説明

印刷用艶消し塗被紙の製造方法

【課題】印刷用艶消し塗被紙に関し、特にコスレ特に汚れ、傷の発生が少ない印刷用艶消し塗被紙の製造方法を提供する。
【解決手段】原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上設けた印刷用艶消し塗被紙の製造方法において、該原紙に使用される漂白パルプの50%以上が、ユーカリ材および/またはアカシア材を原料とするものであり、該漂白パルプが蒸解液を分割添加するクラフト蒸解法でパルプ化され、さらにオゾン漂白段を含む多段漂白処理工程で製造されたパルプであって、かつ該漂白パルプを含む紙料で抄紙された原紙を一度巻き取った後、再び繰り出して塗被液を塗被、乾燥する工程で塗被層が形成された後、または塗被層が形成された後に平滑化処理を行った後に、センタードライブ形式でロール状に巻き取ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用艶消し塗被紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
艶消し塗被紙は、意図的に白紙の表面光沢を低くし、印刷物として上品で深みのあるトーンを醸し出して高級感を与えるようにした塗被紙である。このような艶消し塗被紙は高級な美術印刷、高級ポスター、カタログ、カレンダー等に幅広く使用されている。一般に、艶消し塗被紙は2種類の方法で製造されている。その1つは通常のグロス系の塗被紙に使用される顔料(通常、平均粒子径で0.1〜2μm)に比べて、平均粒子径が大きく粗い顔料(通常、平均粒子径で0.4〜10μm)を配合した塗被液を原紙に塗被、乾燥して、そのまま製品化するか、あるいは軽度のカレンダー処理を行って製品化している。他の一つは、平滑に塗被された顔料塗被層表面に、粗面化カレンダーロールを用いてロールの有するミクロン単位の粗面を塗被層表面に転写して艶消しに仕上げる方法である。
【0003】
このようにして製造された艶消し塗被紙はその凹凸を有する表面のために、実用面で難点を抱えている。特に、大きな問題点として、白紙部が摩擦されることによってコスレ汚れあるいはコスレ光沢が発生し、製品価値が低下して、ひどい場合はユーザークレームとして、莫大な損失を被ることになる。
【0004】
前記艶消し塗被紙に特有なコスレ汚れの問題は、塗被層の顔料に粗いものを用いたり、あるいは、粗面化したカレンダーロールに通して凹凸付けを行ったりする結果、その塗被層表面は、グロス系塗被紙に比較して、大きな凹凸を有している。このことに起因して白紙部の凹凸が紙やすりのように作用して、コスレ汚れを起こしたり、部分的に光沢が発現したりして、欠陥として認識されたりするものと推定される。
【0005】
このため、塗工紙としては、コスレ汚れ、傷等の問題を回避する手段として、以下述べる方法が提案されている。顔料として平均粒子径が1.5μm以上のカオリン、デラミネーテッドカオリン、タルクのうちから選ばれる少なくとも1種の顔料を、全顔料に対し40質量%以上配合する方法(特許文献1参照)、カレンダー処理した印刷用艶消し塗被紙であって、と悲壮を形成する顔料としてカオリンを90質量部以上含有し、該カオリンのうち5〜15質量部のカオリンの平均粒子径を1.5μm以上とする方法(特許文献2参照)、顔料成分100質量%に対して、カオリンを60〜90質量%、および接着剤成分として特定の粒子径を有するスチレン−ブタジエン系共重合ラテックスを含む塗被液を塗被、乾燥後、カレンダー処理する方法(特許文献3参照)が提案されている。また、抄紙あるいは塗被された所謂ウェブをロール状に巻き取る装置等(特許文献4参照)の開示はあるものの、印刷用艶消し塗被紙におけるコスレ汚れ、コスレ光沢、傷等の適性の点で、更なる改良が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−31892号公報
【特許文献2】特開平9−273098号公報
【特許文献3】特開平10−140498号公報
【特許文献4】特開2003−146499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、印刷用艶消し塗被紙に関し、特にコスレ汚れや傷の発生が少ない印刷用艶消し塗被紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上設けた印刷用艶消し塗被紙の製造方法において、前記原紙に使用される漂白パルプの50%以上が、ユーカリ材もしくはアカシア材を原料とするものであり、該漂白パルプが蒸解液を分割添加するクラフト蒸解法でパルプ化され、さらにオゾン漂白段を含む多段漂白処理工程で製造されたパルプであって、かつ該漂白パルプを含む紙料で抄紙された原紙を一度巻き取った後、再び繰り出して塗被液を塗被、乾燥する工程で塗被層を形成された後、または塗被層が形成された後に平滑化処理を行った後に、センタードライブ形式で、ロール状に巻き取ることを特徴とする。
【0009】
前記原紙に形成される塗被層の内、最外顔料塗被層に含有する顔料が、平均粒子径が0.2〜1.2μmの範囲であるカオリンであり、かつ最外顔料塗被層の全顔料の60質量%を越えて含有し、さらに前記カオリンのうち、5質量%以上がデラミネーテッドカオリンであることが好ましい。
【0010】
前記デラミネーテッドカオリンが、下記の(a)〜(c)の全ての条件を満足することが好ましい。
(a)5μmより小さい粒子の割合が90〜100質量%。
(b)2μmより小さい粒子の割合が70〜90質量%。
(c)1μmより小さい粒子の割合が30〜70質量%。
【0011】
前記センタードライブ形式で巻き取られたロールを分割するワインダー工程において、該ワインダーがシングルドラムワインダー形式であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明における特定のパルプを使用した原紙を用い、かつ特定の巻取装置を使用して、印刷用艶消し塗被紙を製造することによって、コスレ汚れや傷の発生が少ない所望の効果が得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用されるパルプの原材料は、広葉樹材、針葉樹材、非木材のいずれでもよいが、紙に使用するパルプの50%以上は、必ずユーカリ材もしくはアカシア材を原料としたものでなければならない。ユーカリ材、アカシア材を原料としたパルプは、繊維幅が小さく、本発明の良好な白紙品質、および印刷品質を発現するためには欠かせないためである。ユーカリ材としては、E.camaldulensis、E.citriodora、E.deglupta、E.globulus、E.grandis、E.maculata、E.punctata、E.saligna、E.terelicornis、E.urophylla、E.camaldulensis等やこれらの交雑種が挙げられ、また、アカシア材としては、A.aulacocarpa、A.auriculiformis、A.catechu、A.crassicarpa、A.decurrens、A.holosericea、A.leptocarpa、A.maidenii、A.mangium、A.mearnsii、A.melanoxylon、A.neriifolia、A.silvestris、等やこれらの交雑種が挙げられる。
【0014】
