説明

印刷流体カートリッジ

【課題】破損し難い構造によって、カートリッジ装着部から印刷流体カートリッジが取り出されるときの印刷流体の垂れを防止することができる印刷流体カートリッジを提供する。
【解決手段】インクカートリッジ30は、インクを収納する本体31と、本体31の支持面47と直交し、係合部材145と係合する係止面46と、前後方向53に沿って延出されて、先端部81及び後端部82を有しており、左右方向51を軸方向とする軸83周りに回動して、係止面46と係合部材145との係合を解除可能な解除レバー80と、を具備する。先端部81は、支持面47から離れた第1位置と、支持面47に当接する第2位置との間を回動する。先端部82は、第1位置において、係止面46の外向きの端より支持面47側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ装着部に装着される印刷流体カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクを用いて記録用紙に画像を記録する画像記録装置が知られている。この画像記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドを備え、記録ヘッドのノズルからインク滴を記録用紙へ向けて選択的に噴出する。このインク滴が記録用紙に着弾することによって、記録用紙に所望の画像が記録される。この画像記録装置には、記録ヘッドへ供給するインクを貯蔵するインクカートリッジが設けられる。インクカートリッジは、画像記録装置に設けられた装着部に対して着脱可能である。
【0003】
インクカートリッジ内のインクが無くなると、そのインクカートリッジが画像記録装置の装着部から取り外されて、インクを貯蔵する新たなインクカートリッジが装着部に装着される。装着部において、インクカートリッジの位置決めを行ったり、インクカートリッジの装着状態を保持したりするためのロック構造が公知である。また、ロック構造によりインクカートリッジがロックされている状態において、インクカートリッジが装着部から取り外される向きにインクカートリッジを付勢する付勢部材が公知である。装着部からインクカートリッジが取り外されるときに、ロック構造によるロックが解除され、インクカートリッジは付勢部材から受ける力によって開口へ向かって移動する。これにより、ユーザが装着部からインクカートリッジを取り出すことが容易となる。
【0004】
また、インクカートリッジがスライダを介して付勢部材から受ける力により、インクカートリッジが装着部から飛び出してしまうことがあり得る。インクカートリッジが床などに落下して、インクカートリッジが破損するおそれがある。これらを防止するために、インクカートリッジの飛び出しを防止する構成が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−110577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成においては、装着機構(29)に操作レバー(30)が設けられている。この操作レバー(30)には規制用係止部(30b)が設けられており、この規制用係止部(30b)が、インクカートリッジ(22)脱着時において、インクカートリッジ(22)の凹部としての規制用被係止部(22a)に係止される。これによって、ばね(36)により脱着方向に付勢されるインクカートリッジ(22)の飛び出しが防止される。
【0007】
しかし、装着機構(29)に操作レバーを設けることとすると、その操作レバーを、ユーザが操作可能なスペースを装着機構(29)の開口周囲に確保する必要があり、装置の小型化の障害となっている。
【0008】
また、特許文献1に記載された構成は、バネの付勢によって勢いよく飛び出したインクカートリッジ(22)の移動を規制用被係止部(22a)で停止されているに過ぎない。そして、操作レバーが規制用被係止部(22a)に係止れるときには、インクカートリッジ(22)は、インク供給針から勢いよく外れた後になってしまうことがある。このインク供給針がインクカートリッジ(22)から外れるときに、インク供給針からインクが垂れ落ちるという問題が生じ得る。
【0009】
ところで、ユーザが、インクカートリッジを取り扱う際に、誤って床などに落下させることが想定される。インクカートリッジが落下した衝撃により、インクカートリッジの部品が破損すると、そのインクカートリッジが使用できなくなるおそれがある。
【0010】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、破損し難い構造によって、カートリッジ装着部から印刷流体カートリッジが取り出されるときの印刷流体の垂れを防止することができる印刷流体カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、外力に抗して印刷流体カートリッジを係合可能な係合部材を有するカートリッジ装着部に装着される印刷流体カートリッジに関する。印刷流体カートリッジは、印刷流体を収納する本体と、上記本体の外面である第1面と交差する外向きへ拡がっており、上記係合部材と係合する第2面と、上記第2面と交差する方向に沿って延出されて、上記第2面側の第1端及び当該第1端と反対側の第2端を有しており、上記第1面及び上記第2面と平行な方向を軸方向とする支軸周りに回動して、上記第2面と上記係合部材との係合を解除可能な回動部材と、を具備する。上記第1端は、上記第1面から離れた第1位置と、当該第1位置よりも上記第1面に近い第2位置との間を回動するものであって、上記第1位置において、上記第2面の上記外向きの端より上記第1面側にある。
