説明

印刷物、印刷物製造方法、および印刷装置

【課題】第1画像層の凹凸が、第2画像層側から視認されることを防止または抑制する印刷物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】光透過性を有する記録媒体Mにおいて、表裏画像を表現する第1画像層1stIMGと第2画像層2ndIMGとの間に形成された中間層の第2画像層と接する面に所定の形状を有する複数の凸部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面から視認可能な印刷物に関する。また、該印刷物を製造する方法、および該印刷物を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体の両面に画像が印刷された印刷物が、広告や装飾等に利用されている。一般的に、画像を記録媒体の表面および裏面に印刷する場合、通常、一方の面に画像を印刷した後、記録媒体を反転して他方の面に画像を印刷する。このため、効率よく印刷物を作成することができない。
【0003】
そこで、光透過性を有する記録媒体の一方の面に二つの画像を積層して印刷する手法が存在する。特に、インクジェットプリンタによって実現されるこのような印刷手法は、大判の記録媒体や、ガラスなどの圧力に弱い記録媒体に対して行なうのに最適な手法であることから、様々な技術が開発されている。
例えば、特許文献1では、インクジェットプリンタにより、透明フィルムの一方の面に対して第1層、第2遮蔽層および第3層を順に重ねた印刷物を開示している。第1層および第3層は、画像を表現するためのカラーインクにて形成され、第2遮蔽層は白インクにて形成される。印刷物では、第2遮蔽層が形成されることにより、第1層を視認した際に、第3層が透けて見えることが防止され、同様に、第3層を視認した際に、第1層が透けて見ることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−5878
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、透明フィルムやガラスのような光透過性を有する記録媒体はインクをほとんど吸収しないので、階調濃度の高い部分には比較的多量のインクが付着し、階調濃度の低い部分には比較的少量のインクが付着するため、階調に応じてインクが付与された結果として、凹凸を有するレリーフ状に画像が形成されることになる。
その結果、特許文献1に示された透明フィルムの一方の面に複数の画像層を重ねる手法の場合、透過防止用の第2遮蔽層を介して第1画像層の凹凸が第2画像層に現れてしまうため、第1画像層の光学的な透過は防げたとしても結果として第2画像層に第1画像層の陰影が生じてしまうことから、第2画像層の表現が劣化するという問題が生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、第1画像層の凹凸が、第2画像層側から視認されることを防止または抑制する印刷物を提供することを目的としている。
また、本発明は、第1画像層の凹凸が、第2画像層側から視認されることを防止または抑制する印刷物を製造する印刷物製造方法を提供することを目的としている。
さらに、本発明は、第1画像層の凹凸が、第2画像層側から視認されることを防止または抑制する印刷物を製造する印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1に係わる発明は、印刷物であって、光透過性を有する記録媒体と、前記記録媒体上に形成された第1画像層と、前記第1画像層上に形成された中間層と、前記中間層上に形成された第2画像層と、を有し、前記中間層は、前記第2画像層と接する面に所定の形状を有する複数の凸部を備えること、を特徴としている。
【0008】
また、請求項2に係わる発明は、請求項1に記載の印刷物であって、前記中間層が均一な色の遮光層を含み、前記遮光層に所定の形状を有する複数の凸部を形成することにより、前記中間層が前記第2画像層と接する面に所定の形状を有する複数の凸部を備えること、を特徴としている。
【0009】
さらに、請求項3に係わる発明は、請求項1に記載の印刷物であって、前記中間層は前記第2画像層と接する面に所定の形状として球帯状に形成された複数の凸部を備えること、を特徴としている。
【0010】
加えて、請求項4に係わる発明は、請求項1に記載の印刷物であって、前記中間層は前記第2画像層と接する面に所定の形状として畝状に形成された複数の凸部を備えること、を特徴としている。
【0011】
また、請求項5に係わる発明は、請求項1に記載の印刷物であって、前記中間層は前記第2画像層と接する面に連続的に形成された所定の形状を有する複数の凸部を備えること、を特徴としている。
【0012】
さらに、請求項6に係わる発明は、請求項1に記載の印刷物であって、前記中間層は前記第2画像層と接する面にランダムに形成された所定の形状を有する複数の凸部を備えること、を特徴としている。
【0013】
加えて、請求項7に係わる発明は、請求項1に記載の印刷物であって、前記第1画像層、中間層、第2画像層が、硬化性インクにより形成されたこと、を特徴としている。
【0014】
請求項8に係わる発明は、印刷物の製造方法であって、光透過性を有する記録媒体上に、第1画像層を形成する工程と、前記第1画像層上に、所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成する工程と、前記中間層上に、第2画像層を形成する工程と、を有することを特徴としている。
【0015】
また、請求項9に係わる発明は、請求項8に記載の印刷物の製造方法であって、前記中間層を形成する工程において、前記中間層の少なくとも一部の層として均一な色の遮光層を形成し、前記遮光層に所定の形状を有する複数の凸部を形成すること、を特徴としている。
【0016】
さらに、請求項10に係わる発明は、請求項8に記載の印刷物の製造方法であって、前記第1画像層を形成する工程が、前記第1画像を表現するための第1画像データに基づいて行なわれ、前記第2画像層を形成する工程が、前記第2画像を表現するための第2画像データに基づいて行なわれること、を特徴としている。
【0017】
加えて、請求項11に係わる発明は、請求項10に記載の印刷物の製造方法であって、前記中間層を形成する工程が、前記所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成するための中間層形成データに基づいて行なわれること、を特徴としている。
【0018】
また、請求項12に係わる発明は、請求項10に記載の印刷物の製造方法であって、前記所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成する工程が、前記中間層を形成するための中間層形成データおよび該中間層形成データに含まれる凸部形成データに基づいて行なわれること、を特徴としている。
【0019】
さらに、請求項13に係わる発明は、請求項8に記載の印刷物の製造方法であって、前記第1画像層、中間層、第2画像層を形成する工程において、硬化性インクの微小液滴を前記記録媒体に対して吐出することにより、前記第1画像層、中間層、第2画像層が形成されること、を特徴としている。
