説明

印刷インキ組成物

【課題】 乾燥性が良好でかつ流動性が良好な印刷インキ組成物を提供すること。
【解決手段】 ロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ組成物において、ロジン変性フェノール樹脂が、ロジン類、アルキル基を有するフェノール類を原料として得られるレゾール型フェノール樹脂およびポリオールを反応させて得られるものであって、インキ組成物中のフェノール成分の含有量が1〜8重量%の印刷インキ組成物または該インキ組成物に対し、さらにロジン系ポリエステル樹脂が加えられた印刷インキ組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキ組成物としては、ロジン変性フェノール樹脂が広く用いられているが、近年の高速印刷の要求に対応するために、より乾燥性が良好な印刷インキ組成物が求められるようになってきている。
【0003】
ところで、本出願人は、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を原料とせずしかもロジン変性フェノールに匹敵する優れた物性(高軟化点、高ゲル化能、高粘度、印刷インキ溶剤への高い溶解性等)を有する、印刷インキ用ポリエステルを提案している(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、上記印刷インキ用ポリエステルを用いた印刷インキは、フェノール変性ロジン樹脂を用いた印刷インキに比較して顔料の濡れ性が悪い、即ち流動性が悪いという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−139670号公報
【特許文献2】特開2001−233947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記課題、すなわち乾燥性が良好でかつ流動性が良好な印刷インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、印刷インキ組成物の乾燥性を改良する方法について、鋭意検討した結果、印刷インキ用樹脂組成物中に含有されるフェノール成分の含量により、印刷インキ組成物の乾燥性が影響を受けることを見出し、当該フェノール成分を特定の範囲にすることにより、印刷インキ組成物の乾燥性および流動性を良好とすることができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ組成物において、フェノール成分の含有量が1〜8重量%の印刷インキ組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷インキ組成物中のフェノール成分を従来公知のロジン変性フェノール樹脂より少なくできるため環境上好ましく、しかもロジン変性フェノール樹脂に比べ流動性を大きく損なうことなく、乾燥性が良好な印刷インキ組成物を提供でき、特に高速印刷が要求されるオフセット印刷用インキとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の印刷インキ組成物は、ロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ組成物であって、フェノール成分の含有量が1〜8重量%であることを特徴とするものである。本発明において、フェノール成分の含有量とは、印刷インキ組成物中に含まれるフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を意味する。フェノール成分の含有量が、8重量%を超える場合には、乾燥性が悪化するといった問題点があり、1重量%未満の場合には、流動性が悪化するため好ましくない。
【0010】
本発明の印刷インキ組成物に用いられる印刷インキ用樹脂としては、ロジン類(a)(以下、成分(a)という)、アルキル基を有するフェノール類を用いてなるレゾール型フェノール樹脂(b)(以下、成分(b)という)、およびポリオール(c)(以下、成分(c)という)を反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂(A)(以下、成分(A)という。)を必須成分とし、必要に応じて、成分(a)、脂肪酸類、脂肪族多塩基酸類、脂肪族モノアルコール類、脂肪族ジアルコール類、脂肪族モノアミン類、脂肪族モノエポキシ類、およびカルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物とからなるポリマーと当該ポリマー中のカルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物とを部分的に反応させてなる樹脂からなる群より選択される少なくとも1種(d)(以下、成分(d)という)、ポリオール成分(c)、ならびに極性基含有石油樹脂(e)(以下、成分(e)という)を反応させてなるロジン系ポリエステル樹脂(B)(以下、成分(B)という。)等の(a)成分以外の印刷インキ用樹脂を用いる。
【0011】
本発明で用いられる成分(a)としては、たとえばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;該天然ロジンから誘導される重合ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンを不均化または水素添加して得られる安定化ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジンなどがあげられる。なお、前記不飽和酸変性ロジンとは、例えばマレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、あるいはこれらに対応する酸変性重合ロジンがあげられ、当該不飽和酸変性ロジンは原料ロジン100重量部に対してそれぞれ対応する不飽和カルボン酸を、通常1〜30重量部程度用いて変性されたものである。
【0012】
