説明

印刷装置、ラインプリンター、及び印刷方法

【課題】画像の画質向上を図る。
【解決手段】光の照射によって硬化する光硬化性インクを被印刷材に吐出するノズルが複数並んで形成されたノズル列と被印刷材に光を照射する照射部とを有するヘッド部と、ヘッド部と被印刷材とをノズル列を形成するノズルの並び方向と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、移動手段により相対移動した被印刷材の画像形成領域にノズルから光硬化性インクを吐出させ、画像形成領域に着弾した光硬化性インクに照射部から光を照射させるよう制御する制御部と、を備えた印刷装置であって、制御部は、照射部が画像形成領域に照射する光の照射エネルギーを、画像形成領域の端部領域に照射する光の照射エネルギーが、画像形成領域の端部領域に隣接する領域へ照射する光の照射エネルギーよりも小さくなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、ラインプリンター、及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光(例えば、紫外線(Ultra Violet Light:「UV」と略す)や可視光など)の照射によって硬化する光硬化性の液体(例えば、紫外線硬化性インク、「UVインク」と略す)を吐出して印刷を行う印刷装置として、例えばプリンターが知られている。このようなプリンターでは、ノズルから紙、布、フィルムシート等の被印刷材にUVインクを吐出した後、被印刷材に形成されたドットに光を照射する。これにより、ドットが硬化して被印刷材に定着する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−26970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
UVインクは紫外線により瞬時に硬化が可能なので、非吸収性の被印刷材に印刷が可能であり、浸透性インク(例えば水性インク)などを用いて画像を吸収性の被印刷材に印刷した場合と比べて、印刷画像を構成するドットが被印刷材の表面から盛り上がって形成される。
更に、UVインクを用いて被印刷材に画像を印刷した場合、印刷画像のエッジ近傍が他の部分よりも特に盛り上がる現象(厚盛り現象)が生じるおそれがある。そして、厚盛り現象に起因して、印刷画像の一部のみで光が正反射された状態で印刷画像が視認されると、印刷画像が立体的に見えてしまい、印刷画像が実際よりも厚く知覚されて、印刷画像の画質を悪化させる原因になる。
そこで、本発明は、画像の画質向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための主たる発明は、
光の照射によって硬化する光硬化性インクを被印刷材に吐出するノズルが複数並んで形成されたノズル列と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、前記ヘッド部と前記被印刷材とを前記ノズル列を形成するノズルの並び方向と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段により相対移動した前記被印刷材の画像形成領域に前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出させ、前記画像形成領域に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させるよう制御する制御部と、を備えた印刷装置であって、前記制御部は、前記照射部が前記画像形成領域に照射する前記光の照射エネルギーを、前記画像形成領域の端部領域に照射する前記光の照射エネルギーが、前記画像形成領域の前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さくなるように制御することを特徴とする印刷装置である。換言すると、前記端部領域に隣接する領域へ照射する光の照射エネルギーは光硬化性インクの内部まで硬化するエネルギーであるが、前記画像形成領域の端部領域に照射する前記光の照射エネルギーをそれより弱めて光硬化性インクの表面近傍が硬化しその内部が硬化しないような照射エネルギーとし、端部領域のインクが盛り上っていたのが潰れて平坦化した後で、より大きな照射エネルギーで光を照射して照射して内部まで硬化させるものである。
【0006】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1Aは、UVインクを用いて被印刷材に印刷した印刷画像の説明図である。図1Bは、図1Aの点線で示す領域(エッジ近傍)の厚さの測定値のグラフである。
【図2】図2Aは、図1Aの印刷画像を上から見た図である。図2Bは、図2Aの印刷画像の一部で光が正反射したときの様子の説明図である。
【図3】印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図4】プリンター1の斜視図である。
【図5】プリンター1のヘッド周辺の概略図である。
【図6】図6A及び図6Bは、プリンター1の横断面図である。
【図7】ヘッド31の構成の説明図である。
【図8】図8Aは、リニア式エンコーダー51の構成を概略的に示した図である。図8Bは、検出器566の構成を模式的に示した図である。
【図9】図9A及び図9Bは、キャリッジモーター22の正転時及び逆転時における検出部566の2つの出力信号の波形を示したタイミングチャートである。
【図10】図10A及び図10Bは端部領域におけるインク層の硬化と形状との関係を説明する図である
【図11】図11A〜図11Fは、本発明の実施形態におけるパスの説明図である。
【図12】図11A〜図11Fに示すパスによって被印刷材に形成される印刷画像と、UVの照射強度の関係の説明図である。
【図13】画像形成領域のうちの搬送方向の端部を印刷する際の概略説明図である。
【図14】ラインプリンターによる本発明の実施形態の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0009】
光の照射によって硬化する光硬化性インクを被印刷材に吐出するノズルが複数並んで形成されたノズル列と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、前記ヘッド部と前記被印刷材とを前記ノズル列を形成するノズルの並び方向と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段により相対移動した前記被印刷材の画像形成領域に前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出させ、前記画像形成領域に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させるよう制御する制御部と、を備えた印刷装置であって、前記制御部は、前記照射部が前記画像形成領域に照射する前記光の照射エネルギーを、前記画像形成領域の端部領域に照射する前記光の照射エネルギーが、前記画像形成領域の前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さくなるように制御することを特徴とする印刷装置、換言すると、前記端部領域に隣接する領域へ照射する光の照射エネルギーは光硬化性インクの内部まで硬化するエネルギーであるが、前記画像形成領域の端部領域に照射する前記光の照射エネルギーをそれより弱めて光硬化性インクの表面近傍が硬化しその内部が硬化しないような照射エネルギーとし、端部領域のインクが盛り上っていたのが潰れて平坦化した後で、より大きな照射エネルギーで光を照射して内部まで硬化させる印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、端部領域における厚盛り現象の発生を抑制することができる。よって光硬化性インクを用いて印刷される画像の画質向上を図ることができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、前記移動手段は、前記ヘッド部を搭載し前記交差方向に往復移動するキャリッジを有し、前記制御部は、前記移動手段に前記キャリッジを前記交差方向に往復移動させ、前記被印刷材の前記画像形成領域に前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出させ、前記画像形成領域に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させる動作と、前記キャリッジが前記交差方向に往復移動する合間に前記被印刷材を、前記ノズル列を形成するノズルの並び方向に搬送させる動作と、を繰り返し行うようにしてもよい。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記キャリッジが前記交差方向に往復移動する際に、或る相対移動では、前記照射部から前記端部領域に、前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さい照射エネルギーの前記光を照射させ、前記或る相対移動よりも後の別の相対移動では、前記或る相対移動で前記光が照射された前記端部領域に、更に前記照射部から前記光を照射させることが望ましい。