【0020】
請求項14に係わる発明は、印刷装置であって、光透過性の記録媒体を搬送する搬送手段と、搬送された前記記録媒体に対して、第1画像層および第2画像層を形成する画像層形成手段と、搬送された前記記録媒体に対して、所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成する中間層形成手段と、を有し、前記記録媒体上に前記画像層形成手段が第1画像層を形成し、該第1画像層上に前記中間層形成手段が中間層を形成し、該中間層上に前記画像層形成手段が第2画像を形成すること、を特徴としている。
【0021】
また、請求項15に係わる発明は、請求項14に記載の印刷装置であって、前記中間層形成手段は、前記中間層の少なくとも一部の層として所定の形状を有する複数の凸部を備える均一な色の遮光層を形成すること、を特徴としている。
【0022】
さらに、請求項16に係わる発明は、請求項14に記載の印刷装置であって、前記画像層形成手段と前記中間層形成手段とが、一つの層形成手段として構成されていること、を特徴としている。
【0023】
さらに、請求項17に係わる発明は、請求項16に記載の印刷装置であって、前記搬送手段で搬送される記録媒体に対して、前記層形成手段が相対的に移動しながら前記第1画像層、中間層、第2画像層を形成すること、を特徴としている。
【0024】
加えて、請求項18に係わる発明は、請求項17に記載の印刷装置であって、前記層形成手段が硬化性インクの微小液滴を前記記録媒体に対して吐出することにより、前記第1画像層、中間層、第2画像層を形成すること、を特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の印刷物は、光透過性を有する記録媒体において、表裏画像を表現する第1画像層と第2画像層との間に形成された中間層の第2画像層と接する面に所定の形状を有する複数の凸部を形成したことにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0026】
請求項2に記載の印刷物は、中間層が画像の視認性を向上するための遮光層に所定の形状を有する複数の凸部を形成したことで、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0027】
請求項3に記載の印刷物は、中間層が第2画像層と接する面に所定の形状として球帯状(上底の半径=0の態様を含む)に形成された複数の凸部を有することにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0028】
請求項4に記載の印刷物は、中間層が第2画像層と接する面に所定の形状として畝状に形成された複数の凸部を有することにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0029】
請求項5に記載の印刷物は、中間層が第2画像層と接する面に連続的に形成された所定の形状を有する複数の凸部を備えることにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0030】
請求項6に記載の印刷物は、中間層が第2画像層と接する面にランダムに形成された所定の形状を有する複数の凸部を備えることにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0031】
請求項7に記載の印刷物は、第1画像層、中間層、第2画像層をそれぞれ紫外線などの放射線により硬化する硬化性インクを使用して形成することにより、比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0032】
請求項8に記載の印刷物製造方法は、光透過性を有する記録媒体に対して、表裏画像を表現する第1画像層と第2画像層との間に、第2画像層と接する面に所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成することにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造することができる。
【0033】
請求項9に記載の印刷物製造方法は、中間層を形成するに際して、画像の視認性を向上するための遮光層に所定の形状を有する複数の凸部を形成することにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造することができる。
【0034】
請求項10に記載の印刷物製造方法は、第1画像層、第2画像層を形成するに際して、それぞれ第1画像データ、第2画像データに基づいて行なうことにより、版形成を行なわずに比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造することができる。
【0035】
請求項11に記載の印刷物製造方法は、中間層を形成するに際して、所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成するための中間層形成データに基づいて行なわれるので、版形成を行なわずに比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造することができる。
【0036】
請求項12に記載の印刷物製造方法は、中間層形成データが凸部形成データを含むことにより、所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層が形成されるので、凸部形成データを変更することで様々な凸部を形成することができるため、版形成を行なわずとも比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造することができる。
【0037】
請求項13に記載の印刷物製造方法は、第1画像層、中間層、第2画像層を形成するに際して、それぞれ紫外線などの放射線により硬化する硬化性インクを使用して形成するので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造することができる。
【0038】
請求項14に記載の印刷装置は、搬送されて来た光透過性を有する記録媒体に対して、画像層形成手段が表裏画像を表現する第1画像層および第2画像層を形成し、中間層形成手段が第1画像層と第2画像層との間に所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成することにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなる比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造する印刷装置を実現することができる。
【0039】
請求項15に記載の印刷装置は、中間層形成手段が所定の形状を有する複数の凸部を備える均一な色の遮光層を中間層の一部として形成することにより、第1画像層を形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層において目立たなくなるので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造する印刷装置を実現することができる。
