説明

単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法

【課題】搬送面スペースを有効に利用して最大限にワークを貯蔵できるようにした、単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法を提供すること。
【解決手段】ワーク検出センサ9により、停止中のコンベア1のワーク受取り領域位置A1に対応するベルト搬送面上に新たなワークが直接載置されたことを検出する第1工程と、ベルト搬送面をコンベア1の一端に配置された当接板7の側の方向へ走行させ、前記新たなワークと、ワーク一時貯蔵領域位置A2に対応するベルト搬送面上に貯えられている一時貯蔵中ワークとを、前記当接板7によって阻止することでその距離を詰めて隙間無しで整列させてなる1つのワーク群を形成する第2工程と、ベルト搬送面を前記当接板7の側と反対方向へ走行させて、前記1つのワーク群を前記ワーク一時貯蔵領域位置A2に対応するベルト搬送面上に位置させる第3工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一のコンベアの搬送面上に搬送面スペースを有効に利用して最大限にワークを貯蔵できるようにした、単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾式粉末成形装置は、水などの液体を圧力媒体とし、圧力容器内においてゴム型を介して粉体に通常100MPa以上の高い等方圧力を加えて、粉体を種々の形状に成形する装置であり、セラミックスや粉末冶金の分野で広く用いられている。
【0003】
この乾式粉末成形装置を備えた粉末成形品の製造ラインでは、乾式粉末成形装置の成形サイクル毎に、ワーク把持装置52により、ワーク(成形品)51を乾式粉末成形装置から取り出し、コンベア53まで搬送し、図4に示すように、停止中のコンベア53の搬送面上に載置することで、この単一のコンベア53の搬送面上にワークを搬送面スペースの範囲内で一時的に貯蔵するようにしている。
【0004】
この場合、ワーク把持装置により、1つずつワークをコンベア53の始端部位置の搬送面上に載置する際に、前回載置されたワークと今回載置するワークとが干渉して載置作業の邪魔にならないようにする必要がある。そのため、予め、前回に載置されたワークは、搬送面上に載置された後、コンベア53を駆動して搬送面をコンベア始端部とは反対の方向へ所定距離だけ走行させて、ワーク把持装置52の作業範囲外まで移動されるようになっている。
【0005】
このように、従来の単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法では、コンベアの搬送面上に貯蔵されるワーク間に大きな間隔距離が発生するものであった。このため、所定数のワークを一時貯蔵するために長尺のコンベアが必要で大きな設置スペースも必要となり、成形製品の生産量の増大にスムーズに対応できなかった。
【0006】
なお従来、互いに連携して運転される複数のコンベアによるワーク一時貯蔵方法に関連する従来技術としては、例えば特開平5−124721号公報によるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−124721号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、他コンベアとの連携なく単独運転される単一のコンベアの搬送面上に、1つずつ載置されるワークを順次貯えて一時的に貯蔵するに際し、それまでに貯蔵されている一時貯蔵中のワークと今回載置するワークとの干渉をなくして載置作業の邪魔にならないようにできるとともに、搬送面スペースを有効に利用して最大限にワークを貯蔵できるようにした、単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明は、次のように構成されている。
【0010】
請求項1の発明は、平面状のベルト搬送面を有する単一のコンベアの一端に当接板が配置され、前記コンベアに対して前記当接板を起点として前記ベルト搬送面の走行方向に沿って順にワーク受取り領域位置とワーク一時貯蔵領域位置とが設定され、当該コンベアの他端側に前記ワーク一時貯蔵領域位置の終端が設定されており、前記コンベアの前記ワーク一時貯蔵領域位置に対応するベルト搬送面上に直接載置された状態で、かつ隣り合うワーク間を詰めて隙間無しで整列させてなる1つのワーク群を一時的に貯蔵するようにした単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法であって、第1のワーク検出センサにより、停止中の前記コンベアの前記ワーク受取り