説明

印刷インク

本発明は、各種の印刷工程によって利用できる水性紫外線硬化印刷インクに関するものである。本発明は、(i)水と、(ii)ポリマー主鎖に沿って複数の1,2−および/または1,3−ジオール基を有し、それに結合した側鎖光架橋性基を有するポリマーとを含むインクを提供する。ポリマーは典型的に、ポリビニルアルコールであり、側鎖光架橋性基の例はスチリルピリジニウムおよびアクリレート基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インクに、特に、スクリーン印刷、フレキソ印刷およびインクジェット印刷等の各種の印刷工程によって適用され得る水性紫外線硬化印刷インクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶剤ベースインク、水性インクおよび放射硬化インク等の各種のインク技術が当分野で既知である。
【0003】
溶剤ベースインクは溶剤の蒸発によって乾燥し、したがって典型的には結合剤、着色剤を含有し、液相の主成分として低沸点液体を包含する。1つの一般的なタイプでは、この液体は水である−たとえばHenry R. KangによるJournal of Imaging Science, 35(3), pages 179-181(1991)の論文を参照。別の一般的なタイプでは、液体は低沸点溶剤または溶剤の混合物である−たとえばEP 0 314 403はもちろんのこと、EP 0 424 714およびWO 01/36546も参照。
【0004】
別のタイプのインクは、光開始剤の存在下で、一般に紫外線による照射によって重合する不飽和有機モノマーを含有する。その場合、印刷物は、それを硬化または固化させるために放射に暴露され、これは適度な温度においては溶剤の蒸発よりもさらに迅速な工程である。そのような系の例は、EP 0540 203、US 5,270, 368、WO 97/31071およびJP 2000−2220526に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線硬化インクの1つの欠点は、4色プロセス印刷で使用するときに印刷物に大きいインク塗り厚を与えることであり、したがって印刷品質を低下させることがある。
【0006】
UV技術の利点を維持しながら、インク膜の厚さを縮小して、印刷品質を向上させるために、水性紫外線硬化インクを使用できる。そのような系の例は、US 5,623, 001およびGB 2 256 874に見出される。
【0007】
実際には水性紫外線硬化技術は水性系に包含させることができるUV反応性原物質の入手可能性によって制限される。インクジェット印刷用インクを開発するときに、インクの粘度が低くなければならない、典型的には25℃にて50mPas未満である場合、ごく少数のUV反応性物質が低粘度および水適合性の両方の要件を満足する。
【0008】
したがって、水性溶媒に導入可能であり、良好な印刷特性を提供するUV反応性物質を包含する低粘度水性紫外線硬化インクへの要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって本発明は、(i)水と、(ii)ポリマー主鎖に沿って複数の1,2−および/または1,3−ジオール基を有し、それに結合した側鎖光架橋性基を有するポリマーとを含むインクを提供する。本発明はまた、結合した側鎖光架橋性基を有するポリビニルアルコールも提供し、ここでこの基は4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ベンズアルデヒドおよび4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムメトサルフェートに由来しないという条件で、この基はスチリルピリジニウムおよびアクリレート基である。
【0010】
光反応性ポリマー(たとえばポリビニルアルコール)の親水性により、インクへの大量の水の包含が可能となり、それによってインクジェット印刷に適した低粘度インクが提供される。加えて、ポリマー(たとえばポリビニルアルコール)に結合した光架橋性基によって、広範囲に渡るUV反応性モノマーおよび/またはアクリレート、エポキシドおよびオキセタン等のオリゴマーの包含が可能となる。インクは、インクジェット印刷を含む多くのタイプの印刷用途に適した良好なエンドユーザ特性を有する、均質紫外線硬化水性インクである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ポリマーは好ましくはポリビニルアルコールであるが、たとえばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースといったセルロースまたはセルロースヒドロキシアルキル誘導体等の他のポリヒドロキシ化合物を使用し得る。
【0012】