【0040】
請求項16に記載の印刷装置は、画像層形成手段と中間層形成手段とを一つの層形成手段として構成しているので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を効率よく製造する印刷装置を実現することができる。
【0041】
請求項17に記載の印刷装置は、層形成手段が搬送されて来た記録媒体に対して相対的に移動しながら第1画像層、中間層、第2画像層を形成するので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を効率よく製造する印刷装置を実現することができる。
【0042】
請求項18に記載の印刷装置は、第1画像層、中間層、第2画像層を、それぞれ紫外線などの放射線により硬化する硬化性インクを使用して形成するので、比較的容易に視認性が向上した印刷物を製造する印刷装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に関わるインクジェット印刷装置1を説明するための図である。
【図2】インクジェット印刷装置1の記録ヘッド11aを説明するための図である。
【図3】記録媒体Mに第1画像層、中間層、第2画像層を形成した状態を説明するための図である。
【図4】制御部13の機能構成の一部を示すブロック図である。
【図5】インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】記録媒体Mに第1画像層、複数の凸部を形成した中間層、第2画像層を形成した状態を説明するための図である。
【図7】中間層の遮光層に複数の凸部として、球帯を連続的に形成した状態を説明するための図である。
【図8】中間層の遮光層に複数の凸部として、畝を連続的に形成した状態を説明するための図である。
【図9】中間層の遮光層に複数の凸部として、球帯をランダムに形成した状態を説明するための図である。
【図10】中間層データ生成部13bが複数の凸部の形状として、種々の形状を選択可能であることを示すための図である。
【図11】制御部130の機能構成の一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を利用しながら、本発明を実施形態について、説明を行なう。
【0045】
〈第1の実施形態〉
図1は、本発明に関わるインクジェット印刷装置1を説明するための図である。インクジェット印刷装置1は、記録部11、搬送部12、制御部13を備えている。
【0046】
記録部11は、記録ヘッド11a、記録ヘッド保持軸11bを有している。
記録ヘッド11aは、図示しないインク供給部から供給される放射線硬化性インクを吐出するインクジェットヘッドが、色数分複数配置されている。インクジェットヘッドにおけるインク吐出技術としては、ピエゾ式、サーマル式など、所望のインク吐出技術を採用しうる。また、放射線硬化インクとしては、UVキュアラブルインクを使用することができる。この場合、インクを硬化させる放射線源は紫外線ランプとなる。あるいは、放射線硬化インクとして電子線硬化インクを採用してもよい。この場合、放射線源は電子銃となる。
記録ヘッド保持軸11bは、記録ヘッド11aが記録媒体Mに対して主走査方向に移動するための保持軸である。記録ヘッド11aは記録ヘッド保持軸11bが備える移動機構によって、搬送される記録媒体Mに対して直交方向に往復移動しながらインクを吐出することにより、主走査方向の画像を記録する。記録ヘッド保持軸11bが備える移動機構としては、ボールネジやリニアモータ、同期ベルトなど、所望の移動機構を採用しうる。
【0047】
記録部11は、通信可能に接続された制御部13から出力された画像記録信号に基づいて、記録ヘッド保持部11bが記録ヘッド11aを搬送される記録媒体Mに対して直交方向に往復移動させるとともに、記録ヘッド11aが所定色のインクを所定の位置に吐出することで、記録媒体Mに対する画像記録を行なう。
【0048】
搬送部12は、搬送テーブル12aとテーブル移動部12bを有している。
搬送テーブル12aは、記録媒体Mを載置するためのものである。搬送テーブル12aは、記録媒体Mに対する精密な記録を保証するため、載置した記録媒体Mを固定するための固定機構を備えている。固定機構としては、真空吸着やクランパなど、所望の固定機構を採用しうる。
テーブル移動部12bは、搬送テーブル12aを記録部11に対して移動させるための移動機構である。テーブル移動部12bが搬送テーブル12aを移動させることにより、記録部11による記録媒体Mに対する副走査方向の記録が実現する。テーブル移動部12bの移動機構としては、ボールネジやリニアモータ、同期ベルトなど、所望の移動機構を採用しうる。
【0049】
搬送部12は、通信可能に接続された制御部13から出力された画像記録信号に基づいて、テーブル移動部12bが搬送テーブル12aを記録部11に対して移動させることで、搬送テーブル12aに載置した記録媒体Mに対する記録が行なわれる。
【0050】
制御部13は、インクジェット印刷装置1全体を制御するコントローラである。制御部13は、記録部11、搬送部12と通信可能に接続されており、所定の画像記録信号を出力することにより、記録部11、搬送部12を制御して、記録媒体Mに対する画像記録を行なう。
なお、制御部13の構成については後述する。
【0051】
図2は、記録ヘッド11aの説明を行なうための図である。図2において示しているのは記録ヘッド11aの底面図であって、記録ヘッド11aには紫外線で硬化するUVキュアラブルインクを吐出するインクジェットヘッド11aW、11ak、11aC、11aM、11aYが配置されており、また吐出したインクを硬化する紫外線ランプ11aLが配置されている。
【0052】
インクジェットヘッド11aW、11ak、11aC、11aM、11aYは、それぞれ白色、黒色、シアン色、マゼンタ色、黄色のUVキュアラブルインクを吐出する。UVキュアラブルインクは、通常は液体として流動性を有しているが、照射された紫外線に反応して硬化する構造を有する合成樹脂であり、インクジェットヘッド11aW、11ak、11aC、11aM、11aYによって記録媒体Mに吐出された各色のインクは、紫外線ランプ11aLによって硬化される。
【0053】
インクジェットヘッド11ak、11aC、11aM、11aYは、記録媒体Mに対して一般的な画像表現を行なうためのインクを吐出する。すなわち、インクジェットヘッド11ak、11aC、11aM、11aYが吐出するインクは、印刷表現に使用されるCMYKインクであり、制御部13が出力した画像記録信号に応じて各色インクを吐出することで、記録媒体M上に画像層を形成する。
記録媒体Mが光透過性を有する透明フィルムの場合、インクジェットヘッド11ak、11aC、11aM、11aYが該記録媒体Mに直接記録した画像層が表裏面いずれかの画像である第1画像層となり、後述する中間層上にインクジェットヘッド11ak、11aC、11aM、11aYが記録した画像層が表裏面のもう一方の画像である第2画像層となる。
【0054】
