説明

印刷可能な酸素検知性組成物

酸素含有量に比例して蛍光を発することのできる酸素検知性染料、および該染料のためのポリマーマトリックスを含むインキ組成物であって、該ポリマーマトリックスがペンダントのスルホン酸基またはホスホン酸基、またはそれらの基の塩若しくはエステルを有する単位を含むことを特徴とする、インキ組成物。該組成物は非侵襲的な方法で包装内の酸素濃度を測定する適当な測定器とともに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な印刷技術によって印刷できる酸素検知性組成物に関する。酸素含量を検知する測定システムの開発は、種々様々の用途において非常に重要である。酸素は、大きく生成物の寿命を低減し、その結果重大な損傷を引き起こすことがある。食品、飲料、医薬品および様々な他の生成物は、酸素に暴露された時に、時間とともに貯蔵寿命が短くなる場合がある。
【0002】
それによって低い酸素レベルを維持できる方法は現在も存在する。包装された製品のメーカーは、これを達成するために包装材料とシステムを開発した。例えば包装材料は、低酸素にされた雰囲気の包装(MAP)、または真空の包装(VP)内に脱酸素剤を含むことがある。パッケージ内の酸素含量は、パッケージ内のヘッドスペースの酸素含量の分析により測定できる。また、多くの方法が現在利用可能であり、例えば侵襲的・非侵襲性ヘッドスペースアナライザが利用できる。Mocon社およびDansensor社は侵略的なヘッドスペースアナライザを開発した。不都合にも、これらは酸素含量が測定されるパッケージを貫通するプローブデバイスを必ず必要とし、したがってパッケージの完全性を破壊し、コストを増大させ、浪費させる。さらに、明白に、すべてのパッケージがこのようにテストされることはできず、デバイスは単にサンプルに使用され、その結果から試験されていないパッケージの酸素含有量に関して推察される。
【0003】
したがって、非侵襲性のヘッドスペースアナライザーを開発するための、パッケージされた製品のメーカーおよびガス分析器のメーカーによる協力が行われていた。多くの先行技術が存在するが、その問題のすべてが解決されたわけではなく、厳しい競争が生じている。一般に、採用されたアプローチは、ポリマーマトリクス中に不動化された金属錯体を含む、印刷可能な酸素検知性コーティングを開発し、基体上にこのコーティングを印刷することであった。その後、印刷されたコーティングは、たとえば青色LEDで照射され、得られる蛍光がコーティングによって検知された酸素の量を表示する。酸素含有量を決定するためにこれを使用する2つの一般的な方法がある。1つは正確な螢光の強度に依存する。また他方は、螢光の減衰時間を測定する。使用される包装のタイプに依存して、強度が変化する場合があると考えられるので、後者はより正確であると考えられる。
【0004】
米国特許2006/0257094 Alは、非侵襲性・非破壊性の方法でパッケージの完全性を確認する、ガス分析器を備えた光学的検知性のフィルムを記載する。ガスセンサーは、印刷可能またはコーティング可能な溶液から製造され、溶液の酸素検知成分は多孔性のハイブリッドゾル・ゲルの中で不動化されたトリス(4,7−ジフェニル−l−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩化物である。染料が多孔性のマトリックス内にトラップされ、センサーにその所望の特性を与える。米国特許6,689,438 B2は、固体物品の酸素検出システムを記載する;好ましい酸素インジケータは、15−20μmのフィルム膜厚さを有するセルロースアセテートブチレート(CAB)、ポリスチレン(PS)またはポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)の中で不動化されたパラジウム錯体である。ある場合には、酸素感度が、可塑剤またはリン酸トリブチルの添加によってさらに増加された。米国特許5,030,420は、ガスまたは液体環境中での酸素の存在の決定のための方法および装置を記載する。そこでは、ルミネセンス酸素検知材料である(トリス(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)−ルテニウム(II)過塩素酸塩がシリコンゴム中で不動化される。好適な有機溶液からのキャリアマトリックス中へのルテニウム染料の不動化は、最終の重合、およびイオン性または共有結合の前の、拡散または混合により達成される。キャリアマトリックスは、プレキシグラス(Plexiglas)、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリカーボネート、テフロン(登録商標)、ポリスチレン、ホリフッ化ビニリデン、ポリ(テトラフロオルエチレンプロピレン)、およびアニオンおよびカチオン交換樹脂から選ばれる。ポリマーは、テフロンのような酸素透過性で溶剤抵抗性のある樹脂でオーバーコーティングすることにより、環境からさらに保護される。米国特許2006/0228804 Alは、酸素を検知するための改質されたルテニウム錯体ルミネセンス染料を開示し、該染料は共有結合によりルテニウム染料の配位子への長鎖疎水性基の付加によって改質され、染料が無極性の溶剤、たとえばトルエンに可溶とされ、無極性のポリマー、例えばポリスチレンの中で不動化されることを可能にする。
【0005】
先行技術材料のどれも完全には成功していない。例えば、ゾル・ゲルに基づいたコーティングは、貧弱な酸素透過に帰着する多孔質構造の収縮および崩壊を受けやすい;またカルボン酸ポリマーに基づいたものは十分な精度を与えない。
【0006】
我々は、酸素検知性化合物のための支持体として使用されるポリマー中に、スルホン酸またはホスホン酸(または等価な塩またはエステル)を導入することにより、これらの欠点を克服することを可能にできることを驚くべきことに見出した。その結果、我々は、印刷可能な酸素検知性要素を生産できるインキを開発した。
【0007】
