説明

単一の反応槽において組合せられた、核酸ブロッキング、抽出、及び検出

本発明は、試料内の標的核酸を増幅させる方法と共に使用される閉鎖系において、汚染核酸を不活性化させる核酸不活性化試薬と標的核酸を抽出させる好熱性プロテイナーゼとを使用する方法に関する。上記の方法によれば、医療、産業、環境、品質管理、セキュリティー、および、研究の分野での広範な利用を鑑みた場合、簡素で温度制御される装置を正確で合理化された検査に使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本願は、概して、閉鎖系内において行われる、サンプルに含まれる標的核酸を急速に増幅させるための方法に関する。より具体的には、本願は、汚染核酸の不活性化と標的核酸の抽出とを組み合わせて行う方法であって、サンプル内の標的核酸を検出するための閉鎖系装置にて実施可能な標的核酸の温度制御増幅方法と適合可能な方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
医療、産業、環境、セキュリティー、研究、品質管理など様々な分野での処理には、サンプル内の核酸を正確かつ確実に増幅できる処理が望ましい。好ましくは、このような処理は、短時間で行われ、正確な結果を生じさせる処理であり、閉鎖系、すなわち、収量の低下防止または不要核酸やヌクレアーゼによる不測の汚染を防止するために、分析の最中に開放しなくてよい系、で実行可能な処理である。核酸増幅処理は、汚染核酸の不活性化または除去と、標的核酸の抽出と、標的核酸の増幅との、3つの段階に区分することができる。これらの段階における主な問題として、これら3つの段階の問題として、各段階は通常、それぞれ異なる処理によって実行される必要があることが挙げられる。
【0003】
〔汚染核酸の不活性化〕
核酸の増幅は、汚染による影響を非常に受けやすい。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は微量のDNAでさえも増幅することができ、その増幅能力は、ポリメラーゼ連鎖反応の大きな長所のひとつである。一方で、このような優れた増幅能力により、汚染DNAの痕跡ですら共増幅されてしまう。汚染DNAの増幅は、誤解を招きやすい結果や、曖昧または誤りを含む結果に繋がる(Wilson et al.,1990)。特に、系統発生学研究、進化研究、および診断研究のために、普遍的に利用されるプライマーを使用して、高度に保存されている、進化的に同一源の真正細菌リボソーム16S rRNA遺伝子を標的にするというコンセプトでは、頻繁にPCRの偽陽性が生じる(Hilali et al.,1997;Corless et al.,2000;Mohammadi et al.,2003)。実際、外来バクテリアによるDNA汚染を生じさせる最も考えられ得る原因のひとつとして、Taq DNAポリメラーゼなど市販のDNAポリメラーゼの汚染が繰り返し報告されてきている(Bottger,1990;Rand et al.,1990;Schmidt et al.,1991;Hilali et al.,1997)。
【0004】
さらに、真正細菌のDNAは環境に広く分布し、検査技師を介して、実質的に処理のあらゆる段階においてPCRミックスを汚染し得る(Kitchin et al.,1990;Millar et al.,2002)。DNA汚染の他の原因として、エアロゾル(Saksena et al.,1991)、使い捨てのPCR試薬、プラスチック器(Millar et al.,2002)、および、市販のPCRプライマー(Goto et al,2005)が挙げられる。
【0005】
こうしたDNAの汚染が問題となる他の分野に、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の分類がある。ヒトmtDNAの配列分析は、十分な核内DNAが得られない標本からでも、その特徴を明らかにするという法医学的目的おいて広く利用されている。また、mtDNAが、微量または分解されたサンプルに残された唯一の無傷DNAである場合が頻繁にある。しかし、このような種類のサンプルが処理される実験室には、サンプルが含むよりも多くのDNAが存在していることが多く、上記サンプルの取り扱いには、厳密な品質保証が求められる(Carracedo et al.,2000)。
【0006】
同様に、古代の生体物質の人類学的または系統発生学的分析は、標的となるDNAのコピー数が、環境および実験室に存在する大量のmtDNAに比べて少ないことで、妨げられている。このような問題の報告が、科学誌に数多く確認できる(例えば、Lourdes Sampietro et al.,2006)。
【0007】
〔溶液による汚染除去〕
現在上記分野に知られているDNA増幅用の汚染除去溶液は、核酸汚染物質を非活性化させる核酸分解酵素または化学物質を使用する前処理によるものである。試薬の処理に使用される酵素の例は、DNAseIまたはSau3Aである。RNA分析用の溶液は、ピロ炭酸ジエチル(DEPC)を使用して処理される場合が多く、二本鎖DNAは、エチジウムモノアジドを使用して取り除くことができる(ニュージーランド特許545,894号)。しかしながら、これらのDNA汚染除去溶液は、標的核酸の汚染除去、抽出、および増幅のための閉鎖系試薬カクテルと組み合わせて使用されてこなかった。
【0008】
〔核酸抽出〕
診断処置用の標的核酸の単離では、自然薬品から核酸を抽出することが必要な場合が多い。このような単離の利用は、法医学的なDNA指紋法から、医学的、農業的、人類学的、分類学的、および、環境的モニタリングに及ぶ。なお、特に上記の初期サンプルにおける核酸の濃度が非常に低い場面、または、核酸の汚染によって、得られる結果が誤りを含むようなものになる場面では、上記核酸サンプルが汚染されていないことが重要である。このことは、出発原料の量がピコグラムまたはそれ以下の単位になるような微量の細菌サンプル、古代サンプル、および法医学的サンプルにとっては、とりわけ重要である。一般的な核酸抽出技法では、抽出処置を通じた各段階においてサンプル管を開放および閉鎖する必要があるため、核酸汚染の防止という観点を考慮した場合、上記一般的な核酸抽出技法は問題を抱えている。核酸の汚染は、単に上記サンプル管が大気に対して開放された結果、または、技師によって触れられた結果、生じることがある。
【0009】
〔増幅〕
サンプル中の標的核酸の有無を確認するために、標的核酸の増幅方法を行うことができる。複合混合物から少量の特定の核酸配列を検出することが望ましい場面が数多くあり、この目的のために選択される現行の核酸検出方法は、高度な特異性および感度を持つ必要がある。特定の配列中のひとつの核酸分子を直接検出できる簡易な方法は、現在まで確立されておらず、現在利用されている全ての方法は、上記信号を増幅する少なくとも1つ以上の工程を含んでいる。上記信号を増幅するために最も広く利用されている方法は、PCRである。PCR法は、温度サイクリングおよび熱安定性DNAポリメラーゼを使用して、標的核酸を対数的に増幅させる。
【0010】
既存の全ての処置方法については、上記標的核酸の不活性化、抽出、および増幅の3つの段階が互いに不連続であるため、ある段階から次の段階へ進むためには、処理のある時点で上記管を開放する必要があり、これによって上記サンプルが環境DNAによる汚染にさらされるという欠点がある。ピペットチップおよび管などの実験に使用されるプラスチック器も汚染され易く、どんなに丁寧な検査手段および厳格な実験室基準であっても実験サンプルの汚染は避け難いため、こうした欠点は特に重要である。このため、汚染核酸の不活性化、標的核酸の抽出、および、標的核酸の増幅を組み合わせて1つの閉鎖系にする処理であって、上記閉鎖系が、正確に且つ短時間で標的核酸を同定できる槽または装置で行われる処理が、明らかに必要とされている。上記標的核酸としては、特に、広範な状況または混合群で遭遇する微生物に対応するものである。
【0011】
本明細書に引用した文献は、従来技術を構成するものではないことを付記する。上記引用文献の考察は、上記文献の著者の主張を記述しているものに過ぎず、本出願人は、上記引用文献正確性および適切性について反駁する権利を有するものとする。また、本明細書には多数の文献を引用されているが、このような引用文献は、本願発明の属する技術分野における常識を形成するものではないこと明示しておく。
【0012】
〔発明の概要〕
本明細書に記載する上記方法、処理、および装置は、上述の欠点や不利点を克服するものである。本明細書に、汚染核酸の不活性化、標的核酸の抽出、標的核酸の増幅を組み合わせて、閉鎖系において実行できるひとつの処理にする方法について説明する。本明細書に開示する汚染核酸を不活性化させる方法は、外的刺激を加えることで制御でき、核酸抽出処理と核酸増幅処理とのほとんどの処理と適合可能である。さらに、好熱性プロテイナーゼ処理による核酸抽出の条件は、ほとんどの核酸増幅処理の条件と適合可能である。
【0013】
本発明の一実施形態は、閉鎖系内で標的核酸を増幅する方法であって、
i)核酸不活性化試薬、好熱性プロテイナーゼ、及び核酸増幅試薬を、標的核酸を含むサンプルに添加して上記閉鎖系を構成する添加工程であって、
上記核酸不活性化試薬は、活性形態及び非活性形態を有し、活性形態のみが上記閉鎖系内の汚染核酸を不活性化させ、これにより上記汚染核酸が核酸増幅試薬と反応しないようになり、
上記核酸不活性化試薬は、外的刺激が印加されたときにのみ、上記活性形態に変化し、
上記好熱性プロテイナーゼは、約65℃〜約80℃で活性形態になり、約90℃以上で非活性形態になる添加工程と、
ii)上記閉鎖系を閉じる閉鎖工程と、
iii)上記核酸不活性化試薬が上記非活性形態から上記活性形態に変化するのに十分な時間、上記外的刺激を印加する印加工程であって、
上記印加によって、上記閉鎖系内の汚染核酸は核酸増幅試薬と反応しないようになり、上記核酸不活性化試薬は、汚染核酸が核酸増幅試薬と反応しなくなった後、非活性形態に変化する印加工程と、
iv)約65℃〜約80℃で上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって好熱性プロテイナーゼが活性化し、細胞溶解、タンパク質分解、細胞壁酵素の分解のうち1つ以上の発生によって、増幅のための標的核酸が抽出されるインキュベート工程と、
v)約90℃以上で上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、好熱性プロテイナーゼの自己触媒反応が発生するインキュベート工程と、
vi)上記標的核酸を増幅する増幅工程と、を備え、
上記閉鎖系は、単一の、槽または管を備えている方法を提供する。
【0014】
他の実施形態では、上記サンプルを約65℃〜80℃でインキュベートする前、または、上記サンプルを約65℃〜80℃でインキュベートするのと同時に、上記核酸不活性化試薬を上記非活性形態に変化させる。さらに他の実施形態では、汚染核酸が核酸増幅試薬と反応しなくなった後、上記核酸不活性化試薬が上記非活性形態に変化するのに十分な時間上記外的刺激を印加することによって、上記核酸不活性化試薬を上記非活性形態に変化させる。さらに他の実施形態では、汚染核酸が核酸増幅試薬と反応しなくなった後、上記外的刺激を除去することによって、上記核酸不活性化試薬を上記非活性形態に変化させる。
【0015】
さらに他の実施形態では、上記核酸不活性化試薬は、上記好熱性プロテイナーゼ、上記核酸増幅試薬、または、上記標的核酸の増幅を阻害せずに汚染核酸を不活性化するのに十分な濃度で準備される。
【0016】
さらに他の実施形態では、上記核酸不活性化試薬は、中温性核酸修飾酵素である。さらに他の実施形態では、上記中温性核酸修飾酵素は、二本鎖特異的エンドヌクレアーゼ、二本鎖特異的エキソヌクレアーゼ、一本鎖特異的ヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、RNAses、RNAseH、またはRNA修飾酵素である。さらに他の実施形態では、約25℃〜40℃で、上記中温性核酸修飾酵素を上記活性形態に変化させるのに十分な時間インキュベートすることによって、上記中温性核酸修飾酵素を活性化する。さらに他の実施形態では、約65℃〜80℃で、上記中温性核酸修飾酵素を上記非活性形態に変化させるのに十分な時間インキュベートすることによって、上記中温性核酸修飾酵素を非活性化する。
【0017】
本発明の一実施形態では、上記核酸不活性化試薬は、核酸挿入剤である。他の実施形態では、上記外的刺激の印加したとき、上記核酸挿入剤の光分解が生じ、上記核酸挿入剤が上記活性形態に変化する。さらに他の実施形態では、記活性形態の上記核酸挿入剤は、二本鎖核酸と共有結合する。さらに他の実施形態では、上記核酸挿入剤は、エチジウムモノアジドである。さらに他の実施形態では、上記エチジウムモノアジドは、約1μg/mlと約5μg/mlとの間の濃度で準備される。さらに他の実施形態では、上記エチジウムモノアジドは、約3μg/mlの濃度で準備される。
【0018】
本発明の一実施形態では、上記外的刺激は、特定の狭域スペクトラム波長光、広域スペクトラム白色光、または、紫外線光である。他の実施形態では、上記外的刺激は、上記核酸挿入剤の光分解によって上記核酸挿入剤を活性化させるのに十分な、特定の狭域スペクトラム波長光、広域スペクトラム白色光、または、紫外線光である。さらに他の実施形態では、上記外的刺激は、上記好熱性プロテイナーゼを実質的に活性化させずに上記核酸不活性化試薬を活性化するのに十分な熱エネルギーである。さらに他の実施形態では、上記外的刺激は熱エネルギーであり、上記熱エネルギーは、上記中温性核酸修飾酵素を上記活性形態に変化させるのに十分な時間、上記閉鎖系の温度を約25℃〜約40℃に上昇させるのに十分な熱エネルギーである。
【0019】
本発明の一実施形態では、上記好熱性プロテイナーゼは、EA1である。
【0020】
本発明の他の実施形態では、上記方法は、
(i)上記サンプルを中温性酵素によって処理する工程と、
(ii)約40℃よりも低い温度で、細胞から細胞壁を除去するのに十分な時間、上記サンプルをインキュベートする工程と、をさらに備える。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態では、上記中温性酵素は、セルラーゼまたはリゾチームである。