ポリビニルアルコールは典型的には、ポリビニルアセテートの加水分解によって生成され、生じたポリビニルアセテートの水溶性は、分子量とポリビニルアセテートの加水分解度との両方に関連している。一般に水溶性は、前駆物質ポリビニルアセテートのアセテート基の少なくとも70%がヒドロキシ基に加水分解されていることを必要とする。しかしながら、全体的に加水分解されたポリビニルアルコールは通常、強い分子内水素結合の結果として、冷水にごくわずかだけ溶解する。それゆえポリビニルアルコールの加水分解度は、好ましくは75〜99パーセント、さらに好ましくは85〜90パーセントである。より低い分子量のポリビニルアルコールは、より高い分子量グレードよりも、水にさらに溶解しやすい傾向がある。ポリビニルアルコールの重合度は好ましくは350〜2500である。
【0013】
光架橋性組成物でのポリヒドロキシポリマーの使用は、スクリーン印刷ステンシル作製の業界で既知である。組成物の感光性は、水溶性ポリマーへ光架橋性基をグラフトすることによって実現される。本発明の側鎖光架橋性基を有するポリビニルアルコールの調製は、当分野で既知である。たとえばGB 2 030 575およびUS 5,994, 033を参照。
【0014】
GB 2 030 575は、UV光への暴露下でダイマー反応を介して重合する、側鎖スチリルピリジニウム基を備えたポリビニルアルコールの架橋について記載している。
【0015】
US 5,994, 033は、ラジカル開始反応を通じてUV光への暴露下で光開始剤の存在下にて重合する、側鎖アクリレート基を備えたポリビニルアルコールの架橋について記載している。好ましいアクリレートは、2−アクリロイルオキシエチル4−ホルミルベンゾアートである。
【0016】
たとえばスチリルピリジニウムおよび/またはアクリレート基等の光架橋性基のグラフトは、任意の適切な手順を使用して実施され、結合の正確な方法は、本発明にとって重要ではない。好ましい方法は、側鎖基のアルデヒド前駆物質を形成して、次にUS 5,994, 033で述べられているような酸性条件下でアルドール反応によって水溶液中で、側鎖基のアルデヒド前駆物質をポリビニルアルコールの1,3ジオール基と反応させることである。アクリレート基をグラフトするときに、グラフト工程を最適化するために、少量の溶剤の使用が必要とされることがある。
【0017】
光架橋性基を形成するために、ポリマーにグラフトするのに適切なモノマーは:4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムメトサルフェート、1−(3−エトキシカルボニルメチル)−4−[2−(4−ホルミルフェニル)エテニル]ピリジニウムブロミド、1−(メトキシカルボニルプロピル)−4−[2−(4−ホルミルフェニル)エテニル]ピリジニウムブロミド、2−アクリロイルオキシエチル4−ホルミルベンゾアートおよび4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ベンズアルデヒドを含む。しかしながらこの基の正確な性質は、それらが光重合性であり、ポリヒドロキシポリマーに結合するならば重要ではない。
【0018】
光架橋性基は、光、好ましくはUV光を用いた照射によって架橋、すなわち硬化する。
【0019】
感光性ポリマーは好ましくは、インクの全重量に基づいて(すなわちインクの全重量に基づいて)0.5〜60重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%で存在する。
【0020】
光架橋性基は好ましくは、ポリマーの量に基づいて0.1〜25重量%で存在する。
【0021】
インクは好ましくは、インクの全重量に基づいて10〜90重量%の、さらに好ましくは30〜90重量%の水を含有する。他の溶剤、たとえば水混和性有機溶剤も存在し得る。
【0022】
本発明の利点は、均質水溶液を維持しながら、広範囲に亘る追加のUV反応性物質を水性紫外線硬化インクに導入できることである。広範囲に亘る反応性物質を包含する機能により、エンドユーザ特性、たとえば硬化速度、付着力および柔軟性に関する処方の最適化が可能となる。使用される物質は、(メタ)アクリレート、すなわちアクリレートおよび/またはメタクリレート、モノマーおよびオリゴマー、エポキシドおよびオキセタンである。
【0023】
使用されるアクリレートモノマーは、フェノキシエチルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(たとえばテトラエチレングリコールジアクリレート)、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、ならびにエトキシル化またはプロポキシル化グリコールおよびポリオールのアクリレートエステル、たとえばプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ならびにその混合物を含む。
【0024】
使用できるアクリレートオリゴマーの例は、エトキシル化ポリエチレングリコール、エトキシル化トリメチロールプロパンアクリレートおよびポリエーテルアクリレートおよびそのエトキシラート、ならびにウレタンアクリレートオリゴマーを含む。
【0025】
メタクリル酸のエステル(すなわちメタクリレート)はたとえば、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレートまたはその混合物である。
【0026】
インク処方に使用できるエポキシドは、UCB ChemicalsによるUvacure 1500、Uvacure 1501、Uvacure 1502、DowによるUVR 6105、UVR 6110およびUVR 6128である。
