説明

印刷装置、印刷システム及びプログラム

【課題】試し印刷を好適に行い得る印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷条件に基づいて複数の給紙トレイPT1,PT2の中から選択した何れか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷を行う印刷装置において、前記印刷条件に基づいて印刷する通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件に含まれる複数の項目のうち少なくとも給紙トレイを選択する項目について条件を変更した印刷条件に基づいて印刷する試し印刷モードとのうちいずれかを選択して実行するモード制御部(32)を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷装置、印刷システム及びプログラムにかかり、詳しくは、試し印刷を好適に行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙に画像を印刷する印刷装置の一つとして、例えばインクジェット式プリンタ(以下「プリンタ」)が知られている。この種のプリンタでは、記録紙のタイプ(種類及びサイズ)に対する許容度がレーザプリンタ等に比較して一般に高いため、普通紙以外にも、種々のタイプ(例えば、光沢紙、光沢フィルム、専用紙、OHPシート、はがきなど)の記録紙に印刷することが可能となっている。
【0003】
ところで、このようなプリンタに備えられる給紙トレイが1つの場合には、ユーザは、異なるタイプ(サイズ、紙種)の記録紙に印刷を行う毎にその都度、給紙トレイにセットする記録紙を入れ替えなければならない。従って、例えば年賀状などの試し印刷を他のタイプの記録紙(例えば普通紙)に行うような場合には、給紙トレイにセットしている記録紙を印刷毎に入れ替える必要があった。
【0004】
そこで近年では、プリンタに複数の給紙トレイを備え、印刷する記録紙のタイプに合わせて上記複数の給紙トレイの中から何れか一つのトレイを選択して印刷することができる構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなプリンタでは、例えば、ユーザが手動で設定して給紙トレイを指定することもできるし、或いは、自動選択モードに設定することで、プリンタ側で印刷条件に合致したトレイを自動的に選択することもできるようになっている。
【特許文献1】特開2002−156803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記複数の給紙トレイを備えるプリンタにおいては、通常、自動選択モードが設定された場合には、プリンタの誤動作を防止するために、使用する給紙トレイが記録紙のタイプ(印刷条件)によって制限されるようになっている。このため、例えば2つの給紙トレイを備えるプリンタにおいて、先に述べたような、年賀状などの試し印刷を行う場合には、給紙トレイは、はがきを給紙する側の給紙トレイ(以下「第1トレイ」という)に固定され、他方側の給紙トレイ(以下「第2トレイ」という)は使用が制限されるようになる。従って、試し印刷を普通紙に行う場合に該普通紙が仮に第2トレイにセットされていたとしても、第1トレイにセットされている記録紙(はがき)を普通紙に入れ替える必要があり、こうした点でなお従来が抱える課題を依然として残すものとなっていた。
【0006】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、試し印刷を好適に行い得る印刷装置、印刷システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明の第1の態様では、複数の給紙トレイを有し、印刷条件に基づいて前記複数の給紙トレイの中から選択したいずれか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷を行う印刷装置において、前記印刷条件に基づいて印刷を行うための通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件とは別に予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷を行うための試し印刷モードと、のうちいずれかを選択して実行するモード制御部を備えたことを要旨としている。
【0008】
この印刷装置によれば、試し印刷モードでは、通常モード用に設定された印刷条件とは別途、予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷が実行される。これにより、試し印刷を好適に行うことが可能となる。
【0009】