本発明で使用されるパルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、必ず蒸解液を分割添加して蒸解する必要がある。蒸解液を分割添加することにより、蒸解全般でのアルカリ濃度を低く抑えることができ、材中のヘミセルロースの溶出が抑えられて、結果としてヘミセルロース含有率の高いパルプが得られるためであり、ヘミセルロース含有量の高いパルプを使用することも本発明の紙物性の発現に欠かせない事項の一つである。蒸解液を分割添加する蒸解法であれば、特に限定されるものではないが、Lo−solids法、Compact蒸解法、Kobudomari蒸解法、等の蒸解法は、蒸解時に使用するエネルギー量が少ない、製造されるパルプの漂白性がよい、といった付帯的な効果の点で、好適に用いられる。
【0015】
例えば、クラフト蒸解法を用いる場合、蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは15〜45%、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、蒸解温度は130〜170℃で、蒸解方式は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでもよく、特に問わない。
【0016】
蒸解に際して、使用する蒸解液に蒸解助剤として公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、あるいは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種あるいは2種以上が添加されてもよく、その添加率は材の絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%である。
【0017】
本発明では、公知の蒸解法により得られた未漂白パルプは、洗浄、粗選及び精選工程を経て、公知のアルカリ酸素漂白法により脱リグニンされる。アルカリ酸素漂白法で脱リグニンすることで、その後の多段漂白工程での漂白薬品使用量を削減でき、パルプの品質の損傷を最小限に留められるためである。本発明に使用されるアルカリ酸素漂白法は、公知の中濃度法或いは高濃度法がそのまま適用できるが、現在、汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15%で行われる中濃度法が好ましい。
【0018】
前記中濃度法によるアルカリ酸素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。
【0019】
酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15%であり、この他の条件は公知のものが適用できる。本発明では、アルカリ酸素漂白工程において、上記アルカリ酸素漂白を連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。
【0020】
アルカリ酸素漂白が施されたパルプは次いで洗浄工程へ送られる。パルプは洗浄後、多段漂白工程へ送られる。
【0021】
本発明の使用される漂白パルプを得るための多段漂白工程では、必ずオゾン漂白段(Z)が用いられる。オゾン漂白段を用いることで、ユーカリ材、アカシア材からのパルプ中に多く含まれるヘキセンウロン酸を分解でき、ヘキセンウロン酸に起因するパルプの色戻りを抑制できるためである。本発明のオゾン漂白段の処理条件は、特に限定されるものではないが、オゾンを過度に反応させた場合にはパルプ強度が損なわれるため、好ましくは、オゾンの添加率は絶乾パルプ質量当たり0.1%〜1.0%であり、さらに好適には0.3%〜0.7%である。処理温度は10℃〜100℃、好ましくは20℃〜70℃、処理時間は1秒〜60分、好ましくは10秒〜5分、処理pHは1.5〜7、好ましくは2〜4である。オゾン漂白段でのパルプ濃度は中濃度でも高濃度でもよく限定されるものではない。また、必要であれば、二酸化塩素、他の漂白薬品を併用することも可能である。
【0022】
本発明の多段漂白工程で使用できる漂白段は、オゾン漂白段を用いること以外は、特に限定されるものではなく、公知の漂白段を用いることができる。公知の漂白段として、二酸化塩素漂白段(D)、アルカリ抽出段(E)、酸素漂白段(O)、過酸化水素漂白段(P)、過酸漂白段(PA)、酸洗浄段(a)、酸処理段(A)等が挙げられる。多段漂白工程の一例を挙げると、Z−E−P−D、Z−E−D−P、Z−E−P−AP、A−Z−E−P−D、A−Z−E−D−P、A−Z−E−P−AP、a−Z−E−P−D、a−Z−E−D−P、a−Z−E−P−AP、Z/D−E−P−D、Z/D−E−D−P、Z/D−E−P−AP、A−Z/D−E−P−D、A−Z/D−E−D−PA−Z/D−E−P−AP、a−Z/D−E−P−D、a−Z/D−E−D−P、a−Z/D−E−P−AP、Z−EO−P−D、Z−EO−D−P、Z−EO−P−AP、A−Z−EO−P−D、A−Z−EO−D−P、A−Z−EO−P−AP、a−Z−EO−P−D、a−Z−EO−D−P、a−Z−EO−P−AP、Z/D−EO−P−D、Z/D−EO−D−P、Z/D−EO−P−AP、A−Z/D−EO−P−D、A−Z/D−EO−D−P、A−Z/D−EO−P−AP、a−Z/D−EO−P−D、a−Z/D−EO−D−P、a−Z/D−EO−P−AP、等が挙げられ、ハイホン部に洗浄段を設けることもできる。また、さらに漂白段を付け加えたり、別の漂白段を前記漂白段に組み込んで併用したりすることもでき、特に限定されるものではない。多段漂白後のパルプは、叩解工程、または抄紙工程へ送られる。
【0023】
本発明の特定のパルプは、繊維が細いので、単位米坪当たりの繊維本数が多くなって原紙平滑性が向上するため、得られる印刷用艶消し塗被紙表面が平滑となり、結果として白紙品質や印刷品質が向上するのはもちろんのこと、コスレ傷の発生をも効果的に防止できる。
【0024】
また、上記パルプに対して、本発明の効果を損なわない範囲で、砕木パルプ、加圧式砕木パルプ、リファイナ砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ、損紙などを適宜混合使用することができる。
【0025】
原紙を構成するパルプは叩解工程を経た後、スラリー状のパルプ水分散液である紙料として抄紙機に送られる。この紙料に対して、填料や、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。
【0026】
本発明で原紙の形成に使用される填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や、尿素・ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示でき、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。填料は2種類以上の混合使用も可能である。填料の配合量は、一般に紙(原紙)灰分が3〜20質量%の範囲になるように添加される。
【0027】
