説明

単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置及び該単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を備えた分電盤及び電力計

【課題】宅内PLCモデムを用いた電力線通信で、電力受給側における単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、電力供給側に流出しないようにすることが可能な単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を提供する。
【解決手段】単相3線式交流電力線における電力供給側と電力受給側との分岐点に挿入される第1誘導コイルL1を備え、単相3線式交流電力線の中性線9の途中には該第1誘導コイルL1の中性線巻線L11が、単相3線式交流電力線の一方の相の電力線8の途中には一方の相巻線L12が、そして、単相3線式交流電力線の他方の相の電力線7の途中には他方の相巻線L13が、それぞれ、直列に挿入されていると共に、一方の相巻線の巻線方向L12、及び、他方の相巻線L13の巻線方向が、中性線巻線L11の巻線方向と反対となるようにして、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLCモデムを用いてPLC通信が行われる単相3線式交流電力線に用いられる単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置、及び、該単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を備えた分電盤、及び、電力計に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内における情報の伝送手段としては、有線LANや、無線LAN、赤外線通信等が用いられているが、最近、商用電源の電力線を通信媒体として用いる電力線通信(Power Line Communication)が、注目されている。
【0003】
この電力線通信(PLC)は、電源として使用される交流50/60Hzの商用周波数より上の空いている高周波帯域を利用することにより、情報伝送用の微弱な信号を電力と並行して搬送する情報伝送方式である。
【0004】
この電力線通信は、上述したように、電力線を通信媒体として用いることから、有線LANを敷設する場合に必要なLANケーブル等の敷設が不要であり、且つ、有線通信であることから、無線LANで問題となるセキュリテイ上の問題も対策が容易である等の利点を備えている。
【0005】
ところで、日本の家屋では、配電方式が一般に単相3線式となっている。そこで、この単相3線式配電方式において、PLCモデムを単相3線式交流電力線の中性線(C)と一方の相の電力線(例えば、R相)との間に接続して使用する場合、相手側のPLCモデムが、単相3線式交流電力線の中性線(C)と他方の相の電力線(例えば、T相)との間に接続されていると、異なる相間でPLC信号が十分に伝わらないため、良好な通信を行うことができない。
【0006】
そこで、この単相3線式交流電力線において、異なる相間で、PLC信号を伝達する仕組が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の図3には、単相3線式交流電力線を用いた電力線通信装置が記載されている。
【0007】
上記の電力線通信は、家庭内等における単相3線式交流電力線において、この単相3線式交流電力線の電力受給側に設けられた複数のPLCモデムの相互間における通信である。このPLCモデムを、本明細書では、宅内PLCモデムと称する。この宅内PLCモデムでは、電源が、AC100Vである。
【0008】
日本における単相3線式配電方式では、単相3線式交流電力線の中性線(C)と一方の相の電力線(例えば、R相)との間の電圧、及び、中性線(C)と他方の相の電力線(例えば、T相)との間の電圧は、AC100Vである。又、家庭内では、中性線(C)と一方の相の電力線(例えば、R相)、又は、中性線(C)と他方の相の電力線(例えば、T相)による2線式の配線が行われている。そこで、家庭で用いられる電力線通信としては、一般に、上記の宅内PLCモデムが用いられる。
【0009】
ところが、最近、単相3線式交流電力線における電力供給側に設けられたPLCモデムと電力受給側に設けられたPLCモデムの相互間における電力線通信も行われるようになっている。
【0010】
この単相3線式交流電力線における電力供給側に設けられたPLCモデムと電力受給側に設けられたPLCモデムの相互間における電力線通信の場合は、一般に、単相3線式交流電力線の一方の相の電力線(例えば、R相)と、他方の相の電力線(例えば、T相)との間に、PLCモデムが接続される。このPLCモデムを、本明細書では、宅外PLCモデムと称する。
【0011】
日本における単相3線式配電方式では、一方の相の電力線(例えば、R相)と、他方の相の電力線(例えば、T相)との間の電圧が、AC200Vであることから、この宅外PLCモデムでは、電源が、AC200Vである。
【特許文献1】特開2003−37533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、電力線通信では、電力線における商用周波数より上の空いている高周波帯域を有線通信として利用する。しかし、この高周波帯域を用いた電力線通信では、この高周波帯域の信号が電波として電力線から放射されると、他の電子機器等に雑音電波として障害を与えることになるので、この高周波帯域の信号が電波として電力線から放射されることをできるだけ抑える必要がある。
【0013】
そこで、宅内PLCモデムを用いた電力線通信では、家庭内における単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭外で、単相3線式交流電力線から雑音電波として放射されないようにするため、単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭外に出ないようにするのが望ましい。
【0014】
他方、宅外PLCモデムを用いた事業用電力線通信等の電力線通信では、家庭外の単相3線式交流電力線を流れるPLC信号は、家庭内の単相3線式交流電力線に流れ込むようにする必要がある。
【0015】
又、家庭内で一般に用いられる宅内PLCモデムについて、上記の特許文献1に記載されている図3の単相3線式交流電力線に接続される従来例の電力線通信装置では、1次側巻線1組と2次側巻線2組の、合計3組の巻線を備えた誘導コイルが必要である。そのため、誘導コイルのコスト増となる。
【0016】
又、上記の従来例の電力線通信装置は、単相3線式交流電力線に接続できるようにするために、電力線通信装置の内部に、3組の巻線を備えた誘導コイルを備えており、この電力線通信装置は、単相3線式交流電力線に接続するためのC端子、R相端子、及び、T相端子の3端子を備えていると解される。
【0017】
しかし、一般に市販されている宅内PLCモデムは、単相2線式交流電力線に接続するように構成されている。そのため、このような単相2線式交流電力線に接続するように構成されている市販されている宅内PLCモデムを、単相3線式交流電力線に、容易に接続できるようにすることが望まれている。
【0018】
