説明

印刷システム、プリンタ装置、及びコンピュータプログラム

【課題】 印刷物の機密性の向上を図りつつ、印刷ジョブの実行態様を多様化することができる印刷システム、プリンタ装置、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 機密印刷に係る複数の印刷ジョブの夫々について個別パスワードを設定する個別パスワード設定部63、個別パスワードが設定された複数の印刷ジョブのうち、所定の条件を満たす印刷ジョブに対して共通パスワードを設定する共通パスワード設定手段52、及び個別パスワード及び/又は前記共通パスワードの認証後に、認証されたパスワードが設定されていた印刷ジョブに係る画像を、記録紙Pに印刷するプリンタ装置2を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の機密性を確保するために、印刷時に認証手続を必要とする印刷システム、プリンタ装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ装置にて画像データを印刷する場合に、印刷物の機密性を高めたいという要望がある。そのため、ユーザが端末装置から印刷しようとする画像データをプリンタ装置へ送信した場合に、該プリンタ装置にてユーザが認証手続をすることで、当該画像データの記録紙への印刷を実行する技術(セキュア印刷)が知られている。一方、印刷ジョブを実行しようとするたびにその印刷ジョブごとに認証手続を必要とすると、ユーザにとっての利便性が低下するため、この点を改善する提案もなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的に説明すると、この特許文献1の場合、同一ユーザから所定時間内に入力された複数の印刷ジョブに対し、同一のパスワードを設定することとしている。そして、プリンタ装置は、ユーザにより入力されたパスワードが、設定されたパスワードと一致した場合に、複数の印刷ジョブの全てを実行する構成になっている。これにより、印刷ジョブごとに異なるパスワードを設定し、認証手続を行う場合に比べて、ユーザの利便性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−48434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の場合、同一パスワードを設定した複数の印刷ジョブは、これら全てを実行するか又は全てをキャンセルするか、の二者択一の実行態様しかない。換言すれば、複数の印刷ジョブに対して同一パスワードを設定した場合であっても、全ての印刷ジョブを実行せず、一部の印刷ジョブのみを実行したいという要望には応えることができない。
【0006】
そこで本発明は、印刷物の機密性の向上を図りつつ、印刷ジョブの実行態様を多様化することができる印刷システム、プリンタ装置、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る印刷システムは、機密印刷に係る複数の印刷ジョブの夫々について個別パスワードを設定する個別パスワード設定手段、前記個別パスワードが設定された前記複数の印刷ジョブのうち、所定の条件を満たす印刷ジョブに対して共通パスワードを設定する共通パスワード設定手段、及び、前記個別パスワード及び/又は前記共通パスワードの認証後に、認証されたパスワードが設定されていた印刷ジョブに係る画像を、記録媒体に印刷するプリンタ装置を備えている。
【0008】
このような構成とすることにより、個別パスワード及び共通パスワードの両方を用いて印刷ジョブの実行態様を多様化することができる。例えば、共通パスワードを用いて、該パスワードが設定された複数の印刷ジョブの全てを一括で実行したり、個別パスワードを用いて、各印刷ジョブを選択的に実行したりすることができる。また、実質的に各印刷ジョブに2つのパスワードを設定することとなるため、機密性を更に高められるような認証手続を設定することができる。
【0009】
(2)また、前記プリンタ装置は、ユーザからの操作入力を受け付ける操作受付手段を更に有し、該操作受付手段は、前記共通パスワードが認証されると、該共通パスワードが設定された前記複数の印刷ジョブを、個別に印刷するか又は一括して印刷するか、について選択する操作入力を受け付け可能になるようにしてもよい。このような構成とすることにより、共通パスワードが設定された複数の印刷ジョブを、個別に印刷するか又は一括して印刷するかを、ユーザの都合に応じて選択することができる。
【0010】
(3)また、前記共通パスワード設定手段は、認証された前記共通パスワードを無効とするよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、一旦認証を終えると共通パスワードが無効となり、換言すれば、共通パスワードと印刷ジョブとの関連付けがキャンセルされる。従って、認証済みの共通パスワードを使って第三者が印刷ジョブを実行するのを防止でき、印刷ジョブの機密性を高めることができる。
【0011】
(4)また、前記共通パスワードには所定の有効期限が設定されており、前記共通パスワード設定手段は、前記共通パスワードが前記有効期限内に認証されなかった場合には、該共通パスワードを無効とするよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、印刷ジョブが実行されることなく長時間放置された場合に、不測にも当該印刷ジョブが第三者により実行されるという事態を回避することができる。
【0012】