また、インクジェットヘッド11akはインクジェットヘッド11aWと共に、制御部13が出力する画像出力信号に基づいて、中間層を形成するためのインクを吐出する。中間層は、第1画像層と第2画像層との間に形成される層であり、記録媒体Mの光透過性を阻害する機能、および第1画像層、第2画像層によって表現される画像を明瞭にする機能を備える。中間層における光透過性を阻害する機能は、インクジェットヘッド11akが吐出する黒色インクによって形成される遮光層によって実現され、画像を明瞭にする機能はインクジェットヘッド11aWが吐出する白色インクによって実現される。
【0055】
図3は、インクジェット印刷装置1が、光透過性を有する記録媒体Mに対して従来手法で印刷を行なった結果得られる第1画像層、中間層、第2画像層を形成した状態を説明するための図である。なお、ここでは、各層の厚みについて、説明のため誇張して表現している。
【0056】
図示しているように、記録媒体M上には第1画像層1stIMGが形成されている。第1画像層1stIMGは、記録媒体Mを透過したdirA側から視認可能な画像を形成している。
【0057】
記録媒体Mに第1画像層1stIMGのみ形成されている場合、画像層以外の部分はdirB側の背景が透過して第1画像層1stIMGが形成する画像の表現が不明瞭になること、また第1画像層1stIMGが形成された領域そのものも光を透過するためにやはり画像の表現が不明瞭になることから、第1画像層1stIMG上に中間層intが形成されている。
中間層intは複数の層、すなわち白色インクによって形成された第1背景層1stW、黒色インクによって形成された遮光層BK、白色インクによって形成された第2背景層2ndWによって構成されている。
【0058】
第1背景層1stWは、第1画像層1stIMG上に形成した白色層であり、CMYKで表現されている第1画像層1stIMGが表現する画像に対する白色背景として機能する。これにより、dirA側から第1画像層1stIMGによって形成された画像が明瞭に表現されるとともに、dirB側の背景が透過することをある程度防いでいる。
【0059】
遮光層Bkは、第1背景層1stW上に形成した黒色層である。遮光層Bkは、記録媒体Mの光透過性を阻害するために形成され、dirB側からの光、およびdirA側からの光を遮蔽することにより、第1画像層1stIMG、第2画像層2ndIMGの表現する画像がそれぞれ明瞭に表現される。また、第1背景層1stW、第2背景層2ndWが透過する光も遮蔽することにより、dirA側の背景の映り込み、dirB側の背景の写り込みも防止する。
【0060】
第2背景層2ndWは、遮光層Bk上に形成した白色層であり、CMYKで表現されている第2画像層2ndIMGに対する白色背景として機能する。これにより、dirB側から第2画像層2ndIMGによって形成された画像が明瞭に表現されるとともに、dirA側の背景が透過することをある程度防いでいる。
【0061】
第2画像層2ndIMGは、第2背景層2ndW上に形成され、dirB側から視認可能な画像を形成している。第2画像層2ndIMGが表現する画像は、第2背景層2ndWおよび遮光層BKにより明瞭に表現される。
【0062】
このように、光透過性を有する記録媒体M上に、第1画像層1stIMG、第1背景層1stW、遮光層Bk、第2背景層2ndWからなる中間層int、第2画像層2ndIMGを順次形成することにより、dirA側、dirB側の両面から視認可能な印刷物を得ることができる。
【0063】
図示しているように、記録媒体M上に最初に形成される第1画像層1stIMGでは、インクが吐出された部分が盛り上がるので、インクが吐出されなかった部分との間で高低差を生じることになる。この高低差は、中間層intの吐出によっても解消されず、第2画像層2ndIMGの形成にも影響を与え、第2画像層2ndIMGを視認すると、第1画像層1stIMGによって生じたレリーフ状の陰影が目視されることになり、印刷物としての品質を劣化させている。
【0064】
図4は、図3に示した印刷物のような品質劣化を防止するための制御部13の機能構成の一部を示すブロック図である。制御部13は、光透過性を有する記録媒体Mに対して第1画像層1stIMG、中間層int、第2画像層2ndIMGを形成するため、ラスタライズ部13a、中間層データ生成部13b、スクリーニング処理部13c、ドライバ13dを備えている。
【0065】
ラスタライズ部13aは、制御部13に入力された画像データimgに対してインクジェット印刷装置1の記録に適した色変換を伴うラスタライズ処理を行なう。ラスタライズ部13aは、画像データimgがビットマップ形式のデータならば、色変換処理のみを行なってRIPPedデータRIPimgに変換し、スクリーニング処理部13cに転送する。画像データimgがページ記述言語形式のデータならば、ベクタ−ラスタ変換および色変換を行なったビットマップ形式のRIPPedデータRIPimgに変換した上で、スクリーニング処理部13cに転送する。
ラスタライズ部13aが変換したRIPPedデータRIPimgは、各画素の各色の画素値が0〜255のいずれかの階調レベルにて表現され、実質的に、記録媒体M上の各位置における単位面積当たりの各色のインクの付与量(以下、インクの付与量と称する)を示している。
ラスタライズ部13aは、第1画像層1stIMGを形成するための画像データimg1に対してラスタライズ処理を行なってRIPPedデータRIPimg1に変換する。また、第2画像層2ndIMGを形成するための画像データimg2に対してラスタライズ処理を行なってRIPPedデータRIPimg2に変換する。
【0066】
中間層データ生成部13bは、中間層intを形成するための中間層データintimgを生成する。制御部13は、光透過性を有する記録媒体Mに対して記録を行なう場合に、中間層int形成が必要であるとされた場合、記録媒体Mに対してインクジェットヘッド11aWおよび11aKによるインク吐出を行なうためのデータをそれぞれ生成する。
【0067】
中間層データ生成部13bは、中間層intを形成する複数の層である第1背景層1stWおよび第2背景層2ndWを形成するため、全画素の階調値が「255」である第1背景データWimg1、第2背景データWimg2を生成する。
【0068】
一方、遮光層Bkを形成するため、中間層データ生成部13bは、やはり全画素の階調値が「255」である遮光データBkimgを生成する。さらに、中間層データ生成部13bは、遮光層Bkに複数の凸部を形成するため、該凸部の形状および配置に対応する領域に位置する画素については階調値を「255」以上とする。階調値は「255」以上であればよく、ここでは説明の都合上「511」とするが、この数値には限定されない。
すなわち、通常の画像データにおいて階調値「255」以上を指定しても、階調値が「255」で飽和するのでインクの付与量が増加するだけで表現上の意味は持ち得ない。しかし、本発明に関わるインクジェット印刷装置1は、遮光層Bkにおいてインクの付与量を増加させることにより複数の凸部を形成するために、中間層データ生成部13bが階調値「255」の領域と階調値が「511」の領域を有する遮光データBkimgを生成するのである。
【0069】