Oxysense(登録商標)は、ルテニウム染料錯体の螢光寿命/減衰に基づいた酸素検出用の非侵襲性の光学的センサーを商業化した。WO 01/63264 Alは、Ru染料錯体を埋め込む媒体としてフッ素化シリコンポリマーの使用を示す。得られる埋め込まれた錯体は、Oxysenseシステム中でセンサーとして使用されることができる。埋め込まれたRu錯体は、多孔質ガラス内のドットとして形成され、ビーズのような構造を取る。「OxyDots」として知られるガラスビーズが作られ、それぞれのバッチがキャリブレーションされる。それぞれのドットはパッケージに個々に付着しなければならない。明白に、これは大量の食品包装の測定ではなく、実験室での酸素分析の使用に限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一貫したフィルム重量でドットを印刷するために使用できるインキの開発によって、我々は個々の付着の必要を排除し、大量に印刷されたドットの可能性を開く。これは食品包装用途に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、酸素含有量に比例した方法で蛍光を発することができる酸素検知性染料(oxygen sensitive dye);および染料のためのポリマーマトリクスを含むインキ組成物であって、該ポリマーマトリクスがスルホン酸基またはホスホン酸基、またはかかる基の塩類もしくはエステルのペンダント基を有する単位を含むことを特徴とするインキ組成物に関する。
【0010】
本発明は、さらに別の態様で、低酸素の改質された雰囲気または真空の包装された物質であって、包装の内側に酸素センサーを有し、該酸素センサーが本発明にかかるインキ組成物であることを特徴とする包装された物質に関する。
【0011】
本発明で使用される酸素検知性染料の性質に特別の制限はなく、従来の組成物中で使用されていた任意のそのような染料が等しく使用されることができる。染料は、それを囲む大気の酸素含有量に比例した方法で蛍光を発することが望ましい。したがって、例えば、螢光の強度が酸素含有量に比例するか、またはより好ましくは、先行技術でのように、螢光の減衰が酸素含有量に比例することができる。そのような染料の例としては、たとえば、ルテニウム(II)、オスミウム(II)、イリジウム(III)、ロジウム(III)およびクロムイオンと、配位子、特にはα−ジイミン配位子、たとえば2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−l−10−フェナントロリン、4,7−ジスルホネイティッド−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−ブロモ−1,10−フェナントロリン、5−クロロ−1,10−フェナントロリン、および他のジイミン配位子があげられる。これらの錯体の例としては、トリス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)塩類、トリス(l,10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩類および、トリス(4,7−ジフェニル−l−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩類、特には上記の塩化物があげられる。他の可能なシステムとしては、類似する、α―ジイミン配位子と、パラジウム(II)およびプラチナ(II)との錯体があげられる。これらの染料のうち、トリス(4,7−ジフェニル−l−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩類、特には塩化物が好ましい。
【0012】
次いで、これらの染料の1つ以上が、ペンダントスルホン酸性基またはホスホン酸性基を有するポリマーマトリクスの中で不動化される。用語「スルホン酸性基」は本明細書においてはスルホン酸基、およびスルホン酸基から誘導される塩およびエステルを意味し、用語「ホスホン酸性基」は本明細書においてはホスホン酸基、およびホスホン酸基から誘導される塩およびエステルを意味する。本発明で使用されるポリマーは、例えばアクリルモノマーまたはオリゴマーのような第一のエチレン性不飽和化合物と、1以上のスルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する第二のエチレン性不飽和化合物との共重合により調製されることができる。アクリルモノマーまたはオリゴマーと、スルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物については、共重合可能であれば、特には限定されない。
【0013】
好適なアクリルモノマーの例としては:アクリル酸;メタクリル酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレートおよびイソヘキシルアクリレートのようなアルキル(好ましくはC−Cアルキル)アクリレート;メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、イソプロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルメタアクリレート、sec−ブチルメタアクリレート、t−ブチルメタアクリレート、ペンチルメタアクリレート、イソペンチルメタアクリレート、ヘキシルメタアクリレートおよびイソヘキシルメタアクリレートのようなアルキル(好ましくは(C−Cアルキル)メタアクリレート;フェニルアクリレート、フェニルメタアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタアクリレート、ナフチルアクリレートおよびナフチルメタアクリレートのようなアリールおよびアルアルキルのアクリレートおよびメタアクリレートがあげられる。これらのうち、特にアルキルアクリレート、特にはブチルアクリレートが好ましい。第一のエチレン性不飽和化合物として使用されることができる他のモノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、メチルスチレンおよび酢酸ビニルがあげられる。第一のエチレン性不飽和化合物として使用されることができるオリゴマーとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーアクリレートおよびポリε−カプロラクトン(メタ)アクリレートがあげられる。ポリウレタン、ポリエステルおよびポリエーテルのようなポリマーも、スルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物と共重合することができる。
【0014】
好適なスルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物の例としては、式(I)を有する化合物があげられる:
【0015】
【化1】

