説明

印刷用紙

【課題】耐水性及び印刷適性に優れ、再生利用に必須な離解性に優れる印刷用紙を提供することである。
【解決手段】コロイダルシリカとガラス転移点が0℃以上、70℃以下のポリエステル樹脂を主成分とする耐水層上に、コロイダルシリカとアクリル系樹脂を主成分とするインキ受理層を有し、耐水層において、コロイダルシリカとポリエステル樹脂の質量比率が1:1〜1:4であり、インキ受理層において、コロイダルシリカとアクリル系樹脂の質量比率が、1:1〜1:2.5であることを特徴とする印刷用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙に関するものである。詳しくは、耐水性及び印刷適性に優れ、再生利用に必須な離解性に優れる印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
商業用の印刷方式、とりわけオフセット印刷方式は、出版物、広告、ポスターなどの広範囲の用途に用いられており、通常は印刷用紙として供給される紙に印刷が行われる。印刷用紙は、上質紙、中質紙、更紙、トレーシングペーパーなど塗工層の設けられていない一般紙と、コート紙、アート紙、キャスト紙など印刷適性を向上させたり、光沢を付与したり、色相を調整したりする機能を有する塗工層を設けた塗工紙に分類される。塗工紙の塗工層は、カオリンクレーや炭酸カルシウムなどの無機顔料とラテックスエマルジョンや澱粉、ポリビニルアルコールなどのバインダーを主成分として構成されるのが一般的である。
【0003】
木材繊維を主成分としたパルプを原料として抄造した紙に塗工層を設けた印刷用紙は耐水性に乏しい。特に雨に濡れる屋外や結露が起こりやすい壁に貼付されるポスター、水分量の多い製品や食品の近傍に置かれる可能性が高く、浸水しやすいラベル、タグ、POPなどに、耐水性の低い印刷用紙を用いることは難しいのが現状である。
【0004】
かような問題を解決する耐水性を付与した耐水シートとしては、紙支持体に無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂を熱ラミネートした複合紙タイプのものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、係る耐水シートは、無機充填剤を含まない熱可塑性合成樹脂層が少なくとも1層積層されているため、紙製品としての再生の工程において、係る熱可塑性合成樹脂層と紙支持体の分離が困難であり、再生紙として再生ができず、結果として焼却処理をせざるを得ない。
【0005】
耐水性シートの印刷適性を改良するもう1つの手段として、紙支持体に耐水性を付与するために熱可塑性樹脂を熱ラミネートにより設けて耐水性を発現させ、さらに印刷適性を向上させるためのインキ受理層を塗布して設ける方法がある。インキ受理層としてバインダーを多く含む塗布層を設けた場合(例えば、特許文献2参照)には、インキの吸収が十分ではなく、印刷物表面のインキの脱落が起こりやすい欠点を有する。この欠点を解決する手段としては、空気中の酸素によりベヒクルの重合、硬化が起こる酸化重合型インキや、印刷後の紫外線の照射により硬化するUV硬化型インキを使用する方法がある。しかし、酸化重合型インキは反応進行が遅く、硬化が現れるまで時間を要する。硬化に時間を要すると、裏面にインキが転写するなどの欠点がある。UV硬化型インキは、印刷機に高出力のUV照射装置を設置する必要があり、また、有害なオゾン発生などの副次的な欠点もある。また、バインダー成分が多いと、巻取状態あるいはシートを積み重ねた状態において裏面に貼り付く、所謂ブロッキングが起こりやすい。
【0006】
インキ受理層として、バインダー成分の他に無機顔料を添加する方法(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)では、印刷適性やブロッキング抑制に効果はあるが、ラミネート層との接着強度が弱いため、インキ受理層が印刷工程あるいは印刷後に脱落しやすい欠点を有している。また、耐水性の付与が目的で熱可塑性樹脂をラミネートした場合、紙製品としての再生の工程において、紙支持体の分離が困難であり、再生紙として再生ができず、結果として焼却処理をせざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2763011号公報
【特許文献2】特開2004−223882号公報
【特許文献3】特開2001−239741号公報
【特許文献4】特開2000−71596号公報
【特許文献5】特開2007−268720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐水性及び印刷適性に優れ、再生利用に必須な離解性に優れる印刷用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シート状の支持体の一方または両方に、コロイダルシリカとガラス転移点が0℃以上、70℃以下のポリエステル樹脂を主成分とする耐水層と、係る耐水層上にコロイダルシリカとアクリル系樹脂を主成分とするインキ受理層を有する印刷用紙により目的が達成される。
【0010】