中間層データ生成部13bは、作成された第1背景データWimg1、第2背景データWimg2および遮光データBkimgを中間層データintimgとして、スクリーニング処理部13cに転送する。
【0070】
スクリーニング処理部13cは、RIPPedデータRIPimgおよび中間層データintimgに対して、記録媒体Mに画像層および中間層を形成するための網点化処理を行なう。RIPPedデータRIPimg1、RIPimg2は、スクリーニング処理部13cでそれぞれ網点化処理を行なわれることにより、第1画像出力データPimg1、第2画像出力データPimg2に変換される。
第1画像出力データPimg1、第2画像出力データPimg2は、それぞれ多値で表現されたある領域の階調を該領域に集積する2値のドット数で表現したデータである。第1画像出力データPimg1、第2画像出力データPimg2は、ドライバ13dで画像出力信号に変換され、記録部11および搬送部12に対して出力されることにより、記録媒体M上に第1画像層1stIMG、第2画像層2ndIMGを形成する。
【0071】
スクリーニング処理部13cは、中間層データintimgについても網点化処理を行なう。スクリーニング処理部13cは、中間層データintimgに含まれる第1背景データWimg1、第2背景データWimg2について、それぞれ網点化処理を行ない、第1背景出力データPWimg1、第2背景出力データPWimg2に返還する。第1背景出力データPWimg1、第2背景出力データPWimg2は、第1画像出力データPimg1および第2画像出力データPimg2同様、それぞれ多値で表現されたある領域の階調を該領域に集積する2値のドット数で表現したデータである。
第1背景出力データPWimg1、第2背景出力データPWimg2もまた、ドライバ13dで画像出力信号に変換され、記録部11および搬送部12に対して出力されることにより、記録媒体M上に第1背景層1stWおよび第2背景層2ndWを形成する。第1背景データWimg1、第2背景データWimg2の全画素の階調値は「255」なので、第1背景出力データPWimg1、第2背景出力データPWimg2によるインクジェットヘッド11aWは白100%となるようなインク吐出を行なう。
【0072】
また、遮光データBkimgもまた、スクリーニング処理部13cで網点化処理が行なわれ、遮光出力データPBkimgに変換される。遮光出力データPBkimgもまた、ドライバ13dで画像出力信号に変換され、記録部11および搬送部12に対して出力されることにより、記録媒体M上に遮光層Bkを形成する。
ここで、他の出力データと遮光出力データPBkimgが異なる点は、遮光データBkimgの画素値において、黒100%の吐出を行なうことになる「255」の領域と、複数の凸部を形成するために黒200%の吐出を行なう「511」の領域が混在していることである。すなわち、画素の階調値が実質的に記録媒体M上の各位置における単位面積あたりのインクの付与量となることから、インク吐出及び固化による凸部形成には、100%以上のインク吐出が必要となるため、スクリーニング処理部13cは、RIPPedデータRIPimgや背景データWimgならば「255」以上の階調値が指定されている画素であっても「255」として取り扱うのに対して、遮光出力データPBkimg変換時は「255」以上の階調値が指定されていた場合、該階調値に則したインク吐出量となるように変換を行なう。
それにより、遮光出力データPBkimgによるインクジェットヘッド11aKは、通常の遮光層Bkを形成するための黒100%となるインク吐出と、複数の凸部を形成するための黒200%となるインク吐出を行なう。
【0073】
図5は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
ステップS1において、制御部13のラスタライズ部13aが、第1画像層1stIMGを形成するための画像データimg1、第2画像層2ndIMGを形成するための画像データimg2に対してラスタライズ処理を行ない、RIPPedデータRIPimg1およびRIPimg2に変換する。
【0074】
ステップS2では、記録媒体Mが光透過性を有する場合に、中間層intを形成するため、中間層データ生成部13bが第1背景データWimg1、第2背景データWimg2、および遮光データBkimgを生成する。
【0075】
ステップS3において、スクリーニング処理部13cがRIPPedデータRIPimg1に対して網点化処理を行なって変換した第1画像出力データPimg1について、ドライバ13dが画像出力信号に変換し、記録部11と搬送部12とを動作して、記録媒体M上に第1画像層1stIMGを形成する。
ドライバ13dが変換した画像出力信号は、記録ヘッド保持軸11bに保持された記録ヘッド11aを主走査方向に往復移動させるとともに、記録ヘッド11aのインクジェットヘッド11aK、11aC、11aM、11aYによるインク吐出、およびテーブル移動部12bによる搬送テーブル12aの副走査方向の移動を実行する。
記録ヘッド11aが主走査方向に往復移動しながら、CMYKのインクを吐出・固化し、テーブル移動部12bが搬送テーブル12aに載置された記録媒体Mを副走査方向に移動させることにより、記録媒体M上に第1画像層1stIMGが形成される。
【0076】
ステップS4で、第1画像層1stIMG上に中間層intを形成するため、スクリーニング処理部13cが中間層データintimgに含まれる第1背景データWimg1について網点化処理を行なって変換した第1背景出力データPWimg1について、ドライバ13dが画像出力信号に変換し、記録部11と搬送部12とを動作して、第1画像層1stIMG上に第1背景層1stWを形成する。
ステップS3同様に、第1背景出力データPWimg1をドライバ13dが変換して得られる画像出力信号に基づいて、インクジェットヘッド11awが白100%の吐出を行なって第1背景層1stWを形成するように記録部11および搬送部12が動作する。
【0077】
ステップS5において、スクリーニング処理部13cが中間層データintimgに含まれる遮光データBkimgについて網点化処理を行なって変換した遮光出力データPBkimgについて、ドライバ13dが画像出力信号に変換し、記録部11と搬送部12とを動作して、第1背景層1stW上に遮光層Bkを形成する。
遮光出力データPBkimgをドライバ13dが変換して得られる画像出力信号に基づいて記録部11および搬送部12が動作するのはステップS4同様だが、ステップS5ではインクジェットヘッド11aKの吐出は黒100%のみならず、複数の凸部を形成する領域については黒200%を吐出することで遮光層Bkが形成される。
【0078】
ステップS6で、スクリーニング処理部13cが中間層データintimgに含まれる第2背景データWimg2について網点化処理を行なって変換した第2背景出力データPWimg2について、ドライバ13dが画像出力信号に変換し、記録部11と搬送部12とを動作して、遮光層Bk上に第2背景層2ndWを形成する。
ステップS4同様に、第2背景出力データPWimg2をドライバ13dが変換して得られる画像出力信号に基づいて、インクジェットヘッド11awが白100%の吐出を行なって第2背景層2ndWを形成するように記録部11および搬送部12が動作する。
