説明

印刷物とその抜き型

【課題】少なくとも二隅に丸いコーナーを有する二つの薄板片の連接部に抜きかすが残らないように打ち抜かれた印刷物とこの印刷物を印刷シートから打ち抜くための抜き型、を提供する。
【解決手段】厚紙またはプラスチックの薄板からなる長方形の第一の薄板片と第一の薄板片の一辺の延長上に切り離し可能に形成された連接部を介して第二の薄板片が連接された印刷物であって、前記第一の薄板片の四隅には丸型のコーナーが形成され、前記第二の薄板片の前記連接部を挟む二隅には斜め直線状に切り落とされた直線状のコーナーが形成された印刷物と、その抜き型を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二隅に丸いコーナーを有する二つの薄板片の連接部に抜きかすが残らないように打ち抜かれた印刷物と、この印刷物を打ち抜くための抜き型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックや厚紙を基材とした、「カードと説明書が一体となった印刷物」が多く利用されている。
前述のカードと説明書部分の境界には、切り取り易いようにカット部とアンカット部によるミシン目状の切り込みが形成されている。切り込みは、基材を貫通する切込みと、基材の途中で刃を止めるハーフカットによって行なわれ、同時に行なう場合は刃の高さを変えて行なう。
切り込みで切り離された状態で、多くのカードに見られるように、カードには四隅に同じ半径(3mm)のラウンドコーナー(以下、丸型コーナーともいう)が形成されている。
一方、説明書側にも、基材が厚手のプイラスチックなどの場合は、コーナー部に触れて怪我をしないように、少なくとも二隅が前述の丸型コーナー又はこれに近い形状でコーナーが形成されている。
【0003】
シート状の印刷物(多面付けされた印刷物)から曲線を有する印刷物、例えば、前述のカードを連接したような印刷物を作製する場合、後述する抜き型が使用され、型抜き(以下、打ち抜きともいう)によって作製される。
抜き型は、トムソン型、ビク型などといわれ、ベース(抜き刃を固定するための板)となるベニヤ板や樹脂板にレーザーで溝を形成し、その溝に前述の抜き刃を埋め込んで作製される。
図1と、図5を参照して、従来の印刷物の抜き刃の形状について説明する。
図5のa図、b図、c図は、抜き型のA部の従来の抜き刃の状態を図示したものである。
a図の抜き刃は、抜き型の基板に形成された溝(図2参照)に、第一の抜き刃310とその端部の延長上に連接刃330が埋め込まれ、その外側に形成された溝に第二の抜き刃320が埋め込まれたものである。
【0004】
b図の抜き刃は、抜き型の基板に三つの溝が形成され、第一の抜き刃310、連接刃330、第二の抜き刃320がそれぞれの溝に埋め込まれたものである。
c図の抜き刃は、a図の抜き刃に似ているが、抜き型の基板に形成された溝に、第一の抜き刃310が埋め込まれ、その外側に形成された溝に第二の抜き刃320とその端部の延長上に連接刃330が埋め込まれたものである。
【0005】
第一の抜き刃310も第二の抜き刃320もコーナー部が丸型になっているために、第一の抜き刃310と第二の抜き刃320の端部が溝に平行に埋め込まれた状態となり、大量に印刷物を抜くと、抜き刃310、320の間に隙間が発生し、A部を切り離す際に切り離し難くなる。
その結果、印刷物の基材がプラスチックシート(以下、プラスチック薄板ともいう)の場合、カードと説明書部のつなぎ目(以下、連接部ともいう)部分がきれいに打ち抜けない。その結果、印刷物の連接部がきれいに仕上がらないという問題が生じる。
【0006】
一方、プラスチック薄板であるポリエーテルスルフォン樹脂フィルムを液晶用基板として使用する際に、効率よく、高い寸法精度で打ち抜く方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−283292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1で開示されている技術は、少なくとも二隅に丸いコーナーを有する二つの薄板片の連接部に抜きかすが残らないように打ち抜く方法ではない。
本発明は、少なくとも二隅に丸いコーナーを有する二つの薄板片の連接部に抜きかすが残らないように打ち抜かれた印刷物とこの印刷物を印刷シートから打ち抜くための抜き型を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題の目的を達成するために、第一の発明の印刷物は、厚紙またはプラスチックの薄板からなる長方形の第一の薄板片と第一の薄板片の一辺の延長上に切り離し可能に形成された連接部を介して第二の薄板片が連接された印刷物であって、前記第一の薄板片の四隅には丸型のコーナーが形成され、前記第二の薄板片の前記連接部を挟む二隅には斜め直線状に切り落とされた直線状のコーナーが形成されたことを特徴とするものである。
【0010】