【0012】
カートリッジ装着部に印刷流体カートリッジが装着された装着状態において、印刷流体カートリッジは外力を受けている。係合部材は、第2面と係合することによって、外力に抗して、印刷流体カートリッジを装着状態に保持する。
【0013】
印刷流体カートリッジが交換されるときには、第1端が第1位置となるようにユーザが回動部材を回動させる。回動部材の第1端が第1位置となることにより、印刷流体カートリッジと係合部材との係合が解除される。ユーザが回動部材を操作しているので、外力により移動する印刷流体カートリッジは、ユーザの手によって止められる。
【0014】
第1位置にある第1端は、本体の第2面の突出端より第1面側にある。従って、回動部材の第1端が最も本体の外側へ突出することがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザが回動部材を回動させることにより、係合部材と印刷流体カートリッジとの係合が解除されるので、外力により飛び出す印刷流体カートリッジが、印刷流体が流通する管から外れる前にユーザの手によって保持でき、カートリッジ装着部から落下することが防止できる。また、回動部材の第1端が最も本体の外側へ突出することがないので、落下によって第1端が破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るインク供給装置100を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【図2】図2は、包装材13に包装されたインクカートリッジ30の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、包装材13から取り出されたインクカートリッジ30の外観構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、インクカートリッジ30の内部構成を示す断面図である。
【図5】図5は、カートリッジ装着部110の内部構成を示す断面図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入される過程を示す断面図である。
【図7】図7(A)は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態を示す断面図であり、図7(B)は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される過程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0018】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面が外部に開放された開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から抜き出される。
【0019】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。カートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。
【0020】
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙に記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0021】
[インクカートリッジ30]
図2〜4に示されるように、インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。図2に示されるように、インクカートリッジ30は、製造後の保管や輸送の際には、包装材13に包装されている。包装材13は、例えばアルミニウム蒸着された合成樹脂フィルムのように、ガス透過性の低いシート材を袋形状に加工したものである。インクカートリッジ30の周りは、包装材13により密封されている。また、包装材13とインクカートリッジ30との間に存在する空気は減圧されている。ここで、包装材13とインクカートリッジ30との間は真空である必要はなく、大気圧より十分に低い圧力であればよい。このような減圧は、インク室36の空気層に存在する空気がインクに溶解することを抑制するために減圧された空気層の状態を保持する目的でなされる。インクカートリッジ30は、使用に際して包装材13から取り出される。
【0022】
図4に示されるように、インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留するインク室36である。インク室36は、インクカートリッジ30の外観を形成している本体31の筐体とは別の部材である内部フレームによって形成されていても、本体31の筐体によって形成されていてもよい。
【0023】
