説明

印刷方法および表示装置の製造方法

【課題】印刷パターンの膜厚によらずに従来よりも鮮明な印刷を行うことが可能な印刷方法を提供する。
【解決手段】平板ブランケット1上のインク2に対してモールド5の突起部51を押し当てることにより、突起部51に対応するパターンからなる溝部21をインク2上に形成する。そののち、平板ブランケット1上のインク2と凸版3とを加圧接触させることにより、インク2のうちの凸部31に対応する部分を選択的に除去し、平板ブランケット1上に印刷パターン層2Aを形成する。これにより、インク2(印刷パターン層2A)の膜厚が大きい場合であっても、インク2のうちの凸部31に対応する部分が容易に剪断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランケットおよび凸版を用いた印刷方法およびそのような印刷方法を用いた表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタブルエレクトロニクスと呼ばれる技術分野の発展が目覚しい。このプリンタブルエレクトロニクスにおける目的は、これまで半導体製造技術を駆使して生産されてきた高価な電子部品を、印刷法やナノインプリント法を用いて製造することにより、安価に製造することである。また、他の目的としては、基板をフィルムに置き換えることによって、フレキシブルなデバイスを提供することである。
【0003】
そこで、従来、様々な印刷方法が提案されている(例えば、特許文献1および非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3689536号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Youn-Gyoung,他8名、「Design Parameters of Roll Printing Process for TFT-LCD Fabrication」、SID08 GIGEST、p.637−640、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、反転オフセット印刷法を用いることにより、レジスト材料などの樹脂を精密に印刷する方法が提案されている。具体的には、カラーフィルター用の樹脂をインクとして用いることにより、0.8μmの膜厚からなる印刷パターンを得ている。その解像度については詳細に触れられていないが、液晶ディスプレイ用のカラーフィルターであることから、最小でも50μm程度の線幅を対象にしていると推察される。また、同文献には、「10μmへの対応も可能であることを示している」と記載されていることから、この印刷手法の限界点は、10μm前後であると推測される。
【0007】
また、上記非特許文献1では、反転オフセット印刷法を利用した薄膜トランジスタの形成方法が提案されている。ここでは、1μm程度の膜厚のレジストパターンの印刷をする場合に、印刷の方向に依存して、0.5〜4.0μm程度のパターンエッジの不鮮明さが現れることが確認されている。
【0008】
このように従来の技術では、樹脂や有機溶剤などで構成されるインク等を印刷する場合に、膜厚の増加に伴って印刷パターンの鮮明さが低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、印刷パターンの膜厚によらずに従来よりも鮮明な印刷を行うことが可能な印刷方法、およびそのような印刷方法を用いた表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の印刷方法は、ブランケット上に転写層を形成する工程と、所定のパターンからなる突起部を有する成形部材における突起部を転写層に対して押し当てることにより、転写層上に突起部に対応するパターンからなる溝部を形成する成形工程と、ブランケット上の転写層と、突起部の反転パターンに対応するパターンからなる凸部を有する凸版とを互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、転写層のうちの凸部に対応する部分を選択的に除去してブランケット上に印刷パターン層を形成する第1転写工程と、ブランケット上の印刷パターン層と被印刷基板とを互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、印刷パターン層を被印刷基板上に転写させる第2転写工程とを含むようにしたものである。なお、上記「溝部」は、細長い形状のパターンには限られず、任意のパターンとすることができる。
【0011】
