説明

単分子配列のためのシステム、方法および装置

実施形態は、概して、検体の分析のためのシステムに関する。該システムは、透明基質を含むことができる。該システムはまた、蛍光標識した分子のエバネッセント波励起を、該透明基質、および該蛍光標識した分子を検出するための検出器への接近点近傍で、誘起するように構成される励起光源を含む。上記システムはまた、標識部分と、色素標識したヌクレオチドと、酵素であって、該酵素の1つの末端は、該標識部分に付着しており、該酵素の第2の末端は、該色素標識したヌクレオチドに付着している、酵素とをさらに備え得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2006年5月16日に出願された、名称「Systems,Methods,And Apparatus For Single Molecule Sequencing」の米国仮特許出願第60/800,440号に対する優先権を主張し、該仮特許出願は本明細書において、その全ての目的のために、参考により援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、単分子配列決定に関し、より具体的には、ゼロモード導波路を使用せずに単分子を検出することに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
単分子事象の検出のためのアッセイシステムにおけるバックグラウンドを減少させることは、概して、有意である。バックグラウンドは、検出量内の高濃度の標識したヌクレオチドに由来し得る。参照することでその全体が本願によって援用される、特許文献1(‘781出願)は、複数の塩基を有する標的核酸を配列する方法を記載する。‘781出願は、流体への光の伝播を防止し、その結果として励起された量を制限するために、選択された波長よりほぼ10倍小さい導波路である、ゼロモード導波路の仕様について記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0044781号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態は、概して、検体の分析のためのシステムに関する。システムは、透明基質を含むことができる。システムはまた、無機吸収体によって蛍光標識した分子にエネルギを与えるように構成される励起光源と、蛍光標識した分子を検出するように構成される検出器とを含むことができる。
【0006】
別の実施形態は、概して、検体の分析のためのシステムに関する。システムは、金属層で被覆される透明基質と、金属層に堆積した除去コーティングとを含むことができる。システムは、除去コーティングの空孔内へ拡散するように構成される蛍光標識した分子と、除去コーティングの基質側に、プラズモン結合発光励起を産生するように構成される励起光源をさらに含むことができる。
【0007】
さらに別の実施形態は、概して、ルミネセンス検出システムに関する。システムは、共鳴性光キャビティを含み、発光団の放射は、共鳴性光キャビティの境界で確立されるエバネッセント励起によって誘発される。
【0008】
実施形態の種々の特徴は、付随の図面と関連して考慮される際に、続く発明を実施するための最良の形態を参照の上、より良く理解されるようになるのと同じように、より完全に説明されることができる。
【0009】
当業者には、本願に描写する図面は一般化した略図を表し、他の構成要素を追加してもよく、あるいは既存の構成要素を除去または修正してもよいことは、容易に明らかとなるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】図1Aは、実施形態により、励起装置の側面図を図示する。
【図1B】図1Bは、励起帯のより詳細な図を図示する。
【図2】図2は、図1に示す励起装置の部分の上面図を図示する。
【図3A】図3Aは、実施形態により、別の励起装置の側面図を図示する。
【図3B】図3Bは、図3Aに示す励起装置内の、励起帯のより詳細な図を図示する。
【図4】図4は、さらに別の実施形態による、図3Aに示す励起装置の上面図を図示する。
【図5A】図5Aは、さらに別の実施形態による、量子励起装置を図示する。
【図5B】図5Bは、図5Aに示す励起装置内の、励起帯のより詳細な図を図示する。
【図6A】図6Aは、量子ドット周辺のエネルギ移動帯を描写する。
【図6B】図6Bは、多重量子ドットの例示的実施形態を図示する。
【図7A】図7は、放射および励起の統計データによる、ローダミン6Gおよび量子の色素の比較を描写する。
【図7B】図7は、放射および励起の統計データによる、ローダミン6Gおよび量子の色素の比較を描写する。
【図8】図8は、いくつかの市販の量子ドットに対する放射の統計データを描写する。
【図9】図9は、量子ドットへの表面付着のための、三官能性試薬のための過程を描写する。
【図10】図10は、量子ドット含有単一ポリメラーゼ、単一ビオチンの合成過程を描写する。
【図11A】図11Aは、さらに別の実施形態による、クレッチマン配置を描写する。
【図11B】図11Bは、さらに別の実施形態による、別のSPCEシステムを図示する。
【図11C】図11Cは、さらに別の実施形態による、さらに別のSPCEシステムを図示する。
【図11D】図11Dは、さらに別の実施形態による、逆クレッチマンシステムを図示する。
【図11E】図11Eは、例示的反射および反射屈折レンズを図示する。
【図11F】図11Fは、さらに別実施形態による、さらに別の例示的SPCEシステムを図示する。
【図12】図12は、従来の共鳴性レーザーキャビティを描写する。
【図13】図13は、本発明の実施形態による、システムを図示する。
【図14】図14は、本発明の実施形態による、システムを図示する。
【図15】図15は、共振器キャビティ励起装置の種々の実施形態を図示する。
【図16】図16は、共振器キャビティ励起装置の種々の実施形態における、光線の角度を図示する。
【図17】図17は、さらに別の実施形態による、システムを図示する。
【図18】図18は、さらに別の実施形態による、システムを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
平易さおよび説明の目的のため、本発明の原則は、主にその例示的実施形態に言及することによって説明される。しかしながら、当業者は、同一の原則は、全ての型のアッセイシステムにおいて平等に適用可能であり、実装されることができ、一部かかる変形は、本発明の真の精神および範囲から逸脱しないことは、容易に理解するであろう。さらに、続く本発明を実施するための最良の形態では、特定の実施形態を図示する付随の図面を参照する。電気的、機械的、論理的、および構造的変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、実施形態に対して行われてもよい。続く本発明を実施するための最良の形態は、それゆえ、限定的意味に取られることはなく、本発明の範囲は、添付の請求項およびその同等物によって定義される。
【0012】
本発明の広い範囲を説明する数値的範囲およびパラメータが、近似であるものの、特定の例を説明する数値的値は、できる限り正確に報告されている。しかしながら、一部数値的値も、本質的に、それぞれの検査測定で発見された標準偏差の結果必ず起こる、ある一定の誤差を包含する。さらに、本願で開示される全範囲は、その中に包含される、一部および全ての部分的範囲を網羅することは理解されるものとする。例えば、「10未満」という範囲は、最小値のゼロと、最大値の10との間の一部および全ての部分的範囲、すなわち、ゼロと等しいか、またはゼロより大きい最小値、および10と等しいか、または10未満の最大値を有する、例えば、1から5等、一部および全ての部分的範囲を含むことができる。
