説明

印刷材カートリッジ、カートリッジセット、及び、印刷装置

【課題】従来とは異なる手段によって印刷材カートリッジの装着検出を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】印刷装置は、N個の印刷材カートリッジで構成されるカートリッジセットが装着されるホルダーと、ホルダー内における印刷材カートリッジの装着状態を検出するための装着検出回路と、を備える。N個の印刷材カートリッジのそれぞれは、収容されている印刷材に関する情報を記憶するための記憶装置と、装着検出用の電気デバイスと、記憶装置用の端子と、電気デバイス用の端子とを有している。N個の印刷材カートリッジの電気デバイスは、ホルダー内にN個の印刷材カートリッジがすべて装着されたときに、検出電流が予め設定されたしきい値電流以上となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷材カートリッジ、カートリッジセット、及び、印刷材カートリッジを装着可能な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、印刷材カートリッジとして、印刷材に関する情報(例えばインク残量)を格納する記憶装置を搭載したものが利用されている。また、印刷材カートリッジの装着検出を行う技術も利用されている。例えば、特許文献1では、印刷装置のCPUが、インクカートリッジの記憶装置と通信することによって、インクカートリッジが装着されているか否かを検出している。
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、ユーザーがインクカートリッジの交換動作を行っている間に装着検出を行おうとすると、カートリッジの記憶装置に通電したままの状態でインクカートリッジの脱着を行う必要が生じる。この場合には、記憶装置の活線挿抜が行われることになるので、その活線挿抜によって、記憶装置内の半導体素子にストレスを与え、ビット誤りを誘発する可能性がある。一方、このようなビット誤りを防ぐために、インクカートリッジの交換動作中にCPUがカートリッジの記憶装置にアクセスしないようにすると、その交換動作中に、印刷装置の表示パネルなどに、どのカートリッジが非装着であるかを表示してユーザーに通知することができず、ユーザーの利便性が大きく損なわれるという問題がある。
【0004】
なお、インクカートリッジの装着検出技術としては、特許文献2に記載されたものも知られている。特許文献2の技術では、印刷装置の装着検出回路が、インクカートリッジ内のインク抵抗値に応じて変わる電圧を検出することによって、インクカートリッジの装着の有無を判定している。しかし、この技術では、複数のインクカートリッジのうちの個々のカートリッジの装着有無を検出するためには、各カートリッジと印刷装置の装着検出回路との間に、装着検出用の配線を個別に設置する必要があるという問題があった。
【0005】
特許文献3には、インクカートリッジに導体部又は抵抗体を設け、4色分の4つのインクカートリッジがプリンターに装着されたときにこれらの導体部又は抵抗体を直列又は並列に接続し、その直列接続又は並列接続の回路で得られる電圧からインクカートリッジの装着状態を検出する技術が記載されている。より具体的には、特許文献3の第1実施例では、1本の信号線を介して、4つのインクカートリッジを1単位としたインクカートリッジセットの装着状態に応じた電圧がMPUに入力される。MPUは、この電圧値に応じて、(i)通常のインクカートリッジセットが装着されているか、(ii)通常とは異なる種類のインクカートリッジセットが装着されているか、(iii)インクカートリッジの未装着(非装着)又は誤装着であるか、のいずれかを判別して、それぞれの場合に応じた処理を実行する。この第1実施例では、4つのインクカートリッジを1単位としたカートリッジセットの種類を検出することはできるが、4つのインクカートリッジの中の1つでも抵抗値が異なっている場合はその検出ができない。そこで、特許文献3の第2実施例では、各インクカートリッジに対してそれぞれ抵抗体を設け、これらに対応してそれぞれ個別に設けられた4本の信号線によってMPUに電圧をそれぞれ入力し、その電圧に応じて個々のインクカートリッジの装着状態や種類を検出できるように工夫されている。このように、特許文献3には、4つのインクカートリッジに共通する1本の信号線を利用してインクカートリッジセットの(すなわち4インクカートリッジ単位の)装着状態や種類を判別する技術、及び、4つのインクカートリッジのそれぞれに対応する4本の信号線を利用して個々のインクカートリッジの装着状態や種類を検出する技術、が記載されている。しかしながら、特許文献3の技術においても、個々のカートリッジの装着有無を検出するためには、各カートリッジと印刷装置の装着検出回路との間に、装着検出用の配線を個別に設置する必要があるという問題があった。また、特許文献3では、個々のインクカートリッジにおける導体又は抵抗の設置位置が異なるため、プリンター側の端子も異なる位置に設けておく必要があり、装置構成が複雑になるという問題があった。
【0006】
なお、特許文献2,3における装着検出では、インクカートリッジの装着状態に応じた電圧を検出して装着状態の判定を行っている。しかしながら、実際の抵抗値には製造誤差や温度依存性による誤差が存在するので、例えば、2種類の装着状態に応じた設計上の電圧が互いに近い値である場合には、これらの2種類の装着状態を判定することが必ずしも容易では無いという問題があった。
【0007】
なお、上述した種々の問題は、インクカートリッジに限らず、他の種類の印刷材(例えば、トナー)が収容された印刷材カートリッジについても同様であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−119228号公報
【特許文献2】特開平3−284953号公報
【特許文献3】特開平6−262771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の種々の課題を考慮して、従来とは異なる手段によって印刷材カートリッジの装着検出を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]
装着検出用電源と、N個(Nは2以上の整数)の印刷材カートリッジで構成されるカートリッジセットが印刷装置のホルダーに装着されたときに流れる検出電流を検出する装着電流値検出部とを含み、前記検出電流に応じて前記ホルダーにおける印刷材カートリッジの装着状態を検出する装着検出回路を備える印刷装置の前記ホルダー内に装着される印刷材カートリッジであって、
前記印刷材カートリッジは、収容されている印刷材に関する情報を記憶するための記憶装置と、装着検出用の電気デバイスと、前記記憶装置用の端子と前記電気デバイス用の端子とを含む複数の端子と、を有しており、
前記電気デバイスは、
(i)前記装着検出用電源と前記装着電流値検出部の間において、前記カートリッジセットを構成する他の印刷材カートリッジの前記電気デバイスと互いに並列に接続され、
(ii)前記ホルダー内に前記N個の印刷材カートリッジが装着されたときに、前記装着電流値検出部で検出される検出電流が予め設定されたしきい値電流以上となるように構成されている、印刷材カートリッジ。
この印刷材カートリッジによれば、記憶装置とは別個に設けられた装着検出用の電気デバイスの装着状態に応じて検出電流が決定され、また、ホルダー内にN個の印刷材カートリッジが装着されたときにはこの検出電流が予め設定されたしきい値電流以上となるので、ホルダー内に印刷材カートリッジがきちんと装着されているか否かを判定することが可能である。また、印刷材カートリッジの装着検出の際に、記憶装置の活線挿抜によるビット誤りを心配する必要が無い。
【0012】
[適用例2]
適用例1記載の印刷材カートリッジであって、
前記電気デバイスは、前記検出電流が前記N個の印刷材カートリッジに関する2N種類の装着状態を一意に識別可能な電流値を取るように構成されている、印刷材カートリッジ。
この構成によれば、検出電流が、2N種類の装着状態に応じて決まる一意に識別可能な電流値を取るので、この検出電流から、ホルダーにおける印刷材カートリッジの装着状態が2N種類の装着状態のいずれであるかを判定することが可能である。
【0013】
[適用例3]
適用例2記載の印刷材カートリッジであって、
前記電気デバイスは抵抗素子であり、
前記抵抗素子は、前記装着検出用電源と前記装着電流値検出部の間に並列に接続される装着検出用抵抗を、単独で又は前記装着検出回路内に設けられた他の抵抗素子との直列接続で形成し、
前記N個の印刷材カートリッジのうちのn番目(n=1〜N)の印刷材カートリッジのための前記装着検出用抵抗は、Rを一定値とし、許容誤差εを1/{4(2N-1-1)}としたときに、2nR(1±ε)の範囲内の抵抗値を有するように構成される、印刷材カートリッジ。
この構成によれば、個々の抵抗値に許容範囲の誤差がある場合にも、検出電流から2N種類の装着状態を識別することが可能である。
【0014】
[適用例4]
N個(Nは2以上の整数)の印刷材カートリッジで構成され、同一の印刷装置のホルダー内に装着されるカートリッジセットであって、
前記カートリッジセットを構成する個々の印刷材カートリッジは、請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷材カートリッジであり、かつ、前記複数の端子の印刷装置側端子との接触部が前記N個の印刷材カートリッジに共通する同一の配列を有している、カートリッジセット。
この構成によれば、印刷装置側端子や、印刷材カートリッジの端子における接触部の配列を、N個の印刷材カートリッジで共通のものとすることができるので、端子や接触部の構成が単純となる。
【0015】
[適用例5]
適用例4記載のカートリッジセットであって、
前記個々の印刷材カートリッジの前記抵抗素子は、同一の抵抗値を有する、カートリッジセット。
この構成によれば、カートリッジを構成する個々の印刷材カートリッジの構成をさらに単純化することが可能となる。
【0016】
[適用例6]
適用例5に記載のカートリッジセットであって、
前記個々の印刷材カートリッジの前記抵抗素子の両端に印加される電圧は42V以下であり、前記個々の印刷材カートリッジの前記抵抗素子の抵抗値は20kΩ以上である、カートリッジセット。
この構成によれば、仮に抵抗素子に最も高い電圧が印加された場合にも、電流を約2.1mA以下に抑えることができるので、回路に過大な電流が流れることがなく、回路を保護することが可能となる。
【0017】
[適用例7]
印刷装置であって、
互いに独立して装着可能な異なるN個(Nは2以上の整数)の印刷材カートリッジで構成されるカートリッジセットが装着されるホルダーと、
