説明

印刷ジョブ生成プログラム及び印刷システム

【課題】印刷物からの情報漏洩を防止可能な印刷と、情報漏洩を考慮する必要のない印刷と、を混在して実行するような場合において、情報漏洩を防止可能な印刷を実行するための指示を、従来とは異なる手法で実現可能な印刷ジョブ生成プログラム及び印刷システムを提供することを目的とする。
【解決手段】所定のフォルダ(ディレクトリ)のパスを記憶し、この所定のフォルダのパスと、印刷対象のファイルが記憶されているフォルダのパスと、の間に所定の関係があると判断される場合(S106)、印刷対象のファイルに基づく印刷ジョブを、認証を条件として実行することを示す所定の情報(セキュアフラグ=1)と対応付けて生成する(S112,S116)こととしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷処理を所定の認証を条件として実行可能な印刷装置に対して送信される印刷ジョブの生成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネットワークに接続可能な印刷装置が広く利用されている。このような印刷装置では、機密性の高い情報を含む印刷ジョブに対して印刷処理が実行された場合、出力される印刷物が第3者に見られる可能性が指摘され、従来から、その解決策が提案されている。例えば、画像データの印刷に関し、画像データに第1識別子を関連付けるとともに、所定の記録媒体から、これに記録された第2識別情報を読み取り、第1識別情報と第2識別情報とが一致した場合、画像データに基づいた印刷処理を実行する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−1155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネットワークに接続され、複数のパソコンが共有して利用する印刷装置において、印刷物に印刷された機密性の高い情報が、第3者に見られてしまうことを防止する上で、例えば、特許文献1に記載の技術は有効であると思われる。
【0005】
しかし、特許文献1に開示のような印刷処理を実行するためには、機密性の高い情報を印刷するに際し、その都度、利用者は、印刷ジョブに識別子を関連付ける指示を行う必要がある。
【0006】
本発明は、印刷物からの情報漏洩を防止可能な印刷と、情報漏洩を考慮する必要のない印刷と、を混在して実行するような場合において、情報漏洩を防止可能な印刷を実行するための指示を、従来とは異なる手法で実現可能な印刷ジョブ生成プログラム及び印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明は、所定のフォルダ(ディレクトリ)のパス(記憶装置内でのフォルダの所在を示す文字列)を記憶し、この所定のフォルダのパスと、印刷対象のファイルが記憶されているフォルダのパスと、の間に所定の関係があると判断される場合、印刷対象のファイルに基づく印刷ジョブを、認証を条件として実行することを示す所定の情報と対応付けて生成することとしたものである。
【0008】
本発明を反映した第1の課題解決手段は、所定の情報が対応付けられた第1印刷ジョブの印刷処理を、前記第1印刷ジョブに対する認証を条件として実行し、前記所定の情報が対応付けられていない第2印刷ジョブの印刷処理を、前記第2印刷ジョブに対する認証を条件とすることなく実行する印刷装置に送信される、前記第1印刷ジョブ及び前第2印刷ジョブを生成するためのコンピュータが読み取り可能な印刷ジョブ生成プログラムであって、前記コンピュータを所定のフォルダのパスの記憶を制御する記憶制御手段と、印刷の対象となるファイルが記憶されているフォルダのパスを取得するパス取得手段と、前記所定のフォルダのパスと、前記パス取得手段により取得されたフォルダのパスと、の関係を判断する第1判断手段と、前記第1判断手段が、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が所定の関係にあると判断した場合、前記第1印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成手段として機能させるための印刷ジョブ生成プログラムである。これによれば、第1印刷ジョブを生成するとの判断を、所定のフォルダのパスと、パス取得手段により取得されたフォルダのパスと、の関係に基づき行うことができる。
【0009】