この発明の第2の態様では、複数の給紙トレイを有し、印刷条件に基づいて前記複数の給紙トレイの中から選択したいずれか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷を行う印刷装置において、前記印刷条件に基づいて印刷を行うための通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件に含まれる複数の項目のうち、少なくとも前記給紙トレイを選択する項目について条件を変更した試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷を行うための試し印刷モードと、のうちいずれかを選択して実行するモード制御部を備えたことを要旨としている。
【0010】
この印刷装置によれば、試し印刷モードで使用する給紙トレイを通常モードで使用する給紙トレイと異なるものとすることができる。これにより、試し印刷を好適に行うことが可能となる。
【0011】
上述した印刷装置において、前記モード制御部は、前記試し印刷モードでは、更に前記記録紙の種類を選択する項目について条件を変更する、といった態様を採用することもできる。
【0012】
この構成によれば、試し印刷モードでは、使用する記録紙の種類に応じた適切なインク濃度となるように印刷データを作成することができる。
上述した印刷装置において、前記モード制御部は、前記試し印刷モードでは、前記記録紙の種類に合わせて更に印刷解像度を選択する項目について条件を変更する、といった態様を採用することもできる。
【0013】
この構成によれば、試し印刷モードでは、印刷解像度が、使用する記録紙の種類に応じた適切な解像度に変更される。
上述した印刷装置において、前記モード制御部は、前記試し印刷モードでは、更に印刷部数を設定する項目について該印刷部数を1部とするように条件を変更する、といった態様を採用することもできる。
【0014】
この構成によれば、試し印刷モードでは、印刷部数が1部とされることで、必要以上に記録紙が消費されることが防止される。
上述した印刷装置において、前記モード制御部は、前記通常モード用に設定された前記印刷条件を保存し、前記試し印刷モードを選択して実行した後には前記通常モードを実行可能とする、といった態様を採用することもできる。
【0015】
この構成によれば、試し印刷モードを実行した後に、それに続いて通常モードを実行することができる。
上述した印刷装置において、前記モード制御部は、前記試し印刷モードを選択して実行した後には、前記通常モードを続行するかどうかをユーザに問い合わせる画面を表示装置に表示する、といった態様を採用することもできる。
【0016】
この構成によれば、試し印刷モードを実行した後に、それに続いて通常モードを実行するか否かをユーザからの指示に基づいて判断することができる。
この発明の第3の態様では、印刷条件に基づいて印刷データを作成するプリンタドライバを備えたコンピュータと、複数の給紙トレイを有し、前記印刷条件に基づいて前記複数の給紙トレイの中から選択されたいずれか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷を行う印刷装置とが接続されてなる印刷システムにおいて、前記プリンタドライバは、前記印刷条件に基づいて印刷を行うための通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件とは別に予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷を行うための試し印刷モードと、のうちいずれかを選択して実行するモード制御部を備えることを要旨としている。
【0017】
この印刷システムによれば、試し印刷モードでは、通常モード用に設定された印刷条件とは別途、予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷が実行される。これにより、試し印刷を好適に行うことが可能となる。
【0018】
この発明の第4の態様では、コンピュータにより実行され、ユーザにより設定された印刷条件に基づいて複数の給紙トレイの中から選択したいずれか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷するためのプログラムであって、前記コンピュータが、前記印刷条件の入力を前記ユーザから受け付ける第1のステップと、前記印刷条件に基づいて印刷を行うための通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件とは別に予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷を行うための試し印刷モードと、のうちいずれのモードを実行するかを判断する第2のステップと、前記第2のステップでの判断結果に基づいて、前記通常モードと前記試し印刷モードとのうちいずれかのモードで印刷データを作成する第3のステップと、を実行するためのプログラムであることを要旨としている。
【0019】
このプログラムによれば、試し印刷モードでは、通常モード用に設定された印刷条件とは別途、予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷データが作成される。これにより、試し印刷を好適に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施の形態にかかる印刷システム1の概略構成を示すブロック図である。この印刷システム1は、画像入力装置2と、コンピュータ3と、印刷装置としてのカラーインクジェット式プリンタ(以下「プリンタ」)4とを備えて構成されている。