耐水層において、コロイダルシリカとポリエステル樹脂の質量比率が1:1〜1:4であること好ましい。また、インキ受理層において、コロイダルシリカとアクリル系樹脂の質量比率が、1:1〜1:2.5であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明を実施することにより、耐水性及び印刷適性に優れ、再生利用に必須な離解性に優れる印刷用紙が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
印刷用紙において、耐水性を有し、かつ再生のために必要な離解性を有することは、これまでの技術では困難であった。つまり、印刷用紙の離解は、再生対象の印刷用紙を水中で機械的剪断を与え、印刷用紙を破断することにより達成される。離解された印刷用紙の再生は木材パルプ繊維以外の成分を除去し、再生対象となる木材パルプ繊維を得ることにより達成される。しかし、印刷用紙の耐水性を高めることにより、印刷用紙には水の浸透が起こらず、離解に必要な印刷用紙の破断を十分に行うことができず、印刷用紙の再生を行うことができない。
【0013】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、支持体上にコロイダルシリカとガラス転移点が0℃以上、70℃以下のポリエステル樹脂を主成分とする耐水層を設けることにより、高い耐水性と離解性を両立できることを見いだした。ポリエステル樹脂は一般に水に対しての膨潤性が低く、支持体にポリエステル樹脂を塗布することにより、高い耐水性を有することができるが、機械的な剪断に対する強度が高く、離解性を付与することは困難である。本発明では、ポリエステル樹脂にコロイダルシリカを添加することにより、耐水性を維持し、離解工程時の機械的な剪断でポリエステル樹脂が破断され易くなり、結果として、再生利用するのに十分な離解性を有することができる。ポリエステル樹脂中にコロイダルシリカを添加すると、ポリエステル樹脂を構造の連続相として、シリカ粒子が単分散あるいは凝集粒子として分散相が形成される。形成された耐水層は、離解の際の機械的な剪断を受けると、ポリエステルとシリカ粒子の界面に応力がかかり、硬度が低く連続相を形成するポリエステルが破断し、構造全体が破断され、離解性を発現する。
【0014】
本発明で用いるポリエステル樹脂のガラス転移点は、0℃以上、70℃以下である。ガラス転移点が0℃より低いと、常温で耐水層としての強度が十分ではなく、結果として耐水性の点で劣る。ガラス転移点が70℃を超えると、常温での樹脂の強度が高くなり、耐水層の離解性の点で劣る。本発明で用いるポリエステル樹脂としては、単一種でも複数種を組み合わせて用いてもよく、複数種を組み合わせて用いる場合は、ガラス転移点が同じ組み合わせやガラス転移点が異なる複数種のポリエステル樹脂を用いてもよい。ガラス転移点が異なる複数種のポリエステル樹脂を用いる場合は、通常のガラス転移点測定法により求められる混合ガラス転移点が0℃以上、70℃以下であればよい。
【0015】
本発明で用いるポリエステル樹脂は公知の製造技術によりジカルボン酸とジオールとをエステル化(エステル交換)、重縮合させることによって製造されるが、その製造方法についてはなんら限定されるものではない。
【0016】
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸またはそのエステル、アジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸またはこれらのエステルが使用できる。エステルを使用する場合には、メチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステルが使用でき、これらのエステルはモノエステルでもジエステルでも差支えない。
【0017】
ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類等が使用される。
【0018】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、疎水性のものも使用できるが、コロイダルシリカと混合時の分散安定性を考慮すると、ポリエステル樹脂は乳化分散した水系エマルジョンあるいは水溶性であることが好ましい。
【0019】
ポリエステル樹脂に水溶性を付与するために、親水性基を有する成分が共重合される。これらの具体例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分や、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。
【0020】
本発明に係る耐水層において使用されるコロイダルシリカとは、無水ケイ酸の超微粒子を水に分散させたコロイド溶液である。コロイダルシリカの粒子径は4〜100nmの範囲のものが使用される。これには、純粋な無水ケイ酸のコロイド溶液のみでなく、アルカリイオンによって電気二重層を形成し粒子間の反発により安定化した水分散液や、特殊な処理により界面活性剤や塩等を併用する物質やpH等の変化に対する安定性を向上させた水分散液がこれに含まれる。水性コロイド溶液の濃度は、15〜50質量%のものが使用される。本発明に係る耐水層に用いるコロイダルシリカは、単一種でも、粒子径や、コロイド溶液または水分散液のpH等が異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明に係る耐水層において、コロイダルシリカとポリエステル樹脂の質量比率は1:1〜1:4の範囲であることが好ましい。ポリエステル樹脂の質量比率が、1より小さいと、耐水層の硬度が高くなり、耐水層に亀裂を生じやすい。4より大きいと、耐水層の破断が起こりづらく、離解が困難になる。