第2の課題解決手段は、第1の課題解決手段の印刷ジョブ生成プログラムであって、前記所定の関係とは、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が一致する関係、又は、前記パス取得手段が取得したフォルダのパスが前記所定のフォルダのパスを含む関係であることを特徴とする。これによれば、所定のフォルダのパスと、パス取得手段により取得されたフォルダのパスと、の関係が、判断の対象となったフォルダのパス各々が一致する関係、又は、パス取得手段が取得したフォルダのパスが所定のフォルダのパスを含む関係である場合、第1印刷ジョブを生成すると判断することができる。なお、判断の基準として「前記パス取得手段が取得したフォルダのパスが前記所定のフォルダのパスを含む関係」を採用することにより、第1印刷ジョブの生成にあたり、個々のフォルダのパスを全て記憶する必要がなく、フォルダのパスの記憶処理を効率的に実行することができる。ここで、「前記パス取得手段が取得したフォルダのパスが前記所定のフォルダのパスを含む」は、「前記所定のフォルダのパスが、前記パス取得手段が取得したフォルダのパスに含まれる」を含む。
【0010】
第3の課題解決手段は、第1又は第2の課題解決手段の印刷ジョブ生成プログラムであって、前記コンピュータを、前記第1判断手段が、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が前記所定の関係にないと判断した場合、前記第2印刷ジョブを生成する、前記印刷ジョブ生成手段として機能させるための印刷ジョブ生成プログラムである。これによれば、第1印刷ジョブ又は第2印刷ジョブのいずれを生成するかの判断を、所定のフォルダのパスと、パス取得手段により取得されたフォルダのパスと、の関係に基づき行うことができる。
【0011】
第4の課題解決手段は、所定の情報が対応付けられた第1印刷ジョブの印刷処理を、前記第1印刷ジョブに対する認証を条件として実行し、前記所定の情報が対応付けられていない第2印刷ジョブの印刷処理を、前記第2印刷ジョブに対する認証を条件とすることなく実行する印刷装置と、前記印刷装置に前記第1印刷ジョブ及び前記第2印刷ジョブを送信するコンピュータと、を含む印刷システムであって、前記コンピュータは、所定のフォルダのパスを記憶する記憶手段と、前記記憶手段への前記所定のフォルダのパスの記憶を制御する記憶制御手段と、印刷の対象となるファイルが記憶されているフォルダのパスを取得するパス取得手段と、前記所定のフォルダのパスと、前記パス取得手段により取得されたフォルダのパスと、の関係を判断する第1判断手段と、前記第1判断手段が、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が所定の関係にあると判断した場合、前記第1印刷ジョブを生成し、前記第1判断手段が、前記所定の関係にないと判断した場合、前記第2印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成手段と、前記第1印刷ジョブ及び前記第2印刷ジョブを、前記印刷装置に送信する送信手段と、を備え、前記印刷装置は、印刷手段と、前記コンピュータから送信される、前記第1印刷ジョブ及び前記第2印刷ジョブを受信する受信手段と、前記受信手段が受信した印刷ジョブが、前記第1印刷ジョブ又は前記第2印刷ジョブのいずれであるかを判断する第2判断手段と、第2判断手段が前記第1印刷ジョブと判断した場合、認証情報の入力を求める認証情報要求手段と、前記認証情報要求手段による認証情報の要求に応じて、前記印刷装置に入力された認証情報を取得する認証情報取得手段と、前記認証情報取得手段が取得した認証情報と、前記所定の情報と、の一致を判断する第3判断手段と、前記第3判断手段が一致すると判断した場合、前記印刷手段による前記第1印刷ジョブの印刷処理の実行を制御し、前記第2判断手段が前記第2印刷ジョブと判断した場合、前記印刷手段による前記第2印刷ジョブの印刷処理の実行を制御する印刷制御手段と、を備えることを特徴とする印刷システムである。これによれば、所定のフォルダのパスと、パス取得手段により取得されたフォルダのパス(印刷の対象となるファイルが記憶されているフォルダのパス)と、の関係に基づき、生成する印刷ジョブの形式を第1印刷ジョブ又は第2印刷ジョブのいずれにするか判断することができる。
【0012】