本発明中の成分(A)の製造に用いられる成分(b)とは、フェノール類(P)とホルムアルデヒド(F)を、F/P(モル比)が通常1.0〜3.0程度の範囲内で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ触媒の存在下に付加・縮合して得られる各種公知の縮合物が挙げられる。また成分(b)は、必要によりこれを中和・水洗して得られるものを使用しうる。当該フェノール類としては、p−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ドデシルフェノール等のアルキルフェノール、石炭酸、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノール−Aなどが挙げられる。これらフェノール類の中でもアルキルフェノール類が好ましい。
【0013】
本発明に用いられる成分(c)としては、一分子中に2以上の水酸基を有する化合物であれば特に制限されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールエタンや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの炭素数10未満のポリオール類などが挙げられる。
【0014】
成分(A)を製造する際に用いる成分(b)の使用量は、得られる成分(A)の溶解性、軟化点、印刷適正を考慮して適宜決定される。通常は、成分(a)100重量部に対し、30〜120重量部程度、好ましくは40〜100重量部とされる。該使用量が30部に満たない場合には、目的とする高溶解性の成分(A)が得られない場合があり、また120重量部を越える場合には溶解性が良くなりすぎるため、セット、ミスチングが悪化する場合がある。
【0015】
成分(A)を製造する際の成分(c)の使用量は、得られる成分(A)の溶解性と密接に関係するため、通常は(A)100重量部に対して5〜13重量部程度用いればよい。5重量部に満たない場合や13重量部を越える場合には、樹脂の溶解性やインキの耐乳化性が低下する傾向にある。
【0016】
成分(A)を製造するには、通常公知のロジン変性フェノール樹脂の製造方法を採用することができる。具体的には、例えば、成分(a)を180〜260℃程度まで加熱し、成分(c)を添加してエステル化反応させ、180〜230℃程度で成分(b)を滴下しながら1〜10時間程度反応させる方法などが挙げられる。本発明の成分(A)の軟化点は通常120℃以上、好ましくは120〜200℃程度とされる。120℃未満の場合には乾燥性、セットが顕著に低下する場合がある。
【0017】
本発明の成分(B)の製造に用いられる成分(d)としては、前記(a)〜(c)成分および後述する(e)成分以外の脂肪酸類、脂肪族多塩基酸類、脂肪族モノアルコール類、脂肪族ジアルコール類、脂肪族モノアミン類、脂肪族モノエポキシ類、更にはカルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物とからなるポリマー、当該ポリマー中のカルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物とを部分的に反応させて得られる樹脂が挙げられる。成分(d)としては、これらからなる群より選ばれる少なくとも1種が使用される。
【0018】
前記脂肪酸類および脂肪族多塩基酸類としては全炭素数10〜40程度のものが好ましく使用され、直鎖状、分岐鎖状または環状であってよい脂肪酸、アルキルコハク酸およびその無水物ならびにこれらに対応するアルケニルコハク酸およびその無水物、α,ω−ジカルボン酸類、不飽和カルボン酸付加高級脂肪酸類、ダイマー酸等が挙げられ、具体的にはカプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、カプロレイン酸、リンデル酸、フィゼテリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、リノール酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ニシン酸、ステアロール酸、モノマー酸等の直鎖状脂肪酸;イソ酸、ツベルクロステアリン酸等の分岐状脂肪酸;マルバリン酸、ショールムーグリン酸等の環状脂肪酸;直鎖状、分岐鎖状、環状であってよいα−オレフィンオリゴマーまたはエチレン、プロピレンなどをオリゴマー化してなる直鎖状、分岐鎖状、環状の内部オレフィンオリゴマーとマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和ジカルボン酸類とをエン付加反応等の付加反応をさせることで得られる化合物、および当該化合物の水素化物;オクテニルコハク酸、オクテニル無水コハク酸、デセニルコハク酸、デセニル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、テトラデセニルコハク酸、テトラデセニル無水コハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘキサデセニル無水コハク酸、オクタデセニルコハク酸、オクタデセニル無水コハク酸、エイコセニルコハク酸、エイコセニル無水コハク酸、メチルウンデセニルコハク酸、メチルウンデセニル無水コハク酸、アリルシクロペンテニルコハク酸、アリルシクロペンテニル無水コハク酸、オクチルコハク酸、オクチル無水コハク酸、デシルコハク酸、デシル無水コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデシル無水コハク酸、テトラデシルコハク酸、テトラデシル無水コハク酸、ヘキサデシルコハク酸、ヘキサデシル無水コハク酸、オクタデシルコハク酸、オクタデシル無水コハク酸、メチルウンデシルコハク酸、メチルウンデシル無水コハク酸、アリルシクロペンチルコハク酸、アリルシクロペンチル無水コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、ヘキサコサン二酸、オクタコサン二酸、トリアコンタン二酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和カルボン酸類と桐油、アマニ油、サンフラワー油、大豆油、脱水ヒマシ油などの半乾性油または乾性油から得られる高級脂肪酸とを付加反応させることにより得られる化合物等;牛脂系オレイン酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸などの不飽和脂肪酸を、触媒としてモンモリロナイト系白土などを用い、二量化したダイマー酸等を例示できる。なお、該ダイマー酸の市販品は、炭素数34のダイマー酸と副生成物である炭素数54のトリマー酸を含有したものとして容易に入手できる。