(5)また、前記所定の条件を満たす複数の印刷ジョブのうち、前記個別パスワードが設定された時間が最先又は最後の印刷ジョブに対して設定された個別パスワードと同一又は関連する内容の情報を、前記所定の条件を満たす複数の印刷ジョブに対する共通パスワードとして設定するよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、個別パスワードの他、ユーザは共通パスワードを別途設定する必要がないため、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【0013】
(6)また、前記プリンタ装置は、実行した印刷ジョブに係る画像データを、前記記録媒体から削除するよう構成されていてもよい。このような構成とすることにより、実行済みの印刷ジョブが残存して第三者により再度実行されてしまうという事態を回避することができる。
【0014】
(7)また、前記所定の条件には、各印刷ジョブに係るユーザが互いに同一であること、が含まれていてもよい。
【0015】
(8)また、前記所定の条件には、各印刷ジョブに対して所定時間内に前記個別パスワードが設定されていてもよい。
【0016】
(9)また、前記共通パスワード設定手段は、ユーザから所定の操作入力があった場合に、前記共通パスワードの設定を省略するよう構成されていてもよい。
【0017】
(10)本発明に係るプリンタ装置は、機密印刷に係る複数の印刷ジョブを受信する受信手段、ユーザからの操作入力を受け付ける操作受付手段、前記受信手段により受信した前記印刷ジョブに設定された個別パスワード及び共通パスワードと、前記操作受付手段により受け付けたユーザの操作入力に係る情報とに基づき、個別パスワード及び/又は共通パスワードの認証を行う認証手段、及び認証されたパスワードが設定されていた印刷ジョブに係る画像を記録媒体に印刷する印刷手段、を備えている。
【0018】
(11)本発明に係るコンピュータプログラムは、印刷システムが備えるコンピュータを、機密印刷に係る複数の印刷ジョブの夫々について個別パスワードを設定する個別パスワード設定手段、前記個別パスワードが設定された前記複数の印刷ジョブのうち、所定の条件を満たす印刷ジョブに対して共通パスワードを設定する共通パスワード設定手段、及び前記個別パスワード及び/又は前記共通パスワードの認証後に、認証されたパスワードが設定されていた印刷ジョブに係る画像を、記録媒体に印刷する印刷手段として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印刷物の機密性の向上を図りつつ、印刷ジョブの実行態様を多様化することができる印刷システム、プリンタ装置、及びコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷システムを構成するネットワークを示す概略図である。
【図2】図1の印刷システムに含まれるプリンタ装置の構成を示す概略側面図である。
【図3】プリンタ装置及びクライアント装置が夫々備える制御部の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】印刷システムが実行可能なセキュア印刷の一態様を説明するための模式図である。
【図5】印刷システムの具体的な処理内容を例示するフローチャートである。
【図6】印刷システムでの共通パスワードの設定処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る印刷システム、プリンタ装置、及びコンピュータプログラムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷システムを構成するネットワークを示す概略図である。この図1に示すように、印刷システム1は、インクジェットプリンタであるプリンタ装置2と、複数のパーソナルコンピュータ等のクライアント端末3とが、無線LAN等のネットワーク4を介して互いに通信可能に接続された構成を備えている。なお、プリンタ装置2はインクジェットプリンタに限らず、レーザプリンタなど他の構成を備えるプリンタ装置であってもよい。ネットワーク4についても、有線LAN,USB(Universal Serial Bus)等のシリアルバスやパラレルバスによって構成してもよい。
【0023】
また、プリンタ装置2は制御部2aを備えている。この制御部2aは、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサや、プログラムを記憶可能な不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)等を含むメモリから構成されている。このメモリには、本実施の形態に係るプリンタ装置2を動作させるのに必要なプログラム2b及びデータが記録されている。そして、メモリに記録されたプログラム2bがプロセッサにて実行されることにより、プリンタ装置2は後述するような各機能を発揮する。
【0024】
同様に、クライアント端末3も、プロセッサ及びメモリ等から構成された制御部3aを備えており、そのメモリには、本実施の形態に係るクライアント端末3を動作させるために必要なプログラム3b及びデータが記録されている。そして、メモリに記録されたプログラム3bがプロセッサにて実行されることにより、クライアント端末3は後述するような各機能を発揮する。
【0025】
[プリンタ装置の概略構成]
図2は、上記プリンタ装置2の構成を示す概略側面図である。図2に示すようにプリンタ装置2は、印刷紙Pを搬送する搬送機構10,この印刷紙Pに画像を記録(印刷)するインクジェットヘッド11,ガイド12,ニップローラ13,14,排紙機構15,4つの排紙トレイ16(16a〜16d),及び制御部2aを備えている。なお、本実施の形態では、記録紙Pが搬送される方向を基準として方向を記載し、搬送方向に直交する水平方向を適宜「主走査方向」とも称することとする。