【0016】
式中、Rは水素原子またはC−Cアルキル基を表す;Xは酸素原子、式−(NH)−の基、あるいはアルキレン基を表す;Rはアルキレン基、アリーレン基、−A−B−(式中、AとBのうちの1つはアルキレン基を表し、AとBの他方はアリーレン基である)、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基である;Xは酸素原子またはアルキレン基を表わす;Zは、式(II)または(III)の基を表す:
【0017】
【化2】

【0018】
式中Rはヒドロキシ基、アルキル基、アリールアルキル基、アルコキシ基または式(IV)の基を表わす:
【0019】
【化3】

【0020】
式中、R、X、RおよびXは先に定義されたとおりである;またはそれらの塩類およびエステル。
【0021】
好適なスルホン酸性基含有化合物の例としては以下があげられる:アクリル基含有化合物、たとえば式(V)の化合物:
【0022】
【化4】

【0023】
式中、Rは先に定義された通りである;Xは酸素原子または式−NH−の基を表わす;またRはアルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表わす;またはそれらの塩類およびエステル。
【0024】
好適なホスホン酸性基含有化合物の例としてはアクリル基を含んでいる化合物(例えば式(VI)の化合物)を含んでいる:
【0025】
【化5】

【0026】
、R、R、XおよびXは先に定義されたとおりである。RまたはRはアルキル基を表わし、これは好ましくは1から6の炭素原子を有し、直鎖または分岐鎖の基であることができる。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、2−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチルおよび2−エチルブチルがあげられる。この中で、エチルおよびメチル、特にはメチル基が最も好ましい。
【0027】
ここで、R、X、X、AまたはBがアルキレン基を表す場合、これは2価の飽和脂肪族炭化水素基であり、好ましくは1から3の炭素原子を有し、例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、およびヘキサメチレン基があげられる。この中ではメチレン、エチレン、およびトリメチレン基が好ましい。
【0028】
、AまたはBがアリーレン基を表わす場合、これは二価の芳香性の炭素環式の基であり、置換されても非置換でもよい。例としては、フェニレン、α―ナフチレン、およびβ−ナフチレン基、およびそれらの置換された類縁体があげられる。
【0029】
がアルキレンオキシまたはオキシアルキレン基を表す場合、これは好ましくは1から6の炭素原子を有し、直鎖または分岐鎖の基であることができる。これは、1端が酸素原子(「オキシ」)を介して、他の端が炭素原子(「アルキレン」部分)を介して結合している2価の基である。例としては、メチレンオキシ、オキシメチレン、エチレンオキシ、オキシエチレン、プロピレンオキシ、オキシプロピレン、トリメチレンオキシ、オキシトリメチレン、テトラメチレンオキシ、オキシテトラメチレン、ペンチレンオキシ、オキシペンチレン、ヘキシレンオキシ、オキシヘキシレンがあげられる。この中で、1から4個の炭素原子を有するものが好ましい。
【0030】
式(I)の好ましい化合物では、Rは水素原子またはメチル基を表わし、Rは2から4の炭素原子を有するアルキレン基を表し、より特に好ましくはXが−NH−基を表わすものである。これらのうち、最も好ましい化合物は2−アクリルアミド−2−メチル−l−プロパンスルホン酸およびその塩類である。好適な塩類の例としては、Li、Na、K、Mg++、Ca++、Al+++、NH、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウムおよび第四級アンモニウム塩(およびそれらのアリールおよびアルアルキルの類縁体)があげられる。
【0031】
別法として、カルボン酸基のような反応性基のペンダントを有するあらかじめ形成されたポリマーを、スルホン酸基またはホスホン酸基、それらの塩またはエステルを含む化合物と反応させることができる。この場合、スルホン酸性基またはホスホン酸性基を含む化合物は式(VII)を有する:
HO−X−R−X−Z (VII)
または(VIII):
N−X−R−X−Z (VIII)
式中、R、R、X、XおよびZは先に定義されたとおりである。
【0032】
フリーラジカル重合反応用のアクリルスルホン酸およびアクリルホスホン酸モノマーの例としては、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート・カリウム塩、3−スルホプロピルメタアクリレート・カリウム塩、エチレングリコールメタアクリレート・リン酸塩およびビス[2−(メタアクリロイルオキシ)エチル]リン酸塩があげられる。エステルおよびアミド結合形成用のためのスルホン酸モノマーおよびホスホン酸モノマーの例としては、3−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチルホスホン酸および3−アミノプロピルホスホン酸があげられる。
【0033】
スルホン酸性基またはホスホン酸性基含有化合物に由来する単位の割合は、広い範囲にわたって変わることができる。これらの単位は、スルホン酸性基またはホスホン酸性基含有ポリマーの50重量%未満を構成することが好ましく、たとえばポリマーの5から20重量%、より好ましくは7から15重量%を構成する。
【0034】
ポリマーは、当業者に公知の技術によって調製されることができる。
【0035】
何らかの理論によって制限されることを望むものではないが、我々はたとえば以下のように、酸素検知性染料を含む最初の錯体がスルホン酸性基を備えたポリマーとイオン交換を行い、染料とポリマーが結合するものと考えている。
【0036】
【化6】