【0022】
本発明の一実施形態では、上記核酸の増幅は、蛍光団により検出される。他の実施形態では、上記標的核酸の増幅工程では、PCR検出方法を行う。さらに他の実施形態では、上記PCR検出方法は、qPCR、多重PCR、または逆転写PCRである。
【0023】
さらに他の実施形態では、上記増幅工程では、等温検出方法を行う。さらに他の実施形態では、上記等温検出方法は、鎖置換増幅法、ローリングサークル増幅法、ループ媒介等温増幅法、キメラプライマー誘導核酸等温増幅法、Q−beta増幅システム、またはOneCutEventAmplificatioNである。さらに他の実施形態では、上記等温検出方法は、ヌクレアーゼ連鎖反応(NCR)、RNAse媒介ヌクレアーゼ連鎖反応(RNCR)、ポリメラーゼヌクレアーゼ連鎖反応(PNCR)、RNAse媒介性検出(RMD)、タンデム反復制限酵素促進(TR−REF)連鎖反応、または反転逆相補体制限酵素促進(IRC−REF)連鎖反応といった技術を利用する。
【0024】
本発明の一実施形態では、上記増幅工程では、SNP検出分析を行う。
【0025】
本発明の他の実施形態では、上記核酸の増幅工程は、オートメーション化されている。
【0026】
本発明の一実施形態では、上記核酸増幅試薬の添加は、マイクロ流体または固体用ディスペンサを使用して行われる。
【0027】
本発明の他の実施形態では、上記核酸増幅試薬の添加は、上記核酸増幅試薬を含むマイクロカプセルを使用して行われる。さらに他の実施形態では、上記マイクロカプセルは、上記槽または管に予め供給されている。さらに他の実施形態では、上記マイクロカプセルは、易熱性のカプセルである。さらに他の実施形態では、上記易熱性のカプセルは、アガロースまたはワックス材のビーズである。さらに他の実施形態では、上記易熱性のカプセルが、上記易熱性のカプセルを融解または分解するのに十分な温度に曝されると、上記易熱性のカプセルから検出試薬が放出される。
【0028】
本発明の一実施形態では、上記核酸増幅試薬は、上記好熱性プロテイナーゼによるタンパク質分解に対して耐性である。
【0029】
本発明の他の実施形態では、上記サンプルは、血液、尿、唾液、精液、排泄物、組織、スワブ、涙、骨、歯、毛髪、または粘液である。さらに他の実施形態では、上記サンプルは、細菌、菌類、古細菌、真核生物、原虫、またはウイルスである。さらに他の実施形態では、上記サンプルは、塩水、淡水、氷、土壌、廃物、または食料である。
【0030】
本発明の一実施形態では、上記槽または管は、装置である。他の実施形態では、上記装置は、手持ち式の装置である。さらに他の実施形態では、上記装置または上記装置の構成要素は、使い捨て可能である。さらに他の実施形態では、上記装置は、入口と、出口と、チャンバーと、発光された蛍光団を検出する検出器と、励起光源とを備えている。さらに他の実施形態では、上記装置は、さらに、マイクロ流体と、マイクロチップと、ナノ孔技術と、マニピュレータ装置とを備えている。
【0031】
本発明の一実施形態では、上記装置は、密閉ユニットと、遮光チャンバーと、核酸不活性化試薬活性化光源と、発光された蛍光団を検出する検出器と、励起光源とを備えている。他の実施形態では、上記核酸不活性化試薬活性化光源は、白熱灯、蛍光灯、または発光ダイオードアレイである。
【0032】
本発明の他の実施形態は、 閉鎖系内で標的核酸を増幅する方法であって、
i)中温性核酸修飾酵素、EA1プロテイナーゼ、及びPCR増幅試薬を、標的核酸を含むサンプルに添加して上記閉鎖系を構成する添加工程であって、
中温性核酸修飾酵素は、活性形態及び非活性形態を有し、活性形態のみが上記閉鎖系内の汚染核酸を不活性化させ、これにより上記汚染核酸がPCR増幅試薬と反応しないようになり、
中温性核酸修飾酵素は、約25℃〜約40℃で活性形態になり、約65℃〜約80℃で非活性形態になり、
上記EA1プロテイナーゼは、約65℃〜約80℃で活性形態になり、約90℃以上で非活性形態になる添加工程と、
ii)上記閉鎖系を閉じる閉鎖工程と、
iii)約20℃〜約40℃で一定期間上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記中温性核酸修飾酵素が活性化し、上記閉鎖系内の汚染核酸がPCR増幅試薬と反応しないようになるインキュベート工程と、
iv)約65℃〜約80℃で一定期間上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記中温性核酸修飾酵素が非活性化し、EA1プロテイナーゼが活性化し、細胞溶解、タンパク質分解、細胞壁酵素の分解のうち1つ以上の発生によって、増幅のための標的核酸が抽出されるインキュベート工程と、
v)約90℃以上で上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記EA1プロテイナーゼの自己触媒反応が発生するインキュベート工程と、
vi)上記標的核酸を増幅する増幅工程と、を備え、
上記閉鎖系は、単一の、槽または管を備えている方法を提供する。
【0033】
本発明のさらに他の実施形態は、閉鎖系内で標的核酸を増幅する方法であって、
i)エチジウムモノアジド、EA1プロテイナーゼ、及びPCR増幅試薬を、標的核酸を含むサンプルに添加して上記閉鎖系を構成する添加工程であって、
上記エチジウムモノアジドは、活性形態及び非活性形態を有し、活性形態のみが上記閉鎖系内の汚染核酸を不活性化させ、これにより上記汚染核酸がPCR増幅試薬と反応しないようになり、
上記エチジウムモノアジドは、狭域スペクトラム波長光、広域スペクトラム白色光、または紫外線光が印加されエチジウムモノアジドの光分解が発生したときにのみ、上記活性形態に変化し、
上記EA1プロテイナーゼは、約65℃〜約80℃で活性形態になり、約90℃以上で非活性形態になる添加工程と、
ii)上記閉鎖系を閉じる閉鎖工程と、
iii)上記エチジウムモノアジドを上記非活性形態から上記活性形態へ変化させるのに十分な第1の時間、上記狭域スペクトラム波長光、広域スペクトラム白色光、または紫外線光を印加する印加工程であって、上記印加によって、上記閉鎖系内の汚染核酸は核酸増幅試薬と反応しないようになり、上記照射による上記エチジウムモノアジドの光分解によって、上記エチジウムモノアジドが後段の核酸に対し非活性になる照射工程と、
iv)約65℃〜約80℃で第2の時間、上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記EA1プロテイナーゼが活性化し、細胞溶解、タンパク質分解、細胞壁酵素の分解のうち1つ以上の発生によって、増幅のための標的核酸が抽出されるインキュベート工程と、
v)約90℃以上で上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記EA1プロテイナーゼの自己触媒反応が発生するインキュベート工程と、
vi)上記標的核酸を増幅する増幅工程と、を備え、
上記閉鎖系は、単一の、槽または管を備えている方法を提供する。
【0034】
〔図面の簡単な説明〕
図1:複合核酸検出処理の概略図である。
【0035】
図2:発光ダイオードアレイが設けられ、カプセル化試薬を使用して、汚染核酸の不活性化、標的核酸の抽出、及び標的核酸の増幅を行うための単一チャンバー装置。
【0036】
図3:DNA抽出及びqPCRを単一槽内において行った場合、種々のEscherichia coli細胞計数に対するqPCR反応にて得られたCT値を示すグラフである。この反応処理では、エチジウムモノアジド処理は行わなかった。図中の破線は、水のみ(細胞数ゼロ)に対してqPCR反応を行った場合に得られたCT値を示す。なお、エラーバーは、平均値から±1の標準偏差である。
【0037】
図4:DNA抽出及びqPCRを単一槽内において行った場合、種々のEscherichia coli細胞計数に対するqPCR反応にて得られたCT値を示すグラフである。この反応処理では、閉鎖管内の逐次反応の一部として、エチジウムモノアジド処理を行った。図中の破線は、水のみ(細胞数ゼロ)に対してqPCR反応を行った場合に得られたCT値を示す。なお、エラーバーは、平均値から±1の標準偏差である。
【0038】
〔詳細な説明〕
〔定義〕
明細書にて用いられる“核酸不活性化試薬”なる用語は、核酸を核酸増幅処理に対して非反応化させることが可能な化学物質、分子、酵素、または、他の生体分子を指す。
【0039】
本明細書にて用いられる“不活性化”なる用語は、汚染核酸の除去または分解を行う処理、または、汚染核酸を核酸増幅処理に対して非反応化させる処理を指す。
【0040】
本明細書にて用いられる“非反応”なる用語は、任意の核酸増幅工程または方法によっても増幅されない核酸の状態を指す。このような核酸の非反応性化を生じさせる不活性化試薬の一例として、汚染核酸に結合するエチジウムモノアジドが挙げられるが、これに限定されない。なお、エチジウムモノアジドは、溶液中に存在するが、標的核酸の増幅処理後に行われるシグナル検出方法では検出されない。
【0041】
〔概要〕
標的核酸の増幅方法は、汚染核酸の不活性化工程と、標的核酸の抽出工程と、標的核酸の増幅工程との、3つの工程に区分される。これらの工程を行う系では、工程毎に異なる器具を必要とすること、および、ある内部器具から他の内部器具へとサンプルを移す移動方法を採用することが求められる。上述の従来の技術では、核酸の前処理と、核酸の抽出と、核酸の増幅とが、互いに独立した工程で行われることが開示されている。なお、上記の各工程をそれぞれの閉鎖系内において行う場合、各工程間において上記閉鎖系を開放するので、潜在的な汚染リスクに曝される。
【0042】
本発明に係る汚染核酸の不活性化方法は、外部刺激による制御が可能であり、核酸の抽出方法及び増幅方法と両立するので、これら方法とともに、ひとつの閉鎖系に備えられ得る。閉鎖系では、標的核酸を含むサンプルと、核酸不活性化試薬と、核酸抽出試薬と、核酸増幅試薬とを開放容器または開放管に供給し、その後、上記開放容器または開放管は、汚染を防止するために封止される。開放系では、核酸抽出試薬または核酸増幅試薬などの試薬を追加的に導入するのに十分な期間、上記開放容器または上記開放管を開放する。例えば、開放系は次のタイミングで開放される。つまり、核酸不活性処理後、核酸抽出処理前もしくは処理後、または、増幅処理前に、上記開放容器または開放管を開放する。
【0043】
予期せぬことに、汚染核酸の不活性化と標的核酸の抽出および増幅とを組み合わせて、ひとつの閉鎖系内において行った場合、汚染核酸の不活性化試薬を使用せずに核酸増殖処理を行った場合と比べて、核酸増幅の検出感度が何倍にも向上した。
【0044】
好ましい実施形態によれば、核酸不活性化試薬を使用した場合、核酸不活性化試薬を使用しない場合に比べて、核酸増幅の検出精度が、少なくとも2倍程度、少なくとも3倍程度、少なくとも4倍程度、少なくとも5倍程度、少なくとも8倍程度、少なくとも10倍程度、少なくとも15倍程度、少なくとも20倍程度、少なくとも25倍程度、少なくとも50倍程度、少なくとも1000倍程度、少なくとも250倍程度、少なくとも500倍程度、少なくとも750倍程度、少なくとも1000倍程度、少なくとも2000倍程度、少なくとも3000倍程度、少なくとも4000倍程度、少なくとも5000倍程度、または、それ以上の割合で向上する。
【0045】
他の好ましい実施形態によれば、核酸不活性化試薬を使用して、閉鎖系内で行われる方法の核酸増幅検出感度は、開放系において行われる同方法と比較して、少なくとも2倍程度、少なくとも3倍程度、少なくとも4倍程度、少なくとも5倍程度、少なくとも8倍程度、少なくとも10倍程度、少なくとも15倍程度、少なくとも20倍程度、少なくとも25倍程度、少なくとも50倍程度、少なくとも1000倍程度、少なくとも250倍程度、少なくとも500倍程度、少なくとも750倍程度、少なくとも750倍程度、少なくとも1000倍程度、少なくとも2000倍程度、少なくとも3000倍程度、またはそれ以上の割合で向上する。
【0046】
核酸増幅方法と同様に、本明細書に開示される好熱性プロテイナーゼ処理を介した核酸抽出は、温度制御される。また、好熱性処理に求められる条件は、大半の増幅処理に求められる条件と適合する。したがって、汚染核酸の不活性化と、標的核酸の抽出と、抽出された標的核酸の増幅とを組み合わせた方法は、ひとつの容器または装置内において行うことが可能である。また、上記装置は簡素化して、汚染核酸の不活性化試薬を活性化させる外的刺激の供給源と、原サンプル物質を処理して、検出可能な核酸の増幅を生じさせる加熱/冷却機構と、が設けられた容器とすることができる。なお、上記装置に検出器を設けることも容易である。
【0047】
本明細書に開示する上記方法によれば、汚染核酸の不活性化と、標的核酸の抽出と、標的核酸の増幅とを組み合わせた処理が実現可能であるとともに、ポンプの設置またはミクロ流体の使用を必要としない装置の実現も可能である。なお、必要に応じて、上記方法は、より複雑な後段の処理に適用されてもよい。また、上記処理は、外的刺激と加熱制御反応連鎖とを利用する閉鎖系装置内において、行うことができる。核酸不活性化試薬と好熱性プロテイナーゼとは、PCRまたは等熱増幅を使用して核酸を増幅させる技術と共に使用され、上記核酸不活性化試薬は、上記系内の汚染核酸を抑制するために使用され、上記好熱性プロテイナーゼは、サンプルに含まれる核酸を抽出するために使用される。外的刺激により活性化され、その後不活性化される核酸不活性化試薬と、温度依存酵素の混合体を使用する温度制御、または、カプセル化された試薬の温度制御による放出と、を組み合わせることによって、現状の核酸診断方法および装置の設計は簡素化される。また、上記処理の一部として不活性化工程を含むことにより、偽陽性の確率が低減され、核酸の増幅感度と検出感度とが向上する。核酸診断方法および装置の設計を簡素化することで、設計の複雑性に関連する失敗率とコストとを低減する。上記技術は、混合サンプルに含まれる複数種の標的核酸を同時に同定できるように、変更して多重化できるという更なる利点を持つ。
【0048】