【0079】
ステップS7において、スクリーニング処理部13cがRIPPedデータRIPimg2に対して網点化処理を行なって変換した第2画像出力データPimg2について、ドライバ13dが画像出力信号に変換し、記録部11と搬送部12とを動作して、第2背景層2ndW上に第2画像層2ndIMGを形成する。
ステップS3同様に、第2画像出力データPWimg2をドライバ13dが変換した画像出力信号に基づいて、記録ヘッド11aのインクジェットヘッド11aK、11aC、11aM、11aYがインク吐出を行なって第2画像層2ndIMGが形成するように記録部11および搬送部12が動作する。
【0080】
その結果、光透過性を有する記録媒体Mに、複数の凸部を有する中間層を間に挟んで、第1画像層および第2画像層が形成されることにより、一方向からの印刷で表裏画像を視認することができる印刷物が製造される。
【0081】
図6は、記録媒体Mに第1画像層、複数の凸部を形成した中間層、第2画像層を形成した状態を説明するための図である。
図3同様に、記録媒体M上に形成された第1画像層1stIMGは、インクが吐出された部分、すなわち画素の階調値が高くインクの付与量が高い部分について盛り上がり、インクが吐出されなかった部分との間で高低差が生じている。白100%の吐出を行なった第1背景層1stWは、第1画像層1stIMGの高低差の影響を受け、やはり高低差が生じている。
【0082】
遮光層Bkもまた第1背景層1stWひいては第1画像層1stIMGの影響を受け高低差が生じているが、第1背景層1stWと異なり、遮光層Bkは黒100%の吐出が行なわれた領域と、黒200%の吐出が行なわれた領域が混在しており、黒200%の吐出が行なわれた部分はさらにインク付与量が高くなっているため、第1画像層1stIMGの影響とは別に盛り上がることで凸部を形成している。このため、遮光層Bkの形成された領域では、第1画像層1stIMGの影響を受けた高低差に加え、形成した凸部による高低差も生じている。
【0083】
遮光層Bk上に形成される白100%の吐出を行なった第2背景層2ndWは、当然遮光層Bkの影響を受けており、第1画像層1stIMGの高低差や遮光層Bkの高低差に対応した高低差が生じており、さらに第2背景層2ndWの上に形成される第2画像層2ndIMGは、画像形成のためのインク吐出によって生じた高低差に加え、第1画像層1stIMGの高低差や遮光層Bkの高低差の影響が現れることになる。
【0084】
このとき、遮光層Bkが有する複数の凸部による高低差が、第1画像層1stIMGの高低差や第2画像層2ndIMGの高低差よりも目立つため、相対的にレリーフ状の凹凸が目立たなくなるので、比較的視認性が向上した印刷物が製造されることになる。
【0085】
図7は、記録媒体Mにおいて、遮光層Bkに球帯状の凸部d1を複数個、連続的に形成した状態を示すための図である。ここで、球帯は上底部の半径a=0とする球冠を含むものとし、図7でも球冠として球帯状の凸部d1が形成された状態を示している。記録媒体Mに対して、下底部の半径bを1.5mm〜5mmとした複数の凸部d1を遮光層Bkに連続的に形成することにより、第2画像層2ndIMGにおいては円状のエンボス加工がなされたかのような印刷物を得ることができる。
これにより、印刷物の視認者が第2画像層2ndIMGを視認した場合、第1画像層1stIMGの形成によって生じたレリーフ状の凹凸よりもエンボス加工様の球帯に目が行くことで、印刷物としての視認性は比較的向上していることになる。
なお、遮光層Bkに形成した球帯状の複数の凸部d1について、図7に示すように所定の角度を付与して形成するようにしてもよい。
【0086】
図8は、記録媒体Mにおいて、遮光層Bkに畝状の凸部d2を複数個、連続的に形成した状態を示すための図である。記録媒体Mに対して、幅3mm〜10mm程度の複数の畝状の凸部d2を遮光層Bkに連続的に形成することにより、第2画像層2ndIMGにおいては線状のエンボス加工がなされたかのような印刷物を得ることができる。
これにより、印刷物の視認者が第2画像層2ndIMGを視認した場合、第1画像層1stIMGの形成によって生じたレリーフ状の凹凸よりもエンボス加工様の線に目が行くことで、印刷物としての視認性は比較的向上していることになる。
なお、遮光層Bkに形成した畝状の複数の凸部d2について、図8に示すように所定の角度を付与して形成するようにしてもよい。
【0087】
図9は、記録媒体Mにおいて、遮光層Bkに図7と同様の球帯状の凸部d3を複数個、ランダムに形成した状態を示すための図である。記録媒体Mに対して、下底部の半径bを1.5mm〜5mmとした複数の凸部d3を遮光層Bkにランダムに形成しても、第2画像層2ndIMGにおいては円状のエンボス加工がなされたかのような印刷物を得ることができるので、印刷物としての視認性は比較的向上していることになる。
【0088】
図10は、中間層データ生成部13bが遮光層Bkimgを生成する際に、複数の凸部の形状として、種々の形状を選択可能であることを示すための図である。
中間層データ生成部13bは、遮光層Bkに形成される複数の凸部について所望に応じた形状やサイズを選択可能とするための複数の形状データを有している。図10では、複数の凸部の形状として、「dot1(円状)」、「dot2(角状)」、「hill1(直線状)」、「hill2(波形状)」が選択できることを図示している。また、サイズについても別途設定可能とする。
【0089】
このように、図4に示した制御部13を有するインクジェット印刷装置1が図5に示したフローチャートのように動作することで、光透過性を有する記録媒体Mにおいて、表裏画像を表現する第1画像層1stIMGと第2画像層2ndIMGとの間に形成された中間層intの第2画像層2ndIMGと接する面に所定の形状を有する複数の凸部が形成されるので、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0090】
〈第2の実施形態〉
これまでに説明したインクジェット印刷装置1では、制御部13において、中間層データ生成部13bで生成された中間層データintimgについて、スクリーニング処理部13cで網点化処理を行なうものとしてきたが、中間層データintimgについては網点化処理を行なわない構成としてもよい。
【0091】
図11は、インクジェット印刷装置1の制御部130を説明するための図である。制御部130は、これまでに説明を行なってきた制御部13の別態様である。
なお、制御部130が備えるラスタライズ部130a、スクリーニング処理部130cについては、ラスタライズ13a、スクリーニング処理部13cと同様の機能を有するので、説明を省略する。
【0092】
中間層データ生成部130bは、中間層データintimgとして第1背景層データ、第2背景層データとなるWimg1、Wimg2、遮光層Bkとなる遮光データBkimgを生成するほかに、凸部データdimgを生成する。
凸部データdimgは、遮光層Bkに複数の凸部を形成するためのデータであり、凸部となる領域の画素について階調値「255」が設定されており、それ以外の領域における画素の階調値は「0」とされている。