領域位置に対応するベルト搬送面上に新たなワークが直接載置されたことを検出する第1工程と、前記第1工程に続き、前記新たなワークを検出すると、前記コンベアを駆動しそのベルト搬送面を前記当接板の側の方向へ走行させ、前記新たなワークと、前記ワーク一時貯蔵領域位置に対応するベルト搬送面上に貯えられている一時貯蔵中ワークとを、ともに移動させ、前記当接板によって該移動を阻止することでその距離を詰めて隙間無しで整列させてなる1つのワーク群を形成する第2工程と、前記第2工程に続き、前記コンベアのベルト搬送面を前記当接板の側と反対方向へ走行させて、前記ワーク一時貯蔵領域位置の始端に対応させて配置した第2のワーク検出センサにより、前記1つのワーク群のうちの走行方向に関して最後尾のワークが前記ワーク一時貯蔵領域位置の始端に対応するベルト搬送面上の位置に到達したことを検出すると、前記コンベアの駆動を停止して、当該1つのワーク群を前記ワーク一時貯蔵領域位置に対応するベルト搬送面上に位置させる第3工程と、を含むことを特徴とする単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法は、コンベアのワーク受取り領域位置に対応する搬送面上にワークが載置される際に、それまでに貯蔵されている一時貯蔵中ワークがコンベアのワーク一時貯蔵領域位置に対応する搬送面上に位置しているようにしている。よって、単一のコンベアの搬送面上に、1つずつ載置されるワークを順次貯えて一時的に貯蔵するに際し、前回までに載置された一時貯蔵中ワークと今回新たに載置するワークとの干渉をなくして載置作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0012】
また、請求項1の単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法は、搬送面上に載置された新たなワークと、それまでに貯蔵されている一時貯蔵中ワークとをその距離を詰めて隙間無しで整列させてなる1つのワーク群を形成し、しかる後、この1つのワーク群をコンベアのワーク一時貯蔵領域位置に対応する搬送面上に位置させて貯えるようにしている。よって、単一のコンベアの搬送面上に、1つずつ載置されるワークを順次貯えて一時的に貯蔵するに際し、搬送面スペースを有効に利用して最大限にワークを貯蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法の実施に用いられる装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】本発明のワーク一時貯蔵方法を説明するための図であって、その(a)は第1工程の説明図、その(b)は第2工程の説明図、その(c)は第3工程の説明図である。
【図4】ワーク把持装置により、乾式粉末成形装置で成形された成形品(ワーク)をコンベアの搬送面上に載置して一時的に貯蔵する様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態による単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法の実施に用いられる装置の概略構成を示す平面図、図2は図1の側面図である。
【0015】
図1及び図2において、1はワーク一時貯蔵用コンベア(以下、単にコンベアともいう)であり、乾式粉末成形装置で成形された成形品(ワーク)を一時的に貯蔵するためのものである。コンベア1は、フレーム3,3の一端(始端)に取り付けた駆動プーリ4と、フレーム3,3の他端(終端)に取り付けたテールプーリ5とによってベルト2を巻装し、ベルト2を無端回転させるものである。駆動プーリ4には、コンベア1の駆動、停止を行うモータ6が連結されている。コンベア1は正逆駆動可能となっている。このコンベア1の図における左側の始端位置には、ベルト2の搬送面上を横切るように当接板7が配置されている。また、コンベア1の図における右側の終端位置には、板状のストッパ8が配置されている。
【0016】
そして、コンベア1に対して、当接板7を起点としてベルト搬送面の走行方向に沿って順にワーク受取り領域位置A1とワーク一時貯蔵領域位置A2とが設定されている。後述するように、図示しないワーク把持装置により、図1に示すように、ワーク受取り領域位置A1に対応するベルト搬送面上の中央部に、矩形のワークが搬送面の走行方向と直交する方向に延びる姿勢で水平に載置されるようになっている。このワーク受取り領域位置A1の中央に、コンベア1を挟むようにようにして第1のワーク検出センサ9が配置されている。第1のワーク検出センサ9は、ワーク受取り領域位置A1に対応するベルト搬送面上にワークが載置されたことを検出するためのものである。第1のワーク検出センサ9は、発光器9aと、この発光器9aからの光がワークによって遮られることを検出する受光器9bとからなる透過型光電スイッチで構成されている。