そこで、この発明は、上記のような状況に対処するためになされたものであって、宅内PLCモデムを用いた電力線通信では、家庭内における単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭外で単相3線式交流電力線から雑音電波として放射されないようにすると共に、宅外PLCモデムを用いた電力線通信では、家庭外の単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭内の単相3線式交流電力線に流れ込むようにし、さらに、一般に市販されている宅内PLCモデムを、単相3線式交流電力線に接続することが容易で、且つ、そのためのコストアップを抑制することが可能な、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置は、単相3線式交流電力線における電力供給側と電力受給側との分岐点に挿入される第1誘導コイルを備えた単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置である。
【0020】
上記の単相3線式交流電力線は、該単相3線式交流電力線の電力受給側における該単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に宅内PLCモデムのPLC信号が注入されると共に、該PLC信号が、同位相の状態で、単相3線式交流電力線の中性線と他方の相の電力線との間にも注入されるPLC信号相間注入が行われることにより、単相3線式交流電力線の電力受給側の中性線と一方の相又は他方の相との間に接続された宅内PLCモデム相互間の電力線通信が行われる交流電力線である。
【0021】
又、上記の第1誘導コイルでは、該第1誘導コイルに設けられた3個の各巻線の内、単相3線式交流電力線の中性線の途中には中性線巻線が、単相3線式交流電力線の一方の相の電力線の途中には一方の相巻線が、そして、単相3線式交流電力線の他方の相の電力線の途中には他方の相巻線が、それぞれ、直列に挿入されている。
【0022】
又、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置は、第1誘導コイルにおける一方の相巻線の巻線方向、及び、他方の相巻線の巻線方向が、中性線巻線の巻線方向と反対となるように構成されていることを特徴としている。
【0023】
上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置では、第1誘導コイルにおける一方の相巻線の巻線方向、及び、他方の相巻線の巻線方向が、中性線巻線の巻線方向と反対となるように構成されている。
【0024】
そうすると、上述したように、該単相3線式交流電力線の電力受給側における宅内PLCモデムを用いた電力線通信では、単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に宅内PLCモデムのPLC信号が注入されると共に、該PLC信号が、同位相の状態で、単相3線式交流電力線の中性線と他方の相の電力線との間にも注入される。
【0025】
そのため、宅内PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルにおいて、中性線、一方の相、及び、他方の相が同位相となり、第1誘導コイル内では、磁束を強め合うので、PLC信号の伝播が阻止される。
【0026】
従って、該単相3線式交流電力線の電力受給側における宅内PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルから単相3線式交流電力線の電力供給側へ伝播するのを阻止することができる。そのため、家庭内における単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭外で単相3線式交流電力線から雑音電波として放射されることを抑制することができる。
【0027】
上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、第1誘導コイルの中性線巻線、一方の相巻線、及び、他方の相巻線の各巻線数は、同数であるのが好適である。このようにすることにより、第1誘導コイルの機能を精度よく発揮させることができる。
【0028】
又、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、単相3線式交流電力線は、該単相3線式交流電力線の電力供給側における一方の相の電力線と他方の相の電力線との間に接続された宅外PLCモデムと、該単相3線式交流電力線の電力受給側における一方の相の電力線と他方の相の電力線との間に接続された宅外PLCモデムとの相互間で、電力線通信が行われる交流電力線とするようにしてもよい。
【0029】
上述したように、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置では、第1誘導コイルにおける単相3線式交流電力線の一方の相巻線の巻線方向、及び、他方の相巻線の巻線方向が、中性線巻線の巻線方向と反対となるように、第1誘導コイルは構成されている。即ち、第1誘導コイルにおける単相3線式交流電力線の一方の相巻線の巻線方向と、他方の相巻線の巻線方向とは同じである。
【0030】
そうすると、宅外PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルにおいて、単相3線式交流電力線の一方の相と他方の相が逆位相となり、第1誘導コイル内で磁束を打ち消し合うので、PLC信号が伝播される。
【0031】
従って、単相3線式交流電力線の電力供給側における宅外PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルから該単相3線式交流電力線の電力受給側へ伝播することができる。そのため、宅外PLCモデムを用いた電力線通信では、家庭外の単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭内の単相3線式交流電力線に流れ込むようにすることができる。
【0032】
又、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、次のようにするのが好適である。即ち、単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に、第2誘導コイルの1次側巻線でなる1次側回路が、宅内PLCモデムと共に、直列に接続されるようにする。又、単相3線式交流電力線の中性線と他方の相の電力線との間に、第2誘導コイルの1次側巻線に流れる電流と同位相となる誘導電流が流れる第2誘導コイルの2次側巻線が少なくとも直列接続されてなる2次側回路が接続されるようにする。そして、上記のPLC信号相間注入が、これらの1次側回路と2次側回路とを用いて行われるようにするのである。
【0033】
又、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置が、上記の1次側回路と2次側回路とを備えるようにしてもよい。このようにすることにより、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に、第2誘導コイルの1次側巻線でなる1次側回路が、前記宅内PLCモデムと共に、直列に接続されることになる。従って、宅内PLCモデムを、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置に2端子による接続で接続することができる。
【0034】