また、本発明で使用される内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系、ロジン系などのサイズ剤が挙げられる。また、歩留向上剤、濾顔料向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミイン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。また、本発明の効果を妨げない範囲で、パルプ繊維間結合の阻害機能を有する嵩高剤、柔軟剤を使用することも可能である。嵩高剤、柔軟剤の具体例としては、例えば、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、多価アルコールと脂肪酸エステル化合物のポリオキシアルキレン化合物、脂肪酸ポリアミドアミン、多価アルコール系界面活性剤、油脂系非イオン界面活性剤等が例示できる。かかる嵩高剤、柔軟剤の添加量は、一般に、乾燥重量対比でパルプに対して0.05〜2.0質量%程度である。
【0028】
原紙の抄造(フォーマー)形式としては特に限定されず、ツインワイヤーフォーマー、オントップフォーマー、ギャップフォーマー等が使用できる。1200m/分を超える高速での原紙抄造を行う場合、操業性ならびに得られる原紙の地合等の品質に優れるギャップフォーマー形式で抄造することが好ましい。
【0029】
原紙の抄紙条件について、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ抄紙等のいずれの方式でも良い。原紙には澱粉誘導体、ポリビニルアルコールあるいはポリアクリルアミド等の接着剤を用いて、通常のサイズプレス処理を施すこともでき、また、マシンカレンダー、ソフトカレンダー等による平滑化仕上げ処理を施すこともできる。サイズプレス装置としては、2ロールタイプ、ゲートロールタイプ、フィルム転写タイプなどが使用できるが、1000m/min以上の高速での操業の場合、操業性に優れるフィルム転写タイプのものが好ましい。これらの抄紙条件で抄紙された原紙の坪量としては、30〜150g/mの範囲が好ましい。
【0030】
本発明においては、抄紙工程で抄紙、乾燥された紙は、必要に応じてサイズプレス工程を経た後、原紙を一度巻き取った後、巻き取った原紙は再び繰り出され、塗被液を塗被、乾燥する塗被工程に供され、塗被層が形成された後、または塗被層が形成された後に平滑化処理を行った後に、センタードライブ形式でロール状に巻き取る。このセンタードライブロール形式は、他の形式と比較して、巻取のコスレ傷、光沢ムラの発生が起こりにくく、また巻取への空気巻き込みも起こりにくいため、巻取の欠陥を防止できる。なお、原紙を巻き取る際にも、センタードライブ形式で巻き取ってもよい。
【0031】
以下、センタードライブロール方式について説明する。
リールでは、走行している紙シートはリールスプールに巻き付けられ、リールドラムに押し付けられながら巻き取られることで巻取が形成される。リールにおける駆動形態としては、リールスプールが、チャックを介して駆動系と接続され、巻取の回転駆動を担う形態であるセンタードライブロール形式が使用される。
【0032】
走行中の紙シート巻取が押し付けられるリールドラムの材質は、金属性、樹脂製、セラミック性の物等が使用可能であるが、長時間連続で、高速で使用されるため、リールドラムの主材質としては金属製の物が用いられる。
【0033】
巻取中の巻取表面に接触させた状態で回転し、巻取中のウエブロールに回転駆動力を加え、あるいはウエブロールに巻取られつつあるウェブに走行張力を加えるリールドラムとしては、該ドラム表面に、狭幅深溝の狭幅溝が螺旋状に形成され、かつ広幅浅溝の広幅溝が前記狭幅溝に重ねて螺旋状に形成されていることにより、巻取への空気巻き込みを防止できるため、好ましい形態である。また、前記広幅溝は、その溝底部におけるロール軸方向の断面形状が円弧状であり、かつ隣接する広幅溝間のフラット部と滑らかに連続していることが好ましい。前記狭幅溝と前記広幅溝が、いずれもロールの軸方向中央部から両端に向けて、それぞれ進行する二方向の螺旋溝として形成されていることが好ましく、前記狭幅溝と前記広幅溝が、いずれもロールの一端から他端に向けて一方向の螺旋溝として形成されていることが好ましく、該リールドラムの表面に、タングステンカーバイド溶射が施されていることが好ましい形態として例示できる。
【0034】
また、リールドラム表面にゴム板を巻き付け、該ゴム表面に帯状の突出部を設け、該帯状の突出部がリールドラム表面にリング状、あるいは螺旋状となるようにして巻き付けたリールドラムを使用することにより、巻取への空気巻き込みの防止効果に加え、巻取振動防止にも資することができるため、コスレに対しては好ましい形態として例示できる。また、巻取への空気巻き込みを防止するため、ガンドリル加工等により孔加工を施すことも好ましい形態である。
【0035】
巻取に接触、加圧するリールドラム径が小さいと、大径化した巻取に対して過度な線圧がかかりやすくなり、結果として紙シート表面にコスレ傷等の品質上の欠陥を発生させたりするなどの問題が発生しやすくなる。このため、リールドラムの直径としては1100〜1800mmのものが好ましく使用される。
【0036】
走行中の紙シート巻取が押し付けられるリールスプールの材質は、金属性、樹脂製、セラミック性の物等が使用可能であるが、巻取自重を支持する役目を担っていることから強度が要求され、かつ繰り返し利用されるとともに、搬送が主として自動搬送行程で扱われることから、耐衝撃性が高い物が要求される。このため、リールスプールの主材質としては金属製の物が用いられる。
【0037】
リールスプール表面の材質としては、得られる紙製品の巻取中心部の欠陥部発生量を最小量とするため、あるいはリールスプール同士が接触した際の傷の発生を防止するため、リールスプールの表面にはゴムやポリウレタン等の樹脂が巻かれた物であることが好ましい。また、該ゴムや樹脂表面として、狭幅深溝の狭幅溝が螺旋状に形成され、かつ広幅浅溝の広幅溝が前記狭幅溝に重ねて螺旋状に形成されていることにより、巻取への空気巻き込みを防止や、巻取の振動防止に資することができるため、好ましい形態である。また、前記広幅溝は、その溝底部におけるロール軸方向の断面形状が円弧状であり、かつ隣接する広幅溝間のフラット部と滑らかに連続していることが好ましく、前記狭幅溝と前記広幅溝が、いずれもロールの軸方向中央部から両端に向けて、それぞれ進行する二方向の螺旋溝として形成されていることが好ましく、前記狭幅溝と前記広幅溝が、いずれもロールの一端から他端に向けて一方向の螺旋溝として形成されていることが好ましい。さらに、同様の効果を得るため、該ゴムや樹脂表面に帯状の突出部を設け、該帯状の突出部がリールドラム表面にリング状、あるいは螺旋状となるようにしたものも、好ましい例として挙げることができる。
【0038】
幅広で高速の抄紙速度に対応した巻取を得るためには、リールスプールとして十分な強度が求められる。このため、リールスプール径としては大きい方がよいが、大きすぎる場合にはリールスプール自身の質量が増大するために巻取の重量が増大し、巻取の取扱が困難になるという側面があるため、実操業的にはリールスプールとして直径900〜1500mmのものが好ましく使用される。
【0039】
センタードライブ方式では、巻取中央部のスプールにより巻取の自重を支える必要があるが、巻取の大径化、ならびに広幅化により、スプールが支持しなければ行けない質量が大きくなる傾向にあるため、スプール単体での支持ではスプールおよびスプールに連結した部材に対する負荷が大きくなりすぎる可能性がある。これを回避するため、巻取下部、もしくは下部近傍に、2つのロール間に、ベルト、好ましくは継ぎ手のないベルトでループを形成したベルトロールを、巻取に接触、支持する形で配置することも可能である。