【0019】
前記脂肪族モノアルコール類、脂肪族ジアルコール類、脂肪族モノアミン類、脂肪族モノエポキシ類としては、炭素数が10〜40程度の脂肪族モノアルコール類、前記成分(c)以外の炭素数が10〜40程度の脂肪族ジアルコール類、炭素数が10〜40程度の脂肪族モノアミン類、炭素数が10〜40程度の脂肪族モノエポキシ類が挙げられる。炭素数が10〜40程度の脂肪族モノアルコール類としては、例えば、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール、オレイルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソステアリルアルコール、ゲラニオール、ロジンアルコール、ビサボロール、ラノリンアルコール、デカンジオールなどが、前記成分(c)以外の炭素数が10〜40程度の脂肪族ジアルコール類としては、例えば、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、デセンジオール、ドデセンジオール、テトラデセンジオール、ヘキサデセンジオール、オクタデセンジオール、ラノリンアルコール、ダイマー酸を水添したジオールなどが、炭素数が10〜40程度の脂肪族モノアミン類としては、例えばデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、牛脂アルキルアミン、大豆アルキルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオクタデセニルアミンなどが、炭素数が10〜40程度の脂肪族モノエポキシ類としては、例えば1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、エチルヘキシルグリシジルエーテルなどを例示できる。
【0020】
成分(d)として用いるカルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物とからなるポリマーの製造に用いられるカルボン酸類としては、たとえば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸、アクリル酸、メタクリル酸などを単独、または2種以上を併用することができ、その使用量は成分(d)を適正な分子量としうる範囲内で任意に変えることができる。また、当該疎水性の重合性不飽和化合物としては、(1)炭素数2〜50程度の脂肪族不飽和炭化水素モノマー、(2)炭素数5〜50程度の脂環族不飽和炭化水素モノマー、(3)炭素数8〜50程度の芳香族炭化水素モノマー、(4)ロジン類、(5)高級不飽和脂肪酸、(6)不飽和油などを例示できる。前記(1)の化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−n−ブテン、ジプロピレン、ジイソブチレン、トリプロピレン、トリブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−テトラトリエアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−オクタトリアコンテン、1−テトラコンテンなどのα−オレフィンや、ブタジエン、不飽和ポリオレフィンなどが挙げられる。前記(2)の化合物の具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、アリルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。前記(3)の化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。前記(4)の化合物の具体例としては、成分(a)のなかでも分子内に炭素―炭素不飽和結合を有する化合物が相当する。前記(5)および(6)の化合物の具体例としては、桐油、アマニ油、サフラワー油、大豆油、脱水ヒマシ油などの半乾性油または乾性油、またはこれらから得られる高級不飽和脂肪酸が挙げられる。前記(1)〜(6)の化合物は単独で、または2種以上を併用することができる。また、本発明の特徴を損なわない範囲で他のモノマーや化合物を併用してもよく、その使用量は本発明のポリエステル樹脂を適正な分子量としうる範囲内で任意に変えることができる。カルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物とからなるポリマー中のカルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物とを、当該ポリマーに対し当該疎水性化合物を部分的に反応させてなる樹脂の製造に用いられる前記カルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物としては、(i)炭素数6〜50程度の脂肪族モノアルコール、(ii)炭素数6〜50程度の脂肪族ジアルコール、(iii)炭素数6〜50程度の脂肪族モノアミン、(iv)炭素数6〜50程度の脂肪族モノエポキシなどが挙げられる。前記(i)の化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状であってよく、その構造は特に制限されない。具体例としては、ヘキサノール、オクタノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール、オレイルアルコール、2−エチルヘキサノール、イソトリデシルアルコール、イソステアリルアルコール、ゲラニオール、ロジンアルコール、ビサボロール、ラノリンアルコールなどが挙げられる。