本発明の表示装置の製造方法は、基板上に、表示素子と、この表示素子を駆動する薄膜トランジスタとを形成する工程を含み、上記薄膜トランジスタを形成する工程が、ブランケット上に転写層を形成する工程と、所定のパターンからなる突起部を有する成形部材における突起部を転写層に対して押し当てることにより、転写層上に突起部に対応するパターンからなる溝部を形成する成形工程と、ブランケット上の転写層と、突起部の反転パターンに対応するパターンからなる凸部を有する凸版とを互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、転写層のうちの凸部に対応する部分を選択的に除去してブランケット上に印刷パターン層を形成する第1転写工程と、ブランケット上の印刷パターン層と、被印刷基板としての基板とを互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、印刷パターン層を基板上に転写させる第2転写工程と、印刷パターン層を用いて薄膜を形成する工程とを含むようにしたものである。
【0012】
本発明の印刷方法および表示装置の製造方法では、ブランケット上の転写層に対して成形部材の突起部が押し当てられることにより、突起部に対応するパターンからなる溝部が転写層上に形成される(成形工程)。そののち、ブランケット上の転写層と凸部を有する凸版とが互いに向かい合わされて加圧接触されることにより、転写層のうちの凸部に対応する部分が選択的に除去され、ブランケット上に印刷パターン層が形成される(第1転写工程)。そして、ブランケット上の印刷パターン層と被印刷基板とが互いに向かい合わされて加圧接触されることにより、印刷パターン層が被印刷基板上に転写される(第2転写工程)。このようにして、成形部材を用いて転写層上に溝部が形成されたのちに凸版を用いて第1転写工程が行われることにより、転写層(印刷パターン層)の膜厚が大きい場合であっても、転写層のうちの凸部に対応する部分が従来と比べて容易に剪断される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷方法および表示装置の製造方法によれば、ブランケット上の転写層に対して成形部材の突起部を押し当てることにより、突起部に対応するパターンからなる溝部を転写層上に形成したのち、ブランケット上の転写層と凸部を有する凸版とが互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、転写層のうちの凸部に対応する部分を選択的に除去してブランケット上に印刷パターン層を形成するようにしたので、転写層(印刷パターン層)の膜厚が大きい場合であっても、転写層のうちの凸部に対応する部分を容易に剪断することができる。よって、印刷パターンの膜厚によらず、従来よりも鮮明な印刷を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る印刷方法の主要な工程の一部を表す断面図である。
【図2】図1に示したモールドの詳細構成を拡大して表す断面図である。
【図3】図1に続く工程を表す断面図である。
【図4】インク上に形成されたスリット間の間隔と凸版における凸部の幅との関係を説明するための断面図である。
【図5】平板ブランケットと凸版との接触方法の一例を表す断面図である。
【図6】図3に続く工程を表す断面図である。
【図7】比較例に係る印刷方法の工程の一部を表す断面図である。
【図8】比較例および実施の形態に係る印刷方法における第1転写工程の際のインクの分断態様について説明するための断面図である。
【図9】本発明の変形例に係る印刷方法の工程の一部を表す断面図である。
【図10】図9に示した印刷方法における第1転写工程の際のインクの分断態様について表す断面図である。
【図11】図9に示した印刷方法により形成される印刷パターンの一例を表す断面図である。
【図12】本発明の印刷方法を用いた薄膜トランジスタの形成方法の主要な工程の一部を表す断面図である。
【図13】図12に示した工程の一部を表す上面図である。
【図14】図12に続く工程を表す断面図である。
【図15】図14に示した工程の一部を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(モールドを用いた印刷方法の工程例)
2.実施例
3.変形例および適用例
【0016】
<1.実施の形態>
[モールドを用いた印刷方法の工程例]
図1〜図5は、本発明の一実施の形態に係る印刷方法について説明するための断面図である。
【0017】
(転写層の形成工程(塗布工程))