【0027】
使用できるオキセタンモノマーは、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテルおよび3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタンを含む。
【0028】
好ましくは(メタ)アクリレート、エポキシドまたはオキセタンモノマーは、インクの全重量に基づいて1〜80重量%、さらに好ましくは10〜40重量%で存在する。
【0029】
オリゴマーは好ましくはインクの全重量に基づいて1〜80重量パーセント、さらに好ましくは1〜10重量%で存在する。
【0030】
(メタ)アクリレート基は、(ポリマーにグラフトされて、または「遊離」モノマーとして)処方中に存在し、ラジカル光開始剤を使用して(メタ)アクリレート基の光重合を開始させる。
【0031】
ラジカル光開始剤の例は、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドまたはその混合物である。そのような光開始剤は既知であり、たとえばCibaからIrgacure、Darocureという商標名で、BASFからはLucerinという商標名で市販されている。光開始剤の混合物も使用できる。
【0032】
エポキシドまたはオキセタンをインク処方に使用する場合、カチオン性光開始剤を使用して光重合を開始させる。
【0033】
カチオン性光開始剤の例は、RhodiaによるRhodorsil PI 2074、Siber HegnerからのMC AA、MC BB、MC CC、MC CC PF、MC SD、Alfa ChemicalsによるUV9380c等のヨードニウム塩である。たとえばDowによるUVI-6972、UVI-6974、UVI-6976、UVI-6990、UVI-6992、UCB ChemicalsによるUvacure 1590等のスルホニウム塩も使用できる。
【0034】
光開始剤は好ましくは、インクの全重量に基づいて1〜20重量%で存在する。
【0035】
本発明は、インクの液状溶剤に溶解または分散できる着色剤も含む。好ましくは、着色剤は、当分野で既知のタイプで市販されている分散性顔料、たとえばBASFによる商標名Paliotol、Ciba Speciality Chemicalsによる商標名CinquasiaおよびIrgaliteの両者、Clariant UKによる商標名Hostapermである。顔料はいずれの所望の色でもよく、たとえばPigment Yellow 13、Pigment Yellow 83、Pigment Red 9、Pigment Red 184、Pigment Blue 15:3、Pigment Green 7、Pigment green 36、Pigment Violet 19、Pigment Black 7またはPigment Orange 43である。特に有用なのは、黒色および4色プロセス印刷に必要な色である。顔料の混合物を使用できる。
【0036】
存在する顔料または着色剤の全割合は好ましくは、インクの全重量に基づいて0.5〜20重量%である。
【0037】
当分野で既知のタイプの他の成分は、特性または性能を改善するためにインク中に存在する。これらの成分はたとえば、界面活性剤、消泡剤、湿潤剤、分散剤、光開始剤の相乗剤、熱または光による劣化に対する安定剤、付香剤、フローまたはスリップ助剤、殺生剤および/または同定トレーサーである。
【0038】
インクはインクジェットインクとして処方される場合、粘度は好ましくは25℃にて50mPas未満、さらに好ましくは25mPas未満である。典型的には、ノズルを通じて噴射されるときに、インクは通常、約40℃まで上昇する噴射温度にて10.5mPasの粘度を有することが望ましい(インクは、周囲温度でより高い粘度を有する)。一部の印字ヘッドは、信頼できる噴射性能を達成するために、噴射温度にて特に低い粘度、たとえば4または5mPasを必要とする。インクジェットインク中に存在するいずれの微粒子の粒径は、インクをインクジェットプリンタノズルに通過させるのに十分小さいこと、典型的には5μm未満であることが望ましい。
(実施例)
【0039】
2−アクリロイルオキシエチル4−ホルミルベンゾアート(AB)をUS 5,994,033に述べられているように合成した。4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムメトサルフェート(SbQ塩)は、Showa Kako Cooperationより入手した。
【0040】
GohsenolによるGL05およびGL03は、低い重合度および88%の加水分解度を有するポリビニルアルコールである。どちらもPVOHの比較的低い分子量グレードであり、GL03は300の数平均分子量を有し、GL05は500の数平均分子量を有する。
【0041】
実施例に示したすべての量は、別途示さない限り、重量パーセンテージである。
【実施例1】
【0042】
ABでグラフトしたPVOH