【0013】
一実施形態は、概して、単分子事象を検出するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、内部反射を使用して、光が流体に入るのを防止する励起装置である。励起装置は、基質およびコーティングを含むことができる。基質は、融合シリカ、ガラス、および/または結晶材料等、透明材料であることができる。コーティングは、基質に適用されることができる。コーティングは、透明、半不透明、または不透明であることができ、基質よりより低い屈折率を有するはずである。微視的空孔は、コーティング内で実装されることができる。検体の流体は、励起装置上に置かれることができる。例えば、選択された周波数のレーザといった、励起光源は基質内へ向けられ、内部全反射(TIR)によって、微視的空孔内のコーティングおよび流体に反射する。この反射は、コーティング内へ延在するエバネッセント波、およびそのそれぞれの空孔を生成する。このエバネッセント波の強度は、基質表面から迅速に減衰する。いくつかの例では、望ましい場所、通常微視的空孔内以外では、分子が励起光から除外されるため、コーティングは、除去コーティングと呼ぶことができる。
【0014】
したがって、このエバネッセント波励起は、励起装置の基質の近くにある検体流体を照射のみすることができる。エバネッセント波強度は、基質表面から迅速に減衰するため、コーティングは、検体流体、すなわち、色素分子が、検体流体が基質の近くにある空孔の底にある以外、励起に達するのを妨害する障害を形成することができる。さらに、コーティングが透明である場合、光は、基質表面の上、下、または両側から収集されてもよい。検出領域における基質表面は、優先的に平面であるが、画像処理に有利な場合は、非平面であり得る。非平面の基質表面の例は、多層で実装される基質であることができ、層は、屈折のそれぞれおよび適切な指標を有する、異なる材料であることができる。
【0015】
他の実施形態は、概して、エネルギ移動帯を生成し、「有用な」励起帯を、励起光変換器の近くにある、より小さな帯に置く方法を包含し、励起光変換器は基質に化学的に付着する。より具体的には、実施形態は、光を吸収し、着目標識部分へ移す励起光変換器として、少なくとも1つの量子ドットを含んでもよい。エネルギの転移は、波長シフトに関与することができる。標識部分は、その後、通常は、より長い波長で放射するであろう。他の実施形態では、異なる大きさの量子ドットは、異なる波長に対して使用することができる。
【0016】
2光子励起に関与する他の実施形態では、光は、励起波長より短い波長で放射することができる。これは、通常パルスレーザ励起によって行われ、2光子が短時間で、蛍光標識を励起することができることを確実にする。放射光が、励起より短い波長であるため、バックグラウンドが通常、励起より長い波長である際、選別によってバックグラウンドを拒絶するのはより簡単である。色素分子によって放射される光子の蛍光の波長は、通常は、蛍光放射を誘発した励起光子の波長より、長い波長である。
【0017】
2光子励起は、標準フルオロフォアを利用してもよいか、または上方変換する蛍光体を利用してもよいかのいずれかである。上方変換する蛍光体は、希土類酸化物を含む、混合金属酸化物ナノ粉末から成る。Y:Yb,Er,YS:Yb,Er,YS:Yb,HO,およびYS:Yb,Tm,ランタニド化合物は、文献からの例である。量子ドットまたは標準フルオロフォアとは違い、放射光は、励起光の波長より短い波長であり、それゆえ、2光子フルオロフォア励起に対して前に記載した利点を有する一方、量子ドットの狭い放射帯および光安定性を保持する。上方変換する蛍光体は、20nmと同じくらい小さな粉末を含む、種々の大きさで作られることができる。そのようなものとして、上方変換する蛍光体は、量子ドットの様式と類似の様式で使用することができ、それゆえ、用語量子ドットがこれ以後使用されるいずれの場所でも、量子ドットと記載される以外は、上方変換する蛍光体をも指す場合がある。
【0018】
2光子励起に対するエネルギ転移は、誘起される双極子間相互作用を介して、非放射で生じることができる。代替的に、エネルギ転移は、放射結合によって生じることができる。しかしながら、放射結合は双極子間相互作用に対し、1/R対1/R下がるので、放射結合は、より大きな励起帯という結果を生じ得る。さらに、放射結合は、拒絶または選別される必要がある光を放射することができる。放射波長におけるこのシフトにより、検出の間、フィルタが両励起源を遮断することを可能にする。フィルタの遮断は、一部の過程の間に除去され、標的位置の決定を可能とすることができる。
【0019】
量子ドットが、ドットの大きさに依存する波長を産生するので、量子ドットは、望ましい第2の励起を提供するように作られることができる。さらに、量子ドットは、FRET色素より狭いスペクトル放射、より短いスペクトル尾、およびより幅広い吸収帯を有することができる。
【0020】
図1Aは、実施形態による、励起装置100の側面図を図示する。図1に示すように、励起装置100は、基質105および除去コーティング110を含むことができる。いくつかの実施形態では、基質105および除去コーティング110は、バックグラウンド雑音を最小にする低い蛍光特性を有する材料で、実装されることができる。他の実施形態では、基質105は、融合シリカ(n=1.47)、結晶石英(n=1.543)、あるいは他の型の低い蛍光ガラス、プラスチック、またはその組み合わせにさらに特定化することができる。
【0021】
さらに別の実施形態では、基質105は、Ta(n=2.1)またはTiO(n=2.5−2.9)等、高い屈折率の材料で実装されることができる。基質105における高屈折率の材料の使用は、励起光伝播に対して光導波層を促進することができる。光は、図3ABに関して後に記載するような、プリズムまたは格子を使用して、光導波層内へ共役することができる。除去コーティング105は、この光導波層に堆積されることができる。さらに、コーティングおよび流体の率が、基質未満でなくてはならない際、高屈折率基質は、より多くの除去コーティング110の選択肢を可能とすることができる。種々の他の実施形態では、材料に対する屈折率における急速な変化が、エバネッセント波侵入深さ140を減少するので、エバネッセント波は、必要な除去コーティング厚を減少させるために、より速く落ちることができる。
【0022】
除去コーティング110の実装は、基質105または光導波層330の率に依存し得る。より詳細には、高屈折率基質に対しては、多くのより低率材料が、選択されてもよい。例えば、PMMA(n=1.491)、ポリカーボネート(n=1.586)、環状ポリオレフィン(n=1.525)、および他の類似材料は、除去コーティングとして選択されることができる。いくつかの実施形態では、基質105より低い率を有する、MgF等の光学的除去コーティングまたはSiO等のガラスもまた、使用されることができる。さらに別の実施形態では、除去コーティング110は、融合シリカ(n=1.47)、テフロン(登録商標)FEP(n=1.341〜1.347)、テフロン(登録商標)AF(n=1.32)、MgF(n=1.38)を使用して、実装されることができる。