インクカートリッジ30は、図3,4に示された起立状態、つまり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して矢印50で示される方向(図5参照、以下「挿入及び取出方向50」と称する。)に沿って挿抜される。挿入及び取出方向50は水平方向に沿っている。インクカートリッジ30は、起立状態のままカートリッジ装着部110に挿抜される。この起立状態が、装着姿勢に相当する。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される向きが水平方向に沿った挿入向き56であり、取り出される向きが取出向き55である。また、起立状態における上下方向52が、重力方向(鉛直方向)に相当する。すなわち、インクカートリッジ30は、挿入及び取出方向50に沿ってカートリッジ装着部110に挿入され、また、挿入及び取出方向50に沿ってカートリッジ装着部110から抜き出される。なお、本実施形態では、挿入及び取出方向50が水平方向に沿っているが、挿入及び取出方向50は、重力方向や、水平方向及び重力方向と交差する方向であってもよい。
【0024】
図3,4に示されるように、インクカートリッジ30は、略直方体形状の本体31を有する。インクカートリッジ30は、全体として、左右方向51に細く、上下方向52と前後方向53が左右方向51よりも大きい扁平形状である。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されるときに挿入向き56前方側となる壁が前壁40であり、挿入向き56後方側となる壁が後壁42である。前壁40と後壁42とは、挿入及び取出方向50において対向している。前壁40及び後壁42は、挿入及び取出方向50に延びる左右一対の側壁37,38、側壁37,38と前壁40及び後壁42とを接続し、かつ前壁40の上端から後壁42の上端に向けて延びる上壁39、及び前壁40の下端から後壁42の下端に向けて延びる下壁41、の4つの壁によりそれぞれ区画されている。なお、挿入及び取出方向50は前後方向53と平行である。前壁40の外面が前面に相当する。後壁42の外面が後面に相当する。上壁39の外面が上面に相当する。下壁41の外面が底面に相当する。
【0025】
[本体31]
本体31の前壁40の下側に、インク供給部34が設けられている。インク供給部34は、円筒形状の外形をなしており、前壁40から挿入及び取出方向50に沿って外側へ突出している。インク供給部34の突出端にはインク供給口71が形成されている。
【0026】
インク供給口71からインク供給部34の内部空間を通じて、挿入及び取出方向50に延びてインク室36へ通ずるインク流路72が形成されている。インク供給口71は、インク供給バルブ70によって開閉可能に構成されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル122(図5参照)が、インク供給口71に挿入されてインク供給バルブ70を開く。これにより、インク流路72を通ってインク室36から、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル122へインクが流出される。
【0027】
なお、インク供給口71は、必ずしもインク供給バルブ70によって開閉可能な構成に限定されず、例えば、インク供給口71がフィルムなどで閉塞されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インクニードル122がフィルムを突き破ることによりインク供給口71が開かれる構成であってもよい。
【0028】
図3,4に示されるように、本体31の前壁40の下端には突起86が設けられている。したがって、突起86は、インク供給部34の下方に配置されている。突起86の幅は、前壁40の幅と同じである。突起86は、前壁40から後壁42から離れる向き(挿入向き56)へ突出されている。突起86の先端は、後壁42から離れる向き(挿入向き56)において、インク供給部34の先端であるインク供給口71の前側まで突出されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、突起86の突出端は、カートリッジ装着部110のスライド部材135(図5参照)と当接する。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されるに際して、突起86はガイド溝109(図5参照)に嵌入し、この嵌め合いによってインクカートリッジ30が挿入向き56へ案内される。
【0029】
本体31の上壁39における前後方向53の中央付近には、係止部45が形成されている。係止部45は、インクカートリッジ30の左右方向51及び上下方向52に拡がる係止面46と、上壁39から下側へ凹んだ支持面47とを有している。係止面46と支持面47とは交差する関係にある。係止面46は支持面47の前端から上方へ延び、上壁39に接続されている。本実施形態では、係止面46と支持面47とは直交している。係止面46には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態で、後述される係合部材145が係合する。係止部45は、インクカートリッジ30を取出向き55に押し出させる付勢力を受けるものである。本実施形態では、係止面46は、取出し向き55と交差するように配置されることにより、付勢力を受けている。支持面47が、第1面に相当する。係止面46が、第2面に相当する。
【0030】