このような印刷装置によれば、弱い光の照射で端部領域に着弾した光硬化性インクの表面近傍を硬化させ、端部領域の盛り上がりが潰れた後、更に光を照射して端部領域の光硬化性インクを硬化させることができる。これにより端部領域に形成されるドットの流動性を任意に高めることができ、端部領域の盛り上がりをさらに抑制することができる。よって、画質をより向上させることができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記キャリッジと前記被印刷材との前記交差方向の相対位置を検出する検出部を有し、前記制御部は、前記検出部で検出された相対位置情報に基づいて、前記照射部が照射する前記光の照射エネルギーを変更することが望ましい。
このような印刷装置によれば、端部の位置をより正確に検出でき、光の照射タイミングをより正確に変更できる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記照射部は、前記キャリッジにおいて前記ノズル列よりも前記交差方向の一方側と、前記ノズル列よりも前記交差方向の他方側とにそれぞれ設けられており、前記制御部は、前記キャリッジが移動し、前記ノズル列が前記被印刷材の前記画像形成領域の任意の位置に来た後で当該位置に移動する前記一方側又は他方側の前記照射部が前記光を照射するように制御することが望ましい。
このような印刷装置によれば、ドット形成後に直ちに光を照射することができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記照射部は、前記ノズル列と前記交差方向に並んで設けられており、前記制御部は、前記ノズルの並び方向の前記端部領域へ前記光硬化性インクを吐出するノズルに対応する位置の前記照射部の前記光の照射エネルギーが、前記画像形成領域の前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さくなるように、前記ノズルの並び方向の位置に応じて前記照射部の前記光の照射エネルギーを制御することが望ましい。
このような印刷装置によれば、ノズルの並び方向の端部領域での画像の盛り上がりを抑制することができる。
【0015】
また、光の照射によって硬化する光硬化性インクを被印刷材の画像形成領域に吐出するノズルが複数ライン状に並んで形成されたノズル列と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、前記ヘッド部と前記被印刷材とをノズル列のライン方向と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段により相対移動した前記被印刷材の前記画像形成領域に前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出させ、前記画像形成領域に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させるよう制御する制御部と、を備えたラインプリンターであって、前記制御部は、前記照射部が前記画像形成領域に照射する前記光の照射エネルギーを、前記画像形成領域の端部領域に照射する前記光の照射エネルギーが、前記画像形成領域の前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さくなるように制御することを特徴とするラインプリンターとしてもよい。
前記端部領域に隣接する領域へ照射する光の照射エネルギーは光硬化性インクの内部まで硬化するエネルギーであるが、前記画像形成領域の端部領域に照射する前記光の照射エネルギーをそれより弱めて光硬化性インクの表面近傍が硬化しその内部が硬化しないような照射エネルギーとし、端部領域のインクが盛り上っていたのが潰れて平坦化した後で、より大きな照射エネルギーで光を照射して内部まで硬化させるものである。
ラインプリンターにおいても、ライン単位で端部盛り上りの平坦化が可能となる。
【0016】
また、光の照射によって硬化する光硬化性インクを被印刷材に吐出するノズルが複数並んで形成されたノズル列と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部を備えた印刷装置により前記被印刷材に画像を印刷する印刷方法であって、前記ヘッド部と前記被印刷材とを前記ノズル列を形成するノズルの並び方向と交差する交差方向に相対的に移動させる相対移動工程と、前記相対移動工程の際に、前記ノズル列の各ノズルから前記被印刷材の画像形成領域へ前記光硬化性インクを吐出する吐出工程と、前記吐出工程によって前記画像形成領域の端部領域に隣接する領域に着弾した前記光硬化性インクには前記照射部から第1照射エネルギーで前記光を照射し、前記端部領域に着弾した前記光硬化性インクには前記照射部から前記第1照射エネルギーよりも小さい第2照射エネルギーで前記光を照射する照射工程と、を有する印刷方法が明らかとなる。
なお、端部領域に着弾した前記光硬化性インクには、画像形成領域で端部領域に隣接する領域に照射する照射エネルギーより小さな照射エネルギーで光を照射するが、端部領域に着弾した前記光硬化性インクの盛り上りが減少した後で、より大きな照射エネルギーで光を照射して端部領域に着弾した前記光硬化性インクを内部まで硬化させる。
【0017】
以下の実施形態では、印刷装置としてインクジェット方式のプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0018】
===概要===
<厚盛り現象・厚盛り感について>
プラスチックフィルム等のような被印刷材はインクを吸収しにくい性質を有するため、このような被印刷材にインクジェット方式によって印刷を行う際に、光硬化性インクとしてUVインクが用いられることがある。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、紫外線(UV)が照射されると硬化する性質を有する。UVインクを硬化させてドットを形成することによって、インク受容層を持たずインク吸収性の無い被印刷材に対しても印刷を行うことができる。なお、インク受容層を持たない被印刷材としては、例えばフィルム(具体的には、塩化ビニールフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)フィルム等)がある。
【0019】
但し、UVインクで形成されたドットは被印刷材の表面で隆起しているため、UVインクを用いて被印刷材に印刷画像を形成すると、被印刷材の表面に凹凸ができる。また、印刷画像が塗り潰し画像である場合には、印刷画像が厚みを有することになる。
【0020】
図1Aは、UVインクを用いて被印刷材に印刷した印刷画像の説明図である。
UVインクは紫外線(UV)により瞬時に硬化が可能なので、UVインクを用いて画像を印刷すると、被印刷材のインク吸収性に依存せずに、ドットが盛り上がって形成される。塗り潰し画像を印刷すると、UVインクで形成されたドットが所定の領域を埋め尽くすため、厚みのある印刷画像Gが被印刷材S上に形成されることになる。例えば、被印刷材Sに文字を印刷する場合、厚みのある文字画像(塗り潰し画像)が被印刷材S上に形成されることになる。UVインクを用いて印刷された印刷画像Gの厚さは、数μm程度になる。
【0021】
図1Bは、図1Aの点線で示す領域T(エッジ近傍)の厚さの測定値のグラフである。グラフの横軸は被印刷材Sの位置を示し、縦軸はドットの高さ(印刷画像Gの厚さ)を示している。なお、印刷画像Gは、インク重量を10ngとしてドットを形成し、720×720dpiの印刷解像度で塗り潰した画像である。印刷画像Gの厚さは、ミツトヨ社製のノンストップCNC(Computer Numerical Control)画像測定機Quick Vision Stream plusを用いて測定した。図に示すように、この印刷画像Gは、5μmほどの厚さである。
【0022】
グラフ中の位置Xは、印刷画像Gの最も外側の位置を示している。言い換えると、位置Xは、印刷画像Gの端(エッジ)の位置を示している。また、グラフ中の位置Aは、印刷画像のエッジ近傍における最厚位置(最も高い位置)を示している。言い換えると、位置Aは、印刷画像Gのエッジ近傍における突出部分の位置を示している。
【0023】