【0023】
除去コーティング110は、透明または不透明であることができる。除去コーティング110はまた、部分的に吸収、反射、または選択的に反射性があることができる。不透明な除去コーティング、および他の型の除去コーティングでの実施形態に対しては、空孔外側の試料からの望ましくない光は、減弱される。除去コーティング110または基質105が適切に形成されず、検体流体内の遠方にまで励起光135が漏れすぎ、試料120に到達する結果となる場合、望ましくない光が生じ得る。透明な除去コーティングでの実施形態に対しては、放射は、検体流体試料120と調和する側、基質側、または同時に両側から収集されることができる。これはまた、多層構造でも可能である。
【0024】
空孔(または溝、通路、ウェル等)115は、除去コーティング110内に形成され、検体流体試料120が、基質105との調和を可能とすることができる。いくつかの実施形態では、検体流体試料120は、3リン酸塩、すなわちdNTP上に、非蛍光消光剤125を有する色素標識したヌクレオチドを含有することができる。非蛍光消光剤125を3リン酸塩上に置くことで、遊離ヌクレオチドを消光する。DNA鎖に組み入れる際、消光剤は切断され、蛍光色素が、全ての他の遊離ヌクレオチドが薄暗い場所を照らし出す。除去コーティング110は、空孔115または空孔115のパターンによって画定される望ましい場所を除き、分子を励起光から除外するように構成されることができる。それゆえ、励起光は、空孔115の底で、蛍光分子を効率的に励起のみすることができる。
【0025】
ある一部の実施形態に対しては、空孔115の量は、拡散事象からバックグラウンド雑音を制御するのに十分小さくすることができる。例えば、標準濃度の蛍光標識したヌクレオチドは、直径30〜150nmの間の大きさ、またはそれより大きい空孔115で達成することができる。標識したdNTPがより低濃度の場合、より大きな空孔の使用を可能とすることができる。
【0026】
空孔115は、図1Aの側面図に描写されているが、当業者には、空孔115の形は、円形、四角形、楕円形、または任意の他の3次元形状であってもよいことは、容易に明らかとなるはずである。いくつかの他の実施形態では、空孔115は、先細りまたは曲線の側部等、非垂直側部を有してもよい。多層構造を使用する除去層実装に対しては、空孔115は、大きな空孔を生成し、別の除去層を再適用し、それゆえ小さな空孔を生成することによって構成されることができる。空孔115を生成する他の方法は、当業者には既知である。
【0027】
励起装置100は、検体流体試料120と接触することができる。検体流体試料120は、色素、ヌクレオチド、および他の材料(例えば、3リン酸塩125上の色素標識したヌクレオチドの非蛍光消光剤)を包含することができる。励起の間、内部反射TIRが、基質105/コーティング110または基質105/流体120の界面で生じるように、光源130は、基質105内へ向けられる励起光135を提供することができる。光135を内部へ反射する際、細いエバネッセント波140は、低率層、すなわち、除去コーティング110内に生成される。
【0028】
図1Bは、別の実施形態による、励起帯145内にある1つの空孔の断面を描写している。図1Bに示すように、励起波140は、励起光135のTIRから生成される。エバネッセント波140の輝度は、ゼロに向かい表面から離れて、指数関数的に落ちるため、区域145は、空孔115の底の基質105近傍にある、有意なエネルギの帯を表す。TIRはまた、基質の非試料側に光を反射させるために使用され、励起光135を再使用することができる。エバネッセント波140により、検体流体試料120内の分子が、例えば、分子150の蛍光を発するようにすることができる。小さな励起帯145は、エバネッセント波140によって効率的に励起され、および試料120と流体接触する両方である領域である。
【0029】
図2は、図1Aに示す励起装置100の一部の上面図(すなわち、流体側面図)を図示する。図2に示すように、除去コーティング110は、空孔115を除き、基質(図示せず)を被覆することができる。空孔115の底内へ遊走する蛍光分子は、励起帯145(図1B参照)に入り、蛍光115Aを放射することができる。
【0030】
図3Aは、実施形態による、励起装置300の側面図を図示する。図3Aに示すように、励起装置300は、励起装置100に類似している。励起装置300は、基質305、および空孔315を有する除去コーティング310を含むことができる。励起装置300は、3リン酸塩325上に非蛍光消光剤で蛍光標識したヌクレオチドを含むことができる、検体流体試料320と接触してもよい。基質305、除去コーティング310、空孔315、および検体流体試料320は、励起装置100のそれぞれの成分に類似または同一の性質/特性を有する。
【0031】
励起装置300は、光導波層330を含むことができる。光導波層330は、前に記載した通り、高屈折率の材料を使用して実装されることができる。光源335からの光340は、米国特許第5,882,472号に記載の通り、プリズムまたは格子を介して、光導波層330内へ共役されることができ、同号は、その全体を参照することで、本願に援用される。
【0032】
励起の間、内部全反射TIRが、光導波層330/除去コーティング310、および光導波層330/流体320の界面で生じるように、光源335は、光導波層330内へ向けられる光340を提供することができる。光を内部へ反射する際、細いエバネッセント波345は、低屈折率層内、すなわち、除去コーティング310および流体内で生成される。エバネッセント波により、光導波層330近傍にある検体流体試料320内の分子が、例えば、分子355の蛍光を発する。
【0033】
図3Bは、別の実施形態による、エバネッセント波345内にある1つの空孔の断面を描写する。図3Bに示すように、エバネッセント波345は、光導波層330内で励起光340のTIRから生成される。エバネッセント波345の強度は、境界から離れるように移動して、ゼロに向かい指数関数的に落ちるので、区域350は、空孔315の底にある光導波層330近傍の、有意なエネルギの帯を表す。TIRはまた、光を光導波層330の非試料側に反射するために使用され、励起光340を再使用することができる。エバネッセント波345により、光導波層330近傍にある検体流体試料320内の分子が、例えば、分子355の蛍光を発することができる。小さな励起帯350は、エバネッセント波345によって励起され、および試料320と流体接触する両方である領域である。
【0034】
図4は、さらに別の実施形態による、図3Aに示す励起装置300の上面図を図示する。図4に示すように、除去コーティング310は、空孔315を除き、光導波層330(図示せず)を被覆することができる。空孔315の底へ遊走する蛍光分子は、励起帯350(図3B参照)に入り、蛍光315Aを放射することができる。
【0035】
図5Aは、さらに別の実施形態による、量子励起装置500を図示する。図5Aに示すように、量子励起装置500は、励起装置100に類似している。量子励起装置500は、基質505、および空孔515を有する除去コーティング510を含むことができる。基質505および除去コーティング510は、図1A〜4に関して前に記載した通りの材料で、実装されることができる。さらに、除去コーティング510の屈折率は、基質505未満である。
【0036】