【0022】
本発明においては、印刷適性を付与するために、耐水層上に、コロイダルシリカとアクリル系樹脂を主成分とするインキ受理層を設ける。アクリル系樹脂にコロイダルシリカを添加することにより、印刷適性が向上する。つまり、コロイダルシリカはインキ中のベヒクルと親和性が高く、インキ受理層のアクリル系樹脂中に分散されたコロイダルシリカは、インキ着肉を向上させる。アクリル系樹脂は、ベヒクルにより構造的な強度を失うことなく膨潤して相溶を高める効果を有し、結果として、インキの定着性を向上させる。つまり、係るインキ受理層においては、インキ着肉が良好であり、インキの定着性が良好であるため、印刷後の擦過による汚れや裏面転写などの問題がなくなる。同時に、係るインキ受理層は、ポリエステル樹脂にコロイダルシリカを添加した耐水層と同様に離解性も維持されるため、耐水紙の離解性を低下させることはない。
【0023】
本発明に係るインキ受理層において、コロイダルシリカとアクリル系樹脂の質量比率は1:1〜1:2.5であることが好ましい。アクリル系樹脂の質量比率が、1より小さいと、インキの定着性が低くなり、印刷面の擦過による汚れや枚葉印刷時の裏面転写の問題が起こりやすく、2.5より大きいと、インキの着肉が悪化し、耐水層の破断が起こりづらく、離解が困難になる。
【0024】
本発明におけるアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸アルキル共重合体、酢酸ビニル−メタクリル酸アルキル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸アルキル共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸アルキル共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸−アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸ジアルキルアミノアルキル−アクリルアミド共重合体、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキル共重合体等及びこれらの金属塩、アクリル酸−アクリル酸アルキル−アクリルアミド共重合体、アクリル酸−メタクリルアミド−スチレン酸共重合体、メタクリル酸−アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル共重合体、メタクリル酸金属塩−アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル共重合体、メタクリル酸−アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル−アクリルアミド共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル−アクリルアミド−スチレン共重合体、メタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸アルキル−アクリル酸アルキル−無水マレイン酸金属塩共重合体、アクリル酸アルキル−スチレン−無水マレイン酸金属塩共重合体、メタクリル酸アルキル−フマル酸共重合体、アクリル酸アルキル−イタコン酸共重合体等及びこれらの金属塩または変性物などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、本発明におけるアクリル系樹脂では、コロイダルシリカと混合時の分散安定性を考慮すると、乳化分散した水系エマルジョンあるいは水溶性であることが好ましい。
【0025】
本発明に係るインキ受理層おいて使用されるコロイダルシリカは、本発明に係る耐水層において使用されるコロイダルシリカと同様のものを使用することができる。但し、コロイダルシリカの粒子径や、コロイド溶液または水分散液のpH、粒子表面のイオン性等は本発明に係る耐水層に用いるコロイダルシリカと同じであっても、異なっていてもよい。インキ受理層に用いるコロイダルシリカは、単一種でも、粒子径や、コロイド溶液または水分散液のpH等が異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明に係る耐水層及びインキ受像層においては、コロイダルシリカ以外の無機顔料成分を添加することができる。例えば、沈降性、ゲル法、気相法により得られたシリカ、コロイダルアルミナ及びベーマイト、擬ベーマイトのアルミナ水和物、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどを添加することができる。
【0027】
