説明

印刷方法

【課題】本発明の目的は、オフセット印刷向けの印刷用紙を用いて、インクジェット記録方式を利用する印刷機で高速・連続印刷する印刷方法を提供することである。
【解決手段】印刷用紙に少なくともシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色顔料インクを搭載したインクジェット記録方式を利用する印刷機で印刷する方法であって、インクジェット記録方式による印刷前に、該印刷用紙の印刷面に熱可塑性樹脂を含有する前処理液を印刷面全面に供給し、供給後8秒以内にインクジェット記録方式による印刷を行い、印刷後から5秒以内に該印刷用紙の印刷面を加熱し、少なくとも印刷面が1秒間以上は40℃以上に達することを特徴とする印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷向けの印刷用紙を用いて、インクジェット記録方式を利用する印刷機で高速印刷する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微小液滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録方式の技術が急速に進歩し、インクジェット記録方式を採用したプリンターによって、紙やフィルムなどの記録用媒体にカラーで、かつ高画質に画像を形成できるようになった。
【0003】
近年、インクジェット記録方式はさらなる技術の進歩により、1枚単位の印刷分野から、輪転方式を含め商業印刷分野への応用がなされてきている。商業印刷分野は多数枚印刷であり、生産性および印刷コストの兼ね合いから印刷速度が重視される。インクジェット記録方式の商業印刷分野への応用は、インクを吐出するヘッドが、用紙の搬送方向に直行する幅方向全体に固定されたラインヘッドを利用した印刷機によって行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
インクジェット記録方式による高速印刷は、ラインヘッドの下を用紙は毎分20m以上、さらに高速では100m以上で搬送されて達成される。搬送される用紙がラインヘッドを通過する際に、ラインヘッドから吐出されるインクにより、画像が形成される。
【0005】
インクジェット記録方式を利用する印刷機に搭載されるインクは、印刷物の保存性から色材に顔料を用いた顔料インクが中心であり、かつオフセット印刷インクに比べて溶媒に対する色材の濃度が非常に低い。そのために高速印刷ではインクの色材が印刷用紙にうまく付着しない問題を有する。
【0006】
オフセット印刷機向け印刷用紙とインクジェット記録方式を利用する印刷機向け印刷用紙の両方を保有することはコストアップと在庫管理が煩雑となるため、使用量の多いオフセット印刷機向け印刷用紙を、インクジェット記録方式を利用する印刷機あるいは両方の記録方式を利用する印刷機についても印刷業者は使用する。オフセット印刷機向け印刷用紙をインクジェット記録方式を利用する印刷機で印刷を行うと、色材が印刷用紙に付着し難く、印刷された画像が乱れてしまう、あるいは印刷部分の摺れ擦れによって色材が脱離するという問題が生ずる。このような場合には、画像を記録する直前に、色材を相互作用する化合物を有する前処理液を塗布することで、印刷用紙への色材の付着を改善している(例えば、特許文献2および3参照)。
【0007】
このように前処理液に含まれる化合物は、色材がアニオン性であることから、2価以上の水溶性金属塩化合物やその2価以上の金属錯体化合物もしくはカチオン性樹脂である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−023292号公報
【特許文献2】特開2009−285873号公報
【特許文献3】特開2005−119014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前処理液に水溶性金属塩化合物やカチオン性樹脂を用いる方法は、インクジェット記録方式の印刷では色味が変化することがあり、またオフセット印刷物に比較して、商業印刷物の取り扱い時における印刷部分の摺れ擦れ耐性が不十分であった。また印刷後にカールが発生し易くなった。
【0010】