アルドール反応によってポリビニルアルコールにABをグラフトした。結合を助けるために、ABをDPM溶剤と混合して、PVOH水溶液(Gohsenol GL05の20%水溶液)を、さらなる水を剪断下で添加した。反応が起こるのに必要な酸性条件を生じるために、pHが1.85に達するまでパラ−トルエンスルホン酸の25%水溶液を滴加した。16〜24時間、反応条件を25℃に維持して、次にNaOHの10%水溶液によって中和した。
【0043】
AB 1.48
(2-メトキシメチルエトキシ)プロパノール(UnivarによるDPM溶剤) 10.95
Gohsenol GL05 14.78
水 72.79
パラ−トルエンスルホン酸(25%水溶液) 微量
ナトリウムヒドロキシド(10%水溶液) 微量
【実施例2】
【0044】
吸収性表面用の低コストインク
次に、吸収性表面用に適切なインクを調製するために、実施例1によるグラフト材料を以下の処方において使用した。低剪断下で、水をHostafine顔料分散物にゆっくりと添加した。実施例1によるABグラフトPVOH溶液をこれに添加して、最後に光開始剤を高剪断下で添加した。
【0045】
実施例1によるABグラフトPVOH溶液 35.10
水 52.60
Irgacure 500(CIBAによる光開始剤) 8.80
Hostafine Blue B2G(clariantによる顔料分散物) 3.50
【0046】
この処方によって、25℃にて19.3mPasの粘度を持つインクが生成され、インクは吸収性基材上にコーティングされて、20m/分にて120W/cmの鉄ドーピングランプを用いてUV光に暴露させたときに、良好な付着および硬化速度を示した。ある基材上での展着を改善するには、生成物の表面張力を低下させるために、この処方に湿潤剤を添加することが必要である。
【実施例3】
【0047】
非吸収性表面用インク
非吸収性表面への良好な付着を達成するためには、疎水性アクリレートモノマーを包含することが必要である。すべてのUV成分を共に別個にブレンドして、次にこれを(実施例1による)ABグラフトPVOH溶液の50%水希釈物に高剪断下でゆっくりと添加し、最終段階として水、メトキシプロパノールおよびZonyl FSNを添加することが必要であった。
【0048】
実施例1によるABグラフトPVOH溶液 13.00
水 13.00
【0049】
以下のUV混合物をABグラフトPVOH溶液に剪断下で添加する:
Solsperse 32,000(Aveciaによる高分散剤(hyperdispersant)) 0.40
Genorad 16(Rahnによる安定剤) 0.04
Actilane 422(Akzo NobelによるUVモノマー) 2.36
Irgalite Blue GLVO(Cibaによる顔料) 1.20
【0050】
Ebecryl 220(UCBによるオリゴマー) 8.00
ヘキサンジオールジアクリレート(UCBによるUV希釈剤) 24.00
Lucirin TPO(BASFによる光開始剤) 7.00
【0051】
以下を添加する:
メトキシプロパノール(Univarによる溶剤) 10.00
水 20.00
Zonyl FSN(Goldschmitによる界面活性剤) 1.00
【0052】
生じたインクは、25℃にて47.7mPasの粘度および29dynes/cmの表面張力を有していた。8ミクロンのコーティングを塗布して、120W/cm水銀ランプにより40m/分で硬化したとき、インクは自己粘着性ビニルでの優れた硬化および付着を示した。
【実施例4】
【0053】
より低い分子量のPVOHを使用するグラフト
より低い粘度インクを調製するために有効な方法は、より低い分子量のPVOHを使用することである。グラフトは実施例1と同様にABを使用したが、より低い分子量のPVOH、すなわちGoshenol GL03を同じ量で使用して実施した。次に実施例3と同様に付加物をインク処方で使用した。
【0054】
生じたインクは、25℃にて31.6mPasの粘度および29dynes/cmの表面張力を有していた。8ミクロンのコーティングは、120W/cm水銀ランプの下で40m/分にて硬化させると、吸収および非吸収性基材での優れた硬化および付着を示し、良好な耐水性も示した。
【実施例5】
【0055】
SbQ塩を用いるPVOHグラフト
Showa Kako Corp.から入手した4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムメトサルフェート(SbQ塩)の6%水溶液に、アルドール反応によってPVOH(Gohsenol GL05)の20%水溶液でグラフトした。SbQ塩を剪断下でPVOH水溶液に添加し、反応が起こるのに必要な酸性条件を生じさせるために、pHが1.85に達するまでパラ−トルエンスルホン酸の25%水溶液を滴加した。16〜24時間の期間、反応条件を25℃に維持して、次にNaOHの10%水溶液によって中和した。
【0056】
GL05(Gohsenolによるポリビニルアルコール) 73.9
SbQ(Showa Kako Corp.による塩) 26.1
パラ−トルエンスルホン酸(25%水溶液) 微量
ナトリウムヒドロキシド(10%水溶液) 微量
【実施例6】
【0057】
SbQ−PVOH付加体によるインク
次に、インクを生成するために、実施例5によるグラフト材料を以下の処方において使用した。低剪断下で水をHostafine顔料分散物にゆっくりと添加した。SbQグラフトPVOH溶液を高剪断下でこれに添加した。