図1に、本明細書に詳細に開示した上記処理の一実施形態の概略を説明する。先ず、核酸不活性化試薬、好熱性プロテイナーゼ、核酸増幅・検出試薬、及びサンプルをひとつの容器に加える。そして、外的刺激を与えることで、不活性化状態の核酸不活性化試薬を活性化させる。このようにして活性化された上記核酸不活性化試薬は上記容器内の全ての汚染核酸と反応し、これらの汚染核酸を上記処理の全ての後段の工程に対して非反応性にする。なお、汚染核酸と反応しなかった核酸不活性化試薬は、不活性化状態へと戻される。好熱性プロテイナーゼは、好熱性プロイテナーゼ活性の最適温度下で汚染タンパク質を消化し、これにより標的核酸が抽出する。標的核酸の抽出後、抽出された核酸の配列をPCRまたは等温増幅を使用して増幅してもよいし、増幅と同時に、同温増幅方法またはqPCR増幅方法を使用することによって蛍光による検出を行ってもよい。
【0049】
〔核酸不活性化試薬〕
核酸不活性化試薬を使用して、汚染核酸を不活性化させ、汚染核酸の共増幅を防止する好ましい方法を以下に説明する。本明細書における“核酸”、“核酸配列”、“ポリヌクレチド”、“ポリヌクレチド配列”、およびこれらに相当する語句は、一本鎖または二本鎖デオキシリボヌクレオチド、または、任意の長さを持つリボヌクレオチド重合体を意味するものであり、例えば、遺伝子のコード配列および非コード配列、センス配列およびアンチセンス配列、エクソン、イントロン、ゲノムDNA、cDNA、mRNA前駆体、mRNA、rRNA、siRNA、miRNA、tRNA、リボザイム、組み換えポリヌクレオチド、分離化および精製化された天然由来のDNAまたはRNA配列、合成RNA配列および合成DNA配列、拡散プローブ、プライマー、断片、遺伝子構築物、ベクター、および、修飾ポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。また、本明細書における“核酸”、“オリゴヌクレオチド”、“ポリヌクレオチド”なる語句は、配列の長さの違いによって使い分けられるものではなく、互いに互換性可能に使用される。
【0050】
上記サンプルが更に汚染されるのを防ぐために、上記核酸不活性化試薬については、反応管の開放回数、上記反応管への添加回数、または上記反応管からの除去回数がなるべく少ない上記核酸抽出反応および増幅反応と組み合わせて使用することが好ましい。好ましくは、上記核酸不活性化試薬は、上記処理の初期段階に行われるひとつの工程において、標的核酸の増幅および検出に必要な抽出試薬および増幅試薬とともに添加されている。
【0051】
特定の実施形態では、上記核酸不活性化試薬として、化学物質、酵素、または、他の生体分子を使用することができる。任意の種類の核酸不活性化試薬は、核酸を不活性化する。汚染核酸は、以下に述べる何れかの内部に存在する核酸である。核酸調整/抽出試薬、核酸増幅試薬、核酸の使用を含む任意の処理に使用される容器、管、プレート、または装置、上記標的サンプルの汚染を引き起こし、増幅感度の低減と偽陽性結果の増大を生じさせる核酸の使用を含む任意の処理に使用されるプラスチック器。
【0052】
好ましい実施形態では、上記核酸不活性化試薬は、核酸の抽出および増幅期間中に、サンプルの溶液中に存在することが可能な特性を備えている。これにより、容器または反応管を開放した場合に、核酸が更に汚染されることを防ぐという効果がもたらされるとともに、核酸の不活性化処理を核酸の増幅処理に組み込むことが可能になるという効果がもたらされる。
【0053】
好ましくは、上述の方法に対応する条件下において、核酸不活性化試薬は、非活性形態と活性形態との2つの異なる状態を持つ。このうち非活性形態とは、核酸を非活性化する状態であり、活性化状態とは核酸を非活性化し、核酸の活性化/非活性化が制御可能な状態である。ある実施形態では、上記不活性化試薬を非活性形態と活性形態との間で交互に切り替えてもよく、これにより、汚染核酸を不活性化するのに十分な量の上記不活性化試薬を上記サンプルに添加することができ、不活性化された上記サンプルは、活性形態の場合のみ、上記汚染核酸を不活性化する。よって、上記汚染核酸の不活性化後、残存する不活性化試薬は、更なる核酸の不活性化をもたらさないよう非活性形態へと変化し得る。これにより、不活性化試薬/汚染核酸の結合が、拡散増幅処理中の更なる反応を妨害することを防ぐ。
【0054】
このような上記核酸不活性化試薬が異なる2つの状態を保持している上記方法の実施形態では、上記核酸不活性化試薬は、標的核酸の抽出および増幅前に、活性形態へと切り替えられる。好ましい実施形態では、上記核酸不活性化試薬は、汚染核酸を核酸増幅処理に対して不活性にした後、好熱性プロテイナーゼ等の核酸抽出試薬を用いてサンプルをインキュベートする前またはインキュベートすると同時に、非活性形態へと変化する。上記非活性形態から上記活性形態への変化、または、上記活性形態から上記非活性形態への変化は、上記特定の核酸不活性化試薬の特性に応じて、いくつかの機構を介して生じる。これら機構の例として、下記のものが挙げられる。
【0055】
他の実施形態では、上記核酸不活性化試薬は、活性形態で、後段の好熱性プロテイナーゼを用いてサンプルを処理する標的核酸抽出処理、核酸増幅試薬、または、標的核酸増幅処理を妨害することなく、汚染核酸を不活性化するのに十分な濃度を持つように提供する。
【0056】
上記核酸の断片や一部分は、それ自体が後段の増幅処理に影響を及ぼす為、上記核酸不活性試薬は上記汚染核酸を分解または破壊しないことが好ましい。
【0057】
〔外的刺激〕
特定の実施形態では、外的刺激が印加された場合にのみ、上記核酸不活性化試薬は、活性形態へと切り替わる。実質的に好熱性プロテイナーゼ等の核酸不活性化試薬を活性化することなく、上記核酸不活性化試薬を活性化するのに十分であることが好ましい。本明細書における“実質的な活性化”とは、例えば、好熱性プロテイナーゼは、上記核酸不活性化試薬を活性形態に変換させるのに十分な期間、上記方法により増幅および検出されるのに十分な量の核酸の抽出を生じさせるのに十分な程度活性化される。
【0058】
他の好適な実施形態では、上記核酸不活性化試薬の活性化をもたらす上記外的刺激は、特定の狭波長を持つ波長光、広範囲の波長を持つ白色光、または紫外光であり、その他の好適な実施形態では、上記外的刺激は、熱エネルギーである。なお、これに限らず、上記外的刺激は、選択される核酸不活性化試薬と、その活性特性および不活性特性とに応じて決定されればよい。
【0059】
上記好適な実施形態では、汚染核酸を核酸増幅処理に対して不活性化させた後、上記核酸不活性化試薬は、非活性形態へと切り替えられる。いくつかの実施形態では、外的刺激の除去によって、上記核酸不活性化試薬を活性形態から不活性形態へと切り替える。他の実施形態では、特定の量の外的刺激が、上記核酸不活性化試薬を上記活性形態へと変換するのに十分であり、上記活性形態から上記非活性形態への変換には、上記外的刺激の量を増加することが必要である。例えば、好ましい実施形態では、上記核酸不活性化試薬を活性形態へと変換させるのに十分な期間外的刺激を印加することにより、核酸増加処理に対して不活性化な状態に汚染核酸を変化させた後、上記核酸不活性化試薬は活性形態へと変換される。さらに他の実施形態では、上記外的刺激は、核酸不活性化試薬に対し例えば光分解等の非可逆性の構造変化を引き起こすことによって、核酸不活性化試薬を活性形態へと変換させ、活性時に汚染核酸を不活性化させる一方、上記構造変化が起きた後には、核酸をさらに不活性化させない。例えば、好ましい実施形態では、上記外的刺激の印加によって、上記核酸不活性化試薬の光分解を生じさせ、核酸不活性化試薬を活性形態へ変換させてもよい。
【0060】
〔挿入剤〕
一実施形態では、上記核酸不活性化試薬として、二本鎖核酸と共有結合するエチジウム、プロフラビン、または、サリドマイド等の挿入剤を使用する。本明細書における“挿入剤”とは、二本鎖核酸における隣り合う2つの塩基対間に可逆的に挿入され得る試薬を含む。よく研究されたDNA挿入剤の例として、エチジウム、プロフラビン、または、サリドマイド等が挙げられるが、これらに限定されない。好適な実施形態では、特定の狭波長のスペクトラムを持つ波長光、広範囲のスペクトラムを持つ白色光、または、紫外光を印加することによって、核酸挿入剤の光分解を生じさせて、上記核酸挿入剤を活性形態へと変換させる。
【0061】
好適な実施形態では、上記挿入剤としてエチジウムモノアジド(EMA)が使用される。本明細書では、ニュージーランド特許545、894号を参照することによりその開示内容を援用する。上記ニュージーランド特許545、894号では、汚染核酸を不活性化するために、EMAを使用することが記載されている。EMAは、汚染核酸と複合体を形成する。なお、EMAは、エチジウムブロマイドの光反応性アナログであり、エチジウムブロマイドにおける8位のアミノ基がアジド基に置換されている。白色光の非照射下では、EMAは、エチジウムブロマイドと同様の形式で、二本鎖核酸に挿入される。しかし、光照射下では、EMAは光活性化され、上記二本鎖核酸と共有結合する(Bolton and Kearns,1978;Garland et al.,1980)。
【0062】
光活性化を経た場合、EMAにおける8位の上記アジド基は、約400nm以上の長い波長を持つ波長光を使用して光化学的に分解される(Bolton and Kearns,1978)。光分解を経たEMAは、結合部位において、ニトレンラジカルを介して、核酸と共有架橋することができる(Hardwick et al.,1984;Cantrell et al.,1979)。溶液中の残存する非結合のニトレンは、ヒドロキシルアミンへと変換され(Graves et al.,1981)、上記ヒドロキシルアミンは、上記溶液のアルデヒドおよび/またはケトン成分、好適にはシトシンと反応することで、オキシムを生成する(Freese et al.,1961)。光照射およびそれによって生じる光分解後、EMAは、未結合の核酸と共有結合する能力を失う。よって、(例えば、リアルタイムPCR機器において)光を照射した場合であっても、後段の処理によって得られる結果に作用しない。さらに、共有架橋された核酸は、後段の核酸増幅工程において影響を受けることが無いため、その妨害が除去される(Nogva et al.,2003)。
【0063】
好ましくは、EMAは、ヒドロキシルアミンの生成に伴う溶液中の遊離ニトレンの生成を最小限に抑える一方で、全ての外因性の核酸に結合するのに十分な最小の力価で添加される。市販の増幅試薬内の汚染核酸の量は試薬毎に異なるので、各群の増幅試薬はEMA力価の最適化を図り、増幅感度を保つ一方で汚染核酸の最大限の除去を確保する。
【0064】
好適な実施形態では、EMAの添加量は、汚染核酸に結合するのに十分な量である。また、好適な実施形態では、EMAは1〜5μg/mlの濃度で使用される。更に好ましくは、上記EMAの濃度は約3μg/mlである。
【0065】
〔中温性核酸修飾酵素〕
増幅用の標的核酸を含むサンプル細胞が、死亡またはダメージを負っているサンプル細胞である実施形態では、他の核酸不活性化試薬が使用される。なお、上記核酸不活性化試薬は、細胞材料内に拡散する能力がない。具体的には、中温性拡散修飾酵素等といったサイズの大きな分子が用いられる。好ましくは、使用される酵素は、PCRに必要なオリゴヌクレオチドの加水分解または修飾を生じさせないものであるので、例えば、短い一本鎖拡散の修飾や加水分解を生じさせるヌクレアーゼは使用できない。しかし、幾つかの実施形態では、上記増幅工程に用いられるオリゴヌクレオチドが、ヌクレアーゼによる切断に対して耐性を示すよう修飾されている場合には、短い一本鎖の核酸の修飾や加水分解を生じさせるヌクレアーゼを用いてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドを5’特異エキソヌクレアーゼに対して耐性を持たせるように、一本鎖のオリゴヌクレオチドの5’修飾が利用される。
【0066】
好適な実施形態では、上記核酸修飾酵素は、核酸抽出酵素と組み合わせて使用される。このような核酸抽出酵素としては、中温核酸修飾酵素とは異なる温度活性特性を持つ核酸抽出試薬、例えば、好熱性プロテイナーゼ、が使用される。上記実施形態では、上記中温核酸修飾酵素の活性化が、温度エネルギーを印加して、上記中温拡散修飾酵素の温度を活性に適するが上記好熱性プロテイナーゼの活性化には達しない程度の温度まで、上記中温核酸修飾酵素の温度を上げる。例えば、好適な実施形態では、上記中温核酸修飾酵素は、20℃〜から45℃で、上記中温核酸修飾酵素を非活性形態から活性形態へ変換するのに十分な時間インキュベートされる。他の好ましい実施形態では、上記中温核酸修飾酵素は、65℃〜から80℃で、上記中温核酸修飾酵素を非活性形態から活性形態へ変換するのに十分な時間インキュベートされる。
【0067】
ある実施形態では、ヌクレアーゼなどの中温核酸修飾酵素が使用され、特に、PCR、qPCR、またはRT−PCR増幅方法と組み合わせて使用される。
【0068】
他の実施形態では、上記中温核酸修飾酵素は、二本鎖特異エンドヌクレアーゼ(例えば、制限エンドヌクレアーゼ);二本鎖特異エキソヌクレアーゼ;短い分子に対する活性が低い一本鎖特異ヌクレアーゼ;または、二本鎖核酸に対して特異的な核酸修飾酵素であってもよい。
【0069】
特定の実施形態では、上記中温核酸修飾酵素は、T7エキソヌクレアーゼ、T7エンドヌクレアーゼ1、ExoIII、頻繁にカットする制限エンドヌクレアーゼ、または、上記の任意の混合物であってもよい。
【0070】
他の実施形態では、中温核酸修飾酵素は、逆転写PCRに関連する汚染核酸を不活性化するために使用される。上記中温核酸修飾酵素は、RNAse、RNAseH、または、RNA修飾酵素の何れかであればよい。
【0071】
核酸不活性化試薬を用いてサンプルを処理し上記核酸不活性化試薬が適した水準にあるか、あるいは非活性化された後、上記サンプルから標的核酸を抽出することができる。好熱性プロテイナーゼを用いて標的核酸を抽出する方法を以下に記述する。
【0072】
〔核酸抽出〕
細胞を含む生体サンプルから標的核酸を抽出する好適な方法を下記に説明する。本明細書における“抽出する”及び“抽出”なる語句は、サンプルに含まれる核酸について、他の処理における利用可能性を増加させる処理を指す。核酸抽出の概念に示唆されるものは、標的核酸が、阻害物質、妨害物質、ヌクレアーゼ、他の酵素、および、核タンパク質等の妨害物質から十分に自由であり、他の操作方法においても効果的であることである。なお、上述の本装置では、非妨害物質から上記核酸を精製することに意味はなく、上記核酸は、必ずしも非妨害物質から精製される必要はない。上記核酸処理は、上記妨害物質の弊害を最小化する。