係止部45において、係止面46から後壁42側へ渡って、一対のリブ48,49が支持面47から上方へ向かって突出されている。各リブ48,49は、係止面46から解除レバー80の支軸83付近まで延出されている。つまり、各リブ48,49は、支軸83の軸方向に対して側方に位置されている。各リブ48,49の上端は、それぞれが上壁39の外面と同一面を形成している。各リブ48,49の側面の一方は、それぞれが側壁37,38の外面と同一面を形成している。係止面46と支持面47と一対のリブ48,49とによって、上壁39より凹んだ空間が形成されている。後述される解除レバー80の先端部81は、この凹んだ空間に収容されている。各リブ48,49は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されるに際して、ガイド溝108(図5参照)に嵌入し、この嵌め合いによってインクカートリッジ30が挿入向き56へ案内される。リブ48,49が突片に相当する。
【0031】
本体31の係止部45には、解除レバー80が設けられている。解除レバー80は、例えば、屈曲された平板形状をなしており、その長手方向が前後方向53に沿うように配置されている。解除レバー80は、上向きに凸(山折れ)形状と下向きに凸(谷折れ)形状に屈曲されており、そのうちの前壁40側の下向きに凸(谷折れ)形状に屈曲された位置に軸83を有する。軸83は、係止部45の支持面47付近において本体31に回転可能に取り付けられている。解除レバー80は、軸83周りに回動可能である。解除レバー80において、前壁40側となる先端部81は、軸83から係止面46側へ延出されている。解除レバー80の後端部82は、軸83から後壁42側へ延出されている。
【0032】
軸83と後端部82との間に、上向きに凸(山折れ)形状に屈曲された屈曲部84が形成されている。屈曲部84付近から後端部82に渡って、解除レバー80は、平板形状の厚みが、先端部81などの他の部分よりも太くされている。屈曲部84付近の厚みが太くされることによって、屈曲部84付近の剛性が高められている。先端部81が第1端に相当する。後端部82が第2端に相当する。
【0033】
解除レバー80が軸83を中心として回動されることにより、先端部81は、係止部45の支持面47から離れた第1位置と、支持面47に当接する第2位置との間を回動する。解除レバー80に外力が付与されていない状態では、解除レバー80は、自重によって先端部81が第1位置となる。図3,4においては、先端部81が第1位置にある解除レバー80が示されている。同様に、解除レバー80が軸83を中心として回動されることにより、後端部82は、係止部45の支持面47から離れた位置と、支持面47に当接する位置との間を回動する。いずれの回動位置であっても、後端部82は、後壁42の上側付近に位置しており、ユーザは、後壁42側から、後端部82を操作することができる。
【0034】
解除レバー80の先端部81が第1位置であり、後端部82が支持面47に当接している状態において、屈曲部84の稜線、すなわち上端は、支持面47に対して先端部81より上側(外側)に位置している。
【0035】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21へインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態が示されている。
【0036】
[カートリッジ装着部110]
図5に示されるように、カートリッジ装着部110の筐体を形成するケース101は、プリンタ10の正面側に開口112を有する。開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿抜される。インクカートリッジ30は、ケース101の内部空間の天部を画定している天面に設けられたガイド溝108に上壁39側が挿入され、ケース101の内部空間の底部を画定している底面に設けられたガイド溝109に下壁41側が挿入されることによって挿入及び取出方向50へ案内される。ガイド溝108,109は、それぞれが天面及び底面から上下方向に凹んだものであり、挿入及び取出方向50に沿って直線形状に延びている。ガイド溝108,109の幅は、インクカートリッジ30の本体31の幅(左右方向51の外形寸法)より若干広く、挿入及び取出方向50に渡って概ね一定である。
【0037】
図5に示されるように、ケース101の終面102の下部に接続部103が設けられている。接続部103は、終面において、ケース101に装着された各インクカートリッジ30のインク供給部34に対応する位置に配置されている。
【0038】
接続部103は、インクニードル122と、保持部121とを有する。インクニードル122は、管状の樹脂針からなる。インクニードル122は、ケース101の終面と表裏をなす外面側でインクチューブ20に接続されている。各インクニードル122からケース101の終面と表裏をなす外面側へ引き出された各インクチューブ20は、プリンタ10の記録ヘッド21へインクを流通可能に延出されている。なお、図5においては、インクチューブ20は省略されている。
【0039】
保持部121は、円筒状に形成されている。保持部121の中心にインクニードル122が配置されている。図7(A)に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インク供給部34が保持部121の円筒の内側に挿入される。このとき、インク供給部34の外周面が保持部121の円筒の内周面に接触することにより、インク供給部34が保持部121に対して位置決めされつつ挿入される。インク供給部34が保持部121へ挿入されると、インクニードル122がインク供給部34のインク供給口71に挿入される。これにより、インク室36に貯留されているインクが外部へ流出可能となる。インク室36から流出されたインクは、インクニードル122へ流入する。
【0040】