前記(ii)の化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状であってよく、その構造は特に制限されない。具体例としては、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、オクタデカンジオール、デセンジオール、ドデセンジオール、テトラデセンジオール、ヘキサデセンジオール、オクタデセンジオール、ラノリンアルコール、ダイマー酸を水添したジオールなどあげられる。前記(iii)の化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状であってよく、その構造は特に制限されない。具体例としては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、牛脂アルキルアミン、大豆アルキルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオクタデセニルアミンなどが挙げられる。前記(iv)の化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状であってよく、その構造は特に制限されない。具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、エチルヘキシルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0021】
前記ポリマーは、前記したカルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物を原料として、公知の重合反応、たとえばラジカル重合反応、熱重合反応、イオン重合反応により得ることができる。これらの反応を行うに際し、開始剤や触媒は使用しなくてもよいが、ラジカル重合反応の場合にはアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過硫酸カリウム、過酸化水素水などの開始剤を使用できる。また、カチオン重合の場合には硫酸などのプロトン酸や、三弗化ホウ素、塩化アルミニウムなどのルイス酸と水、アルコール、エーテルからなる共触媒等、各種公知の触媒を使用できる。また、アニオン重合の場合には、NaR、RMgX、ROK(Rはアルキル基、Xはハロゲン原子を表す)、ピリジン、配位アニオン開始剤としてチーグラーナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの開始剤を使用できる。これら開始剤や触媒は前記カルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物の総重量に対し0.01〜10重量%程度使用できる。また、当該反応の際には、特に溶媒を使用する必要性はないが、使用する場合には各種公知のものを使用できる。溶媒としては、重合反応を行う温度で原料を十分に溶解でき、反応生成物を溶解できるものが好ましく使用され、特に前記不飽和カルボン酸類に対し不活性であって重合反応を大きく阻害しないものが好ましく使用される。溶媒の具体例としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの脂肪族エステル等が挙げられる。また、反応温度は開始剤や触媒の種類により最適温度を決定すればよいが、通常室温〜200℃程度である。
【0022】
また、前記ポリマー中のカルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物と当該ポリマーとを部分的に反応させてなる樹脂は、該ポリマー中のカルボキシル基の20〜80%程度を前述した疎水性化合物と反応させて得られる変性物であり、該ポリマーの疎水性が高い場合は変性率を低くするのが好ましく、疎水性が低い場合は変性率を高くするのが好ましい。また、前記成分(d)の構成成分であるカルボン酸類と、当該カルボン酸類に対し反応性を有する疎水性化合物を予めエステル化したものを、当該樹脂の反応物として使用することも可能である。
【0023】
このようにして得られた前記樹脂の重量平均分子量は通常2,000〜30,000程度とするのが好ましく、2,000より小さい場合には疎水基を集中させることによる本発明のポリエステル樹脂の溶解性を十分に向上させることが困難となり、30,000より大きい場合には当該ポリエステル樹脂がゲル化したり高粘度化するため反応の制御が困難となる傾向にある。
【0024】
本発明の成分(B)の製造に用いられる成分(e)としては、分子内に二重結合を有する石油樹脂にカルボキシル基や水酸基等の極性基を付与したものが該当する。当該分子内に二重結合を有する石油樹脂としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのDCPD系原料から得られるDCPD系石油樹脂、ペンテン、シクロペンテン、ペンタジエン、イソプレンなどのC5系原料から得られるC5系石油樹脂、メチルブテン、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレンなどのC9系原料から得られるC9系石油樹脂、前記DCPD系原料とC5系原料からなる共重合石油樹脂、DCPD系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂、C5系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂、DCPD系原料とC5系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂などが挙げられ、通常これらの樹脂は無触媒あるいは触媒(たとえばカチオン重合による場合はフリーデルクラフツ型触媒など)の存在の下で製造される。これらの中でも特に極性基を容易に付与でき、所望の軟化点に調整し易いことからDCPD系原料を成分とする石油樹脂が好ましい。具体的にはDCPD系石油樹脂、DCPC系原料とC5系原料からなる共重合石油樹脂、DCPD系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂、DCPD系原料とC5系原料とC9系原料からなる共重合石油樹脂が好ましい。
