説明

半連続的及び連続的酵素加水分解プロセス

【課題】半連続的及び連続的酵素加水分解プロセスの提供。
【解決手段】本発明は、エステル又はアミノ酸エステル又はリン酸エステル基などとして保護されたアルコール基の位置選択的な酵素加水分解のための半連続的又は連続的プロセスに関する。本発明のプロセスは、例えば、複数の加水分解性基を有するピラノシドやフラノシドの選択的酵素加水分解などに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル又はアミノ酸エステル又はリン酸エステル基などとして保護されたアルコール基の位置選択的な酵素加水分解のための改善されたプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、保護されたアルコール基をリボース部分の5’位の基において選択的に加水分解することで調製される、ある種のD−リボフラノシル化合物を記載している。しかしながら、特許文献1に記載されている酵素加水分解プロセスには、例えば、反応時間が長い、加水分解の選択性が乏しい、バッチごとに大きな容器が必要となる、何回かの濾過工程を要する、酵素の再利用に困難を伴う、などといった不均一系プロセス(heterogeneous process)特有の欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第05/121162号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来用いられてきた位置選択的酵素加水分解プロセスの欠点の多くを克服する、位置選択的酵素加水分解のための改善されたプロセスを提供する。本発明によれば、複数の加水分解性基を有する基質を位置選択的に酵素加水分解する半連続的又は連続的プロセスを用いることで、驚くべきことに、加水分解の選択性が高まり、かつ、不要な加水分解生成物を含む不純物が低減することが見出された。さらに、このような半連続的又は連続的プロセスは、従来用いられてきた、時間とコストがかかるにも関わらず、処理量の少ないバッチプロセスに対して長期的かつ経済的な解決策となる。本発明のプロセスは、国際公開第05/121162号パンフレットに記載されているプロセスなどと比較して、サイクルタイムを劇的に低減でき、かつ、総容量が小さい状態での実施、という影響を最小限にできる。これは、プロセスの量を増やす、プロセスのスケールアップにおいて特に意味を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、その最も広い態様において、本発明は、複数の加水分解性基を含む基質を位置選択的に酵素加水分解するプロセスであって、上記酵素加水分解を半連続的又は連続的に行うプロセスを提供する。
【0006】
本発明の半連続的又は連続的プロセスにおいて、典型的には、付加物の緩衝液を固定化酵素中に通液する。本発明において「半連続的」又は「連続的」という用語は、カラムへの通液をおおよそ連続的(中断しても、しなくてもよい)に行うプロセスを指すものである。好適な滞留時間の後に、付加物は完全に加水分解されるが、これは、例えば、カラムから回収され、その後抽出される物質を含む溶液のpHをモニタリングするなどして、その場でモニタリングできる。半連続的又は連続的プロセスの各臨界パラメータをそれぞれ個々に、例えば基質や酵素などに応じて調整する必要があり、個別のケースごとに経験的に決定できる。このようなパラメータとしては、例えば、滞留時間、カラムの充填剤、最適pH、温度、付加物の濃度、有機溶媒の選択などが挙げられる。例えば滞留時間は、付加物の加水分解が最適な状態となるように、即ち、高い選択性を有し、かつ、迅速な変換反応となるように調整し、典型的には、0.1分〜300分であってもよい。例えば滞留時間は、酵素活性、温度、pH、溶媒系に依存しており、当該滞留時間の調整は、プロセスが半連続的又は連続的に行われ、かつ、加水分解が上述のように最適な状態となるように行う。pH及び温度は、通常、加水分解反応において酵素が必要とする条件に基づいて選択する。例えば、pHは5〜8など、又は5.5〜7.5などの範囲であってもよい。温度は15℃〜70℃などの範囲であってもよい。
【0007】
酵素反応に好適な緩衝液を使用してもよく、例えば、リン酸緩衝液、アンモニウム緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液などが挙げられる。
【0008】
さらに、付加物及び生成物を完全に溶解させるために、好適な有機成分を使用することもできる。有機成分としては、典型的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、ter−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、イオン液体、二酸化炭素などの圧縮ガス、水などといったものや、それらの混合物などが挙げられる。他のアルコール、エーテル、ケトンもまた想定できる。
【0009】
さらに、反応速度を高めるなどといった目的で添加物を使用することもできる。添加物としては、典型的には、PEG(1%〜10%)、NaCl、NaSO、FeClなどが挙げられる。このような添加物の好適な濃度は経験的に決定でき、典型的には、0.05M〜1Mの濃度範囲であってもよい。簡便なことに、添加物は付加物の溶液に添加することができる。
【0010】
酵素は物理的担体(固形担体など)に固定化する。本発明において好適な、固定化酵素の物理的担体としては、カラム、連続式攪拌槽、充填層反応器、膜型反応器、膜などが挙げられる。加水分解に好適なあらゆる酵素を本発明において使用することができる。そのような酵素としては、例えば、エステラーゼ、加水分解酵素、リパーゼなどが挙げられる。
【0011】
本発明のプロセスに好適な基質は、少なくとも2つの加水分解可能な基、即ち、例えば2つのアセテート、ベンゾエートなどを含む。このような基の典型例としては、エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステルとして保護されたアルコール基が挙げられる。一実施形態において、基質はピラノシド又はフラノシドである。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、基質は、以下の式(1)〜(21)で一般的に(立体化学的表示ではなく)表される化合物である。
【0013】
【化1−1】