図5に示されるように、スライド部材135は、カートリッジ装着部110の終面の下端側に形成された空間130に配置されている。空間130は、カートリッジ装着部110の内部空間と連続している。スライド部材135は、空間130において挿入及び取出方向50に沿ってスライド可能である。
【0041】
スライド部材135は、概ね直方体の外形をなす基部136の上面から上側へ突出した当接片137を有する。基部136は、ガイド溝109の底面より下側にあり、インクカートリッジ30の突起86とは当接しない。当接片137は、ガイド溝109より上側まで突出しており、突起86と当接し得る。
【0042】
空間130にはコイルバネ140が設けられている。コイルバネ140は、スライド部材135の基部136と、空間130の開口112側の端面とに接続されている。コイルバネ140は、スライド部材135を開口112側、つまり、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から抜き出される向きへ、つまり開口112へ向かって、インクカートリッジ30を弾性付勢するものである。コイルバネ140が自然長である場合、つまり、スライド部材135に外力が加えられていない状態では、スライド部材135は、開口112側の所定の位置に配置される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程で、インクカートリッジ30の突起86がスライド部材135に当接して、スライド部材135が空間130の終壁側へ押圧される。これにより、コイルバネ140が伸長されるとともに、スライド部材135が終壁側の位置へスライドされる。伸長したコイルバネ140は、スライド部材135を介してインクカートリッジ30を取出向き55へ付勢する。
【0043】
図6に示されるように、係合部材145がケース101に設けられている。係合部材145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を装着状態に保持するためのものである。係合部材145は、ケース101の開口112の上側に設けられている。
【0044】
係合部材145は、例えば、支軸147を中心に揺動可能に形成されている。支軸147は、例えば、係合部材145の開口112側の端部に設けられている。この支軸147は、例えば、ケース101に取り付けられている。これにより、係合部材145は、ケース101の開口112付近の上側において、支軸147を中心に開口112側に対して近づく/離れるように回動可能に支持される。
【0045】
係合端部146は、係合部材145の支軸147の他端側に配置される。係合端部146は、インクカートリッジ30の係止部45と係合可能である。係合端部146が係止部45と係合することにより、インクカートリッジ30がケース101に対して、スライド部材135の付勢力に抗して、装着位置に保持される。係合端部146が係止部45と係合可能な位置となる係合部材145の回動位置(図7(A)参照)がロック位置と称され、係合端部146が係止部45と係合しない位置(図7(B)参照)がアンロック位置と称される。
【0046】
係合部材145は、係合端部146から支軸147へ向かって延びる下端部148を有する。下端部148は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、解除レバー80の先端部81と当接可能な位置まで開口112側へ延びている。係合部材145がロック位置であるときに、下端部148の外面は概ね水平方向に沿って拡がっている。
【0047】
係合部材145は、自重又はコイルバネ(不図示)によって、重力方向下向きへ回動する。解除レバー80の先端部81が上側に移動することにより、係合部材145が支軸147を中心に上側へ回動し、ロック位置からアンロック位置へ移動する。また、各図には示されていないが、例えば、係合部材145の可動範囲は、アンロック位置より下方へ移動しないように回動が規制されている。
【0048】
[インクカートリッジ30の装着動作]
以下、図6,7が参照されつつ、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される動作が説明される。
【0049】
まず、インクカートリッジ30の使用に際して、包装材13が破断されて、インクカートリッジ30が包装材13から取り出される。そして、装着姿勢にされたインクカートリッジ30が、ケース101にインクカートリッジ30が挿入される。挿入に際して、インクカートリッジ30の最も前側にある突起86の突出端が開口112に挿入される。図6(A)に示されるように、突出端87が、開口112に開口するガイド溝109に挿入されることにより、突起86がガイド溝109に嵌入される。さらにインクカートリッジ30が挿入向き56へ挿入されることによって、本体31の上壁39側がガイド溝108に嵌入される。突起86がガイド溝109に嵌入され、本体31の上壁39側がガイド溝108に観入されることによって、インクカートリッジ30がケース101内において左右方向(図6,7に対して紙面と垂直な方向)に位置決めされる。突起86の底面がガイド溝109の底面に支持されることによって、インクカートリッジ30がケース101内において下方向に対して位置決めされる。
【0050】
更にインクカートリッジ30がケース101の終面側へ挿入されると、係合部材145の下端部148が、本体31の上壁39に乗りあがる。これにより、係合部材145が図6における反時計回りに回動して、ロック位置からアンロック位置へ移動する。更に、インクカートリッジ30がケース101の終面側へ挿入されると、係合部材145は、上壁39を係止部45側へ摺動していく。