まず、図1(A)に示したように、平板ブランケット1上にインク2を塗布することにより、平板ブランケット1上に、このインク2からなる転写層を形成する。
【0018】
平板ブランケット1は、後述する被印刷基板(基板4)との間の良好な接触を実現するため、柔軟な変形が可能となっていることが必要である。したがって、平板ブランケット1の機械的特性として、ヤング率が0.01〜10MPa程度であることが望ましい。また、インク2の塗布性および剥離特性の観点により、平板ブランケット1の表面張力は、15〜40dyn/cm程度であることが望ましい。これらの性質を満たすものとして、平板ブランケット1の構成材料は、シリコーンゴムやフッ素樹脂などが挙げられる。
【0019】
インク2としては、樹脂、金属粉末および酸化物の粉末のうちの少なくとも1つ以上の混合物を用いることができ、溶媒として、0.1〜90w%程度の低極性溶媒を含むようにする。そのような低極性溶媒としては、例えば、直鎖状アルカン類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化アルキル類、エステル化合物および環状エーテル化合物のうちの少なくとも1つ以上含む混合溶媒が挙げられる。なお、インク2の粘度は、常温(25℃)において1.0〜150000mPa程度であることが望ましい。
【0020】
なお、平板ブランケット1上にインク2を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ダイコート法、グラビアコーター法またはCAPコーティング法などが好適である。
【0021】
(成形工程(モールディング工程))
続いて、図1(B)に示したように、所定のパターンからなる突起部51を有するモールド(成形部材)における突起部51を、平板ブランケット1上のインク2(転写層)に対して押し当てる。これにより、例えば図1(C)に示したように、モールド5をインク2から離したときに、突起部51に対応するパターンからなる溝部21がインク2上に形成される。
【0022】
モールド5では、インク2をモールドするため、剛性が必要である。具体的には、モールド5の材質としては、ヤング率が1〜500GPa程度であるものが望ましい。また、例えば図2中の符号P1で示したように、基体50に対する突起部51の傾斜角α1,α2は、いずれも45°〜90°の範囲内であるのが望ましく、特にα1,α2=90°であるのが望ましい。モールド時の欠陥が効果的に防止されるからである。
【0023】
また、モールド5には、インク2からの剥離性が必要である。具体的には、表面張力の低い平面ブランケット1上に塗布されるインク2からの離形性を確保するためには、モールド5は、平板ブランケット1と同様またはそれ以下の表面張力(例えば、15〜40dyn/cm程度)を有することが望ましい。
【0024】
(第1転写工程(除去工程))
次に、図3(A)に示したように、平板ブランケット1と、所定のパターン(突起部51の反転パターンに対応するパターン)からなる凸部31を有する凸版3とを、互いに向かい合わせて接触させる。これにより、例えば図3(B)に示したように、互いに接触された平板ブランケット1と凸版3とが分離すると、インク2のうちの凸部31に対応する部分(図中のインク2Bの部分)が、平板ブランケット1上から選択的に除去される。一方、平板ブランケット1上には、凸版3によって転写されなかった領域にインク2が残留する(図中のインク2Aの部分)ことにより、平板ブランケット1上に印刷パターン層2Aが形成される。
【0025】
凸版3の形状は、図3(A),図4(A)〜(C)(図3(A)中の符号P2部分の拡大図に対応)にそれぞれ示したように、インク2を除去するパターン(突起部51の反転パターン)に対応している。具体的には、まず、図3(A)および図4(A)に示したように、除去するインクパターン(溝部21間の間隔d2)と凸部31の幅d3とが同一である場合が挙げられる。ただし、例えば図4(B)に示したように、除去するインクパターン(溝部21間の間隔d2)よりも凸部31の幅d3が小さくなっていてもよい。また、逆に例えば図4(C)に示したように、インク2が分断されない程度に、除去するインクパターン(溝部21間の間隔d2)よりも凸部31の幅d3が大きくなっていてもよい。
【0026】
また、平板ブランケット1上からインク2を良好に除去するため、凸版3の表面張力は平板ブランケット1より高い必要があり、40〜80dyn/cm程度であるのが望ましい。さらに、平板ブランケット1から除去したインク2Bを有機溶剤などによって洗浄する際に、凸版3では耐性を有する必要がある。そのため、凸版3の材質としては、酸化物や金属などが望ましい。