耐水層においては、インキ受理層で用いるアクリル系樹脂を補助的バインダーとして加えることができる。インキ受理層においては、耐水層で用いられるポリエステル樹脂を補助的バインダーとして加えることができる。耐水層及びインキ受像層に加えることができるその他の補助的なバインダーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル系重合体ラテックス、塩化ビニリデン系共重合体ラテックス等あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性接着剤及びポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤、ゼラチン、酸化澱粉、カチオン化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジウムハライド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルエーテル、アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体及びそれらの塩、ポリエチレンイミン等の合成ポリマーを単独あるいは併用して加えることができる。
【0028】
インキ受理層及び耐水層の塗布液には、他に各種無機酸、有機酸、pH調整剤、バインダー、画像保存剤、着色剤、増粘剤、界面活性剤等適宜加えることができる。
【0029】
本発明における耐水層の厚みは、0.5〜25μmであることが好ましい。また、インキ受理層の厚みは、0.2〜15μmであることが好ましい。
【0030】
本発明における支持体としては、上質紙、中質紙、更紙、クラフト紙、印刷用コーテッド紙等、離解工程を経て再生利用可能な紙を用いることができる。支持体の厚みとしては、50〜300μmであることが好ましい。
【0031】
本発明における耐水層またはインキ受理層の塗布方法としては、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、エクストルージョンバー、カーテンコーター、エアナイフコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター、リップコーター、ワイヤーバーコーター、ブレードコーター、スライドホッパーコーター及びそれらの組み合わせ等が挙げられる。塗布された塗液の乾燥装置としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等各種乾燥装置を挙げることができる。
【0032】
本発明で得られる印刷用紙は、各方式の印刷方式で印刷を行うことができる。例えば、枚葉オフセット方式、輪転オフセット方式、グラビア方式、フレキソ方式、活版方式、スクリーン方式等を挙げることができるが、特に、枚葉オフセット方式で行うことが好ましい。
【0033】
オフセット印刷方式で用いられるインキとしては、制限は特にはない。例えば、一般的なプロセスインキに加えて、酸化重合型、紫外線硬化型などのインキを使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下では、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。%は特に説明のない限り質量%である。また部は、重量部である。
【0035】
(実施例1)
コロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックス20)に、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480 ガラス転移点20℃)が固形分2.00部となるように添加し、さらに水を添加して濃度を20%に調整して耐水層塗布液を得た。コロイダルシリカ(日産化学工業製、スノーテックス20)に、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分1.50部となるように添加し、さらに水を加えて濃度を23%に調整してインキ受理層塗布液を得た。
【0036】
坪量105g/m2の上質紙を支持体とし、耐水層塗布液を塗布層の厚みが8μmになるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布を行い乾燥後、さらに形成された耐水層上に、インキ受理層塗布液を、塗布層の厚みが4μmになるようにマイクログラビアコーターを用いて塗布を行い乾燥し、実施例1の印刷用紙を得た。
【0037】
(実施例2)
耐水層塗布液において、ポリエステル樹脂水分散物として、東洋紡製、バイロナールMD−1200(ガラス転移点67℃)を使用した以外は実施例1と同様の方法で実施例2の印刷用紙を得た。
【0038】
(実施例3)
耐水層塗布液において、ポリエステル樹脂水分散物として、東洋紡製、バイロナールMD−1335(ガラス転移点4℃)を使用した以外は実施例1と同様の方法で実施例3の印刷用紙を得た。
【0039】
(実施例4)
インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分0.90部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例4の印刷用紙を得た。
【0040】
(実施例5)
インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分1.15部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例5の印刷用紙を得た。
【0041】
(実施例6)
インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分2.40部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例6の印刷用紙を得た。
【0042】
(実施例7)
インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分2.62部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例7の印刷用紙を得た。
【0043】
(実施例8)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480(ガラス転移点20℃))が固形分0.90部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例8の印刷用紙を得た。
【0044】
(実施例9)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480(ガラス転移点20℃))が固形分1.10部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例9の印刷用紙を得た。
【0045】
(実施例10)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480(ガラス転移点20℃))が固形分3.80部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例10の印刷用紙を得た。
【0046】
(実施例11)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480(ガラス転移点20℃))が固形分4.20部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例11の印刷用紙を得た。
【0047】
(実施例12)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480(ガラス転移点20℃))が固形分0.90部となるように添加し、かつ、インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分0.90部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例12の印刷用紙を得た。
【0048】
(実施例13)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480(ガラス転移点20℃))が固形分0.90部となるように添加し、かつ、インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分2.62部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例13の印刷用紙を得た。
【0049】
(実施例14)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480(ガラス転移点20℃))が固形分4.20部となるように添加し、かつ、インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分0.90部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例14の印刷用紙を得た。
【0050】
(実施例15)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、ポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480(ガラス転移点20℃))が固形分4.20部となるように添加し、かつ、インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.00部に対して、アクリル系樹脂水分散物(日信化学製、ビニブラン2772)が固形分2.62部となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で実施例15の印刷用紙を得た。
【0051】
(比較例1)
耐水層塗布液において、ポリエステル樹脂水分散物として、東洋紡製、バイロナールMD−1500(ガラス転移点77℃)を使用した以外は実施例1と同様の方法で比較例1の印刷用紙を得た。
【0052】
(比較例2)
耐水層塗布液において、ポリエステル樹脂水分散物として、東洋紡製、バイロナールMD−1930(ガラス転移点−10℃)を使用した以外は実施例1と同様の方法で比較例2の印刷用紙を得た。
【0053】
(比較例3)
耐水層塗布液において、ポリエステル樹脂水分散物に換えて、日信化学製、ビニブラン2586(スチレン−アクリル共重合物の水分散物)を用いた以外は実施例1と同様の方法で比較例3の印刷用紙を得た。
【0054】
(比較例4)
耐水層塗布液において、ポリエステル樹脂水分散物に換えて、日信化学製、ビニブラン2684(アクリル重合物の水分散物)を用いた以外は実施例1と同様の方法で比較例4の印刷用紙を得た。
【0055】
(比較例5)
耐水層塗布液において、コロイダルシリカを添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で比較例5の印刷用紙を得た。
【0056】
(比較例6)
インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカを添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で比較例6の印刷用紙を得た。
【0057】
(比較例7)
インキ受理層塗布液において、アクリル系樹脂に換えて、耐水層塗布で使用したポリエステル樹脂水分散物(東洋紡製、バイロナールMD−1480 ガラス転移点20℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例7の印刷用紙を得た。
【0058】
実施例及び比較例で得られた印刷用紙は、耐水性、インキセット性、離解性の評価を行った。
【0059】
<印刷>
三菱重工製 ダイヤ3H−4 枚葉オフセット印刷機にて印刷を行った。インキは、DIC製FusionEZ Nタイプを使用した。
【0060】
<耐水性>
印刷された印刷用紙のブラック、シアン、マゼンタ、イエローの100%ベタ部を、JIS K7350−2試験法に基づき、Atlus CI4000耐候性試験機を用いて120時間の評価を行った。評価は目視で行い、下記のような基準とした。
○:印刷面の荒れがなく、初期の状態を維持しており問題がない。
△:僅かな印刷面の荒れや初期にはなかったべとつきが見られる。印刷物としては実用上、問題のないレベルである。
×:インキの剥離など印刷面が初期の状態と明らかに異なる状態であり問題がある。
【0061】
<インキセット性>
印刷された印刷用紙に関して、印刷完了後の15分後に、ブラック100%のチャートにA2コート紙(三菱製紙製、パールコートN 84.9g/m2を重ねて、さらに厚さ8mmで20mm×30mmの大きさのアルミプレートを載せ、プレスシュミレータを用いて5kgの加重を10秒間懸けた。A2コート紙に転写されたインキ部分を、反射光学濃度計(X−Rite 418)を用いて濃度測定を行った。評価の基準は、下記の通りである。
○:光学濃度0.06以下であり、セット性として問題ない。
△:光学濃度0.07〜1.10の範囲であり、印刷工程で注意すれば印刷可能である。
×:光学濃度1.10を超え、裏写りなどの問題が発生する。
【0062】
<離解性>
印刷用紙を50mm×200mmの大きさに裁断し試験片とし、水2000mlに対して、75gの試験片を投入して、TAPPI標準離解機で20分間撹拌、離解を行った。得られたスラリーから手漉きシートを作製して、下記の基準にて目視評価を実施した。
○:パルプ成分に1mm×1mm以上の未離解分はなく、離解性は良好である。
△:パルプ成分は概ね離解しているが、1mm×1mm以上の未離解分があるか、凝集塊がある。
×:明らかな未離解分があり、問題がある。
【0063】
【表1】

【0064】
結果を表1に示す。本発明の実施例1〜15に示すように、本発明によれば、耐水性、印刷適性、離解性に優れた印刷用紙を得ることができる。実施例8、12、13に示すように、耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.0部に対して、ポリエステル樹脂が固形分1.0部未満の場合には、耐水層にやや亀裂が入るため耐水性能がやや低下する。実施例11、14、15に示すように、耐水層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.0部に対して、ポリエステル樹脂が固形分4.0部を超える場合には、離解性がやや悪化する。実施例4、12、14に示すように、インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.0部に対して、アクリル系樹脂が固形分1.0部未満の場合には、インキセット性がやや低下する。実施例7、13、15に示すように、インキ受理層塗布液において、コロイダルシリカの固形分1.0部に対して、アクリル系樹脂が固形分2.5部を超える場合には、離解性がやや悪化する。比較例1に示すように、耐水層におけるポリエステル樹脂のガラス転移点が、70℃より高いと耐水層の強度が高すぎ、離解が困難となる。比較例2に示すように、耐水層におけるポリエステル樹脂のガラス転移点が0℃未満であると、耐水性が劣る結果となる。比較例3、4に示すように耐水層にポリエステル樹脂以外の樹脂を使用すると、耐水性の点で劣る。比較例5に示すように、耐水層にコロイダルシリカを使用しないと離解性が劣り、比較例6に示すように、インキ受理層にコロイダルシリカと使用しないとインキセット性が劣る。比較例7に示すように、インキ受理層にアクリル系樹脂以外の樹脂を使用するとインキセット性が劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の支持体の一方または両方に、コロイダルシリカとガラス転移点が0℃以上、70℃以下のポリエステル樹脂を主成分とする耐水層と、係る耐水層上にコロイダルシリカとアクリル系樹脂を主成分とするインキ受理層を有することを特徴とする印刷用紙。
【請求項2】
耐水層において、コロイダルシリカとポリエステル樹脂の質量比率が1:1〜1:4であることを特徴する請求項1記載の印刷用紙。
【請求項3】
インキ受理層において、コロイダルシリカとアクリル系樹脂の質量比率が1:1〜1:2.5であることを特徴とする請求項1または2記載の印刷用紙。

【公開番号】特開2011−208298(P2011−208298A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75919(P2010−75919)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】