位置Aは、位置Xから約200μmほど内側に位置している。位置Xから位置Aまでの領域(グラフ中の領域B)では、印刷画像の内側ほどインクが厚くなっている。位置Aでは厚さが最大(約6μm)になる。また、位置Aから位置Dまでの領域(グラフ中の領域C)では、内側(図面右側)に向けて印刷画像G(インク層)が薄くなっていく。そして位置Dで厚さが5μm程度に達し、それより内側では、ほぼ一様な厚さになる。
【0024】
本明細書では、グラフ中の位置Aのように、エッジ近傍が他の部分よりも特に盛り上がる現象のことを「厚盛り現象」と呼ぶ。この厚盛り現象は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の現象である。また、本明細書では、エッジ近傍、具体的には、印刷画像を形成する領域(以下、画像形成領域ともいう)のうち画像の端(例えば、図1Bの位置X)から画像の厚さが一様になる位置(例えば、図1Bの位置D)までの領域Bと領域Cを合わせた領域のことを端部領域Eと呼ぶ。図1Bの場合、端部領域Eは、画像の端からの距離が約580μm以下の領域である。図1Bにおいて符号Fで示す箇所が画像形成領域である。
【0025】
図2Aは、図1Aの印刷画像Gを上から見た図である。図2Bは、図2Aの印刷画像の一部で光が正反射したときの様子の説明図である。図2Bでは、印刷画像の内側で光って視認される部分を白く示している。
【0026】
印刷画像の中央部分では、厚さがほぼ一様になっているため、一様な光沢性が得られる。但し、印刷画像のエッジ近傍(端部領域E)では、厚さが一様ではないため、一様な光沢性は得られない。
【0027】
エッジ近傍では、厚盛り現象のため、印刷画像は一様な厚さにはならず、印刷画像のエッジよりも内側に、エッジに沿った突出部分が形成される。この結果、光の反射角次第によって、図2Bに示すように、印刷画像Gの一部(Ge)がエッジに沿って光って視認されることがある。観察者の目、光源及び印刷画像の位置関係・角度によって、図1Bの傾斜領域で正反射した光が観察者の目に入り、図2Bに示すように印刷画像Gが視認されるのである。
【0028】
図2Bに示すように、エッジに沿って印刷画像Gの一部(Ge)が光って見えると、印刷画像全体が立体的に知覚されてしまう。喩えると、コンピューター・グラフィックスで3次元物体をディスプレイ上で2次元画像として物体の一部の輝度を明るく表示したときのように(例えば光線追跡法により3次元物体を2次元画像として表示したときのように)、印刷画像が立体的に知覚されてしまう。この結果、実際には5μmほどの厚さであるにも関わらず、印刷画像Gの観察者には、それ以上に厚く知覚されてしまうことになる。
【0029】
本明細書では、この厚盛り現象のために印刷画像が実際よりも厚く知覚されることを「厚盛り感」と呼ぶ。「厚盛り感」という課題は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の課題である。
なお、通常の製版印刷(フレキソ印刷やオフセット印刷など)による印刷画像は、UVインクを用いた印刷画像と比べると、厚さがほとんど無い。このため、通常の製版印刷による印刷画像では、「厚盛り現象」は生じず、「厚盛り感」という課題も生じない。また、被印刷材Sにインクを浸透させて印刷した印刷画像も、印刷画像の厚さはほとんど無い。このため、被印刷材Sにインクを浸透させて印刷した印刷画像でも、「厚盛り現象」は生じず、「厚盛り感」という課題も生じない。このように、厚盛り現象や厚盛り感は、UVインクを用いてインクジェット方式にて画像を印刷したときに生じる特有の現象・課題である。
そこで、以下に示す実施形態では、画像を印刷する際に端部領域EへのUVの照射条件を調整することにより、厚盛り現象が発生してもそれを平坦化するようにしている。
【0030】
===印刷システムの構成===
まず、図面を参照しながら印刷システムの基本的な構成について説明する。図3は、印刷システムの構成を示すブロック図である。図4は、プリンター1の斜視図である。図5は、プリンター1のヘッド周辺の概略図である。図6A及び図6Bは、プリンター1の横断面図である。図6Aは図5のA−A断面に相当し、図6Bは図5のB−B断面に相当する。
【0031】
本発明の実施形態では以下に説明するプリンター1が「印刷装置」に相当し、プリンター1のコントローラー60が印刷装置を制御する制御部に相当する。なお、これには限られず、例えば、プリンター1と、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター110とによる装置(システム)で印刷装置を構成してもよい。この場合、コンピューター110が制御部であってもよいし、あるいは、プリンター1のコントローラー60とコンピューター110によって制御部を構成してもよい。
【0032】
<コンピューターについて>
コンピューター110は、図3に示すように、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの記録媒体(コンピューター読み取り可能な記録媒体)に記録されている。プリンタードライバーは、インターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。
【0033】
<プリンターについて>
プリンター1は、紙、布、フィルムシート等の被印刷材Sに向けて、光の一種である紫外線(UV)の照射によって硬化するUVインクを吐出することにより、被印刷材Sに画像を印刷する装置である。UVインクは、前述したように紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。
【0034】
プリンター1は、図3に示すように、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、被印刷材Sに画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0035】
搬送ユニット10は、被印刷材S(例えば、塩化ビニールフィルム)を相対的搬送方向(以下、単に搬送方向ともいう)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、給紙ローラー11と、搬送モーター(不図示)と、搬送ローラー13と、プラテン14と、排紙ローラー15とを有する(図6A、図6B参照)。給紙ローラー11は、紙挿入口に挿入された被印刷材Sをプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラー11によって給紙された被印刷材Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、印刷中の被印刷材Sを支持する。排紙ローラー15は、被印刷材Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0036】
キャリッジユニット20(移動手段に相当する)は、被印刷材Sの搬送方向と交差する方向(交差方向に相当する)に、ヘッド等を移動させるためのものである。なお、交差方向は、一般的には直交方向のことである。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター22とを有する(図4参照)。また、キャリッジ21は、UVインクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。そして、キャリッジ21は、後述するヘッド31及び第1の照射部42a、42bを搭載しており、搬送方向と交差したガイド軸24に支持された状態で、キャリッジモーター22によりガイド軸24に沿って往復移動する。なお、キャリッジ21に搭載された、ヘッド31と第1の照射部42a、42bはヘッド部に相当する。すなわち前述のキャリッジ21が往復移動する方向は、ヘッド部の相対的移動方向(以下、単に移動方向ともいう)である。
【0037】
ヘッドユニット30は、被印刷材Sに液体(本発明の実施形態ではUVインク)を吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える(図5参照)。このヘッド31はキャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動中にノズルからUVインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が被印刷材Sに形成される。以下の説明において、移動方向の一端側から他端側に向かって移動する経路のこと往路と呼び、他端側から一端側に移動する経路のことを復路と呼ぶ。プリンター1では、往路及び復路の両期間中にUVインクが吐出される。すなわち、プリンター1は、双方向印刷を行なう。
なお、ヘッド31の構成については、後述する。
【0038】