【0027】
なお、平板ブランケット1と凸版3とを接触させる際には、加圧圧縮によって接触させる(圧縮気体加圧法を用いる)ようにする。圧縮気体加圧法とは、平板ブランケット1と凸版3とをそれぞれ向かい合わせて近接しつつ所定のステージ上に固定すると共に、これらのうちの一方の背面側から圧縮気体を噴射させて押し出すことにより、互いに接触させる方法である。このとき、押し出される対象物と圧縮気体の供給源であるステージとの間で形成される空間は、密封されるようになっている(下記図5中の矢印P4で示した空間)。
【0028】
具体的には、例えば図5に示したように、平板ブランケット1の外周部を、下部ステージ61により機械的に固定すると共に、この下部ステージ61に設けられた開口部611A,611Bにより、図中の符号P5,P6で示したように真空吸着させて固定する。また、凸版3を上部ステージ62により固定し、下部ステージ61の中心付近に設けられた開口部610(真空排気口および圧縮気体導入口として機能する)から圧縮気体を噴射させ、平板ブランケット1を押し出すようにする。なお、この場合において、平板ブランケット1と凸版3とを近接させる距離は1μm〜1mmの距離とし、転写圧力は0.1kPa〜100kPa程度として精密に制御する。これにより、平板ブランケット1上で、均一かつ低圧力で制御できるため、押しつぶれのないインク2の転写が可能となる。
【0029】
(第2転写工程(転写工程))
続いて、図6(A)に示したように、平板ブランケット1上の印刷パターン層2Aと、被印刷基板としての基板4とを、互いに向かい合わせて接触させる。これにより、例えば図6(B)に示したように、互いに接触された平板ブランケット1と基板4とが分離すると、印刷パターン層2Aが基板4上に転写される。なお、平板ブランケット1と基板4とを接触させる際には、前述したように、加圧圧縮によって接触させる(圧縮気体加圧法を用いる)ようにする。
【0030】
基板4としては、例えば、シリコン、合成石英、ガラス、金属、樹脂または樹脂フィルムなどの材料からなる基板を用いることができる。
【0031】
以上により、例えば図6(C)に示したように、基板1上に、凸版3上に凸部31の反転パターンに対応する印刷パターン層2Aが形成される。
【0032】
なお、以上のような印刷方法において、転写層を構成するインク2として、薄膜の形成用材料を用いて形成した場合には、印刷パターン層2Aを直接、薄膜とすることができる。この場合、薄膜の形成用材料として、例えば、アクリル樹脂、熱可塑性樹脂として知られるエポキシ樹脂、ポリイミド、シロキサンまたはフッ素樹脂などの樹脂を含むものを用いるようにしてもよい。
【0033】
また、以上のような印刷方法において、図6(A),(B)に示した第2転写工程の前に基板4上に予め薄膜を一様に形成しておくと共に、この第2転写工程においてその薄膜上に印刷パターン層2Aを転写させるようにしてもよい。また、この場合、転写層を構成するインク2として、そのような薄膜をエッチングする際のフォトレジスト材料を用いるようにする。このようにした場合も、第2転写工程の後に基板4上の印刷パターン層2Aを用いて薄膜をエッチングすることにより、印刷パターン層2Aに対応するパターンからなる薄膜を形成することができる。
【0034】
[印刷方法の作用および効果]
(比較例)
ここで、比較例に係る従来の印刷方法では、例えば図7(A),(B)に示したように、本実施の形態の成形工程(モールド工程)が行われない。すなわち、図1(A)に示した転写層の形成工程(塗布工程)の直後に、図7(A),(B)に示した第1転写工程(除去工程)が行われる。
【0035】
したがって、例えば図7(A)および図8(A)(図7(A)中の符号P103部分の拡大図に対応)に示したように、インク102(印刷パターン層102A)の膜厚が大きい場合、凸部31に対応する部分(インク102Bの部分)が剪断されにくくなる。すなわち、インク102の膜厚に比例して剪断応力が増加するため、切断面が乱雑な形状となってしまう。これにより、インク102(印刷パターン層102A)の膜厚の増加に伴って、印刷パターンの鮮明さが低下してしまうことになる。
【0036】
これに対して、本実施の形態の印刷方法では、成形工程(モールド工程)において、平板ブランケット1上のインク2に対してモールド5の突起部51が押し当てられることにより、突起部51に対応するパターンからなる溝部21がインク2上に形成される。そののち、第1転写工程(除去工程)において、平板ブランケット1上のインク2と凸版3とが加圧接触されることにより、インク2のうちの凸部31に対応する部分が選択的に除去され、平板ブランケット1上に印刷パターン層2Aが形成される。