量子励起装置500は、3リン酸塩525上に非蛍光消光剤で蛍光標識したヌクレオチドを含むことができる、検体流体試料520と接触することができる。基質505、除去コーティング510、空孔515、および検体流体試料520は、励起装置100のそれぞれの成分に類似および/または同一の性質/特性を有する。量子励起装置500はまた、光源530を含むことができる。光源530からの光535は、基質505に共役されることができる。励起装置300(図3AB参照)と同様に、励起装置500は、他の実施形態の光導波層330に類似する光導波層で実装されることができる。
【0037】
量子励起装置500は、少なくとも1つの量子ドット540を含むことができる。量子ドットは、伝導帯電子、価電子帯空孔、または励起子(伝導帯電子と価電子帯空孔との組を結合)の動きを、全ての3空間方向に限局する半導体ナノ構造であることができる。量子ドットは、ケイ素およびゲルマニウムと、おそらく他の材料と、CdSeと、から成る構造を含むことができる。量子ドットはまた、例えば、コア内のCdSe、およびシェル内のZnSを有するコアシェル構造として、製作されることができる。他の型の材料は、量子ドットを生成するために使用されることが可能であり、請求する発明の精神および範囲に含まれ得ることは、容易に明らかとなるはずである。
【0038】
他の実施形態は、異なる大きさおよび/または型の多重量子ドットを使用することができる。励起相の間、量子ドット540は、エネルギ移動帯を生成することができる。より詳細には、TIRが、基質505/除去コーティング510、および基質505/流体520の界面で生じるように、光源530は、基質505内へ向けられる光535を提供することができる。光535を内部へ反射する際、細いエバネッセント波545は、より低い屈折率層、すなわち、除去コーティング510内で生成される。エバネッセント波545は、エバネッセント波545の急速な減衰のため、小さな励起帯550(図5B参照)を生成することができる。量子ドット540は、励起エネルギを望ましい波長へ変換する小さな励起帯550で、エネルギを吸収することができる。変換過程は、図6Aに描写されている量子ドット540の周りに、エネルギ移動帯を生成することができる。
【0039】
図6Aに示すように、移動帯605内のエネルギは、標識部分、すなわち、励起された色素標識したヌクレオチド610へ移動されることができる。色素標識したヌクレオチド610は、酵素615によって、量子ドット540に付着していることができる。いくつかの実施形態では、異なる型および/または大きさの多重量子ドットは、図6Bに図示されるいくつかの励起波長を有するために使用されることができる。
【0040】
図6Bに示すように、量子ドット1(「Q1」と標識)650は、周囲のエネルギ移動帯655を生成してもよい。量子ドット2(「Q2」と標識)660はまた、周囲のエネルギ移動帯665を生成してもよい。エネルギ帯655、665は、励起エネルギの存在によって生成されてもよい。量子ドット650および660は異なる大きさから成り、異なる型から成っていてもよいため、両方は、いくつかの波長を産生するために使用されることができる。図6Aに示す実施形態のように、色素標識したヌクレオチド610は、少なくとも1つの酵素615によって、量子ドット650、660に付着していることができる。
【0041】
図5Aを参照すると、量子励起装置はまた、量子ドットからの放射の型を同定するように構成される、検出器550を含む。検出された放射は、それから、放射に対応する分子が同定され、その同定が保存される際、コンピュータ(図示せず)へ向けられる。
【0042】
図7は、CdSe量子ドットとローダミン6G色素との間の、(a)励起および(b)放射の統計データの比較700を描写する。量子ドット放射スペクトル((b)内)はほぼ対照的であり、ピーク幅はより狭い。しかしながら、励起曲線は、広く継続的である。それゆえ、量子ドットは、530nmより短い波長によって効率的に励起させることができる。一方、有機色素ローダミン6Gは、励起波長選択を制限する励起のピークを有する。
【0043】
図8は、いくつかの市販の量子ドットに対する放射曲線800を描写する。図8に示すように、市販の試料から伝播する波長は、合理的とみなすことができる。したがって、慎重な選択および/または製作により、さらにより緊密な分布を可能とすることができることと予測される。
【0044】
図6Aに戻ると、量子ドット540は、色素標識したヌクレオチド610および酵素615に付着して、描写されている。理想的には、単一酵素615は単一量子ドット540に付着し、付着した組は、それから基質505に付着する。量子励起装置500では、各励起帯に単一部分を有することが、さらに望ましい。標準のポアソン分布が生成される場合、ウェルにある各部分、および付着した組のうちのたった一つを得る可能性は低い。良くても、0.37(14パーセント)までであろうが、通常は、10パーセント代の可能性がより高い。この有用な低濃度は、システムの効果的な処理量を減少させ得る。
【0045】
従来の戦略の1つは、正しい組の数を充実させることである。例えば、解決法の1つは、大部分の分子が1組の一部ではないように、薄い溶液を使用して、付着化学反応を行うことである。低濃度のため、それぞれのうちの1つより多くを有する成分はほとんどない。次いで、この溶液は、当業者には既知である、選別(蛍光活性化細胞選別装置を使用する等)、またはストレプトアビジン−ビオチン等の化学的フックを使用する引き抜きによって、濃縮されることができる。
【0046】
量子励起装置の実施形態は、3つの付着部位を有するリンカー分子を使用することができる。図9は、量子ドット540への表面付着のための、三官能性試薬に対する過程900を描写する。図10は、単一ポリメラーゼ、単一ビオチンを含有する量子ドット540の合成の過程1000を描写する。
【0047】
図9〜10の過程を通して、少なくとも1つのシスチンを含有する酵素は、反応を完了へと駆動することで、各マレイミド含有量子ドットに付着することができる。それゆえ、単一フックビオチンを付着する各量子ドットは、単一酵素を有するであろう。これは、基質505に付着することができる。他の実施形態では、ウェルは、2005年6月10日に出願した「Mothod and System for Multiplex Genetic Analysis」の米国仮出願第60/689,692号に記載される通り、多重ストレプトアビジンを含むことができ、同号は、その全体を参照することで本願に援用される。
【0048】
したがって、量子励起装置の実施形態は、従来のシステムに関していくつかの利点を提供することができる。例えば、励起装置内の量子ドットは、単一システムにおける、減弱の複数の方法を提供することができる。別の利点は、励起のエバネッセント層は、TIRを使用して、略100nmの厚さであることである。これにより、Z軸で励起光を制限することで、励起帯を減少する。さらに、励起源は、着目部分を弱く励起する波長であることができる。例えば、405nmの波長は、図7に示すローダミン6G色素を弱く励起するであろうが、量子ドットは、これらのより短い波長で良く励起される。この幅広い吸収範囲はまた、異なる励起源の使用を可能とする。例えば、405nmレーザ(高解像度DVDプレーヤに使用)は、従来の蛍光励起に使用される488nmレーザよりさらに安価である。
【0049】