【0073】
汚染核酸によるサンプルの汚染を最小限に抑えるために、上記核酸抽出を、出来るだけ少ない回数の反応管の開放、反応管への添加、反応管からの除去を行う増幅反応と併せて行うことが好ましい。好ましくは、上記抽出は、上記標的核酸の増加と同じ反応管内において行われる。なお、米国特許7、547、510号については、参照することによりその開示内容を援用する。上記米国特許7、547、510号は、核酸を抽出する方法であって、ひとつの反応管において核酸増幅処理と併せて使用可能な好熱性プロテイナーゼを使用する核酸抽出方法を開示している。
【0074】
〔サンプル〕
サンプルは、臨床サンプル、食料および飲料サンプル、または環境サンプルを含む広い範囲の基質から得ることができる。具体的には、微生物サンプルは、環境要因から得られ、食料テストの場合には、液体または固体状のサンプルを採取するか、固体状の表面を拭うことで得られる。従来、臨床サンプルは、組織、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、排泄物、精液、ぬぐい液、または、唾液から採取されていた。組織サンプルは、動物性組織を得る細胞擦過などの標準的な方法、または、生検方法によって採取される。同様に、血液サンプリングは、例えば病原菌検査のために、日常的に行われており、血液サンプルの採取方法はこの分野において周知である。また、生体サンプルの保持方法および処理方法も、この分野において周知である。例えば、組織サンプルは、検査が行われるまで冷凍保存されていてもよい。また、当業者であれば、検査用サンプルの中には、分別処理または精製処理を通じて、より簡単に分析できるものがあることは、理解出来るであろう。例えば、血液は血清または血漿成分に分類される。
【0075】
法医学用のサンプルとしては、具体的に、血液、唾液、精液、皮膚、毛髪、骨、または、歯が挙げられる。特に、標的核酸が微量または“低コピー数”の問題となるサンプルは、時を経た事件の染みや骨、歯、および毛髪である。
【0076】
種同定用のサンプル、人類学用のサンプル、系統分析用のサンプル、および、バーコーディングは、多種の源から集められるとともに、考古学の発掘物、骨、羽毛、毛髪を含み、博物館において保存されている、ホルマリン、アルコール、または、パラフィン蝋によって保存されているサンプルなども含む。
【0077】
好適な実施形態では、標的核酸が抽出される細胞を含むサンプルは、血液、尿、唾液、精液、糞、組織、ぬぐい液、涙、骨、歯、毛髪、または、筋肉である。他の好適な実施形態では、上記サンプルは、バクテリア、菌類、古細菌、真核生物、原虫、または、ウイルスである。また、他の実施形態では、上記サンプルは、海水、淡水、氷、土、廃棄物、および、食料の混合物である。他の好適な実施形態では、上記サンプルは、血液、尿、唾液、精液、糞、組織、ぬぐい液、骨、歯、毛髪、または、粘液である。上記サンプルは、皮膚、羽毛、または、保全されたサンプルまたは歴史的サンプルなどもよい。
【0078】
〔好熱性プロテイナーゼ〕
好適な実施形態では、生体サンプルから核酸を抽出するために好熱性プロテイナーゼが用いられる。好熱性プロテイナーゼは、高温下において、タンパク質分解活性を示す。“好熱性プロテイナーゼ”は、例えば、約65℃〜80℃の高温下において最適なタンパク質分解活性を示すプロテイナーゼを指し、上述のような最適タンパク質分解活性を持つ、好熱性有機体から単離されたプロテイナーゼと好熱性有機体以外の有機体から単離されたプロテイナーゼを包含する。そして、このようなプロテイナーゼは、修飾または遺伝子操作された改変体を含む、プロテイナーゼの改変体を含む。
【0079】
本実施形態の方法での使用に特に好適な好熱性プロテイナーゼは、約90℃以上において熱変性可能な好熱性プロテイナーゼおよび/または自己触媒作用を生じる好熱性プロテイナーゼ、および、好ましくは、例えば約90℃以上の高温下で恒久的に熱非活性化される好熱性プロテイナーゼである。特定の実施形態では、使用される好熱性プロテイナーゼの好ましい特徴として下記のものが挙げられる。
【0080】
1)約65℃〜80℃の範囲において、実質的に安定化および活動化状態にある、
2)約90℃以上で、簡単に非活性化および/または変性される、
3)適宜、40℃未満で活性が低下し、例えば、一緒に存在する細胞壁除去用の中温酵素が分解されないような温度−活性特性を持っている。
【0081】
上記好熱性プロテイナーゼを活性化し、細胞の分解、タンパク質の消化、細胞壁の消化の何れかを介して上記標的核酸を抽出するのに求められる好ましいインキュベーション温度は75℃である。上記好熱性プロテイナーゼの自己触媒を生じさせるのに求められる上記好ましいインキュベーション温度は、95℃である。なお、上記好ましい温度はあくまでも一例であって、これらに限定されない。また、上記プロテイナーゼは、温度範囲に渡って酵素活性及び安定性の両方について異なる特性を有し、このような酵素の動態は、当業者にとって公知である。さらに、このようなプロテイナーゼに関する酵素の動態は、必要最低限の実験により確認される。
【0082】
好ましい実施形態では、上記好熱性プロテイナーゼは、EA1プロテイナーゼ、Bacillus種株EA1から単離された中性プロテイナーゼ、及びこれらの改変体、並びに、Ak1プロテイナーゼ、Bacillus種株Ak1から単離されたセリンプロテアーゼ、及びこれらの改変体である。
【0083】
特に好ましい実施形態では、EA1プロテイナーゼが用いられる。EA1プロテイナーゼは、温度変化により活性化および(自己溶解によって)分解される。例えば、65℃〜80℃でインキュベートされた場合、EA1プロテイナーゼは活性形態にある。この温度下では、サンプル内の細胞が分解され、上記EA1プロテイナーゼは、汚染タンパク質を分解し、DNA分解ヌクレアーゼが非活性形態にある温度下において、DNA分解ヌクレアーゼを急速に除去する。これにより、上記標的核酸の分解が最小限に抑制される。
【0084】
特定の実施形態では、閉鎖系おけるサンプルからの標的核酸の抽出は、
1)少なくとも1つの好熱性プロテイナーゼを検査用の核酸を含むサンプルに加える工程と、
2)細胞の分解、タンパク質の消化、細胞壁酵素の消化のうちの1つ以上を発生させるのに求められる好ましい期間、65〜80℃で上記サンプルをインキュベートする工程、とを含み、上記好熱性プロテイナーゼは、約65〜80℃で安定し且つ活性形態になる一方、変性酵素の更なる追加の必要なしに上記サンプルが90℃以上でインキュベートされる場合、非活性化および/または変性される。
【0085】
好ましい実施形態では、好熱性プロテイナーゼが使用されるが、上記方法とともに用いられる酵素はこれに限定されない。
【0086】
〔他の抽出酵素〕
特定の実施形態では、中温酵素は、好熱性プロテイナーゼの活性温度よりも低い温度にて活性形態を示し、好熱性プロテイナーゼと混合されて、上記好熱性プロテイナーゼを活性化させて閉鎖系内の核酸抽出を進める前に、植物、菌糸組織、バクテリア、胞子、生物膜の細胞壁を弱める、および/または、除去するために使用される。上記方法の実践は、異なる温度下で異なる活性を示す上記プロテイナーゼおよび/またはプロテイナーゼ/細胞壁分解酵素に基づく。異なる温度を繰り返し設定することで、上記系を開放して新たに試薬を加えることなく、異なる酵素の活性を生じさせることができる。
【0087】
好ましい実施形態では、中温酵素と好熱性プロテイナーゼとを用いる方法では、更に、
a 少なくとも1つの中温酵素と少なくとも1つの任意の好熱性酵素とを、検査用の標的核酸を含むサンプルに加える工程と、
b 約40℃未満、サンプル細胞の細胞壁を除去するのに必要な好ましい期間で、上記サンプルをインキュベートする工程と、を備える。
【0088】
上記中温酵素の活性による細胞壁の除去を生じさせるのに必要な好ましい初期インキュベーション温度は、37℃である。繰り返すが、上記初期インキュベーション温度は一例であり、これに限定されない。
【0089】
特定の実施形態では、上記中温酵素は、セルロースまたはリゾチームであればよい。
【0090】
上記好熱性プロテイナーゼは、細胞壁の破壊または弱体化を生じさせる他の加水分解酵素と組み合わせて使用してもよい。これにより、環境(例えば、土壌、石、水、植物材料サンプルなど)もしくは組織を含む被験体、または被験体からの流体から得られた、植物細胞、頑丈なバクテリア細胞、または真菌胞子といった、扱いにくい細胞から標的核酸を抽出することが可能になる。
【0091】
核酸不活性化試薬を用いてサンプルを処理し、核酸を抽出するために試薬を用いて処理し、そして、上記抽出試薬が非活性化された後、上記サンプルに含まれる上記標的核酸は増幅される。対象の公知の核酸配列が、PCR型の方法または等熱型の方法によって増幅される。
【0092】
〔標的核酸の増幅〕
以下に好ましい核酸増幅方法を説明する。上記方法として、汚染された核酸を抑制するように核酸不活性化試薬を用いて、サンプルを処理し、上記何れかの方法により、上記サンプルから上記標的核酸を抽出した後、上記サンプルの関心領域の標的核酸を増幅するPCR型の核酸増幅方法および等熱型の核酸増幅方法が挙げられる。特定の実施形態では、上記標的核酸の増幅プロセスは、自動化されていてもよい。
【0093】
〔PCR増幅〕
PCR用の試薬は、具体的には、各標的核酸に対応する一組のプライマーと、DNAポリメラーゼ(好ましくは、熱安定性DNAポリメラーゼ)と、DNAポリメラーゼ共同因子と、1つ以上のデオキシリボヌクレオチド−5’−三リン酸塩(dNTP’s)または同様のヌクレオシドを含む。PCR用に用いられる他の任意の試薬と材料とを以下に説明する。
【0094】
DNAポリメラーゼは、プライマー及び鋳型の複合体において、プライマーの末端(通常3’ヒドロキシル基側の末端)にデオキシヌクレオシド一リン酸塩分子を付加する酵素であり、このデオキシヌクレオシド一リン酸塩分子は鋳型に依存した形式で付加される。伸張生成物の合成は、合成が終了するまで、新たに合成された鎖の5’末端側から3’末端側に向けて進む。有用なDNAポリメラーゼは、例えば、Taqポリメラーゼ、E.coliDNAポリメラーゼI、T4DNAポリメラーゼ、Klenowポリメラーゼ、逆転写酵素と、及び本分野において公知の他のものを包含する。好ましくは、上記DNAポリメラーゼは熱安定性があり、すなわち熱に対して安定しており、高温下、特にDNA鎖のプライミングおよび伸張において用いられる温度下において、選択的に活性形態になる。より具体的には、熱安定性DNAポリメラーゼは、実質的には、ポリメラーゼ連鎖反応において利用される高温下では、非活性形態にならない。このような温度は、pH値、ヌクレオチド組成、プライマーの長さ、塩濃度、および上記分野において公知の他の条件を含む反応条件の数に応じて変化する。
【0095】
特に有用なポリメラーゼは、様々なThermusバクテリア種由来のポリメラーゼであり、Thermusバクテリア種としては、Thermus aquaticus、Thermus thermophilius、Thermus filiformis、及びThermus flavusが挙げられる。他の有用な熱安定性ポリメラーゼは、様々な微生物起源から得られ、このような微生物起源として、Thermococcus literalis、Pyrococcus furiosus、Thermotoga sp、および、国際公報WO−A−89/06691号(公開日1989年7月27日)に開示されたものが挙げられる。有用な熱安定性ポリメラーゼのうちのいくつかは、AmpliTaqTM、Tth、及びUlTmaTM(Perkin Elmer社製)、Pfu(Stratagene社製)、Vent及びDeep−Vent(England Biolabs社製)などのように、市販されている。他のポリメラーゼは、高温が印加されるまでポリメラーゼを非活性形態にする他の分子と複合体を形成している。具体的には、抗体が用いられる。このようなポリメラーゼの例として、Platinum(登録商標) Taq(Invitrogen社製)が挙げられる。有機体から得られる天然由来のポリメラーゼを単離するための技術、及び遺伝子組み替え技術を用いて遺伝子工学によって合成された酵素を作成するための技術は、数多く公知になっている。
【0096】
DNAポリメラーゼ共同因子は、酵素活性を決定する非タンパク質化合物を指す。よって、共同因子の不存在下では、上記酵素は触媒活性的に不活性形態である。塩化物、サルフェート、酢酸塩、脂肪酸塩などのマンガン塩およびマグネシウム塩を含む共同因子として、多数の材料が知られているが、これらに限定されない。なお、塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムが好ましい。
【0097】
さらに、2つ以上のデオキシリボヌクレオチド−5’−三リン酸塩がPCRに求められ、これら2つ以上のデオキシリボヌクレオチド−5’−三リン酸塩としては、dATP、dCTP、dGTP、dTTPの何れか2つ以上が挙げられる。dITP、dUTP、および7−deaza−dGTP等の類似物も有用である。好ましくは、4つの一般的な三リン酸塩(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)が共に使用される。
【0098】
上記PCR試薬は、上記PCRにおいて、標的核酸の増幅を生じさせるのに好適な濃度で用いられる。増幅に必要な最小限のプライマー、DNAポリメラーゼ、共同因子、デオキシリボヌクレオチド−5’−三リン酸塩の量は周知であり、それぞれの好適な範囲もまた周知である。上記最小限の量のDNAポリメラーゼは、少なくとも、溶液の約0.5ユニット/100μlであり、好ましくは、約2〜25ユニット/100μlであり、更に好ましくは、約7〜20ユニット/100μlである。所定の増幅系では、他の量も有用である。“ユニット”とは、74℃30分間で、全ヌクレオチド(dNTP’s)10nモルを伸張核酸鎖に組み込むのに必要な酵素の活性量として定義される。上記プライマーの最小量は、少なくとも約0.075μmolであり、0.1〜2μmolが好ましいが、他の量も当該分野では周知である。上記共同因子は、通常、2〜15mmolの量で存在する。各dNTPの量は、通常、約0.25mmol〜3.5mmolである。
【0099】