【0037】
このようにして、モールド5を用いてインク2上に溝部21が形成されたのちに凸版3を用いて第1転写工程が行われることにより、この第1転写工程において不要なインク2Bを除去する際に、溝部21の領域が優先的に分断される。これにより、所望のインク2のパターンの変形が防止されることとなる。したがって、例えば図3(B)および図8(B)(図3(B)中の符号P3部分の拡大図に対応)に示したように、インク2(印刷パターン層2A)の膜厚が大きい場合であっても、インク2のうちの凸部31に対応する部分が容易に剪断される。
【0038】
以上のように本実施の形態では、平板ブランケット1上のインク2に対してモールド5の突起部51を押し当てることにより、突起部51に対応するパターンからなる溝部21をインク2上に形成したのち、平板ブランケット1上のインク2と凸版3とを加圧接触させることにより、インク2のうちの凸部31に対応する部分を選択的に除去して平板ブランケット1上に印刷パターン層2Aを形成するようにしたので、インク2(印刷パターン層2A)の膜厚が大きい場合であっても、インク2のうちの凸部31に対応する部分を容易に剪断することができる。よって、印刷パターンの膜厚によらず、従来よりも鮮明な印刷を行うことが可能となる。
【0039】
<2.実施例>
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。ここでは、基板4上に、印刷パターン層2AとしてフォトレジストAZ1500(商品名;AZエレクトリックマテリアルズ社製)を印刷した場合の例について説明する。
【0040】
(転写層の形成工程(塗布工程))
平板ブランケット1は、厚み0.2mmのガラス上に、シリコーンゴム層を用いて200μmのスピンコートを行うことにより形成した。インク2としては、フォトレジストAZ1500(20cP)(AZエレクトリックマテリアルズ社製)を用いた。また、インク2は、平板ブランケット1上にCAPコーターによって塗布され、その膜厚は3μmであった。
【0041】
(成形工程(モールディング工程))
モールド5は、石英ガラスをフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより作成した。具体的には、ドライエッチング法により、ライン/スペースが1μm/3μmのパターン作成した。このとき、ラインパターンの高さは、5μmであった。そののち、モールド5を、フッ素系表面コート剤KP−801M中に浸漬して乾燥させることにより、撥水化処理を行った。このときのモールド5の表面張力は、20dyn/cmであった。また、モールディング工程は、モールド5と平板ブランケット1とを重ね合わせ、1MPaの圧力で10分間押し当てることにより行った。そののち、モールド5を平板ブランケット1から剥離すると、モールド5の押し当てられた領域に溝部21が形成された。
【0042】
(第1転写工程(除去工程))
凸版3は、石英ガラスをフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより作成した。具体的には、ドライエッチング法により、ライン/スペースが3μm/4μmのパターン作成した。このとき、ラインパターンの高さは、1μmであった。除去工程は、
凸版3と平板ブランケット1とを位置合わせして重ね合わせ、加圧することにより行った。その際、10kPaの圧力で1分間加圧したのち、それらを互いに剥離させた。これにより、不要なインク2Bが平板ブランケット1上から除去され、所望のパターンが平板ブランケット1上に残留した。
【0043】
(第2転写工程(転写工程))
平板ブランケット1上に残留するインク2Aのパターンを、基板4としてのガラス基板上に転写させた。具体的には、そのような基板4と平板ブランケット1とを位置合わせして重ね合わせ、加圧することにより転写させた。その際、10kPaの圧力で1分間加圧したのち、それらを互いに剥離させた。これにより、シリコーンゴム製の平板ブランケット1から、基板4としてのガラス基板上にインク2Aが転写された。
【0044】
以上により、AZ1500の印刷パターンとして、膜厚が3μmであり、かつパターンの線幅が3μmである微細パターンが得られた。
【0045】
<3.変形例および適用例>
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0046】