【0040】
巻取の巻硬さを調整するためには、巻取とリールドラムの押し付け圧を調整してニップ圧を調整する方法、または前述したベルトロール等のアームによる押し付け圧を調整してニップ圧を調整する方法が挙げられる。また、リールドラムに対するニップ圧を調整するために、巻取径の増大に従ってリールドラムとリールスプールの距離を連続的に変化させられるよう、リールスプールにチャック等を介して連結された駆動装置とともに、リールスプールが水平方向下流側に移動できるリールドラム/リールスプール間距離調整機構が備わっているか、該調整機構としてリールスプールが円弧状に移動可能とした機構、もしくはこれら両者の機構が備わっていることが好ましい形態である。
【0041】
リールスプール上に所定量の紙シートが巻き取られた後、次のリールスプールに対しての巻取を開始する。
【0042】
スプールに対し、紙シート巻取が所定の量で巻き付けられた後、新たなスプールに対して巻取を開始するが、生産性や操業性向上の観点から、この際に自動的に新たなスプールに巻き付けを開始できる自動枠替え装置が設置されていることが好ましい。この自動枠替えとは、新たなスプールをスプール留置場所から移動し、駆動装置に連結されたチャックに支持され、規定された位置に移動し、スプールの回転を開始した後走行中の紙シートを切断し、新たなスプールに走行中のシートの巻き付けを開始する一連の動作が、あらかじめ決められたシーケンスで自動的に行われることを言う。
【0043】
新たなスプールに巻き付けを開始する際には、走行する紙シートの速度を低下させる等、操業性を悪化させることなく、さらに巻取の形態を良好な物とするため、新たなスプールの表面回転速度を、プライマリアームとよばれる支持機構上で、リールスプールをセンタードライブ方式で駆動させ、紙シート走行速度と同調させた後に走行している紙シートに接触させ、リールドラムとニップを形成させた後に走行中の紙シートを切断し、新たなスプールに巻取始めることで行われる。
【0044】
また、新たなスプールに巻き付けを開始するためには、走行中の紙シートを一度切断する必要があるが、この走行紙シートの切断から新たなスプールへの巻き付け行程に採用される方式として、フライングカッター方式、スポットナイフによるスリットを作成してエアー吹き付ける方式、エアー吹き付けのみによる方式、ウォータージェット方式、あるいはこれらの組み合わせを例示することができる。
【0045】
走行する紙シートを切断する手段の1形態であるエアー吹き付け方式では、走行している紙シートに吹き付けるエアーの圧力により紙シートを切断する。吹き付けるエアーの圧力、時間、幅方向の吹き付け圧プロファイルは制御可能で、また紙シートの坪量変更に対応し、エアー吹き付け圧力も変更される。エアーの吹き付けノズルは単一でも良いが、走行中のシートを確実に切断し、かつ切断後に新しいスプールに確実に巻き取られる行程が開始されること、ならびに切断時に発生する可能性がある紙片の飛散を防止する目的で複数使用しても良い。また、複数使用する場合には、各ノズルのエアー吹き付け圧、長さ、位置、移動速度、移動範囲等は、必要に応じて異なる物を使用しても差し支えない。
【0046】
ウォータージェット方式では、ノズル先端から噴出される高圧水により、走行中の紙シートが切断される。該ノズルは単数でも良いが、効率向上のためには2以上の複数のノズルを有することが好ましい。また、該ノズルは少なくとも幅方向に移動可能とすることで、使用するノズル数を少なくすることができるため好ましい。また、複数のウォータージェットノズルを使用する場合には、各ノズルのウォータージェット吹き付け圧、長さ、位置、移動速度、移動範囲等は、必要に応じて異なる物を使用しても差し支えない。
【0047】
なお、幅広で高速な紙シートの切断を行うに当たっては、操業性ならびに周辺への紙片飛散防止の観点から、ウォータージェット方式とエアー吹き付け方式の組み合わせが最も好ましい。
【0048】
切断された走行中の紙シートは、新たなスプールに巻き付けが開始されるが、巻き付けを開始する手段として、切断された走行中のシート下流側の先端を、エアージェットによりスプールに巻き付ける方法が挙げられる。また、新たなスプールへの巻付けを確実にするため、切断された走行中のシート下流側の先端に接着剤、もしくは接着剤を含む液体を噴霧した後、エアージェットによりスプールに巻き付ける方法も好ましい例として挙げられる。
【0049】
プライマリアームで支持されてリールスプールへの紙シートの巻取が開始された後、所定の巻取径となるまでは、プライマリアームが移動することでリールスプールとリールドラム間距離を最適に保ちながら、リースプールはプライマリアームで支持され続ける。巻取が所定の径になった後、リールスプールの支持はセカンダリアームに移されるが、プライマリアームからセカンダリアームへリールスプール支持を移行する際には、紙切れ防止や巻取形態不良防止のため、プライマリアームとリールドラム間のニップ圧を連続的、または段階状に低下させ、合わせてセカンダリアームとロールドラム間のニップ圧を連続的、または段階上に増大させる。リールスプール支持のプライマリアームからセカンダリアームへの移行が完了した後、最終的にセカンダリアームにリールスプールが支持された状態で、所望の径の巻取が得られる。得られた巻取は、次行程に送られるが、操業性を向上させるため、次行程に搬送する際には、セカンダリアーム上の巻取を自動的に次行程に搬送する機構が備わっていることが好ましい。
【0050】
本発明における特定のパルプの使用及びセンタードライブロール方式でロール状に巻き取る製造において、塗工工程で形成される最外顔料塗被層に含有される顔料として、平均粒子径が0.2〜1.2μmの範囲であるカオリンを、最外顔料塗被層の全顔料の60質量%を越えて含有することが、コスレ汚れを大幅に軽減させる効果を得ることができるので好ましい。さらには、前記カオリンのうち、少なくとも5質量%以上のデラミネーテッドカオリンを含有することによって、艶消し調の外観を有しながらコスレ汚れを大きく軽減して、且つ、印刷品質(印刷平滑性)にすぐれた効果を得ることができるので、より好ましい。尚、ここで言う平均粒子径は、各顔料をピロリン酸ナトリウム0.1%水溶液中で測定対象カオリンの分散濃度が8質量%となるように超音波分散処理し、X線透過式粒度分布測定装置(機種名:セディグラフ−5100、マイクロメリティックス社製、米国)で測定し、重量累積分布データから、50%値に相当する粒子径である。
【0051】
本発明の最外顔料塗被層顔料として使用されるカオリンとしては、印刷塗被紙に通常用いられるカオリンであって、粒子形状を加工したデラミネーテッドカオリンや構造化カオリンも含まれる。そして、本発明においては、前記カオリンにおいて、特定の平均粒子径のカオリンおよび配合量を選択し、かつカオリンの種類および配合量を選択して使用するものである。なお、カオリンを高温処理して得られる焼成カオリンは、コスレ汚れを悪化させる恐れがあるために好ましくない。
【0052】
最外顔料塗被層に含有されるデラミネーテッドカオリンについては、最外顔料塗被層に含有されるカオリン中、5質量%以上を含有するものであるが、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。最外顔料塗被層全顔料をデラミネーテッドカオリンとすることも可能である。
