説明

印刷処理システム

【課題】プリントサーバからの印刷時に印刷装置で自動リカバリーが不可、または印刷内容、印刷物破損のエラーが発生した場合などに再印刷を行うときの操作性向上が図れる印刷処理システムを提供する。
【解決手段】印刷ジョブを管理するプリントサーバにおいて、印刷装置への印刷ジョブ転送の方法を前ジョブの印刷完了を待って転送するか、前ジョブの印刷完了を待たずして連続して転送するかをユーザが定義した印刷ジョブの優先度によりジョブ毎に決定し制御できることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ジョブを一旦蓄え、印刷ジョブの操作や運用管理および印刷装置の管理、監視機能を備えたプリントサーバであり、印刷装置に対する再印刷時の操作性を向上する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホストコンピュータから印刷装置に送られた印刷ジョブは、通常印刷処理を終了した後直ちに消去されるため、再印刷するには再びホストコンピュータから印刷ジョブを送信する必要があった。
【0003】
これに対して、特開2001−105689号公報では、プリンタからホストコンピュータに情報を送信して再印刷の操作性を向上する方法がある。
【0004】
また、このような印刷ジョブの操作性向上のため、印刷ジョブ機能全般を行うプリントサーバが一般的に考えられている。
【0005】
これに対して、特開平08−221227号公報ではプリントサーバを介して印刷ジョブを印刷装置で保持しつつ、管理をプリントサーバで行うことで再印刷を容易に行うことが可能となっている。
【0006】
しかし、特開2001−105689号公報や特開平08−221227号公報では印刷装置の機能が必要となり、印刷装置の依存部分が大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、プリントサーバから印刷装置への印刷ジョブ転送の方法を前ジョブの印刷完了を待って印刷する方法は、スプールや印刷装置毎に指定はできたがジョブ毎に制御することはできなかった。
【0008】
通常の印刷において、再印刷が必要となるエラーおよび印刷内容、印刷物破損などが発生した場合、プリントサーバから該当ジョブを選択して再印刷を行う。
【0009】
しかし、再印刷操作以前に印刷装置に既に後続のジョブが送信されている場合、通常は後続ジョブの印刷が終了した後再印刷を行うか、後続のジョブを印刷装置からキャンセルして消去した後再印刷を行う必要がある。
【0010】
そのため、プリントサーバからの印刷ジョブの転送方法を制御することで後続ジョブの制御を行い、印刷時に発生する再印刷処理のオペレータ操作のわずらわしさを軽減する必要がある。
【0011】
また、特開2001−105689号公報や特開平08−221227号公報も再印刷時の操作性向上を図るものであるが、印刷装置側に特別な機能を有するため実現するには印刷装置が限定される。
【0012】
本発明は、プリントサーバからの印刷時に印刷装置で自動リカバリーが不可、または印刷内容、印刷物破損のエラーが発生した場合などに再印刷を行うときの操作性向上が図れる印刷処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、印刷ジョブを管理するプリントサーバにおいて、印刷装置への印刷ジョブ転送の方法を前ジョブの印刷完了を待って転送するか、前ジョブの印刷完了を待たずして連続して転送するかをユーザが定義した印刷ジョブの優先度によりジョブ毎に決定し制御できることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、印刷装置で自動回復不可能なエラーの発生回数および再印刷指示の回数の一定期間の履歴を記憶でき、本回数が一定数を超えると、プリントサーバから印刷装置への印刷ジョブ転送の方法を自動的に前ジョブの印刷完了を待って印刷する方法をとることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、印刷ジョブの印刷量(例えばページ数、容量)を管理できる印刷制御装置を有し、前記印刷量が一定量を超えるとプリントサーバから印刷装置への印刷ジョブ転送の方法を自動的に前ジョブの印刷完了を待って印刷する方法をとることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、再印刷要の障害が発生した場合に、再印刷を即座に行いたい或いはジョブの出力順序を変えたくない印刷ジョブを定義でき、その印刷ジョブの印刷完了まで後続印刷ジョブを印刷装置に転送しないので、後続印刷ジョブの印刷またはキャンセルを考慮しなくてよく、オペレータの再印刷処理の負荷を低減できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、再印刷要の障害が発生した場合に後続ジョブに大量な印刷ジョブがあっても、印刷中の印刷ジョブの印刷完了まで後続印刷ジョブを印刷装置に転送しないので、オペレータの再印刷処理の待ち時間を少なくでき、再印刷処理の負荷を低減できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、再印刷要の障害が多いシステムおよび少ないシステムを運用の履歴から判定し、再印刷処理による運用負荷が多い場合には自動的に印刷中の印刷ジョブの印刷完了するまで後続印刷ジョブを印刷装置に転送しないので、運用全体を通してオペレータの再印刷処理の負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】複数ジョブ印刷時の再印刷要の障害の対応例1を示す図である。
【図2】複数ジョブ印刷時の再印刷要の障害の対応例2を示す図である。
【図3】本発明による複数ジョブ印刷時の再印刷要の障害の対応例を示す図である。
【図4】システム構成および設定画面を示す図である。
【図5】図1、2における通常プリントサーバから印刷装置へのジョブ送信方法を示す図である。
【図6】プリントサーバから印刷装置への1ジョブ毎に送信する方法を示す図である。
【図7】本発明でのプリントサーバから印刷装置への送信方法例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
現状、プリントサーバから印刷装置に連続して印刷ジョブを送信したときに、再印刷を必要とする障害が発生した場合のオペレータ操作の流れの例を図1、2に示す。
【0021】
図1は再印刷を要する障害が発生したときに転送済みの後続の印刷ジョブを印刷した後、該当ジョブを再印刷する場合、図2は再印刷を要する障害が発生したときに転送済みの後続の印刷ジョブをキャンセルで印刷装置から削除した後該当ジョブを再印刷し、後にキャンセルした後続ジョブも印刷する場合である。
【0022】
オペレータは図1の101、102の操作でプリントサーバからジョブ1からNまでのN個の印刷ジョブを連続して印刷装置に転送し印刷を実行する。通常は図5の転送方法のようにプリンタサーバ400から印刷装置410に立て続けに印刷ジョブが送信される。
【0023】
このとき103でジョブ1で再印刷要の障害が発生すると104でオペレータはジョブ1の障害を排除する。
【0024】
その際、通常の印刷装置では該当ジョブは、印刷装置から削除される。
【0025】
後続のジョブは既にプリントサーバからジョブの転送実行が行われているため、ジョブ1の印刷ジョブが印刷装置から排除されるとジョブ2からNの印刷が開始される。
【0026】
オペレータはジョブ1の再印刷を行いたいが、既にジョブ2からNの印刷が始まるため、ジョブ2からNの印刷が印刷完了するのを待ってジョブ1の再印刷処理を行う106、107。
【0027】
このときジョブ2からNの印刷量が少なければ、ジョブ1の再印刷の操作に影響は少ないが、印刷量が大量の場合はジョブNまでの印刷を待つ必要があるのでオペレータの待ち時間に負担がかかる。
【0028】
また、ジョブ1からNの量が把握できていれば、待ち時間の予測もできるが印刷量が不明な場合はオペレータに混乱を招く。
【0029】
更にジョブ2からNよりジョブ1の印刷が優先する場合、ジョブ1からNの印刷順序性が確保されなければいけない場合などは後工程の仕分け作業が必要となり、オペレータによる判断や操作に負担がかかる。
【0030】
図2のオペレーション操作の例は、ジョブ1で再印刷要の障害が起こった後、206でジョブ2からNまでの転送済みの印刷ジョブを印刷装置内からキャンセルした後、プリンタサーバからジョブ1の再印刷を実行するオペレーションである。
【0031】
本オペレーション操作ではジョブ1の順序性を確保でき、よりジョブ1の再印刷を早く行えるが、再度ジョブ2からNの再送処理をオペレータが判断して操作しなくてはいけないとともにタイミングによってはジョブ2からNの印刷が出力される場合があるため、後工程でオペレータの判断や操作の負荷がかかる。
【0032】
また、商業印刷では問題となる2重印刷を誘発する恐れがある。
【0033】
このような再印刷時のプリントサーバのおけるオペレータの操作をより容易にするひとつの案として図6のような転送方式を用いることで、印刷ジョブを印刷完了するまで待ち、後続のジョブをプリンタに転送しないことで再印刷要となった印刷ジョブの再印刷を即座に行えることが考えられる。図3は本転送方式図6を用いたときの再印刷の操作の流れの例であり、図1,2と比較して後続のジョブの処理待ちやキャンセル、再送などを考慮する必要がなくなる。
【0034】
しかし、本転送方式図6では印刷装置が常に1ジョブ毎しか処理できないため、本来印刷装置が備えている機能を十分使えないとともに、印刷のトータルスループットの性能がでない問題が発生する。
【0035】
本発明では、通常は連続した印刷ジョブの転送方式図5を行うが、再印刷の障害が発生した場合も順序性確保、即時リカバリを必要とする優先度の高い印刷ジョブについては印刷ジョブの転送方式図6を行うことでオペレータ操作の再印刷処理の操作性向上を実現する。
【0036】
図7は本発明における印刷ジョブの転送方式を示すものである。ジョブ1は再印刷要の障害発生時に即座に再印刷をする必要があるジョブで、ジョブ2からNは再印刷時の即時性が低いジョブであり、そのときの転送方式の例である。
【0037】
これにより再印刷時は図3と同様にとなり、オペレータ負荷を低くすることができる。
【0038】
更に、もし再印刷が発生したときに後続ジョブの処理に時間がかかると考えられる場合、および印刷装置や使用用紙などの影響で再印刷処理が多発している状況にある場合などを判別する機能を有し、そのような場合も印刷完了を待つ転送方式を行うことで、再印刷時に発生するオペレータのわずらわしさを低減するものである。
【0039】
本発明のシステムについて図4で説明する。
【0040】
421,422,423はプリントサーバからの印刷装置への印刷ジョブの転送について、ジョブの印刷完了を待って印刷ジョブを転送するか無条件に印刷ジョブを転送するかの設定である。
【0041】
421のジョブ定義は、上位装置からの受信キューを定義するものであり、再印刷優先ジョブ受信キュー408に転送してきたものは再印刷の障害発生時即時に再印刷できるものと扱い、そのジョブの印刷完了を認識しない場合は後続ジョブを印刷装置に転送しないものとする。
【0042】
また、性能優先ジョブ受信キュー409に来たものは再印刷の障害が発生しても即時に再印刷の必要性がないものであり後続ジョブは無条件に印刷装置に転送するものとする。
【0043】
これらのキューへの受信は印刷ジョブ受信部401でジョブ毎に判別され印刷ジョブに対しジョブ定義情報が定義される。
【0044】
印刷ジョブ出力制御部406ではその印刷ジョブに定義されているジョブ定義情報により印刷装置への転送方法を決定し処理する。
【0045】
再印刷要の障害時に即座に再印刷すべき印刷ジョブかの定義はキューによるもの意外に、ジョブIDやジョブ名、ジョブ情報などで定義してもよい。
【0046】
422のジョブ容量は、設定された大きさを印刷ジョブが超えたときは、前ジョブの印刷完了が終了するまで本ジョブの印刷装置への送信をまつものである。
【0047】
もし前ジョブで再印刷要の障害が発生した場合に、前ジョブを再印刷操作するための本ジョブを印刷完了処理またはキャンセル処理する待ち時間を制限する目的の定義である。
【0048】
印刷ジョブ情報解析部403でジョブの容量を認識し、印刷部出力制御部406で印刷ジョブの転送方式を決定し処理する。
【0049】
423の再印刷転送機能条件である。もともと運用およびシステムが安定しており、再印刷要の障害発生がほぼ0の場合は本発明の機能は不必要なものである。その為、現時点から前にさかのぼった一定の期間に再印刷の処理があまり行われていない場合は、印刷装置の本来の印刷性能を引き出すために本機能を抑止する設定である。ここでは再印刷操作および再印刷を要する生涯の発生回数が現時点から1週間以内で10未満の場合は再印刷の操作によるオペレータ運用負荷は小さいものとして本機能を抑止するものである。
【0050】
再印刷操作履歴404および印刷エラー履歴405の履歴から再印刷操作および再印刷を要する生涯の発生回数を判定して印刷ジョブ出力制御部406にて転送方式を制御する。
【0051】
このほか、再印刷のオペレータ負荷の軽減にかかわる条件を設定項目に織り込むことで、再印刷の操作性向上をあげることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
400・・・プリントサーバ、401・・・印刷ジョブ受信部、402・・・印刷ジョブ管理部、403・・・印刷ジョブ情報解析部、404・・・印刷ジョブ操作部、405・・・印刷エラー履歴、406・・・印刷エラー出力制御部、407・・・印刷エラースプール、408・・・再印刷優先ジョブ受信キュー、409・・・性能優先ジョブ受信キュー、410・・・印刷装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2001−105689号公報
【特許文献2】特開平08−221227号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブを管理するプリントサーバにおいて、印刷装置への印刷ジョブ転送の方法を前ジョブの印刷完了を待って転送するか、前ジョブの印刷完了を待たずして連続して転送するかをユーザが定義した印刷ジョブの優先度によりジョブ毎に決定し制御できることを特徴とするプリントサーバ。
【請求項2】
印刷装置で自動回復不可能なエラーの発生回数および再印刷指示の回数の一定期間の履歴を記憶でき、本回数が一定数を超えると、プリントサーバから印刷装置への印刷ジョブ転送の方法を自動的に前ジョブの印刷完了を待って印刷する方法をとることを特徴とするプリントサーバ。
【請求項3】
印刷ジョブの印刷量を管理できる印刷制御装置を有し、前記印刷量が一定量を超えるとプリントサーバから印刷装置への印刷ジョブ転送の方法を自動的に前ジョブの印刷完了を待って印刷する方法をとることを特徴とするプリントサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−170370(P2010−170370A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12668(P2009−12668)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】