照射ユニット40は、被印刷材Sに着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。被印刷材S上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより硬化する。照射ユニット40は、第1の照射部42a、42b及び第2の照射部44を備えている。第1の照射部42a、42bで端部領域の照射エネルギーを小さくして端部領域のドットの表面近傍を硬化させ、その後、表面近傍が硬化した端部領域のドットが潰れて平坦化した後で第2の照射部44で端部領域のドットを内部まで硬化させてもよいが、第1の照射部42a、42bで端部領域の照射エネルギーを小さくして端部領域のドットの表面近傍を硬化させ、その後、表面近傍が硬化した端部領域のドットが潰れて平坦化した後で再び第1の照射部42a、42bで端部領域に照射エネルギーを与えて端部領域のドットの内部までドットを硬化させる場合は、第2の照射部44は無くてもよい。そのため、図上では括弧内に図示している。なお、第1の照射部42a、42b(照射部に相当する)は、キャリッジ21に設けられている。このため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、第1の照射部42a、42bも移動方向に移動する。
【0039】
例えば、キャリッジ21が右から左に移動して、被印刷材S上にUVドットを形成し、第1の照射部42aからUV照射してそのUV照射の端部領域の照射エネルギーを小さくした場合、端部領域のドットは表面近傍が硬化するだけであり時間が経過するとつぶれて平坦化する。その後、同じ走査パス領域をキャリッジ21が左から右に移動する際に、大きな照射エネルギーで照射する。これにより端部領域は十分なUV照射を受け、内部まで硬化させることができる。キャリッジ21が右から左に移動したとき第1の照射部42aから小さな照射エネルギーで端部領域に照射し、その直後にキャリッジ21が左から右に移動する際に小さな照射エネルギーを照射した端部領域に第1の照射部42a、42bの一方又は双方から大きな照射エネルギーを照射する方法の他に、キャリッジ21が右から左に移動し第1の照射部42aから小さな照射エネルギー端部領域に照射し、その後何回かキャリッジ21の左右方向の移動があった後で、小さな照射エネルギーを照射した端部領域に第1の照射部42a、42bの一方又は双方から大きな照射エネルギーを照射して内部まで硬化させる方法もある。
【0040】
図5に示すように、第1の照射部42a、42bは、ヘッド31を挟むようにして、キャリッジ21上のヘッド31(言い換えると各ノズル列)よりも移動方向の一端(移動方向の一方側の端)と他端(移動方向の他方側の端)にそれぞれ設けられている。また、第1の照射部42a、42bは、搬送方向に沿って設けられており、光を照射する第1の照射部42a、42bの搬送方向の長さ(ノズル並び方向の長さ)は、ヘッド31のノズル列の長さとほぼ同じかそれより長くなっている。言い換えると、第1の照射部42a、42bは、ヘッド31のノズル列と移動方向に並ぶ位置に設けられている。そして、第1の照射部42a、42bは、ヘッド31とともに移動して、ヘッド31のノズル列がドットを形成する範囲にUVを照射してドットを硬化させる。第1の照射部42a、42bのUV照射の光源としては、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などが採用される。光源がLEDの場合、LEDへの入力電流の大きさを制御することによって、UVの照射エネルギーを容易に変更することが可能である。また、図示していないが、第1の照射部42a、42bは、搬送方向(ノズル並び方向)に沿って配置された複数のLEDを備えており、各LEDへの入力電流をそれぞれ制御することによって、UVの照射条件を搬送方向の位置ごとに変更することができる。例えば、第1の照射部42a、42bのうちの搬送方向の上流側の半分からUVを照射し、下流側の半分はUVを照射しないようにすることもできる。
【0041】
(第1の照射部と第2の照射部を使用する場合)
上述したように、第1の照射部42a、42b及び第2の照射部44のうち、第1の照射部42a、42bを使用して第2の照射部44は使用しないか、又は、第2の照射部44を設置しなくてもよいが、第1の照射部42a、42bと第2の照射部44とを使用して照射する場合について述べる。
【0042】
第2の照射部44は、キャリッジ21よりも搬送方向下流側に固定等して設ける。つまり、第2の照射部44を、第1の照射部42a、42bよりも搬送方向下流側に設ける。また、第2の照射部44の移動方向の長さは、印刷対象となる被印刷材Sの画像形成部の幅と同等かそれよりも長くする。
【0043】
コントローラー60は、ヘッド31を図5上で左右方向に相対的に移動させ被印刷材S上にインク吐出及びUV照射を行い被印刷材上に吐出されたインクを仮硬化させる。
その後、コントローラー60は、搬送動作によって第2の照射部44の下に搬送された被印刷材S(すなわち、ヘッド31を図5上で左右方向に相対的に移動させ被印刷材S上にインク吐出及びUV照射を行った後に搬送された被印刷材S)に向けて第2の照射部44からUVを照射して表面近傍が硬化して内部が硬化していないインクが潰れて平坦化した被印刷材S上のドットを硬化させる(本硬化)。
【0044】
第1の照射部42a、42bのUV照射による硬化(仮硬化)は、照射されるUVの照射量は少なく、UVインクの表面近傍部分が硬化し、内部(厚み方向の全部)が硬化しない。そして、時間経過により仮硬化したインクの内部が潰れて平坦化し、その後でUV照射で内部まで硬化させる(本硬化)ので、端部領域の盛り上りを抑制できる。仮硬化の際にドットに照射されるUVの照射エネルギーは、端部の隣接領域を硬化させるのに照射させる照射エネルギーより小さい。
【0045】
第2の照射部44のUV照射の光源としては、第1の照射部42a、42bと同様に、紫外線発光ダイオード(LED)やランプ(例えばメタルハライドランプ)などが採用される。UVインクの表層部分だけが硬化した仮硬化の状態からUVインクの内部まで硬化させるUV照射をおこなって本硬化(内部まで硬化)させる。
【0046】
なお、UV照射において、各照射部による単位面積あたりのUVの照射量(照射エネルギー)(mJ/cm)は、UVの照射強度(mW/cm)と照射時間(sec)との積で定められる。本発明の実施形態では、UV照射を行う際、各ドットへのUVの照射時間は、被印刷材S上の場所(位置)にかかわらず同じであることとする。言い換えると、UVの照射量(照射エネルギー)は、UVの照射強度に依存する。
【0047】
検出器群50には、リニア式エンコーダー51、ロータリー式エンコーダー(不図示)、紙検出センサー53、および光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダー51(検出部に相当する)は、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の被印刷材Sの先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、被印刷材Sの有無を検出する。そして、光学センサー54は、キャリッジ21によって移動しながら被印刷材Sの端部の位置を検出し、被印刷材Sの幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、被印刷材Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0048】
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、図3に示すように、インターフェイス部61と、CPU(Central Processing Unit)62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0049】
印刷を行うとき、コントローラー60は、キャリッジ21を移動方向に移動させつつヘッド31からUVインクを吐出させるドット形成動作と、搬送方向に被印刷材Sを搬送する搬送動作とを繰り返し、複数のドットから構成される画像を被印刷材Sに印刷する。以下の説明において、キャリッジ21を(相対的に)被印刷材Sに対して所定の方向(図面上左又は右)に移動させてドット形成動作やUV照射等を行う走査のことを「パス」と呼ぶ。パスの際には、被印刷材Sに対してヘッド31及び第1の照射部42a、42bが相対的に移動する。なお、このとき、後述するように第1の照射部42a、42bによるUV照射も行なわれる。
【0050】
<ヘッド31の構成について>
図7は、ヘッド31の構成の一例の説明図である。この図7はヘッド31を下から(プラテン14側から)見た図である。図ヘッド31の下面には、図7に示すように、シアンインクノズル列Ncと、マゼンダインクノズル列Nmと、イエローインクノズル列Nyと、ブラックインクノズル列Nkとが移動方向に並んで形成されている。なお、ヘッド31(各ノズル列)は、キャリッジ21に搭載されているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、各ノズル列も移動方向に移動する。