【0014】
【化1−2】

[式中、
Rはそれぞれ独立して、H、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、−NR’R’’、−SR’’’、ハロゲンであり;
R’及びR’’はそれぞれ独立して、アルキル、−SR’’’、−SOR’’’、−SOR’’’であり;
R’’’はそれぞれ独立して、H、アルキル、アリールであり;
はそれぞれ独立して、H;−C(O)R;ラセミ体の、L体の若しくはD体のアミノ酸基 −C(O)CHNHR、−C(O)CH(C1−6アルキル)NHR;リン酸エステル基であり;
はC1−18アルキルであり;
はH、−C(O)CH(C1−6アルキル)NH、又は、−C(O)CH(CH−アリール)NHであり;
Bは核酸塩基であり;
X、Y及びY’はそれぞれ独立して、−CH−、−CHR’−、−CR’R’’−、又は、O、NR’’’、Sであり、ここで、R’及びR’’はそれぞれ独立してアルキルであり、R’’’はH又はアルキル又はCO(Z)(ZはO−アルキル又はNH−アルキル又はN−アルキル)であり;
はH、−C(O)CH(C1−6アルキル)NH、又は、−C(O)CH(CH−アリール)NHである]
【0015】
「アルキル(基)」という用語は、本明細書中では、直鎖、分枝又は環状部分(縮合状の二環及びスピロ環部分、並びに、橋かけ構造を有する二環及びスピロ環部分を含む)、あるいは上記部分の組み合わせの構造を有する、一価の飽和炭化水素基を包含する。好ましいアルキル基の例としては、C1−18又はC1−12アルキルが挙げられる。アリール基は置換されていなくても、任意の位置で置換されていてもよい。当該アリール基は典型的には0、1、2又は3つの置換基を有する。別の好ましい実施形態において、アルキル基は低級アルキル、例えば、C1−6、より好ましくはC1−4などである。特に好ましいのは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec.−若しくはtert.−ブチル、n−若しくは分枝ペンチルである。アルキル基は置換されていなくても、任意の位置で置換されていてもよい。当該アルキル基は典型的には0、1、2又は3つの置換基を有する。
【0016】
「アルケニル(基)」という用語は、本明細書中では、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するアルキル部分(アルキルは上記定義の通り)を包含し、上記アルケニル部分のE及びZ異性体を含む。「アルキニル(基)」という用語は、本明細書中では、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有するアルキル部分(アルキルは上記定義の通り)を包含する。
【0017】
「アリール(基)」という用語は、本明細書中では、芳香族炭化水素から1つの水素を取り除いた有機基を包含し、典型的にはC6−10アリール基である。アリール基は置換されていなくても、任意の位置で置換されていてもよい。当該アリール基は典型的には0、1、2又は3つの置換基を有する。典型例としてはフェニル又はナフチルが挙げられる。
【0018】
「リン酸エステル(基)」という用語は、本明細書中では、1つ又は複数のリン酸基を含み、例えば、−(HO(PO)OH)−(HO(PO(OH))OH)(mは0、1又は2であり、nは0、1、2、3、4、5である)が挙げられる。
【0019】
また、本発明におけるアルキル又はアリール基は、例えば1つ以上のハロゲン(F、Cl、Br、I)置換基でさらに置換することもでき、又は、1つ以上の以下の置換基:シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、−NH、−NH−アルキル、−N(アルキル)、−NH−アリール、−N(アルキル)(アリール)、−N(アリール)、−NHCHO、−NHC(O)アルキル、−NHC(O)アリール、−N(アルキル)C(O)H、−N(アルキル)C(O)アルキル、−N(アリール)C(O)H、−N(アリール)C(O)アルキル、−NHCOアルキル、−N(アルキル)COアルキル、−NHC(O)NH、−N(アルキル)C(O)NH、−NHC(O)NH−アルキル、−NHC(O)N(アルキル)、−N(アルキル)C(O)NH−アルキル、N(アルキル)C(O)N(アルキル)、−NHSO−アルキル、−N(アルキル)SO−アルキル、−C(O)アルキル、−C(O)アリール、−OC(O)アルキル、−OC(O)アリール、−CO−アルキル、−CO−アリール、−COH、−C(O)NH、−C(O)NH−アルキル、−C(O)N(アルキル)、−C(O)NH−アリール、−C(O)N(アリール)、−C(O)N(アルキル)(アリール)、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−SOアルキル、−SOアリール、−SONH、−SONH−アルキル、及び、−SON(アルキル)などでさらに置換することもできる。
【0020】
「ハロゲン(halo)」又は「ハロゲン(halogeno)」という用語は、本明細書中では、F、Cl、Br又はIをいう。
【0021】
本発明において核酸塩基という用語は、国際公開第05/121162号パンフレットなどに例示されているような、核酸中に取り込まれることとなる任意の好適な塩基をいう。
【0022】
一実施形態においては、1つ以上の加水分解可能な保護された第二級アルコール基(第二級アルコールのエステルなど)の存在下で、加水分解可能な保護された第一級アルコール基(第一級アルコールのエステルなど)が選択的に加水分解される。
【0023】
本発明の好ましい態様の一つにおいて、上記リボフラノシドはリボフラノシルチアゾロ[4,5−d]ピリミジンである。好適な化合物は、例えば国際公開第05/121162号パンフレットに記載されている。当該文献は、3−β−D−リボフラノシルチアゾロ[4,5−d]ピリミジンヌクレオシドに関するものである。一実施形態において、上記化合物は国際公開第05/121162号パンフレットの化合物89である。
【0024】
従って、好ましい態様の一つにおいて、基質は式22の化合物である。
【0025】
【化2】