【0051】
図6(B)に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程において、突起86はスライド部材135の当接片137と当接する。そして、更にインクカートリッジ30が終面102側へ挿入されることにより、当接片137が奥側へ押圧される。これにより、スライド部材135が、コイルバネ140を弾性的に伸長させながら奥側へ移動する。コイルバネ140が弾性的に伸長されることによって、当接片137を介して突起86の突出端に、取出向き55への付勢力が付与される。
【0052】
また、インクカートリッジ30のインク供給部34は保持部121に接し、インクニードル122が、インク供給部34のインク供給口71に挿入される。インクニードル122がインク供給口71に挿入されてバルブ70に接し、さらにインクカートリッジ30が挿入向き56へ移動されると、バルブ70がインクニードル122に押されてインク供給口71から離れる。そして、インク供給部34が保持部121に挿入され、かつ、インクニードル122がインク供給口71に挿入されることにより、インクカートリッジ30の本体31がケース101に対して、所定の位置に装着される。各図には示されていないが、インクニードル122の先端にはインク導入口が設けられているので、このインク導入口を通じて、インク室36からインクニードル122へインクが流入する。
【0053】
また、インクカートリッジ30が装着位置に到達すると、図7(A)に示されるように、本体31の一対のリブ48,49がガイド溝108に嵌入される。また、本体31の係止部45における係止面46が、係合部材145の係合端部146を挿入向き56へ通り過ぎる。これにより、係合部材145が図7における時計回りへ回動して係合部45に位置し、下端部148が解除レバー80の先端部81を押し下げる。これにより、解除レバー80の先端部81が第1位置から第2位置へ回動され、後端部82が支持面47から離れて上側へ回動する。先端部81が第2位置となることにより、時計回りへ回動した係合部材145の係合端部146が係止面46に接する。係合部材145が係止面46に係合することにより、インクカートリッジ30が、コイルバネ140の付勢に抗して、装着位置に保持される。このようにして、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了する。
【0054】
インクカートリッジ30のインク室36内のインクが消費されると、使用済みのインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から取り外され、新しいインクカートリッジ30が装着される。
【0055】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から取り外されるときには、解除レバー80の後端部82が、ユーザによって下向きへ押し下げられる。これにより、解除レバー80の先端部81が第2位置から第1位置へ回動される。この先端部81の回動に伴って、係合部材145が、解除レバー80の先端部81により上側へ押し上げられる。これにより、係合部材145の係合端部146が係止面46より上側となるまで、つまり係合端部146が係止面46から離間するまで係合部材145が回動される。すなわち、係合部材145がロック位置からアンロック位置まで回動されて、係合部材145によるインクカートリッジ30の保持が解除される。
【0056】
係合部材145の係合端部146が係止面46から離間されることにより、突起86を介して本体31に付与されている外力、すなわちコイルバネ140による付勢力によって、本体31は、取出向き55へ移動しようとする。一方、ユーザが解除レバー80を下向きへ押し下げているので、コイルバネ126などによる付勢力は、解除レバー80を介して、ユーザの手によって受け止められる。そして、ユーザが本体31を取出向き55へ取り出すことにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から取り外される。
【0057】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、ユーザが解除レバー80を回動させることにより、係合部材145とインクカートリッジ30との係合が解除されるので、外力により飛び出すインクカートリッジが、インクニードル122から外れる前にユーザの手によって保持でき、カートリッジ装着部110からインクカートリッジ30が落下することが防止できる。
【0058】
また、インクカートリッジ30において、第1位置にある解除レバー80の先端部81は、本体31の係止面46の上端(突出端)より支持面47側にある。従って、解除レバー80の先端部81が最も本体31の外側へ突出することがないので、仮にインクカートリッジ30が床などに落下されたとしても、解除レバー80の先端部81が破損することを防止できる。
【0059】
また、解除レバー80の屈曲部83が、先端部81が第1位置であるときに、先端部81より支持面47に対して外側に位置するので、後端部82側からインクカートリッジ30が床などに落下されたとしても、屈曲部83によって先端部81が保護される。この屈曲部83付近は、解除レバー80の先端部81などの他の部分より厚みが太いので、剛性が高く、落下による衝撃によって破損しにくい。また、先端部81が第1位置であるときに、後端部82は、支持面47に当接しているので、後端部82は落下による衝撃によって破損しにくい。