【0051】
各ノズル列は、各色のUVインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(本発明の実施形態では180個)備えている。
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:D)でそれぞれ列状に配列されている。すなわち、搬送方向は、ノズルの並び方向に相当する。
【0052】
各ノズル列のノズルには、搬送方向下流側のノズルほど若い番号が付されている。各ノズルには、各ノズルからUVインクを吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。このピエゾ素子を駆動信号によって駆動させることにより、前記各ノズルから滴状のUVインクが吐出される。吐出されたUVインクは、被印刷材Sに着弾してドットを形成する。
【0053】
===キャリッジ21の位置検出について===
前述したようにプリンター1では、リニア式エンコーダー51によってキャリッジ21の位置(移動方向の位置)を検出している。
図8Aは、リニア式エンコーダー51の構成を概略的に示した図である。リニア式エンコーダー51は、リニア式エンコーダー符号板564と、検出器566とを備えている。リニア式エンコーダー符号板564は、プリンター1内部のフレーム側に取り付けられている。一方、検出器566は、キャリッジ21側に取り付けられている。キャリッジ21がガイド軸24に沿って移動すると、検出器566がリニア式エンコーダー符号板564に沿って相対的に移動する。
【0054】
図8Bは、検出器566の構成を模式的に示した図である。この検出器566は、発光ダイオード552と、コリメータレンズ554と、検出処理部556とを備えている。検出処理部556は、複数(例えば4個)のフォトダイオード558と、信号処理回路560と、例えば2個のコンパレーター562A、562Bとを有している。
【0055】
発光ダイオード552の両端に抵抗を介して電圧Vccが印加されると、発光ダイオード552から光が発せられる。この光はコリメータレンズ554により平行光に集光されてリニア式エンコーダー用符号板564を通過する。リニア式エンコーダー用符号板564には、所定の間隔(例えば1/180インチ(1インチ=2.54cm))毎にスリットが設けられている。
【0056】
リニア式エンコーダー用符号板564を通過した平行光は、図示しない固定スリットを通って各フォトダイオード558に入射し、電気信号に変換される。4個のフォトダイオード558から出力される電気信号は信号処理回路560において信号処理され、信号処理回路560から出力される信号はコンパレーター562A、562Bにおいて比較され、比較結果がパルスとして出力される。コンパレーター562A、562Bから出力されるパルスENC−A、ENC−Bがリニア式エンコーダー51の出力となる。
【0057】
図9A及び図9Bは、キャリッジモーター22の正転時及び逆転時における検出部566の2つの出力信号の波形を示したタイミングチャートである。図9A及び図9Bに示すように、キャリッジモーター22の正転時及び逆転時のいずれの場合も、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。キャリッジモーター22が正転しているときは、図9Aに示すように、パルスENC−AはパルスENC−Bよりも90度だけ位相が進み、キャリッジモーター22が逆転しているときは、図9Bに示すように、パルスENC−AはパルスENC−Bよりも90度だけ位相が遅れる。また、パルスENC−A及びパルスENC−Bの1周期Tは、キャリッジ21がリニア式エンコーダー用符号板564のスリット間隔を移動する時間に等しい。
【0058】
そして、コントローラー60にてリニア式エンコーダー51の出力パルスENC−A、ENC−Bの各々の立ち上がりエッジが検出され、検出されたエッジの個数が計数され、この計数値に基づいてキャリッジモーター22の回転位置が演算される。この計数はキャリッジモーター22が正転しているときは1個のエッジが検出されると「+1」を加算し、逆転しているときは、1個のエッジが検出されると「−1」を加算する。パルスENC−A及びENC−Bの各々の周期は、リニア式エンコーダー用符号板564の、あるスリットが検出部566を通過してから次のスリットが検出部566を通過するまでの時間に等しく、かつ、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。このため、上記計数のカウント値「1」はリニア式エンコーダー用符号板564のスリット間隔の1/4に対応する。これにより上記計数値にスリット間隔の1/4を乗算すれば、その乗算値に基づいて、計数値が「0」に対応する回転位置からのキャリッジモーター22の移動量を求めることができる。そして、この移動量(キャリッジモーター22の移動量)からキャリッジ21の位置(被印刷材Sに体する移動方向の相対位置)を検出することができる。
【0059】
コントローラー60は、リニア式エンコーダー51によって検出されるキャリッジ21の位置情報(すなわち、キャリッジ21と被印刷材Sとの移動方向の相対位置情報)に基づいて、パスの際にヘッド31からのインクの吐出や第1の照射部42a、42bからのUV照射を制御する。なお、リニア式エンコーダー51の解像度は、リニア式エンコーダー用符号板564のスリットの間隔の1/4となる。
【0060】
===UVインクの硬化と形状の関係について===
図10A、図10Bは端部領域におけるインク層の硬化と形状との関係を説明する図(模式図)である。図10Aに示すように、インクが着弾した直後では、端部領域ではインク層100Aはその隣接する領域(内部の領域、図面右側)のインク層101より盛り上がっている。ここで、端部領域のインク層100Aには小さな照射エネルギーで照射し、表面近傍を硬化させる(仮硬化)。その隣接する領域インク層101には、内部まで硬化するのに十分な照射エネルギーで照射し、内部まで硬化させる。時間が経過すると、盛り上がった端部領域のインク層100Aは表面近傍が硬化しているが内部が硬化していないため、図10Bに示すように盛り上がったインク層100Aが潰れて、隣接する領域のインク層101と同等な高さのインク層100Bとなる。ここで、インク層100Bに内部まで硬化させるに十分な照射エネルギーを照射させることで、平坦化したインク層100Bを本硬化させる。本発明の実施形態では、このように端部領域のUV照射を制御することによって、「厚盛り現象」、「厚盛り感」を抑制するようにしている。
【0061】
===印刷動作について===
<印刷動作の概要>
コントローラー60は、印刷データに基づいてキャリッジ21を移動方向に移動させつつヘッド31のノズルからインクを吐出させるパスと、被印刷材Sを搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返し実行して被印刷材Sの画像形成領域にドットを形成する。また、パスの際には、コントローラー60は、第1の照射部42a、42bのうちキャリッジ21の移動方向に対して上流側の照射部からUVを照射させる。これにより被印刷材Sに着弾したUVインク(ドット)に直ちにUVを照射させ、ドットを硬化させることができる。また、コントローラー60は、パスの合間に被印刷材Sを搬送方向に搬送させる(搬送動作)。
【0062】
なお、上述したように、仮硬化と本硬化とを第1の照射部(42a、42b)を使用して行う場合、第1の照射部42a、42b及び第2の照射部44のうち、第1の照射部42a、42bを使用して第2の照射部44は使用しないか、又は第2の照射部44を設置しなくてもよい。
【0063】
第1の照射部42a、42bと第2の照射部44とを使用する場合では、被印刷材Sに形成されたドット(第1の照射部42a、42bからのUV照射を受けた表面近傍が硬化したドット)が、搬送動作によって排紙前に第2の照射部44の下を通るとき、ドットが潰れてドットの平坦化が進んでおり、コントローラー60は、第2の照射部44から被印刷材Sに向けてUVを照射させる。こうして被印刷材Sに形成されたドットを本硬化(内部まで硬化)させる。このような2段階硬化を行うようにしてもよい
<移動方向のドット形成及びUV照射について>
図11A〜図11Fは、本発明の実施形態におけるパスの説明図である。なお、図では往路(移動方向の一端側から他端側に移動する経路)のパスにおけるドット形成の様子を示している。図において、画像形成領域Fは、パスの際にドット(画像)を形成する領域のことである。また、端部領域Eは、画像の端(エッジ)からの距離が所定値(例えば500μm)以下である画像形成領域Fの縁の領域である。