【0025】
前記した各種石油樹脂へ極性基を導入する方法としては、公知の方法を採用することができる。たとえば極性基としてカルボキシル基を導入する場合には、前記各種の石油樹脂とマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和モノカルボン酸類等の不飽和カルボン酸類とを、公知のラジカル反応開始剤の存在下でラジカル共重合反応させる方法や、前記石油樹脂と前記不飽和カルボン酸類とをエン反応させる方法等が採用できる。なかでもラジカル共重合反応によれば、本発明の印刷インキの耐ミスチング性が向上するため好ましい。また、不飽和カルボン酸類の使用量としては、本発明のポリエステル樹脂の分子量を所望の範囲に調整し易いことから、原料となる前記石油樹脂100重量部に対して1〜15重量部程度、好ましくは1〜12重量部を使用する。
【0026】
また、極性基として例えば水酸基を付与する場合にもその方法は特に制限されるものではなく、たとえば前記した石油樹脂が有する二重結合に水を付加したり、アリルアルコール等の分子内に二重結合と水酸基を有する化合物を熱重合させたりする方法が挙げられる。また、成分(e)として水酸基を含有するものに前記不飽和カルボン酸類をエン付加させたものやラジカル反応開始剤の存在下ラジカル共重合させたものは、本発明のポリエステル樹脂を容易に高分子量化できるため好ましく使用される。特にラジカル共重合によるものは本発明の印刷インキの耐ミスチング性を向上できるという利点があり、この場合は成分(e)中の水酸基の当量数より少ないカルボキシル基の当量数となる割合で不飽和カルボン酸類を反応させればよい。
【0027】
なお、成分(e)を製造する際に各種公知の重合性不飽和炭化水素モノマーを共重合させることもできる。当該モノマーとしては、直鎖状脂肪族不飽和炭化水素モノマー、分岐鎖状脂肪族不飽和炭化水素モノマー、環状脂肪族不飽和炭化水素モノマーなどを使用でき、具体的には1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−テトラトリエアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン、1−オクタトリアコンテン、1−テトラコンテン、ミルセン、ポリブテン(3〜10量体)、ピネン、リモネン等を例示できる。これらは単独で使用、または2種以上を併用できる。当該重合性不飽和炭化水素モノマーは本発明の目的を逸脱しない程度において特に制限なく使用できるが、成分(e)の反応率を高める目的から前記不飽和カルボン酸類のモル数より少ない範囲で使用するのが好ましい。なお成分(e)の重量平均分子量は1,000〜30,000程度とするのが好ましい。重量平均分子量を1,000以上とすることで、本発明のポリエステル樹脂を容易に所望の分子量としやすく、30,000以下とすることで、成分(e)と当該ポリエステル樹脂を構成する他の成分との反応を容易に制御できるようになる。
【0028】
なお、成分(e)は1種を単独で使用しても良く、2種以上の混合物として使用してもよい。また成分(e)としては、本発明中の成分(B)を高分子量化する目的から分子内に2個以上の極性基を持つものが特に好ましく使用される。
当該成分(B)は、前記成分(a)、成分(c)及び成分(d)、必要に応じて成分(e)を反応させて得られる。
【0029】
成分(B)を製造する際に用いる成分(a)のなかでは、成分(B)を高分子量化できることから、分子内に2個以上のカルボキシル基を有するロジン種を含有するものが好ましく、特に高分子量化に加え該ポリエステル樹脂のインキ用溶剤への溶解性や軟化点を高くすることができるため重合ロジンおよび/または不飽和酸変性重合ロジンを含有するものを特に好ましく使用できる。後者の場合には、当該重合ロジンおよび/または不飽和酸変性重合ロジンを成分(a)全量の40重量%以上の範囲で使用するのがよい。
【0030】
成分(B)を製造する際に用いる成分(a)の使用量は特に限定されないが、成分(a)、成分(d)〜成分(e)の合計仕込み量に対し通常10〜74重量%程度の範囲とすることが好ましい。成分(a)の仕込み量を10重量%以上とすることで本発明のポリエステル樹脂の分子量を所望の分子量とすることができる。また、74重量%以下とすることで当該ポリエステル樹脂の溶剤への溶解性を高め、該樹脂を用いた印刷インキの乳化性を向上させることができる。
【0031】
成分(B)を製造する際に用いる成分(c)のなかでは、成分(B)の軟化点、分子量、また本発明の印刷インキ組成物のミスチングや乳化率を制御し易いことから、本発明中の成分(B)を製造する場合、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなど当該分子の最長炭素鎖における炭素数が4以下のものである3価アルコールや、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタンなど当該分子の最長炭素鎖における炭素数が4以下のものである4価アルコールを使用するのが好ましい。
【0032】
成分(B)を製造する際に用いる成分(c)の使用量は特に限定されないが、成分(B)を所望の分子量とし、本発明の印刷インキの乳化特性を適切なものとするため、成分(a)、成分(c)〜成分(e)の各成分中のうち、対応する分に含まれる全水酸基当量数(OH)と全カルボキシル基当量数(COOH)の割合を、通常当量比OH/COOHが0.5〜1程度となるよう使用するのが好ましい。なお、OH/COOH(当量比)の計算においては、前記成分(d)として脂肪族モノアミン類を使用する場合には、2級アミンは1価とみなし、また1級アミンは2価とみなし、当該アミノ基の当量数=当該OHの当量数とし、当該OHの当量数を含めてOHの合計当量数とする。また、脂肪族モノエポキシ類を使用する場合は2価アルコールとみなし、当該OHの当量数を含めて合計当量数とする。また、成分(a)、成分(c)〜成分(e)の合計仕込み量に対する成分(c)の仕込み量は特に制限されないが、通常3〜10重量%程度が好ましい。成分(c)が3重量%より少ない場合は本発明のポリエステル樹脂を所望の分子量とし難くなる傾向にあり、また10重量%より多い場合には本発明のインキの乳化特性を適切とし難くなる傾向にある。