[式中、
1a、R1b及びR1cはそれぞれ独立して、H;−C(O)R;ラセミ体の、L体の若しくはD体のアミノ酸基 −C(O)CHNHR、−C(O)CH(C1−6アルキル)NHRであるか、又は、R1b及びR1cは一体となって−C(O)−を成し、酸素原子と共に5員環のカーボネート環を形成しており;
はH、OR、又は、N(Rであり;
はC1−18アルキルであり;
はH、−C(O)CH(C1−6アルキル)NH、又は、−C(O)CH(CH−アリール)NHであり;
はそれぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C3−7アルケニル、C3−7アルキニル、−(CR(C−C10アリール)、−(CR(C−C10シクロアルキル)、−(CR(C−C10ヘテロサイクリル)、−(CRt>1OH、−(CRt>0CO1−18アルキル、及び、−(CRt>0N(R)CO1−18アルキル、及び、SO(アリール)(上記においてtは0〜6の整数)であり;
上記各基のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロサイクリル部分は、それぞれ独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、−NH、−NH−アルキル、−N(アルキル)、−NH−アリール、−N(アルキル)(アリール)、−N(アリール)、−NHCHO、−NHC(O)アルキル、−NHC(O)アリール、−N(アルキル)C(O)H、−N(アルキル)C(O)アルキル、−N(アリール)C(O)H、−N(アリール)C(O)アルキル、−NHCOアルキル、−N(アルキル)COアルキル、−NHC(O)NH、−N(アルキル)C(O)NH、−NHC(O)NH−アルキル、−NHC(O)N(アルキル)、−N(アルキル)C(O)NH−アルキル、N(アルキル)C(O)N(アルキル)、−NHSO−アルキル、−N(アルキル)SO−アルキル、−C(O)アルキル、−C(O)アリール、−OC(O)アルキル、−OC(O)アリール、−CO−アルキル、−CO−アリール、−COH、−C(O)NH、−C(O)NH−アルキル、−C(O)N(アルキル)、−C(O)NH−アリール、−C(O)N(アリール)、−C(O)N(アルキル)(アリール)、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−SOアルキル、−SOアリール、−SONH、−SONH−アルキル、及び、−SON(アルキル)から選択される置換基で置換されていてもよく;
はそれぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C−C10シクロアルキルであるか、又は、窒素と共に5若しくは6員環の複素環を形成しており;
及びRはそれぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、又は、C2−6アルキニルであり;
はH、C1−6アルキル、又は、−CH−アリールであり;
当該化合物は少なくとも2つの加水分解性基を含む]
【0026】
一実施形態において、本発明は、以下の場合の式22の化合物に関する。式22の式中、RはH又はORであり、当該化合物は少なくとも2つの加水分解性基を含む。
【0027】
別の実施形態において、本発明は以下の場合の式22の化合物に関する。
式22の式中、
1a、R1b及びR1cはそれぞれ独立して、H;−C(O)R;ラセミ体の、L体の若しくはD体のアミノ酸基 −C(O)CH(C1−6アルキル)NHであり;
はORであり;
はC1−18アルキルであり;
はそれぞれ独立して、C1−6アルキル、C3−7アルケニル、C3−7アルキニル、−(CR(C−C10アリール)、−(CR(C−C10ヘテロサイクリル)、及び、−(CRt>0N(R)CO1−18アルキル(特に指定のない限り、上記においてtは0〜4の整数)であり;
上記各基のアルキル、アルケニル、アリール、及びヘテロサイクリル部分は、それぞれ独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、−CO−アルキル、−CO−アリール、−OC(O)アルキル、及び、−OC(O)アリールから選択される1〜3つの置換基で置換されていてもよく;
及びRはそれぞれ独立して、H、C1−6アルキル、又は、C2−6アルケニルであり;
はH、−CH、又は、−CHCHである。
【0028】
別の実施形態において、本発明は以下の場合の式22の化合物に関する。式22の式中、R1a、R1b及びR1cはそれぞれ独立して、H、−C(O)Rであり、RはHであり、Rは低級アルキルである。別の実施形態において、R1a、R1b及びR1cはH、−C(O)Rであり、RはHであり、Rは低級アルキルである。
【0029】
本発明に係る連続的プロセスによる位置選択的加水分解に好適な他の基質の例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0030】
【化3−1】