【0064】
また、図12は、図11A〜図11Fに示すパスによって被印刷材Sに形成される印刷画像と、UVの照射強度の関係の説明図である。図12の下の図は、被印刷材S上に形成される画像(印刷画像)を示しており、図12の上の図は、第1の照射部42aから画像の各位置(領域)へ照射するUVの照射強度を示している。なお、上の図の横軸は時間(位置)であり、縦軸はUVの照射強度である。
【0065】
コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データから、各パスにおける画像形成領域Fと端部領域Eの範囲を算出する。そして、以下に示すようにドットの形成とUV照射を行う。なお、前述したように、キャリッジ21の位置(移動方向の位置)は、リニア式エンコーダー51によって検出される。このリニア式エンコーダー51で検出される位置情報に基づいて、コントローラー60は、ヘッド31の位置や、第1の照射部42a、42bの位置をμm単位の精度で特定することができる。
【0066】
コントローラー60は、図11Aに示すように、キャリッジ21を移動方向に移動させつつ、ヘッド31が被印刷材Sの画像形成領域Fに達すると、ヘッド31の各ノズル列からインク(UVインク)を断続的に吐出させる。
【0067】
続いて、コントローラー60は、図11Bに示すように、キャリッジ21をさらに移動方向に移動させつつ、ヘッド31の各ノズル列からインクを吐出させる。また、コントローラー60は、第1の照射部42a、42bのうち移動方向の上流側に位置する第1の照射部42aが端部領域Eに達すると、第1の照射部42aから端部領域Eに向けて弱い照射強度Ia(図12参照)でUVを照射させる。この照射強度Iaのときの照射エネルギー(第2照射エネルギーに相当する)では、UV照射で表面近傍が硬化するが内部は硬化しないためUV照射を行った後、ドットが潰れ平坦化する(例えば、図10B参照)。これにより、図1Bの位置Aのような盛り上がりを低減することができ、端部領域Eを平坦にすることができる。よって、厚盛り現象を抑制することができる。
【0068】
コントローラー60は、図11Cに示すように、キャリッジ21をさらに移動方向に移動させつつヘッド31の各ノズル列からUVインクを吐出させる。また、コントローラー60は、第1の照射部42aが端部領域Eより内側の領域(端部領域Eに隣接する領域)に達すると、インク層の盛り上りがなく、第1の照射部42aのUVの照射強度をIb(>Ia)にする。この照射強度Ibのときの照射エネルギー(第1照射エネルギーに相当する)では、インク層の盛り上りの無い状態で内側の領域のインク層が内部まで硬化する。
【0069】
コントローラー60は、図11Dに示すように、キャリッジ21が移動方向の他端側の端部領域Eに達してもヘッド31からUVインクを吐出させてドットの形成を行う。また、このとき、コントローラー60は、端部領域Eよりも内側の領域には、第1の照射部42aから照射強度IbでUV照射を行わせる(これにより硬化させる)。
【0070】
図11Eに示すように、ヘッド31が画像形成領域Fを通過すると、コントローラー60は、ヘッド31からのUVインクの吐出を停止させる。また、コントローラー60は、第1の照射部42aが移動方向の他端側の端部領域Eに達したときに、第1の照射部42aのUVの照射強度をIbからIaに変更する(すなわち、UVの照射エネルギーを小さくする)。UVの照射エネルギーが小さいため、端部領域Eに形成されたドットにUVが照射されても、当該領域ではドットは表面近傍が硬化するが内部は硬化せず、その後、端部領域の盛り上りは潰れて平坦化する。これにより、移動方向の他端側の端部領域Eにおいても、図1Bの位置Aのような盛り上がりを低減することができ、厚盛り現象を抑制することができる。
【0071】
そして、図11Fに示すように、第1の照射部42aが、移動方向の他端側の端部領域Eを通過すると、コントローラー60は、第1の照射部42aからのUV照射を停止させる。
【0072】
その後、コントローラー60は、被印刷材Sをノズル列長さの搬送量で搬送方向に搬送させる(搬送動作)。そして、図11A〜図11Fに示すパス(往路のパス)と同様に、復路のパスを行なう。ただし、復路のパスでは、第1の照射部42a、42bのうち移動方向の上流側は第1の照射部42bになる。言い換えると、復路のパス際に、ヘッド31が被印刷材Sの画像形成領域Fの或る位置に来た後、当該或る位置に移動するのは第1の照射部42bである。よって、コントローラー60は、復路のパスでは第1の照射部42bがUVを照射するように制御する。この場合も、往路と同様に、コントローラー60は、ヘッド31からUVインクを吐出することによるドットの形成と、第1の照射部42bからの硬化用のUV照射を実行する。
【0073】
被印刷材S上に吐出されたUVインクは、第1の照射部42a、42b(これらの両方又は一方)で硬化させればよいが、上述したように、第1の照射部42a、42bと、第2の照射部44とを使用して硬化させることもできる。この場合は、第1の照射部42a(42b)とで被印刷材上に吐出されたUVインクを第1の照射部42a、42bで端部領域の盛り上がったインク層の表面近傍を硬化させ(仮硬化)、その後、被印刷材Sを相対的に搬送方向に搬送し、被印刷材Sに形成されたUVインク(仮硬化後のUVインク)の盛り上がりが潰れた状態で第2の照射部44の下を通る際に第2の照射部44からUVを照射してインク層の内部まで硬化(本硬化)させる。
【0074】
このように、コントローラー60は、パスの際に、リニア式エンコーダー51で検出されるキャリッジ21の位置情報(キャリッジ21と被印刷材Sとの相対位置情報)に基づいて、第1の照射部42a(42b)のUVの照射エネルギーを制御している。具体的には、移動方向の端部領域Eへ照射するUVの照射エネルギーを、端部領域Eに隣接する領域へ照射するUVの照射エネルギーよりも小さくなるようにしている。こうすることによって、移動方向の端部領域Eでドット(着弾したインク粒子、インク層等)を一旦表面近傍を硬化させ(仮硬化)、その後にドットが潰れて平坦化させる(この状態で内部まで硬化させる本硬化を行う)ことができる。これにより、例えば図1Bの位置Aのような盛り上がりの発生を抑制することができ、当該端部領域Eを、隣接する領域につながる平坦な形状にすることができる。
【0075】
なお、第1の照射部42a、42bと第2の照射部44の両者を使用して、第1の照射部42a、42bのUV照射で仮硬化、第2の照射部44のUV照射で本硬化を行ってもよい。このような場合は、第1の照射部42a(42b)により端部領域Eへ照射するUVの照射エネルギーを、端部領域Eに隣接する領域(ここへは硬化する照射エネルギーを照射しても良いし、仮硬化でも良い)へ照射するUVの照射エネルギーよりも小さくなるようにし、端部領域EではUVインクの表面近傍が硬化して内部まで硬化しないようにする(仮硬化)。すると、端部領域の盛り上がった箇所がその後に潰れて、隣接する領域の高さに近い高さまで高さが下がり、平坦化する。その下がった状態で第2の照射部44から照射されるUVで端部領域のUVインクが本硬化(内部まで硬化)する。(端部領域Eに隣接する領域が硬化している場合は、第2の照射部44からのUV照射は行わないで、端部領域Eだけを本硬化させる。
【0076】
<搬送方向の端部のドット形成及びUV照射について>
図13は、画像形成領域Fのうち搬送方向の端部を印刷する際の概略説明図である。同図は、画像形成領域Fの搬送方向下流側端に画像を形成する場合(例えば最初のパス)における第1の照射部42a(42b)からのUV照射についての説明図である。図では、説明の簡略化のため、第1の照射部(ここでは、第1の照射部42a)のみを示し、キャリッジ21やヘッド31の記載を省略している。
【0077】
前述したように、第1の照射部42aはUV照射の光源として、搬送方向(ノズルの並び方向)に沿って配置された複数のLEDを備えており、各LEDへの入力電流を制御することにより、搬送方向(ノズルの並び方向)の位置に応じてUVの照射条件(例えば照射強度)を変えることができる。
【0078】
コントローラー60は、最初のパスを行う際(言い換えると、画像形成領域Fのうちの搬送方向下流側端の印刷を行う際)、印刷データから求めた画像形成領域Fと端部領域Eに基づき、図13に示すように第1の照射部42aのUV照射条件を位置(搬送方向の位置)に応じて変える。
【0079】
例えば図13の場合、第1の照射部42aが移動方向に移動する際(すなわちキャリッジ21が移動方向に移動する際)、第1の照射部42aのうちの斜線部分では、前述の図12のように移動方向の位置に応じてUVの照射強度を変える(端部領域Eでは照射エネルギーを小さくして仮硬化させ、その隣接領域等の内部領域では照射エネルギーを大ききして硬化させる)。一方、第1の照射部42aのうち画像形成領域Fの搬送方向下流側端の端部領域E上を通過する部分(図の白色の部分)では、パスの際にUV照射強度を一定(例えば照射強度Ia)にする(端部領域Eでは照射エネルギーを小さくして仮硬化させる)。その後、仮硬化した盛り上がった端部領域が潰れ平坦化した状態で更にUV照射をして本硬化させる。こうすることにより、搬送方向下流側端の端部領域Eにおいても盛盛り現象の発生を抑えることができる。なお、画像形成領域Fのうちの搬送方向の上流側端の端部領域Eについても同様にすればよい。こうすることで、搬送方向の端部領域Eにおいても厚盛り現象を抑制することができる。
【0080】
以上、説明したように、プリンター1のコントローラー60は、第1の照射部42a(又は42b)が端部領域Eへ照射するUVの照射エネルギーを、端部領域Eに隣接する領域へ照射するUVの照射エネルギーよりも小さくなるように制御している。これにより、端部領域Eではドットを仮硬化させ、その後に盛り上がりが潰れた状態で本硬化するため、端部領域Eを平坦な形状にでき、厚盛り現象の発生を抑制することができる。よって、UVインクを用いて印刷される画像の画質を向上させることができる。
【0081】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0082】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、移動方向に移動するヘッド31からインクを吐出する動作と被印刷材を搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返すプリンター(いわゆるシリアルプリンター)を例に挙げているが、これに限らない。例えばラインプリンターに本発明を適用してもよい。
【0083】
図14は、ラインプリンターによる本発明の実施形態の概略説明図である。
図14に示すラインプリンターでは、被印刷材Sの搬送経路上にヘッド311とUVの照射部421が設けられている。ヘッド311には、UVインクを吐出するノズル列が、インク色毎に相対的搬送方向(以下、単に搬送方向ともいう)にライン状に(図上のライン方向に)並んでいる。例えば、ヘッド311の最も搬送方向の上流側には、シアンインクを吐出するシアンインクノズル列(図上、「Cyan」と記載)が設けられている。その搬送方向下流側に順次マゼンタインクを吐出するマゼンタインクノズル列(図上、「Magenda」と記載)、イエローインクを吐出するイエローインクノズル列(図上、「Yellow」と記載)が設けられ、ヘッド311の最も搬送方向下流側には、ブラックインクを吐出するブラックインクノズル列(図上、「Black」と記載)が設けられている。
【0084】
各色インクのノズル列の並び方向(ライン方向)は被印刷材Sの相対的搬送方向と交差する方向となっている。「交差方向」は、通常は直交方向である。各インクのノズル列の長さ(ライン方向の幅)は、画像形成領域Fのライン方向の幅とほぼ同等か、それより長く形成されている。ライン方向において画像形成領域Fが被印刷材Sの両縁まである場合は、画像形成領域Fは被印刷材Sの両縁まであることとなる(図14上で、画像形成領域Fの幅が被印刷材Sの幅と同じになる)。
【0085】
また、照射部421は、ヘッド311よりも搬送方向の下流側において、被印刷材Sの相対的搬送方向と交差する方向に設けられている。「交差方向」は、通常は直交方向である。つまり、照射部421はノズルの並び方向(ライン方向)に沿って設けられている。照射部421は、各インクのノズル列の長さとほぼ同じか、それより長く形成されている。被印刷材S上に吐出したインクにUVを照射して硬化させるため、各インクのノズル列より長くすると照射漏れが生じにくい。
【0086】
また、照射部421にはライン方向(ノズルの並び方向)に沿ってUV照射用のLED421Aが多数設けられており、各LED421Aへの入力電流を制御することによって、ライン方向の位置に応じてUVの照射強度を変えることができる。
【0087】
以上の構成において、被印刷材Sを搬送方向に搬送しつつ、ヘッド311の各ノズル列のノズルからUVインクを吐出し、さらに被印刷材Sに着弾したUVインクに照射部421からUVを照射する。こうして、被印刷材Sに画像を印刷する。
【0088】
このラインプリンターの場合、ヘッド311の各ノズル列と照射部421がヘッド部に相当する。また、ヘッド部と被印刷材Sとを搬送方向に相対的に移動させる機構(例えば搬送ユニット)が移動手段に相当する。なお、この例では被印刷材Sを搬送方向に搬送しつつUVインクの吐出(ドット形成)とUV照射を行うこととしたが、ヘッド部(ヘッド311、照射部421)を搬送方向に移動しつつ被印刷材Sにインクの吐出及びUV照射を行うようにしてもよい。すなわち、ヘッド部と被印刷材Sを搬送方向(交差方向)に相対的に移動させてUVインクの吐出とUV照射を行うことにより、ライン方向(ノズルの並び方向)にドットが並ぶドット列を一度に形成するものであればよい。
【0089】
このようなラインプリンターにおいても前述の実施形態と同様に端部領域へのUV照射量を制御することができる。例えば、被印刷材Sの搬送速度から被印刷材Sの搬送方向の位置を検出し、その位置情報に応じて照射部421の照射強度を弱めることで、搬送方向の端部領域へのUVの照射エネルギーを小さくして端部領域を仮硬化させ、端部領域以外には大きな照射エネルギーで硬化させる。また、ライン方向の端部領域Eにインクを吐出するノズルに対応する位置のLED421AのUVの照射強度を弱め、ノズル並び方向の端部領域EへのUVの照射エネルギーを小さくし、端部領域を仮硬化させ、端部領域以外には大きな照射エネルギーで硬化させる。盛り上がった端部領域は仮硬化させるが、その後に潰れて盛り上がりが減少する。この状態で更にUV照射することで本硬化させる。仮硬化した端部領域を本硬化させるには、照射部421を被印刷材の相対的搬送方向の下流側(図14の照射部421の下側)に更に設け、ここでUV照射をして本硬化させるやり方や、図14の照射部421のLED421Aを複数ライン設け、被印刷材が通過する際に1つのラインからUV照射して端部領域を仮硬化(及び端部領域以外を硬化)させ、更に別のラインからUV照射して被印刷材が通過する際に仮硬化した端部領域を本硬化させるやり方等がある。
【0090】
また、例えば、印刷領域に搬送された連続用紙(又は単票紙)に対して、ヘッド及び照射部を被印刷材の搬送方向(交差方向に相当)に移動しながらインクの吐出及びUV照射を行う動作と、ヘッド及び照射部を搬送方向と交差する被印刷材の幅方向(ノズルの並び方向に相当)に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない被印刷材の部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。この場合、ヘッド及び照射部を移動する機構(例えばキャリッジユニット)が移動手段に相当する。
【0091】
これらのプリンターの場合においても、印刷データに基づいて、画像形成領域のうちの端部領域を算出し、その端部領域へ照射するUVの照射エネルギーが小さくなるようにすればよい。これにより、前述した実施形態のように、仮硬化させて、その後、盛り上がり部の盛り上がりが減少した状態で本硬化させることにより、厚盛り現象の発生を抑制することができ、画質の向上を図ることができる。
【0092】
<インクについて>
前述の実施形態では、光硬化性インクとして、UVインクを例に挙げているが、これに限らない。例えば、可視光を照射すると硬化するインクであってもよい。
また、前述の実施形態では、UVインクとして4色のインク(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)を用いていたがこれには限られず、3色以下であってもよいし、5色以上であってもよい。
【0093】
<インクの吐出方式について>
前述の実施形態では、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室を膨張・収縮させることによりノズルからインクを吐出させるピエゾ方式であったが、これには限られない。例えば、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってノズルからインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0094】
<被印刷材について>
前述の実施形態では、インク受容層を持たない被印刷材に画像の形成を行っていたがこれには限られず、インク受容層を持つ被印刷材に画像の形成を行っても良い。ただし、インク受容層を持たない被印刷材に印刷する場合に「厚盛り現象」や「厚盛り感」が顕著になるので、インク受容層を持たない被印刷材に対して印刷する場合に特に有効である。
【0095】