【0021】
画像入力装置2は、例えばスキャナやデジタルカメラあるいはデジタルビデオカメラ等により構成され、本実施の形態においてはRGB(赤、緑、青)の階調データを画像データD1としてコンピュータ3に供給する。コンピュータ3は、例えばパーソナルコンピュータにより構成され、画像データD1に所定の画像処理を施して、プリンタ4に供給する印刷データPDを作成する。具体的には、プリンタ4が使用する複数のインク色、例えばCMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、黒)に対応した2値データを印刷データPDとして作成する。なお、本実施の形態においては、画像入力装置2を含む態様で印刷システム1が構成されているが、上記画像入力装置2を含まず、コンピュータ3とプリンタ4とで印刷システム1が構成されている態様であってもよい。このような印刷システム1は、広義には「印刷装置」と呼ぶことができる。
【0022】
次に、コンピュータ3のシステム構成について説明する。同図1に示すように、コンピュータ3は、CPU11、ROM12、RAM13、記憶装置14、表示装置15、操作装置16、入力I/F(インタフェース)17、出力I/F18及びドライブ装置19を備えて構成されており、それらはバス20を介して相互に接続されている。
【0023】
ROM12には、コンピュータ3全体の動作を制御するプログラムやデータが格納されている。RAM13には、記憶装置14やドライブ装置19からロードされたプログラムやデータ等が一時的に記憶される。CPU11は、これらROM12やRAM13に記憶並びに格納されているプログラムやデータを用いて、さらには、RAM13を各種の処理を行う際のワークエリアとして利用しながら、コンピュータ3全体の動作を統括的に制御する。例えば、CPU11は、画像入力装置2やプリンタ4との間のデータ通信を制御したり、後述する試し印刷の実行にかかる処理を制御したりする。
【0024】
記憶装置14には、コンピュータ3全体の制御を行うための図示しないオペレーティングシステム(OS)や後述する試し印刷を実現するためのプログラム(プリンタドライバ用プログラム)等が記憶され、これらプログラム等は必要に応じて上記RAM13に読み出され、CPU11により実行される。なお、記憶装置14としては、例えばハードディスクや通信回線を介して接続される外部記憶装置等が該当する。
【0025】
表示装置15は、例えばCRTやLCD等により構成され、印刷時にユーザが印刷条件を設定するための設定画面の表示や画像の表示等に用いられる。操作装置16は、例えばキーボードやマウス等により構成され、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力等に用いられる。
【0026】
入力I/F17は、画像入力装置2との間のインタフェース部として機能し、同装置2からの画像データD1を上記RAM13や記憶装置14に出力する。出力I/F18は、プリンタ4との間のインタフェース部として機能し、コンピュータ3が形成した印刷データPDを同プリンタ4に出力する。
【0027】
CPU11が実行するプログラム(プリンタドライバ用プログラム等)やデータ等は、例えば、記録媒体21にて提供される。ドライブ装置19は、この記録媒体21を駆動してその記録内容にアクセスし、そこからプログラムやデータを読み出して記憶装置14に出力する。なお、記録媒体21としては、光ディスク(CD-ROM,DVD-ROM, …)や光磁気ディスク(MO,MD,…)等、任意の記録媒体を使用することができる。また、記録媒体21には、通信媒体を介してアップロード又はダウンロードされたプログラムを記録した媒体、ディスク装置等も含まれる。
【0028】
図2に、上記コンピュータ3の機能構成を示す。
コンピュータ3には、OSの下で動作するアプリケーションプログラム(以下「アプリケーション」)31が組み込まれている。また、このコンピュータ3のOSには、プリンタドライバ32として機能するプリンタドライバ用プログラムやビデオドライバ33として機能するビデオドライバ用プログラムも組み込まれており、アプリケーション31は、これらのドライバ用プログラムを起動することで画像データD1を取り扱う各種の処理を行う。例えばアプリケーション31は、プリンタドライバ用プログラムを起動することでプリンタ4に供給する印刷データPDを画像データD1から生成させたり、ビデオドライバ用プログラムを起動することで画像データD1に基づく画像を表示装置15に表示させたりする。
【0029】