【0031】
【化3−2】

[式中、
Rは上記定義の通りであり;
、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、−NR’R’’、−SR’’’、ハロゲンであり;
R’、R’’及びR’’’は上記定義の通りであり;
Bは核酸塩基である]
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0032】
【化4】

【0033】
Candida Antarcticaリパーゼ:Novozym 435(約1g)を1cm径のヌッチェフィルターに充填した。当該フィルターに付加物の溶液(約1gの付加物をt−ブタノール9mL及びpH7.0リン酸緩衝液16mL中に溶解したもの)を約1.6mL/分(約0.2バールの圧力)で全て投入し終わるまで通液した。NaHPO溶液により、濾過した混合物のpHを絶えず6.3〜6.5に保った。約2時間後に反応が完了した。その後、容易に分液を行うことができ、得た水相を2−メチルテトラヒドロフラン約20mLで一回抽出した。有機相を合わせて、一回水洗し、減圧濃縮して、粗生成物を90%を超える収率、過度の加水分解の副生成物量:1%未満で得た。
【0034】
本発明の上記半連続的又は連続的プロセスには、国際公開第05/121162号パンフレットなどに記載されているバッチプロセスに対して利点が幾つかある。例えば、収率の改善、反応速度の増加、ワークアップも可能な連続的プロセス、さらなる濾過が不要、酵素再利用が容易、処理量の増加、廃棄物の減少、また重要なことには、選択性の向上、不要なモノアセテートやトリスヒドロキシ化合物への加水分解の最小化などである。国際公開第05/121162号パンフレットに記載されている方法では、粗生成物が収率:約90%、過度の加水分解の生成物量:3〜5%で得られたのに対して、90%を超える高い収率、過度の加水分解の副生成物量:1%未満で、連続的又は半連続的に粗生成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加水分解性基を含む基質の加水分解性基を位置選択的に酵素加水分解するプロセスであって、前記酵素加水分解を半連続的又は連続的に行うプロセス。
【請求項2】
前記基質は、加水分解可能な第一級及び第二級の保護されたアルコール基を含み、前記プロセスにより第一級又は第二級エステル基が位置選択的に加水分解される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項3】
前記基質の緩衝液を、0.1mL/分〜50mL/分、又は、0.5mL/分〜10mL/分の流速で固定化酵素中に通液する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記基質はピラノシド又はフラノシドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記基質は
【化1−1】