実施形態のさらに別の利点は、量子ドットまたは他の寿命の長い供与体が、第2の励起帯を生成することである。これにより、全ての方向における源の数が制限される。組み込まれた、または結合されたヌクレオチドは、量子ドットの非常に近傍にある場合、高水準の効率的に吸収された光に見える。効率的なエネルギ転移距離は約5nmであるため、これにより小規模の励起帯が生成される。
【0050】
さらに別の利点は、エネルギ移動帯(図6Aの605参照)内へ拡散する遊離ヌクレオチドが、通常、極度に小さな励起量のおかげで、非常に迅速に出ることである。遊離ヌクレオチドがエネルギ移動帯に出入りする時間は、酵素がヌクレオチドを組み込む時間よりさらに短い。これにより、単一光子包含とは対照的に、蓄積された信号(例えば、CCD検出を介して)に基づき、部分決定が改良される。
【0051】
2光子励起を使用する別の実施形態は、バックグラウンド雑音を減少するために使用されることができる。2光子励起では、光の放射は、励起光より短い波長で行われる。2光子放射は、高励起水準が存在する場合にのみ産生される。任意のバックグラウンド蛍光は、励起源より長い波長で行われ、ショートパスフィルタまたはバンドパスフィルタ等のフィルタを使用して、簡単に除去される。
【0052】
別の実施形態は、TIRの代替物を使用することができる。これらの実施形態は、表面プラズモン結合の方向放射(「SPCE」)を使用する。SPCEは、金属表面で表面プラズモン波によって励起された、色素分子の角度放射曲線を含むことができ、それは第WO2005/003743号に記載されている。第WO2005/003743号の全体は、参照することにより本願に援用される。SPCE技術は、図11A〜Dに描写する、ゼプトリットル励起量で改良された励起および収集を提供することを、前に記載した励起装置の実施形態と組み合わせることができる。
【0053】
図11Aは、クレッチマン配置システム1100Aの例示的実施形態を図示する。この配置では、蛍光分子からのエネルギは、金属表面の他方側の光として放射される。バックグラウンドは抑制されることができ、励起および放射効率の両方を、著しく改良することができる。蛍光分子が金属表面に近すぎる(<20nm)場合、それからエネルギは消光される。スペーサ層は、かかる密接な接触を防止するために使用されることができる。スペーサ層は、SiO等、低蛍光を有する誘電性材料であることができる。
【0054】
SPCE技術は、TIRシステムに関していくつかの利点を提供することができる。例えば、エバネッセント波が、低屈折率の材料への移行によって生成されないため、除去コーティングに対する選択はより大きい。加えて、放射された光の方向性の本質により、収集光学を単純化し、バックグラウンド拒絶を改良することができる。最終的には、金属への近接は、光安定性を増加することを示しており、単分子適用には特に重要である。
【0055】
図11Bは、SPCEシステム1100Bの別の実施形態を図示する。図11Bに示すように、励起装置は、金属層1115Bと調和する基質1110B、および除去コーティング1120Bを含むことができる。基質1110Bおよび除去コーティング1120Bは、前に記載したような材料および技術で実装されることができる。金属層1115Bは、金、銀、あるいは5〜75nm以上、好ましくは金に対しては25〜30nm、および銀に対しては50nmの厚さを有する、SPCEに対して適切な他の金属で実装されることができる。加えて、クロム等の別の金属は、接着を改良するために、基質に適用されてもよいが、一方、引き続き適用されるより厚い層の反射率に干渉せず、この層は、2から5nmの間であると報告されている。いくつかの実施形態では、金属層1115Bは、基質1110Bからの率において著しい変化を有する、非金属材料であることもできる。
【0056】
除去コーティング1120Bは、金属層1115Bの片側に堆積されるか、または伸ばされることができる。除去コーティング1120Bは、図1A〜4に関して前に記載した通り、高屈折率の材料(例えば、融合シリカ、ポリカーボネート)で実装されることができる。空孔(通路、溝等)1125Bは、検体溶液1130Bに対して、除去コーティング1120B内に形成され、金属層1115Bに接触することができる。いくつかの他の実施形態のように、色素分子(例えば、標識したヌクレオチド)は、空孔1125Bの底へ遊走することができる。
【0057】
SPCEシステム1100Bはまた、不完全な球、半球、または他の類似の3次元形状として実装されるレンズ1135Bを含むことができる。レンズ1135Bは、無収差状態にあるように構成されることができ、すなわち、レンズ1135Bは球面収差またはコマを生成しない。レンズ1135Bは、必要とされる鋭い角度で、出入りして光を共役することができる、率が適合する流体1140Bを介して、基質1110Bと調和するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、励起源1145Bは、単一周波数で、または本実施形態の場合、488nmおよび532nm等の多重周波数で、作動することができる。
【0058】
したがって、励起源1145Bからの光が、基質1110Bに衝突する際、表面プラズモンは、金属層1115Bおよび基質1110Bの界面で励起される。表面プラズモンは表面に沿って伝播し、それ自体を電場として表す金属層1115Bの、表面上に結合される光線とみなすことができる。電場は、除去層1120Bおよび空孔1125B内へ延在し、金属表面から距離を取って急速に減衰する。電場の減衰に先駆けて、エネルギ移動帯は、図1Bの著しいエネルギ145の帯に類似して生成されることができる。このエネルギ移動帯内へ伝播されている色素分子(例えば、標識したヌクレオチド)は、放射光1150Bの円錐体を形成するプラズモン結合発光によって、放射されることができる。
【0059】
1100Bのいくつかの実施形態では、除去コーティング1120Bは、内部全反射を支持しない、すなわち基質以上の率、すなわち、率が適合する流体1140Bと適合しない材料で実装されることができる。TIRが発生しないため、コーティングはより低くなることができるが、それが必要というわけではない。他の実施形態では、除去コーティング1120Bは、より少ない屈折率を有する材料で実装されることができる。材料は、当業者に既知であるような金属、または非透明材料であることができる。
【0060】
図11Cは、さらに別の実施形態による、別の例示的SPCEシステム1100Cを図示する。図11Cに示すように、システム1100Cは励起装置を含む。励起装置は、図1Aおよび図3Aに関して前に記載した通り、類似の材料で実装されることができる、基質1110Cを含むことができる。基質1110Cは、金属層1115Cと接触することができる。金属層1115Cは、本願の上記の通り、図11Bの金属層1115Bに類似する材料で実装されることができる。いくつかの実施形態では、金属層1115Cは、基質1110Cから率において著しい変化を有する、非金属材料であることができる。金属層1115Cおよび基質1110Cの界面は、SPCE励起のために使用されることができる。
【0061】
スペーサ層1120Cは、金属層1115Cの片側に形成されることができる。スペーサ層1120Cは、1〜100nm、および好ましくは5〜25nm厚の範囲のSiOで実装されることができる。金属コーティング1125Cは、スペーサ層1120Cの片側に形成されることができる。金属コーティング1125Cは、金、アルミニウム、チタン、または他の類似材料等の材料で実装されることができる。空孔1130Cは、金属コーティング1125C内に形成されることができ、流体1140C内の色素分子(例えば、標識したヌクレオチド)1135Cは、空孔1130Cの底へ遊走できる、