上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置によれば、宅内PLCモデムを、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置に2端子による接続で接続することができる。従って、宅内PLCモデムとして、一般に市販されているPLCモデムを、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置に接続することができる。
【0035】
又、上述したPLC信号相間注入が、上記の1次側回路と2次側回路とを用いて行われるので、単相3線式交流電力線の一方の相に接続された宅内PLCモデムのPLC信号を、同位相で、単相3線式交流電力線の他方の相に注入することができる。そのため、単相3線式交流電力線において、異なる相間で、PLC信号を伝達することができる。従って、一般に市販されている宅内PLCモデムを、単相3線式交流電力線の異なる相間に接続して電力線通信を行うことが可能となる。
【0036】
又、この単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置に用いられる第2誘導コイルは、1次側巻線と2次側巻線の2組の巻線を備えた誘導コイルである。従って、上記の従来例の電力線通信装置における3組の巻線を備えた誘導コイルを用いる場合に比べて、誘導コイルのコストアップを抑制することができる。
【0037】
上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、第2誘導コイルの1次側巻線の巻線数と2次側巻線の巻線数とは同数とするのが妥当である。このようにすることにより、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置に接続されたPLCモデムの入出力を、単相3線式交流電力線の一方の相、及び他方の相の双方に対して、共に、同一レベルで結合することができる。
【0038】
又、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置に用いられている2次側回路に、直列接続された抵抗とコンデンサとを含むようにするのが妥当である。この直列接続された抵抗とコンデンサの内、コンデンサは、第2誘導コイルの2次側巻線に、商用周波数の交流電流が流れるのを阻止する機能を有し、抵抗は、第2誘導コイルの2次側巻線に流れる電流が少なくなるように抑制する機能を有している。
【0039】
そのため、上記のようにすることにより、上記の第2誘導コイルにおける許容電流を小さくすることができ、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置に用いる第2誘導コイルのコストアップを抑制することができる。
【0040】
上記の各単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置は、いずれも、単相3線式配電方式で家庭に配電される場合において、電力供給側と電力受給側との分岐点等に設けられる分電盤に、内蔵することができる。即ち、上記のいずれかの単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を備えた分電盤を、構成することができる。
【0041】
この分電盤によれば、分電盤の機能と、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置の機能とを、一箇所で実現することができ、これらの設置スペースの省力化を図ることができる。
【0042】
又、上記の各単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置は、いずれも、単相3線式配電方式で家庭等の電力受給側に配電される場合に用いられる電力計に、内蔵することができる。即ち、上記のいずれかの単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を備えた電力計を、構成することができる。
【0043】
この電力計によれば、電力計の機能と、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置の機能とを、一箇所で実現することができ、これらの設置スペースの省力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置の第1誘導コイルは、、該第1誘導コイルにおける一方の相巻線の巻線方向、及び、他方の相巻線の巻線方向が、中性線巻線の巻線方向と反対となるように構成されている。
【0045】
そうすると、上述したように、該単相3線式交流電力線の電力受給側における宅内PLCモデムを用いた電力線通信では、単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に宅内PLCモデムのPLC信号が注入されると共に、該PLC信号が、同位相の状態で、単相3線式交流電力線の中性線と他方の相の電力線との間にも注入される。
【0046】
そのため、宅内PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルにおいて、中性線、一方の相、及び、他方の相が同位相となり、第1誘導コイル内では、磁束を強め合うので、PLC信号の伝播が阻止される。
【0047】
従って、該単相3線式交流電力線の電力受給側における宅内PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルから単相3線式交流電力線の電力供給側へ伝播するのを阻止することができる。そのため、家庭内における単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭外で単相3線式交流電力線から雑音電波として放射されることを抑制することができる。
【0048】
又、第1誘導コイルにおける単相3線式交流電力線の一方の相巻線の巻線方向と、他方の相巻線の巻線方向とは同じである。そうすると、宅外PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルにおいて、単相3線式交流電力線の一方の相と他方の相が逆位相となり、第1誘導コイル内で磁束を打ち消し合うので、第1誘導コイルでは、宅外PLCモデムのPLC信号が伝播される。
【0049】
従って、単相3線式交流電力線の電力供給側における宅外PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルから該単相3線式交流電力線の電力受給側へ伝播することができる。そのため、宅外PLCモデムを用いた電力線通信では、家庭外の単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭内の単相3線式交流電力線に流れ込むようにすることができる。
【0050】
又、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置では、単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に、第2誘導コイルの1次側巻線でなる1次側回路が、宅内PLCモデムと共に、直列に接続される。又、単相3線式交流電力線の中性線と他方の相の電力線との間に、第2誘導コイルの1次側巻線に流れる電流と同位相となる誘導電流が流れる第2誘導コイルの2次側巻線が少なくとも直列接続されてなる2次側回路が接続される。そして、上記のPLC信号相間注入が、これらの1次側回路と2次側回路とを用いて行われる。そのため、単相3線式交流電力線において、異なる相間で、PLC信号を伝達することができる。従って、一般に市販されている宅内PLCモデムを、単相3線式交流電力線の異なる相間に接続して電力線通信を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