【0058】
実施例5によるSbQグラフトPVOH溶液 29.10
水 67.10
Hostafine Blue B2G(Clariantによる顔料分散物) 3.80
【0059】
生じたインクは、25℃において11.6mPasの粘度を有していた。120W/cm水銀ランプの下で40m/分にて硬化させると、インクは吸収性基材上での硬化および付着を示した。非吸収性基材への硬化および付着は、後硬化度によって達成された。非吸収性基材への付着は、紫外線硬化前の加熱ステーションの追加によってさらに達成できる。
【実施例7】
【0060】
SbQ−PVOH付加体をベースとする、非吸収性表面用のインク
疎水性アクリレート材料を水性生成物とうまく混合するために、最初にすべてのUV成分を共にブレンドして、次にこれを(実施例5で述べた)SbQグラフトPVOH溶液の50%水希釈物に高剪断下でゆっくりと添加し、次に均質な低粘度クリアコートを生成するために、さらなる水および界面活性剤を添加することが必要であった、。次に剪断下で顔料分散物をこれに添加した。
【0061】
Silversonミキサーでブレンドする:
実施例5によるSbQグラフトPVOH溶液 19.30
水 19.30
【0062】
以下のUVミックスを高剪断下で水性グラフトPVOHに添加した:
Actilane 421(Akzo NobelによるUVモノマー) 22.70
Ebecryl 220(UCBによるオリゴマー) 8.80
Irgacure 500(Cibaによる光開始剤) 3.60
Byk307(Blagdenによる界面活性剤) 0.20
【0063】
次に添加して、混合するまで攪拌する:
Zonyl FSN(Goldschmitによる界面活性剤) 0.90
Actilane 800(Akrosによる添加剤) 0.70
水 21.0
【0064】
最後にゆっくり添加し、次に高剪断にて攪拌する:
水性黄色顔料分散剤(Penn Coloursによる) 3.50
【0065】
得られたインクは、25℃にて49.6mPasの粘度および27dynes/cmの表面張力を有していた。120W/cm水銀ランプの下で40m/分で硬化したとき、インクは吸収性基材上で優れた硬化および付着を示した。
【実施例8】
【0066】
より低い分子量のPVOHを使用することを除いて、実施例5および7と同様の方法
SbQ−PVOH付加体
20%GL03水溶液(Gohsenolによるポリビニルアルコール) 73.9
6%SbQ水溶液(Showaによる塩) 26.1
パラ−トルエンスルホン酸(25%水溶液) 微量
ナトリウムヒドロキシド(10%水溶液) 微量
【0067】
インク処方
高速ミキサーによるブレンド:
SbQグラフトPVOH溶液 20.00
水 20.00
【0068】
高速攪拌機で以下をブレンドして、次にSbQ/水混合物に添加した:
Solsperse 32,000(Aveciaによる高分散剤) 0.45
Genorad 16(Rahnによる安定剤) 0.05
Actilane 421(AkrosによるUV希釈剤) 2.66
Irgalite Blue GLVO(Cibaによる顔料) 1.35
Actilane 422(AkrosによるUV希釈剤) 17.50
Ebecryl 220(UCBによるオリゴマー) 7.00
Lucirin TPO(BASFによる光開始剤) 5.00
Irgacure 500(Cibaからの光開始剤) 5.00
【0069】
次に添加する:
水 19.99
Zonyl FSN(Goldschmitによる界面活性剤) 1.00
【0070】
生じたインクは、25℃にて15.4mPasの粘度および28dynes/cmの表面張力を有していた。8ミクロンのコーティングを塗布して、120W/cm水銀ランプにより40m/分で硬化したとき、インクは基材の範囲において良好な硬化および付着を示した。
【実施例9】
【0071】
ABおよびSbQをグラフトしたPVOH
この例では、ポリビニルアルコールにグラフトされたスチリルピリジニウムおよびABの組合せを使用した。実施例1および5と同じグラフト方法を使用した。ABをDPMと混合して、次に25℃にてpH1.85の、PVOH水溶液およびSbQ塩水溶液の混合物に添加して、次に16〜20時間後に10% 水性NaOHによって中和した。
【0072】

20%GL03水溶液(Gohsenolによるポリビニルアルコール) 73.89
5%SbQ水溶液(Showaによる塩) 24.12
パラ−トルエンスルホン酸(25%水溶液) 微量
ナトリウムヒドロキシド(10%水溶液) 微量
メトキシプロパノール中の12%AB(UnivarによるDPM溶剤) 1.99
【実施例10】
【0073】
SbQ/AB−PVOH付加体をベースとするインク
高剪断ミキサーでブレンドする:
実施例9によるSbQ/ABグラフトPVOH溶液 10.68
水 7.12
【0074】
高剪断ミキサーで混合して、SbQ/AB/水ブレンドに添加する:
Solsperse 32,000(Aveciaによる高分散剤) 0.44
Genorad 16(Rahnによる安定剤) 0.04
Actilane 421(AkrosによるUV希釈剤) 2.60
Irgalite Blue GLVO(Cibaによる顔料) 1.32