本発明の目的は、オフセット印刷向けの印刷用紙を用いて、インクジェット記録方式を利用する印刷機で高速印刷に適する印刷方法を提供することである。特に印刷物の印刷部分の摺れ擦れ耐性に優れる印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、以下のような印刷方法を発明するに至った。すなわち、印刷用紙に少なくともシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色顔料インクを搭載したインクジェット記録方式を利用する印刷機で印刷する方法であって、インクジェット記録方式による印刷前に、該印刷用紙の印刷面に熱可塑性樹脂を含有する前処理液を印刷面全面に供給し、供給後8秒以内にインクジェット記録方式による印刷を行い、インクジェット記録方式の印刷後から5秒以内に該印刷用紙の印刷面を加熱し、少なくとも印刷面が1秒間以上は40℃以上に達することを特徴とする印刷方法である。
【0012】
好ましくは、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が20℃以上38℃以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、オフセット印刷向けの印刷用紙を用いて、インクジェット記録方式を利用する印刷機で高速印刷しても、インクの色材の定着に優れ、印刷部分の摺れ擦れ耐性に優れた印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の印刷方法について詳細に説明する。
【0015】
<熱可塑性樹脂>
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、モノマー化合物から所謂ラテックスの乳化重合法など公知の製造方法を用いることにより製造することができる。熱可塑性樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、エチレン−塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂等、およびこれらの重合体をグラフト的、ブロック的に組み合わせた共重合体等の合成高分子化合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂であると、印刷部分の摺れ擦れ耐性がよくなり、好ましい。なお、本発明において、例えば酢酸ビニル樹脂とは、酢酸ビニルを主体とした樹脂状の重合体を指し、これには単独重合体のみならず、酢酸ビニルを主体に、他の一種以上の単量体を共重合したものも含まれる。
【0016】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、モノマー単位としてイオン性を有しないモノマー化合物が好ましい。熱可塑性樹脂にイオン性を有するモノマー単位を含有すると、インクジェット記録方式による印刷後の印刷色が変色する場合がある。
【0017】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が20℃以上38℃以下が好ましい。20℃未満では摺れ擦れ耐性が得られないことがあり、38℃を超えると顔料を良好に付着できない場合がある。本発明のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)、例えばEXSTAR 6000(セイコー電子社製)、DSC220C(セイコー電子工業社製)、DSC−7(パーキンエルマー社製)などで測定して求めることができ、ベースラインと吸熱ピークの傾きとの交点をガラス転移温度とする。
【0018】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、例えばスチレン、メタクリル酸メチル、プロピレン、アクリル酸等のホモポリマーとしてガラス転移温度の高いモノマー単位と、例えばエチレン、ブタジエン、塩化ビニル等のホモポリマーとしてガラス転移温度の低いモノマー単位とを重合時の添加数量を組み合わせることによって調整することができる。また、熱可塑性樹脂の粒子径は、乳化重合の乳化剤の形成するミセルサイズ、ラジカルの連鎖移動剤の添加量を調整することによって制御することができる。
【0019】
<前処理液>
本発明の前処理液は、前記熱可塑性樹脂を含有する水分散液である。水と混和性のある有機溶剤を水に対して配合量30質量%以下で含有してもよい。水と混和性のある有機溶剤を含有することによって、溶媒の蒸発を促進することができ、好ましい。30質量%を超えると、印刷用紙の印刷面が変色あるいは凹凸に変形することがある。
【0020】
前処理液は、液の塗布性や保存性を整える目的で、界面活性剤、増粘剤、保存剤、防腐剤、保湿剤など公知の添加剤を含有することができる。
【0021】