【0093】
第1背景層データWimg1、第2背景層データWimg2、遮光データBkimg同様に、凸部データdimgもスクリーニング処理部130cで網点化処理を行ない、凸部出力データPdimgに変換してドライバ130dに送信する。
【0094】
それにより、インクジェット印刷装置1は、光透過性を有する記録媒体M上に第1画像層1stIMG、第1背景層1stW、遮光層Bkを形成した後で、凸部出力データPdimgに基づく吐出を行ない凸部層DBを形成する。凸部出力データPdimgは、前述のとおり、凸部となる領域についてインクを付与し、それ以外の領域についてはインクを付与しない出力データであることから、遮光層Bk上に凸部出力データPdimgに基づく凸部層DBが形成されることになる。
凸部層DB形成後、インクジェット印刷装置1は第2背景層2ndW、第2画像層2ndIMGを形成することにより、表裏から視認可能な印刷物を製造する。
【0095】
このように、遮光層Bk上に凸部層BKが形成されていることから、第2画像層2ndIMGに接する中間層int上に所定の形状を有する複数の凸部が形成されていることになり、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0096】
〈変形例〉
ここまでの説明では、遮光層Bkを黒100%としてきたが、遮光層Bkの網%は100%に限定されない。すなわち、所定の形状を有する複数の凸部を形成する領域における画素について階調値を「255」とし、それ以外の領域における画素について階調値を「127」とすると、遮光層Bkの網%について、所定の形状を有する複数の凸部を形成する領域の網%が100%となり、それ以外の領域における網%が50%となる。
このような処理を行なったとしても、第2画像層2ndIMGに接する中間層int上に所定の形状を有する複数の凸部が形成されていることになり、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0097】
ここまでの説明では、遮光層Bkを黒100%としてきたが、十分な遮光効果が得られる場合には遮光層Bkをkインク単独ではなく、Y、M、Cインクによる混色で構成するようにしてもよい。この場合、遮光層Bkを黒100%、所定の形状を有する複数の凸部を形成する領域を黒200%としたのと同様に、遮光層BkをY100%、M100%、C100%のインク吐出で構成し、所定の形状を有する複数の凸部を形成する領域についてはY200%、M200%、C200%で構成すると、インクを吐出するためのパス数を削減でき、生産性向上に繋がる。
このような処理を行なったとしても、第2画像層2ndIMGに接する中間層int上に所定の形状を有する複数の凸部が形成されていることになり、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0098】
ここまでの説明では、所定の形状を有する複数の凸部について遮光層Bkに形成するものとして説明を行なってきたが、第1背景画像層1stW乃至第2背景画像層2ndWによる遮光効果が十分期待できる場合、あるいは化粧品などの宣伝媒体として白領域が多い場合は、所定の形状を有する複数の凸部を遮光層Bkを備えることなく、第1画像層1stIMG上に第1背景画像層1stWのみを形成し、該第1背景画像層1stWに所定の形状を有する複数の凸部を形成するようにしてもよい。このような処理においても、第2画像層2ndIMGに接する中間層int上に所定の形状を有する複数の凸部が形成されていることになり、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0099】
また、ここまでの説明では、一つのインクジェット印刷装置1を使用して光透過性を有する記録媒体Mに対する印刷を行なう処理を行なってきたが、インクジェット印刷装置の数は1に限定されない。
【0100】
すなわち、記録媒体Mに第1画像層1stIMGのみを形成するインクジェット印刷装置、第1画像層1stIMG形成後に中間層intのみを形成するインクジェット印刷装置、中間層int形成後に第2画像層のみを形成するインクジェット印刷装置を備える印刷システムによって、第2画像層2ndIMGに接する中間層int上に所定の形状を有する複数の凸部が形成されていることになり、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現するようにしてもよい。
さらに、一台目のインクジェット印刷装置によって記録媒体Mに対して第1画像層1stIMG形成後、二台目のインクジェット印刷装置で中間層intを形成した記録媒体Mを再度一台目のインクジェット印刷装置に戻して第2画像層2ndIMGを形成するような印刷システムによっても、第2画像層2ndIMGに接する中間層int上に所定の形状を有する複数の凸部が形成されていることになり、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
なお、このような場合、各インクジェット印刷装置の記録ヘッドは、主走査に比較的時間のかかるシャトル式よりも、比較的短時間で主走査を行なうワンパス式が好ましい。
【0101】
加えて、光透過性を有する記録媒体Mに対して第1画像層1stIMG、第2画像層2ndIMGを形成する印刷装置は、インクジェット印刷装置に限定されない。
例えば、第1画像層1stIMG、第2画像層2ndIMGを形成する印刷装置はグラヴィア印刷機であり、第1画像層1stIMGをグラヴィア印刷で形成後、インクジェット印刷装置で中間層intを形成し、第2画像層2ndIMGを再びグラヴィア印刷で形成するなどの手法を採用してもよい。このような手法であっても、第2画像層2ndIMGに接する中間層int上に所定の形状を有する複数の凸部が形成されていることになり、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【0102】
また、ここまでの説明では、遮光層Bkにおける所定の形状を有する複数の凸部を形成するためのインクの付与量の根拠を画素の階調値に求めてきたが、所定の形状を有する複数の凸部を形成すべき領域について、インク付与量を指定するようにしてもよい。
また、領域に応じて、遮光層Bkにおける所定の形状を有する複数の凸部の形状を変更して形成するようにしても良い。
あるいは、領域に応じて、遮光層Bkにおける所定の形状を有する複数の凸部の配置密度を変更して形成するようにしてもよい。
これらのようにすれば、テクスチャが高い領域については遮光層Bkに形成される所定の形状を有する複数の凸部の形状、サイズを変更することができ、印刷物の表現を不必要に低下させることがなく、遮光層Bk上に凸部層BKが形成されていることから、第2画像層2ndIMGに接する中間層int上に所定の形状を有する複数の凸部が形成されていることになり、第1画像層1stIMGを形成するに際して生じたレリーフ状の凹凸が第2画像層2ndIMGにおいて目立たなくなるような比較的容易に視認性が向上した印刷物を実現することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 インクジェット印刷装置