【0033】
成分(B)を製造する際に用いる成分(d)の使用量は特に限定されないが、成分(a)、成分(c)〜成分(e)の合計仕込み量に対し、3〜10重量%程度が好ましい。成分(d)が3重量%より少ない場合では本発明のポリエステル樹脂の溶剤に対する溶解性が低くなる傾向にあり、また成分が10重量%より多い場合では所望の分子量とし難い傾向にある。
【0034】
成分(B)を製造する際に成分(e)を使用する場合の、成分(e)の使用量は特に限定されないが、成分(a)、成分(c)〜成分(e)の合計仕込み量に対し、通常17〜58重量%程度とするのが好ましい。成分(e)の使用量が17重量%より小さい場合は本発明の乳化特性を適性とし難い傾向にあり、58重量%より大きい場合は本発明のポリエステル樹脂を所望の分子量とすることが困難となる傾向にある。
【0035】
本発明に用いられる成分(B)は、前記成分(a)、成分(c)〜成分(e)を原料として、各種公知のポリエステル樹脂の製造方法により得られる。反応に際し、触媒や反応温度等の反応条件は特に制限されない。たとえば成分(a)、成分(c)〜成分(e)を所定量ずつ反応装置に仕込み、必要に応じて各種公知の酸性または塩基性触媒の存在下、100〜300℃程度の温度範囲にて1〜20時間程度反応させればよい。前記触媒としては、塩酸、硫酸などの鉱酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの金属の水酸化物、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛などの酢酸塩が挙げられる。また、本発明のポリエステル樹脂を所望の分子量および軟化点に調節する目的から、エステル化反応前および/またはエステル化反応の途中でエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、イソフタル酸、テレフタル酸などの架橋剤を任意の量で添加することができる。また、印刷インキの印刷面に耐水性を付与する観点から、ケイ素原子の置換基にヒドロキシアルキルや水素原子を有するポリオルガノシロキサンを添加することもできる。
【0036】
前記方法で得られた成分(B)は高軟化点を有することを特徴とする。軟化点は通常120〜200℃程度であり、好ましくは140〜200℃程度である(JIS K5601に準拠した値)。軟化点を120℃以上とすることで本発明の印刷インキの乾燥性やセット性を良好とすることができ、また、200℃以下とすることでインキ用溶剤への十分な溶解性を保つことができる。また、成分(B)の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算値)は、30,000〜400,000程度、好ましくは50,000〜200,000の範囲とされる。30,000より小さい場合は所望の粘度が得られにくくなり、400,000より大きい場合はインキ用溶剤へ樹脂を溶解させたときに不溶物が発生しやすくなる傾向にある。また、当該成分(B)の酸価は5〜30mgKOH/g程度とすることが好ましい。酸価を5mgKOH/g以上とすることにより、ゲル化剤との適度な反応点を残し、30mgKOH/g以下とすることにより印刷インキに適度な乳化適正を与えるため好ましい。また、当該成分(B)は、33重量%アマニ油粘度がコーン・アンド・プレート型粘度計測定値で4〜15Pa・s(25℃)程度と高粘度である(33重量%アマニ油粘度とは、得られたポリエステル樹脂とアマニ油を1対2の重量比で加熱混合したものを25℃においてコーン・アンド・プレート型粘度計(日本レオロジー機器(株)製)により測定した際の粘度である。)
【0037】
本発明の印刷インキ組成物は、前記成分(A)を含有するものであるが、印刷インキ組成物中のフェノール成分が1〜8重量%となるように調製する必要がある。フェノール成分を1〜8重量%に調製するには、成分(A)に後述する添加物を加えて当該範囲にする(すなわち、成分(A)中に含まれるフェノール成分が当該範囲になるようにインキ組成物を構成する成分で希釈する)方法の他、成分(A)と成分(A)以外のフェノール成分を含有しない印刷インキ用樹脂を併用しさらに添加物を加えて当該範囲にする方法が挙げられる。併用する印刷インキ用樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、前記成分(B)、各種公知の石油樹脂、アルキド樹脂、ロジンエステル、脂肪酸エステルなどを単独でまたは数種を併用することができるが、前記成分(B)を用いることが、乾燥性、流動性の点から特に好ましい。
【0038】
成分(A)以外の印刷インキ用樹脂を併用する際の各成分の使用量としては、通常成分(A)4〜29重量部に対し、成分(A)以外の印刷インキ用樹脂を12〜25重量部程度用いることが好ましい。成分(A)以外の印刷インキ用樹脂として、特に成分(B)を併用する際の各成分の使用量は、通常成分(A)4〜29重量部に対し、成分(B)11〜36重量部程度、好ましくは成分(A)9〜19重量部に対し、成分(B)21〜31重量部である。成分(B)を11重量部以上用いることにより、乾燥性が向上するため好ましく、成分(B)を36重量部以下用いることにより、流動性が良好となるため好ましい。
【0039】
本発明の印刷インキ組成物は、前記方法で得られた成分(A)および必要に応じて成分(A)以外の印刷インキ用樹脂に、例えば、植物油や必要に応じて植物油以外の印刷インキ用溶剤(以後、植物油および植物油以外の印刷インキ用溶剤をまとめて単にインキ用溶剤という場合がある。)、ゲル化剤などを配合し、これを適宜加熱溶解や化学反応させて得られるゲルワニスを含有するものである。なお、本発明中の成分(A)および/または成分(B)を製造する際に予めエステル反応を阻害しないようなインキ用溶剤、ゲル化剤などを配合していてもよい。