熱可塑性樹脂の前処理液中の含有量は特に限定されない。熱可塑性樹脂が印刷面に対して1平方メートル当たり0.01g〜0.5g供給されればよい。0.01g未満では効果が得られない。また0.5gを超えると印刷用紙の印刷面が変色する場合がある。
【0022】
前処理液の印刷面への供給は、インクの色材が付着する領域だけに熱可塑性樹脂を供給することも可能であるが、白紙部分と質感差異が発生することがあり、前処理液の供給は印刷面全面であることが好ましい。
【0023】
前処理液の印刷面への供給は、公知の塗布方法や液体散布方法を用いることができ、特に限定されない。機械的にはインクジェット記録方式のインク吐出ヘッドを用いることが好ましい。
【0024】
<印刷方法>
本発明の印刷方法は、前処理液を印刷用紙の印刷面に供給後8秒以内にインクジェット記録方式で印刷する。インクジェット記録方式で印刷後5秒以内に印刷面を少なくとも1秒間以上は40℃以上にする。
【0025】
8秒以内にインクジェット記録方式で印刷することによって、熱可塑性樹脂が印刷用紙に浸透する前にインクの色材表面に付着することができる。またインクジェット記録方式で印刷後5秒以内に印刷面を少なくとも1秒間以上40℃以上にすることによって、熱可塑性樹脂が軟化し、インクの色材を定着することができる。
【0026】
前処理液の供給後8秒を超えると熱可塑性樹脂がインクの色材に十分付着することができない。インクジェット記録方式の印刷後5秒を超えると色材表面に付着した熱可塑性樹脂が印刷用紙に浸透し奪われる。
【0027】
また加熱において、1秒間以上40℃以上に達しなければ熱可塑性樹脂が十分軟化せず、定着性が得られない。好ましくは1秒間から5秒間であり、40℃以上60℃以下である。時間が長くまたは温度が高くなり過ぎると、印刷用紙が変色、カール、または印刷面が凹凸に変形してくる。
【0028】
40℃以上に加熱する方法は、熱風ドライヤー、高温チャンバー、赤外線ヒーター、ヒートロールなど公知の方法でよく、特に限定されない。
【0029】
本発明に用いられる印刷用紙は、オフセット印刷機に用いられる非塗工紙ないし塗工紙であれば特に限定されない。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0031】
<熱可塑性樹脂の調製>
熱可塑性樹脂は、攪拌機、温度計、還流コンデンサー付きセパラフラスコに、イオン交換水、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム、モノマーとしてアクリル酸メチル、ブタジエン、スチレンをあらかじめ混合乳化させた乳化物を入れ、重合開始剤に過硫酸カリウムを添加し、加熱して反応させ、エマルジョンを得た。平均粒子径およびガラス転移温度は、乳化剤およびモノマーの添加量にて調整し、それぞれガラス転移温度13℃、23℃、33℃および46℃の熱可塑性樹脂を調製した。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)、例えばEXSTAR 6000(セイコー電子社製)、DSC220C(セイコー電子工業社製)、DSC−7(パーキンエルマー社製)などで測定し、ベースラインと吸熱ピークの傾きとの交点から求めた。
【0032】
<前処理液1の調製>
ガラス転移温度が23℃である熱可塑性樹脂のエマルジョンをイオン交換水で希釈し、界面活性剤を1部加え、熱可塑性樹脂の15%水分散液を調製した。
【0033】
<前処理液2の調製>
ガラス転移温度が23℃である熱可塑性樹脂のエマルジョンをイオン交換水で希釈し、界面活性剤を1部加え、熱可塑性樹脂の5%水分散液を調製した。
【0034】
<前処理液3の調製>
ガラス転移温度が23℃である熱可塑性樹脂のエマルジョンをイオン交換水で希釈し、界面活性剤を1部加え、熱可塑性樹脂の30%水分散液を調製した。
【0035】
<前処理液4の調製>
ガラス転移温度が23℃である熱可塑性樹脂のエマルジョンをイオン交換水で希釈し、界面活性剤を1部加え、熱可塑性樹脂の0.25%水分散液を調製した。
【0036】
<前処理液5の調製>
ガラス転移温度が33℃である熱可塑性樹脂のエマルジョンをイオン交換水で希釈し、界面活性剤を1部加え、熱可塑性樹脂の15%水分散液を調製した。
【0037】
<前処理液6の調製>
ガラス転移温度が13℃である熱可塑性樹脂のエマルジョンをイオン交換水で希釈し、界面活性剤を1部加え、熱可塑性樹脂の15%水分散液を調製した。
【0038】
<前処理液7の調製>
ガラス転移温度が46℃である熱可塑性樹脂のエマルジョンをイオン交換水で希釈し、界面活性剤を1部加え、熱可塑性樹脂の15%水分散液を調製した。