【化1−2】

[式中、
Rはそれぞれ独立して、H、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、−NR’R’’、−SR’’’、ハロゲンであり;
R’及びR’’はそれぞれ独立して、アルキル、−SR’’’、−SOR’’’、−SOR’’’であり;
R’’’はそれぞれ独立して、H、アルキル、アリールであり;
はそれぞれ独立して、H;−C(O)R;ラセミ体の、L体の若しくはD体のアミノ酸基 −C(O)CHNHR、−C(O)CH(C1−6アルキル)NHR;リン酸エステル基であり;
はC1−18アルキルであり;
はH、−C(O)CH(C1−6アルキル)NH、又は、−C(O)CH(CH−アリール)NHであり;
Bは核酸塩基であり;
X、Y及びY’はそれぞれ独立して、−CH−、−CHR’−、−CR’R’’−、又は、O、NR’’’、Sであり、ここで、R’及びR’’はそれぞれ独立してアルキルであり、R’’’はH又はアルキル又はCO(Z)(ZはO−アルキル又はNH−アルキル又はN−アルキル)であり;
はH、−C(O)CH(C1−6アルキル)NH、又は、−C(O)CH(CH−アリール)NHである]
である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記基質は
【化2】

[式中、
1a、R1b及びR1cはそれぞれ独立して、H;−C(O)R;ラセミ体の、L体の若しくはD体のアミノ酸基 −C(O)CHNHR、−C(O)CH(C1−6アルキル)NHRであるか、又は、R1b及びR1cは一体となって−C(O)−を成し、酸素原子と共に5員環のカーボネート環を形成しており;
はH、OR、又は、N(Rであり;
はC1−18アルキルであり;
はH、−C(O)CH(C1−6アルキル)NH、又は、−C(O)CH(CH−アリール)NHであり;
はそれぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C3−7アルケニル、C3−7アルキニル、−(CR(C−C10アリール)、−(CR(C−C10シクロアルキル)、−(CR(C−C10ヘテロサイクリル)、−(CRt>1OH、−(CRt>0CO1−18アルキル、及び、−(CRt>0N(R)CO1−18アルキル、及び、SO(アリール)(前記においてtは0〜6の整数)であり;
前記各基のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロサイクリル部分は、それぞれ独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、−NH、−NH−アルキル、−N(アルキル)、−NH−アリール、−N(アルキル)(アリール)、−N(アリール)、−NHCHO、−NHC(O)アルキル、−NHC(O)アリール、−N(アルキル)C(O)H、−N(アルキル)C(O)アルキル、−N(アリール)C(O)H、−N(アリール)C(O)アルキル、−NHCOアルキル、−N(アルキル)COアルキル、−NHC(O)NH、−N(アルキル)C(O)NH、−NHC(O)NH−アルキル、−NHC(O)N(アルキル)、−N(アルキル)C(O)NH−アルキル、N(アルキル)C(O)N(アルキル)、−NHSO−アルキル、−N(アルキル)SO−アルキル、−C(O)アルキル、−C(O)アリール、−OC(O)アルキル、−OC(O)アリール、−CO−アルキル、−CO−アリール、−COH、−C(O)NH、−C(O)NH−アルキル、−C(O)N(アルキル)、−C(O)NH−アリール、−C(O)N(アリール)、−C(O)N(アルキル)(アリール)、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−SOアルキル、−SOアリール、−SONH、−SONH−アルキル、及び、−SON(アルキル)から選択される置換基で置換されていてもよく;
はそれぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C−C10シクロアルキルであるか、又は、窒素と共に5若しくは6員環の複素環を形成しており;
及びRはそれぞれ独立して、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、又は、C2−6アルキニルであり;
はH、C1−6アルキル、又は、−CH−アリールであり;
当該化合物は少なくとも2つの加水分解性基を含む]
である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の変換プロセス。
【請求項7】
前記基質は
【化3】

であり、
その5’位のエステルが位置選択的に加水分解される、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記基質は
【化4−1】

【化4−2】

[式中、
Rは前記定義の通りであり;
、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、−NR’R’’、−SR’’’、ハロゲンであり;
R’、R’’及びR’’’は前記定義の通りであり;
Bは核酸塩基である]
である、請求項5に記載のプロセス。

【公表番号】特表2011−500001(P2011−500001A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515081(P2010−515081)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068197
【国際公開番号】WO2009/003042
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(504204443)アナディス ファーマシューティカルズ インク (13)
【Fターム(参考)】