したがって、励起源からの光が基質1110Cに衝突する際、表面プラズモンは、金属層1115Cおよび基質1110Cの界面で励起される。表面プラズモンは、急速に減衰する空孔1130C内へ延在する、電磁場を生成することができる。エネルギ移動帯は、図1Bの著しいエネルギ145の帯に類似して、生成されることができる。このエネルギ移動帯内へ遊走した標識したヌクレオチド1135Cは、エネルギを与えられ、蛍光を発することができる。
【0062】
さらに、厚い金属コーティング1125Cと色素の相互作用のおかげで、消光帯1145Cを生成することができる。消光帯1145Cは、略20nmであることができる。この帯内の任意の色素分子は、蛍光発色することを抑制される。
【0063】
図11Dは、SPCE用の逆クレッチマン励起システム1100Dを図示する。バックグラウンドとして、逆クレッチマン(「RK」)は、SPCEに対する従来のアプローチである。RKでは、励起は試料側からであるが、放射は金属表面の他方側上で起こる。励起光は試料側に取り込まれる際、色素分子をその道に沿って励起する。表面から離れて多くの色素分子が存在し、金属が全ての光を遮断するのに十分なほど厚くないため、放射された光の一部は、金属表面を介して透過するだろう。これにより、高すぎるバックグラウンドが生じるであろう。さらに、励起光は、試料が表面近傍になる前に、試料を退色することができる。図11Dに示す実施形態は、これらの問題を解決することができる。
【0064】
図11Dに示すように、励起システム1100Dは、金属層1115Dと調和する基質1110Dを含むことができる励起装置1105Dと、スペーサ層1120Dとを含むことができる。基質1110D、金属層1115D、およびスペーサ層1120Dは、図11A〜Cに関して前に記載したような、材料および技術で実装されることができる。いくつかの実施形態では、金属層1115Dは、基質1110Dからの率において著しい変化を有する、非金属材料であることができる。スペーサ層1120Dは、検体溶液1125Dと接触することができる。量子ドット1130Dは、スペーサ層1120Dに結合されることができる。明瞭さのため、量子ドットは記載されているが、貴金属ナノドット(コロイド粒子)等、他の吸収体が使用されることができ得ることは理解されるものとする。
【0065】
基質1110Dの片方は、率が適合する流体1135Dと接触することができる。レンズ1140Dは、基質1110D上で、率が適合する流体1135Dを網羅することができる。レンズ1140Dは、不完全な球、半球、または他の類似する3次元形状として実装されてもよい。レンズ1140Dは、無収差状態にあるように構成されることができ、すなわち、レンズ1140Dは球面収差を防止する。レンズ1140Dはまた、一般的に反射または反射屈折のレンズとして、および特にシュワルツシルト対物として実装されてもよい。中央反射システムの1次の鏡を貫通する必要な空孔、および2次の鏡による掩蔽は、多くの画像処理システムにとって制限である一方で、それらはクレッチマンシステムにとっては制限ではない。それらは1次の鏡内の空孔、および2次の鏡による掩蔽を備えるが、誘発された発光は、2つの鏡システムによって完全に収集することができる管状パターン内へ放射されるため、それらは制限ではない。例示的な反射1190Dおよび反射屈折の1195Dレンズは、図11Eに示されている。システム1100Dはまた、1次の励起バックグラウンド放射を遮断するように構成される開口部1145Dと、収集センサ(図示せず)からの量子ドット1330Dからのプラズモン放射とを含むことができる。
【0066】
励起源(図示せず)からの光線1150D(例えば、上方変換する蛍光体に対して波長405nm、または980nm)は、低バックグラウンドを有する小さな放射帯を産生する、量子ドット1130Dを励起することができる。励起光を、色素放射および吸光度から、スペクトル的に非常に除去するため、励起光線1150Dは、容易に光学的に選別されることができ、色素は1次の放射光を不十分ではあるが吸収し、それによって、色素の光分解を減少させる。コロイド粒子1130D近傍の色素から放射される光は、光1155Dの円錐体内にある、基質1110D側の狭い角分布で、放射されることができる。光1155Dの円錐体は、効率的に収集され、選別され、それから電荷結合検出器等のセンサによって検出されることができる。励起光線1160Dの一部は、基質側1110Dへ透過することができるが、この光は、容易に収集領域から、遮断されるか、選別されるか、または離れた方に向かうことができる。
図11Gは、さらに別の実施形態による、別の例示的SPCEシステム1100Fを図示する。図11Fに示すように、システム1100Fは励起装置を含む。励起装置は、図1Aおよび図3Aに関して先に記載した通り、類似の材料で実装されることができる、基質1110Fを含むことができる。基質1110Fは、薄い金属層1115Fと接触することができる。金属層1115Fは、略25〜50ナノメートルの厚みを有し、本願上記の図11Bの金属層1115Bに類似する材料で実装されることができる。第2の金属層1120Fは、金属層1115Fの上に堆積されることができる。第2の金属層1120Fは、略100nmの厚みであり、金属層1115Fまたは異なる金属に類似する材料で実装されることができる。第2の金属層1120Fの厚みは、一部表面プラズモンの共役を防止し、表面プラズモンを反射する。したがって、金属層1115Fおよび基質1110Fの界面は、SPCE励起のために使用されることができる。第1の金属は純粋であることができるか、または合金が提供するプラズモンは支持される。第2の層の追加により、表面プラズモンは支持されるべきではない(すなわち、同一金属より厚い層であることができるか、または異なる金属または合金であることができる)。
【0067】
空孔1130Fは、流体1140F内の色素分子(例えば、標識したヌクレオチド)1135Fが、空孔1130Fの底へ遊走することができる、第2の金属層1120F内に形成されることはできる。空孔は任意の大きさであることができ、より小さな空孔が、より速い速度論に対してより高濃度を可能とする。大きさは、1000nm未満、好ましくは200nm未満、さらにより好ましくは、100nm未満の場合がある。
【0068】
従って、励起源からの光が基質1110Fに衝突する際、表面プラズモンは、金属層1115Fおよび基質1110Fの界面で励起される。表面プラズモンは、急速に減衰する空孔1130F内へ延在する、電場を生成することができる。このエネルギ移動帯内へ遊走されている、標識したヌクレオチド1135Fは、エネルギが与えられ、蛍光を発することができる。
【0069】
さらに、消光1145Fの帯は、第2の金属層1120Fと色素の相互作用のおかげで、生成されることができる。消光1145Eの帯は、略20nmであることができる。この帯内の任意の色素分子は、蛍光を発するのを抑制される。
【0070】
図1Aおよび3Aを参照すると、それぞれの光源(130および335)は、概して、選択された波長での励起エネルギの源として説明することができる。従来のシステムでは、光源は、図12に描写する通り、共振器キャビティレーザであってもよい。図12に示すように、共振器キャビティレーザ1200は、高反射性の鏡1205を含む。キャビティ1210内では、レーザポンプ1215、例えば、アルゴンイオンレーザポンプは、出力カプラ1220を貫通して通過することができるまで、鏡1205の間で反射される、選択された波長を産生してもよい。