装着検出用電源と、前記ホルダー内に1つ以上の印刷材カートリッジが装着されたときに流れる検出電流を検出する装着電流値検出部とを含み、前記検出電流に応じて前記N個の印刷材カートリッジの装着状態を検出する装着検出回路と、
を備え、
前記N個の印刷材カートリッジのそれぞれは、収容されている印刷材に関する情報を記憶するための記憶装置と、装着検出用の電気デバイスと、前記記憶装置用の端子と前記電気デバイス用の端子とを含む複数の端子と、を有しており、
前記N個の印刷材カートリッジの前記電気デバイスは、
(i)前記装着検出用電源と前記装着電流値検出部の間に互いに並列に接続され、
(ii)前記ホルダー内に前記N個の印刷材カートリッジがすべて装着されたときに、前記装着電流値検出部で検出される検出電流が予め設定されたしきい値電流以上となるように構成されている、印刷装置。
この印刷装置によれば、記憶装置とは別個に設けられた装着検出用の電気デバイスの装着状態に応じて検出電流が決定され、また、ホルダー内にN個の印刷材カートリッジがすべて装着されたときにはこの検出電流が予め設定されたしきい値電流以上となるので、ホルダー内に印刷材カートリッジがきちんと装着されているか否かを判定することが可能である。また、印刷材カートリッジの装着検出の際に、記憶装置の活線挿抜によるビット誤りを心配する必要が無い。
【0018】
[適用例8]
適用例7記載の印刷装置であって、
前記N個の印刷材カートリッジの前記電気デバイスは、前記検出電流が前記N個の印刷材カートリッジに関する2N種類の装着状態を一意に識別可能な電流値を取るように構成されており、
前記装着検出回路は、前記検出電流に基づいて、前記ホルダーにおける印刷材カートリッジの装着状態を判定する、印刷装置。
この構成によれば、検出電流が、2N種類の装着状態に応じて決まる一意に識別可能な電流値を取るので、この検出電流から、ホルダーにおける印刷材カートリッジの装着状態が2N種類の装着状態のいずれであるかを判定することが可能である。
【0019】
[適用例9]
適用例8記載の印刷装置であって、
前記N個の印刷材カートリッジのうちのn番目(n=1〜N)の印刷材カートリッジの前記電気デバイスは抵抗素子であり、
前記n番目の印刷材カートリッジの前記抵抗素子は、前記装着検出用電源と前記装着電流値検出部の間に並列に接続される装着検出用抵抗を、単独で又は前記装着検出回路内に設けられた他の抵抗素子との直列接続で形成し、
前記n番目の印刷材カートリッジのための前記装着検出用抵抗は、Rを一定値とし、許容誤差εを1/{4(2N-1-1)}としたときに、2nR(1±ε)の範囲内の抵抗値を有するように構成される、印刷装置。
この構成によれば、個々の抵抗値に許容範囲の誤差がある場合にも、検出電流から2N種類の装着状態を識別することが可能である。
【0020】
[請求項10]
適用例9記載の印刷装置であって、
前記n番目の印刷材カートリッジの前記抵抗素子は、R(1±ε)の範囲内の抵抗値を有し、
前記装着検出回路は、前記n番目のカートリッジの前記抵抗素子と直列接続される他の抵抗素子として、(2n−1)R(1±ε)の範囲内の抵抗値を有する抵抗素子を有する、印刷装置。
この構成によれば、n番目の印刷材カートリッジの抵抗素子と、印刷装置の抵抗素子との直列接続によって、2nR(1±ε)の範囲内の抵抗値を有する抵抗を形成することができる。また、各印刷材カートリッジには、一定の抵抗R(誤差を考慮した場合には一定範囲の抵抗値R(1±ε)を有する抵抗)を設けておけばよいので、印刷材カートリッジの製造上の管理が容易である。
【0021】
[適用例11]
適用例9又は10に記載の印刷装置であって、
前記装着電流値検出部は、
前記検出電流を電圧に変換することによって検出電圧を生成する電流−電圧変換部と、
前記装着検出電圧を複数のしきい値電圧と順次比較してデジタル検出信号に変換するA−D変換部と、
前記複数のしきい値電圧を、前記装着検出用電源の電圧の変動に追従して補正する電圧補正部と、
を備え、
前記装着検出回路は、前記デジタル検出信号に基づいて、前記ホルダーにおける印刷材カートリッジの装着状態を判定する、印刷装置。
この構成によれば、検出電流をデジタル検出信号に変換する際に使用されるしきい値電圧が、装着検出用電源の電圧に追従するように調整されるので、装着検出用電源の電圧が変動しても正確に装着状態を検出することができる。
【0022】
[適用例12]
適用例7〜11のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記N個の印刷材カートリッジの前記電気デバイス用の端子には、前記記憶装置用の端子に印加される電圧よりも高い電圧が前記装着検出用電源から供給され、
前記N個の印刷材カートリッジは、さらに、前記電気デバイス用の端子の近傍に設けられた過電圧検出用の端子をそれぞれ有しており、
前記装着検出回路は、前記過電圧検出用の端子を介して過電圧が検出された場合に前記装着検出用電源から前記電気デバイスへの電圧の供給を停止する、印刷装置。
この構成によれば、電気デバイス用の端子と過電圧検出用の端子との間にインクやゴミなどの異物による意図しない短絡が生じた場合に、直ちに過電圧として検出できるので、意図しない短絡に起因して、装着検出用の高電圧が他の回路に印加されて損傷を与える可能性を低減することが可能である。
【0023】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷材カートリッジ、複数種類の印刷材カートリッジで構成された印刷材カートリッジセット、カートリッジアダプター、複数種類のカートリッジアダプターで構成されたカートリッジアダプターセット、印刷装置、印刷材カートリッジの装着検出方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態における印刷装置の構成を示す斜視図。
【図2】実施形態に係るインクカートリッジの構成を示す斜視図。
【図3】実施形態に係る基板及び接点機構の構成を示す図。
【図4】第1実施形態におけるインクカートリッジと印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5A】第1実施形態におけるカートリッジの装着検出回路を示す説明図。
【図5B】第1実施形態における検出電流と装着状態の関係を示すグラフ。
【図5C】参考例におけるカートリッジの装着検出回路を示す説明図。
【図5D】参考例における検出電圧と装着状態の関係を示すグラフ。
【図6】第2実施形態におけるインクカートリッジと印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図7】第2実施形態におけるカートリッジ検出回路の内部構成を示す図。
【図8】装着検出処理の全体手順を示すフローチャート。
【図9】個別装着検出処理の詳細手順を示すフローチャート。
【図10】装着検出回路の他の構成例を示す回路図。
【図11】装着検出回路の他の構成例を示す回路図。
【図12】第3実施形態におけるカートリッジ検出回路の内部構成を示す図。
【図13】第3実施形態における個別装着電流値検出部の内部構成を示す図。
【図14】第4実施形態における個別装着電流値検出部の構成を示す図。
【図15】第5実施形態における個別装着電流値検出部の構成を示す図。
【図16】他の実施形態に係る基板の構成を示す図。
【図17】他の実施形態におけるインクカートリッジの構成を示す斜視図。
【図18】他の実施形態におけるインクカートリッジの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の一実施形態における印刷装置の構成を示す斜視図である。印刷装置1000は、副走査送り機構と、主走査送り機構と、ヘッド駆動機構を有している。副走査送り機構は、図示しない紙送りモータを動力とする紙送りローラ10を用いて印刷用紙Pを副走査方向に搬送する。主走査送り機構は、キャリッジモータ2の動力を用いて、駆動ベルトに接続されたキャリッジ3を主走査方向に往復動させる。ヘッド駆動機構は、キャリッジ3に備えられた印刷ヘッド5を駆動してインクの吐出およびドット形成を実行する。印刷装置1000は、さらに、上述した各機構を制御する主制御回路40を備えている。主制御回路40は、キャリッジ3とフレキシブルケーブル37を介して接続されている。
【0026】
キャリッジ3は、ホルダー4と、印刷ヘッド5と、キャリッジ回路(後述)とを備えている。ホルダー4は、複数のインクカートリッジを装着可能に構成され、印刷ヘッド5の上面に配置されている。図1に示す例では、ホルダー4には、4つのインクカートリッジが独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類のインクカートリッジが1つずつ装着される。なお、ホルダー4には、任意の複数種類のインクカートリッジを装着できるものとしてもよい。ホルダー4には、カバー11が開閉可能に取り付けられている。印刷ヘッド5の上部には、インクカートリッジから印刷ヘッド5にインクを供給するためのインク供給針6が配置されている。
【0027】
図2は、実施形態に係るインクカートリッジの構成を示す斜視図である。インクカートリッジ100は、インクを収容する筐体101と、基板200(「回路基板」とも呼ぶ)と、を備えている。筐体101の内部には、インクを収容するインク室120が形成されている。筐体101の底面には、ホルダー4に装着されたときに、印刷装置のインク供給針6が挿入されるインク供給口110が形成されている。使用前の状態では、インク供給口110の開口はフィルムによって封止されている。なお、インクカートリッジ100とキャリッジ3には、インクカートリッジ100内のインク残量を光学的に検出するためのセンサー機構が設けられているが、ここでは図示が省略されている。なお、以下では、インクカートリッジを単に「カートリッジ」とも呼ぶ。
【0028】
図3(A)は、基板200の表面の構成を示している。基板200の表面は、カートリッジ100に装着されたときに外側に露出している面である。図3(B)は、基板200を側面から見た図を示している。基板200の上端部には、基板固定用のボス溝201が形成され、基板200の下端部には、ボス穴202が形成されている。
【0029】
図3(A)における矢印Zは、ホルダー4へのカートリッジ100の挿入方向を示している。基板200は、裏面に記憶装置203を備え、表面に9つの端子210〜290からなる端子群を備えている。記憶装置203は、カートリッジ100のインク残量に関する情報を格納する。端子210〜290は、略矩形状に形成され、挿入方向Zと略垂直な列を2列形成するように配置されている。2つの列のうち、挿入方向Z側、すなわち、図3(A)における下側に位置する列を下側列と呼び、挿入方向Zの反対側、すなわち、図3(A)における上側に位置する列を上側列と呼ぶ。
【0030】
上側列を形成する端子210〜240と、下側列を形成する端子250〜290は、それぞれ以下の順に配列されている。
<上側列>
(1)第1の過電圧検出端子210
(2)リセット端子220
(3)クロック端子230
(4)第2の過電圧検出端子240
<下側列>
(5)第1の装着検出端子250
(6)電源端子260
(7)接地端子270
(8)データ端子280
(9)第2の装着検出端子290
【0031】
各端子210〜290は、その中央部に、複数の装置側端子のうちの対応する端子と接触する接触部cpを含んでいる。上側列を形成する端子210〜240の各接触部cpと、下側列を形成する端子250〜290の各接触部cpは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。また、上側列を形成する端子210〜240と、下側列を形成する端子250〜290も、互いの端子中心が挿入方向Zに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
【0032】
第1の装着検出端子250は、2つの端子(電源端子260と、第1の過電圧検出端子210)と隣り合っているが、そのうちの第1の過電圧検出端子210は、第1の装着検出端子250の近傍にあり、特に第1の装着検出端子250に最も近い位置に配置されている。同様にして、第2の装着検出端子290は、2つの端子(第2の過電圧検出端子240と、データ端子280)と隣り合っているが、そのうちの第2の過電圧検出端子240は、第2の装着検出端子290の近傍にあり、特に第2の装着検出端子290に最も近い位置に配置されている。
【0033】
接触部cp間の関係についてみると、第1の装着検出端子250の接触部cpは、2つの端子(電源端子260と、第1の過電圧検出端子210)の各接触部cpと隣り合っている。同様にして、第2の装着検出端子290の接触部cpは、2つの端子(第2の過電圧検出端子240と、データ端子280)の各接触部cpと隣り合っている。
【0034】
図3(A)から解るように、第1と第2の装着検出端子250,290は、下側列の両端部、すなわち、下側列の最も外側にそれぞれ配置されている。また、下側列は、上側列より端子数が多く、下側列の挿入方向Zと略垂直方向の長さは上側列の長さより長い。従って、第1と第2の装着検出端子250,290は、上側列および下側列を含む全端子210〜290のうち、挿入方向Zと略垂直方向にみて、最も外側に位置している。
【0035】
また、第1と第2の装着検出端子250,290の接触部cpは、各端子の接触部cpにより形成される下側列の両端部、すなわち、下側列の最も外側にそれぞれ位置している。また、第1と第2の装着検出端子250,290の接触部cpは、上側列および下側列を含む全端子210〜290の接触部cpの中で、挿入方向Zと略垂直方向にみて、最も外側に位置している。
【0036】
第1と第2の過電圧検出端子210,240は、上側列の両端部、すなわち、上側列の最も外側にそれぞれ配置されている。結果として、第1と第2の過電圧検出端子210,240の接触部cpも、同様に、各端子の接触部cpにより形成される上側列の両端部、すなわち、最も外側に位置している。従って、記憶装置203用の端子220、230、260、270、280は、第1の過電圧検出端子210および第1の装着検出端子250のペアと、第2の過電圧検出端子240および第2の装着検出端子290のペアとに両側から挟まれるように配置されている。
【0037】
図3(C)は、ホルダー4内に設けられた接点機構300の一例を説明する説明図である。接点機構300には、基板200における各端子210〜290に対応するように、ほぼ一定のピッチで、深さが異なる2種類のスリット301、302が交互に形成されている。この例では、スリット301、302は合計で9個存在する。各スリット301、302には、導電性と弾性を備えた接点形成部材303、304が嵌め込まれている。接点形成部材303、304の両端部のうち、ホルダー4の内側に露出する端部は、基板200の端子210〜290のうちの対応する端子に弾性的に接触する。図3(C)の下部には、端子210〜290と接触する接点形成部材303,304の部分510〜590が示されている。すなわち、端子210〜290と接触する部分510〜590は、印刷装置1000の制御回路と、基板200の端子210〜290とを電気的に接続するための装置側端子として機能する。以下では、これらの部分510〜590を、「装置側端子510〜590」と呼ぶ。ホルダー4にインクカートリッジが装着されると、装置側端子510〜590は、それぞれ、上述した各端子210〜290の接触部cp(図3(A))に接触する。なお、ホルダー4内に装着される複数のインクカートリッジの基板200における複数の端子210〜290の配列は、すべてのカートリッジで同一である。また、複数のインクカートリッジ用の装置側端子510〜590の配列も同一である。従って、基板200の複数の端子210〜290の接触部cpの配列も、複数のインクカートリッジに共通する同一の配列となっている。但し、基板200の端子配列や、その接触部の配列を、カートリッジ毎に異なる配列とすることも可能である。
【0038】
図4は、第1実施形態におけるインクカートリッジ100と印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。印刷装置1000は、表示パネル30と、主制御回路40と、キャリッジ回路500とを備えている。表示パネル30は、ユーザーに印刷装置1000の動作状態や、カートリッジの装着状態などの各種の通知を行うための表示部である。主制御回路40は、CPU410と、メモリー420とを有している。キャリッジ回路500は、メモリー制御回路501と、装着検出回路600とを有している。
【0039】
カートリッジ100の基板200(図3(A))に設けられた9つの端子のうち、リセット端子220と、クロック端子230と、電源端子260と、接地端子270と、データ端子280は、記憶装置203に電気的に接続されている。記憶装置203は、例えば、メモリーセルアレイ(図示省略)を備えている。記憶装置203は、メモリー制御回路501からアドレスの指定を受けることなく、メモリー制御回路501から送信されるクロック信号SCKとコマンドデータに基づいてデータの読み書きがされるメモリーセルが決定される不揮発性メモリーである。クロック端子230は、キャリッジ回路500の端子530と電気的に接続され、キャリッジ回路500から記憶装置203にクロック信号SCKを供給するために用いられる。電源端子260と接地端子270には、印刷装置1000側の端子560,570を介して電源電圧(例えば定格3.3V)と接地電圧(0V)がそれぞれ供給されている。データ端子280は、キャリッジ回路500の端子580と電気的に接続され、キャリッジ回路500と記憶装置203との間で、データ信号SDAをやり取りするために用いられる。リセット端子220は、キャリッジ回路500の端子520と電気的に接続され、キャリッジ回路500から記憶装置203にリセット信号RSTを供給するために用いられる。
【0040】
第1と第2の過電圧検出端子210,240は、カートリッジ100の基板200(図3(A))内で配線で接続されており、また、キャリッジ回路500の端子510,540とそれぞれ電気的に接続される。なお、2つの端子が配線で接続されている状態を、「短絡接続」又は「導線接続」とも呼ぶ。配線による短絡接続は、意図しない短絡とは異なる状態である。なお、過電圧検出端子210,240,510,540は省略可能である。第1と第2の装着検出端子250,290は、その間に装着検出用の抵抗素子204が設けられており、また、キャリッジ回路500の端子550、590とそれぞれ電気的に接続される。
【0041】
装置側端子510〜590と、基板200の端子210〜290と、により、キャリッジ回路500と回路基板100を接続する配線には、配線名SCK,VDD,SDA,RST,OV1,OV2,DT1,DT2が付されている。これらの配線名のうち、記憶装置用の配線のものは、信号名と同じ名称が使用されている。
【0042】
メモリー制御回路501は、カートリッジ100の記憶装置203を制御してデータの読み書きを実行する回路である。メモリー制御回路501とカートリッジの記憶装置203とは、比較的低い電圧(本実施形態では、定格3.3V)で動作する低電圧回路である。
【0043】
装着検出回路600は、ホルダー4におけるカートリッジの装着検出を行うための回路である。装着検出回路600とカートリッジの抵抗素子204とは、記憶装置203に比べて高い電圧(本実施形態では、定格42V)で動作する高電圧回路である。
【0044】
図5A,図5Bは、装着検出回路によって行われるカートリッジの装着検出処理の内容を示す説明図である。装着検出回路600は、装着検出用の高電圧電源VHVと、個別装着電流値検出部630と、抵抗素子631〜634と、判定部660と、を有している。なお、個別装着電流値検出部630を、単に「装着電流値検出部」とも呼ぶ。
【0045】
図5Aは、印刷装置のホルダー4に装着可能なカートリッジIC1〜IC4がすべて装着された状態を示している。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。装着検出回路600内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。これらの抵抗素子631〜634の抵抗値は、互いに異なる値に設定されている。具体的には、これらの抵抗素子631〜634のうち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnに対応づけられた抵抗素子63nの抵抗値は、(2n―1)R(Rは一定値)に設定されている。この結果、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、装着検出回路600内の抵抗素子63nとの直列接続によって、2nRの抵抗値を有する抵抗が形成される。n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2nRの抵抗は、個別装着電流値検出部630に対して互いに並列に接続される。なお、以下では、直列接続抵抗701〜704を、「装着検出用抵抗」又は単に「抵抗」とも呼ぶ。個別装着電流値検出部630で検出される検出電流IDETは、これらの4つの抵抗701〜704の合成抵抗値Rcで電圧VHVを除した値VHV/Rcである。ここで、カートリッジの個数をNとしたとき、N個のカートリッジがすべて装着されている場合には、検出電流IDETは以下の式で与えられる。
【数1】

【数2】

1つ以上のカートリッジが未装着又は非装着であれば、これに応じて合成抵抗値Rcが上昇し、検出電流IDETは低下する。
【0046】
図5Bは、カートリッジIC1〜IC4の装着状態と、検出電流IDETとの関係を示している。図の横軸は、16種類の装着状態を示しており、縦軸はこれらの装着状態における検出電流IDETの値を示している。16種類の装着状態は、4つのカートリッジIC1〜IC4から任意に1〜4個を選択することによって得られる16個の組み合わせに対応している。なお、これらの個々の組み合わせを「サブセット」とも呼ぶ。検出電流IDETは、これらの16種類の装着状態を一意に識別可能な電流値となる。換言すれば、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応づけられた4つの抵抗701〜704の個々の抵抗値は、4つのカートリッジが取り得る16種類の装着状態が、互いに異なる合成抵抗値Rcを与えるように設定されている。
【0047】
4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着状態にあれば、検出電流IDETはその最大値Imaxとなる。一方、最も抵抗値の大きな抵抗704に対応づけられたカートリッジIC4のみが未装着の状態では、検出電流IDETは最大値Imaxの0.93倍となる。従って、検出電流IDETが、これらの2つの電流値の間の値として予め設定されたしきい値電流Ithmax以上であるか否かを調べれば、4つのカートリッジIC1〜IC4がすべて装着されているか否かを検出することが可能である。なお、個別装着検出のために、通常のロジック回路の電源電圧(約3.3V)よりも高い電圧VHVを使用する理由は、検出電流IDETのダイナミックレンジを広くとることによって、検出精度を高めるためである。
【0048】
図5Cは、参考例における装着検出回路の構成を示している。この装着検出回路は、電流の代わりに電圧VDETを検出することによってカートリッジの装着状態を検出する。検出電圧VDETは、合成抵抗Rcと、他の抵抗Rとで電源電圧VHVを分圧した値である。なお、後者の抵抗Rの値は、カートリッジの抵抗素子204の抵抗値に設定しても良く、また、他の任意の抵抗値に設定してもよい。図5Dは、この参考例におけるカートリッジIC1〜IC4の装着状態と、検出電圧VDETとの関係を示している。検出電圧VDETは、カートリッジの16種類の装着状態に応じてそれぞれ異なる値を取り、この点では図5Aに示した装着検出回路と類似している。なお、図5B及び図5Dの横軸では、右側にある装着状態ほど合成抵抗値Rcがより小さくなるように、16種類の装着状態が順番に並べられている。
【0049】
図5Bに示した検出電流IDETのグラフは、16種類の装着状態に対してほぼ直線的な関係を示し、図5Bの右端に行くに従って(合成抵抗値Rcが小さくなるに従って)直線的に増大している。一方、図5Dに示す検出電圧VDETのグラフでは、上に凸の曲線形状に従って電圧値が増加しており、図5Dの右端に行くに従って(合成抵抗値Rcが小さくなるに従って)、隣接する2つの装着状態における検出電圧VDETの差が小さくなる。この参考例のように、合成抵抗値Rcに応じた検出電圧VDETを利用して装着状態を検出する場合には、図5Dの右端の2つの装着状態での電圧の差が小さいので、2つの装着状態を必ずしも正確に判別できない可能性がある。また、これらの2つの装着状態を常に正確に判別しようとすれば、より高精度の(製造誤差の小さい)抵抗を使用することが必要となるので、コストアップの要因となる。これに対して、図5A及び図5Bに示した第1実施形態では、高電圧電源VHVと個別装着電流値検出部630間の電圧を一定とし、合成抵抗値Rcに応じた検出電流IDETを利用して装着状態を検出しているので、図5Bの全体にわたって、隣接する任意の2つの装着状態における検出電流IDETの差が常にほぼ一定である。従って、第1実施形態では、装着状態の判別が参考例に比べて容易であり、また、より低い精度の抵抗を使用することが可能となる。この比較から、合成抵抗値Rcに応じた検出電流IDETを利用して装着状態を検出する構成の方が、合成抵抗値Rcに応じた検出電圧VDETを利用して装着状態を検出する構成よりも好ましいことが理解できる。
【0050】
個別装着電流値検出部630は、検出電流IDETをデジタル検出信号SIDETに変換して、判定部660にそのデジタル検出信号SIDETを送信する。判定部660は、このデジタル検出信号SIDETの値から、16種類の装着状態のいずれであるかを判定することが可能である。1つ以上のカートリッジが未装着であると判定された場合には、判定部660は、表示パネル30にその未装着状態を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知する。
【0051】
第1実施形態では、カートリッジの交換の最中に個々のカートリッジの未装着状態が表示パネル30に表示されるので、ユーザーはこの表示を見ながらカートリッジ交換を実行することが可能である。特に、カートリッジを交換するときに、そのカートリッジが未装着から装着に変わったことが表示パネル30に表示されるので、カートリッジ交換作業に不慣れなユーザーでも安心して次の操作に進むことが可能である。また、第1実施形態では、カートリッジの記憶装置203が非通電の状態でカートリッジの脱着と装着検出を行うことができるので、いわゆる記憶装置の活線挿抜によって生じるビット誤りの発生を防止することが可能である。
【0052】
B.カートリッジの装着検出用抵抗素子の許容誤差:
図5A,図5Bで説明したように、カートリッジの装着検出処理は、N個のカートリッジに関する2N種類の装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを利用している。以下では、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差について検討する。
【0053】
まず、カートリッジの個数Nが4である場合を考える。抵抗値の許容誤差をεとしたとき、各抵抗素子204(図5A)の抵抗値は、(1±ε)Rの範囲の値を取ることが許容される。また、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応づけられる4つの直列接続抵抗701〜704の抵抗値は、それぞれ(1±ε)2R,(1±ε)4R,(1±ε)8R,(1±ε)16Rの範囲の値を取ることが許容される。ところで、図5Bの16種類の装着状態のうちで、最も合成抵抗値Rcの差が小さく、従って最も検出電流Idetが大きな2つの状態は、全カートリッジIC1〜IC4が装着された状態と、4番目のカートリッジIC4のみが非装着の状態である。ここで、全カートリッジIC1〜IC4が装着された状態の第1の合成抵抗値をRc1とし、4番目のカートリッジIC4のみが非装着である状態の第2の合成抵抗値をRc2とすると、Rc1<Rc2が成立する。この関係は、各抵抗701〜704の抵抗値が許容誤差εの範囲内で変動する場合にも成立することが好ましい。このとき、最悪条件は、第1の合成抵抗値Rc1がその最大値Rc1maxを取り、第2の合成抵抗値Rc2がその最小値Rc2minを取る場合である。このとき、Rc1max<Rc2minが成立することが好ましく、これを書き換えると次式となる。
【数3】

【0054】
(3)式のRc1maxとRc2minは、それぞれ以下の式で与えられる。
【数4】

【数5】

【0055】
(3)式に(4),(5)式を代入すると次の(6)式が成立し、これを変形すると(7)式となる。
【数6】

【数7】

【0056】
(7)式において、誤差εは1に比べて十分に小さいので、(1−ε)=1とおけば次式が成立し、抵抗値の許容誤差εは3.6%となる。
【数8】

【0057】
以上の考察を一般化すると、カートリッジの個数がNの場合には、許容誤差εは次式で与えられる。
【数9】

【0058】
すなわち、許容誤差εが(9)式を満足すれば、常にN個のカートリッジの装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを保証することができる。但し、実際の設計上の抵抗値の許容誤差は、(9)式の右辺の値よりも小さな値に設定することが好ましい。また、上述のような検討を行わずに、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差を十分に小さな値(例えば1%以下の所定の値)に設定するようにしてもよい。
【0059】
C.第2実施形態:
図6は、第2実施形態におけるインクカートリッジ100と印刷装置1000との電気的構成を示すブロック図である。主制御回路40は、CPU410と、メモリー420と、非装着状態検出部430とを有している。メモリー420には、カートリッジの装着の有無を判定する際に使用されるしきい値を格納したしきい値テーブルTTが記憶されている。CPU410は、このしきい値テーブルTTから読み出したしきい値を使用して、ホルダー4に装着されているカートリッジの種類を判定する(後述)。なお、しきい値テーブルTTは、EEPROMなどの不揮発性メモリー内に格納されていることが好ましい。キャリッジ回路500は、メモリー制御回路501と、カートリッジ検出回路502とを有している。
【0060】
カートリッジ検出回路502は、主制御回路40と協働して、ホルダー4におけるカートリッジの装着検出を行うための回路である。なお、第2実施形態では、カートリッジ検出回路502と主制御回路40とが協働して、第1実施形態の装着検出回路600(図6(A))と同様な装着検出処理を実行する。従って、これらの回路502,40を「装着検出回路」と呼ぶことも可能である。カートリッジ検出回路502とカートリッジの抵抗素子204とは、記憶装置203に比べて高い電圧(本実施形態では、定格42V)で動作する高電圧回路である。
【0061】
図7は、第2実施形態におけるカートリッジ検出回路502の内部構成を示す図である。ここでは、4つのカートリッジ100がホルダーに装着された状態が示されており、各カートリッジを区別するために参照符号IC1〜IC4が使用されている。カートリッジ検出回路502は、検出電圧制御部610と、過電圧検出部620と、個別装着電流値検出部630とを有している。過電圧検出部620を「短絡検出部」とも呼ぶ。
【0062】
カートリッジ検出回路502内には、装着検出用の高電圧電源VHVが設けられている。この高電圧電源VHVは、トランジスタ612を介して、各カートリッジIC1〜IC4の装着位置に設けられた4つの装置側端子550に並列に接続されている。なお、高電圧電源VHVの電圧値を、「高電圧VHV」と呼ぶ。トランジスタ612は、検出電圧制御部610によってオン/オフ制御される。各装置側端子550は、対応するカートリッジの第1の装着検出端子250に接続される。各カートリッジ内では、第1と第2の装着検出端子250,290の間に、抵抗素子204がそれぞれ設けられている。4つのカートリッジIC1〜IC4の抵抗素子204の抵抗値は、同一の値Rに設定されている。カートリッジ検出回路502内には、各カートリッジの抵抗素子204とそれぞれ直列接続される抵抗素子631〜634が設けられている。これらの抵抗素子631〜634の抵抗値は、互いに異なる値に設定されている。具体的には、これらの抵抗素子631〜634のうち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnに対応づけられた抵抗素子63nの抵抗値は、(2n―1)R(Rは一定値)に設定されている。この結果、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、カートリッジ検出回路502内の抵抗素子63nとの直列接続によって、2nRの抵抗値を有する直列接続抵抗が形成される。なお、これらの直列接続抵抗は、図5Aに示したものと同じである。n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2nRの抵抗701〜704は、電源VHVと個別装着電流値検出部630の間に並列に接続される。個別装着電流値検出部620は、これらのカートリッジの装着状態に応じて決まる検出電流IDETを検出する。検出電流IDETを、「装着検出電流」とも呼ぶ。この検出電流IDETは、第1実施形態で説明した(1)式及び(2)式で与えられる。
【0063】
各カートリッジ内において、第1と第2の過電圧検出端子210,240は配線で接続されている。1番目のカートリッジIC1の第1の過電圧検出端子210は、対応する装置側端子510を介してカートリッジ検出回路502内の配線651に接続されており、この配線651は、抵抗652を介して低電圧電源VDDに接続されている。また、この配線651は、主制御回路40内の非装着状態検出部430(図6)に接続されている。なお、低電圧電源VDDの電圧値を、「低電圧VDD」と呼ぶ。n番目(n=1〜3)のカートリッジの第2の過電圧検出端子240と、n+1番目のカートリッジの第1の過電圧検出端子210とは、対応する装置側端子540,510を介して互いに接続される。また、4番目のカートリッジIC4の第2の過電圧検出端子240は、抵抗654を介して接地電位に接続される。すべてのカートリッジIC1〜IC4がホルダー内に装着されていれば、非装着状態検出部430に接続されている配線651の電圧は、電源電圧VDDを2つの抵抗652,654で分圧した所定の電圧値となる。一方、1つでも未装着のカートリッジがあれば、配線651の電圧は電源電圧VDDとなる。従って、非装着状態検出部430は、この配線651の電圧を監視することによって、未装着のカートリッジが存在するか否かを判定することができる。このように、第2実施形態では、すべてのカートリッジIC1〜IC4がホルダー内に装着されたときには各カートリッジの過電圧検出端子240,210が順次直列に接続されるので、その接続先の配線651の電圧を検出することによって、1つ以上のカートリッジが未装着であるか否かを直ちに判定することが可能である。
【0064】
さらに、4つのカートリッジIC1〜IC4の第1の過電圧検出端子210は、対応する装置側端子510を介して、ダイオード641〜644のアノード端子に接続される。また、4つのカートリッジIC1〜IC4の第2の過電圧検出端子240は、対応する装置側端子540を介して、ダイオード642〜645のアノード端子に接続される。なお、第2のダイオード642のアノード端子は、第1のカートリッジIC1の第2の過電圧検出端子240と、第2のカートリッジIC2の第1の過電圧端子210に共通に接続される。ダイオード643,644も同様に、1つのカートリッジの第2の過電圧検出端子240と隣接するカートリッジの第1の過電圧検出端子210に共通に接続される。これらのダイオード641〜645のカソード端子は、過電圧検出部620に並列に接続されている。これらのダイオード641〜645は、過電圧検出端子210,240に異常な高電圧(具体的には、低電圧電源VDDの電圧値を超える電圧)が印加されていないか否かを監視するために使用される。このような異常な電圧値(「過電圧」と呼ぶ)は、各カートリッジの過電圧検出端子210,240のいずれかと、装着検出端子250,290のいずれかとの間に意図しない短絡が生じている場合に発生する。例えば、インク滴やゴミが基板200(図3(A))の表面に付着すると、第1の過電圧検出端子210と第1の装着検出端子250の間、又は、第2の過電圧検出端子240と第2の装着検出端子290の間に意図しない短絡が発生する可能性がある。このような意図しない短絡が発生すると、ダイオード641〜645のいずれかを介して過電圧検出部620に、第2の過電圧端子240に所定値以上の電圧が印加されていることを検出可能な電流が流れるので、過電圧検出部620は、過電圧の発生の有無、及び、意図しない短絡の発生の有無を判定することが可能である。なお、過電圧が検出されると、過電圧検出部620から検出電圧制御部610に過電圧の発生を示す信号が供給され、これに応じて検出電圧制御部610がトランジスタ612をオフする。これは、過電圧によって生じ得る印刷装置やカートリッジの損傷を防止するためである。なお、過電圧検出部620は、短絡検出部と呼ぶことも可能である。
【0065】
以上のように、第2実施形態では、過電圧検出端子210,240は、ホルダー4にすべてのカートリッジが装着されているか否かの検出処理(全カートリッジ装着検出)と、過電圧検出端子210,240と装着検出端子250,290との間の意図しない短絡の有無の検出処理と、の両方に使用されている。但し、これらの2つの検出処理の一方又は両方を省略することも可能である。過電圧検出端子210,240を使用したこれらの2つの検出処理を両方とも行わない場合には、過電圧検出端子210,240,510,540と、ダイオード641〜645と、過電圧検出部620等の回路要素を省略可能である。
【0066】
図8は、主制御回路40とカートリッジ検出回路502とによって行われる装着検出処理の全体手順を示すフローチャートである。この装着検出処理は、キャリッジ3がカートリッジ交換のための位置(「カートリッジ交換位置」と呼ぶ)に停止して、ホルダー4のカバー11(図1)が開かれると開始される。カートリッジ交換位置は、キャリッジ3の主走査方向の一方側の端部付近(例えば図1の右端付近)に予め設定されている。なお、カートリッジ交換位置では、カートリッジの記憶装置203は非通電状態(電源電圧VDDが供給されない状態)となる。なお、図8の装着検出処理は、印刷装置の電源が入っている状態のときに、常に繰り返し実行される処理としてもよい。
【0067】
キャリッジ3がカートリッジ交換位置に停止すると、ステップS110において、非装着状態検出部430(図6)が、すべてのカートリッジがホルダー4に装着されているか否かを検出する(この処理を単に「非装着検出処理」とも呼ぶ)。次に、ステップS120において、個別装着電流検出部630(図7)を含む回路が、カートリッジの個別装着検出処理を実行する。
【0068】
図9は、個別装着検出処理の詳細手順を示すフローチャートである。ステップS210(1)では、CPU410(図6)が、個別装着電流検出部630(図7)から供給されたデジタル検出信号SIDETの値と、1番目のしきい値とを比較する。この1番目のしきい値は、全カートリッジが非装着の場合の検出電流値IDETと、最も抵抗値の大きな抵抗704に対応づけられたカートリッジIC4が装着されている場合の検出電流値IDETとの間の電流値に相当する予め設定された値である。検出電流値IDETが1番目のしきい値以下であれば、全カートリッジが非装着なので、図9の処理を終了する。以下同様に、ステップS210(2N−1)まで、それぞれ予め設定されたしきい値と検出電流値IDETとを比較することによって、図5Bの下部に示した2N個の装着状態(装着パターン)のいずれであるかを判定する。なお、本実施形態ではN=4なので、15個のしきい値が使用される。但し、Nとしては2以上の任意の整数を採用可能であり、典型的にはNとして3,4,又は6が採用される。
【0069】
こうして個別装着検出処理が終了すると、図8のステップS130に戻り、ステップS110の非装着検出処理とステップS120の個別装着検出処理の両方ともにOK(合格)であったか否か(全体非装着状態無し、かつ、個別非装着状態無しか否か)が判定される。両方ともにOKの場合には、正常終了する。一方、ステップS110,S120がともにNG(非装着状態有り、かつ、個別未装着状態有り)の場合には、ステップS140からステップS150に至り、非装着カートリッジ情報とともに、装着されていないカートリッジがあることがユーザーに通知される。ここで、「非装着カートリッジ情報」とは、装着されていないカートリッジの情報(カートリッジの色や、ホルダー内のカートリッジの位置等の少なくとも1つの情報)を意味する。一方、ステップS110,S120の一方のみがNG(非装着状態と個別未装着状態の一方のみ有り)の場合には、ステップS140からステップS160に至り、ホルダー内に正しくカートリッジを装着し直すことがユーザーに通知される。このとき、非装着カートリッジ情報が存在する場合(個別装着検出処理によって非装着カートリッジが特定された場合)には、その非装着カートリッジ情報もユーザーに通知することが好ましい。
【0070】
このように、第2実施形態では、カートリッジの交換の最中に個々のカートリッジの非装着状態をユーザーに通知することができるので、ユーザーはこの表示を見ながらカートリッジ交換を実行することが可能である。特に、カートリッジの交換時に新しいカートリッジをホルダー4に装着すると、そのカートリッジが装着されている旨が表示パネル30に表示されるので、カートリッジ交換作業に不慣れなユーザーでも安心して次の操作に進むことが可能である。また、第2実施形態では、カートリッジの記憶装置203が非通電の状態でカートリッジの脱着と装着検出を行うことができるので、いわゆる記憶装置の活線挿抜によって生じるビット誤りの発生を防止することが可能である。
【0071】
また、第2実施形態では、過電圧検出端子210,240に過電圧が発生している場合には、直ちに装着検出用の高電圧VHVの印加を解除するので、印刷装置やカートリッジの電気回路に過電圧による損傷が生じるのを防止することが可能である。
【0072】
D.装着検出回路の変形例:
図10は、装着検出回路の他の構成例を示す回路図である。この回路は、図5Aの回路とは、抵抗素子633,634の抵抗値が異なっている。図10の回路では、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応してカートリッジ検出回路502内に設けられている抵抗素子631〜634の抵抗値がR、3R、9R、29Rとなっており、この結果、4つの抵抗701〜704の抵抗値が2R,4R,10R,30Rとなっている。ここでは、2つのカートリッジに対応づけられた抵抗の抵抗値の比の値が、2(IC1とIC2の比)と2.5(IC2とIC3の比)と3(IC3とIC4の比)であり、それぞれ異なる値となっている。一般に、2つのカートリッジに対応づけられた抵抗の抵抗値の比として2以上の値を採用すれば、N個のカートリッジの2N種類の装着状態に応じて、それらの合成抵抗値Rcが一意に決まるような回路構成を得ることができる。この例から理解できるように、各カートリッジに対応づけられた抵抗701〜704の抵抗値は、2nRである必要は無く、N個のカートリッジの2N種類の装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まるような種々の抵抗値を採用可能である。
【0073】
図11は、装着検出回路の更に他の構成例を示す回路図である。この回路は、図5Aにおけるカートリッジの抵抗素子204を、定電流源206に置き換えたものである。これらの定電流源206は、高電圧VHVを受けて一定の電流Iconstを出力する。この一定電流Iconstは、その合計値4×Iconstが、図5Bに示したしきい値電流Ithmaxよりも大きくなる値に設定されている。この構成においても、判定部660(図5A)又はCPU410(図6)に、カートリッジが装着されているものと判定させることが可能である。なお、図11の構成では、個別装着検出はできなくなるが、特別な用途(1個のカートリッジの装着状態で試験やクリーニング等を行いたいとき、あるいは、個別装着検出を行わないようにしたいときなど)に利用可能である。
【0074】
なお、カートリッジの装着検出端子250,290(図3(A))に接続された電気デバイスとしては、抵抗素子204や定電流源206以外の他の任意の種類の電気デバイスを採用可能である。但し、このような電気デバイスは、ホルダー4内にN個のカートリッジがすべて装着されたときに、個別装着検出用の検出電流IDETが、予め設定されたしきい値電流Ithmax以上となるように構成されていることが好ましい。
【0075】
なお、上述した第1、第2実施形態に関する各種の変形例や変更例は、以下で説明する他の実施形態にも適用可能である。
【0076】
E.第3実施形態:
第3実施形態は、回路の全体構成は図7に示した第2実施形態の構成と同じであり、カートリッジ検出回路の内部構成が第2実施形態と異なる。
【0077】
図12は、第3実施形態におけるカートリッジ検出回路の構成を示す回路図である。図7の回路との差異は、図7に示したカートリッジ検出回路に描かれていた抵抗652,654を省略した点と、検知パルス発生部650を設けた点と、トランジスタ612の出力端子の電圧値VHOが個別装着電流値検出部630aに供給されている点であり、他の構成は図7と同じである。検知パルス発生部650は、図8のステップS110において矩形状の検知パルスDPを発生する。この検知パルスDPは、すべてのインクカートリッジの過電圧検出端子240,210を順次経由した後に、非装着状態検出部430(図7)で受信される。非装着状態検出部430は、この検知パルスDPの波形を解析することによって、インクカートリッジの端子の接触状態が、高抵抗である不十分な接触状態(接触不良)であるか否かを判定することが可能である。すなわち、非装着状態検出部430は、単にすべてのカートリッジが装着されているか否かだけでなく、不十分な接触状態にあるか否かを検出ことができる。接触状態が不十分である場合には、例えば、表示パネル30にカートリッジの再装着を促す通知を表示するようにしてもよい。
【0078】
図13は、第3実施形態における個別装着電流値検出部630aの内部構成を示す図である。個別装着電流値検出部630aは、電流−電圧変換部710と、電圧比較部720と、比較結果記憶部730と、電圧補正部740とを有している。
【0079】
電流―電圧変換部710は、オペアンプ712と帰還抵抗R11とで構成される反転増幅回路である。オペアンプ712の出力電圧VDETは、以下の式で与えられる。
【数10】

ここで、VHOはトランジスタ512(図12)の出力電圧、Rcは4つの抵抗701〜704(図5A)の合成抵抗である。この出力電圧VDETは、検出電流IDETを表す電圧値を有する。
【0080】
なお、(10)式で与えられる電圧VDETは、検出電流IDETによる電圧IDET・R11を反転した値を示す。そこで、電流―電圧変換部710に反転増幅器を追加し、この追加の反転増幅器で電圧VDETを反転した電圧を、電流―電圧変換部710の出力電圧として出力してもよい。この追加の反転増幅器の増幅率の絶対値は、1とすることが好ましい。
【0081】
電圧比較部720は、しきい値電圧生成部722とコンパレーター724(オペアンプ)と切換制御部726とを有している。しきい値電圧生成部722は、参照電圧Vrefを複数の抵抗R1〜Rmで分圧して得られる複数のしきい値電圧Vth(j)の一つを、切換スイッチ723で選択して出力する。これらの複数のしきい値電圧Vth(j)は、図5Bに示した16種類の装着状態における検出電流IDETの値を識別するしきい値に相当する。コンパレーター724は、電流―電圧変換部710の出力電圧VDETと、しきい値電圧生成部722から出力されるしきい値電圧Vth(j)とを比較して、2値の比較結果を出力する。この2値の比較結果は、個々のカートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを示している。すなわち、電圧比較部720は、個々のカートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを調べ、その比較結果を順次出力する。典型的な例では、電圧比較部720は、まず、最も大きな抵抗701(図5A)に対応付けられた第1のカートリッジIC1が装着されているか否かを調べて、その比較結果を示すビット値を出力する。その後、第2〜第4のカートリッジIC2〜IC4が装着されているかを順次調べて、その比較結果を示すビット値を出力する。切換制御部726は、各カートリッジに対する比較結果に基づいて、次のカートリッジの装着検出のためにしきい値電圧生成部722から出力すべき電圧値Vth(j)を切り換える制御を行う。
【0082】
比較結果記憶部730は、電圧比較部720から出力される2値の比較結果を、切換スイッチ732で切り換えてビットレジスター734内の適切なビット位置に格納する。この切換スイッチ732の切り換えタイミングは、切換制御部726から指定される。ビットレジスター734は、印刷装置に装着可能な個々のカートリッジの装着の有無を示すN個(ここではN=4)のカートリッジ検出ビットと、異常な電流値が検出されたこと(電流値が予め設定された異常判定値以上となったこと)を示す異常フラグビットとを有している。異常フラグビットは、すべてのカートリッジが装着されている状態での電流値Imax(図5B)に比べて有意に大きな電流が流れている場合にHレベルとなる。但し、異常フラグビットは省略可能である。ビットレジスター734に格納された複数のビット値は、デジタル検出信号SIDET(検出電流信号)として主制御回路40のCPU410(図7)に送信される。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETのビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを判定する。前述したように、第3実施形態では、デジタル検出信号SIDETの4つのビット値は、個々のカートリッジが装着されているか否かを示している。従って、CPU410は、図9に示したステップS210の処理を実行する必要が無く、デジタル検出信号SIDETの個々のビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを直ちに判定することが可能である。
【0083】
電圧比較部720と比較結果記憶部730の両者は、いわゆるA−D変換部を構成している。A−D変換部としては、図13に示した電圧比較部720と比較結果記憶部730の代わりに、周知の他の種々の構成を採用することが可能である。
【0084】
電圧補正部740は、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)を、装着検出用の高電圧VHV(図12)の変動に追従して補正するための回路である。電圧補正部740は、オペアンプ742と2つの抵抗R21,R22で構成された反転増幅回路として構成されている。オペアンプ742の反転入力端子には、入力抵抗R22を介して図12のトランジスタ612の出力端子電圧VHOが入力されており、非反転入力端子には参照電圧Vrefが入力されている。このとき、オペアンプ742の出力電圧AGNDは以下の式で与えられる。
【数11】

【0085】
この電圧AGNDは、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDとして使用される。例えば、Vref=2.4V,VHO=42V,R21=20kΩ,R22=400kΩとすれば、AGND=0.42Vとなる。上述した(10)式と、(11)式とを比較すれば理解できるように、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDは、検出電圧値VDETと同様に、トランジスタ612の出力電圧VHO(すなわち装着検出用の高電圧電源VHV)の値に応じて変化する。これらの2つの電圧AGND、VDETの差異は、抵抗比R21/R22、R11/Rcの差から生じている。このような電圧補正部740を使用すれば、装着検出用の電源電圧VHVが何らかの原因で変動しても、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)が、電源電圧VHVの変動に追従して変化する。この結果、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)の両方が、電源電圧VHVの変動に追従して変化するので、電圧比較部720において正確な装着状態を表す比較結果を得ることができる。特に、抵抗比R21/R22と抵抗比R11/Rc1(Rc1は全カートリッジ装着時の合成抵抗値)の値を等しく設定すれば、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)を、電源電圧VHVの変動に対してほぼ同じ変化幅で変化するように正確に追従させることが可能である。但し、電圧補正部720は省略してもよい。
【0086】
このように、第3実施形態も、上述した第2実施形態と同様の効果を奏することが可能である。すなわち、カートリッジの交換の最中に個々のカートリッジの未装着状態が表示パネル30に表示されるので、ユーザーはこの表示を見ながらカートリッジ交換を実行することが可能である。また、カートリッジの記憶装置203が非通電の状態でカートリッジの脱着と装着検出を行うことができるので、いわゆる記憶装置の活線挿抜によって生じるビット誤りの発生を防止することが可能である。さらに、過電圧検出端子250,290に過電圧が発生している場合には、直ちに装着検出用の高電圧VHVの印加を解除するので、印刷装置やカートリッジの電気回路に過電圧による損傷が生じるのを防止することが可能である。第3実施形態では、さらに、個別装着電流値検出部630aで生成されるデジタル検出信号SIDETの個々のビット値が個々のカートリッジの装着の有無を示しているので、個々のカートリッジの装着の有無をデジタル検出信号SIDETのビット値から直ちに判定することが可能である。
【0087】
F.第4実施形態:
図14は、第4実施形態における個別装着検出部630bの構成を示す図である。この個別装着検出部630bは、図13に示した第3実施形態の個別装着検出部630aに、入力切換スイッチ750を追加したものである。この入力切換スイッチ750は、複数の入力端子751〜754から入力される検出電流IDET1〜IDET4のいずれかを選択して電流−電圧変換部710に入力するためのものである。第1の入力端子751には、図5Aに示したものと同じ抵抗701〜704の並列接続を流れる検出電流IDET1が入力される。他の入力端子752〜754にも、同様に、それぞれ4個以下のカートリッジに対応する抵抗の並列接続を流れる検出電流IDET2〜IDET4がそれぞれ入力される。なお、他の回路要素710〜740は図13と同じなので、図14ではそれらの内部構成の図示が省略されている。
【0088】
このような入力切換スイッチ750を設けるようにすれば、多数のカートリッジが装着される印刷装置においても、上述と同様に、個々のカートリッジの装着検出を行うことが可能である。
【0089】
G.第5実施形態:
図15は、第5実施形態における個別装着検出部630cの構成を示す図である。この個別装着検出部630cは、図14に示した第4実施形態の個別装着検出部630bとほぼ同様の構成を有している。但し、入力切換スイッチ750の第1の入力端子751には、3つのインクカートリッジIC1〜IC3のための装着検出用抵抗701〜703の並列接続を流れる検出電流IDET1が入力される。他の入力端子752〜754にも、同様に、それぞれ3個のカートリッジに対応する装着検出用抵抗701〜703の並列接続を流れる検出電流IDET2〜IDET4がそれぞれ入力される。すなわち、第5実施形態の回路では、4つの入力端子751〜754のそれぞれに最大3個のインクカートリッジ用の装着検出用抵抗701〜703を並列に接続することができ、最大12個のインクカートリッジの装着状態を個別に判定することが可能である。
【0090】
図15において、各カートリッジ内の抵抗素子204の抵抗値は62kΩに設定されている。また、印刷装置側の抵抗素子631〜633の抵抗値は、20kΩ、100kΩ、270kΩに設定されている。従って、3つのカートリッジIC1〜IC3のための装着検出用抵抗701〜703の抵抗値は、82kΩ、162kΩ、332kΩとなる。これらの装着検出用抵抗701〜703の抵抗値(82kΩ、162kΩ、332kΩ)は、R=41kΩとしたときの2R,4R,8Rにほぼ近い値となる。すなわち、これらの装着検出用抵抗701〜703の抵抗値は、図5Aや、図10、図14に示した装着検出用抵抗701〜703の抵抗値2R,4R,8Rとほぼ同じである。厳密に言えば、R=41kΩとしたとき、82kΩ=2R、162kΩ=4R×(1−0.012)、332kΩ=8R×(1+0.012)となる。しかし、この程度の設計値の差(±1.2%)は、抵抗値の製造誤差や温度依存性を考慮しても、カートリッジの個別検出を行う上で十分に許容できる程度である。
【0091】
図15において、装着検出用抵抗701〜703を構成する抵抗素子204,631〜633の抵抗値は以下の条件を考慮して設定されている。
(1)各抵抗素子の抵抗値は、20kΩ以上とする。
こうすれば、装着検出回路で利用される最も高い電圧VHVが20kΩの抵抗素子に印加されたと仮定しても、以下の計算の通り、その抵抗素子に流れる電流を約2.1mA以下に制限することができる。
(44.1V−2.4V)/20kΩ=2.085mA<2.1mA
ここでは、44.1Vは、電圧VHVの定格値を42Vとしその許容範囲を±5%としたときの電圧VHVの最大値(絶対最大電圧=42V+5%)である。また、2.4Vは、電流―電圧変換部710で使用される参照電圧Vrefの値である。なお、(44.1V−2.4V)=41.7Vは、抵抗素子の両端に印加される電圧の最大値に相当する。このように、各抵抗素子の抵抗値は、20kΩ以上とすれば、電流を約2.1mA以下に制限することができるので、装着検出回路を実現するASICを保護することが可能である。
(2)インクカートリッジに搭載する抵抗素子204の抵抗値を、装着検出回路内の抵抗素子631〜633のうちの最も小さな抵抗値よりも大きくする。
こうすれば、万が一、インクカートリッジに搭載された抵抗素子204が何らかの原因で短絡していた場合にも、その異常を検出し易くなる。なお、抵抗素子204は、典型的には基板200(図3(A))の裏面側に外付けされる。外付けされる抵抗素子204の端子間距離は約1mmと小さいので、基板200の製造時などに何らかの原因で抵抗素子204の端子間が短絡してしまう可能性があるが、この場合にも異常を容易に検出することが可能となる。
(3)検出電流IDETの最小値は100μA以上とする。
こうすれば、外乱(ノイズ)の影響がある場合にも、検出電流DETからカートリッジの装着状態を正しく判別することが容易となる。なお、図15の回路構成では、3つのカートリッジIC1〜IC3がすべて装着され、かつ、抵抗値の製造誤差が±1%あり、抵抗値の温度依存性による誤差が0.7%あると仮定した場合にも、検出電流IDETの最小値は約117μAとなるので、この条件を十分に満足することができる。
なお、これらの条件(1)〜(3)は好ましい条件ではあるが、必ずしもこれらを満足する必要は無く、他の条件を設定することも可能である。
【0092】
なお、図15において、個別装着検出部630cの抵抗R11,R21,R22の抵抗値は、2kΩ、25kΩ、500kΩに設定されている。これらの抵抗値は、図13において説明したように、抵抗比R21/R22と抵抗比R11/Rc1(Rc1は全カートリッジ装着時の合成抵抗値)の値をほぼ等しくするように設定されている。従って、図15の回路においても、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)を、電源電圧VHVの変動に対してほぼ同じ変化幅で変化するように正確に追従させることが可能である。
【0093】
なお、図14に示した第4実施形態や図15に示した第5実施形態では、印刷装置のホルダー4内に装着される複数のカートリッジのうちの一部の複数のカートリッジによって一組のカートリッジセットが構成されており、そのカートリッジセットの装着状態が装着検出回路によって検出される。例えば、図14の回路では、4つのカートリッジIC1〜IC4で1組のカートリッジセットが構成されている。また、ホルダー4としては、最大で16個のカートリッジを装着可能なものを使用可能である。また、図15の回路では、3つのカートリッジIC1〜IC3で1組のカートリッジセットが構成されている。また、ホルダー4としては、最大で12個のカートリッジを装着可能なものを使用可能である。これらの記載から理解できるように、装着検出回路としては、N個(Nは2以上の整数)のカートリッジで構成されるカートリッジセットのそれぞれについて、その2n個の異なる装着状態を検出できる回路構成を有するものが好ましい。また、「カートリッジセット」という用語は、印刷装置のホルダーに装着されるすべてのカートリッジで構成されるセットに限らず、その一部の複数のカートリッジのみで構成されるセットも含む用語である。
【0094】
H.他の実施形態:
図16は、他の実施形態における基板の構成を示す図である。これらの基板200a〜200cは、図3(A)に示した基板200と端子210〜290の表面形状が異なるだけである。但し、これらの基板200a〜200cにおいても、各端子210〜290に対応する装置側端子との接触部cpの配置は、図3(A)の基板200と同じである。このように、個々の端子の表面形状としては、接触部cpの配置が同一である限り、種々の変形が可能である。
【0095】
図17及び図18は、他の実施形態におけるインクカートリッジの構成を示す斜視図である。このインクカートリッジは、インク収容部100Bと、アダプター100Aとに分離されている。
【0096】
インク収容部100Bは、インクを収容する筐体101Bと、インク供給口110と、を含んでいる。筐体101Bの内部には、インクを収容するインク室120Bが形成されている。インク供給口110は、筐体101Bの底壁に形成されている。インク供給口110は、インク室120Bに連通している。
【0097】
アダプター100Aは、本体101Aと、基板200とを備えている。本体101Aの内部には、インク収容部100Bを受け入れる空間101ASが形成されている。本体101Aの上部には、空間101ASへ通じる開口が設けられている。インク収容部100Bが空間101ASの中に収められた状態では、インク供給口110が、開口101AHを通じて、アダプター100Aの外へ突出する。なお、アダプター100Aの側壁の一部は省略することが可能である。
【0098】
このように、インクカートリッジは、インク収容部100B(「印刷材収容体」とも呼ぶ)と、アダプター100Aとに分離することも可能である。この場合には、回路基板200は、アダプター100A側に設けられることが好ましい。
【0099】
I.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0100】
・変形例1:
上記各実施形態では、インクカートリッジには、記憶装置203と抵抗素子204とが搭載されているが、インクカートリッジに搭載される複数の電気デバイスは、これらに限られず、1つ以上の任意の種類の電気デバイスをインクカートリッジに搭載するようにしてもよい。例えば、インク量検出のためのセンサーとして、光学的なセンサーの代わりに、電気デバイス(例えば圧電素子や、抵抗素子)をインクカートリッジに設けても良い。また、上記実施形態では、記憶装置203と抵抗素子204の両方が基板200に設けられているが、カートリッジの電気デバイスは、他の任意の部材上に配置することが可能である。例えば、記憶装置203は、カートリッジの筐体や、アダプター、あるいは、カートリッジとは別体の他の構造体上に配置されても良い。