例えば、上記実施の形態等では、インク2上に形成される溝部21が凹部状となっている場合について説明したが、例えば図9に示したように、成形工程において、平板ブランケット1の表面まで貫通するように溝部21を形成するようにしてもよい。そのように溝部21が貫通するようにした場合、例えば図10に示したように、インク2のうちの凸部31に対応する部分を、より容易に剪断することができる。なお、この場合に形成される印刷パターン層2Aは、例えば図11に示したような断面形状となる。
【0047】
また、上記実施の形態等では、ブランケットの一例として平板ブランケットを挙げて説明したが、本発明の印刷方法では、他の形状のブランケット(例えば、ロール形状のものなど)を用いるようにしてもよい。
【0048】
さらに、上記実施の形態等において説明した各構成要素の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、また他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0049】
(薄膜トランジスタの形成方法への適用例)
加えて、本発明により形成された印刷パターンは、そのような印刷パターンを用いた電子デバイス(例えば、薄膜トランジスタやキャパシタ)に適用することが可能である。また、そのような薄膜トランジスタ等と表示素子とを備えた表示装置(例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置など)にも適用することが可能である。具体的には、そのような表示装置の製造方法では、薄膜トランジスタを形成する工程において、上記実施の形態等の印刷方法を用いて印刷パターン層2Aを形成すると共に、そのような印刷パターン層2Aを用いて薄膜を形成するようにすればよい。
【0050】
ここで、図12〜図15は、本発明の印刷方法を用いた薄膜トランジスタの形成方法の主要な工程の一部を表すものであり、図12および図14は断面図を、図13および図15は上面図を、それぞれ表している。なお、図12および図14中に示した工程のうち、ハッチングされた工程(図12(C),図12(G),図14(A),図14(C),図14(E)に示した工程)が、本発明の印刷方法を用いた工程となっている。
【0051】
この薄膜トランジスタの形成方法では、まず、基板4上にパッシベーション層71を形成し(図12(A))、その後、このパッシベーション層71上にゲート電極層72を形成する(図12(B))。次に、本発明の印刷方法を用いることにより、ゲート電極層72上に、ゲート電極用のエッチングレジスト層(図示せず)を印刷し、ウエットエッチングを行う。これにより、パターニングされたゲート電極72Aが形成される(図12(C),図13(A))。次いで、パッシベーション層71およびゲート電極72Aの上に、ゲート絶縁膜73を形成したのち(図12(D)、このゲート絶縁膜73上に、a−Si/H(i)層74を形成する(図12(E))。そののち、このa−Si/H(i)層74上に、エッチングストッパー層75を形成する(図12(F))。そして、本発明の印刷方法を用いることにより、このエッチングストッパー層75上に、エッチングストッパー用のレジスト層(図示せず)を印刷し、ウエットエッチングを行う。これにより、チャネル層に対応する領域に、エッチングストッパー層75Aが選択的に設けられることになる(図12(G),図13(B))。次に、a−Si/H(i)層74およびエッチングストッパー層75Aの上に、a−Si/H(n+)層76を形成する(図12(H))。
【0052】
そして、本発明の印刷方法を用いることにより、このa−Si/H(n+)層76上に、a−Si/H(n+,i)層用のレジスト層(図示せず)を印刷し、ドライエッチングを行う。これにより、ゲート電極72Aに対応する領域に、a−Si/H(i)層74およびa−Si/H(n+)層76が選択的に設けられることになる(図14(A))。次に、ゲート絶縁膜73、a−Si/H(i)層74およびa−Si/H(n+)層76の上に、ソース・ドレイン電極層77を形成する(図14(B))。そして、本発明の印刷方法を用いることにより、このソース・ドレイン電極層77上に、ソース・ドレイン電極層用のレジスト層(図示せず)を印刷し、ウエットエッチングを行う。これにより、ソース・ドレイン電極77Aが形成される(図14(C),図15(A))。次いで、a−Si/H(n+)層76に対してドライエッチングを行うことにより、エッチングストッパー層75A上のa−Si/H(n+)層76を選択的に除去する(図14(D),図15(B))。次に、パッシベーション層78を形成したのち、本発明の印刷方法を用いることにより、このパッシベーション層78上に、パッシベーション層用のレジスト層(図示せず)を印刷し、ドライエッチングを行う。以上により、本発明の印刷方法を用いた薄膜トランジスタが形成される(図14(E),図15(C))。