<照射部について>
前述の実施形態では、双方向印刷を行っていたがこれには限られず、単方向印刷を行なうようにしてもよい。具体的には、往路では前述の実施形態のようなドットの形成とUV照射を行い、復路ではUV照射のみ(キャリッジ21の片側あるいは両側の第1の照射部を用いたUV照射)を行なってドットを硬化させるようにしてもよい。この場合、往路におけるUV照射条件を前述の実施形態のように制御すればよい。
また、前述した実施形態では、キャリッジ21における移動方向の両端にそれぞれUVの照射部(第1の照射部42a、42b)を設けていた。そして、双方向印刷におけるキャリッジ21の移動する方向に応じて使用する照射部を切り替えるようにしていたが、これには限られない。例えば、キャリッジ21の片側端に照射部を設けて単方向印刷を行なうようにしてもよい。この場合、ドットを形成するパスの際にヘッドよりも移動方向の上流側に位置するように照射部を設ければよい。こうすることで、ドット形成後に直ちにUV照射を行うことができる。また、この場合も、照射部からのUV照射を前述の実施形態のように制御することで、端部領域の厚盛り現象を抑制することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 プリンター、
10 搬送ユニット、11 給紙ローラー、13 搬送ローラー、
14 プラテン、15 排紙ローラー、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、
22 キャリッジモーター、24 ガイド軸、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 照射ユニット、42a,42b 第1の照射部、44 第2の照射部、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダー、
53 紙検出センサー、54 光学センサー、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路
110 コンピューター、
552 光ダイオード、554 コリメータレンズ、556 検出処理部、
558 フォトダイオード、560 信号処理回路、
562A,562B コンパレーター、
564 リニア式エンコーダー符号板、566 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射によって硬化する光硬化性インクを被印刷材に吐出するノズルが複数並んで形成されたノズル列と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、
前記ヘッド部と前記被印刷材とを前記ノズル列を形成するノズルの並び方向と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段により相対移動した前記被印刷材の画像形成領域に前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出させ、前記画像形成領域に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させるよう制御する制御部と、
を備えた印刷装置であって、
前記制御部は、前記照射部が前記画像形成領域に照射する前記光の照射エネルギーを、前記画像形成領域の端部領域に照射する前記光の照射エネルギーが、前記画像形成領域の前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さくなるように制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記移動手段は、前記ヘッド部を搭載し前記交差方向に往復移動するキャリッジを有し、
前記制御部は、
前記移動手段に前記キャリッジを前記交差方向に往復移動させ、前記被印刷材の前記画像形成領域に前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出させ、前記画像形成領域に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させる動作と、
前記キャリッジが前記交差方向に往復移動する合間に前記被印刷材を、前記ノズル列を形成するノズルの並び方向に搬送させる動作と、
を繰り返し行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記キャリッジが前記交差方向に往復移動する際に、
或る相対移動では、前記照射部から前記端部領域に、前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さい照射エネルギーの前記光を照射させ、
前記或る相対移動よりも後の別の相対移動では、前記或る相対移動で前記光が照射された前記端部領域に、更に前記照射部から前記光を照射させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の印刷装置であって、
前記キャリッジと前記被印刷材との前記交差方向の相対位置を検出する検出部を有し、
前記制御部は、前記検出部で検出された相対位置情報に基づいて、前記照射部が照射する前記光の照射エネルギーを変更する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記照射部は、前記キャリッジにおいて前記ノズル列よりも前記交差方向の一方側と、前記ノズル列よりも前記交差方向の他方側とにそれぞれ設けられており、
前記制御部は、前記キャリッジが移動し、前記ノズル列が前記被印刷材の前記画像形成領域の任意の位置に来た後で当該位置に移動する前記一方側又は他方側の前記照射部が前記光を照射するように制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の印刷装置であって、
前記照射部は、前記ノズル列と前記交差方向に並んで設けられており、
前記制御部は、前記ノズルの並び方向の前記端部領域へ前記光硬化性インクを吐出するノズルに対応する位置の前記照射部の前記光の照射エネルギーが、前記画像形成領域の前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さくなるように、前記ノズルの並び方向の位置に応じて前記照射部の前記光の照射エネルギーを制御する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
光の照射によって硬化する光硬化性インクを被印刷材の画像形成領域に吐出するノズルが複数ライン状に並んで形成されたノズル列と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部と、
前記ヘッド部と前記被印刷材とをノズル列のライン方向と交差する交差方向に相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段により相対移動した前記被印刷材の前記画像形成領域に前記ノズルから前記光硬化性インクを吐出させ、前記画像形成領域に着弾した前記光硬化性インクに前記照射部から前記光を照射させるよう制御する制御部と、
を備えたラインプリンターであって、
前記制御部は、前記照射部が前記画像形成領域に照射する前記光の照射エネルギーを、前記画像形成領域の端部領域に照射する前記光の照射エネルギーが、前記画像形成領域の前記端部領域に隣接する領域へ照射する前記光の照射エネルギーよりも小さくなるように制御することを特徴とするラインプリンター。
【請求項8】
光の照射によって硬化する光硬化性インクを被印刷材に吐出するノズルが複数並んで形成されたノズル列と前記被印刷材に前記光を照射する照射部とを有するヘッド部を備えた印刷装置により前記被印刷材に画像を印刷する印刷方法であって、
前記ヘッド部と前記被印刷材とを前記ノズル列を形成するノズルの並び方向と交差する交差方向に相対的に移動させる相対移動工程と、
前記相対移動工程の際に、前記ノズル列の各ノズルから前記被印刷材の画像形成領域へ前記光硬化性インクを吐出する吐出工程と、
前記吐出工程によって前記画像形成領域の端部領域に隣接する領域に着弾した前記光硬化性インクには前記照射部から第1照射エネルギーで前記光を照射し、前記端部領域に着弾した前記光硬化性インクには前記照射部から前記第1照射エネルギーよりも小さい第2照射エネルギーで前記光を照射する照射工程と、
を有することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−71372(P2013−71372A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213177(P2011−213177)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】