【0040】
前記植物油としては各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的にはアマニ油、桐油またはこれらの重合油、サフラワー油、脱水ヒマシ油、大豆油などがあげられるが、印刷物の乾燥性の点から不飽和結合を有する植物油が好ましく、近年の環境対策面から考えると大豆油が好ましい。
【0041】
前記ゲル化剤としては、オクチル酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムジプロポキシドモノアセチルアセテートなど公知のものが挙げられる。
【0042】
前記植物油以外の印刷インキ用溶剤としては、インキ用途に用いられる石油系溶剤であれば特に制限されず、必要に応じて各種公知のものを使用できる。具体的には新日本石油(株)製0号ソルベント、新日本石油(株)製AF4号ソルベント、新日本石油(株)製AF5号ソルベント、新日本石油(株)製AF6号ソルベント、新日本石油石(株)製AF7号ソルベント、日本石油(株)製0号ソルベント、日本石油(株)製4号ソルベント、日本石油(株)製5号ソルベント、日本石油(株)製6号ソルベント、日本石油石(株)製7号ソルベントなどの市販品があげられる。
【0043】
本発明のインキ組成物は、前記成分(A)および必要に応じて用いる成分(A)以外の印刷インキ用樹脂からなる印刷インキ用樹脂を15〜40重量%程度、インキ用溶剤を34〜54重量%程度、ゲル化剤を0〜1重量%程度含むものである。
【0044】
本発明の印刷インキ組成物は、印刷インキ用樹脂、顔料(黄色、紅色、藍色または黒色など)、インキ用溶剤を含有するものであるが、必要に応じてインキ流動性やインキ表面皮膜を改善するための界面活性剤、ワックス、ドライヤーなどの各種添加剤を必要に応じて配合して得られる混合物を、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミルといった公知のインキ製造装置を用いて混練し、適切なインキ恒数に調節して得られる。
【0045】
このようにして得られた本発明のインキは、特にオフセット枚葉インキ(枚葉インキ)、オフセット輪転インキ(オフ輪インキ)、水なしオフセットインキ等のオフセット印刷インキとして特に賞用されるほか、新聞インキにも好適に使用される。
【実施例】
【0046】
以下、製造例、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明を限定するものではない。なお、以下「部」とは重量部を示す。
【0047】
製造例1:(成分(a)、不飽和酸変性ロジンの製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計を備えた反応容器に、ガムロジン1,000部を仕込み、これを窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融した。ついで、フマル酸20部を仕込み、攪拌下に230℃まで昇温して1時間保温した後、冷却して不飽和酸変性ロジンの固形樹脂を得た。樹脂酸価は342.0(JIS K5601に準ずる。以下、同様)であった。
【0048】
製造例2:(成分(b)、70%レゾール型ノニルフェノールトルエン溶液の製造)
製造例1と同様の反応容器に、ノニルフェノール1,000部、パラホルムアルデヒド270部および水1,000部を仕込み、攪拌下に50℃まで昇温した。そして50℃において水酸化ナトリウム100部を仕込み、冷却しながら90℃まで徐々に昇温した後、2.5時間保温し、硫酸を滴下してpHを6付近に調整した。その後、トルエン150部を加え、ホルムアルデヒドなどを含んだ水層部部を除去し、冷却してレゾール型ノニルフェノールの70%トルエン溶液を得た。
【0049】
製造例3:(成分(e)、極性基含有石油樹脂の製造)
製造例1と同様の反応容器に、DCPD系石油樹脂(商品名 クイントン1325、日本ゼオン(株)製)1,000部、トルエン100部を仕込み、これを窒素雰囲気下に攪拌しながら150℃まで昇温して溶融した。ついで、無水マレイン酸70部を仕込み、ジ−t−ブチルパーオキサイド(商品名 パーブチルD、日本油脂(株)製)6部を30分間かけて連続的に添加し、150〜160℃で2.5時間保温し反応させた。保温後、キシレンを除去するため反応系を200℃まで昇温し、0.02MPaで10分間減圧した後、冷却して、理論酸価が75.0、重量平均分子量が5,000の固形樹脂を得た。なお、当該理論酸価は使用原料のカルボキシル基当量数から算出したものである。また、当該重量平均分子量は、THFを溶媒として、東ソー(株)製ゲルパーメーションクロマトグラフィー(商品名 HLC−8020)および東ソー(株)製カラム(商品名 TSK−GEL)を用いて測定したポリスチレン換算値をいう(以下、同様)。
【0050】
製造例4:(成分(A)の製造)
実施例1と同様の反応容器に、成分(a)としてガムロジン552部を仕込み、これを窒素雰囲気下に攪拌しながら230℃まで昇温して溶融した。ついで、成分(c)としてペンタエリスリトール52部、および酸化亜鉛2部を添加し、攪拌下に260度まで昇温し、酸価が20以下となるまで反応させた。ついでこれを230℃まで冷却した後保温状態におき、成分(b)として製造例2で得たレゾール型ノニルフェノールの70%キシレン溶液394部(固形分276部)を230〜260℃の温度範囲内で4時間かけて系内へ滴下した。滴下終了後、反応系の33重量%アマニ油粘度が8.0Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧し、冷却して固形樹脂を得た。こうして得られたロジン変性フェノール樹脂のトレランスは1.4g/g、酸価は16.8、軟化点は168℃、重量平均分子量は92,000であった。
【0051】
製造例5: (成分(B)の製造)