【0071】
従来の共振器キャビティレーザは、弱点および不都合を有する。例えば、共振器キャビティレーザも外側のレーザ出力は、共振器キャビティの内側より、略100倍少ない。したがって、さらなる実施形態は、概して、蛍光産生の増加に関する。より詳細には、実施形態は、キャビティの実質的な外側のビームの励起場振幅よりむしろ、フルオロフォアが、キャビティ内に存在するのに匹敵する励起場振幅に曝されるように、共振器キャビティと連通してフルオロフォアを置くことによって、光学過程を増強することができる。他の実施形態では、レーザ出力の効率的使用が、図13に描写した通り、キャビティ鏡等の励起装置1320を使用することによって、シリカ基質上のレーザの波長より小さい寸法および高さを有する空孔を備える除去コーティング、または金属コーティングで実装される励起装置の、実施形態の空孔内に置かれる、フルオロフォアを励起している場合がある。
【0072】
図13は、本発明の実施形態による、システム1300を図示する。図13に示すように、システム1300は、高反射性の鏡1305A、および1305Bを含むことができる。光源1315は、共鳴性キャビティ1310の内部に設置されることができる。レーザ共鳴性キャビティ内部に位置付けられるのは、基質1320、例えば、図1に示す基質105であることができる。共鳴性ビームがキャビティ内を循環する間、エバネッセント波が、除去層の空孔を貫入するフルオロフォアを励起できるように、基質105は、例えば、TIRによって、除去層界面で光を効率的に反射するように構成されるべきである。厳密に言えば、TIR表面が共振器の境界のうちの1つを備えるため、フルオロフォアはキャビティの外側にある。しかし、界面を越えてナノメートル延在する、キャビティ内ビームのエバネッセント成分がある。
【0073】
図14は、本発明の実施形態による、システム1400を図示する。図14に示すように、システム1400は、外部レーザ1410を介する、励起装置1420上の発光団の励起を描写する。システム1400は、高反射性の鏡1405を含むことができる。外部レーザ1410は、鏡1405によって画定される共鳴性キャビティ内へ向けられる選択される周波数で、干渉性光エネルギを産生してもよい。能動型キャビティ整合装置1414は、共鳴に必要なキャビティ長および整合を、確立し維持する。共鳴により、高い磁場をキャビティ内に築き上げることができる。励起装置1420の基質は、エバネッセント波が、除去コーティングの空孔内へ遊走する蛍光標識したdNTPを励起することができるように、共鳴性キャビティと効率的に調和するように構成されることができる。干渉性光エネルギの進路は、第2の高反射性の鏡1405Bを反射することができ、それから励起装置1420に向かって反射し返される場合もある。
【0074】
図15A〜Dは、共振器キャビティ励起装置1500の種々の実施形態を描写する。図15A〜Cに示すように、基質1505は、水性発光検体1510と調和することができる。界面は、TIR界面1525を構成することができる。1515の共振器キャビティは、高反射性の鏡1520およびTIR界面1525によって結合される。光の進路1530は、基質1505への光線の種々の角度を表す。明瞭さのため、空孔またはウェルは省略されている。注目すべきは、ウェルは実際の装置で省略されてもよく、図15A〜Dに描写される装置はさらに機能するであろうことである。例えば、界面の流体側に混成配列のパターン形成をし、共鳴性キャビティ増強を使用することができ得る。いくつかの実施形態では、基質は、少なくとも1片の反射材料を意味することができる。図15A〜Dに示す実施形態に対して、1片のガラスが描写される。好ましくは、プリズムまたはレンズと光学的に接触するガラスの非常に薄い層を有し、薄い層の片側に接触する流体を有するであろう。
【0075】
図15Aは、図16A〜Bにより詳細に描写されるブルースター角で、光線がプリズムに入る共振器キャビティを描写する。図16A〜Bは、TIRを惹起する角度を示す、例示的共振器キャビティ励起装置1600を図示する。図16Aに示すように、励起装置1600の断面は、単一空孔1615を含む。励起装置の基質1605は、シリカ(n=1.457)で実装されることができ、除去コーティング1610は、MgF(n=1.377)で実装される。レーザ光は、使用される色素に適切である、任意の入手可能な色であることができる。例えば、488nmまたは632nmが、通常入手可能なレーザ色である。多重レーザは、独立してか、または同時にかのいずれかで使用されることができる。
【0076】
基質1605内では、光の進路1625は、臨界角(ブルースター角)55.53度で接近し、大気から基質1605へのゼロ反射通過を成し遂げることができる。光の進路1625は、臨界角以上で空孔1615に接近し、TIR界面1620で誘起する。本実施形態に対しては、臨界角は、633nmの光に対して71.26であるが、入射の角度はより大きい場合もある。反射された光は、同じ角度で出ることができるが入射の角度、光の波長、および/または材料により、偏向することができる。
【0077】
図16Aに描写する通り、基質1605の側壁の角度は、界面から、基質1605と除去コーティング1610との間が105度である。
【0078】
図16Bは、光の進路1625が臨界角以上で空孔1615に接近し、TIRを誘起する、共振器キャビティ励起装置1600を描写する。本実施形態に対しては、臨界角は、入射から72.578度である。反射された光は、同じ角度で出ることができるが、入射の角度、光の波長、および/または材料により、偏向することができる。
【0079】
図15Bに転じると、この図は、共振器キャビティの高反射性の鏡1520が、光線1525を垂直入射に向ける、共鳴性キャビティ励起装置の別の実施形態を描写する。図15Cに転じると、この図は、共振器キャビティ励起装置1500のさらに別の実施形態を描写する。基質1505は、半球であるように構成されることができる。高反射性の鏡1520は、光線1525を基質1505に垂直入射で入らせるように位置付けられる。
【0080】
図15Dは、共振器キャビティ励起装置1500のさらに別の実施形態を描写する。本実施形態では、複数のキャビティ1550〜1565を形成することができる。各キャビティは、選択された波長でレーザを支持することができる。したがって、本実施形態に対しては、4つの異なる波長を、検出の際に使用することができる。キャビティがいくつでも、本発明の範囲を逸脱することなく、支持することができることは、当業者には容易に明らかとなるはずである。
【0081】
図17は、さらに別の実施形態による、システム1700を図示する。図17に示すように、励起装置は、シリカ材料で実装される基質1705と、アルミニウムで実装される除去コーティング1710とを含むことができる。空孔1712は、除去コーティング1710内に形成され、色素溶液1714と相互作用することができる。基質1705は、プリズム表面1715ABを有するように構成されることができる。システム1700はまた、高反射性の鏡1720ABを含むこともできる。
【0082】