【0039】
(実施例1)
印刷用紙として上質紙の上に前処理液1をメイヤーバーを用いてWetの状態で2g/m塗布し、6秒後にインクジェット印刷機CM8060(ボンディングエージェントオフ 搬送速度20m/min シアン/マゼンタ/イエロー/ブラックの各色顔料インク搭載 ヒューレット・パッカード社製)にて印刷した。トレイに排出された印刷用紙を、3秒後にドライヤーを用いて熱風を当て、2秒間、印刷面の温度が45℃の状態として乾燥させた。印刷用紙の温度はポータブル赤外線温度計を用いて測定した。
【0040】
(実施例2)
実施例1において、印刷用紙を上質紙からA2マットコート紙に変更する以外は実施例1と同様に行い、実施例2の印刷を行った。
【0041】
(実施例3)
実施例1において、印刷用紙を上質紙からA2グロスコート紙に変更する以外は実施例1と同様に行い、実施例3の印刷を行った。
【0042】
(実施例4)
実施例3において、トレイに排出された印刷用紙を、ドライヤーにて熱風乾燥するまでの時間を3秒から1.5秒に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例4の印刷を行った。
【0043】
(実施例5)
実施例3において、乾燥における印刷面の温度が45℃から65℃に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例5の印刷を行った。
【0044】
(実施例6)
実施例3において、トレイに排出された印刷用紙を、ドライヤーにて熱風乾燥するまでの時間を3秒後から1.5秒後に、かつ乾燥における印刷面の温度が45℃から65℃に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例6の印刷を行った。
【0045】
(実施例7)
実施例3において、前処理液を塗布し、インクジェット印刷機にて印刷するまでの時間を6秒から3秒に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例7の印刷を行った。
【0046】
(実施例8)
実施例3において、前処理液を塗布し、インクジェット印刷機にて印刷するまでの時間を6秒から3秒に、かつ乾燥における印刷面の温度が45℃から65℃に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例8の印刷を行った。
【0047】
(実施例9)
実施例7において、印刷面の温度が45℃の状態とする乾燥時間を2秒間から7秒間とする以外は実施例7と同様に行い、実施例9の印刷を行った。
【0048】
(実施例10)
実施例3において、前処理液1から前処理液2に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例10の印刷を行った。
【0049】
(実施例11)
実施例3において、前処理液1から前処理液3に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例11の印刷を行った。
【0050】
(実施例12)
実施例3において、前処理液1から前処理液4に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例12の印刷を行った。
【0051】
(実施例13)
実施例3において、前処理液1から前処理液5に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例13の印刷を行った。
【0052】
(実施例14)
実施例3において、前処理液1から前処理液6に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例14の印刷を行った。
【0053】
(実施例15)
実施例3において、前処理液1から前処理液7に変更する以外は実施例3と同様に行い、実施例15の印刷を行った。
【0054】
(比較例1)
実施例3において、前処理液を塗布し、インクジェット印刷機にて印刷するまでの時間を6秒から10秒に変更する以外は実施例3と同様に行い、比較例1の印刷を行った。
【0055】
(比較例2)
実施例3において、トレイに排出された印刷用紙を、ドライヤーにて熱風乾燥するまでの時間を3秒後から7秒後に変更する以外は実施例3と同様に行い、比較例2の印刷を行った。
【0056】
(比較例3)
実施例3において、乾燥における印刷面の温度が45℃から30℃に変更する以外は実施例3と同様に行い、比較例3の印刷を行った。
【0057】
(比較例4)