第5の課題解決手段は、第4の課題解決手段の印刷システムであって、前記所定の関係とは、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が一致する関係、又は、前記パス取得手段が取得したフォルダのパスが前記所定のフォルダのパスを含む関係であることを特徴とする。これによれば、所定のフォルダのパスと、パス取得手段により取得されたフォルダのパス(印刷の対象となるファイルが記憶されているフォルダのパス)と、の関係が、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が一致する関係、又は、前記パス取得手段が取得したフォルダのパスが前記所定のフォルダのパスを含む関係であるか否かに基づき、生成する印刷ジョブの形式を第1印刷ジョブ又は第2印刷ジョブのいずれにするか判断することができる。なお、用語の意義について、第2の課題解決手段と同義である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷物からの情報漏洩を防止可能な印刷と、情報漏洩を考慮する必要のない印刷と、を混在して実行するような場合において、情報漏洩を防止可能な印刷を実行するための指示を、従来とは異なる手法で実現可能な印刷ジョブ生成プログラム及び印刷システムを得ることができる。ここで、本発明は、情報漏洩を防止可能な印刷を実行するために利用者が行う操作を簡易なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を反映した上記課題解決手段を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。上記課題解決手段は以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。なお、本発明における「情報漏洩を防止可能な印刷」を、以下の説明では「セキュア印刷」といい、これに関する設定を「セキュア設定」という。
【0015】
(システムの構成)
図1は印刷システム10を示す図である。印刷システム10は、印刷装置12と、複数のパソコン14,16及び18を含み、各装置はLAN(Local Area Network)20を介して通信可能に接続されている。印刷装置12は、パソコン14等から送信される印刷ジョブ(以下、「印刷JOB」という。)を受信し、これに対する印刷処理を実行する。
【0016】
印刷装置12は、自装置の制御を司るCPU120と、各種プログラムを記憶するROM122と、作業領域としてのRAM124とを備える。なお、CPU120がROM122記憶されるプログラムを実行することで、各種処理が実行される。その際、RAM124には、各種データが保持され、CPU120は、RAM124にアクセスする。したがって、CPU120が,ROM122に記憶されたプログラムを、RAM124を用いて実行することで、各種処理が実行され、これによって各種手段が構成される。なお、RAM124には、セキュア印刷の場合の印刷JOBが複数記憶される。
【0017】
また、印刷装置12は、印刷JOBを実際に印刷する印刷部126と、LAN20に接続されるネットワークインターフェース(図1において「ネットワークI/F」と記載。以下、「ネットワークI/F」という。)128と、各種情報を表示するモニタ130と、印刷装置12へのデータ(指令)入力のインターフェースとしての機能を果たす操作部132とを備える。
【0018】
パソコン14は、CPU140と、ROM142と、RAM144と、LAN20に接続されるネットワークI/F146と、ハードディスク(図1において「HDD」と記載。以下、「HDD」という。)148と、モニタ150と、キーボード又はマウスにより構成される操作部152とを備えている。HDD146には、OS(Operating System)1480と、例えば、ワードプロセッサのようなアプリケーションプログラム(図1において「アプリケーション」と記載。以下、「アプリケーション」という。)1482と、印刷装置12用のプリンタドライバプログラム(図1において「プリンタドライバ」と記載。以下、「プリンタドライバ」という。)1484と、OS1480、アプリケーションソフト1482及びプリンタドライバ1484の設定データを管理するデータベース1486(例えば、OSが提供するレジストリ)とが記憶されている。CPU140がROM142及びHDD146に記憶される各種プログラム1482及び1484(OS1480を含む)をRAM144上で実行することで、各種処理が実行され、これによって各種手段が構成される。例えば、OS1480の機能としてデータベース1486にセキュア設定としての設定データ(図2参照)が記憶される。また、アプリケーション1482の実行に基づき印刷対象のファイルが作成(編集含む)される。さらに、プリンタドライバ1406の実行に基づきにより後述する印刷JOBが生成される。なお、各構成の詳細は、以下に説明する処理を実行可能である点を除き、従来から利用されているパソコンと同様であり、省略する。また、パソコン16及び18についてもパソコン14と同一の構成であるため、その記載を省略する。
【0019】
(セキュア設定)
図2は、セキュア設定を行うためのダイアローグを示すものである。なお、パソコン14のCPU140は、このダイアローグ300で設定され、データベース1486に記録された設定データを利用して図3の処理フローを実行する。このダイアローグ300は、パソコン100において、操作部152を介してドライバプログラム1484の設定の指示がなされたことを条件として、モニタ150に表示される。また、ダイアローグ300は、プリンタドライバ1484の設定用インターフェースの一部を構成するものである。ただし、図2ではセキュア設定以外の項目についての記載は省略している。
【0020】
図2においてチェックボックス302は、セキュア印刷を実行するか否かを指定するチェックボックスである。CPU140は、チェックボックス302にチェックが入力され、この入力に関するデータを取得した場合、以下の説明の各項目のデータをデータベース1486に記録する。
【0021】
ダイアローグ300のユーザー名入力ボックス304は、セキュア印刷が指定された印刷JOBの印刷処理の開始の条件となる認証に利用される認証情報の1つであるユーザー名の入力を受け付ける入力ボックスである。パスワード入力ボックス306は、ユーザー名とともに認証に利用される認証情報の他の1つであるパスワードの入力を受け付ける入力ボックスである。なお、パソコン14でOS1480の起動に際し、ユーザー名及びパスワードを利用した認証を行う構成を採用すれば、OS1480起動のためのユーザー名及びパスワードもデータベース1486に記録される。ダイアローグ300の表示に際し、CPU140が、OS1480起動用のユーザー名及びパスワードをデータベース1486から取得し、ユーザー名入力ボックス304及びパスワード入力ボックス306に、取得したユーザー名等を入力した状態でダイアローグ300を表示する構成としてもよい。かかる場合、利用者の入力操作の負担を軽減することができる。
【0022】
フォルダパス設定ボックス308は、セキュア印刷の対象となるファイルを記憶するセキュアフォルダのパスを入力するボックスである。換言すれば、ここで設定されたパスのセキュアフォルダに記憶されているファイル及びこのセキュアフォルダより下位層のフォルダに記憶されているファイルに対して、操作部152を介して印刷指示がなされた場合、CPU140はこの印刷指示を取得し、印刷指示に基づく印刷をセキュア印刷の対象として所定の処理を実行する(図3参照)。
【0023】
参照ボタン310は、フォルダパス設定ボックス308へのパスの入力をサポートするためのボタンであり、この参照ボタン310の押下がなされた場合、CPU140は、アクセス可能な記憶領域、例えば、LAN30上の記憶領域又はHDD148内に階層構造で構築されたフォルダをツリー形式でモニタ150に表示する。そして、表示に応じて、操作部152を介して所定のフォルダが選択された場合、CPU140は選択されたフォルダのパスを取得し、取得したパスをフォルダパス設定ボックス308に表示する。
【0024】
OKボタン312は、各ボックスに入力されたデータに基づいた設定の確定を指示するためのボタンであり、CPU140は、操作部152を介してOKボタン312が押下されたことを検出した場合、ダイアローグ300に入力された各データをデータベース1486に、セキュア設定として記録(登録)する。キャンセルボタン314は、このダイアローグ300による設定を行わず、セキュア設定の処理を終了するための指示を入力するボタンである。CPU140は、キャンセルボタン314が押下されたことを検出した場合、いずれのデータもデータベース1486に登録することなく、処理を終了する。なお、セキュア印刷のための上記設定データは、各種設定データを記録するデータベース1486の他、例えば、専用のファイルに記録する構成を採用することもできる。
【0025】
(印刷JOB生成処理)
図3は、パソコン14のCPU140がプリンタドライバ1484を実行して行う印刷JOB生成処理を示すものである。先ず、CPU140は、印刷開始の指示が操作部152により入力され、この印刷指示を取得した場合、セキュア印刷モードであるか否かを判断する(S102)。具体的には、セキュア印刷モードであることを示すセキュア設定がデータベース1486に記録されているか否かに基づいて判断する。なお、セキュア印刷モードであることを示すセキュア設定は、図2のダイアローグ300のチェックボックス302にチェックされた状態でOKボタン312が押下された場合、データベース1486に記録される。
【0026】
S102の判断の結果、セキュア印刷モードではない場合(S102:No)、CPU140は、処理をS108に移行する。これに対し、セキュア印刷モードである場合(S102:Yes)、CPU140は印刷指示の対象となった印刷ファイルのフォルダ識別処理を実行する(S104)。このフォルダ識別処理においてCPU140は、OSが提供する所定の関数を利用して印刷ファイルが記憶されているパスをOS1480から取得する。
【0027】
S106でCPU140は、印刷ファイルが記憶されているフォルダがセキュアフォルダであるか否かを判断する。具体的には、S104で取得したパスと、図2のダイアローグ300のフォルダパス設定ボックス308に入力され、データベース1486にセキュア設定として記録されたセキュアフォルダのパスとの関係を判断する(S106)。印刷ファイルが記憶されているフォルダのパスがセキュアフォルダのパスを含む場合(印刷ファイルが、セキュアフォルダに記憶されている場合及びセキュアフォルダの下位のフォルダに記憶されている場合)、CPU140は、S106の判断を肯定する(S106:Yes)。これに対し、印刷ファイルが記憶されているフォルダのパスがセキュアフォルダのパスを含まない場合、CPU140は、S106の判断を否定する(S106:No)。
【0028】
S106の判断が否定された場合(S106:No)、CPU140はセキュアフラグを「0」にセットし(S108)、印刷ファイルに基づく印刷JOB(印刷JOB本体)の先頭(ヘッダ部分)にS108でセットしたセキュアフラグを付加する(S110)。S106の判断が肯定される場合(S106:Yes)、CPU140は、セキュアフラグを「1」にセットし(S112)、データベース1486から、セキュア設定として記録された認証情報(ユーザー名及びパスワード)を取得し(S114)、印刷ファイルに基づく印刷JOB(印刷JOB本体)の先頭(ヘッダ部分)にS108でセットしたセキュアフラグとS114で取得した認証情報を付加する(S116)。
【0029】
図4は印刷JOBを示すものである。詳細には、図4(a)はS110で生成される印刷JOB(以下、「印刷JOB(a)」という。)を示し、同(b)はS116で生成される印刷JOB(以下、「印刷JOB(b)」という。)を示す。印刷JOB(a)は、印刷データ、印刷設定(例えば、用紙サイズ、モノクロ印刷/カラー印刷を指定したデータ)等を含む印刷JOB本体と、セキュアプリントの対象ではない、通常の印刷(印刷JOBを受信した印刷装置12において、認証を経ることなく、受信された順序で順次印刷処理が開始される印刷をいう。)であることを示すセキュアフラグ(値として「0」が設定)を含む。なお、セキュアフラグフラグは印刷JOB(a)のヘッダ部分に記述されている。
【0030】
印刷JOB(b)は、印刷JOB本体(これについては印刷JOB(a)と同一の構成である。)と、セキュアフラグ(値として「1」が設定)及び認証情報(ユーザー名(図4(b)において「user名」と記載)及びパスワード)を含む。印刷JOB(a)と同様、セキュアフラグ及び認証情報は印刷JOB(b)のヘッダ部分に記述されている。
【0031】
S118でCPU140は、印刷JOB(a)又は(b)を印刷装置12に送信する。印刷JOB(a)又は(b)の送信は、CPU140がネットワークI/F146を制御し、印刷装置12のアドレスを宛先アドレスとしてLAN30に送出される。
【0032】
(セキュア印刷処理)
図5は、印刷装置12のCPU120がROMに記憶されたプログラムを実行して行うセキュア印刷処理を示すものである。この処理の前提として、上記印刷JOB生成処理において印刷JOB(b)(図4参照)が印刷装置12に送信され(図3のS118参照)、CPU120は、ネットワークI/F128を制御して印刷JOB(b)を受信し、受信された少なくとも1つの印刷JOB(b)がRAM124に記憶されている。
【0033】
なお、CPU120は、印刷JOB(a)をネットワークI/F128を介して受信した場合、下記に記載の処理を実行することなく、順次、印刷JOB(a)の印刷JOB本体に対して印刷処理を実行し、印刷部126で印刷を行う。すなわち、CPU120は、印刷JOBを受信した場合、受信した印刷JOBが印刷JOB(a)であるか、印刷JOB(b)であるかを、例えば、ヘッダ部分に含まれるセキュアフラグの値に基づいて判断する。そして、判断の結果、印刷JOB(a)であると判断した場合は、以下に説明する図4の処理を実行することなく印刷処理を印刷JOB(a)の印刷JOB本体に対して行い、これを印刷する(図5のS218と同一の処理)。これに対し、印刷JOB(b)であると判断した場合、図5の処理を実行する。
【0034】
例えば、印刷JOB(b)を送信する操作を事前に実行した利用者が、操作部132に用意されたセキュア印刷ボタンを押下した場合、CPU120は、セキュア印刷開始指示を取得し、この処理を開始する。先ず、CPU120は、モニタ130にユーザー名の入力を促すメッセージを表示する(S202)。この際、入力が完了し、確定操作が操作部132を介して入力されるまで待機する(S204:No,S202)。ここで、ユーザー名の入力は、RAM124に記憶された印刷JOB(b)のヘッダ部分に記述されたユーザー名をCPU120が抽出し、これをリストとして選択可能な状態で表示し、操作部132を介した選択によって行われる。なお、操作部132を構成する、例えば、テンキーボード(英数文字を入力可能)を介してユーザー名を直接入力する構成とすることもできる。
【0035】
ユーザー名入力(選択)の確定操作が操作部132を介して入力され、CPU120が選択されたユーザー名を示すデータを取得した場合(S204:Yes)、引き続き、CPU120は、パスワードの入力を促すメッセージを表示する(S206)。その際、入力が完了し、確定操作が操作部132を介して入力されるまで待機する(S208:No,S206)。パスワードの入力は、利用者が、上記テンキーボードを介して設定されているパスワードと同一の文字を入力することによって行われる。
【0036】
パスワード入力の確定操作が操作部132を介して入力され、CPU120が入力されたパスワードを取得した場合(S204:Yes)、CPU120は、S204で入力されたユーザー名をヘッダ部分に含む印刷ジョブ(b)に設定されたパスワードと、S208で入力されたパスワードとが一致するか否かを判断する(S210)。判断の結果、パスワードが一致しない場合(S212:No)、その旨を示すメッセージをモニタ130に表示した上で、この処理を終了する。なお、パスワードが一致しない場合(S212:No)、この処理を終了する構成によれば、RAM124に記憶されている印刷JOB(b)が不正に印刷されることを防止することができる。
【0037】
なお、パスワードが一致しない場合、その旨を示すメッセージをモニタ130に表示した上で、S206に移行し、再度、パスワードの入力を促すメッセージを表示する構成を採用することもできる。パスワードが誤って入力される場合もあるため、パスワードを再入力することができる構成を採用することは、この点において好適である。すなわち、パスワードが誤って入力された場合において、この処理を再度最初から実行する必要なく、セキュア印刷についての処理負担を低減することができる。また、複数回、例えば、3回、パスワードの再入力を受け付ける一方(その間であれば、S212の判断が否定された場合、処理をS206に移行する。)、3回続けてS212の判断が否定された場合(S212:No)、この処理を終了する構成を採用することもできる。これによれば、セキュリティ確保と処理負担軽減という2つの側面を両立することができる。
【0038】
印刷JOB(b)に設定されたパスワードと、S208で入力されたパスワードとが一致する場合(S212:Yes)、CPU120は、S212の判断が肯定(S212:Yes)された印刷ジョブ(b)を抽出し、抽出された印刷JOB(b)の全てをモニタ130にリスト形式で表示し(S214)、1つの印刷JOB(b)が選択されるまで待機する(S216:No,S214)。そして、1つの印刷JOB(b)が選択された場合(S216:Yes)、CPU120は選択された印刷ジョブ(b)の印刷ジョブ本体に対して印刷処理を実行し(S218)、印刷部126で印刷を行い、この処理を終了する。
【0039】
なお、上記実施形態では、フォルダパス設定ボックス308に設定されたパスのセキュアフォルダ及びこのセキュアフォルダより下位層のフォルダ内に記憶されているファイルをセキュア印刷の対象とするように、図3のS106の判断を行った。しかし、これと異なる構成を採用することもできる。例えば、フォルダパス設定ボックス308に設定されたパスのセキュアフォルダ内に記憶されているファイルのみをセキュア印刷の対象とするような構成を採用することができる。この場合、S106の判断は、印刷ファイルが記憶されているフォルダのパスとセキュアフォルダのパスとが一致するか否かに基づきなされる。
【0040】
また、上記実施形態ではセキュア印刷の対象となるファイルを記憶するセキュアフォルダのパスを、フォルダパス設定ボックス308に入力することとした。しかし、これと異なる構成を採用することもできる。例えば、セキュアプリントの対象とはならないファイルを記憶するフォルダのパスを、フォルダパス設定ボックス308に入力し、このフォルダ(以下、「非セキュアフォルダ」という。)のパスをデータベース1486に記録する構成とすることもできる。この場合、CPU140は、例えば、印刷ファイルが記憶されているフォルダのパスが非セキュアフォルダのパスを含む場合(印刷ファイルが、非セキュアフォルダに記憶されている場合及び非セキュアフォルダの下位のフォルダに記憶されている場合)、S106の判断を否定する(S106:No)。これに対し、印刷ファイルが記憶されているフォルダのパスが非セキュアフォルダのパスを含まない場合、CPU140は、S106の判断を肯定する(S106:Yes)。
【0041】
また、上記実施形態の図3に示す印刷JOB生成処理では、この印刷JOB生成処理はプリンタドライバ1484がCPU140によって実行されることで行われる処理として記載した。しかし、例えば、アプリケーション1482で印刷機能を構成するプログラム部分に基づき実行される構成とすることもできる。
【0042】
(実施形態の構成に基づく有利な効果)
上記実施形態では、セキュア設定としてデータベース1486にセキュア設定として記録されたセキュアフォルダのパスと、印刷対象の印刷ファイルが記憶されているフォルダのパスとの関係に基づき、印刷装置12に対して送信する印刷JOBが、セキュア印刷の対象であるか否かを判断し(図3のS106)、セキュア印刷の対象であると判断される場合(図3のS106:Yes)、セキュア印刷の対象であることを示すセキュアフラグ(値:1)を自動的に印刷JOBのヘッダ部分に記述する構成を採用した(図3のS112)。これによれば、利用者は、所定のファイルの印刷の都度、セキュア印刷を行うか否かの選択を行うことなく、セキュア印刷を実行することができる。特に、セキュア印刷と通常の印刷を混在して実行する場合において、利用者の操作負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態における印刷システムの概略を示す図
【図2】本発明の実施形態におけるセキュア設定用のダイアローグを示す図
【図3】本発明の実施形態における印刷JOB生成処理フローを示す図
【図4】(a)及び(b)は、本発明の実施形態における印刷JOBを示す図
【図5】本発明の実施形態におけるセキュア印刷処理フローを示す図
【符号の説明】
【0044】
10 印刷システム
12 印刷装置、
14 パソコン
120,140 CPU
122,142 ROM
124,144 RAM
148 HDD
1484 プリンタドライバ
1486 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報が対応付けられた第1印刷ジョブの印刷処理を、前記第1印刷ジョブに対する認証を条件として実行し、前記所定の情報が対応付けられていない第2印刷ジョブの印刷処理を、前記第2印刷ジョブに対する認証を条件とすることなく実行する印刷装置に送信される、前記第1印刷ジョブ及び前第2印刷ジョブを生成するためのコンピュータが読み取り可能な印刷ジョブ生成プログラムであって、
前記コンピュータを
所定のフォルダのパスの記憶を制御する記憶制御手段と、
印刷の対象となるファイルが記憶されているフォルダのパスを取得するパス取得手段と、