【0053】
また、前記デラミネーテッドカオリンの粒度分布においては、(a)5μmより小さい粒子の割合が90〜100質量%、(b)2μmより小さい粒子の割合が70〜90質量%、(c)1μmより小さい粒子の割合が30〜70質量%であることが好ましい。上記の粒度分布を持つデラミネーテッドカオリンを使用することにより、白紙品質、印刷品質およびコスレ汚れ適性が良好な特性を持つ印刷用艶消し塗被紙を得ることができる。尚、粒度分布については、ピロリン酸ナトリウム0.1%水溶液中で測定対象デラミネーテッドカオリンの分散濃度が8質量%となるように超音波分散処理し、X線透過式粒度分布測定装置(機種名:セディグラフ−5100、マイクロメリティックス社製、米国)で測定した値である。
【0054】
本発明において、最外顔料塗被層に使用される顔料については、上記特定顔料の他に、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、中空有機顔料、密実有機顔料、プラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、マイクロカプセルなどを本発明の効果を阻害しない範囲で適宜混合、使用することができる。
【0055】
塗被層に用いられるバインダーとしては、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体が挙げられる。さらに、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーが挙げられる。加えてスチレンブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、変成ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミド・ポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などが挙げられる。これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
【0056】
また、塗被液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0057】
さらに、必要に応じて、分散剤、流動性改質剤、消泡剤、耐水化剤、印刷適性向上剤、防腐剤、スライムコントロール剤、着色剤などの通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0058】
また、顔料塗被層が2層以上の場合は、最外顔料塗被層の下に形成される顔料塗被層は、顔料と接着剤を主成分とする水性塗被液を塗被、乾燥して顔料塗被層を形成させる。
【0059】
最外顔料塗被層の下に形成される、顔料塗被層用水性塗被液に使用する顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、中空有機顔料、密実有機顔料、プラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、マイクロカプセルなどを本発明の効果を阻害しない範囲で適宜混合、使用することができる。もちろんこれらに限定されるものではない。
【0060】
また、最外顔料塗被層の下に形成される顔料塗被層に用いられるバインダー、増粘剤、その他助剤としては、前記最外顔料塗被層に用いるものとして例示した物と同様の物を用いることができる。
【0061】
顔料塗被層を形成するための塗料の固形分濃度は、一般に20〜75質量%の範囲で調節される。なお、塗工量は得られる塗被紙の白紙品質、印刷品質、および塗被適性等を考慮すると、片面当たり3〜40g/m程度、好ましくは3〜30g/m程度で調節される。
【0062】
塗被層を形成する塗被方法としては、特に限定されるものではなく、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロールもしくはロッドメタリングあるいはブレードメタリング式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター、スプレーコーター等の装置が適宜用いられる。勿論これらの装置はオンマシンでも良く、オフマシンであっても良い。
【0063】
塗被した塗料を乾燥する方法としては、従来から公知公用の熱風乾燥、ガスヒーター乾燥、高周波乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥、レーザー乾燥、電子線乾燥等の各種加熱乾燥方式が適宜採用される。
【0064】
本発明の印刷用塗被紙の製造に際しては、塗被層の形成後に、各種キャレンダー装置で平滑化処理することも可能であるが、かかるキャレンダー装置としては、スーパーキャレンダー、ソフトキャレンダー、グロスキャレンダー、コンパクトキャレンダー、マットスーパーキャレンダー、マットキャレンダー、粗面化カレンダー等の一般に使用されているキャレンダー装置が適宜使用できる。キャレンダー仕上げ条件としては、剛性ロールの温度、キャレンダー圧力、ニップ数、ロール速度、キャレンダー前の紙水分等が、要求される品質に応じて適宜選択される。さらに、キャレンダー装置は、コーターと別であるオフタイプとコーターと一体となっているオンタイプがあるが、どちらにおいても使用できる。使用するキャレンダー装置のロール材質としては、剛性ロールでは金属もしくはその表面に硬質クロムメッキ等で鏡面処理したロールであり、弾性ロールはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリレート樹脂等の樹脂ロール、コットン、ナイロン、アスベスト、アラミド繊維等を成型したロールが適宜使用される。なお、キャレンダーによる仕上げ前後の塗被紙の調湿、加湿のための水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置等を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0065】
本発明においては、コスレ傷防止の観点から、原紙に塗被層を形成後、または塗被層形成後に平滑化処理を行った後に巻き取られた巻取りを分割するワインダー工程において、該ワインダーがシングルドラムワインダー形式であることが好ましい。シングルドラムワインダーを使用することにより、塗被層表面に与えるニップ圧起因のダメージを最小限とすることができ、その結果、コスレ傷の発生を防止できる。
以下、ワインダーについて詳述する。
【0066】
マルチニップカレンダーで表面処理を行われた、あるいはマルチニップカレンダー処理を行わない場合は塗被装置での塗被後の巻取、もしくは塗被装置での塗被を行わない場合は抄紙機での抄紙、乾燥、サイズプレス工程を経た巻取は、必要に応じてワインダーで処理される。ワインダーは、巻取を巻出し部に設置し(以下、巻出し部に設置された巻取を元巻取と呼ぶ)、巻取部に配置された紙製もしくは樹脂製の中空ロール(以下、紙管と呼ぶ)に対して巻出され、元の巻取の巻長さ、あるいは幅を所望の長さ、幅とするよう、巻取部の紙管に到達する前に配置された切断行程を経た後に紙管に巻き取る(以下、巻取部で紙管に巻き取られた巻取を仕上げ巻取と呼ぶ)目的で使用される。前記目的のため、ワインダーにはスリッターと呼ばれる、所望する任意の紙幅に切断できる切断手段も具備されている。