【0017】
また、後述するように、前記ワーク一時貯蔵領域位置A2に対応するベルト搬送面上には、図1に示すように、ワークが貯えられて一時貯蔵されるようになっている。このワーク一時貯蔵領域位置A2の始端(ワーク一時貯蔵領域位置A2における当接板7側端)には、コンベア1を挟むようにようにして第2のワーク検出センサ10が配置されている。この第2のワーク検出センサ10は、発光器10aと受光器10bとからなる透過型光電スイッチで構成されている。さらに、このワーク一時貯蔵領域位置A2の終端(ワーク一時貯蔵領域位置A2における反当接板7側端)には、コンベア1を挟むようにようにして、発光器11aと受光器11bとからなる透過型光電スイッチで構成される第3のワーク検出センサ11が配置されている。
【0018】
また、シーケンサからなる図示しない制御装置が備えられており、この制御装置は、ワーク検出センサ9,10,11からの検出信号に基づいてモータ6の駆動回路に信号を送って、コンベア1の駆動、停止を制御するようになっている。
【0019】
次に、本実施形態のワーク一時貯蔵方法について、図3を参照しながら説明する。図3は本発明のワーク一時貯蔵方法を説明するための図であって、その(a)は第1工程の説明図、その(b)は第2工程の説明図、その(c)は第3工程の説明図である。
【0020】
まず、図3(a)を参照しながら第1工程について説明する。なおここでは、最初(1つ目)のワークに対するワーク一時貯蔵処理動作が完了し、停止中のコンベア1のワーク一時貯蔵領域位置A2に対応するベルト搬送面上に、前記最初のワークである1個の一時貯蔵中ワークWo(o:old)が貯えられているものとする。さて、図示しないワーク把持装置により、ワーク受取り領域位置A1に対応するベルト搬送面上に1個の新たなワークWn(n:new)が載置されると、このことが第1のワーク検出センサ9によって検出される。
【0021】
次に、図3(b)を参照しながら第2工程について説明する。第1工程で新たなワークWnが載置されたことが検出されると、コンベア1を逆転駆動してそのベルト搬送面を当接板7の側の方向へ走行させる。そして、新たなワークWnと、ワーク一時貯蔵領域位置A2に対応する搬送面上に貯えられていた前記一時貯蔵中ワークWoとは、当接板7によって移動を阻止されてその距離が詰められ、隙間無しで整列させられて1つのワーク群として纏められる。この場合、ベルト2の走行速度は、当接板7とワークWnとの接触や、ワークWn,Wo同士の接触による衝撃を抑制できる低速度に設定されている。そして、ワークWn,Woが隙間無しで整列した1つのワーク群として纏められると、コンベア1の駆動が一時停止される。この実施形態では、コンベア1の前記逆転駆動からこの一時停止までの時間は、予めタイマで設定されるようになっている。
【0022】
次に、図3(c)を参照しながら第3工程について説明する。次に、コンベア1を正転駆動してそのベルト搬送面を当接板7の側と反対方向へ走行させる。そして、隙間無しで整列したワークWn,Woからなる一纏まりのワーク群のうちの走行方向に関して最後尾のワークであるワークWnが、ワーク一時貯蔵領域位置A2に対応する搬送面上に到達すると、このことが第2のワーク検出センサ10によって検出される。この実施形態では、第2のワーク検出センサ10において受光器10bが発光器10aからの光が一旦遮られた後に再度入射することで、最後尾のワークWnがワーク一時貯蔵領域位置A2に対応する搬送面上に到達したと判断するようにしている。この最後尾のワークWnの到達を検出すると、コンベア1の駆動が停止される。なお、この場合、コンベア1の前記正転駆動開始からその停止までを、予めタイマで時間設定して行うようにしてもよい。ここで、前述した最後尾のワークWnの判断に際し、第2のワーク検出センサ10において受光器10bが発光器10aからの光が一旦遮られた後に再度入射すると、タイマによる計時を開始し、予め定められた設定時間の経過後に、コンベア1の駆動を停止するようにしてもよい。これにより、何らかの理由でワーク間に隙間が生じた場合に、最後尾のワークWnがワーク一時貯蔵領域位置A2に対応する搬送面上に到達する前にコンベア1の駆動が停止されることを回避することができる。
【0023】