前記所定のフォルダのパスと、前記パス取得手段により取得されたフォルダのパスと、の関係を判断する第1判断手段と、
前記第1判断手段が、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が所定の関係にあると判断した場合、前記第1印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成手段として機能させるための印刷ジョブ生成プログラム。
【請求項2】
前記所定の関係とは、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が一致する関係、又は、前記パス取得手段が取得したフォルダのパスが前記所定のフォルダのパスを含む関係であることを特徴とする請求項1に記載の印刷ジョブ生成プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、
前記第1判断手段が、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が前記所定の関係にないと判断した場合、前記第2印刷ジョブを生成する、前記印刷ジョブ生成手段として機能させるための請求項1又は請求項2に記載の印刷ジョブ生成プログラム。
【請求項4】
所定の情報が対応付けられた第1印刷ジョブの印刷処理を、前記第1印刷ジョブに対する認証を条件として実行し、前記所定の情報が対応付けられていない第2印刷ジョブの印刷処理を、前記第2印刷ジョブに対する認証を条件とすることなく実行する印刷装置と、前記印刷装置に前記第1印刷ジョブ及び前記第2印刷ジョブを送信するコンピュータと、を含む印刷システムであって、
前記コンピュータは、
所定のフォルダのパスを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段への前記所定のフォルダのパスの記憶を制御する記憶制御手段と、
印刷の対象となるファイルが記憶されているフォルダのパスを取得するパス取得手段と、
前記所定のフォルダのパスと、前記パス取得手段により取得されたフォルダのパスと、の関係を判断する第1判断手段と、
前記第1判断手段が、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が所定の関係にあると判断した場合、前記第1印刷ジョブを生成し、前記第1判断手段が、前記所定の関係にないと判断した場合、前記第2印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成手段と、
前記第1印刷ジョブ及び前記第2印刷ジョブを、前記印刷装置に送信する送信手段と、を備え、
前記印刷装置は、
印刷手段と、
前記コンピュータから送信される、前記第1印刷ジョブ及び前記第2印刷ジョブを受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した印刷ジョブが、前記第1印刷ジョブ又は前記第2印刷ジョブのいずれであるかを判断する第2判断手段と、
第2判断手段が前記第1印刷ジョブと判断した場合、認証情報の入力を求める認証情報要求手段と、
前記認証情報要求手段による認証情報の要求に応じて、前記印刷装置に入力された認証情報を取得する認証情報取得手段と、
前記認証情報取得手段が取得した認証情報と、前記所定の情報と、の一致を判断する第3判断手段と、
前記第3判断手段が一致すると判断した場合、前記印刷手段による前記第1印刷ジョブの印刷処理の実行を制御し、前記第2判断手段が前記第2印刷ジョブと判断した場合、前記印刷手段による前記第2印刷ジョブの印刷処理の実行を制御する印刷制御手段と、を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
前記所定の関係とは、前記判断の対象となったフォルダのパス各々が一致する関係、又は、前記パス取得手段が取得したフォルダのパスが前記所定のフォルダのパスを含む関係であることを特徴とする請求項4に記載の印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−67100(P2010−67100A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234073(P2008−234073)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】