次に、本発明の実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10の回路構成を示した構成図である。本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10は、単相3線式交流電力線における電力供給側と電力受給側との分岐点に挿入される装置である。そこで、図1において、接続端子J1〜J3は、電力供給側に接続され、接続端子J4〜J6は、電力受給側に接続される。
【0052】
本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置は、大きくは、2つの機能を備えている。
【0053】
一つは、宅内PLCモデムを用いた電力線通信において、家庭内における単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭外で単相3線式交流電力線から雑音電波として放射されないようにすると共に、宅外PLCモデムを用いた電力線通信では、家庭外の単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭内の単相3線式交流電力線に流れ込むようにする機能である。これを、本実施の形態では、第1の機能と称する。
【0054】
この第1の機能は、本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置のPLC信号ゲート回路1aにより、実現される。このPLC信号ゲート回路1aは第1誘導コイルを備えている。
【0055】
他の一つは、単相3線式交流電力線において、異なる相間で、PLC信号を伝達することができるようにすると共に、一般に市販されている宅内PLCモデムを、単相3線式交流電力線に容易に接続することができるようにする機能である。これを、本実施の形態では、第2の機能と称する。
【0056】
この第2の機能は、本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置のPLC信号注入回路1bにより、実現される。このPLC信号注入回路1bは第2誘導コイルを備えている。
【0057】
そこで、最初に、本発明の実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置の第2の機能について説明する。この第2の機能は、1次側巻線と2次側巻線とで構成される上記の第2誘導コイルを用いて、宅内PLCモデムのモデム信号を単相3線式交流電力線の一方の相、及び他方の相に注入するものである。又、この宅内PLCモデムで利用される周波数帯域は、2MHz〜30MHzである。
【0058】
そこで、本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を構成するのに際して、その原理に基づく機能を確認するため、上記の周波数帯域に関し、上記の第2誘導コイルに相当する実験用誘導コイルを用いて、以下に説明する第1番目の実験、第2番目の実験、及び、第3番目の実験の3種類の実験を、まず行った。
【0059】
図2は、上述した3種類の実験に用いた上記の実験用誘導コイルL3の構成を示したものである。この実験用誘導コイルL3は、図2に示すように、ドーナツ状のフェライト等の磁性体で形成されたコアに巻回された1次側巻線L31と2次側巻線L32とで構成されている。
【0060】
この1次側巻線L31と2次側巻線L32の巻数の比は、1対1、即ち、1次側巻線L31の巻数と、2次側巻線L32の巻数とは同じである。又、1次側巻線L31は、1次側端子T1と1次側端子T2とを備え、2次側巻線L32は、2次側端子T3と2次側端子T4とを備えている。
【0061】
この実験用誘導コイルL3では、図2において、1次側巻線L31に1次側電流が1次側電流方向15の向きに流れると、2次側巻線L32には、2次側電流としてこの1次側電流により生じる磁束を打ち消す方向に誘導電流が、2次側電流方向16の向きに流れる。実験用誘導コイルL3では、この誘導電流が、1次側電流と同位相となるように、1次側巻線L31と2次側巻線L32とが巻回されている。
【0062】
次に、第1番目の実験について説明する。第1番目の実験は、図2に示す実験用誘導コイルL3と、3芯の電線W1、電線W2、電線W3で構成される長さ4mのケーブル4、及び、2台のネットワークアナライザを用いた実験である。このネットワークアナライザの機能としては、電気信号のレベル測定や波形観測のほか、信号を発生することができる。
【0063】
そこで、2台のネットワークアナライザの内、1台を、ネットワークアナライザの信号発生機能を利用した送信側ネットワークアナライザ11として用い、もう1台を、ネットワークアナライザの電気信号レベル測定、及び、波形観測機能を利用した受信側ネットワークアナライザ12として用いる。
【0064】
即ち、送信側ネットワークアナライザ11により、宅内PLCモデムで利用される周波数帯域である2MHz〜30MHzの正弦波を出力してケーブルの送信端に入力し、受信側ネットワークアナライザ12により、送信側ネットワークアナライザ11からケーブルの送信端に入力された上記の正弦波信号の、ケーブルの受信端における出力の減衰量の測定、及び波形の観測を行う。この2台のネットワークアナライザの使用方法は、以下に述べる第2番目の実験、及び、第3番目の実験においても同様である。
【0065】
第1番目の実験は、図3〜図5に示す回路を用いた実験である。この第1番目の実験では、ケーブルの3芯の電線W1、電線W2、電線W3の内、電線W1を単相3線式交流電力線の中性線とし、電線W2を単相3線式交流電力線の一方の相の電力線とし、電線W3を単相3線式交流電力線の他方の相の電力線とみなして、実験を行っている。
【0066】
この第1番目の実験における図3の回路を用いた実験では、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端側に、送信側ネットワークアナライザ11を接続し、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の受信端側に、抵抗R2(50Ω)と受信側ネットワークアナライザ12を接続して測定を行う。電線W3(他方の相の電力線に相当)の両端には、何も接続されていない。この図3の回路では、実験用誘導コイルL3は用いていない。
【0067】
又、第1番目の実験における図4の回路を用いた実験では、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端側に、送信側ネットワークアナライザ11を接続し、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の送信端側に、抵抗R2を接続している。又、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の受信端側に、抵抗R2を接続し、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の受信端側に、受信側ネットワークアナライザ12を接続して測定を行う。この図4の回路でも、実験用誘導コイルL3は用いていない。