また、第二の発明は、第一の発明の印刷物を型抜きするための抜き型であって、前記抜き型は少なくとも、前記印刷物の外形と同形の溝が形成された基板と、前記溝に埋め込まれて印刷物の形状に打ち抜く帯状の抜き刃からなり、前記溝は基板を貫通する状態で形成され、前記抜き刃は前記溝に埋め込まれたときに、少なくとも刃の部分が基板の一方の面の外側に突出する高さに形成され、前記抜き刃は前記第一の薄板片の連接部を除く三辺と四隅の丸型のコーナー部を打ち抜くための第一の抜き刃と、前記第一の抜き刃の残る一辺である連接部を打ち抜くためのアンカット部が形成された連接刃と、前記連接刃の両端部に所定の角度で斜め直線状に突き当たる直線状のコーナーが形成された第二の薄板片の三辺を打ち抜くための第二の抜き刃で構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
また、第三の発明は、第二の発明において、第二の抜き刃のコーナー部の直線部と連接刃のなす角度は、15°〜60°であることを特徴とするものである。
【0012】
また、第四の発明は、第二の発明において、
使用される抜き刃は、いずれも刃の先端部が抜き刃の中央に形成される両刃であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
1)カード形状の第一の薄板片と第二の薄板片が連接部を介して連接された本発明の印刷物において、第二の薄板片の連接部を挟む二隅には斜め直線状に切り落とされたコーナーを形成することによって、第一の薄板片と第二の薄板片の連接部に抜きかすが発生せず、美しく型抜きされた印刷物を得ることができる。
2)基板に印刷物の外形と同形の溝を形成し、この溝に両刃の抜き刃を埋め込んだ抜き型の抜き刃を、(第一の薄板片部を打ち抜くための)第一の抜き刃と、(連接部を打ち抜くための)連接刃と、連接刃又は第一の抜き刃に対して斜め直線状に突き当たる(第二の抜き刃のコーナー部の直線部と連接刃のなす角度を15°〜60°とする)コーナーが形成された(第二の薄板片を抜くための)第二の抜き刃とすることによって、印刷物の第一の薄板片と第二の薄板片の連接部に「抜きかす」を発生させず、美しい印刷物を抜く抜き型とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の印刷物の一実施形態について説明するための平面図である。
【図2】抜き刃の一例について説明するための図である。
【図3】抜き刃のカット部とアンカット部について説明するための図である。
【図4】図1のA部の一例について説明するための図である。
【図5】図1のA部の他の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態である印刷物及びこの印刷物を打ち抜く抜き型について説明する。
【0016】
図1を参照して、本発明の印刷物の一実施形態について説明する。
本実施形態の印刷物1は、厚紙またはプラスチックの薄板からなる長方形の第一の薄板片11と第一の薄板片の一辺の延長上に切り離し可能に形成された連接部13を介して第二の薄板片12が連接されている。
第一の薄板片11の四隅には丸型のコーナー14が形成され、第二の薄板片12の連接部13を挟む二隅には斜め直線状に切り落とされた直線状のコーナー15が形成されている。
【0017】
第一の薄板片11はクレジットカードの大きさになっており、財布やカードケースに収納しやすい形状になっている。
図示していないが、カードの表裏には、カードの名称や、カードに関する説明書きなどが印刷されている。
また、連接部13には、第一の薄板片(以下、カード、又はカード部ともいう)11と第二の薄板片(以下、説明書き部ともいう)12が切り離されたときに凹凸の少ない切断面となるように複数個による、0.5mm程度の小さなアンカット部(以下、繋ぎともいう)とカット部による抜き刃で薄板片を貫通する切り込みが形成されている。
【0018】
また、図示しないが、第一の薄板片11の連接部以外の部分と、第二の薄板片12の連接部以外の部分にも長さが0.5mm程度の小さな繋ぎが形成され、打ち抜かれたときに製品となる部分と不要部とがばらばらにならないようにしている。
【0019】
印刷物1は、図1の左右のA部で切り離されるか、切り離す際に、多くは連接部13で折り曲げカード部11と注意書き部12に切り離す。そのときに、カード部11側のA部にも、注意書き部12側のA部にも、抜きかすが付着することはない。
【0020】
図2を参照して抜き型に使用される抜き刃の一例について説明する。
抜き型には、両刃の抜き刃3a、あるいは、片刃の抜き刃3bが使用される。
いずれの抜き刃もベニヤ板又はプラスチック製の基板に形成された溝21に埋め込まれ、抜き刃の、刃が形成された上端が基板2の片面に突出するように埋め込まれる。
本実施形態では、プラスチックの薄板を打ち抜くために、耐久性が高く、耐圧強度が強い両刃を使用している。
薄板の厚さや、製品の形状によって、両刃、片刃何れを使用してもよく、また、組み合わせて使用してもよい。
図示していないが、抜き刃の周辺に、抜き作業時に抜き刃から抜かれた印刷部が抜け易いようにスポンジを貼り付けて抜き作業を行う。
【0021】
図3を参照して、抜き刃のカット部とアンカット部について説明する。
図3は、抜き型を側面から見た図である。