上記PCR試薬は独立して供給されてもよいし、多種の組み合わせで供給されてもよく、pH値7〜9の持つ緩衝液によって供給されてもよい。この場合の緩衝液は、任意の好適な緩衝液であればよく、その多くは当該分野において公知である。
【0100】
PCRに用いられる他の試薬として、例えば、熱安定性DNAポリメラーゼに特異的な抗体が挙げられる。抗体は、増幅処理前に上記ポリメラーゼの働きを抑制するために使用される。好ましくは、上記抗体は、熱安定性DNAポリメラーゼに特異的であり、約50℃未満の温度にて上記DNAポリメラーゼの酵素活性を抑制し、高温にて不活性化される。有用な抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および抗体フラグメントが挙げられる。好ましくは、上記抗体はモノクローナルである。抗体は、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)に記述された方法など、公知の方法を用いて調整されてもよい。
【0101】
上記PCR用の試薬を供給した後、加熱器および制御器を用いて温度サイクリングが実現される。PCR用試薬は、同時に複数の標的核酸を分析できるように多重化されていてもよい。
【0102】
特定の実施形態では、一般的なPCR法が採用される。他の特に好ましい実施形態では、qPCR法、逆転写PCR法、または、多重PCR法が採用される。
【0103】
“qPCR”、“定量PCR”、“リアルタイムPCR”は、標的核酸の増幅及び定量化を同時に行うポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法を指すものとして、互換可能に用いられる。qPCR分析では、陽性反応は、蛍光シグナルの蓄積によって検出される。CT(サイクル閾値)は、上記蛍光シグナルが閾値を超える(バックグラウンドレベルを超える)のに必要なサイクル数として定義される。上記CTレベルは、上記サンプル内の上記標的核酸の量に半比例する(上記CTレベルが低いほど、上記サンプル内の標的核酸の量が多い)。
【0104】
〔等温増幅法〕
本開示の他の態様は、標的核酸を検出する等温増幅方法であり、この等温増幅方法は、核酸プローブに結合された検出可能な標識からのシグナルの、標的核酸依存的な増幅に基づく方法である。等温増幅法は、PCT出願PCT/NZ2007/000197号に開示されている。等温増幅法は、鎖置換増幅法、ローリングサークル増幅法、ループ媒介等温増幅法、キメラプライマー誘導核酸等温増幅法、Q−beta増幅システム、またはOneCutEventAmplificatioNによってなされ得る。
【0105】
等温増幅処理中に適用される技術は、ヌクレアーゼ連鎖反応(NCR)やRNAse媒介ヌクレアーゼ連鎖反応(RNCR)である。両者は、鎖置換を、DNA鎖のうち1つの選択的分解に置換する。上記1つのDNA鎖がリボヌクレオチドを含む場合、上記処理は、制限ヌクレアーゼまたはRNAseHによって開始されてもよい。ポリメラーゼヌクレアーゼ連鎖反応(PNCR)は、標的DNA存在下でのヌクレアーゼ切断後に、DNAポリメラーゼを用いる伸張処理と、DNA:RNAハイブリッドに対するRNAseHによる鎖分解法であるRNAse媒介性検出(RMD)とが行われる。RMDは、しばしば他の方法と組み合わせて用いられる、効果的な直線状増幅システムである。タンデム反復制限酵素促進(TR−REF)連鎖反応、または、反転逆相補体制限酵素促進(IRC−REF)連鎖反応は、タンデム反復を含む検出用プローブの周期的な生成に基づく、2種類の方法である。これらの反復は、特定のオリゴヌクレオチドトリガーがプライマーとして作用する場合、DNAポリメラーゼによって複製される。次に、制限エンドヌクレアーゼは、新しく形成された二本鎖DNAを攻撃し、これにより、元のプライマーと二次プライマーとが放出され、2つの新しい周期が開始される。等温増幅反応は、関心がある複数の標的核酸を同時にアッセイするために多重化することができる。
【0106】
なお、鎖侵入特性を有する核酸が存在し、このような鎖侵入により、上記標的配列が最初に一本鎖であることなく、標的核酸の相補鎖の置換および標的プローブの二本鎖の形成、または、標的プローブの三本鎖の形成をもたらす。ペプチド核酸(PNAs)とその誘導体とは、鎖侵入を行うことが可能であり、これにより、PNAsを含む標的核酸結合領域を含み、現在開示されているプローブは、完全に一本鎖に変更されていない核酸を検出するために使用される。PNAsを含む標的結合領域の使用は、特に円形プローブにおいて想定され、円形プローブでは、標的プローブハイブリットの形成前では、上記プローブの標的結合領域は、実質的に、二本鎖であってよい。
【0107】
“標的結合ドメイン”およびそれに相当する“標的結合領域”は、核酸分子に存在し、上記標的核酸内に存在する核酸配列に対して、上記標的結合領域と上記標的核酸とのハイブリダイゼーションを生じさせて標的プローブハイブリットを形成するのに十分に相補的である核酸配列を指す。
【0108】
〔SNP分析〕
DNAベースの診断を適用している成長中の分野としては、一塩基多型(SNP)分析を利用したオーダーメイド医療、及び家畜の血統分析の2つがある。これら分野の重要さを示すものとして、ヒトゲノムの完全なハロタイプ地図の作成を目的とする国際ハップマップ計画がある。一塩基多型は、特定の特性や病気に対するマーカーを提供する。確定したSNP遺伝子座における対立遺伝子を特定するために、数多くのプラットフォームや技術が利用可能である。一塩基多型は、PCRおよびプライマー伸張などの、多様なポリメラーゼ基準技術によって、確認することができる。幾つかの場合には、プライマー伸張系の生成物は、質量分析を使用するマルチプレクスにおいて分析される。侵入技術などの他の方法では、DNA配列の不一致に感受性を示す酵素が用いられる(Oliver,2005)。また、リガーゼ基準の分析およびヌクレアーゼに基づく分析、または、短オリゴヌクレオチドの上記ゲノムの多形成領域への交配動力学に基づく方法を用いてもよい。後者を方法の例として、アフィメトリクス高密度配列がある。
【0109】
〔増幅検出〕
特定の実施形態では、標的核酸の増幅方法は、標識からのシグナルの検出または測定に基づき、上記シグナルは、好ましくは、発光標識によって標識化されたプローブの発光である。“標識”とは、任意の原子、分子、化合物、または、核酸に付着され得る構成成分を指し、検出可能なシグナルを提供するか、あるいは二次標識と相互作用して、上記二次標識から発せられる検出可能なシグナルを改変するために用いられる。好ましい標識は、蛍光、化学発光、または生体発光により生じる検出可能なシグナルを生成する発光化合物である。さらに好ましい標識は、マスキング基(例えばクエンチングする発色団)に十分近接している場合に、自身のシグナルが減少する、あるいは検出不可能になる発光化合物である。特に好ましい実施形態としては、核酸増幅は、蛍光により検出される。
【0110】
発光標識は、PCR方法および等温検出方法に使用されてもよい。化合物の発光が第2の化合物によって弱められる機構については、Morrison,1992,in Nonisotopic DNA Probe Techniques(Kricka ed.,Academic Press,Inc.San Diego,Calif.),Chapter 13に記載されている。この機構は、蛍光エネルギー移動(FRET)、無放射性エネルギー移動、長範囲エネルギー移動、双極子連結エネルギー移動、および、Forsterエネルギー移動を包含する。FRETについての主な用件は、上記化合物のうちの一方(上記エネルギー供与体)の発光スペクトルが、他方の化合物(エネルギー受容体)の吸収スペクトルと重なり合わなければならないことである。Styer and Haugland,1967,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:719(本明細書に参考として援用される)は、いくつかの一般的エミッター−クエンチャー対のエネルギー移動効率が、分離距離が10Å未満である場合に100%に近づき得ることを示す。上記エネルギー移動速度は、上記エネルギー供与体分子とエネルギー受容体分子との間の距離の6乗に比例して低下する。結論として、分離距離の小さな増大は、上記エネルギー移動速度を大いに減少させ、上記エネルギー供与体の増大した蛍光、および上記クエンチャー発色団がまた、蛍光団である場合に、上記エネルギー受容体の低下した蛍光を生じる。上記方法では、上記プローブに結合された標識(好ましくは蛍光標識)のシグナル放出が検出される。
【0111】
検出用配列の露出は、上記検出用配列が、検出目的のために採取可能になることを意味し、例えば、検出用プローブとの結合に採取可能であることを意味する。反対に、“隠された”、“遮蔽”、および文法上これらに相当する語句は、これらの語句によって説明される要素が採取可能でないことを意味している。例えば、検出配列は、検出プローブ以外の核酸分子と結合している場合、隠されていたり、遮蔽されていたりする。“ハイブリダイゼーション”および文法上これに相当する語句は、2つ以上の一本鎖核酸を相補的塩基対合によって、一般的には二重結合の構造体などの、多重結合の構造体の形成することを指す。
【0112】
なお、固体マトリクスに結合可能な構成要素からの標識の切断を示す標識系を用いてもよい。この例としては、固定化されたアビジンに結合可能なビオチン標識があり、上記プローブを切断しない場合、上記プローブの反対側の末端に存在する二次標識を結合することができる。このような方法は、計深棒を用いた検出に用いられる。しかし、多くの検出系は、ナノ細孔技術によって識別可能な標識を用いている。標識としては、複数の標識を用いることが可能であるが、本明細書の記載の方法は、ひとつの標識を用いて標識化されたプローブの検出に適用可能である。切断または切断によるプローブ変性プロセスによって、上記標識(例えば、蛍光団)が、上記マスキング基(例えば、クエンチャー)から十分離された場合に、切断されたプローブが検出される。これにより、上記マスキング基と上記標識との間の相互作用を減少し、上記シグナルの放出を可能にする。なお、“マスキング基”とは、上記標識と相互に作用して、上記標識からのシグナルの放出を減少させることの可能な任意の原子、分子化合物、または、構成要素である。切断またはプローブ変性プロセスによる上記標識と上記マスキング基との分離は、次には、付着した標識からのシグナルの放出を検出可能な程度増加させる。上記標識に応じて、シグナル放出は、発光、粒子放射、着色化合物の出現または消失等を含む。
【0113】
以下に、相互に作用し、標識からの発光を変化させる、好ましい発光標識とマスキング基とを説明する。なお、“発色団”とは、光としてエネルギーを吸収する非放射性化合物を指す。発光集団の中には、励起されると化学反応によって発光し、化学発光を起こすものや、励起されると、光を吸収して発光し、蛍光を発するものもがある。なお、“蛍光団”は、蛍光を発光する(すなわち、ある周波数の光を吸収し、通常上記周波数よりも低い他の周波数の光を放出する)ことが可能な化合物を指す。
【0114】
また、“生体発光”は、化学発光の一形態を指すものであり、上記生体発光における発光化合物は、生体内に存在する化合物である。生体発光を行う化合物の例として、細菌ルシフェラーゼと蛍ルシフェラーゼとが挙げられる。また、“クエンチング”とは、どのような機構によるかに関わらず、第一の化合物が発する蛍光における、第二の化合物による減少を指す。具体的には、クエンチングでは、上記第一の化合物と第二の化合物とが近接していることが求められる。本明細書において述べられているように、化合物がクエンチングされる、あるいは、化合物の蛍光がクエンチングされる、のどちらとも言うことができ、これらの表現は同じ現象を説明するものである。
【0115】
本発明の分野において開示されている多くの蛍光団および発色団は、本発明の方法に適用することが可能である。好適な蛍光団とクエンチング発色団との組は、上記蛍光団の発光スペクトラルと上記発色団の吸収スペクトラルとが重なり合うような組である。好ましくは、上記蛍光団は、散乱励起光による干渉を最小限に抑えるような、ストークス変異(最大吸収時の波長と最大発光時の波長との間の差異が大きい)の大きいものである。
【0116】
当該分野で周知の適切な標識としては、フルオレセインおよび誘導体(例えば、FAM、HEX、TET、およびJOE);ローダミンおよび誘導体(例えば、テキサスレッド、ROX、およびTAMRA);ルシファーイエロー、およびクマリン誘導体(例えば、7−Me2N−クマリン−4−アセテート、7−OH−4−CH3−クマリン−3−アセテート、および7−NH2−4−CH3−クマリン−3−アセテート(AMCA))が挙げられるが、これらに限定されない。FAM、HEX、TET、JOE、ROX、およびTAMRAは、Perkin Elmer,Applied Biosystems Division(Foster City,Calif.)によって販売されている。テキサスレッドおよび多くの他の適切な化合物は、Molecular Probes(Eugene,Oreg.)によって販売されている。上記エネルギー供与体としての使用に適切であり得る化学発光化合物および生物発光化合物の例としては、ルミノール(アミノフタルヒドラジド)および誘導体、ならびにルシフェラーゼが挙げられる。
【0117】
大部分の実施形態において、上記検出可能な標識が発光標識であり、上記マスキング基がクエンチャー(例えば、クエンチする発色団)であることは好ましい一方で、他の検出可能な標識およびマスキング基も、考えられる。例えば、上記標識は、酵素であってもよく、上記マスキング基は、上記酵素のインヒビターであってもよい。上記酵素およびインヒビターが、相互作用するに十分近接して存在する場合、上記インヒビターはまた、上記酵素の活性を阻害するはずである。上記プローブの切断もしくは変性の際に、上記酵素およびインヒビターは分離され、上記酵素が活性であるようにはもはや相互作用できない。検出可能な生成物を生じる反応を触媒し得る広く種々の酵素、およびこのような酵素の活性のインヒビターは、当業者に周知である(例えば、β−ガラクトシダーゼおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ)。