【0026】
搬送機構10は、搬送方向の上流側と下流側とに分けて配設された2つのベルトローラ20,21と、これらの間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト22と、プラテン23とを備えている。ベルトローラ20,21のうち下流側のベルトローラ21が駆動ローラになっており、該ベルトローラ21は図示しない電動モータからの出力により回転駆動する。そしてこのベルトローラ21が回転駆動すると、搬送ベルト22の上側部分は搬送方向へ移動し、下側部分は反対方向へ移動する。従って、搬送ベルト22の上側部分の上面に載置された記録紙Pは、搬送方向へと搬送されることとなる。
【0027】
プラテン23は平板状を成しており、搬送ベルト22の内側にて、該搬送ベルト22の上側部分の下面に沿うようにして配置されている。一方、搬送ベルト22の上側部分の上面近傍には、複数のインクジェットヘッド11(以下、「ヘッド11」と称する)が配設されている。ヘッド11は、ブラック,マゼンダ,シアン,イエローの各色のインク滴を個別に吐出可能とするために、本実施の形態では色毎に1つずつで計4つ備えている。そして、各ヘッド11の下面(吐出面)には、インク滴を下方へ吐出するためのノズル孔が形成されている。このような4つのヘッド11は、主走査方向に沿った寸法が搬送方向に比べて長寸(搬送方向に沿って見た場合に横長形状)であり、互いに平行となるようにして搬送方向に並べて配置されている。
【0028】
このように、搬送ベルト22の上側部分を挟み、その上方にヘッド11を配置し、これに対向するように下方にはプラテン23を配置している。従って、プラテン23によって搬送ベルト22の上側部分を適切に支持することにより、ヘッド11の吐出面が記録紙Pに対して平行になり、且つ、画像形成(印刷)に適した隙間が形成される。なお、搬送ベルト22によって搬送されてきた記録紙Pがヘッド11の直下を通貨する際、ヘッド11のノズル孔からインク滴が吐出される。その結果、記録紙Pの上面(記録面)には所望のカラー画像が形成され、その後、記録紙Pは搬送機構10によって更に下流側へと搬送される。
【0029】
画像が印刷された記録紙Pは、搬送機構10に送り出された後、ニップローラ13,14によって挟持されつつ、ガイド12に沿って排紙機構15へと搬送される。
【0030】
排紙機構15は、排紙トレイ16a〜16dの搬送方向上流側に、該排紙トレイ16a〜16dに対応する4つの分岐ガイド25a〜25dを備えている。そして、排紙機構15は、ガイド12を、これら4つの分岐ガイド25a〜25dのうちの1つに適宜接続する。各分岐ガイド25a〜25dの途中にもニップローラ26a〜26dが配設されており、ガイド12から分岐ガイド25a〜25dの何れかに搬送された記録紙Pは、ニップローラ26a〜26dのうち対応するものによって挟持され、更に下流側の排紙トレイ16へと搬送される。
【0031】
4つの排紙トレイ16a〜16dは、平面視で互いに重なるように上下方向に並んで配設されている。画像が印刷された記録紙Pは、最終的にはこれらの排紙トレイ16a〜16dのうち、排紙機構15により決定された何れかに排出される。このとき、排紙トレイ16に排出された記録紙Pは、画像が印刷された記録面が下方に向けられた状態になっている。また、各排紙トレイ16には、記録紙Pを受け取る上面に対向するようにして用紙センサ27a〜27dが配設されており、排紙トレイ16毎に、記録紙Pの有無を検出可能になっている。
【0032】
なお、既に説明したように、プリンタ装置2は制御部2aを備えており(図1,2参照)、上述した各機構の動作は制御部2aによって制御される。更に、この制御部2aには、ユーザインタフェースを成す操作パネル28が通信可能に接続されている(図2参照)。この操作パネル28は、例えばタッチパネル式のディスプレイなどで構成することができる。そして、ユーザが操作入力を行った場合には、その入力情報を制御部2aへ送信する一方、制御部2aからの指示に従って適宜情報を表示する。
【0033】
[制御部の機能的構成]
次に、機能ブロック図である図3を参照しつつ、プリンタ装置2及びクライアント端末3の各制御部2a,2bにて実行可能な機能について説明する。図3に示すように、クライアント端末3の制御部3aは、通信部61,操作受付部62,及び個別パスワード設定部63を少なくとも備えている。
【0034】
このうち通信部61は、ネットワーク4(図1参照)を介してプリンタ装置2との間で信号を互いに送受信する。具体的に言えば、通信部61は、ユーザの操作入力に応じて、印刷ジョブを実行すべき旨の印刷指令をプリンタ装置2へ送信する。この印刷指令は、印刷ジョブを識別するためのジョブ識別情報、その印刷モード(セキュア印刷又は通常印刷)を示すモード情報、及び印刷すべき画像を示す画像データを含んでいる。
【0035】
ここで、印刷モードの1つである「セキュア印刷」とは、ユーザ操作によりクライアント端末3からプリンタ装置2へ印刷指令が送信された場合に、プリンタ装置2にて当該ユーザが所定の認証を行わないかぎり、当該印刷指令に係る印刷ジョブを実行(印刷)しない印刷形態を意味している。従って、セキュア印刷では、ユーザの監視下で印刷を行うため、印刷物を第三者に見られたり部外者に持ち去られたりするのを防止できる点で高いセキュリティを実現できる。これに対して「通常印刷」とは、ユーザによる認証が不要であり、プリンタ装置2が印刷指令を受信すると、即時にこの印刷指令に係る印刷ジョブを実行するといった、相対的にセキュリティ性の低い印刷ジョブの実行時に選択される印刷形態を意味している。
【0036】
なお、印刷指令は、上述した情報やデータの他にも、各印刷ジョブに関連付けられた情報として、例えばユーザ識別情報(ユーザID)や、セキュア印刷に特有の個別パスワードなどの情報も含み得る。従って、この個別パスワードに関する情報の有無をもって、上述したモード情報としてもよい。この場合、個別パスワードを含んでいればセキュア印刷、含んでいなければ通常印刷、と識別することができる。これらの情報を用いたセキュア印刷の具体的態様については後に更に詳述する。
【0037】
制御部3aの構成について更に説明すると、操作受付部62は、クライアント端末3に付随のキーボード等の入力手段を操作してユーザが入力した情報(例えば、個別パスワードなど)を受け付ける。そして、受け付けられた入力情報は印刷ジョブに係る印刷画像などの情報と共に、上述したように通信部61を介して適宜プリンタ装置2へ送信される。また、個別パスワード設定部63は、ユーザがセキュア印刷を実行しようとする場合に、例えば前記入力手段の操作によりユーザが入力した情報(文字列や記号など)に基づき、実行しようとする印刷ジョブに固有の個別パスワードを設定する。このように、通常は、クライアント端末3で別途作成された印刷ジョブに係る印刷画像のデータについて、ユーザがキーボード等の入力手段を操作して制御部3aへ印刷指示を与えると、その際に、ユーザが入力した情報が印刷画像の情報に付加されることになる。但し、印刷ジョブに係る印刷画像の情報を、直接、操作受付部62に受け付けさせるようにしてもよい。
【0038】
次に、プリンタ装置2の制御部2aについて説明する。図3に示すように、プリンタ装置2の制御部2aは、クライアント端末3から受信した画像データを記録紙Pに印刷する基本的なプリンタ機能を発揮すべく、通信部41,画像データ記憶部42,搬送機構制御部43,ヘッド制御部44,及び排紙制御部45を備えている。更にこの制御部2aは、機密性の高い画像の印刷(セキュア印刷)を実行すべく、印刷モード判定部51,共通パスワード設定部52,操作受付部53,認証可否判定部54,及び時間管理部55を備えている。
【0039】
このうち通信部41は、ネットワーク4を介してクライアント端末3との間で信号を互いに送受信する。具体的に言えば、通信部41は、印刷ジョブを実行すべき旨の上述した印刷指令をクライアント端末3から受信する。なお、印刷指令に含まれる画像データは、制御部2aが備える画像データ記憶部42にて記憶される。
【0040】
搬送機構制御部43は、記録紙Pが適切な速度で搬送されるように、搬送機構10の動作を制御する。ヘッド制御部44は、画像データ記憶部42に記憶されている画像データに基づき、該画像データが示す画像を記録紙Pに印刷すべく、ヘッド11の動作を制御する。排紙制御部45は、排紙機構15の動作を制御することにより、上述したように、印刷されてガイド12に沿って搬送されてきた記録紙Pを排紙トレイ16a〜16dのうちの何れかに排出させる。
【0041】
なお、通常印刷時には4つの排紙トレイ16a〜16dの何れかに排紙し、セキュア印刷時には最上方の排紙トレイ16aを除く排紙トレイ16b〜16dの何れかに排紙することで、セキュリティ性を向上させてもよい。
【0042】
次に、印刷モード判定部51は、通信部41が印刷指令を受信した場合に、そこに含まれるモード情報(例えば、個別パスワードの有無)に基づき、実行すべき印刷ジョブが通常印刷及びセキュア印刷の何れであるかを判定する。共通パスワード設定部52は、既に印刷指令を受信している複数の印刷ジョブに対し、共通する共通パスワードを設定する。このように、本実施の形態に係る印刷システムでセキュア印刷を行う場合、原則的に、1つの印刷ジョブ(セキュア印刷ジョブ)に対して個別パスワード及び共通パスワードの2つのパスワードが設定され、このうち共通パスワードは、所定の条件を満たす複数の印刷ジョブに共通して設定されるようになっている。共通パスワードの設定においては幾つかの方法を選択的に採用することができるが、これらについては後述する(図6参照)。
【0043】
操作受付部53は、ユーザがプリンタ装置2の操作パネル28(図2参照)を操作して入力した情報を受け付ける。また、認証可否判定部54は、セキュア印刷ジョブを保有している場合に、ユーザが操作パネル28を操作して入力した情報に基づき、当該ユーザの認証の可否を判定する。即ち、操作パネル28に対するユーザの操作入力に応じて、セキュア印刷ジョブを実行すべきか否かを判定する。
【0044】
時間管理部55は、計時手段を備えており、クライアント端末3から印刷指令を受信する毎にその受信時刻を記憶し、適宜、その差分値を算出する。そして、この差分値(時間)が、時間に関する所定の閾値T(例えば、30分)以下かどうかの判定も行う。これにより、今回の印刷指令の受信が、前回の印刷指令の受信時から比較的短時間のうちに(時間T以内に)行われたものかどうかを判定することができる。また、上述した共通パスワードに対して有効期限を設定することができ、これを設定した場合には、記憶している共通パスワードが有効期限の切れたものか否かを適宜管理する。
【0045】
[セキュア印刷の実行態様]
図4は、上述したような印刷システム1において実現可能なセキュア印刷の概要を説明するための模式図である。この図4では、一例として、5つの印刷ジョブA〜D,Xに係る印刷指令が、クライアント端末3からプリンタ装置2へ送信された場合を示している。
【0046】
この例では、所定時間内(T以内)に入力された同一ユーザ(ユーザID:“USER*1”)に係る印刷ジョブA,B,Cに対して共通パスワードが設定されている。そして、この共通パスワードが認証されることにより、これらの印刷ジョブA〜Cを一括に印刷することができる。また、各印刷ジョブA〜Cには個別パスワード(“PASS*A”,“PASS*B”,“PASS*C”)も設定されているため、ユーザが選択した場合には、各印刷ジョブA〜Cの一又は複数を個別に印刷することも可能になっている(図4の個別印刷の例では、印刷ジョブBを個別に印刷する場合を示している)。
【0047】
一方、異なるユーザ(ユーザID:“USER*2”)に係る印刷ジョブXには、上記印刷ジョブA〜Cと共通する共通パスワードは設定されない。更に、同一ユーザであっても、該ユーザによる直前の印刷ジョブCの入力時から、所定時間(T)を過ぎて入力された印刷ジョブDには、上記印刷ジョブA〜Cと共通する共通パスワードは設定されない。これにより、印刷物のセキュリティ性の向上が図られている。
【0048】
次に、図5のフローチャートを参照しつつ、このような印刷システム1での印刷処理の流れについて説明する。図5に示すように、クライアント端末3は、ユーザの操作により印刷ジョブを受け付けると、ネットワーク4を介してこの印刷ジョブに係る印刷指令をプリンタ装置2へ送信する(ステップSB1)。
【0049】
ここで、クライアント端末3のモニタには、個別パスワードを入力する欄が表示され(図示せず)、ユーザは、そこに文字列や記号などを入力することで、各印刷ジョブに固有の個別パスワードを設定可能になっている。従って、ユーザは、セキュア印刷を行う場合には、個別パスワードを設定(入力)してから印刷指令を送信し、通常印刷を行う場合には、個別パスワードを設定(入力)せずに印刷指令を送信すればよい。
【0050】
待機中のプリンタ装置2は、新規の印刷ジョブ(即ち、新規の印刷指令)を受信したか否かを判定する(ステップSA1)。そして、これを受信した場合は(ステップSA1:YES)、この印刷指令に含まれる画像データを画像データ記憶部42(図3参照)に記憶し(ステップSA2)、続いてセキュア印刷か否かを判定する(ステップSA3)。本実施の形態では、受信した印刷指令に個別パスワードが含まれているか否かに基づき、セキュア印刷か否かを判定する。即ち、印刷指令に個別パスワードが含まれていればセキュア印刷と判定し、含まれていなければ通常印刷(セキュア印刷ではない)と判定する。但し、個別パスワードの有無に依らず、別途、セキュア印刷か否かを示すモード情報を印刷指令に含めておき、このモード情報に基づいて判定するようにしてもよい。
【0051】
受信した印刷指令がセキュア印刷に関するものであると判定した場合は(ステップSA3:YES)、共通パスワードの設定処理(ステップSA4)を行う。図6は、この共通パスワードの設定処理を説明するためのフローチャートである。
【0052】
図6(a)に示すように、はじめに、過去所定時間内(時間T以内)に、同一ユーザからセキュア印刷ジョブを受信しているか否かを判定する(ステップSA4-1)。その結果、そのような条件を満たすセキュア印刷ジョブを受信していないと判定した場合は(ステップSA4-1:NO)、今回受信したセキュア印刷ジョブに設定された共通パスワードを、今後所定時間内(時間T以内)に受信したセキュア印刷ジョブの共通パスワードとするよう設定する(ステップSA4-2)。
【0053】
図4に示した例でいえば、プリンタ装置2が、セキュア印刷ジョブAの印刷指令を受信した場合には、過去所定時間内に同一ユーザから受信したセキュア印刷ジョブが存在しないため、ステップSA4-1の処理で「NO」と判定することとなる。
【0054】
なお、ステップSA4-2の処理は、換言すれば、同一ユーザに係るセキュア印刷ジョブのうち、最先のものに設定された共通パスワードを、その後の当該ユーザに係るセキュア印刷ジョブにも共通パスワードとして設定することとしている。ここで、最先のセキュア印刷ジョブに共通パスワードを設定する方法としては、特に限定されないが、例えば以下のような方法がある。
【0055】
即ち、本実施の形態では、当該セキュア印刷ジョブに対して設定された個別パスワードを流用することとしている。この場合、共通パスワードを個別パスワードとは別に入力する必要がないため、ユーザにとって操作性が向上する。あるいは、当該セキュア印刷ジョブに対して、印刷指令の送信前に、ユーザ自身がクライアント端末3を操作することにより、文字列又は記号などから成る共通パスワードを設定するようにしてもよい。この場合は、個別パスワードとは内容の異なる共通パスワードを設定できるため、セキュリティ性の向上を図ることができる。
【0056】
一方、過去所定時間内(時間T以内)に、同一ユーザから既にセキュア印刷ジョブを受信している場合には、ステップSA4-1にて「YES」と判定する。この場合は、その条件を満たす全セキュア印刷ジョブのうち、最先のセキュア印刷ジョブに設定された共通パスワードを、今回受信したセキュア印刷ジョブに対しても共通パスワードとして設定する(ステップSA4-3)。図4に示した例でいえば、セキュア印刷ジョブB,Cの印刷指令を受信した場合が該当する。そして、ステップSA4-3の処理に従えば、セキュア印刷ジョブB,Cの夫々には、セキュア印刷ジョブAに設定された共通パスワード(本実施の形態では、セキュア印刷ジョブAの個別パスワードで流用)が設定されることとなる。
【0057】
ところで、上記図6(a)に示す共通パスワードの設定処理の例は、最先のセキュア印刷ジョブの共通パスワードを利用するものであるが、これとは逆に、最新のセキュア印刷ジョブの共通パスワードを利用するようにしてもよい。この場合の処理内容を、図6(b)を参照しつつ説明する。
【0058】
図6(b)に示す処理では、はじめに、今回受信した最新のセキュア印刷ジョブに対して共通パスワードを設定する(ステップSA4-4)。この設定方法は、上述したように個別パスワードを自動的に流用するようにしてもよいし、ユーザが操作入力した内容に基づいて設定するようにしてもよいが、本実施の形態では前者を採用することとする。
【0059】
次に、過去所定時間内(時間T以内)に、同一ユーザからセキュア印刷ジョブを受信しているか否かを判定する(ステップSA4-5)。その結果、そのような条件を満たすセキュア印刷ジョブを受信していないと判定した場合は(ステップSA4-5:NO)、本処理を終了する。即ち、この場合は、同一ユーザからのセキュア印刷ジョブは今回受信した1件だけであり、これには共通パスワードが設定された状態になっている。
【0060】
一方、過去所定時間内(時間T以内)に、同一ユーザから既にセキュア印刷ジョブを受信している場合には、ステップSA4-5にて「YES」と判定する。この場合は、過去のセキュア印刷ジョブに設定された共通パスワードを、今回受信した最新のセキュア印刷ジョブに対してステップSA4-4で設定した共通パスワードに更新する(ステップSA4-6)。これにより、上記条件を満たす一連のセキュア印刷ジョブには、常に最新のセキュア印刷ジョブの共通パスワードが設定されることとなる。
【0061】
以上に説明したように、図6(a),(b)に例示したような方法を用いれば、セキュア印刷ジョブに対して共通パスワードを設定(図5のステップSA4)することができる。
【0062】
図5のフローチャートに戻って続きを説明すると、共通パスワードの設定(ステップSA4)が完了すると、セキュア印刷ジョブが正式に受け付けられたことを、クライアント端末3に対して通知する(ステップSA5)。そしてその後、共通パスワードが認証されたか否かを判定する(ステップSA6)。例えば、ユーザが、プリンタ装置2の操作パネル28を操作して文字列又は記号等からなる情報を入力し、この入力情報が共通パスワードに一致する場合は「認証された」と判定し(ステップSA6:YES)、一致しない場合は「認証されていない」と判定する(ステップSA6:NO)。
【0063】
共通パスワードが認証されたと判定した場合(ステップSA6:YES)は、ユーザに対して一括印刷及び個別印刷の何れを選択するか、操作パネル28を介して問い合わせる(ステップSA7)。即ち、認証された共通パスワードに係る全てのセキュア印刷ジョブを一括印刷するか、又はその中の一又は複数を個別印刷するか、を問い合わせる。ユーザは、操作パネル28の画面をタッチ操作することにより、何れかを選択操作することができる。
【0064】
その結果、一括印刷が選択された場合は(ステップSA7:YES)、認証された共通パスワードに係る全てのセキュア印刷ジョブを印刷する(ステップSA8)。一方、個別印刷が選択された場合は(ステップSA7:NO)、個別パスワードが認証されたか否かを判定する(ステップSA9)。より正確には、ステップSA6で認証された共通パスワードに係る何れかのセキュア印刷ジョブについて、対応する個別パスワードが認証されたか否かを判定する。その結果、認証されれば、認証された個別パスワードに対応するセキュア印刷ジョブのみを実行して、個別印刷を行う(ステップSA10)。
【0065】
このようにして、一括印刷(ステップSA8)又は個別印刷(ステップSA10)が完了すると、印刷が実行されたセキュア印刷ジョブに設定されていたパスワード(個別パスワード及び共通パスワード)を無効化する(ステップSA11)。そして再び、プリンタ装置2は待機状態になってステップSA1からの処理を実行する。
【0066】
ところで、ステップSA1の処理において、プリンタ装置2が新規の印刷ジョブを受信していないと判定した場合は(ステップSA1:NO)、共通パスワードの認証待ち状態であるか否かを判定する(ステップSA21)。即ち、このステップSA21では、既に共通パスワードが設定されたセキュア印刷ジョブがあって、且つ、当該共通パスワードが未認証である状態(認証待ち状態)か否か、更に換言すれば、クライアント端末3から受信したが未実行のまま残存しているセキュア印刷ジョブがある状態(認証待ち状態)か否か、を判定する。その結果、認証待ち状態ではないと判定した場合は(ステップSA21:NO)、再びステップSA1からの処理を実行する。一方、認証待ち状態であると判定した場合は(ステップSA21:YES)、既に説明した共通パスワードが認定されたか否かの判定処理(ステップSA6)へ移行する。
【0067】
また、ステップSA3の処理において、クライアント端末3から受信した印刷指令が、セキュア印刷ジョブではなかった場合は(ステップSA3:NO)、通常印刷を実行し(ステップSA22)、再びステップSA1からの処理を実行する。
【0068】
また、ステップSA6の処理において、共通パスワードが認証されていないと判定した場合は(ステップSA6:NO)、時間管理部55にて、この未認証の共通パスワードの有効期限をチェックする(ステップSA23)。具体的には、この共通パスワードが設定されてからの経過時間を所定の閾値T(例えば、2時間)と比較する。そして、経過時間がこの閾値T未満であれば「有効期限内」と判定し(ステップSA23:YES)、再びステップSA1からの処理を実行する。一方、経過時間が閾値T以上であって「有効期限切れ」と判定した場合は(ステップSA23:NO)、この共通パスワードを無効化すると共に該共通パスワードに係るセキュア印刷ジョブのデータを削除する(ステップSA24)。そして、再びステップSA1からの処理を実行する。
【0069】
一方で、クライアント端末3は、プリンタ装置2からセキュア印刷ジョブが正式に受け付けられたことを示す通知が送信されると(ステップSA5)、これを受信する(ステップSB2)。そして、ユーザの操作によって新たな印刷ジョブ(セキュア印刷ジョブ又は通常印刷ジョブ)の入力があるか否かを判定する(ステップSB3)。その結果、新たな印刷ジョブの入力がないと判定した場合は(ステップSB3:NO)は本処理を終了し、あると判定した場合は(ステップSB3:YES)、ステップSB1の処理に戻って当該印刷ジョブに係る印刷指令を、プリンタ装置2へ送信する。
【0070】
なお、図5において破線の四角形で囲んだ処理(プリンタ装置2に関するステップSA1〜SA6,SA21,SA22,SA23、及びクライアント端末3に関するステップSB1〜SB3)は、設定済みの共通パスワードが認証され(ステップSA6:YES)、そのセキュア印刷ジョブが実行されるか、あるいは、実行されないままその共通パスワードの有効期限が切れるまで(ステップSA23:NO)、繰り返し実行される。
【0071】
そして、これらの処理が繰り返し実行される間に受信(ステップSA1:YES)したセキュア印刷ジョブには、上記条件(同一ユーザ,所定時間T内)を満たす限り、同一の共通パスワードが付与される(ステップSA4)。従って、共通パスワードの有効期限内であって上記条件を満たせば、セキュア印刷ジョブに対して同一の共通パスワードが設定されるため、多くのセキュア印刷ジョブを1つの共通パスワードを用いて一括印刷することができる。しかも、個別パスワードを認証することにより(ステップSA9)、一又は複数のセキュア印刷ジョブのみを個別印刷することも可能であるため(ステップSA10)、ユーザにとって利便性が高い印刷システムを提供することができる。
【0072】
なお、プリンタ装置2にてユーザが所定の操作を行うことにより、既に設定されている共通パスワードを無効化できるようにしてもよい。例えば、既に設定されている共通パスワードをユーザが一旦入力し、この共通パスワードを認証させた上で、これを無効化する旨の操作を入力するようにしてもよい。これにより、正当なユーザのみが共通パスワードを無効化できるようになる。また、このように設定済みの共通パスワードを無効化することにより、プリンタ装置2にて受け付けられた各セキュア印刷ジョブは、各個別パスワードを認証させなければ印刷することができなくなる。従って、後発的に共通パスワードを無効化することにより、その後の各セキュア印刷ジョブのセキュリティ性を向上させることができる。
【0073】
また、はじめからセキュリティ性を高めることを要望するユーザに対しては、共通パスワードを設定しないように予め指定可能にしてもよい。この場合には、各セキュア印刷ジョブには共通パスワードが設定されないため、個別パスワードを逐一認証することによってのみ印刷可能となる。これとは反対に、セキュリティ性が相対的に低い印刷ジョブを実行する際のユーザの利便性を高めるため、個別パスワードの設定を省略し、共通パスワードのみを設定可能にしてもよい。
【0074】
また、上述した説明ではプリンタ装置2及びクライアント端末3により構成された印刷システム1を例示したが、これに加えてサーバ装置を備える構成としてもよい。そして、プリンタ装置2及び/又はクライアント端末3が備える構成又は機能の一部を、サーバ装置にて備えさせるようにしてもよい。また、図3に示すプリンタ装置2及びクライアント端末3が備える各構成は、その一部を他方が備えるようにしてもよい。
【0075】
また、上述した説明では共通パスワード設定部52が、プリンタ装置2の制御部2aに備えられているが、各クライアント端末3の制御部3aに備えられていてもよい。この場合、同じクライアント端末3を使用するユーザを同じユーザと判断することで、ユーザの判断を省略できる。この場合であっても、制御部2aの共通パスワード設定手段52は、共通パスワードを無効化する手段として機能させることができる。
【0076】
また、上述した説明では過去所定時間内(時間T以内)に、同一ユーザからセキュア印刷ジョブを受信しているか否かを判定(ステップSA4-1)しているが、共通パスワードが付加される時間条件として、同一ユーザから受信したセキュア印刷ジョブの全てが所定の時間内(時間T以内)に入っていることを条件としてもよい。つまり、この場合は、共通パスワードが設定される最先の印刷ジョブから時間T以内に受信された同一ユーザの印刷ジョブのみを共通パスワードを付加する対象とすることとなる。
【0077】
また、上述した説明では各印刷ジョブに関する時間をプリンタ装置2が受信した時間(時刻)としているが、各クライアント端末3で個別パスワードが入力された時間(時刻)としてもよい。この場合は、クライアント端末3が、時間情報を印刷ジョブと共にプリンタ装置2に送信する。
【0078】
また、上述した説明では共通パスワードが設定された複数の印刷ジョブについて、初めに共通パスワードが認証されたか否かを判定(ステップSA6)しているが、共通パスワード又は個別パスワードが認証されたか否かを判定してもよい。つまり、共通パスワード及び個別パスワードのうち、どちらのパスワードを先に認証してもよい。そして、最初に個別パスワードが認証された場合には、共通パスワードを無効としてもよい。あるいは、最初に個別パスワードが認証された場合、共通パスワードを無効とはせず、個別パスワードが認証された印刷ジョブだけを共通パスワードの設定対象から外してもよい。
【0079】