前述のように、抜き型を作製する場合、基板に形成された溝21に埋め込まれ抜き刃の刃が基板2の片面に突出するようになっている。
突出した抜き刃の刃の部分(カット部)3cを切り欠いてアンカット部3uを形成するが、この部分は抜き刃で印刷物に切り込みが形成されたときに、印刷物の繋ぎ部分となる。
【0022】
図4は、本発明の抜き型のA部の抜き刃の状態を図示したものである。
印刷物1の抜き型の抜き刃は、抜き型の基板に形成された溝(図2参照)に、第一の抜き刃31とその端部の延長上に埋め込まれた連接刃33、その外側の溝に埋め込まれた第二の抜き刃32で構成される。
第一の抜き刃31はコーナー部が丸型になっているが、第二の抜き刃32は、所定の角度、例えば15°で斜め直線状に第一の抜き刃31または、連接刃の端部に突き当てられる。
【0023】
図4では、第二の抜き刃32は、第二の抜き刃32が連接刃33に直行する状態で連接刃33に向かい、連接刃33に突き当たる直前で鈍角に曲げられ、例えば105°で斜め直線状に第一の抜き刃31または、連接刃33の端部に15°の角度で突き当てられている。図とは異なり、連接刃33に突き当たる直前で丸く曲げられて、例えば105°で斜め直線状に第一の抜き刃31または、連接刃33の端部に15°の角度で突き当てられてもよい。
また、第一の抜き刃31とその端部の延長上に埋め込まれた連接刃33は、一本の溝に埋め込まれているが、カードの周辺に打ち抜きによる段差が生じないようにするためで、第一の薄板片の製品内容によって、第一の抜き刃31と連接刃33とは異なる溝に埋め込んで打ち抜くこともできる。
【0024】
上述の結果、カードと説明書部のつなぎ目部分に抜きかすが残ることなくきれいに打ち抜かれる。その結果、印刷物の連接部がきれいに仕上がる。
【0025】
(実施例)
印刷物は、厚さ0.5mmと0.8mmの乳白のPET(ポリエステル)Gシートを使用、0.8mm厚の両刃の抜き刃を使用し、図4のような抜き刃の構成で抜き型を作製し、平圧式の型抜き装置でテスト片(前述の印刷物に相当)を作製した、
テスト片を不要部分から切り離したが、連接部には「抜きかす」は残らず、厚さ0.5mmと0.8mmのテスト片いずれも、きれいに仕上げることができた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
少なくとも二隅に丸いコーナーを有する二つの薄板片が連接された印刷物を作製する抜き型と、抜かれた印刷物の作製に利用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 印刷物
2 基板
3、3a、3b 抜き刃
3c 抜き刃のカット部
3u 抜き刃のアンカット部
11 第一の薄板片(カード部)
12 第二の薄板片(注意書き部)
13 連接部
14 丸型コーナー
15 直線状コーナー
16 印刷部
31、310 第一の抜き刃
32、320 第二の抜き刃
33、330 連接刃


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚紙またはプラスチックの薄板からなる長方形の第一の薄板片と第一の薄板片の一辺の延長上に切り離し可能に形成された連接部を介して第二の薄板片が連接された印刷物であって、
前記第一の薄板片の四隅には丸型のコーナーが形成され、前記第二の薄板片の前記連接部を挟む二隅には斜め直線状に切り落とされた直線状のコーナーが形成されたことを特徴とする印刷物。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷物を型抜きするための抜き型であって、前記抜き型は少なくとも、前記印刷物の外形と同形の溝が形成された基板と、前記溝に埋め込まれて印刷物の形状に打ち抜く帯状の抜き刃からなり、
前記溝は基板を貫通する状態で形成され、前記抜き刃は前記溝に埋め込まれたときに、少なくとも刃の部分が基板の一方の面の外側に突出する高さに形成され、
前記抜き刃は前記第一の薄板片の連接部を除く三辺と四隅の丸型のコーナー部を打ち抜くための第一の抜き刃と、前記第一の抜き刃の残る一辺である連接部を打ち抜くためのアンカット部が形成された連接刃と、前記連接刃の両端部に所定の角度で斜め直線状に突き当たる直線状のコーナーが形成された第二の薄板片の三辺を打ち抜くための第二の抜き刃で構成されたことを特徴とする抜き型。
【請求項3】
請求項2に記載の抜き型において、
第二の抜き刃のコーナー部の直線部と連接刃のなす角度は、15°〜60°であることを特徴とする抜き型。
【請求項4】
請求項2に記載の抜き型において、
使用される抜き刃は、いずれも刃の先端部が抜き刃の中央に形成される両刃であることを特徴とする抜き型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−224065(P2012−224065A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96246(P2011−96246)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】