製造例1と同様の反応容器に、成分(a)として重合ロジン(商品名 シルバタック140、シルバケム社製、酸価140)355部および製造例1で得た不飽和酸変性ロジン45部、成分(e)として製造例3で得た極性基含有石油樹脂を424部、成分(d)として炭素数が18のアルケニル無水コハク酸80部を仕込み、これを窒素雰囲気下に攪拌しながら180℃まで昇温して溶融した。ついで、成分(c)としてペンタエリスリトール29部およびグリセリン29部を添加して攪拌下に260℃まで昇温し、酸価が30以下となったらパラトルエンスルホン酸1部を仕込み、酸価が20以下となるまで反応させた。その後、反応系を33重量%アマニ油粘度が8.0Pa・sとなるよう調整し、0.02MPaで10分間減圧、冷却して固形ポリエステル樹脂を得た。こうして得られたポリエステル樹脂の脂肪族炭化水素系溶剤(商品名 0号ソルベント、新日本石油(株)製)溶液のトレランスは1.3g/g、酸価は11.2、軟化点は171℃、重量平均分子量は165,000であった
【0052】
実施例1
(ワニスの調整)
製造例4で得られた成分(A)4.0部、製造例5で得られた成分(B)36.0部、大豆油60.0部を180℃にて30分混合溶解しワニスを得た。
【0053】
実施例2
製造例4で得られた成分(A)19.0部、製造例5で得られた成分(B)21.0部使用した他は同様の手順によりワニスを得た。
【0054】
実施例3
製造例4で得られた成分(A)29.0部、製造例5で得られた成分(B)11.0部使用した他は同様の手順によりワニスを得た。
【0055】
実施例4
製造例4で得られた成分(A)25.0部、製造例5で得られた成分(B)19.0部、大豆油30部、AF−6 26部使用した他は同様の手順によりワニスを得た。
【0056】
比較例1
製造例5で得られた成分(B)40.0部使用した他は同様の手順によりワニスを得た。
【0057】
比較例2
製造例4で得られた成分(A)32.0部、製造例5で得られた成分(B)8.0部使用した他は同様の手順によりゲルワニスを得た。
【0058】
比較例3
製造例4で得られた成分(A)35.0部、製造例5で得られた成分(B)5.0部使用した他は同様の手順によりゲルワニスを得た。
【0059】
比較例4
製造例4で得られた成分(A)40.0部使用した他は同様の手順によりワニスを得た。
【0060】
比較例5
製造例4で得られた成分(A)34.0部、製造例5で得られた成分(B)10.0部、大豆油30部、AF−6 26部使用した他は同様の手順によりワニスを得た。
【0061】
(ゲルワニスの調整)
前記方法で得た各ワニスにアルミキレート(商品名 ALCH、川研ファインケミカル(株)製)0.2〜1.5部を加え、190℃まで昇温し、一時間保温してゲルワニスを得た。
【0062】
(インキの調整)
前記方法で得た各ゲルワニスを用い、表1に示した配合割合で三本ロールミルを使用して練肉し、印刷インキを調整した。
【0063】
【表1】

上記配合に基づいてインキのタック値が9.0±0.5、フロー値が36.0±1.0となるよう適宜調整した。
【0064】
(インキの性能試験)
乾燥性:インキ0.27mlをRIテスター(石川島産業機械(株)製)にて硫酸紙に展色した後、展色面に硫酸紙を重ねてC型乾燥試験機((株)東洋精機製作所製)にあて紙用硫酸紙が外側になるように回転ドラムに巻き付けた。おもりおよび押し圧歯車をあて紙用硫酸紙の上に静かに降ろし、ドラムを回転させ、押し圧歯車の歯形がほとんど移らなくなった時間を乾燥時間とする。乾燥性は数値が小さいほど良好であることを示す。結果を表2に示す。
ガラス板流動性(インキ流動性):25℃に空調された室内においてインキ1.3mlを値平面と60°の角度をなすガラス板の上端に置き、15分に流動した距離を測定した。数値が大きいほど流動性が良好であることを示す。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2の結果よりフェノール重量が1〜8%の印刷インキ組成物 (実施例1〜4)は、フェノール重量が8%以上の印刷インキ組成物(比較例2〜4)より乾燥性が早いことがわかり、また、表中のフェノール重量が0%の印刷インキ組成物(比較例1)より流動性が良いことがわかる。また、実施例4と比較例5から、石油溶剤を使用した印刷インキ組成物においても、フェノール重量が1〜8%では乾燥性が良いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキ組成物において、フェノール成分の含有量が1〜8重量%の印刷インキ組成物。
【請求項2】
ロジン変性フェノール樹脂が、ロジン類(a)、アルキル基を有するフェノール類を原料として得られるレゾール型フェノール樹脂(b)およびポリオール(c)を反応させて得られるロジン変性フェノール樹脂(A)を含有することを特徴とする請求項1に記載の印刷インキ組成物。
【請求項3】
ロジン類(a)、脂肪酸類、脂肪族多塩基酸、脂肪族モノアルコール類、脂肪族ジアルコール類、脂肪族モノアミン類、脂肪族モノエポキシ類、およびカルボン酸類と疎水性の重合性不飽和化合物からなるポリマーと当該ポリマー中のカルボン酸に対し反応性を有する疎水性化合物とを部分的に反応させてなる樹脂からなる群より少なくとも一種(d)、ポリオール(c)、ならびに任意に使用する極性基含有石油樹脂(e)を反応させて得られるロジン系ポリエステル樹脂(B)を含有する請求項1または2に記載の印刷インキ組成物。
【請求項4】
ロジン系ポリエステル樹脂(B)の酸価が5〜30である請求項3に記載の印刷インキ組成物。
【請求項5】
ロジン系ポリエステル樹脂(B)の重量平均分子量が30,000〜400,000である請求項3または4に記載の印刷インキ組成物。
【請求項6】
ロジン系ポリエステル樹脂(B)の軟化点が120℃〜200℃である請求項3〜5のいずれかに記載の印刷インキ組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の印刷インキ組成物を含有する枚葉インキ組成物。

【公開番号】特開2006−273979(P2006−273979A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93830(P2005−93830)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】