【0037】
上記の材料に加えて、組成物は、組成物を印刷可能にするために他の成分を含むことができる。そのような他の成分としては、たとえば樹脂、溶剤(例えばイソプロピルアルコール)、剥離剤(例えばポリジメチルシロキサン)およびバインダー(たとえばポリビニルブチラール(PVB)、ニトロセルロース、ポリウレタン(PU)、ポリエステル、セルロース・アセチル・プロピオネート(CAP)、ポリアクリレート、ポリアミドおよびポリビニルアルコール)があげられる。
【0038】
組成物は多くの公知の印刷技術を使用して印刷されることができる。たとえばグラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、凸版活字印刷、スクリーン印刷およびオフセット印刷技術が使用できる。本発明の組成物は、使用される印刷技術の特定の要求に従って、公知の方法で配合できる。
【0039】
本発明の組成物が印刷される基体の性質についての制限はない。例としては紙、厚紙、セロハンおよび様々なプラスチックフィルムがあげられる。産業、特に食物包装において一般に使用されるすべてのプラスチック材料がプラスチックフィルムとして使用されてもよい。そのような材料の例としては合成および半合成有機ポリマーがあげられ、たとえば酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セロハン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルフルオライド、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリビニルアセタール、
ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミドおよび、それらのコポリマーおよび/または混合物があげられる。所望の場合、これらのポリマーのうちの任意のものから作られたフィルムは、当該技術分野において公知のコーティング材料でコーティングされることができ、および/または同じか又は相違するポリマーで作られた1つまたは複数のフィルムにラミネートすることができる。そのようなプラスチック材料のさらなる例は、1989年発行の”Plastic Films”、第3版、J. H. Briston 著,Longman Group 発行のような標準的な教科書に記載されている。
【0040】
本発明の組成物は、好適な溶剤または溶剤の混合物と、インキとして配合される。溶剤の性質は主にそれが使用される印刷プロセスの性質に依存して変わる。例えば、インキがフレキソグラビアまたはインクジェット印刷プロセスによって印刷される場合には、好適なインキは:エチル、イソプロピルおよびn−プロピルアルコール;エチル、イソプロピルおよびn−酢酸プロピル;脂肪族および芳香族の炭化水素溶剤;グリコールエーテル;および水を含む。しかしながら、インキがリトグラフ印刷または凸版活字印刷のプロセスの中で使用される場合には、好適な溶剤は石油蒸留物および脂肪酸エステルを含ことがある。
【0041】
インキの個々の成分の正確な量は、使用される印刷プロセスおよび、当業者に公知の他の要因に依存して、広い範囲で変わることができる。例示すれば、インキは全体に対して20から35の重量%のポリマー、ほぼ0.1〜1%の染料および10から25重量%の酸素透過速度を増大させるためおよびフィルムの京成を助けるための追加のポリマー(例えばポリ(ジメチルシロキサン)グラフト−ポリアクリレート)(PDMS)を含み、残部が溶剤および(存在する場合には)添加剤である。乾燥後、インキ層の厚さは好ましくは2から8μmである。
【0042】
インキ組成物はさらに酸素透過速度を増加させる可塑剤、たとえばシトロフレックス(citroflex)、セバシン酸ジブチルおよびスルホンアミド可塑剤を含むことができる。
【0043】
本発明は、以下の非制限的な実施例によってさらに例証される。
実施例1
ポリブチルアクリレート−コ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の合成
4.16g(0.05当量、0.020モル)の2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸を、窒素の正圧の下、還流下で撹拌下しながら、62gの2−プロパノールに溶解した。51.47g(1当量、0.402モル)のn−ブチルアクリレートを、還流下で小部分ずつ加え、次いで0.6gの1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)を加え、8時間還流して反応させた。その後溶剤を減圧下で除去し、透明な粘ちゅうな油を得た。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による分析により、113200の平均分子量を確認した。
【0044】
実施例2
インキの調製と印刷
実施例1に記載のように調製されたポリブチルアクリレート−コ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の1.532gが、撹拌ビーズを備えた50mlのジャー内に置かれた。4.8gのイソプロピルアルコールが加えられ、成分が溶解されるまで混合された。その後、0.5gのポリジメチルシロキサンが加えられた。混合物は成分が溶解し、透明な溶液を与えるまで混合された。1Nの水酸化カリウム水溶液100μlが加えられ、次いで13.6mgのトリス(4,7−ジフェニル−1−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩化物が加えられた。さらに4時間混合され、イオン交換プロセスが行われた。
【0045】
実施例2のインキ溶液が、延伸ポリプロピレン(OPP)のコロナ処理された側の上に、Kバーナンバー2で、12μmの湿潤フィルム堆積厚さでコーティングされた。フィルムは、30秒間標準ヘアドライヤーで優しく乾かされた。
【0046】
実施例3
酸素測定
酸素検知性コーティング測定はOxySense 4000 measuring systemとプローブを使用して記録された。プローブチップは、400nmの波長の青色LED光源を備えている。メーカーの指示に従い、装置のキャリブレーションおよび読み精度の検証が行われた。キャリブレーションの後、読みは空気中、および酸素ゼロの環境(正圧の窒素下でパージされた透明プラスティックバッグ中にインキフィルムを置いた)中で得られた。
実施例2に記載されたように調製されたインキ。
空気中の酸素測定:
20.7%。
窒素中の酸素測定:
0.1%。
【0047】
実施例4
インキ調製および印刷
実施例1に記載のように調製されたポリブチルアクリレート−コ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の15.22gが、50mlのジャー内に置かれた。38gのイソプロピルアルコールが加えられ、混合物はボールジャーミルモデル12VSローラー内に、成分が溶解されるまでおかれた。5gのポリジメチルシロキサンが加えられ、成分が溶解し透明な溶液を与えるまでローリングが続けられた。1Nの水酸化カリウム水溶液300μlが加えられ、次いで101mgのトリス(4,7−ジフェニル−1−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩化物が加えられた。さらに4時間、ボールジャーミルモデル12VSローラーで混合され、そのままコーティングできるインキ溶液が得られた。
粘度測定:ザーンカップ2で24.5秒
インキ測定は実施例2のように行われた。また実施例2に記載されたようにKバーナンバー2でOPP上にコーティングされた。
【0048】
実施例5
酸素測定
実施例3のように行われた。
インキは実施例4に記載されたとおりである。
空気中の酸素測定:20.6%
窒素中の酸素測定:0.0%
【0049】
実施例6
インキ調製および印刷
実施例1に記載のように調製されたポリブチルアクリレート−コ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の15.22gが、50mlのジャー内に置かれた。38gのイソプロピルアルコールが加えられ、混合物はボールジャーミルモデル12VSローラー内に、成分が溶解されるまでおかれた。5gのポリジメチルシロキサンが加えられ、成分が溶解し透明な溶液を与えるまでローリングが続けられた。0.5gの水中の1.08gのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが加えられ、次いで101mgのトリス(4,7−ジフェニル−1−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩化物が加えられた。さらに4時間、ボールジャーミルモデル12VSローラーで混合され、そのままコーティングできるインキ溶液が得られた。
粘度測定:ザーンカップ2で23.5秒
インキ測定は実施例2のように行われた。また実施例2に記載されたようにKバーナンバー2でOPP上にコーティングされた。
【0050】
実施例7
酸素測定
実施例3のように行われた。
インキは実施例6に記載されたとおりである。
空気中の酸素測定:21.4%
窒素中の酸素測定:0.1%
【0051】
実施例8
改良された大気圧包装用途での酸素検知性インキのテスト
PET(Camclear)の外側層と、それにラミネートされた内側層の低密度ポリエチレン(LDPE)を含むラミネートからパウチが作成された。LDPE内側層は酸素検知性コーティングでコーティングされた(パウチ1a、2−3ミクロン厚、パウチ1b、8−10ミクロン厚)。それぞれのパウチはMultiVacシステム(モデル A300/16)を使用し、窒素雰囲気下でシールされ、内部の酸素含有量が測定された。パウチの内部の酸素測定の正確性と整合性を確認するため、Oxydot(登録商標)も含まれた。Oxydot測定システムと共に数点の読みが得られた。一般に読みは整合性があり、Oxydotと類似していた。
パウチ1a: 酸素センサー 2−3ミクロン厚、酸素含有量:0.1%
パウチ1a: Oxydot、酸素含有量:−0.1%
パウチ1b: 酸素センサー 8−10ミクロン厚、酸素含有量:0.0%
パウチ1b: Oxydot、酸素含有量:−0.1%
【0052】
実施例9
ポリブチルアクリレート−コ−エチレングリコールメタアクリレート ホスフェートの合成
6.14g(0.05当量、0.029モル)のエチレングリコールメタアクリレート ホスフェートを、窒素の正圧の下、還流下で撹拌下しながら、200mlのメタノールに溶解した。75g(1当量、0.585モル)のn−ブチルアクリレートを、還流下で小部分ずつ加え、次いで0.6gの1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボネート)を加え、8時間還流して反応させた。その後溶剤を減圧下に除去し、透明な粘ちゅうな油を得た。
【0053】
実施例10
インキの調製と印刷
最適なインキ配合
実施例9に記載のように調製されたポリブチルアクリレート−コ−エチレングリコールメタアクリレート ホスフェートの4.1gを、10.2gのR2013とともに50mlのジャーに入れた。32.6gの酢酸エチルと1.5gのエタノールを加え、混合物をボールジャーミルモデル12VSローラーに入れ、成分を溶解した。0.245gのCabosil TS610、0.435gのセルロースアセテートプロピオネート、および0.124gのトリス(4,7−ジフェニル−1−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩化物が加えられた。さらに4時間、ボールジャーミル、モデル12VSローラーで混合され、そのままコーティングできるインキ溶液が得られた。
粘度測定:ザーンカップ2で23秒
インキ測定は実施例2のように行われた。インキはSaueressigグラビアプルーファー(C.P.90/60)を使用して、OPPにコーティングされた。
【0054】
実施例11
酸素測定
実施例3のように行われた。
インキは実施例10に記載されたようにして調製された。
空気中の酸素測定:20.3%
窒素中、2%の酸素を含むものの酸素測定:2.03%


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素含有量に比例して蛍光を発することのできる酸素検知性染料、および該染料のためのポリマーマトリックスを含むインキ組成物であって、該ポリマーマトリックスがペンダントのスルホン酸基またはホスホン酸基、またはそれらの基の塩若しくはエステルを有する単位を含むことを特徴とする、インキ組成物。
【請求項2】
前記染料が、ルテニウム(II)、オスミウム(II)、イリジウム(III)、ロジウム(III)およびクロムイオンと、配位子を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記配位子がα−ジイミン配位子である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記配位子が、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−l−10−フェナントロリン、4,7−ジスルホネイティッド−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、5−ブロモ−1,10−フェナントロリン、または5−クロロ−1,10−フェナントロリンである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記染料が、トリス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)塩類、トリス(l,10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩類、またはトリス(4,7−ジフェニル−l−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩類である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記染料が、トリス(4,7−ジフェニル−l−10−フェナントロリン)ルテニウム(II)塩類、好ましくは塩化物である、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックスが、アクリルモノマーまたはオリゴマーと、1以上のスルホン酸性基またはホスホン酸性基を有するエチレン性不飽和化合物との共重合体を含む、請求項1から6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記アクリルモノマーが、アクリル酸、メタアクリル酸、C−Cアルキルアクリレート、C−Cアルキルメタアクリレート、またはアリールもしくはアルアルキルアクリレートもしくはメタアクリレートである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記スルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物が、以下の式(I)を有する、請求項7または8記載の組成物:
【化1】