【0067】
ワインダーの1形態であるツードラムワインダーにおいては、ワインダー部において新たな紙管に巻き取られる仕上げ巻取が2つのドラム上に保持されて仕上げられるため、コスレ傷の発生、巻取の自重による仕上げ巻取でのしわの発生、幅方向の巻取位置がずれることによる端面不揃いの発生が生じやすいことや、仕上げ巻取の最大径が制限される等の問題が起こりやすい。近年のワインダー処理速度の高速化、あるいは仕上げ巻取の大径化に対応するためには、ワインダーとしてはシングルドラムワインダーが好ましく使用される。特に、仕上げられる紙製品表面のコスレ傷防止の観点から、シングルドラムワインダーの使用が好ましい。
【0068】
シングルドラムワインダーとしては、ライダーロール支持タイプ等が例示できる。ライダーロール支持タイプとしては、仕上げ巻取に対してライダーロールと、後部ドラムが接触した構成例が例示できる。ライダーロール支持タイプにおいては、ライダーロールと後部ドラムで仕上げ巻取を支持する(以下、紙管および/または紙管を含む仕上げ巻取、後部ロール、およびライダーロールの組み合わせをワインダー部と呼ぶ)が、ツードラムワインダーとは異なり、ライダーロールおよび後部ドラムの押しつけ圧を任意に調整できることから、ニップ圧を自在に調整でき、ツードラムワインダーで発生する問題が起こりにくいという特徴があり、好ましい。
【0069】
ライダーロールとしては、単一のロールのみが仕上げ巻取に接する単一ロール型と、2つのロール間に、ベルト、好ましくは継ぎ手のないベルトでループを形成し、仕上げ巻取に対してはこのベルトが接触するベルト型等が例示できる。また、ライダーロールの配置としては、紙管中央に対してライダーロールが水平方向や鉛直方向等一方向にしか移動せず、仕上げ巻取中心鉛直方向に対してライダーロール位置が固定の角度を保持する形式もあるが、ライダーロールが円弧状に移動することができ、仕上げ巻取径の変化に対応してライダーロールと仕上げ巻取中心からの距離および角度を所望する様式で変更できる形式とすることにより、操業性を良好とすることができるために好ましい例として挙げられる。
【0070】
ライダーロールの単一ロール型に用いられるロール材質としては金属製、樹脂製、セラミック製等のロールが使用でき、また必要に応じてライダーロール表面上に樹脂やゴム等の異なる材質を配置することが可能であるが、仕上げ巻取のコスレ傷防止のため、ライダーロール表面がゴムであることが好ましい。さらに、ライダーロール表面に、狭幅深溝の狭幅溝を螺旋状に形成し、かつ広幅浅溝の広幅溝が前記狭幅溝に重なる螺旋状に形成したり、ライダーロール表面上にゴムを配置し、ゴム表面に帯状の突出部を設け、該帯状の突出部がライダーロール表面にリング状、あるいは螺旋状となるようにして巻き付けることにより、仕上げ巻取への空気巻き込み防止効果や仕上げ巻取振動防止にも資することができるため、好ましい形態として例示できる。
【0071】
ライダーロールとして、2つのロール間に、ベルト、好ましくは継ぎ手のないベルトでループを形成し、仕上げ巻取に対してはこのベルトが接触するベルト型は、単一ロール型ではロールが仕上げ巻取に接触するのに対してベルトが接触するため、接触面積が広くなり、同一の操業性を有する単一ロール型と比較して接触している箇所の線圧を低く保つことができるため、製品表面のコスレ傷防止の観点から好ましい形態といえる。該ベルトとしては、仕上げ巻取への空気巻き込み防止効果のために通気性のある材質を使用することが好ましい。
【0072】
ライダーロールとともにワインダーを構成する後部ロールは、仕上げ巻取に対して下流側に配置されて仕上げ巻取支持する。後部ロールとしては、単一のロールを使用することも可能であるが、仕上げ巻取を幅方向に分割するためには複数とすることが好ましい。複数の後部ロールを配置する方法としては、ライダーロールと後部ロールの組み合わせの数が複数となるようにワインダー内に配置する方法や、同一シャフトで複数の後部ロールを幅方向に連続して並べ、それぞれの後部ロールが任意の回転方向に回転可能とするか、端部から奇数番目と偶数番目で回転方向が逆となって回転できる構成を例示できる。
【0073】
ワインダーの後部ロールの材質としては、該ロールは仕上げ巻取に直接接触するため、少なくとも後部ロール表面はゴムであることが好ましい。また、仕上げ巻取への空気巻き込み防止の観点から、後部ロール表面のゴム表面を、狭幅深溝の狭幅溝を螺旋状に形成し、かつ広幅浅溝の広幅溝が前記狭幅溝に重ねて螺旋状に形成したり、帯状の突出部を設け、該帯状の突出部が後部ロール表面にリング状、あるいは螺旋状となるようにして巻き付けたり、孔加工を施したものが好ましく利用される。また、後部ロールのロール径としては、直径600〜1500mmの物が用いられるのが一般的である。
【0074】
ワインダー部においては、紙管にチャック等を介して連結された駆動装置により紙管が駆動し、この駆動力により紙を巻き取ることができる。また、元巻取を所望の幅で幅向に複数の所望数に分割する場合には、所望数の紙管それぞれがチャックにより保持され、該複数の紙管全てが同一の速度となるように駆動される。また、紙管中央から後部ロールまでの距離は、仕上げ巻取径の増大とともに連続的に変化される紙管/後部ロール間距離調整機構を有することにより、後部ロールによる巻取のニップ圧の変動を抑制できるため、好ましい形態である。該距離調整機構としては、駆動装置に連結され、紙管を保持しているチャック部が、巻取径の増大に対して後部ロールからの距離が離れるように水平方向に移動可能な形態が例示できる。
【0075】
また、紙管を保持しているチャック部に連結した駆動装置による駆動以外にも、後部ロールおよび/またはライダーロールを駆動させ、仕上げ巻取を得ることも可能であり、前記全てを駆動式としたものを使用することも可能である。ワインダー内に複数の駆動系が存在する場合、仕上げ巻取の巻取状態を良好とするため、それぞれの駆動速度が同一となるように制御を行うことが好ましい。
【0076】
元巻取を複数の仕上げ巻取に分割処理する場合、仕上げ巻取端部から奇数番目と偶数番目の仕上げ巻取に対して複数のワインダー部を一直線上に対置することは物理的に不可能であるため、ワインダー部位置を調整する必要がある。たとえば単一の後部ロールを使用する場合、端部から奇数番目の仕上げ巻取に対応するワインダー部を元巻取から見た場合の上流側に、偶数番目の仕上げ巻取に対応するワインダー部を同下流側に交互に設置する方法が例示できる。また、複数の後部ロールを使用する形態とすることもでき、たとえば2つの後部ロールを使用する場合、端部から奇数番目の仕上げ巻取に対応する、1つめの後部ロールを含むワインダー部を元巻取から見た場合の上流側に、偶数番目の仕上げ巻取に対応する、2つめの後部ロールを含むワインダー部を同下流側に交互に設置する方法や、1つめの後部ロールのさらに下流側に2つめの後部ロールを配置し、これら2つの後部ロール間距離とそれに対応するワインダー部位置を調整して配置する方法が例示できる。
【0077】
また、紙管を駆動系に連結されたチャックで保持しない形態でもワインダー部における巻取は可能であり、紙管を後部ロール、ライダーロールのみで保持して巻き取ることもできる。この場合、ライダーロールとして単一ロール型では巻取開始時の紙管の位置決め精度が低下する傾向があるため、ベルト型のライダーロールを用いることが好ましい。