【0118】
〔汚染核酸の不活性化と、標的核酸の抽出および増幅とを組み合わせた方法〕
汚染核酸を不活性化する方法と、サンプルから標的核酸を抽出する方法と、上記抽出された核酸を増幅する方法とは互いに適合するものであり、ひとつの閉鎖系おいて組み合わせてよい。本発明の好ましい実施形態では、上記閉鎖系は、ひとつの容器または管を備えている。
【0119】
好ましくは、汚染された核酸を不活性化する試薬と、サンプルから標的核酸を抽出する試薬と、抽出された核酸を増幅せせる試薬とは、汚染された核酸の不活性化後に上記閉鎖系を開放せず済むような方法で、添加される。
【0120】
本発明の特定の実施形態では、互いに適合する試薬が混合した混合物として供給され、供給後に上記系が閉鎖される。本発明の他の実施形態では、上記試薬は互いに不適合であるので、これらの試薬は互いから機能的に隔離され、順に供給される。
【0121】
特に好ましい実施形態では、上記核酸不活性化試薬は、上記核酸抽出試薬(例えば、好熱性プロテイナーゼ)と適合するものであり、上記核酸不活性化試薬と上記核酸抽出試薬とは、これら試薬を混合したひとつの混合物として供給することができる。例えば、中温性核酸修飾不活性化試薬は、約25℃〜40℃で活性形態を示し、約65℃〜80℃で不活性形態を示す。他方、上記好熱性プロテイナーゼは、約25℃〜40℃で不活性形態を示し、約65℃〜80℃で活性形態を示す。なお、上記はあくまでも一例であり、これに限定されない。他の好ましい実施形態では、上記不活性化試薬と上記核酸抽出試薬とは、更に核酸増幅試薬とも適合し、これら試薬をひとつの混合体として供給できる。一例として、上記核酸増幅試薬は、上記核酸不活性化試薬および上記核酸抽出試薬と、それらが生じさせる核酸の不活性化および抽出との何れの影響を受けない。例えば、上記DNAポリメラーゼは、好熱性プロテイナーゼによるタンパク質分解的切断に対して耐性を持つ。
【0122】
このような状況下では、上記核酸不活性化試薬は、上記核酸抽出試薬と上記核酸増幅試薬と組み合わされて供給される。例えば、上記核酸不活性化試薬は、増幅対象の上記標的核酸以外のPCR反応を生じさせるのに必要な全ての成分(デオキシリボヌクレオチドを含む緩衝液、二価イオン、オリゴヌクレオチドプライマー、およびDNAポリメラーゼ)を含んでいる、PCRの基本混合物と共に供給されてもよい。
【0123】
上記核酸増幅試薬が他の試薬に対して完全は適合を示さない他の実施形態では、上記試薬を閉鎖系において、互いから機能的に隔離し、順に供給してもよい。例えば、DNAポリメラーゼには、TaqDNAポリメラーゼのように、上記核酸抽出試薬中の上記好熱性プロテイナーゼにより分解されてしまうものがあるので、上記DNAポリメラーゼを核酸抽出後に供給する手段を考慮する必要がある。可能な供給手段としては以下の4つ挙げられる。(1)上記核酸の不活性化処理および抽出処理後に、上記DNAポリメラーゼ、及び他の感受性試薬を供給する手段。この供給手段では、上記試薬の供給は、微小流体または固体ディスペンサを用いて、入口を介して行われる。(2)上記DNAポリメラーゼ及び他の感受性試薬を、保護した形態で、上記核酸不活性化試薬と上記核酸抽出試薬とに添加する供給手段。この供給手段には、上記他の感受性試薬が内部にカプセル化されたビーズまたはフィルムが供給される。(3)例えば抗体を付加することで、上記DNAポリメラーゼが上記好熱性プロテイナーゼから保護されるように、上記DNAポリメラーゼを修飾する。(4)タンパク質分解による切断に対して耐性である新規のポリメラーゼを使用する。特定の実施形態では、上記核酸の増幅試薬は、ミクロ流体または固体ディスペンサを用いて供給することができる。また、他の実施形態では、上記核酸増幅試薬は、上記核酸増幅試薬を含む微小なカプセルを用いて添加される。
【0124】
好ましい実施形態では、上記微小なカプセルは、上記核酸の増幅が行われる上記容器または管の中に予め供給されている。他の好ましい実施形態では、上記微小なカプセルは、非耐熱性カプセルである。更に他の好ましい実施形態では、上記非耐熱性の微小カプセルが、アガロースまたはワックス材のビーズである。更に他の好ましい実施形態では、上記非耐熱性の微小カプセルが、上記非耐熱性の微小カプセルを溶解するかまたは分解するのに十分な温度に晒された場合に、増幅検出試薬を放出する。
【0125】
上記核酸不活性化試薬が定量PCR増幅方法と組み合わせて使用される特定の実施形態では、定量PCRと共に使用されるクエンチャーおよび/またはレポーターダイとして、EMA蛍光団を使用することを考慮すべきである。
【0126】
〔汚染核酸の不活性化、抽出、および増幅を行う装置〕
好適な実施形態では、汚染核酸の不活性化、抽出、および増幅を行うためのひとつの容器または管を備える上記閉鎖系は、装置によって実現されてもよい。図2に装置の好適な一実施形態を示す。上記好適な装置は、上記核酸を非活性形態から活性形態へと変化させる外的刺激源を備える。例えば、特定の実施形態では、特定の狭スペクトルを持つ波長光の光源、広スペクトルを持つ白色光の光源、またはUV光の光源により、光分解が生じEMAが活性化する。上記装置は、閉鎖系内反応を可能にするので、閉鎖系内へのサンプルの投入から結果が得られるまでの間に生じる反応について、物理的調整程度が求められる。好ましくは、光と温度とが、連続化学反応を開始および停止させるために利用されるので、複雑なポンプやバルブまたは流体を使用することなく複数段の処理を行うことができる。光と熱とは、マイクロ電子機器、LED、ペルチェプレート、または白熱電球を備える簡易な装置によって制御することができる。
【0127】
好ましい実施形態では、上記装置は、汚染核酸の不活性化から、サンプルからの標的核酸の抽出、標的核酸の増幅までの上記組み合わせ方法の全段について、各段の反応条件に対応する。この系は、既存の技術に組み込むことが可能である。
【0128】
好ましい実施形態では、上記装置は、単一のチャンバーを備える。他の実施形態では、上記チャンバーは、暗くなっているか、あるいは遮光されている。更に他の実施形態では、上記チャンバーは、上記装置内に設けられた外部管(例えば、PCR管)または外部プレート(例えば、96ウェルマイクロタイタープレート)を保持する。更に他の実施形態では、上記装置は、入口と、出口と、チャンバーと、発光した蛍光団の検出器と、励起光源とを備える。好ましい実施形態では、上記装置は、更に、上記チャンバー内の温度を制御する手段を備える。幾つかの実施形態では、上記装置が、核酸不活性化試薬を活性化させる光源をも備えている。特定の実施形態では、上記核酸不活性化試薬を活性化させる光源は、白熱灯、蛍光灯、または、発光ダイオードアレイとすることができる。
【0129】
他の実施形態では、上記装置は、更に、マイクロ流体工学と、マイクロチップと、ナノ孔技術と、小型装置とを備える。上記装置または上記装置の構成要素は、使い捨てのものでよい。上記装置は、また、手持ち式の装置でもよい。
【0130】
本発明の装置および方法は、汚染物質を除去する核酸の浄化が特に有益である幅広い範囲の核酸診断技術、または、同様の有益な結果を本発明の装置および方法の使用によりも実現することのできる診断技術に適用できる。
【0131】
〔コンピュータ関連の実施形態〕
装置制御は、熱サイクル装置に特有のハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアを使用する標準的な電子的方法によって実現することができる。同様に、集積された検出系は同様のプログラム可能な機器を使用することができる。
【0132】
上記検出器から得られるデータは多岐に渡り、上記検出装置が特定の物質を検出するように使用される場合には、上記特定の物質が検出されたか否かを示す単純なYes/No形式のデータとしてもよい。また、上記データは、上記シグナルが所定の閾値に達する時間を測定したリアルタイムデータとしてもよいので、定量的データを提供することができる。同様に、電気泳動データは、蛍光のピーク値がキャピラリー電気泳動装置に沿った位置に設けられた検出器に到達するものとすることができる。
【0133】
データ分析は、外部電子口、無線技術、内部記憶装置、または、内部ファームウェアを介して上記装置に供給されるコンピュータプログラムを用いて行うことができる。一例として、ひとつの標的核酸の有無を判断する機能を持つ装置の場合、判断結果の報告は、光、および/または、LCDまたはLED表示などの、可視指標の形式で行われてもよい。
【0134】
より複雑なデータ分析が必要とされる場合、または、より多くのユーザ入力がデータに必要とされる場合、未加工データ、加工データ、または、部分的に加工されたデータを、任意の形式の取り外し可能な記憶装置または通信ケーブルを介して外部コンピュータへと、転送することができる。
【0135】
特定の実施形態では、上記判断結果が、無線技術を適用して、データベース情報を取得するものであってもよく、上記装置に記憶され、サンプル内の標的核酸の同定に役立つデータベース情報を使用するものであってもよい。判断結果は、二値化データ(例えば、標的核酸の有無)でよいが、定量データまたは多変量データでもよい。
【0136】
〔実施例〕
以下、実施例を示して本開示内容の様態を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。したがって、下記の請求項に示した範囲で種々の変更および追加を行うことが可能である。
【0137】
〔実施例1:組合せられた核酸増幅プロセスにおけるエチジウムモノアジドの使用〕
〔背景〕
以下に述べる実験は、サンプル内の標的核酸の抽出及び増幅を行う閉鎖系方法において、エチジウムモノアジド処理を行って汚染核酸を不活性化した場合、増幅検出精度が予期せぬほど大きく増大されたことを示している。
【0138】
上記実験は、Escherichia coli細胞の希釈系列に対し行われ、上記細胞の有無は、16S rRNAオリゴヌクレオチドユニバーサルプライマーを用いて検出された。こられのプライマーは、微生物分析に使用されるタイプに典型的である。これらのプライマーは、任意の公知のバクテリア種の検出に適用できる点で利点があり、標的以外の汚染細菌DNAをも検出してしまう点で不利である。上記実験の目的は、単一の密閉容器内において、光と熱のみを用いて反応を制御して、試薬の精製、DNA抽出、及びqPCRによるDNA増幅を行うことが可能なことを実証すること、並びに、上記処理によって、検出下限値が大幅に向上されることを実証することである。
【0139】
例えば16S rRNAオリゴヌクレオチドユニバーサルプライマーを用いて、25サイクルより多くのサイクル数を使用する通常のqPCR条件下では、偽陽性のリスク、または、サンプル内の有機体を誤認するリスクが高くなる。このことを図2に示す。なお、図2の破線は、ネガティブコントロールの平均CT値を示す(なお、qPCR反応は、超純水のみを包含する)。上記平均CT値は、約25サイクルである。EMAが使用された場合、上記ネガティブコントロールの平均CT値は、37サイクルに増加する。これにより、qPCRにおいて少なくとも更に10サイクル行うことが可能になるので、バックグラウンドレベルが問題になる前に検出感度を大幅に向上することができる。
【0140】
〔材料と方法〕
以下の実験では、HEPAフィルターによって正の気圧が発生している気密実験室に設置されたPCRフード内において、全ての作業を行った。実験で用いた試薬は、全て未開封のものである。また、実験で用いた管、PCRプレート、及びフィルターは、未開封のものである。全ての材料の表面は、実験前に、濃度1%の次亜塩素酸ナトリウムを用いて消毒した。
【0141】
〔試薬〕
以下の試薬を使用した。
1.1U/μlのEA1プロテイナーゼ(ZyGEM社製)
2.GIBCO UltraPureTM(Invitrogen社製)蒸留水
3.Quanta Bioscience qPCR試薬
4.0.1mg/mlのエチジウムモノアジド
5.光学的に透明な、96口のPCRプレート(Axygen社製)
6.最大回収フィルターチップ(Axygen社製)
7.10μMのqPCRプライマー。
【0142】
上記qPCRプライマーは、以下の配列を有する。
1.順方向プライマー:GTCGTCAGCTCGTGTTGTGA(配列番号:1)
2.逆方向プライマー:GCCCGGGAACGTATTCAC(配列番号:2)。
【0143】
上記Quanta Bioscience qPCR試薬は、dNTP’s、緩衝液、MgCl2、及びTaq DNAポリメラーゼを含む。
【0144】
〔方法〕
Escherichia coli MG1655細胞を、LB培地中で一晩培養した。その後、上記細胞を12,000RCFで5分間遠心分離機にかけ、2×107細胞/mlの細胞密度になるように水に再懸濁する。この細胞密度は、5μl当り105細胞に相当する。そして、上記細胞は、超純水によって1:10に連続希釈され、略5μl当り10細胞にした。連続希釈後、5μlの各希釈液を、光学的に透明な96ウェルマイクロタイタープレートのうちの8ウェルに移した。
【0145】
少量の光量の条件下で、EMAを含む以下のカクテルを、各希釈液の4つの複製物に加えた。
【0146】
【表1】

【0147】
EMAを含まない下記のカクテルを、各希釈液の他の4つの複製物に加えた。
【0148】
【表2】

【0149】
上記各希釈液の複製物に加えて、対象として4つの水が各試薬カクテルに対して用意した。なお、上記Taq DNAポリメラーゼが、上記EA1プロテイナーゼによる非活性化に対して耐性持つことが認められたため、上記EA1プロテイナーゼと上記Taq DNAポリメラーゼとを同時に加えることができた。
【0150】
透明で接着性のフタを用いて、上記96ウェルマイクロタイタープレートを密閉し、4℃で5分間、暗闇の中に置いた。上記96ウェルマイクロタイタープレートは、4℃に保たれた状態で、上記フタを介して、200mm離れた位置に設けられかつ600Wで発光するハロゲンランプからの光に、5分間照射された。その後、上記サンプルをApplied Biosystems 7300リアルタイムPCRシステムに移し、下記のサイクルを行った。
【0151】
【表3】

【0152】
上記PCR工程を繰り返し、上記72℃、30秒間の工程において、SYBR(登録商標)Greenの励起及び発光(それぞれの波長は、494nmと521nm)によって蛍光を測定した。