【0068】
そして、第1番目の実験における図5の回路を用いた実験では、電線W2(一方の相の電力線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)との間に実験用誘導コイルL3を挿入している。即ち、電線W2(一方の相の電力線に相当)を切断して1次側巻線L31の1次側端子T1及び1次側端子T2に接続することにより、電線W2(一方の相の電力線に相当)の途中に1次側巻線L31を挿入する。又、電線W3(他方の相の電力線に相当)を切断して2次側巻線L32の2次側端子T3及び2次側端子T4に接続することにより、電線W3(他方の相の電力線に相当)の途中に2次側巻線L32を挿入する。
【0069】
又、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端側に、送信側ネットワークアナライザ11を接続し、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の送信端側に、抵抗R2を接続している。又、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の受信端側に、抵抗R2を接続し、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の受信端側に、受信側ネットワークアナライザ12を接続して測定を行う。
【0070】
図6は、上記の第1番目の実験の結果を示したグラフであり、横軸は周波数(MHz)、縦軸は減衰量(dB)を示している。図6のグラフにおいて、D1は、図3の回路を用いた実験の結果であり、D2は、図4の回路を用いた実験の結果であり、そして、D3は、図5の回路を用いた実験の結果である。
【0071】
図6のグラフからは、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端に入力された正弦波信号に対する、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の受信端における減衰量は、実験用誘導コイルL3を用いない図4の回路を用いた実験では、約−30dB〜約−20dBであるのに対して、実験用誘導コイルL3を用いた図5の回路を用いた実験では、約−10dBである。
【0072】
この結果から分かるように、実験用誘導コイルL3を用いることによって、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端に接続された送信側ネットワークアナライザ11の出力を、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)との間に効果的に誘起することができる。
【0073】
次に、第2番目の実験について説明する。第2番目の実験は、図7の回路、及び、図8の回路を用いた実験である。この第2番目の実験では、3芯の電線W1(中性線に相当)、電線W2(一方の相の電力線に相当)、電線W3(他方の相の電力線に相当)で構成される長さ4mのケーブル4の電線W2(一方の相の電力線に相当)と、電線W3(他方の相の電力線に相当)との間に、図5に示す回路と同様にして実験用誘導コイルL3を挿入する。そして、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端側に、送信側ネットワークアナライザ11を接続し、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の送信端側に、抵抗R2を接続する。
【0074】
又、実験用誘導コイルL3が挿入されたケーブル4の受信端側に、2芯の電線W1(中性線に相当)、及び、電線W2(一方の相の電力線に相当)で構成される長さ10mのケーブル5の送信端側と、同じく2芯の電線W1(中性線に相当)、及び、電線W3(他方の相の電力線に相当)で構成される長さ10mのケーブル6の送信端側とを、図7、及び、図8に示すように同名の電線同士を結合して接続する。そして、ケーブル5とケーブル6との相互間の影響を抑えるために、ケーブル5とケーブル6とを、互いに反対方向へ伸ばしている。
【0075】
そして、さらに、ケーブル5の受信端側である電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の受信端側間に抵抗R2を接続すると共に、ケーブル6の受信端側である電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の受信端側間に抵抗R2を接続する。
【0076】
この状態で、まず、図7に示すように、ケーブル5の受信端側である電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の受信端側間に受信側ネットワークアナライザ12を接続して測定を行う。そして、次に、図8に示すように、ケーブル6の受信端側である電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の受信端側間に受信側ネットワークアナライザ12を接続して測定を行う。
【0077】
図9は、上記の第2番目の実験の結果を示したグラフであり、横軸は周波数(MHz)、縦軸は減衰量(dB)を示している。図9のグラフにおいて、D4は、図7の回路を用いた実験の結果であり、D5は、図8の回路を用いた実験の結果である。
【0078】
図9のグラフからは、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端側に入力された正弦波信号に対して、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の受信端側における減衰量と、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の受信端側における減衰量のカーブは、略一致している。
【0079】
この結果から分かるように、実験用誘導コイルL3を用いることによって、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端に接続された送信側ネットワークアナライザ11の出力を、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)との間の出力レベルと略同等のレベルで、電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)との間に、誘起することができる。
【0080】
次に、第3番目の実験について説明する。第3番目の実験は、図10の回路、及び、図11の回路を用いた実験である。この第3番目の実験の図10の回路は、第2番目の実験における図8の回路と同じであり、図11の回路は、図10の回路の電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の送信端側に、接続された抵抗R2と直列にコンデンサC2(0.47μF)を接続したものである。即ち、第3番目の実験は、コンデンサC2の有無による影響を調べるものである。
【0081】
図12は、上記の第3番目の実験の結果を示したグラフであり、横軸は周波数(MHz)、縦軸は減衰量(dB)を示している。図129のグラフにおいて、D6は、図7の回路を用いた実験の結果であり、D7は、図8の回路を用いた実験の結果である。