式中、Rは水素原子またはC−Cアルキル基を表す;
は酸素原子、式−(NH)−の基、あるいはアルキレン基を表す;
はアルキレン基、アリーレン基、−A−B−(式中、AとBのうちの1つはアルキレン基を表し、AとBの他方はアリーレン基である)、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基である;
は酸素原子またはアルキレン基を表わす;
Zは、式(II)または(III)の基を表す:
【化2】


式中Rはヒドロキシ基、アルキル基、アリールアルキル基、アルコキシ基または式(IV)の基を表わす:
【化3】


式中、R、X、RおよびXは先に定義されたとおりである;
またはそれらの塩類またはエステル。
【請求項10】
前記スルホン酸性基を有する化合物が、以下の式(V)を有する、請求項9記載の組成物:
【化4】


式中、
は請求項9で定義された通りである;
は酸素原子または式−NH−の基を表わす;また
はアルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表わす;
またはそれらの塩類またはエステル。
【請求項11】
前記ホスホン酸性基を有する化合物が、以下の式(VI)を有する、請求項9記載の組成物:
【化5】


、R、R、XおよびXは、請求項9で定義されたとおりである。
【請求項12】
前記スルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物が、2−アクリルアミド−2−メチル−l−プロパンスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート・カリウム塩、3−スルホプロピルメタアクリレート・カリウム塩、エチレングリコールメタアクリレート・リン酸塩またはビス[2−(メタアクリロイルオキシ)エチル]リン酸塩である、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマーマトリックスが、スルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物と、該スルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物と反応性のペンダント基を有するポリマーとの反応生成物である、請求項1から6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
前記スルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物が、式(VII)又は式(VIII)を有する、請求項13記載の組成物:
HO−X−R−X−Z (VII)
または(VIII):
N−X−R−X−Z (VIII)
式中、Rは水素原子またはC−Cアルキル基を表す;
は酸素原子、式−NH−の基、あるいはアルキレン基を表す;
はアルキレン基、アリーレン基、−A−B−(式中、AとBのうちの1つはアルキレン基を表し、AとBの他方はアリーレン基である)、オキシアルキレン基またはアルキレンオキシ基である;
は酸素原子またはアルキレン基を表わす;
Zは、式(II)または(III)の基を表す:
【化6】


式中Rはヒドロキシ基、アルキル基、アリールアルキル基、アルコキシ基または式(IV)の基を表わす:
【化7】


式中、R、X、RおよびXは先に定義されたとおりである;
またはそれらの塩類またはエステル。
【請求項15】
前記スルホン酸性基またはホスホン酸性基を有する化合物が、3−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチルホスホン酸または3−アミノプロピルホスホン酸である、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
溶剤をさらに含む、請求項1から15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
フレキソグラビア印刷またはインクジェット印刷用に配合された、請求項1から16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
リトグラフ印刷または凸版活字印刷用に配合された、請求項1から16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項記載の組成物で印刷されるかまたはコーティングされた基体。
【請求項20】
シールされたパウチの形態である、請求項19記載の基体。

【公表番号】特表2010−540689(P2010−540689A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525433(P2010−525433)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003189
【国際公開番号】WO2009/037477
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(506397202)サン ケミカル ビー.ブイ. (11)
【Fターム(参考)】