材、 2…下味付け調理工程、 3…組合せ盛り付け工程、 4…真空パック工程、 5…急速冷凍工程、 6…容器、 7…真空パック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煮込み時間の掛かる食材は味付け調理程度が大きな下味付け調理を施し、煮込み時間の掛からない食材は調理程度が小さな下味付け調理を施し、該下味付け調理を施した複数種類の食材を組合せ、真空パック状態で急速冷凍したことを特徴とする半調理食品。
【請求項2】
組合せる食材が、野菜類、魚介類、畜産物、練製品に属する食材を含むものであって、野菜類には略20%、魚介類には略30%、畜産物には略40%、練り製品には略25%の下味付け調理を施したことを特徴とする請求項1記載の半調理食品。
【請求項3】
複数種類の食材を、食材ごとに下味付け調理を施す予備調理工程と、予備調理工程によって下味付けされた食材を組合せて容器に収容する組合せ盛り付け工程と、複数種類の食材を組合せて盛り付けた状態で真空パックする真空パック工程と、真空パックされた食材を急速冷凍する急速冷凍工程とを含むことを特徴とする半調理食品の製造法。
【請求項4】
複数種類の食材は、野菜類、魚介類、畜産物、練製品に属する食材を含み、加熱時間の設定によって野菜類には20%程度、魚介類には30%程度、畜産物には40%程度、練製品には25%程度の下味付け調理を施すことを特徴とする請求項3記載の半調理食品の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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