【0153】
〔結果〕
図3に、EMAの非存在下でqPCR反応を生じさせた場合に得られるCT値を示す。図3に示す結果から、管を開放することなく、励起及び検出を単一容器内にて行うことができたことがわかる。また、図3の破線から明らかなように、上記場合に得られる最も高いCT値は約25サイクルである。これは、ネガティブコントロール(超純水のみ)によるCT値である。なお、このCT値は、約1、000細胞(ゲノム)と一致する。
【0154】
図4は、EMA処理を行った場合に得られる、図3に示す結果よりも向上した結果を示す。なお、EMA処理は、全ての反応に取り入れられている。ここで、ネガティブコントロールのCT値は、約37サイクルまで増加している。各サイクルはDNAが2倍になることを示しているので、この場合では、検出精度が約4、000倍向上している。EMAを上記システムに加えることで、反応当り10個未満の細胞を含むサンプル内でDNAの検出が可能になる。
【0155】
〔考察〕
上記実験の結果から、汚染核酸の不活性化、標的DNAの抽出、及び標的DNAのPCR増幅を含む複合処理の全工程について、単一の密閉容器内で行うことが可能であることがわかった。全試薬は、それらが収納されている反応容器と同様に、同時に処理される。上記実験結果は、EMAを用いて閉鎖系内の汚染核酸の不活性化を行うという、予想外に大きな効果を示している。図4に示すように、ネガティブコントロールにEMAを添加すると、汚染核酸が検出されるまでに、増幅サイクル数を約37サイクルまで増加することが可能であった。汚染除去処理、抽出処理、及び検出処理の各処理に求められる試薬は互いに適合しないため、上記処理おける全ての工程を組み合わせて、ひとつの閉鎖管内処置で行うことが可能だとは予期されていなかった。この実験では、上記処理を組み合わせて、外的刺激のみに制御されるひとつのカクテルとした場合、バックグラウンドを大幅に減少させると同時に、上記抽出処理と上記増幅処理とを、抑制されることなく行うことができた。上記処理の各工程は、他の工程に用いられる試薬の存在下でも阻害されることがない。上記による複合効果は、qPCR増幅のサイクル数を12サイクル分増加させ、それによって増幅検出精度を約4,000倍向上させる程度、妨害要因となるバックグラウンドの汚染を減少させることである。
【0156】
この新規の方法の利点のひとつとして、上記汚染核酸不活性化工程を上記抽出工程および上記増幅工程に組み合わせることで、このような組み合わせを行わない場合に比べて、検出水準が3桁より大きく向上したことがある。この検出水準の向上は、背景ノイズ値を減少させることによって実現されるので、より多くの増幅サイクルの利用を可能とした。(不活性化段階を含む)上記反応の全段階を通して閉鎖系を保つことは、サンプルの汚染防止における大幅な向上をも意味する。
【0157】
さらに、不活性化工程を上記反応に統合することで、全試薬と上記反応容器とを同時に処理することが可能になる。これにより、処置が簡素化され、処理の簡単な自動化を可能にする。また、このように上記不活性化工程を上記抽出工程と組み合わせることで、生細胞からDNAを検出することが可能になるとともに、汚染された試薬、サンプルマトリクス、死細胞、またはプラスチック器による汚染からDNAを防ぐことも可能になる。
【0158】
また、偽陽性診断や不正確な診断の可能性が大幅に低減される。さらに、上述のように背景ノイズが低減されるので、微量かつ希少なサンプルを同定できる可能性も大幅に増加される。
【0159】
〔実施例2:EMA処理、核酸抽出、及び核酸増幅を組み合わせた処理と、EMA前処理との比較〕
実施例1に説明したEMA処理を組み込んだ組合せ核酸増幅処理と、標的DNAの抽出および増幅前にサンプルのEMA前処理を行う処理とを比較した。
【0160】
上記組合せ核酸増幅処理は実施例1と同様に行う。
【0161】
上記EMA前処理方法は、以下の条件で行った。96ウェルマイクロタイタープレート内のサンプルに0.1μg/μlのEMAを添加し、透明で接着性の蓋を用いて密閉した。そして、4℃で5分間、暗闇下に静置した。その後、上記のように密閉された状態にある上記プレート内のサンプルに対して、ハロゲン光を5分間照射した。このハロゲン光は、上記プレートから200mmの距離を置いて設けられたハロゲンランプから600Wで発光される。なお、照射の際の上記プレートの温度は、4℃に保たれていた。
【0162】
上記EMA前処理後、上記プレートを密閉していた上記蓋を取り外し、Quanta PCRミックス、プライマー1、プライマー2、及び1U/μlのEA1プロテイナーゼを、各サンプルに添加した。その後、透明で接着性の蓋を用いて上記プレートを再度密閉し、上記プレートをApplied Biosystems 7300リアルタイムPCRシステム内に静置した。次に、実施例1と同じ方法でqPCRを行った。
【0163】
上記複合EMA法の結果と、上記EMA前処理法の結果とを比較し、これら方法間における増幅検出感度の差を定量した。その結果、上記複合EMA法の増幅検出感度が、上記EMA前処理の検出感度に比べて、増大していることが判明した。
【0164】
〔実施例3:複合化核酸増幅処理における中温性核酸修飾酵素の使用〕
汚染核酸を不活性化する中温性ヌクレアーゼと、DNAポリメラーゼ存在下では非活性形態を示し、上記中温性ヌクレアーゼと異なる活性化特性を持つことで、上記中温性ヌクレアーゼとともに使用できる好熱性プロテイナーゼと、を使用する核酸増幅複合処理。
【0165】
中温性ヌクレアーゼ及び好熱性プロテイナーゼを使用した定量PCRを、以下のように行う:
1. (i)標的細胞材料と、(ii)汚染核酸を不活性化する1つ以上の中温性ヌクレアーゼと、(iii)qPCRに用いられる上記増幅酵素に対して低い活性を示し、標的核酸を抽出する好熱性プロテイナーゼと、(iv)上記qPCRの実施に必要な試薬(例えば、dNTP’s、緩衝液、MgCl2、オリゴヌクレオチドプライマー、Taq DNAポリメラーゼ)とを含む試薬カクテルを調整し、
2. 汚染核酸の分解または非活性化を生じさせるのに十分な期間上記中温性ヌクレアーゼが活性化するように、上記試薬カクテルを20℃〜40℃でインキュベートし(なお、20℃〜40℃では、上記好熱性プロテイナーゼの活性は低く、上記中温性ヌクレアーゼは影響を受けない)、
3. 上記好熱性プロテイナーゼを活性化するように、上記試薬カクテルを65℃〜80℃でインキュベートし(上記好熱性プロテイナーゼは、上記中温性ヌクレアーゼを消化すると同時に、上記細胞物質の溶解および分解させて標的核酸の放出を引き起こす)、
4. 上記Taq DNAポリメラーゼを活性化させると同時に、上記好熱性プロテイナーゼを非活性化させるように、上記試薬カクテルを90℃〜95℃でインキュベートし、
5. 上記qPCR温度サイクリング(上記標的核酸の増幅)と検出とを行う。
【0166】
上記実施例に示されるように、上記処理の全工程は、温度制御され、サーマルサイクラーを用いて、単一の閉鎖管またはマイクロタイタープレート内にて行われる。
【0167】
〔実施例4:制御された光源が設けられた装置〕
図2に、装置を使用して行われる、汚染核酸の不活性化と、核酸抽出と、核酸増幅とを組み合わせた上記処理の一実施形態を示す。上記装置は密閉ユニットであって、例えば、上記核酸不活性化試薬であるエチジウムモノアジド(EMA)を活性化し、EMAと汚染核酸との間に共有結合を引き起こすことの可能な510nmの波長光を、96ウェルマイクロタイタープレートに照射する光源が設けられた密閉ユニットである。上記装置の目的として、(i)装置外部の周辺光にサンプルが曝されるのを防止し、(ii)核酸の更なる汚染を防止し、(iii)光源から発せられる強い光からユーザを保護する、保護室におけるEMAの利用を簡素化することがある。
【0168】
図2の装置は、96ウェルマイクロタイタープレートに適したサイズを持ち、96ウェルマイクロタイタープレートに510nm波長の光を照射する発光ダイオード(LEDs)のアレイが設けられた遮光チャンバー(または、部分的に遮光性を有する遮光チャンバー)と、暗闇でのインキュベート時間及び照射時間を制御するタイマーと、上記96ウェルマイクロタイタープレートを望ましい温度で保持する温度制御ブロック(ペルチェ素子であり、熱電冷却器またはTECとしても知られる温度制御ブロック)と、から構成される。
【0169】
特定波長の発光ダイオードを使用することの利点は、放出される熱電気が少ないため試料の加熱が抑えられる点、不必要な波長の使用が少ないため試料の加熱を抑えられる点、上記装置に低電源を使用できる点、および、上記低電源の使用により蛍光試薬の光退色が抑えられる点である。さらに、発光ダイオードアレイを使用することにより、上記96ウェルマイクロタイタープレートの全てのウェルに同量の光が確実に供給される。
【0170】
また、図2の装置は、例えば、qPCR試薬中の汚染核酸を不意活性化するために使用することができる。上記実施例に説明したエチジウムモノアジドまたは中温性ヌクレアーゼを使用する、他の核酸処理と組み合わされた上記核酸増幅処理は、図2の装置とともに使用される。核酸不活性化試薬と共同した上記装置は、qPCRに対する特別な利点がある。
【0171】
蛍光ダイの光退色は、qPCRにおいて公知の問題であり、より光安定性のあるqPCR用DNA結合ダイの開発への投資へと繋がった(Mao et al.,2007)。汚染核酸の不活性化工程をqPCRに組み込みが可能という上記装置の能力は、qPCR用DNA結合ダイのより高い光安定性を可能にし、最終的にはより高い検出感度を可能にした。
【0172】
このような装置は、サーマルサイクラーまたはリアルタイムPCR機器の一部として統合され、これにより、汚染核酸の不活性化、標的核酸の抽出、標的核酸の増幅、および標的核酸の検出の全工程を実行可能なひとつのハードウェアが創出された。
【0173】
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【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】複合核酸検出処理の概略図である。
【図2】発光ダイオードアレイが設けられ、カプセル化試薬を使用して、汚染核酸の不活性化、標的核酸の抽出、及び標的核酸の増幅を行うための単一チャンバー装置。
【図3】DNA抽出及びqPCRを単一槽内において行った場合、種々のEscherichia coli細胞計数に対するqPCR反応にて得られたCT値を示すグラフである。この反応処理では、エチジウムモノアジド処理は行わなかった。図中の破線は、水のみ(細胞数ゼロ)に対してqPCR反応を行った場合に得られたCT値を示す。なお、エラーバーは、平均値から±1の標準偏差である。
【図4】DNA抽出及びqPCRを単一槽内において行った場合、種々のEscherichia coli細胞計数に対するqPCR反応にて得られたCT値を示すグラフである。この反応処理では、閉鎖管内の逐次反応の一部として、エチジウムモノアジド処理を行った。図中の破線は、水のみ(細胞数ゼロ)に対してqPCR反応を行った場合に得られたCT値を示す。なお、エラーバーは、平均値から±1の標準偏差である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖系内で標的核酸を増幅する方法であって、
i)核酸不活性化試薬、好熱性プロテイナーゼ、及び核酸増幅試薬を、標的核酸を含むサンプルに添加して上記閉鎖系を構成する添加工程であって、
上記核酸不活性化試薬は、活性形態及び非活性形態を有し、活性形態のみが上記閉鎖系内の汚染核酸を不活性化させ、これにより上記汚染核酸が核酸増幅試薬と反応しないようになり、
上記核酸不活性化試薬は、外的刺激が印加されたときにのみ、上記活性形態に変化し、
上記好熱性プロテイナーゼは、約65℃〜約80℃で活性形態になり、約90℃以上で非活性形態になる添加工程と、
ii)上記閉鎖系を閉じる閉鎖工程と、
iii)上記核酸不活性化試薬が上記非活性形態から上記活性形態に変化するのに十分な時間、上記外的刺激を印加する印加工程であって、
上記印加によって、上記閉鎖系内の汚染核酸は核酸増幅試薬と反応しないようになり、上記核酸不活性化試薬は、汚染核酸が核酸増幅試薬と反応しなくなった後、非活性形態に変化する印加工程と、
iv)約65℃〜約80℃で上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって好熱性プロテイナーゼが活性化し、細胞溶解、タンパク質分解、細胞壁酵素の分解のうち1つ以上の発生によって、増幅のための標的核酸が抽出されるインキュベート工程と、
v)約90℃以上で上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、好熱性プロテイナーゼの自己触媒反応が発生するインキュベート工程と、
vi)上記標的核酸を増幅する増幅工程と、を備え、
上記閉鎖系は、単一の、槽または管を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記サンプルを約65℃〜80℃でインキュベートする前、または、上記サンプルを約65℃〜80℃でインキュベートするのと同時に、上記核酸不活性化試薬を上記非活性形態に変化させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
汚染核酸が核酸増幅試薬と反応しなくなった後、上記核酸不活性化試薬が上記非活性形態に変化するのに十分な時間上記外的刺激を印加することによって、上記核酸不活性化試薬を上記非活性形態に変化させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
汚染核酸が核酸増幅試薬と反応しなくなった後、上記外的刺激を除去することによって、上記核酸不活性化試薬を上記非活性形態に変化させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記核酸不活性化試薬は、上記好熱性プロテイナーゼ、上記核酸増幅試薬、または、上記標的核酸の増幅を阻害せずに汚染核酸を不活性化するのに十分な濃度で準備されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記核酸不活性化試薬は、中温性核酸修飾酵素であることを特徴とする請求項1に記載に方法。