【0078】
ワインダーにおける所望の幅への分割は、スリッターにより切断することによって行うことができる。スリッターでの切断は、上下の回転刃によるせん断切断(シャーカット)方式が採用されることが多いが、これに限定される物ではない。前記切断行程に使用されるスリッターナイフの材質としては、合金工具鋼(SKD)、高速度鋼(SKH)等の金属製の物、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(Y−TZP、PSZ)等のセラミック、およびセラミック複合体(例えば、ジルコニア・アルミナ複合体:ZrO2−Al2O3)等を挙げることができる。また、上刃と下刃の材質は、同一材質の物あるいは異なる材質の物を使用でき、例えば、上刃として金属製、下刃としてセラミック製もしくはセラミック複合体の刃を使用する例が例示できる。
【0079】
ワインダーにおいては、元巻取をより短い長さの仕上げ巻取とし、該仕上げ巻取が一旦仕上げられた際には、紙管交換のための枠替え作業が発生するため、一旦処理速度が極端に低下、あるいは停止する。このため、1系列の抄紙機、塗被装置に対して複数のワインダーを使用するか、設備設置の観点から好ましくはワインダーの処理速度を、抄紙機や塗被装置より大きくする必要がある。このため、処理速度として、最大で2000〜3000m/minのワインダーが好ましく使用される。
【0080】
ワインダー部において発生する枠替え作業は、実生産において頻繁に発生するため、人的な対応では生産効率が低下する。このため、生産効率を向上させるためには、元巻取の自動紙継装置、紙管の変更、紙管に対する巻き出し時のテープ貼り、仕上げ巻取のテール部のテープ貼り等の一部、もしくは全てを機械的に自動で行える、自動枠替え装置が備わっているワインダーが好ましい。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが,本発明はそれらの範囲に限定されるものでない。なお、例中の「部」及び「%」は特に断わらない限り、「質量部(固型分)」及び「質量%」を示す。
【0082】
(パルプ平均繊維長および平均繊維幅)
ファイバーラボ(メッツォオートメーション社製)を用い、パルプの長さ加重平均繊維長ならびに平均繊維幅を測定した。
【0083】
(白紙光沢度)
光沢度計(型式:GM−26D、村上色彩技術研究所社製)を用い、ISO 8254−1(1999)に準じて、入射角/反射角75度の条件で測定した結果を、白紙光沢度とした。
【0084】
(印刷平滑性)
RI印刷機で、印刷インキ(商品名:バリウスG墨Sタイプ、大日本インキ社製)を0.6cc使用して白紙上に1回印刷して印刷物を得た。この印刷物を、温度23℃相対湿度50%の雰囲気下で48時間静置乾燥した。その後、印刷面の平滑性を5(優)〜1(劣)の評価基準に従い目視評価した。評価として2以下のものは、実用上問題がある。
【0085】
(コスレ汚れ適性)
RI印刷機で、印刷インキ(商品名:バリウスG墨Sタイプ、大日本インキ社製)を0.4cc使用して白紙上に1回印刷して印刷物を得た。この印刷物を、温度23℃相対湿度50%の雰囲気下で24時間静置乾燥した。その後、摩擦堅牢度試験機(東洋精機製作所製)を使用して、各印刷用塗被紙の印刷面と白紙塗被層表面を対向する形で重ね、加重4.9Nで1往復の摩擦を行い、印刷面から白紙塗被層表面に転移したインキ汚れの濃度を、5(優)〜1(劣)の評価基準に従い目視評価した。評価として2以下のものは、実用上問題がある。
【0086】
(コスレ光沢およびコスレ傷の評価)
ワインダーによって分割された巻取から白紙を採取し、10m分の白紙に対してコスレ光沢、コスレ傷の発生状況を、5(優)〜1(劣)の評価基準に従い目視で評価した。評価が2以下のものは、実用上問題がある。
【0087】
実施例1
(原紙の作製)
Lo−solids蒸解釜(アンドリッツ(株)製)を用い、アカシアマンギューム:ユーカリグランディス=30:70(質量比)からなる広葉樹チップをLo-solids蒸解法でクラフト蒸解した。なお、白液は硫化度28%のものを用意し、白液添加率は、活性アルカリとして、チップ供給系に対チップ絶乾重量当たり10%、蒸解ゾーンに8%、洗浄ゾーンに2%分割して添加して、蒸解温度は146℃で行なった。蒸解後のチップを解繊した後、洗浄工程、スクリーン工程、さらに再度洗浄工程を経て、未晒パルプを得た。
【0088】
前記未晒パルプに対し、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを1.7%、酸素を1.8%添加し、パルプ濃度10%、98℃、50分の条件で二段アルカリ酸素漂白を行なった。なお、苛性ソーダは一段目に一括添加し、酸素ガスは一段目に1.0%、二段目に0.8%と分割添加した。アルカリ酸素漂白後のパルプは、洗浄工程で洗浄処理した。
【0089】
前記アルカリ酸素漂白後のパルプに対し、絶乾パルプ重量当たり硫酸を1.2%添加し、パルプ濃度10%、60℃、60分の条件で滞留させた後、洗浄工程で洗浄処理した。次いで、絶乾パルプ重量当たりオゾンを0.5%、二酸化塩素を0.5%添加し、パルプ濃度10%、58℃、60分の条件で中濃度オゾン/二酸化塩素漂白を行なった後、洗浄工程で洗浄処理した。次いで、絶乾パルプ重量当たり苛性ソーダを1.0%、過酸化水素を0.1%添加し、パルプ濃度10%、60℃、90分の条件でアルカリ抽出を行なった後、洗浄工程で洗浄処理した。最後に、絶乾パルプ重量当たり二酸化塩素を0.2%添加し、パルプ濃度10%、70℃、120分の条件で二酸化塩素漂白を行なった後、洗浄工程で洗浄処理して、漂白パルプAを得た。得られた漂白パルプAのISO白色度は90.1%、長さ加重平均繊維長は0.68mm、平均繊維幅は16.0μmであった。
【0090】
上記漂白パルプAのスラリー100%に、填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−121、奥多摩工業社製)を原紙灰分が10%になるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学工業社製)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン851、荒川化学工業社製)0.2%を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を運転抄速1500m/分でギャップフォーマーにより紙層を形成し、2基のシュープレスで搾水後、多筒式ドライヤーで乾燥して、米坪53g/mの原紙を一旦巻き取った。
【0091】
(下塗り塗被層用顔料塗被液の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ60、備北粉化工業社製)からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、接着剤として澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)8部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−2000、JSR社製)4部を添加し、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加え、さらに水を加えることで最終的に固形分濃度63%の下塗り塗被層用の顔料塗被液を調製した。