Ebecryl 220(UCBによるオリゴマー) 8.80
Lucirin TPO(BASFによる光開始剤) 7.70
ヘキサンジオールジアクリレート(UCBによるUV希釈剤) 26.40
【0075】
次に添加する:
メトキシプロパノール(Univarによる溶剤) 6.80
水 27.4
Zonyl FSN(Goldschmitによる界面活性剤) 0.70
【0076】
生じたインクは、25℃にて33.6mPasの粘度および30dynes/cmの表面張力を有していた。120W/cm水銀ランプの下で40m/分で硬化したとき、インクは吸収性および非吸収性基材の両方にて良好な硬化、付着および耐水性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)水と、(ii)ポリマー主鎖に沿って複数の1,2−および/または1,3−ジオール基を有し、それに結合した側鎖光架橋性基を有するポリマーとを含むインク。
【請求項2】
前記ポリマーがポリビニルアルコールである、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記側鎖光架橋性基がスチリルピリジニウムおよび/またはアクリレート基である、請求項1または2に記載のインク。
【請求項4】
前記側鎖架橋性基がポリマーの重量に基づいて0.1〜25重量%で存在する、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項5】
前記ポリマーが、アセテート基の少なくとも70%が加水分解されているポリビニルアセテートに由来するポリビニルアルコールである、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項6】
前記ポリマーが350〜2500の重合度を有する、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項7】
前記ポリマーがインクの全重量に基づいて0.5〜60重量%で存在する、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項8】
前記水がインクの全重量に基づいて10〜90重量%で存在する、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項9】
UV反応性モノマーおよび/またはオリゴマーをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項10】
前記UV反応性モノマーおよび/またはオリゴマーが(メタ)アクリレート、エポキシドまたはオキセタンである、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項11】
光開始剤をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項12】
着色剤をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項13】
25℃にて50mPas未満の粘度を有する、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項14】
前記インクがインクジェットインクである、先行する請求項のいずれかに記載のインク。
【請求項15】
ポリビニルアルコールであって、それに結合した側鎖光架橋性基を有し、前記側鎖光架橋性基が4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ベンズアルデヒドおよび4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムメトサルフェートまたは4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ベンズアルデヒドおよび1−(3−エトキシカルボニルプロピル)−4−[2−(4’−ホルミルフェニル)エテニル]ピリジニウムブロミドに由来しないという条件で、前記側鎖光架橋性基がスチリルピリジニウムおよびアクリレート基である、ポリビニルアルコール。
【請求項16】
前記側鎖光架橋性基がアクリロイルオキシアルキルホルミルベンゾアートおよびホルミルフェニルエテニル)ピリジニウムから誘導可能である、請求項15に記載のポリビニルアルコール。
【請求項17】
前記側鎖光架橋性基が2−アクリロイルオキシエチル4−ホルミルベンゾアートおよび4−(4−ホルミルフェニルエテニル)−1−メチルピリジニウムから誘導可能である、請求項16に記載のポリビニルアルコール。

【公表番号】特表2007−501289(P2007−501289A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521659(P2006−521659)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003254
【国際公開番号】WO2005/012448
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(500007897)セリコル リミテッド (15)
【Fターム(参考)】