【請求項7】
上記中温性核酸修飾酵素は、二本鎖特異的エンドヌクレアーゼ、二本鎖特異的エキソヌクレアーゼ、一本鎖特異的ヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、RNAses、RNAseH、及びRNA修飾酵素からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
約25℃〜40℃で、上記中温性核酸修飾酵素を上記活性形態に変化させるのに十分な時間インキュベートすることによって、上記中温性核酸修飾酵素を活性化することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
約65℃〜80℃で、上記中温性核酸修飾酵素を上記非活性形態に変化させるのに十分な時間インキュベートすることによって、上記中温性核酸修飾酵素を非活性化することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
上記核酸不活性化試薬は、核酸挿入剤であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記外的刺激の印加したとき、上記核酸挿入剤の光分解が生じ、上記核酸挿入剤が上記活性形態に変化することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記活性形態の上記核酸挿入剤は、二本鎖核酸と共有結合することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記核酸挿入剤は、エチジウムモノアジドであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
上記エチジウムモノアジドは、約1μg/mlと約5μg/mlとの間の濃度で準備されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記エチジウムモノアジドは、約3μg/mlの濃度で準備されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記外的刺激は、特定の狭域スペクトラム波長光、広域スペクトラム白色光、または、紫外線光であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記外的刺激は、上記核酸挿入剤の光分解によって上記核酸挿入剤を活性化させるのに十分な、特定の狭域スペクトラム波長光、広域スペクトラム白色光、または、紫外線光であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
上記外的刺激は、上記好熱性プロテイナーゼを実質的に活性化させずに上記核酸不活性化試薬を活性化するのに十分な熱エネルギーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記外的刺激は熱エネルギーであり、上記熱エネルギーは、上記中温性核酸修飾酵素を上記活性形態に変化させるのに十分な時間、上記閉鎖系の温度を約25℃〜約40℃に上昇させるのに十分な熱エネルギーであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記好熱性プロテイナーゼは、EA1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(i)上記サンプルを中温性酵素によって処理する工程と、
(ii)約40℃よりも低い温度で、細胞から細胞壁を除去するのに十分な時間、上記サンプルをインキュベートする工程と、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項22】
上記中温性酵素は、セルラーゼまたはリゾチームであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記核酸の増幅は、蛍光団により検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
上記標的核酸の増幅工程では、PCR検出方法を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
上記PCR検出方法は、qPCR、多重PCR、及び逆転写PCRからなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記増幅工程では、等温検出方法を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
上記等温検出方法は、鎖置換増幅法、ローリングサークル増幅法、ループ媒介等温増幅法、キメラプライマー誘導核酸等温増幅法、Q−beta増幅システム、及びOneCutEventAmplificatioNからなる群から選択されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記等温検出方法は、ヌクレアーゼ連鎖反応(NCR)、RNAse媒介ヌクレアーゼ連鎖反応(RNCR)、ポリメラーゼヌクレアーゼ連鎖反応(PNCR)、RNAse媒介性検出(RMD)、タンデム反復制限酵素促進(TR−REF)連鎖反応、及び反転逆相補体制限酵素促進(IRC−REF)連鎖反応からなる群から選択されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
上記増幅工程では、SNP検出分析を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項30】
上記核酸の増幅工程は、オートメーション化されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項31】
上記核酸増幅試薬の添加は、マイクロ流体または固体用ディスペンサを使用して行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
上記核酸増幅試薬の添加は、上記核酸増幅試薬を含むマイクロカプセルを使用して行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項33】
上記マイクロカプセルは、上記槽または管に予め供給されていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
上記マイクロカプセルは、易熱性のカプセルであることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項35】
上記易熱性のカプセルは、アガロースまたはワックス材のビーズであることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
上記易熱性のカプセルが、上記易熱性のカプセルを融解または分解するのに十分な温度に曝されると、上記易熱性のカプセルから検出試薬が放出されることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項37】
上記核酸増幅試薬は、上記好熱性プロテイナーゼによるタンパク質分解に対して耐性であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項38】
上記サンプルは、血液、尿、唾液、精液、排泄物、組織、スワブ、涙、骨、歯、毛髪、及び粘液からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項39】
上記サンプルは、細菌、菌類、古細菌、真核生物、原虫、及びウイルスとからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項40】
上記サンプルは、塩水、淡水、氷、土壌、廃物、及び食料からなる一群から選択されることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
上記槽または管は、装置であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項42】
上記装置は、手持ち式の装置であることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
上記装置または上記装置の構成要素は、使い捨て可能であることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項44】
上記装置は、入口と、出口と、チャンバーと、発光された蛍光団を検出する検出器と、励起光源とを備えたことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項45】
上記装置は、さらに、マイクロ流体と、マイクロチップと、ナノ孔技術と、マニピュレータ装置とを備えたことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項46】
上記装置は、密閉ユニットと、遮光チャンバーと、核酸不活性化試薬活性化光源と、発光された蛍光団を検出する検出器と、励起光源とを備えたことを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項47】
上記核酸不活性化試薬活性化光源は、白熱灯、蛍光灯、及び発光ダイオードアレイからなる群から選択されることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
閉鎖系内で標的核酸を増幅する方法であって、
i)中温性核酸修飾酵素、EA1プロテイナーゼ、及びPCR増幅試薬を、標的核酸を含むサンプルに添加して上記閉鎖系を構成する添加工程であって、
中温性核酸修飾酵素は、活性形態及び非活性形態を有し、活性形態のみが上記閉鎖系内の汚染核酸を不活性化させ、これにより上記汚染核酸がPCR増幅試薬と反応しないようになり、
中温性核酸修飾酵素は、約25℃〜約40℃で活性形態になり、約65℃〜約80℃で非活性形態になり、
上記EA1プロテイナーゼは、約65℃〜約80℃で活性形態になり、約90℃以上で非活性形態になる添加工程と、
ii)上記閉鎖系を閉じる閉鎖工程と、
iii)約25℃〜約40℃で一定期間上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記中温性核酸修飾酵素が活性化し、上記閉鎖系内の汚染核酸がPCR増幅試薬と反応しないようになるインキュベート工程と、
iv)約65℃〜約80℃で一定期間上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記中温性核酸修飾酵素が非活性化し、EA1プロテイナーゼが活性化し、細胞溶解、タンパク質分解、細胞壁酵素の分解のうち1つ以上の発生によって、増幅のための標的核酸が抽出されるインキュベート工程と、
v)約90℃以上で上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記EA1プロテイナーゼの自己触媒反応が発生するインキュベート工程と、
vi)上記標的核酸を増幅する増幅工程と、を備え、
上記閉鎖系は、単一の、槽または管を備えていることを特徴とする方法。
【請求項49】
閉鎖系内で標的核酸を増幅する方法であって、
i)エチジウムモノアジド、EA1プロテイナーゼ、及びPCR増幅試薬を、標的核酸を含むサンプルに添加して上記閉鎖系を構成する添加工程であって、
上記エチジウムモノアジドは、活性形態及び非活性形態を有し、活性形態のみが上記閉鎖系内の汚染核酸を不活性化させ、これにより上記汚染核酸がPCR増幅試薬と反応しないようになり、
上記エチジウムモノアジドは、狭域スペクトラム波長光、広域スペクトラム白色光、または紫外線光が印加されエチジウムモノアジドの光分解が発生したときにのみ、上記活性形態に変化し、
上記EA1プロテイナーゼは、約65℃〜約80℃で活性形態になり、約90℃以上で非活性形態になる添加工程と、
ii)上記閉鎖系を閉じる閉鎖工程と、
iii)上記エチジウムモノアジドを上記非活性形態から上記活性形態へ変化させるのに十分な第1の時間、上記狭域スペクトラム波長光、広域スペクトラム白色光、または紫外線光を印加する印加工程であって、上記印加によって、上記閉鎖系内の汚染核酸は核酸増幅試薬と反応しないようになり、上記照射による上記エチジウムモノアジドの光分解によって、上記エチジウムモノアジドが後段の核酸に対し非活性になる照射工程と、
iv)約65℃〜約80℃で第2の時間、上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記EA1プロテイナーゼが活性化し、細胞溶解、タンパク質分解、細胞壁酵素の分解のうち1つ以上の発生によって、増幅のための標的核酸が抽出されるインキュベート工程と、
v)約90℃以上で上記サンプルをインキュベートするインキュベート工程であって、上記インキュベートによって、上記EA1プロテイナーゼの自己触媒反応が発生するインキュベート工程と、
vi)上記標的核酸を増幅する増幅工程と、を備え、
上記閉鎖系は、単一の、槽または管を備えていることを特徴とする方法。
【請求項50】
増幅検出感度が、上記核酸不活性化試薬を使用しない方法における増幅検出感度の少なくとも約2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項51】
請求項1に記載の方法を閉鎖系において行った場合の増幅検出感度は、請求項1に記載の方法を開放系において行った場合の増幅検出感度の少なくとも約2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−531907(P2012−531907A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518502(P2012−518502)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/NZ2010/000137
【国際公開番号】WO2011/002319
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(510188964)ザイジェム コーポレイション リミテッド (2)
【Fターム(参考)】