【0082】
図9のグラフからは、電線W1(中性線に相当)と電線W2(一方の相の電力線に相当)の送信端側に入力された正弦波信号に対する電線W1(中性線に相当)と電線W3(他方の相の電力線に相当)の受信端側における減衰量のカーブは、コンデンサC2を接続しない場合と接続した場合とでは、ほとんど差がなく、略一致している。即ち、コンデンサC2の有無による影響は、ほとんどないことが分かる。
【0083】
上記の実験の結果に基づいて構成したのが、図1に示す本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bである。図1において、本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bは、上述した実験用誘導コイルL3と同様の構成で製作された第2誘導コイルL2を用いて、次のように構成されている。
【0084】
即ち、第2誘導コイルL2は、上述した実験用誘導コイルL3と同様のフェライト等の磁性体で形成されたコアに、上述した実験用誘導コイルL3の1次側巻線L31及び2次側巻線L32と同様にして巻回された1次側巻線L21及び2次側巻線L22を備えて製作されている。
【0085】
そして、1次側巻線L21の一端は、単相3線式交流電力線の一方の相の電力線(例えば、T相)8に接続され、他端は、接続端子J8を介して、宅内PLCモデム3aの入出力端子の一方に接続される。又、2次側巻線L22の一端は、単相3線式交流電力線の他方の相の電力線(例えば、R相)7に接続され、他端には、直列接続された抵抗R1とコンデンサC1が直列接続されて、単相3線式交流電力線の中性線(N)9に接続される。この中性線(N)9には、接続端子J7を介して、宅内PLCモデム3aの入出力端子の他方も接続される。
【0086】
上記のようにして構成された回路において、本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bには、宅内PLCモデム3aは含まれない。即ち、宅内PLCモデム3aは、PLC信号注入回路1bが備える接続端子J7、及びJ8に接続されることにより、単相3線式交流電力線に接続されることになる。
【0087】
又、単相3線式交流電力線には、宅内PLCモデム3aの通信先の宅内PLCモデムとして、宅内PLCモデム3bや宅内PLCモデム3c等が、図1に示すように接続される。即ち、例えば、宅内PLCモデム3bは、単相3線式交流電力線の中性線(N)9と一方の相の電力線(例えば、T相)8との間に接続され、宅内PLCモデム3cは、単相3線式交流電力線の中性線(N)9と他方の相の電力線(例えば、R相)7との間に接続される。
【0088】
図1における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bでは、単相3線式交流電力線の中性線(N)9と一方の相の電力線(例えば、T相)8との間に、第2誘導コイルL2の1次側巻線L21を介して宅内PLCモデム3aが接続されると共に、単相3線式交流電力線の中性線(N)9と他方の相の電力線(例えば、R相)7との間に、第2誘導コイルL2の2次側巻線L22が接続される。
【0089】
そして、第2誘導コイルL2の1次側巻線L21に、1次側電流として宅内PLCモデム3aの出力電流が流れると、第2誘導コイルL2の2次側巻線L22に、2次側電流として上述の実験用誘導コイルL3と同様の誘導電流が流れる。そこで、上述した第1番目の実験、及び第2番目の実験から分かるように、単相3線式交流電力線の一方の相に接続された宅内PLCモデム3aのPLC信号を、同位相で、単相3線式交流電力線の他方の相に注入することができる。即ち、図1において、宅内PLCモデム3aは、宅内PLCモデム3bや宅内PLCモデム3cと通信を行うことができる。
【0090】
又、図1において、抵抗R1は、第2誘導コイルL2の1次側巻線L21を流れる電流を制限する電流制限抵抗である。又、コンデンサC1は、第2誘導コイルL2の1次側巻線L21に商用周波数(50Hz、又は、60Hz)の交流電流が流れるのを阻止するコンデンサである。
【0091】
このコンデンサC1は、上記の第3番目の実験におけるC2に相当し、このコンデンサC1を用いても、上記の第3番目の実験から分かるように、単相3線式交流電力線の一方の相に接続された宅内PLCモデム3aの出力信号を、単相3線式交流電力線の他方の相と結合する機能に対しては、ほとんど影響がない。
【0092】
本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bによれば、単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に、第2誘導コイルL2の1次側巻線L21でなる回路が、宅内PLCモデム3aと共に、直列に、接続される。即ち、宅内PLCモデム3aは、PLC信号注入回路1bの接続端子J7及びJ8に、2端子接続で接続される。
【0093】
従って、宅内PLCモデム3aを、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bに、2端子による接続で接続することができることから、一般に市販されている宅内PLCモデムを、単相3線式交流電力線に容易に接続することが可能である。
【0094】
又、この単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bを用いることにより、単相3線式交流電力線の一方の相の電力線(例えば、T相)8に接続された宅内PLCモデム3aのPLC信号を、同位相で、単相3線式交流電力線の他方の相の電力線(例えば、R相)7に注入することができる。そのため、単相3線式交流電力線において、異なる相間で、PLC信号を伝達することができる。従って、一般に市販されている宅内PLCモデムを、単相3線式交流電力線の異なる相間に接続して電力線通信を行うことが可能となる。
【0095】
又、この単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bに用いられる第2誘導コイルL2は、1次側巻線L21と2次側巻線L22の、2組の巻線を備えた第2誘導コイルである。従って、従来例の電力線通信装置における3組の巻線を備えた第2誘導コイルを用いる場合に比べて、第2誘導コイルのコストアップを抑制することができる。
【0096】
又、本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bでは、第2誘導コイルL2の1次側巻線L21の巻線数と2次側巻線L22の巻線数とは同数である。従って、この単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10に接続された宅内PLCモデム3aのPLC信号を、入出力を、単相3線式交流電力線の一方の相、及び他方の相の双方に対して、共に、同一レベルで注入することができる。
【0097】
又、本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号注入回路1bでは、第2誘導コイルL2の2次側巻線L22に、直列接続された抵抗R1とコンデンサC1とを含んでいる。この直列接続された抵抗R1とコンデンサC1の内、コンデンサC1は、第2誘導コイルL2の2次側巻線に、商用周波数の交流電流が流れるのを阻止する機能を有し、抵抗R1は、第2誘導コイルL2の2次側巻線L22に流れる電流が少なくなるように抑制する機能を有している。