実施例3において、印刷面の温度が40℃の状態である時間を2秒から0.5秒に変更する以外は実施例3と同様に行い、比較例4の印刷を行った。
【0058】
(比較例5)
実施例3において、前処理液1を塗布しなかった以外は実施例3と同様に行い、比較例5の印刷を行った。
【0059】
<インク(色材)の定着性の評価>
所定の搬送速度で印刷機の排紙部に排出された印刷用紙の印刷面を観察し、インクの擦れ跡およびインクの剥離の度合いを目視評価で判定した。3〜5の評価であれば、実用上に問題はない。
5:インクの擦れ跡、インクの剥離が認められない。
4:インクの擦れ跡、インクの剥離がともにほとんど認められない。
3:インクの擦れ跡がかすかにあり、インクの剥離が極僅かに認められる。
2:インクの擦れ跡があり、部分的に印刷物が汚れたように見える。
1:印刷部分の全体的に、インクの擦れ跡やインクの剥離が発生している。
【0060】
<印刷部分の摺れ擦れ耐性の評価>
印刷用紙に、18cm×18cm画サイズのブラックインクによるベタ画像を、速度毎分64mで印刷した。印刷してから1時間後に、印刷用紙の印刷面に500gまたは300gの荷重で木綿のガーゼを押し付けて25回摩擦試験を行い、下記基準に従って目視にて評価した。3〜5の評価であれば、実用上に問題はない。
5:500gのとき、ほとんど傷が認められない。
4:500gのとき、僅かに傷が認められるが、許容レベルである。
3:300gのとき、僅かに傷が認められるが、許容レベルである。
2:300gのとき、多少の傷が認められる。
1:300gのとき、著しく傷が認められる。
【0061】
<カールの評価>
印刷後の印刷用紙を、平滑な台上に印刷面を上にして水平に静置し、四隅が台からどのくらい浮き上がっているかを定規にて測定し、四隅の高さの平均値から評価した。なお、四隅が印刷面の裏側に曲がっている場合には印刷面を下にして浮き上がっている高さを測定した。便宜上、印刷面を上にした四隅の浮き上がりをプラス、逆に印刷面を下にした四隅の浮き上がりをマイナスと表記する。このようにして得られたカールを下記の基準に従って判定した。3〜5の評価であれば、実用上に問題はない。
5:平均値が、−1mm以上1mm以下
4:平均値が、−5mm以上−1mm未満または1mm超5mm以下
3:平均値が、−10mm以上−5mm未満または5mm超10mm以下
2:平均値が、−15mm以上−10mm未満または10mm超15mm以下
1:平均値が、−15mm未満または15mm超
【0062】
上記の実施例1〜15および比較例1〜5の評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
<評価結果>
表1より、本発明の印刷方法である実施例1〜15は、オフセット印刷機向け印刷用紙を用いてインクジェット記録方式を利用する印刷機で高速印刷しても、印刷部分の摺れ擦れ耐性に優れた印刷物となる。一方、比較例1〜4では本発明の効果は得られない。また、比較例5では前処理液を供給しないため、インク定着性や摺れ擦れ耐性に非常に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の印刷方法は、インクジェット記録方式を利用する印刷機、またはインクジェット記録方式と各種記録方式、例えば、湿式および乾式電子写真、オフセット印刷、グラビア印刷、熱転写等と組み合わされた印刷機に使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙に少なくともシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色顔料インクを搭載したインクジェット記録方式を利用する印刷機で印刷する方法であって、インクジェット記録方式による印刷前に、該印刷用紙の印刷面に熱可塑性樹脂を含有する前処理液を印刷面全面に供給し、供給後8秒以内にインクジェット記録方式による印刷を行い、インクジェット記録方式の印刷後から5秒以内に該印刷用紙の印刷面を加熱し、少なくとも印刷面が1秒間以上は40℃以上に達することを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度が20℃以上38℃以下である請求項1に記載の印刷方法。

【公開番号】特開2011−194719(P2011−194719A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64145(P2010−64145)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】