【符号の説明】
【0053】
1…平板ブランケット、2…インク、2A…印刷パターン層、21…切り込み部、3…凸版、31…凸部、32…凹部、4…基板、5…モールド、51…突起部、61…下部ステージ、610,611A,611B…開口部、62…上部ステージ、α1,α2…傾斜角、d2…溝部間の間隔、d3…凸部の幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランケット上に転写層を形成する工程と、
所定のパターンからなる突起部を有する成形部材における前記突起部を前記転写層に対して押し当てることにより、前記転写層上に前記突起部に対応するパターンからなる溝部を形成する成形工程と、
前記ブランケット上の転写層と、前記突起部の反転パターンに対応するパターンからなる凸部を有する凸版とを互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、前記転写層のうちの前記凸部に対応する部分を選択的に除去して前記ブランケット上に印刷パターン層を形成する第1転写工程と、
前記ブランケット上の印刷パターン層と被印刷基板とを互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、前記印刷パターン層を前記被印刷基板上に転写させる第2転写工程と
を含む印刷方法。
【請求項2】
前記成形工程において、前記ブランケットの表面まで貫通するように前記溝部を形成する
請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記成形工程において、前記ブランケットと同程度以下の表面張力を有する成形部材を用いる
請求項1に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記成形工程において、基体に対する前記突起部の傾斜角が45°以上かつ90°以下である成形部材を用いる
請求項1に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記転写層を薄膜の形成用材料を用いて形成することにより、前記薄膜を前記印刷パターン層により構成する
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記薄膜の形成用材料として、樹脂を含むものを用いる
請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記第2転写工程の前に前記被印刷基板上に薄膜を一様に形成しておくと共に、前記第2転写工程において前記薄膜上に前記印刷パターン層を転写させ、
前記転写層を、前記薄膜をエッチングする際のフォトレジスト材料を用いて形成する
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記第2転写工程の後に、前記被印刷基板上の印刷パターン層を用いて前記薄膜をエッチングする
請求項7に記載の印刷方法。
【請求項9】
基板上に、表示素子と、この表示素子を駆動する薄膜トランジスタとを形成する工程を含み、
前記薄膜トランジスタを形成する工程は、
ブランケット上に転写層を形成する工程と、
所定のパターンからなる突起部を有する成形部材における前記突起部を前記転写層に対して押し当てることにより、前記転写層上に前記突起部に対応するパターンからなる溝部を形成する成形工程と、
前記ブランケット上の転写層と、前記突起部の反転パターンに対応するパターンからなる凸部を有する凸版とを互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、前記転写層のうちの前記凸部に対応する部分を選択的に除去して前記ブランケット上に印刷パターン層を形成する第1転写工程と、
前記ブランケット上の印刷パターン層と、被印刷基板としての前記基板とを互いに向かい合わせて加圧接触させることにより、前記印刷パターン層を前記基板上に転写させる第2転写工程と、
前記印刷パターン層を用いて薄膜を形成する工程とを含む
表示装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate