説明

印刷機用ロール及びその製造方法

【課題】塗布された印刷液の膜厚を従来よりも均一化できる印刷機用ロールを得る。
【解決手段】印刷機用ロール1は、円柱状の基材1aと、基材1aの表面を被覆しているアモルファス状膜1bとを有しているものである。基材1aは、鉄鋼材料、アルミニウム合金、銅合金、または繊維強化樹脂などからなる円柱状部材である。基材1aの表面は算術平均粗さRaが0.5μm以下、最大粗さRzが5μm以下となるように調整されている。アモルファス状膜1bは、炭素と水素とを主成分とする皮膜であって、水との接触角が70°〜85°且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°、又は、水との接触角が10°〜25°且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°となるように、基材1a上に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機用ロール及びその製造方法に関する。特に、表面に硬質な膜が形成されている印刷機用ロール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷機用ロールは公知となっており、例えば、下記特許文献1に記載のものが挙げられる。この特許文献1には、プラズマCVD法、またはプラズマジェット溶射法で、金属ロール上にニッケル層その上に酸化クロム層を積層させて成膜し、酸化クロム層に発生した隙間にシリカを充填させたことを特徴とするアニロックスロールの表面構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−181861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に代表されるアニロックスロールを用いた印刷機においては、ドクターロール又はドクターブレードなどを接触させてアニロックスロール上に塗布された印刷液の膜厚を均一化することとしている。しかしながら、このような印刷機においては、アニロックスロール上に塗布された印刷液の膜厚をより均一化したいとの要望がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、塗布された印刷液の膜厚を従来よりも均一化できる印刷機用ロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の印刷機用ロールは、基材表面の上に、直接又は下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜が被覆されており、前記アモルファス状膜が、下記(a)又は下記(b)の条件を満たすものである。なお、接触角はJIS R 3257に示される方法で測定されたものである。(a)水との接触角が70°〜85°、且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°。(b)水との接触角が10°〜25°、且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°。
【0007】
(2) 別の観点として、本発明の印刷機用ロールは、基材表面の上に、直接又は下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜が被覆されており、前記アモルファス状膜が、下記(c)又は下記(d)の条件を満たすものであってもよい。なお、ぬれ張力はJIS K 6768(1999)に示される方法で測定されたものである。(c)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、30mN/m〜40mN/m。(d)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、60mN/m〜70mN/m。
【0008】
上記(1)又は(2)の構成によれば、印刷液が塗布された際、濡れによるレベリング効果で、該印刷液が表面に一様に濡れ広がる印刷機用ロールを提供できる。なお、油性の印刷液を使用する際は、濡れによるレベリング効果を得るために、前記アモルファス状膜と水との接触角が70°〜85°、且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°とするか、JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、30mN/m〜40mN/mとするのが好適である。また、水性の印刷液を使用する際には、前記アモルファス状膜と水との接触角が10°〜25°、且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°とするか、JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、60mN/m〜70mN/mとするのが好適である。このような構成の印刷機用ロールを印刷に用いれば、塗布された印刷液を該印刷機用ロール上に十分に濡れ広がらせることができるので、該印刷機用ロール表面に塗布された印刷液の膜には付着ムラによって生じる穴やインクの塊が生じず、該印刷液の膜厚を従来よりも均一化できる。
【0009】
(3) 上記(1)又は(2)の印刷機用ロールにおいては、前記アモルファス状膜に含まれる炭素原子の割合が60原子%〜75原子%、水素原子の割合が15原子%〜25原子%の範囲であり、前記アモルファス状膜に、ケイ素、フッ素、窒素、及び酸素のうちいずれか1つ以上がさらに添加されているものであることが好ましい。これにより、前記アモルファス状膜と水との接触角、及び、前記アモルファス状膜とヨウ化メチレンとの接触角を所望する範囲に容易に調整することができる。
【0010】
(4) 上記(1)〜(3)の印刷機用ロールにおいては、前記下塗り膜が、硬質クロムめっき膜、クロム蒸着膜、ニッケル、クロム、モリブデン、コバルト、タングステン、鉄、ケイ素、及びチタンのうちいずれか1つ以上を含んでなる合金溶射皮膜、炭化物サーメット溶射皮膜、酸化アルミニウム溶射皮膜、酸化ジルコニウム溶射皮膜、並びに酸化クロム溶射皮膜のうちいずれか1つ以上積層された膜であることが好ましい。これにより、前記基材と前記アモルファス状膜との密着性を増加させることができ、より破壊されたり剥離したりしにくいアモルファス状膜を有した印刷機用ロールを提供できる。また、本発明に係る印刷機用ロールの基材が鋳物金属で構成されている場合は、該印刷機用ロール表面に鋳造時の欠陥が見られることがある。このような欠陥があると、アモルファス状膜の施工をもってしてもロール表面を平滑に仕上げることが難しいため、前記下塗り膜があることが望ましい。
【0011】
(5) 上記(1)〜(4)の印刷機用ロールにおいては、前記アモルファス状膜の表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下、且つ、最大粗さRzが5μm以下であることが好ましい。
【0012】
上記(5)の構成によれば、摩擦係数の低いアモルファス状膜が表面に形成されているので、印刷機用ロール自体の摩耗を従来よりも低減できるだけでなく、印刷機用ロール上に塗布された印刷液の膜厚を均一化するために接触させるドクターロール又はドクターブレードなどについても、従来よりも摩耗を低減できる。
【0013】
(6) 上記(1)〜(5)の印刷機用ロールにおいては、前記基材の表面に幾何学的な微細構造が形成されていてもよい。これにより、該印刷機用ロール表面の印刷液の保持量を変化させることができる。特に、該印刷機用ロールにあらかじめ形成された微細構造は、前記アモルファス状膜自体にも再現され、前記印刷液との濡れ性良好な、微細構造を有したロール表面が形成される。したがって、微細構造を有したアモルファス状膜を有する本発明の印刷機用ロールを印刷に用いれば、印刷液の塗布量をコントロールし、さらに印刷液の膜厚を均一化することができる。
【0014】
(7) 上記(6)の印刷機用ロールにおいては、前記アモルファス状膜が、前記微細構造の表面形状に沿って均一な膜厚となるように形成されていることが好ましい。このように、前記微細構造の表面形状と同様の形状を前記アモルファス状膜に再現することにより、上記(6)の濡れ性の効果を確実に奏することができる。
【0015】
なお、印刷液には多くの種類があり、その中には腐食作用を持つものがある。このような印刷液を使用する際には、印刷機用ロールに発生した腐食が、該印刷機用ロール表面の形態を変化させ、該印刷機用ロールの使用時に印刷液の付着むらを生じさせることがある。しかしながら、上記(1)〜(7)の印刷機用ロールにおけるアモルファス状膜は、良好な耐食性と基材保護性とを有しているので、腐食による該印刷機用ロールの表面形態の変化と、該腐食が引き起こす印刷むらとを低減させることができる。
【0016】
(8) 本発明の印刷機用ロールの製造方法は、基材表面の上に、直接又は下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜を被覆する被覆工程を有しており、前記被覆工程においてPBIID(Plasma-Based Ion Implantation and Deposition)法を用いて、下記(e)又は(f)の条件を満たすものとなるように、前記アモルファス状膜を形成するものである。(e)水との接触角が70°〜85°、且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°。(f)水との接触角が10°〜25°、且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°。
これにより、例えば、上記(1)の印刷機用ロールを製造することができる。
【0017】
(9)別の観点として、本発明の印刷機用ロールの製造方法は、基材表面の上に、直接又は下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜を被覆する被覆工程を有しており、前記被覆工程においてPBIID法を用いて、下記(g)又は(h)の条件を満たすものとなるように、前記アモルファス状膜を形成するものであってもよい。(g)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、30mN/m〜40mN/m。(h)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、60mN/m〜70mN/m。
これにより、例えば、上記(2)の印刷機用ロールを製造することができる。
【0018】
(10) 上記(8)又は(9)の印刷機用ロールの製造方法の前記被覆工程においては、PBIID法を用いて、前記アモルファス状膜の表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下、且つ、最大粗さRzが5μm以下となるように、前記アモルファス状膜を形成することが好ましい。これにより、例えば、上記(5)の印刷機用ロールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷機用ロールを用いた印刷機の主要部を示す側断面図である。
【図2】図1の印刷機用ロールの概略断面図である。
【図3】図2の印刷機用ロールの製造工程において使用する装置の概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る印刷機用ロールの概略断面図である。
【図5】本発明の変形例に係る印刷機用ロールの一部拡大概略断面図である。
【図6】本発明の接触角の範囲と実施例1における各例の接触角との関係を示した模式図である。
【図7】本発明のぬれ張力の範囲及び実施例1における各例のぬれ張力を示した模式図である。
【図8】実施例3における摩擦係数の測定試験の結果を示すグラフである。
【図9】SUS304基材の表面の微細構造上に、本発明のアモルファス状膜を施工したものの断面を示す実施例4に係る図面代用写真である。
【図10】SUS304基材の表面の微細構造上に、本発明のアモルファス状膜を施工したものの外観を示す、実施例5に係る図面代用写真である。
【図11】図10の一部を拡大した図面代用写真であって、該写真下部に、紙面と垂直方向の断面プロファイルを示したものである。
【図12】実施例5に係る印刷機用ロール表面の断面プロファイルを示す図面代用写真である。
【図13】実施例6に係るアモルファス状膜の耐食性を調査するため、試験液への半浸漬試験の様子を示す図面代用写真である。
【図14】実施例6の試験結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る印刷機用ロールについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る印刷機用ロールを用いた印刷機の主要部を示す側断面図である。図2は、図1の印刷機用ロールの概略断面図である。
【0021】
印刷機10は、印刷機用ロール1と、ドクターロール2と、ディスペンサー3と、版胴4と、版5と、定盤6とを備えている。
【0022】
印刷機用ロール1は、図2の断面図に示すように、円柱状の基材1aと、基材1aの表面を被覆しているアモルファス状膜1bとを有しているものである。
【0023】
基材1aは、鉄鋼材料、アルミニウム合金、銅合金、または繊維強化樹脂などからなる円柱状部材である。基材1aの表面は算術平均粗さRaが0.5μm以下、最大粗さRzが5μm以下となるように調整されている。
【0024】
アモルファス状膜1bは、炭素と水素とを主成分とする皮膜であって、水との接触角が70°〜85°且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°、又は、水との接触角が10°〜25°且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°となるように、基材1a上に形成されている。ここで、一変形例として、アモルファス状膜1bは、炭素と水素とを主成分とする皮膜であって、JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、30mN/m〜40mN/m、又は、JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、60mN/m〜70mN/mとなるように、基材1a上に形成されていてもよい。なお、アモルファス状膜1bにおいては、炭素原子の割合が60原子%〜75原子%、水素原子の割合が15原子%〜25原子%の範囲で組成されているものであるとともに、アモルファス状膜1bに対する該炭素原子及び該水素原子の組成割合が100原子%以下となるように調整されている。なお、アモルファス状膜1bには、ケイ素、フッ素、窒素、及び酸素のうちいずれか1つ以上がさらに添加されていてもよい。これにより、アモルファス状膜1bと水との接触角、及び、アモルファス状膜1bとヨウ化メチレンとの接触角を所望する範囲に容易に調整することができる。また、アモルファス状膜1bにおいては、表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下、最大粗さRzが5μm以下となるように調整されている。
【0025】
ここで、上記アモルファス状膜1bの製造方法について説明する。アモルファス状膜1bは、いわゆるPBIID法を用いて形成されるが、具体的には、図3に示した装置によって形成される。図3に示した装置は、接地された反応容器11と、この反応容器11内部空間にバルブ16a、バルブ16bのそれぞれを介して接続されている成膜用の有機系ガス導入装置(図示せず)及び反応容器を真空引きする真空装置(図示せず)と、反応容器11内の所定の位置に配設される印刷機用ロール1の基材1aに接続する導体12に高電圧導入部18を介して高電圧パルスを印加するための高電圧パルス発生電源13と、高電圧導入部18を介して導体12に高周波を印加し、印刷機用ロール1の基材1a周囲にプラズマを発生させるプラズマ発生用電源14と、パルスおよび高周波の印加を一つの導体12で共用するために、高電圧パルス発生電源13及びプラズマ発生用電源14との間に設けられるとともに、高電圧導入部18と電気的に接続されている重乗装置15と、反応容器11及び地表と電気的に接続されているアース線17とを備えている。
【0026】
上述の構成の装置を用いてアモルファス状膜1bを基材1a表面に形成するには、被処理体としての基材1aを所定の位置に設置し、真空装置を稼動させ、バルブ16bを介して反応容器11中の空気を排出させたあと、ガス導入装置によってバルブ16aを介して有機系の炭化水素ガスを反応容器11内に導入する。
【0027】
(1)常温(18℃)で気相状態
CH、CHCH、C、CHCHCH、CHCHCHCH
(2)常温で液相状態
CH、CCHCH、C(CH、CH(CHCH、C12、CCl
(3)有機Si化合物(液相)
(CO)Si、(CHO)Si、(CHSi、[(CH)Si]
常温で気相状態のものは、そのままの状態で反応容器11に導入できるが、液相状態の化合物はこれを加熱してガス化させ、この蒸気を反応容器11中へ供給する。有機Si化合物を用いてアモルファス状膜を形成すると、この膜中にSiが混入することがあるが、Siは炭素と強く結合しているので本実施形態において使用するための妨げとはならない。
【0028】
上述のように炭化水素ガスを反応容器11に導入後、プラズマ発生用電源14からの高周波電力を基材1aに印加する。反応容器11は、アース線17によって電気的に中性状態にあるため、基材1aは、相対的に負の電位を有することとなる。このため印加によって発生する、導入ガスのプラズマ中の+イオンは負に帯電した基材1aの形状に沿って発生する特徴がある。さらに高電圧パルス発生源13からの高電圧パルス(負の高電圧パルス)を基材1aに印加しプラズマ中の+イオンを基材1aの表面に衝撃的に誘引させることができる。この操作によって基材1aの表面に均等な厚さのアモルファス状膜1bを形成することができる。このプラズマ中では下記(1)〜(4)に示すような現象が発生し、最終的には炭素と水素を主成分とするアモルファス状膜1bが基材1a表面に形成されるものと考えられる。
【0029】
(1)導入されたガス(炭化水素)のイオン化(ラジカルと呼ばれる活性な中性粒子も存在する)。
(2)ガスから変化したイオンおよびラジカルは、負の電圧が印加された基材に衝撃的に衝突する。
(3)衝突時の衝撃によって結合エネルギーの小さいC−H間が切断され、CとHとがスパッタ現象を伴いながら、重合反応をはじめ、高分子化する。
(4)基材1a表面にCとHとを含んだアモルファス状膜1bが形成される。
【0030】
なお、(a)水との接触角が70°〜85°且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°、(b)水との接触角が10°〜25°且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°、(c)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、30mN/m〜40mN/m、又は(d)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、60mN/m〜70mN/mのいずれか1つのアモルファス状膜1bを基材1a上に形成するには、パルス幅を5μSec〜150μSec、パルス数を500回〜5000回としたパルスの繰り返しを行う。また、プラズマ発生用電源14の高周波電力の出力周波数を13.5MkHz〜2.45GHzの範囲で変化させる。この条件によって、表面粗さがRa 0.5μm以下、Rz 5μm以下のアモルファス状膜を形成することができる。
【0031】
ドクターロール2は、ゴム、プラスチック等の弾性物質からなり、印刷機用ロール1の軸方向と平行に並列されているとともに、印刷機用ロール1の表面に摺接されるものである。また、ドクターロール2は、印刷機用ロール1と逆方向に回転するものである。
【0032】
ディスペンサー3は、必要に応じて、印刷機用ロール1とドクターロール2との間に、印刷液を滴下することができるものである。
【0033】
版胴4は、曲面に沿って版5が取り付けられている円柱状部材であって、印刷機用ロール1の軸方向と平行に並列されている。版5は、定盤6上に載置された基板、紙、フィルムなどの被印刷物7へ転写される凹凸模様が表面に形成されているものである。定盤6は、版5と接触するように、版胴4上の版5の回転の周速度に合わせて水平に移動することができるものである。
【0034】
次に、印刷機10の動作について説明する。まず、図1に示しているように、ディスペンサー3から、互いに逆回転している印刷機用ロール1とドクターロール2との間に印刷液を滴下する。印刷機用ロール1とドクターロール2とは接触しているので、滴下された印刷液は印刷機用ロール1とドクターロール2との間で薄く延ばされ、印刷機用ロール1及びドクターロール2の表面に塗布される。このとき、印刷機用ロール1表面のアモルファス状膜1bによって、印刷機用ロール1と印刷液との濡れ性が良好となっている。その結果として、印刷機用ロール1表面に印刷液が均一に付着する。
【0035】
なお、印刷機用ロール1においては、回転する版胴4上の版5とも接触しているので、印刷機用ロール1の表面に均一に塗布された印刷液は、版5表面にも均一に塗布されることになる。その後、さらに版胴4が回転することによって、版5の回転の周速度と同じ速度で版5と接触しつつ水平移動する定盤6上の被印刷物7の表面に、版5の凹凸に応じた模様を伴った印刷液が、均一な膜厚で転写される。
【0036】
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。すなわち、アモルファス状膜1bと印刷液との濡れ性を良好にでき、塗布された印刷液の膜厚を従来よりも均一化できる印刷機用ロール1を提供できる。その結果として、印刷機用ロール1を印刷機に用いた場合、上述したように、版5に印刷液を均一に塗布できるので、被印刷物7の表面に均一な膜厚で印刷液を転写することができる。
【0037】
また、アモルファス状膜1bにおいては、表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下、十点平均粗さRzが5μm以下となるように調整されているので、摩擦係数の低い表面を有した印刷機用ロール1を提供できる。したがって、印刷機用ロール1自体の摩耗を従来よりも低減できるだけでなく、印刷機用ロール1上に塗布された印刷液の膜厚を均一化するために接触させるドクターロール又はドクターブレードなどについても、従来よりも摩耗を低減できる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る印刷機用ロールについて説明する。なお、第1実施形態の符合1a,1bの部位と、本実施形態の符合21a,21bの部位とは順に対応しており、その説明を省略することがある。
【0039】
本実施形態の印刷機用ロール21は、基材21a表面の上に、下塗り膜21cを介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜21bが被覆されている点(図4参照)で、第1実施形態に係る印刷機用ロール1と異なっている。
【0040】
下塗り膜21cは、硬質クロムめっき、クロム蒸着膜、ニッケル、クロム、モリブデン、コバルト、タングステン、鉄、ケイ素、及びチタンのうちいずれか1つ以上を含んでなる合金溶射皮膜、炭化物サーメット溶射皮膜、酸化アルミニウム溶射皮膜、酸化ジルコニウム溶射皮膜、酸化クロム溶射皮膜のうちいずれか1つ以上積層された膜であって、膜厚は1μm〜200μm程度である。
【0041】
印刷機用ロール21は、以下のようにして製造される。すなわち、まず、下塗り膜21cが、基材21a表面の上に電気めっき法、PVD法及び溶射法のうち1種以上の方法を用いて形成される。そして、下塗り膜21cの表面に第1実施形態と同様にしてアモルファス状膜21bを形成する。
【0042】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。特に、基材21aとアモルファス状膜21bとの密着性を増加させることができ、より破壊されたり剥離したりしにくいアモルファス状膜21bを有した印刷機用ロール21を提供できる。
【0043】
なお、上記各実施形態における基材の表面は平坦なものであったが、該表面を幾何学的な微細構造(例えば、単なる凹凸模様、彫刻によって形成された模様など)が形成されているものに変形してもよい。このように、基材の表面に幾何学的な微細構造が形成されている場合には、印刷機用ロールに対する印刷液の保持量をコントロールすることができる。具体的に例示すると、図5に示したように、基材31aの表面に幾何学的な微細構造が形成されている場合、アモルファス状膜31bは、前記微細構造の表面形状に沿って相似形状となるように形成される。このときのアモルファス状膜31bは、50μm程度の膜厚までであれば、膜厚均一な膜となる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示しながら、本発明を具体的に説明する。
【0045】
(実施例1)
本実施例では、被印刷物への印刷液の付着均一性に対する、アモルファス皮膜の効果を調査した。
【0046】
(1)基材
硬質クロムめっきを施した、鉄鋼材料の円柱状基材(径20cm、軸方向長さ250cm)とした。
(2)アモルファス状膜の形成と厚さ
上記基材の全面に、アモルファス状膜を3μmの厚さで、表1に示した接触角及び表面粗度となるようにそれぞれ施工して本実施例に係る各印刷機用ロールを形成した。
(3)比較例の印刷機用ロール
上述の硬質Crめっきを施した、鉄鋼材料の基材を用い、表1に示した接触角及び表面粗度となるようにそれぞれ施工して、比較例に係る各印刷機用ロールを形成した。
(4)接触角測定試験方法
接触角測定試験として、具体的には、次に示すような方法を用いた。すなわち、JIS R 3257(1999)である。
(5)印刷液の付着均一性試験方法
印刷液の付着均一性試験として、具体的には、次に示すような方法を用いた。本発明にかかるアモルファス膜を適用した印刷機用ロールを組み入れた一連の印刷装置を用い、被印刷物に最終的に形成された印刷液層の均一性を目視により確認した。
(6)ぬれ張力測定試験方法
ぬれ張力測定試験として、具体的には、次に示すような方法を用いた。すなわち、JIS K6768(1999)である。
【0047】
図6に本発明の接触角の範囲と本実施例(下記表1及び表2)における各例の接触角との関係を模式的に示し、下記表1及び表2に以上の内容及び試験結果を要約したものを示す。図7は、本発明のぬれ張力の範囲及び本実施例における各例のぬれ張力を示した模式図である。表3及び表4には、本発明のぬれ張力に関する実施例及び比較例を示す。なお、本実施例における本発明(a)とは、上記第1実施形態の印刷機用ロールにおいて、アモルファス状膜と、水との接触角が70°〜85°且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°のものである。また、本発明(b)とは、上記第1実施形態の印刷機用ロールにおいて、アモルファス状膜と、水との接触角が10°〜25°且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°のものである。ここで、図6における各実施例については、上記本発明(a)、(b)の範囲(図6において太い点線で囲った部分の内側)に含まれていることを示している。また、本発明(c)とは、上記第1実施形態において、JIS K 6768(1999)による、アモルファス状膜のぬれ張力が、30mN/m〜40mN/mである。本発明(d)とは、上記第1実施形態において、JIS K 6768(1999)による、アモルファス状膜のぬれ張力が、60mN/m〜70mN/mのものである。加えて、表2及び表4におけるロールの表面形態における「幾何学的微細構造」は、後述する実施例5と同様の断面(図12に示した、触針式の形状測定装置によって得られた印刷機用ロール表面の断面プロファイル)を有したものである。すなわち、表2及び表4における印刷機用ロールは、基材上に硬質クロムめっきの下塗り膜を施し、その上にロールの軸方向に対して約45度の傾きの平行な溝を形成して、アモルファス状膜を形成したものである。また、上記溝の断面は台形型をしており、溝のピッチは1インチあたり約100本であるとともに、深さは100μmである。
【0048】
下記表1〜4の結果から明らかなように、比較例として示した上記本発明(a)〜(d)の範囲外にあるもの(表1:試験No.17〜32、表2:試験No.17〜32、表3:試験No.17〜32、表4:試験No.17〜32)は、上記本発明(a)〜(d)の範囲に含まれる実施例(表1〜4の各試験No.1〜16)に比べて、油性及び水性の印刷液の付着均一性が悪いものであった。なお、表1〜4のアモルファス状膜9、10、11(表1〜4の各試験No.17〜22)は上記本発明(a)〜(d)の範囲外のものではあるが、水性又は油性のいずれか一方について従来技術であるCrめっき(表1〜4の各試験No.31、No.32)に近い性能レベルで使用可能である。これらに対して、実施例の印刷機用ロールにおけるアモルファス状膜と油性又は水性の印刷液との濡れ性が適切である。したがって、実施例の印刷機用ロール表面に、適量の油性又は水性の印刷液が均一に付着されるとともに保持されるので、版へ適量の油性又は水性の印刷液を供給することができる。この効果により、実施例の印刷機用ロールを印刷液の性状に合わせて印刷機において用いれば、再現性よく、高品質の印刷物を得ることができる。なお、印刷機用ロール表面のぬれ性が過小な場合、印刷液は該印刷機用ロール上で均一にぬれ広がらないため、印刷物に対する印刷液の付着均一性は、実施例に比べて劣るものとなる。一方、ぬれ性が過大な印刷機用ロールの場合は、該印刷機用ロールに保持された印刷液の版への供給がうまくいかず、この場合も印刷物に対する印刷液の付着量が減少するので、実施例に比べて印刷物の品質は低下するものとなる。
【0049】
【表1】

注1:「印刷物への印刷液の付着均一性」においては、○:印刷物を10倍のルーペで観察したうえで、色むら、不印刷部が無い状態、△:目視で色むら、不印刷部がない状態、×:目視において色むら、不印刷部がある状態、とした。
【0050】
【表2】

注1:「印刷物への印刷液の付着均一性」においては、○:印刷物を10倍のルーペで観察したうえで、色むら、不印刷部が無い状態、△:目視で色むら、不印刷部がない状態、×:目視において色むら、不印刷部がある状態、とした。
【0051】
【表3】

注1:「印刷物への印刷液の付着均一性」においては、○:印刷物を10倍のルーペで観察したうえで、色むら、不印刷部が無い状態、△:目視で色むら、不印刷部がない状態、×:目視において色むら、不印刷部がある状態、とした。
【0052】
【表4】

注1:「印刷物への印刷液の付着均一性」においては、○:印刷物を10倍のルーペで観察したうえ で、色むら、不印刷部が無い状態、△:目視で色むら、不印刷部がない状態、×:目視において色むら、不印刷部がある状態、とした。
【0053】
(実施例2)
本実施例では、本発明の下塗り膜の効果を調査するため、スクラッチ試験によってアモルファス状膜の密着性を調査した。引っ掻き試験は、ISO 20502 Fine Ceramics-Determination of Adhesion of Ceramics
Coating by Scratch Testingに基づき、市販のスクラッチ試験装置にて臨界はく離荷重を求めることによって評価した。引っ掻き試験は、ダイヤモンド圧子を試料に押し当て、その荷重を漸増しながら圧子を水平に移動し、皮膜の基材からのはく離が確認された時点の荷重を臨界はく離加重として、密着力の指標とする試験方法である。基材として50mm×50mm×3tのSUS304鋼を用いた。アモルファス状膜は、下記表5に示す下塗り膜をRa:0.5μm、Ry:5μm以下に調製し、その上に膜厚3μmで施工した。また、比較対象として、Ra:0.5μmに調製したSUS304鋼の上に直接アモルファス状膜を3μm施工したものを試験に供した。下記表5は以上の内容及び試験結果を要約したものである。下塗り膜を適用せず、SUS304鋼に直接アモルファス状膜を施工した場合(表5のNo.12、No.13)、皮膜の臨界はく離荷重は15N〜17Nであった。それに対して、硬質クロムめっき、Co−Cr−Mo溶射もしくはWCサーメット溶射膜を下塗り膜として適用した場合(表5のNo.1、No.3、No.4、No.8、No.10)は、試験では30Nまで加重したが、はく離は確認できなかった。つまり、臨界はく離荷重は、30N以上ということになる。前記2種の下塗り膜ほどではないが、クロム蒸着膜、酸化アルミニウム溶射皮膜、酸化ジルコニウム溶射皮膜、酸化クロム溶射皮膜による下塗り膜の上にアモルファス状膜を形成した場合(表5のNo.2、5、6、7No.11)でも、臨界はく離荷重は20N以上に向上した。この結果から明らかなように、下塗り膜によってアモルファス状膜の密着性は、著しく向上していることが見て取れる。
【0054】
【表5】

【0055】
(実施例3)
本実施例では、本発明に係る印刷機用ロール上のアモルファス状膜の耐摩耗性を調査するため、ピンオンディスク式摩擦磨耗試験に供した。試験の相手材は炭素鋼製のボールを用い、これを試験片に0.2m/secで摩擦し、摩擦係数の変化を測定した。なお、試験片には、アモルファス状膜の基材として50mm×50mm×3tのSUS304鋼を用い、アモルファス状膜としては、下記表6に示した組成とし、膜厚3μm、Ra:0.5μm、Rz:5μmとなるように調製したものを用いた。また、比較対象として、下記表6に示した、Ra:0.5μm、Rz:5μmに調製したSUS304鋼および、硬質クロムめっきを施したSUS304鋼を摩擦係数の測定試験に供した。図8に本試験の結果を示す。アモルファス状膜は、炭素鋼での摩擦において、SUS304鋼、硬質クロムめっきに比べて極めて低く、また安定した摩擦係数を示した。比較例のSUS304鋼は炭素鋼製のボールとの摩擦により表面が激しく損耗したことから、瞬間的な摩擦係数が1を越え、摩擦磨耗試験機の安全装置が働いて試験の続行が不可能になった。このことは、本発明に係る印刷機用ロール上のアモルファス状膜が耐摩耗性に優れていることを示している。また、鉄鋼材料は印刷機用ロールに常時接触するブレード歯の材料として一般的な素材である。アモルファス状カーボン膜が示す、低い摩擦係数は、このブレードの寿命も延長せしめる効果があることを示唆している。
【0056】
【表6】

【0057】
(実施例4)
本実施例では基材の表面に幾何学的な微細構造のあった場合に、アモルファス状膜が微細な構造の相似形として成長し、膜厚が均一となっていることを示す。図9は、SUS304基材に微細構造を形成し、これに、アモルファス状膜を約30μmの厚さで施工したものの断面SEM像を示す図面代用写真である。また、下記表6に本実施例に係るアモルファス状膜の詳細を示す。図9に示すように、アモルファス状膜は基材の表面の微細構造に沿って一様に成長していることが分かる。つまり、アモルファス状膜の表面には基材上の微細構造が反映していることがわかる。
【0058】
【表7】

【0059】
(実施例5)
図10は、SUS304基材に形成した微細構造上に、下記表8に示すアモルファス状膜を3μmの厚さで形成した外観写真である。アモルファス状膜が一様に形成されていることがわかる。図11は、レーザー顕微鏡を用いて撮像した図面代用写真であって、図10中a部の拡大写真である。また、図11においては、拡大写真下部に、矩形の溝の断面(図中の点線部分における、紙面と垂直方向の断面)プロファイルを該拡大写真と併せて示す。図11に示すように、矩形の溝の内面に沿って、全面にアモルファス状膜が形成されている。観察された全面にアモルファス皮膜が形成されているが、はく離、浮き等の欠陥は認められない(はく離や、皮膜未形成部がある場合は、コントラストの著しく異なる部分が写真中に見られるが、そのような部分は確認できない。)。図12には、触針式の形状測定装置によって得られた印刷機用ロール表面の断面プロファイルを示す。当該印刷機用ロールは、基材上に硬質クロムめっきの下塗り膜を施し、その上にロールの面周方向に平行な溝を形成して、下記表8と同様のアモルファス状膜を形成したものである。溝の断面は台形型をしており、溝のピッチは1インチあたり約100本である。このような幾何学的構造にも、アモルファス状膜を付きまわりよく形成することが可能である。
【0060】
【表8】

【0061】
(実施例6)
本実施例では本発明に係る、印刷機用ロール上のアモルファス状膜を模擬して作成した試験片の耐食性評価結果を示す。
【0062】
この実施例では、本発明に係る印刷機用ロール上に形成されるものと同様のアモルファス状膜が形成された試験片の耐食性を調査するため、該試験片の試験液への半浸漬試験をおこなった。該試験の状況を図13に示す。試験液としては、20mass%塩酸、20mass%硫酸、20mass%硝酸、トルエンを用い、上記試験片を半浸漬して約25℃で100時間静置し、上記試験片および試験液の外観を確認した。なお、上記試験片には、アモルファス状膜の基材として50mm×50mm×3tのSUS304鋼を用い、アモルファス状膜としては、下記表9に示した組成とし、膜厚3μm、Ra:0.5μm、Rz:5μmとなるように調製したものを用いた。なお、該試験片の端面および裏面を樹脂テープで被覆し、アモルファス状膜のみが、試験液に接するよう試験をおこなった。表10および図14に本試験の結果を示す。図14に示した通り、該試験片のアモルファス状膜は酸およびトルエンに浸漬してもきわめて安定であり、外観に変化は見られなかった。また試験液の色調に変化が見られなかったことから、酸に対して安定なアモルファス状膜によって、基材のSUS304鋼が保護されていると考えられる。
【0063】
【表9】

【0064】
【表10】

【0065】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態又は実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
1、21、31 印刷機用ロール
1a、21a、31a 基材
1b、21b、31b アモルファス状膜
2 ドクターロール
3 ディスペンサー
4 版胴
5 版
6 定盤
7 被印刷物
10 印刷機
11 反応容器
12 導体
13 高電圧パルス発生源
14 プラズマ発生用電源
15 重乗装置
16a、16b バルブ
17 アース線
18 高電圧導入部
21c 下塗り膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面の上に、直接又は下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜が被覆されており、
前記アモルファス状膜が、下記(a)又は下記(b)の条件を満たすものであることを特徴とする印刷機用ロール。
(a)水との接触角が70°〜85°、且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°。(b)水との接触角が10°〜25°、且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°。
【請求項2】
基材表面の上に、直接又は下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜が被覆されており、
前記アモルファス状膜が、下記(c)又は下記(d)の条件を満たすものであることを特徴とする印刷機用ロール。
(c)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、30mN/m〜40mN/m。(d)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、60mN/m〜70mN/m。
【請求項3】
前記アモルファス状膜に含まれる炭素原子の割合が60原子%〜75原子%、水素原子の割合が15原子%〜25原子%の範囲であり、
前記アモルファス状膜に、ケイ素、フッ素、窒素、及び酸素のうちいずれか1つ以上がさらに添加されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷機用ロール。
【請求項4】
前記下塗り膜が、硬質クロムめっき膜、クロム蒸着膜、ニッケル、クロム、モリブデン、コバルト、タングステン、鉄、ケイ素、及びチタンのうちいずれか1つ以上を含んでなる合金溶射皮膜、炭化物サーメット溶射皮膜、酸化アルミニウム溶射皮膜、酸化ジルコニウム溶射皮膜、並びに酸化クロム溶射皮膜のうちいずれか1つ以上積層された膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷機用ロール。
【請求項5】
前記アモルファス状膜の表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下、且つ、最大粗さRzが5μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷機用ロール。
【請求項6】
前記基材の表面に幾何学的な微細構造が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷機用ロール。
【請求項7】
前記アモルファス状膜が、前記微細構造の表面形状に沿って均一な膜厚となるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の印刷機用ロール。
【請求項8】
基材表面の上に、直接又は下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜を被覆する被覆工程を有しており、
前記被覆工程においてPBIID法を用いて、下記(e)又は下記(f)の条件を満たすものとなるように、前記アモルファス状膜を形成することを特徴とする印刷機用ロールの製造方法。(e)水との接触角が70°〜85°、且つヨウ化メチレンとの接触角が30°〜45°。(f)水との接触角が10°〜25°、且つヨウ化メチレンとの接触角が50°〜55°。
【請求項9】
基材表面の上に、直接又は下塗り膜を介して、炭素と水素とを主成分とするアモルファス状膜を被覆する被覆工程を有しており、
前記被覆工程においてPBIID法を用いて、下記(g)又は下記(h)の条件を満たすものとなるように、前記アモルファス状膜を形成することを特徴とする印刷機用ロールの製造方法。(g)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、30mN/m〜40mN/m。(h)JIS K 6768(1999)による、ぬれ張力が、60mN/m〜70mN/m。
【請求項10】
前記被覆工程においてPBIID法を用いて、前記アモルファス状膜の表面の算術平均粗さRaが0.5μm以下、且つ、最大粗さRzが5μm以下となるように、前記アモルファス状膜を形成することを特徴とする請求項8又は9に記載の印刷機用ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−137543(P2010−137543A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165092(P2009−165092)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000109875)トーカロ株式会社 (127)
【Fターム(参考)】