このような第1工程から第3工程までからなるワーク一時貯蔵処理動作が繰り返される。そして、隙間無しで整列した一纏まりのワーク群のうちの走行方向に関して最前列のワークが、ワーク一時貯蔵領域位置A2の前記終端位置に到達すると、このことが第3のワーク検出センサ11によって検出されて、コンベア1の駆動が停止される。同時に、ワーク一時貯蔵領域位置A2に対応する搬送面上のワークが満載状態である旨がディスプレイ表示され、あるいは音声報知されるようになっている。なお、ストッパ8は、第3のワーク検出センサ11などの故障による満載状態のワークのコンベア1からの万が一の落下を防止するためのものである。このようにしてコンベア1に一時的に貯えられたワークは、例えば人手により、次の機械加工工程に送られることとなる。
【0024】
このように、本実施形態のワーク一時貯蔵方法は、コンベア1のワーク受取り領域位置A1に対応する搬送面上にワークWnが載置される際に、それまでに貯蔵されている一時貯蔵中ワークWoがコンベア1のワーク一時貯蔵領域位置A2に対応する搬送面上に位置しているようにしている。よって、単一のコンベア1の搬送面上に、1つずつ載置されるワークWnを順次貯えて一時的に貯蔵するに際し、前回までに載置された一時貯蔵中ワークWoと今回新たに載置するワークWnとの干渉をなくして載置作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0025】
また、搬送面上に載置された新たなワークWnと、それまでに貯蔵されている一時貯蔵中ワークWoとをその距離を詰めて隙間無しで整列させてなる1つのワーク群を形成し、しかる後、この1つのワーク群をコンベア1のワーク一時貯蔵領域位置A2に対応する搬送面上に位置させて貯えるようにしている。よって、単一のコンベア1の搬送面上に、1つずつ載置されるワークを順次貯えて一時的に貯蔵するに際し、従来方法とは違って、搬送面スペースを有効に利用して最大限にワークを貯蔵することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…ワーク一時貯蔵用コンベア
2…ベルト
3…フレーム
4…駆動プーリ
5…テールプーリ
6…モータ
7…当接板
8…ストッパ
9…第1のワーク検出センサ
10…第2のワーク検出センサ
11…第3のワーク検出センサ
A1…ワーク受取り領域位置
A2…ワーク一時貯蔵領域位置
Wo,Wn…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状のベルト搬送面を有する単一のコンベアの一端に当接板が配置され、前記コンベアに対して前記当接板を起点として前記ベルト搬送面の走行方向に沿って順にワーク受取り領域位置とワーク一時貯蔵領域位置とが設定され、当該コンベアの他端側に前記ワーク一時貯蔵領域位置の終端が設定されており、前記コンベアの前記ワーク一時貯蔵領域位置に対応するベルト搬送面上に直接載置された状態で、かつ隣り合うワーク間を詰めて隙間無しで整列させてなる1つのワーク群を一時的に貯蔵するようにした単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法であって、
第1のワーク検出センサにより、停止中の前記コンベアの前記ワーク受取り領域位置に対応するベルト搬送面上に新たなワークが直接載置されたことを検出する第1工程と、
前記第1工程に続き、前記新たなワークを検出すると、前記コンベアを駆動しそのベルト搬送面を前記当接板の側の方向へ走行させ、前記新たなワークと、前記ワーク一時貯蔵領域位置に対応するベルト搬送面上に貯えられている一時貯蔵中ワークとを、ともに移動させ、前記当接板によって該移動を阻止することでその距離を詰めて隙間無しで整列させてなる1つのワーク群を形成する第2工程と、
前記第2工程に続き、前記コンベアのベルト搬送面を前記当接板の側と反対方向へ走行させて、前記ワーク一時貯蔵領域位置の始端に対応させて配置した第2のワーク検出センサにより、前記1つのワーク群のうちの走行方向に関して最後尾のワークが前記ワーク一時貯蔵領域位置の始端に対応するベルト搬送面上の位置に到達したことを検出すると、前記コンベアの駆動を停止して、当該1つのワーク群を前記ワーク一時貯蔵領域位置に対応するベルト搬送面上に位置させる第3工程と、を含むことを特徴とする単一コンベアによるワーク一時貯蔵方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−102173(P2009−102173A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32330(P2009−32330)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【分割の表示】特願2003−415379(P2003−415379)の分割
【原出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】