また、上述した説明では共通パスワードが認証され、ユーザにより個別印刷が選択された場合は(ステップSA7:NO)、個別パスワードが認証されたか否かを判定(ステップSA9)しているが、この個別パスワードの認証を省いてもよい。つまり、共通パスワードが認証された時点で、印刷認証が完了していると判断し、選択された個別印刷に係るジョブを印刷する。そして、この後、共通パスワードを無効としてもよいし、共通パスワードを無効とせず、個別パスワードが認証された印刷ジョブだけを共通パスワードの設定対象から外してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、印刷物の機密性の向上を図りつつ、印刷ジョブの実行態様を多様化することができる印刷システム、プリンタ装置、及びコンピュータプログラムに適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 印刷システム
2 プリンタ装置
2b プログラム
3 クライアント端末
3b プログラム
4 ネットワーク
41 通信部
42 画像データ記憶部
43 搬送機構制御部
44 ヘッド制御部
45 排紙制御部
51 印刷モード判定部
52 共通パスワード設定部
53 操作受付部
54 認証可否判定部
55 時間管理部
61 通信部
62 操作受付部
63 個別パスワード設定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機密印刷に係る複数の印刷ジョブの夫々について個別パスワードを設定する個別パスワード設定手段、
前記個別パスワードが設定された前記複数の印刷ジョブのうち、所定の条件を満たす印刷ジョブに対して共通パスワードを設定する共通パスワード設定手段、及び
前記個別パスワード及び/又は前記共通パスワードの認証後に、認証されたパスワードが設定されていた印刷ジョブに係る画像を、記録媒体に印刷するプリンタ装置
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記プリンタ装置は、ユーザからの操作入力を受け付ける操作受付手段を更に有し、
該操作受付手段は、前記共通パスワードが認証されると、該共通パスワードが設定された前記複数の印刷ジョブを、個別に印刷するか又は一括して印刷するか、について選択する操作入力を受け付け可能になることを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記共通パスワード設定手段は、認証された前記共通パスワードを無効とするよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記共通パスワードには所定の有効期限が設定されており、
前記共通パスワード設定手段は、前記共通パスワードが前記有効期限内に認証されなかった場合には、該共通パスワードを無効とするよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載に印刷システム。
【請求項5】
前記共通パスワード設定手段は、前記所定の条件を満たす複数の印刷ジョブのうち、前記個別パスワードが設定された時間が最先又は最後の印刷ジョブに対して設定された個別パスワードと同一又は関連する内容の情報を、前記所定の条件を満たす複数の印刷ジョブに対する共通パスワードとして設定するよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の印刷システム。
【請求項6】
前記プリンタ装置は、実行した印刷ジョブに係る画像データを、前記記録媒体から削除するよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の印刷システム。
【請求項7】
前記所定の条件には、各印刷ジョブに係るユーザが互いに同一であること、が含まれていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の印刷システム。
【請求項8】
前記所定の条件には、各印刷ジョブに対して所定時間内に前記個別パスワードが設定されていること、が更に含まれていることを特徴とする請求項7に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記共通パスワード設定手段は、ユーザから所定の操作入力があった場合に、前記共通パスワードの設定を省略するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項10】
機密印刷に係る複数の印刷ジョブを受信する受信手段、
ユーザからの操作入力を受け付ける操作受付手段、
前記受信手段により受信した前記印刷ジョブに設定された個別パスワード及び共通パスワードと、前記操作受付手段により受け付けたユーザの操作入力に係る情報とに基づき、個別パスワード及び/又は共通パスワードの認証を行う認証手段、及び
認証されたパスワードが設定されていた印刷ジョブに係る画像を記録媒体に印刷する印刷手段、を備えることを特徴とするプリンタ装置。
【請求項11】
印刷システムが備えるコンピュータを、
機密印刷に係る複数の印刷ジョブの夫々について個別パスワードを設定する個別パスワード設定手段、
前記個別パスワードが設定された前記複数の印刷ジョブのうち、所定の条件を満たす印刷ジョブに対して共通パスワードを設定する共通パスワード設定手段、及び
前記個別パスワード及び/又は前記共通パスワードの認証後に、認証されたパスワードが設定されていた印刷ジョブに係る画像を、記録媒体に印刷する印刷手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−178115(P2012−178115A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41652(P2011−41652)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】