11 記録部
12 搬送部
13、130 制御部
13a、130a ラスタライズ部
13b、130b 中間層データ生成部
13c、130c スクリーニング処理部
13d、130d ドライバ
第1画像層 1stIMG
第1画像出力データ Pimg1
第1背景層 1stW
第1背景データ Wimg1
第1背景出力データ PWimg1
第2画像層 2ndIMG
第2画像出力データ Pimg2
第2背景層 2ndW
第2背景データ Wimg2
第2背景出力データ PWimg2
遮光層 Bk
遮光データ Bkimg
遮光出力データ PBkimg
凸部データ dimg
凸部出力データ Pdimg
中間層 int
中間層データ intimg
光透過性を有する記録媒体 M

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物であって、
光透過性を有する記録媒体と、
前記記録媒体上に形成された第1画像層と、前記第1画像層上に形成された中間層と、前記中間層上に形成された第2画像層と、
を有し、
前記中間層は、前記第2画像層と接する面に所定の形状を有する複数の凸部を備えること、を特徴とする印刷物。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷物であって、
前記中間層が均一な色の遮光層を含み、前記遮光層に所定の形状を有する複数の凸部を形成することにより、前記中間層が前記第2画像層と接する面に所定の形状を有する複数の凸部を備えること、
を特徴とする印刷物。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷物であって、
前記中間層は前記第2画像層と接する面に所定の形状として球帯状に形成された複数の凸部を備えること、
を特徴とする印刷物。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷物であって、
前記中間層は前記第2画像層と接する面に所定の形状として畝状に形成された複数の凸部を備えること、
を特徴とする印刷物。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷物であって、
前記中間層は前記第2画像層と接する面に連続的に形成された所定の形状を有する複数の凸部を備えること、
を特徴とする印刷物。
【請求項6】
請求項1に記載の印刷物であって、
前記中間層は前記第2画像層と接する面にランダムに形成された所定の形状を有する複数の凸部を有すること、
を特徴とする印刷物。
【請求項7】
請求項1に記載の印刷物であって、
前記第1画像層、中間層、第2画像層が、硬化性インクにより形成されたこと、
を特徴としている。
【請求項8】
印刷物の製造方法であって、
光透過性を有する記録媒体上に、第1画像層を形成する工程と、
前記第1画像層上に、所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成する工程と、
前記中間層上に、第2画像層を形成する工程と、
を有することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷物の製造方法であって、
前記中間層を形成する工程において、
前記中間層の少なくとも一部の層として均一な色の遮光層を形成し、前記遮光層に所定の形状を有する複数の凸部を形成すること、
を特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の印刷物の製造方法であって、
前記第1画像層を形成する工程が、前記第1画像を表現するための第1画像データに基づいて行なわれ、前記第2画像層を形成する工程が、前記第2画像を表現するための第2画像データに基づいて行なわれること、
を特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の印刷物の製造方法であって、前記中間層を形成する工程が、前記所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成するための中間層形成データに基づいて行なわれること、を特徴としている。
【請求項12】
請求項10に記載の印刷物の製造方法であって、
前記所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成する工程が、前記中間層を形成するための中間層形成データおよび該中間層形成データに含まれる凸部形成データに基づいて行なわれること、
を特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項13】
請求項8に記載の印刷物の製造方法であって、
前記第1画像層、中間層、第2画像層を形成する工程において、硬化性インクの微小液滴を前記記録媒体に対して吐出することにより、前記第1画像層、中間層、第2画像層が形成されること、
を特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項14】
印刷装置であって、
光透過性の記録媒体を搬送する搬送手段と、
搬送された前記記録媒体に対して、第1画像層および第2画像層を形成する画像層形成手段と、
搬送された前記記録媒体に対して、所定の形状を有する複数の凸部を備える中間層を形成する中間層形成手段と、
を有し、
前記記録媒体上に前記画像層形成手段が第1画像層を形成し、該第1画像層上に前記中間層形成手段が中間層を形成し、該中間層上に前記画像層形成手段が第2画像を形成すること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項15】
請求項14に記載の印刷装置であって、
前記中間層形成手段は、前記中間層の少なくとも一部の層として所定の形状を有する複数の凸部を備える均一な色の遮光層を形成すること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項16】
請求項14に記載の印刷装置であって、
前記画像層形成手段と前記中間層形成手段とが、一つの層形成手段として構成されていること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項17】
請求項16に記載の印刷装置であって、
前記搬送手段で搬送される記録媒体に対して、前記層形成手段が相対的に移動しながら前記第1画像層、中間層、第2画像層を形成すること、
を特徴とする印刷装置。
【請求項18】
請求項17に記載の印刷装置であって、
前記層形成手段が硬化性インクの微小液滴を前記記録媒体に対して吐出することにより、前記第1画像層、中間層、第2画像層を形成すること、
を特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−157987(P2012−157987A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17489(P2011−17489)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】