【0101】
・変形例2:
上記各実施形態では、n番目のカートリッジ内の抵抗素子204と、カートリッジ検出回路502内の対応する抵抗素子63n(n=1〜4)とで4つの装着検出用抵抗701〜704が形成されているが、これらの装着検出用抵抗の抵抗値は、1つの抵抗素子のみで実現してもよく、また、3つ以上の抵抗素子で実現してもよい。例えば、2つの抵抗素子204,631で構成される装着検出用抵抗701を、単一の抵抗素子で置き換えるようにしてもよい。他の装着検出用抵抗も同様である。複数の抵抗素子で1つの装着検出用抵抗を構成する場合には、それらの抵抗素子の抵抗値の配分は任意に変更可能である。また、これらの単一の抵抗素子又は複数の抵抗素子は、カートリッジと印刷装置本体の一方のみに設けてもよい。例えば装着検出用抵抗をすべてカートリッジ上に設けるようにすれば、印刷装置本体には装着検出用抵抗を構成する抵抗素子は不要となる。
【0102】
・変形例3:
上記各実施形態で記載されている各種の構成要素のうち、特定の目的・作用・効果に関係の無い構成要素は省略可能である。例えば、カートリッジ内の記憶装置203は、カートリッジの個別装着検出に使用されていないので、カートリッジの個別装着検出を主な目的とする場合には省略可能である。
【0103】
・変形例4:
上記各実施形態では、インクカートリッジに本発明を適用しているが、インクカートリッジに限らず、他の印刷材、例えば、トナーが収容された印刷材収容体についても同様に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0104】
2…キャリッジモータ
3…キャリッジ
4…ホルダー
5…印刷ヘッド
6…インク供給針
10…紙送りローラ
11…カバー
30…表示パネル
37…フレキシブルケーブル
40…主制御回路
100…インクカートリッジ(印刷材カートリッジ)
100A…アダプター
100B…インク収容部
101…筐体
101A…本体
101AH…開口
101AS…空間
101B…筐体
102…蓋体
110…インク供給口
120,120B…インク室
200…基板(回路基板)
201…ボス溝
202…ボス穴
203…記憶装置
204…抵抗素子
206…定電圧源
210,240…過電圧検出端子
220…リセット端子
230…クロック端子
250,290…装着検出端子
260…電源端子
270…接地端子
280…データ端子
300…接点機構
301、302…スリット
303、304…接点形成部材
410…CPU
420…メモリー
430…非装着状態検出部
500…キャリッジ回路
501…メモリー制御回路
502…カートリッジ検出回路
510〜590…装置側端子
600…装着検出回路
610…検出電圧制御部
612…トランジスタ
620…過電圧検出部(短絡検出部)
630…個別装着検出部
631〜634…抵抗素子
642〜645…ダイオード
650…検知パルス発生部
651…配線
652,654…抵抗
660…判定部
701〜704…直列接続抵抗
710…電流−電圧変換部
712…オペアンプ
720…電圧比較部
722…しきい値電圧生成部
723…切換スイッチ
724…コンパレーター(オペアンプ)
726…切換制御部
730…比較結果記憶部
732…切換スイッチ
734…ビットレジスター
740…電圧補正部
742…オペアンプ
750…入力切換スイッチ
751〜754…入力端子
1000…印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着検出用電源と、N個(Nは2以上の整数)の印刷材カートリッジで構成されるカートリッジセットが印刷装置のホルダーに装着されたときに流れる検出電流を検出する装着電流値検出部とを含み、前記検出電流に応じて前記ホルダーにおける印刷材カートリッジの装着状態を検出する装着検出回路を備える印刷装置の前記ホルダー内に装着される印刷材カートリッジであって、
前記印刷材カートリッジは、収容されている印刷材に関する情報を記憶するための記憶装置と、装着検出用の電気デバイスと、前記記憶装置用の端子と前記電気デバイス用の端子とを含む複数の端子と、を有しており、
前記電気デバイスは、
(i)前記装着検出用電源と前記装着電流値検出部の間において、前記カートリッジセットを構成する他の印刷材カートリッジの前記電気デバイスと互いに並列に接続され、
(ii)前記ホルダー内に前記N個の印刷材カートリッジが装着されたときに、前記装着電流値検出部で検出される検出電流が予め設定されたしきい値電流以上となるように構成されている、印刷材カートリッジ。
【請求項2】
請求項1記載の印刷材カートリッジであって、
前記電気デバイスは、前記検出電流が前記N個の印刷材カートリッジに関する2N種類の装着状態を一意に識別可能な電流値を取るように構成されている、印刷材カートリッジ。
【請求項3】
請求項2記載の印刷材カートリッジであって、
前記電気デバイスは抵抗素子であり、
前記抵抗素子は、前記装着検出用電源と前記装着電流値検出部の間に並列に接続される装着検出用抵抗を、単独で又は前記装着検出回路内に設けられた他の抵抗素子との直列接続で形成し、
前記N個の印刷材カートリッジのうちのn番目(n=1〜N)の印刷材カートリッジのための前記装着検出用抵抗は、Rを一定値とし、許容誤差εを1/{4(2N-1-1)}としたときに、2nR(1±ε)の範囲内の抵抗値を有するように構成される、印刷材カートリッジ。
【請求項4】
N個(Nは2以上の整数)の印刷材カートリッジで構成され、同一の印刷装置のホルダー内に装着されるカートリッジセットであって、
前記カートリッジセットを構成する個々の印刷材カートリッジは、請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷材カートリッジであり、かつ、前記複数の端子の印刷装置側端子との接触部が前記N個の印刷材カートリッジに共通する同一の配列を有している、カートリッジセット。
【請求項5】
請求項4記載のカートリッジセットであって、
前記個々の印刷材カートリッジの前記抵抗素子は、同一の抵抗値を有する、カートリッジセット。
【請求項6】
請求項5に記載のカートリッジセットであって、
前記個々の印刷材カートリッジの前記抵抗素子の両端に印加される電圧は42V以下であり、前記個々の印刷材カートリッジの前記抵抗素子の抵抗値は20kΩ以上である、カートリッジセット。
【請求項7】
印刷装置であって、
互いに独立して装着可能な異なるN個(Nは2以上の整数)の印刷材カートリッジで構成されるカートリッジセットが装着されるホルダーと、
装着検出用電源と、前記ホルダー内に1つ以上の印刷材カートリッジが装着されたときに流れる検出電流を検出する装着電流値検出部とを含み、前記検出電流に応じて前記N個の印刷材カートリッジの装着状態を検出する装着検出回路と、
を備え、
前記N個の印刷材カートリッジのそれぞれは、収容されている印刷材に関する情報を記憶するための記憶装置と、装着検出用の電気デバイスと、前記記憶装置用の端子と前記電気デバイス用の端子とを含む複数の端子と、を有しており、
前記N個の印刷材カートリッジの前記電気デバイスは、
(i)前記装着検出用電源と前記装着電流値検出部の間に互いに並列に接続され、
(ii)前記ホルダー内に前記N個の印刷材カートリッジが装着されたときに、前記装着電流値検出部で検出される検出電流が予め設定されたしきい値電流以上となるように構成されている、印刷装置。
【請求項8】
請求項7記載の印刷装置であって、
前記N個の印刷材カートリッジの前記電気デバイスは、前記検出電流が前記N個の印刷材カートリッジに関する2N種類の装着状態を一意に識別可能な電流値を取るように構成されており、
前記装着検出回路は、前記検出電流に基づいて、前記ホルダーにおける印刷材カートリッジの装着状態を判定する、印刷装置。
【請求項9】
請求項8記載の印刷装置であって、
前記N個の印刷材カートリッジのうちのn番目(n=1〜N)の印刷材カートリッジの前記電気デバイスは抵抗素子であり、
前記n番目の印刷材カートリッジの前記抵抗素子は、前記装着検出用電源と前記装着電流値検出部の間に並列に接続される装着検出用抵抗を、単独で又は前記装着検出回路内に設けられた他の抵抗素子との直列接続で形成し、
前記n番目の印刷材カートリッジのための前記装着検出用抵抗は、Rを一定値とし、許容誤差εを1/{4(2N-1-1)}としたときに、2nR(1±ε)の範囲内の抵抗値を有するように構成される、印刷装置。
【請求項10】
請求項9記載の印刷装置であって、
前記n番目の印刷材カートリッジの前記抵抗素子は、R(1±ε)の範囲内の抵抗値を有し、
前記装着検出回路は、前記n番目のカートリッジの前記抵抗素子と直列接続される他の抵抗素子として、(2n−1)R(1±ε)の範囲内の抵抗値を有する抵抗素子を有する、印刷装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の印刷装置であって、
前記装着電流値検出部は、
前記検出電流を電圧に変換することによって検出電圧を生成する電流−電圧変換部と、
前記装着検出電圧を複数のしきい値電圧と順次比較してデジタル検出信号に変換するA−D変換部と、
前記複数のしきい値電圧を、前記装着検出用電源の電圧の変動に追従して補正する電圧補正部と、
を備え、
前記装着検出回路は、前記デジタル検出信号に基づいて、前記ホルダーにおける印刷材カートリッジの装着状態を判定する、印刷装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記N個の印刷材カートリッジの前記電気デバイス用の端子には、前記記憶装置用の端子に印加される電圧よりも高い電圧が前記装着検出用電源から供給され、
前記N個の印刷材カートリッジは、さらに、前記電気デバイス用の端子の近傍に設けられた過電圧検出用の端子をそれぞれ有しており、
前記装着検出回路は、前記過電圧検出用の端子を介して過電圧が検出された場合に前記装着検出用電源から前記電気デバイスへの電圧の供給を停止する、印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−71578(P2012−71578A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151692(P2011−151692)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】