【0098】
そのため、第2誘導コイルL2における許容電流を小さくすることができ、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10に用いる第2誘導コイルL2のコストアップを抑制することができる。
【0099】
次に、本発明の実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置の第1の機能について説明する。この第1の機能は、上述したように、第1誘導コイルL1を備えた、図1に示す、PLC信号ゲート回路1aにより、実現される。
【0100】
この第1誘導コイルL1は、図13に示すように、ドーナツ状のフェライト等の磁性体で形成されたコアに巻回された、中性線巻線L11、一方の相巻線L12、及び、他方の相巻線L13で構成されている。これらの中性線巻線L11、一方の相巻線L12、及び、他方の相巻線L13の各巻数は、同数である。
【0101】
この第1誘導コイルの3個の各巻線L11〜L13は、図1に示すように、単相3線式交流電力線の中性線(N)9の途中に中性線巻線L11が、単相3線式交流電力線の一方の相の電力線(例えば、T相)8の途中に一方の相巻線L12が、そして、単相3線式交流電力線の他方の相の電力線(例えば、R相)7の途中に他方の相巻線L13が、それぞれ、直列に挿入されている。尚、図1、及び、図13において、J1a、J1b、及び、J1cは、接続端子である。又、上記の第1誘導コイルは、この第1誘導コイルにおける一方の相巻線L12の巻線方向、及び、他方の相巻線L13の巻線方向は、中性線巻線L11の巻線方向と反対となるように構成されている。
【0102】
上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置のPLC信号ゲート回路1aでは、上記のように、第1誘導コイルL1における一方の相巻線の巻線方向、及び、他方の相巻線の巻線方向が、中性線巻線の巻線方向と反対となるように構成されている。これにより、次のような作用、効果を生じる。
【0103】
即ち、上述したように、単相3線式交流電力線の電力受給側における宅内PLCモデムを用いた電力線通信では、上述したPLC信号注入回路1bにより、単相3線式交流電力線の中性線(N)9と一方の相の電力線(例えば、T相)8との間に宅内PLCモデムのPLC信号が注入されると共に、該PLC信号が、同位相の状態で、単相3線式交流電力線の中性線(N)9と他方の相の電力線(例えば、R相)7との間にも注入される。
【0104】
そうすると、宅内PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルL1において、中性線(N)9、一方の相の電力線(例えば、T相)8、及び、他方の相の電力線(例えば、R相)7が同位相となり、第1誘導コイルL1内では、磁束を強め合うので、PLC信号の伝播が阻止される。
【0105】
従って、該単相3線式交流電力線の電力受給側における宅内PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルL1から単相3線式交流電力線の電力供給側へ伝播するのを阻止することができる。そのため、家庭内における単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭外で単相3線式交流電力線から雑音電波として放射されることを抑制することができる。
【0106】
又、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10が接続される単相3線式交流電力線では、図14に示すように、単相3線式交流電力線の電力供給側における一方の相の電力線(例えば、T相)18と他方の相の電力線(例えば、R相)17との間に接続された宅外PLCモデム2aと、該単相3線式交流電力線の電力受給側における一方の相の電力線(例えば、T相)8と他方の相の電力線(例えば、R相)7との間に接続された宅外PLCモデム2bとの相互間で、電力線通信が行われることもある。
【0107】
上述したように、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10のPLC信号ゲート回路1aでは、第1誘導コイルL1は、この第1誘導コイルL1における一方の相巻線L12の巻線方向、及び、他方の相巻線L13の巻線方向が、中性線巻線L11の巻線方向と反対となるように、構成されている。即ち、第1誘導コイルL1における単相3線式交流電力線の一方の相巻線L12の巻線方向と、他方の相巻線L13の巻線方向とは同じである。
【0108】
そうすると、宅外PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルL1において、単相3線式交流電力線の一方の相の電力線(例えば、T相)8と他方の相の電力線(例えば、R相)7が逆位相となり、第1誘導コイルL1内で磁束を打ち消し合うので、第1誘導コイルL1では、PLC信号が伝播される。
【0109】
従って、単相3線式交流電力線の電力供給側における宅外PLCモデムのPLC信号は、第1誘導コイルL1から該単相3線式交流電力線の電力受給側へ伝播することができる。そのため、宅外PLCモデムを用いた電力線通信では、家庭外の単相3線式交流電力線を流れるPLC信号が、家庭内の単相3線式交流電力線に流れ込むようにすることができる。
【0110】
又、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10は、単相3線式配電方式で家庭に配電される場合において、電力供給側と電力受給側との分岐点等に設けられる分電盤に、内蔵することができる。即ち、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10を備えた分電盤を、構成することができる。
【0111】
図15は、例として、このような分電盤21の構成を示したものである。この分電盤21は、ブレーカ21aと、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10とで構成されている。
【0112】
この分電盤21によれば、ブレーカ21aの機能と、単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10の機能とを、一箇所で実現することができ、これらの設置スペースの省力化を図ることができる。
【0113】
又、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10は、単相3線式配電方式で家庭等の電力受給側に配電される場合に、電力量の測定に用いられる電力計に内蔵することができる。即ち、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を備えた電力計を、構成することができる。
【0114】
図16は、例として、このような電力計22の構成を示したものである。この電力計22は、電力積算部22aと、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10とで構成されている。
【0115】
この電力計22によれば、電力積算部22aの機能と、上記の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置10の機能とを、一箇所で実現することができ、これらの設置スペースの省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置の構成図である。
【図2】本実施の形態における実験に用いられた実験用誘導コイルの構成図である。
【図3】本実施の形態における第1番目の実験に用いられた回路図(その1)である。
【図4】本実施の形態における第1番目の実験に用いられた回路図(その2)である。
【図5】本実施の形態における第1番目の実験に用いられた回路図(その3)である。
【図6】本実施の形態における第1番目の実験の結果を示したグラフである。
【図7】本実施の形態における第2番目の実験に用いられた回路図(その1)である。
【図8】本実施の形態における第2番目の実験に用いられた回路図(その2)である。
【図9】本実施の形態における第2番目の実験の結果を示したグラフである。
【図10】本実施の形態における第3番目の実験に用いられた回路図(その1)である。
【図11】本実施の形態における第3番目の実験に用いられた回路図(その2)である。
【図12】本実施の形態における第3番目の実験の結果を示したグラフである。
【図13】本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置の第1誘導コイルL1の構成を示した斜視図である。
【図14】本実施の形態における単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を用いた宅外PLCモデムによるPLC通信の構成図である。
【図15】本実施の形態における分電盤の構成図である。
【図16】本実施の形態における電力計の構成図である。
【符号の説明】
【0117】
1a PLC信号ゲート回路
1b PLC信号注入回路
2a 宅外PLCモデム
2b 宅外PLCモデム
3a 宅内PLCモデム
3b 宅内PLCモデム
3c 宅内PLCモデム
4 ケーブル
5 ケーブル
6 ケーブル
7 R相電力線(R相)
8 T相電力線(T相)
9 中性線(N)
10単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置
11 送信側ネットワークアナライザ
12 受信側ネットワークアナライザ
15 1次側電流方向
16 2次側電流方向
17 R相電力線(R相)
18 T相電力線(T相)
19 中性線(N)
21 分電盤
21a ブレーカ
22 電力計
22a 電力積算部
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
J1 接続端子
J1a 接続端子
J2 接続端子
J2a 接続端子
J3 接続端子
J3a 接続端子
J4 接続端子
J5 接続端子
J6 接続端子
J7 接続端子
J8 接続端子
L1 第1誘導コイル
L11 中性線巻線
L12 一方の相巻線
L13 他方の相巻線
L2 第2誘導コイル
L21 1次側巻線
L22 2次側巻線
L3 実験用誘導コイル
L31 1次側巻線
L32 2次側巻線
T1 1次側端子
T2 1次側端子
T3 2次側端子
T4 2次側端子
R1 抵抗
R2 抵抗
W1 電線
W2 電線
W3 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相3線式交流電力線における電力供給側と電力受給側との分岐点に挿入される第1誘導コイルを備えた単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置であって、
前記単相3線式交流電力線は、該単相3線式交流電力線の電力受給側における該単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に宅内PLCモデムのPLC信号が注入されると共に、該PLC信号が、同位相の状態で、前記単相3線式交流電力線の中性線と他方の相の電力線との間にも注入されるPLC信号相間注入が行われることにより、前記単相3線式交流電力線の電力受給側の中性線と一方の相又は他方の相との間に接続された宅内PLCモデム相互間の電力線通信が行われる交流電力線であり、
前記第1誘導コイルは、
該第1誘導コイルに設けられた3個の各巻線の内、前記単相3線式交流電力線の中性線の途中には中性線巻線が、前記単相3線式交流電力線の一方の相の電力線の途中には一方の相巻線が、そして、前記単相3線式交流電力線の他方の相の電力線の途中には他方の相巻線が、それぞれ、直列に挿入されていると共に、
前記一方の相巻線の巻線方向、及び、前記他方の相巻線の巻線方向が、前記中性線巻線の巻線方向と反対となるように構成されていることを特徴とする単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置。
【請求項2】
請求項1記載の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、
前記第1誘導コイルの中性線巻線、一方の相巻線、及び、他方の相巻線の各巻線数は、同数である単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、
前記単相3線式交流電力線は、該単相3線式交流電力線の電力供給側における一方の相の電力線と他方の相の電力線との間に接続された宅外PLCモデムと、該単相3線式交流電力線の電力受給側における一方の相の電力線と他方の相の電力線との間に接続された宅外PLCモデムとの相互間で、電力線通信が行われる交流電力線である単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、
前記単相3線式交流電力線の中性線と一方の相の電力線との間に、第2誘導コイルの1次側巻線でなる1次側回路が、前記宅内PLCモデムと共に、直列に接続されると共に、
前記単相3線式交流電力線の中性線と他方の相の電力線との間に、前記第2誘導コイルの1次側巻線に流れる電流と同相となる誘導電流が流れる前記第2誘導コイルの2次側巻線が少なくとも直列接続されてなる2次側回路が接続され、
前記PLC信号相間注入は、前記1次側回路と前記2次側回路とを用いて行われると共に、前記1次側回路と前記2次側回路とを備えている単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置。
【請求項5】
請求項4記載の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、
前記第2誘導コイルの1次側巻線の巻線数と2次側巻線の巻線数とは同数である単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置において、
前記2次側回路に、直列接続された抵抗とコンデンサとが含まれる単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を備えた分電盤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の単相3線式交流電力線用PLC信号ゲート装置を備えた電力計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−159302(P2009−159302A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335082(P2007−335082)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(502104295)株式会社プレミネット (4)
【Fターム(参考)】