【0092】
(上塗り塗被層用顔料塗被液1の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、接着剤として澱粉(商品名:エースA、前出)10部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−2000、前出)3部を添加し、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加え、さらに水を加えることで最終的に固形分濃度63%の上塗り塗被層用の顔料塗被液を調製した。
【0093】
(印刷用塗被紙の作成)
前記で巻き取られた原紙(坪量53g/m2)に、上記で得た下塗り塗被層用の塗被液を、ジェットファウンテン方式で塗布液を供給するブレードコーターを使用し、片面あたりの乾燥塗工量が8g/m2となるように塗被・乾燥して、原紙の両面に下塗り層を形成した。次いで、下塗り層の各々に対し、上記で得た上塗り塗被層用塗被液1を、ジェットファウンテン方式で塗布液を供給するブレードコーターを使用して、片面あたりの乾燥塗工量が8g/m2となるよう塗布・乾燥して、両面に上塗り塗被層を設けた後、マルチニップカレンダー処理を行い、センタードライブ方式で、坪量85g/mの片面当たり2層の顔料塗被層を有する印刷用艶消し塗被紙のロールを得た。得られたロール状の印刷用塗被紙を、ツードラムワインダー形式のワインダーで小巻取に分割して印刷用艶消し塗被紙を得た。
【0094】
実施例2
実施例1の上塗り塗被層用顔料塗被液1を、下記の上塗り塗被層用顔料塗被液2に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用艶消し塗被紙を得た。
【0095】
(上塗り塗被層用顔料塗被液2の調製)
分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を、分散するカオリンに対して0.1部添加した水溶液に、微粒カオリン(商品名:ハイドラグロス90、平均粒子径0.24μm、ヒューバー社製)20部、デラミネーテッドカオリン(商品名:カオホワイト、平均粒子径0.76μm、シール社製)10部、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)70部を添加し、コーレス分散機で分散して顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:王子エースA、前出)4部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ−2000、前出)8部、さらに助剤として消泡剤および染料を順次加えて、さらに水を加えることで最終的に固形分濃度63%の上塗り塗被層用の顔料塗被液を調製した。
なお、カオホワイトの粒度分布は以下の通りであった。
(a)5μmより小さい粒子 95質量%。
(b)2μmより小さい粒子 76.2質量%。
(c)1μmより小さい粒子 57.8質量%。
【0096】
実施例3
実施例2の上塗り塗被層用顔料塗被液2中の顔料を、微粒カオリン(商品名:ハイドラグロス90、前出)30部、デラミネーテッドカオリン(商品名:カオホワイト、前出)40部、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、前出)30部に変更した以外は、実施例2と同様にして印刷用艶消し塗被紙を得た。
【0097】
実施例4
実施例3のマルチニップカレンダー処理後のワインダー形式を、ツードラムワインダー形式からシングルドラムワインダー形式に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用艶消し塗被紙を得た。
【0098】
比較例1
実施例1において、広葉樹チップのアカシアマンギューム:ユーカリグランディス=30:70(質量比)をバーチ=100に替え、蒸解温度を157℃に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、漂白パルプBを得た。得られた漂白パルプBのISO白色度は89.2%、長さ加重平均繊維長は0.76mm、平均繊維幅は20.2μmであった。さらに、実施例1において、漂白パルプAを漂白パルプBに変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用艶消し塗被紙を得た。
【0099】
比較例2
実施例1のリールの形式を、センタードライブ方式からサーフェスワインダー形式に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用艶消し塗被紙を得た。
【0100】
前記実施例、および比較例において得た印刷用艶消し塗被紙の評価結果を、表1に示した。
【0101】
【表1】

【0102】
表1で明らかなように、本発明により、印刷用艶消し塗被紙としてコスレ汚れやコスレ光沢の発生が少なく、また傷の発生のない塗被紙を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上設けた印刷用艶消し塗被紙の製造方法において、該原紙に使用される漂白パルプの50%以上が、ユーカリ材および/またはアカシア材を原料とするものであり、該漂白パルプが蒸解液を分割添加するクラフト蒸解法でパルプ化され、さらにオゾン漂白段を含む多段漂白処理工程で製造されたパルプであって、かつ該漂白パルプを含む紙料で抄紙された原紙を一度巻き取った後、再び繰り出して塗被液を塗被、乾燥する工程で塗被層が形成された後、または塗被層が形成された後に平滑化処理を行った後に、センタードライブ形式でロール状に巻き取ることを特徴とする印刷用艶消し塗被紙の製造方法。
【請求項2】
前記原紙に形成される塗被層の内、最外顔料塗被層に含有する顔料が、平均粒子径が0.2〜1.2μmの範囲であるカオリンであり、かつ最外顔料塗被層の全顔料の60質量%を越えて含有し、さらに前記カオリンのうち、5質量%以上がデラミネーテッドカオリンであることを特徴とする請求項1に記載の印刷用艶消し塗被紙の製造方法。
【請求項3】
前記デラミネーテッドカオリンが、下記の(a)〜(c)のすべての条件を満足することを特徴とする請求項2に記載の印刷用艶消し塗被紙の製造方法。
(a)5μmより小さい粒子の割合が90〜100質量%。
(b)2μmより小さい粒子の割合が70〜90質量%。
(c)1μmより小さい粒子の割合が30〜70質量%。
【請求項4】
前記センタードライブ形式で巻き取られたロールを分割するワインダー工程において、該ワインダーがシングルドラムワインダー形式であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷用艶消し塗被紙の製造方法。

【公開番号】特開2010−7206(P2010−7206A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168108(P2008−168108)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】