励起の間、入力レーザは、選択された波長で、入力カプラ(図示せず)を貫通して高反射性の鏡1720Aを介し、干渉性光エネルギ1725を放射することができる。高反射性の鏡1720Aからの干渉性光エネルギ1725は、固定プリズム1715Aの側に向かって透過されることができる。干渉性光エネルギ1725はまた、高反射性の鏡1720Bへ向けられ、プリズム表面1715Bの他方側に向かって反射されることができる。プリズム表面1715Bは、光を空孔1712に向かって反射するように構成されることができる。
【0083】
さらに別の実施形態は、光ファイバを使用し、図18に描写される。図18に示すように、システム1800は、1つ以上の光ファイバ1810の下方へ光を放つ、励起装置1805を含む。検出領域1815は、一部のファイバ1810の上に生成されてもよい。ファイバ上のコーティングは、ファイバの表面のエバネッセント波を誘起するように設計されることができる。検出領域1815では、小さな空孔(図示せず)はファイバのコーティング1810が、除去コーティングとして機能するように、コーティング内に置かれてもよい。光ファイバ1810の走行は、TIRを保存するのに十分大きなループ1820を含むことができる。
【0084】
本発明を、その例示的実施形態を参照の上、説明してきた一方で、当業者は、真の精神および範囲を逸脱ことなく、記載の実施形態に対する種々の修正を行うことができるであろう。本願で使用される用語および説明は、図示の手段として記載されており、制限を意味しない。特に、方法が例によって説明されているが、方法のステップは、図示の通りまたは同時ではなく、異なる順序で実行されてもよい。当業者は、続く請求項およびそれらに同等するものに定義される精神ならびに範囲内で、これらおよび他の変形が可能であることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の分析のためのシステムであって、
基質と、
該基質に接触するように構成された流体試料と、
該基質に結合している無機吸収体によって、蛍光標識した分子にエネルギを与えるように構成された励起光源と、
該蛍光標識した分子を検出するように構成された検出器と
を備える、システム。
【請求項2】
前記無機吸収体は量子ドットである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記無機吸収体は上方変換する蛍光体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記励起光源は、内部反射によって誘起されるエバネッセント波を誘起する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記基質および前記流体試料は、それぞれもう一方とは異なる屈折率を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記無機吸収体は、第1の波長でエネルギ移動帯を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
標識部分と、
色素標識したヌクレオチドと、
酵素であって、該酵素の1つの末端は、該標識部分に付着しており、該酵素の第2の末端は、該色素標識したヌクレオチドに付着している、酵素と
をさらに備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
第2の無機吸収体をさらに備え、該第2の無機吸収体は、第2の波長で第2のエネルギ移動帯を生成するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1および第2のエネルギ移動帯は、少なくとも3つの励起波長を生成する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の無機吸収体は、前記酵素の末端によって、前記色素標識したヌクレオチドに付着する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
金属層で被覆される透明基質と、
該金属層に堆積される除去コーティングと、
該除去コーティングの空孔内へ、拡散するように構成される蛍光標識した分子と、
該除去コーティングの基質側で、プラズモン結合発光を産生するように構成される励起光源と
を備える、検体の分析のためのシステム。
【請求項12】
前記除去コーティングは、前記基質の材料より高い屈折率の材料で実装される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プラズモン結合発光は、前記除去コーティング内の空孔に、エネルギ移動帯を形成する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
放射光の円錐体は、前記エネルギ移動帯に入る前記蛍光標識した分子に反応して、形成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
ルミネセンス検出システムであって、該システムは、共鳴性光キャビティを備え、発光団の放射は、該共鳴性光キャビティの境界に確立されるエバネッセント励起によって、誘発される、システム。
【請求項16】
前記共鳴性光キャビティは、
選択された波長で、光を産生するように構成される励起光源と、
基質と、
複数の鏡であって、1つの鏡は、光を該励起光源から、該光を第2の鏡へ反射する基質へ、反射および屈折させるように位置付けられ、該第2の鏡は、入射光のように実質的に反対方向に、該光を反射し再配向する、複数の鏡と
をさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
選択された波長で光を産生するように構成される励起光源と、
内部全反射界面と、
複数の鏡であって、前記共鳴性光キャビティは、該複数の鏡および該内部全反射界面によって境界される、複数の鏡と
をさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記励起光源からの光は、ブルースター角で前記共鳴性光キャビティに入り、内部全反射を誘起する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記励起光源からの光は、垂直入射で前記共鳴性光キャビティに入る、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
複数の光源であって、各源は、選択された波長で、関連する光を産生するように構成される、光源と、
複数の内部全反射界面と、
複数のサブセットの鏡からさらに成る複数の鏡であって、各サブセットの鏡は光源と関連する、複数の鏡と
をさらに備え、複数の共鳴性キャビティが形成され、各共鳴性キャビティは、関連するサブセットの鏡、および関連する内部全反射界面によって境界され、関連する光源からの光を供給される、請求項15に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−537148(P2009−537148A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511218(P2009−511218)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/069026
【国際公開番号】WO2007/137060
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(500069057)アプライド バイオシステムズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】