【0060】
また、解除レバー80の軸83の軸方向の側方に、支持面47から外側へ突出するリブ48,49が設けられているので、解除レバー80の先端部81は、リブ48,49によっても、床などへの落下の衝撃から保護される。また、インクカートリッジ30が、包装材13により減圧されて密封されと、包装材13とインクカートリッジ30の各部材との空間が無くなり、包装材13がインクカートリッジ30を押圧するように密着するが、このような包装材13の密着に対しても、リブ48,49によって解除レバー80の先端部81が保護される。
【0061】
[変形例]
なお、本実施形態では、本発明に係る第2面として係止面46が機能しているが、リブ48,49を第2面として機能させてもよい。すなわち、第1位置にある解除レバー80の先端部81が係止面46より外側にあるような態様であっても、その先端部81よりリブ48,49が外側にあれば、前述と同様の作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0062】
10・・・プリンタ(画像記録装置)
13・・・包装材
30・・・インクカートリッジ(印刷流体カートリッジ)
31・・・本体
40・・・前壁(前面)
42・・・後壁(後面)
46・・・係止面(第2面)
47・・・支持面(第1面)
48,49・・・リブ(突片)
80・・・解除レバー
81・・・先端部(第1端)
82・・・後端部(第2端)
83・・・軸
84・・・屈曲部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力に抗して印刷流体カートリッジを係合可能な係合部材を有するカートリッジ装着部に装着される印刷流体カートリッジであって、
印刷流体を収納する本体と、
上記本体の外面である第1面と交差する外向きへ拡がっており、上記係合部材と係合する第2面と、
上記第2面と交差する方向に沿って延出されて、上記第2面側の第1端及び当該第1端と反対側の第2端を有しており、上記第1面及び上記第2面と平行な方向を軸方向とする支軸周りに回動して、上記第2面と上記係合部材との係合を解除可能な回動部材と、を具備し、
上記第1端は、上記第1面から離れた第1位置と、当該第1位置よりも上記第1面に近い第2位置との間を回動するものであって、上記第1位置において、上記第2面の上記外向きの端より上記第1面側にある印刷流体カートリッジ。
【請求項2】
上記回動部材は、上記第1端が第1位置であるときの上記第2端側に、当該第1端より上記第1面に対して外側に位置する屈曲部を有する請求項1に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項3】
上記回動部材は、上記第1端と上記第2端と結ぶ方向に細長な平板形状であって、上記屈曲部が他の部分より厚みが太いものである請求項2に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項4】
上記回動部材は、上記第1端が第1位置であるときの上記第2端が、上記本体の外面に当接するものである請求項2又は3に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項5】
上記第1端は、上記第1面より上記回動部材の支軸側にあり、
上記第1端の上記支軸の軸方向の側方に、上記第1面から外側へ突出する突片が設けられており、
上記突片の突出端は、第1位置にある上記第1端より外側にある請求項1から4のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項6】
上記突片は、上記第1端の軸方向の両側に一対が設けられたものである請求項5に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項7】
上記一対の突片は、上記カートリッジ装着部において印刷流体カートリッジを装着する位置に案内するガイドである請求項6に記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項8】
包装材により密封され、当該包装材と上記本体との間の内部空間が大気圧より低い圧力に減圧されている請求項1から7のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項9】
上記本体は、挿入向きの前側となる前面と、当該前面から離れた後面とを有しており、
上記回動部材は、上記後面側から操作可能な位置に配置されている請求項1から8のいずれかに記載の印刷流体カートリッジ。
【請求項10】
印刷流体を収納する本体と、
上記本体の外面である第1面と交差する外向きへ拡がる第2面と、
上記第1面上で支軸回りに回動可能に設けられ、当該支軸と交差する方向の一方側の第1端及び当該第1端と反対側の第2端を有する回動部材と、を具備し、
上記第1端は、上記第1面から離れた第1位置と、当該第1位置よりも上記第1面に近い第2位置との間を回動するものであって、上記第1位置において、上記第2面の外向きの端より上記第1面側にある印刷流体カートリッジ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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