このコンピュータ3において、印刷処理を開始する操作等は上記操作装置16を用いて行われる。プリンタドライバ32は、同操作装置16を通じて印刷処理開始の指示をユーザから受けると、上記RAM13や記憶装置14に格納されている画像データD1をアプリケーション31から受け取る。そして、この画像データD1から印刷データPDを生成し、それをプリンタ4に出力する。そして、プリンタ4では、受け取った印刷データPDに基づいて印刷を行う。なお、図2では記載を省略しているが、プリンタ4とプリンタドライバ32との間においては各種の制御コマンドの授受も行われる。
【0030】
なお、プリンタドライバ32は、本実施の形態においてはモード制御部としても動作し、後述するように、「通常モード」と「試し印刷モード」とのうちいずれか選択したモードで印刷を行うようになっている。
【0031】
次に、上記プリンタドライバ32の機能構成を引き続き図2を参照しながら説明する。
プリンタドライバ32は、解像度変換部41、色変換部42、2値化部43及びMW(マイクロウィーブ)部44を有して構成されている。
【0032】
解像度変換部41は、画像データD1の解像度をプリンタ4での印刷処理に適した解像度(印刷解像度)に変換する処理を行う。例えば、画像データD1の解像度が印刷解像度よりも低い場合には、解像度変換部41は、線形補間を行うことで画像データD1の隣接するラスタ間に新たなデータを作成する。反対に、画像データD1の解像度が印刷解像度よりも高い場合には、解像度変換部41は、一定の割合でデータを間引くことで画像データD1の解像度をそれよりも低い解像度に変換する。
【0033】
色変換部42は、解像度変換後のRGBの3つの色成分からなる画像データ(以下「RGBデータ」)を上記RAM13や記憶装置14等に保持されている色変換テーブルLUTを用いて、プリンタ4が利用可能な複数のインク色、本例ではCMYKの4つの色成分からなる画像データ(以下「CMYKデータ」)に変換する処理を行う。なお、色変換テーブルLUTは複数設けられ、色変換部42は、印刷する記録紙の種類(紙種)に応じて、それぞれの紙種に対応する色変換テーブルLUTを用いて色変換を行う。これにより、記録紙の紙種に適切なインク量(インク濃度)となるよう色変換して、該記録紙への印字品質を最適化するようにしている。
【0034】
2値化部43は、こうして形成されたCMYKデータをプリンタ4が表現可能な2階調の画像データ(2値データ)に変換する、いわゆるハーフトーン処理を行う。即ち、CMYKデータは、各色例えば階調値0〜255の256階調で表現されたデータであるのに対して、プリンタ4はドットを形成する、或いはドットを形成しない、のいずれかの状態しか採り得ない。このため、こうした例えば256階調で表現された画像データをドット形成の有無を表す2値データに変換する必要があり、この階調数の変換を行う処理がハーフトーン処理である。
【0035】
MW部44は、こうしたハーフトーン処理後の画像データ(2値データ)を、プリンタ4でのドットの形成順序を考慮しながら該プリンタ4に転送すべき順序に並び替え、それを印刷データPDとして形成する。即ち、印刷ヘッドにあっては、各ノズルが紙送り方向に印刷解像度よりも低解像度のノズルピッチで配置されているため、連続するラスタを1回の主走査では形成することができない。そこで、毎回の主走査ではノズルピッチ間隔で複数のラスタを形成しながら、ラスタを形成する度に少しずつ形成位置をずらして各ラスタ間を順次埋めるようにすることで、最終的には連続したラスタを形成するようにしている。このような印刷ヘッドのノズル数やノズルピッチ等を考慮して、プリンタ4に転送すべき順序にドットデータを並び替える処理をマイクロウィーブ処理という。なお、マイクロウィーブ処理が施されて形成された印刷データPDは、各主走査時のドットの形成有無を表すデータ、いわゆるラスタデータと紙送り量を示すデータとを含んでいる。
【0036】
次に、図3を参照してプリンタ4の構成を説明する。プリンタ4は、印刷制御部50と、印刷駆動部51と、複数(本例では2つ)の給紙トレイとしての第1トレイPT1,第2トレイPT2と、を備えて構成されている。
【0037】
印刷制御部50は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit )により構成されており、コントローラ52、I/F(インタフェース)回路53、バッファメモリ54、イメージバッファ55、メインメモリ56及びEEPROM57を有している。コントローラ52はCPUを中心に構成され、プリンタ4の動作を統括的に制御する。バッファメモリ54やイメージバッファ55はそれぞれRAM(例えばSDRAM)にて構成され、メインメモリ56はROMにて構成されている。
【0038】
I/F回路53は、プリンタ4とプリンタドライバ32との間のインタフェースとして機能し、プリンタドライバ32から受信した印刷データPDや各種の制御コマンドをバッファメモリ54に格納したり、逆に、バッファメモリ54を通じてコントローラ52から受け取った制御コマンドをプリンタドライバ32に送信したりする。
【0039】
バッファメモリ54には、印刷データPDや制御コマンドが一時的に蓄えられる。イメージバッファ55には、バッファメモリ54に蓄えられた印刷データPDの中から各色の成分の印刷データ(イメージデータ)がコントローラ52による指示のもと、バッファメモリ54から逐次読み出されて格納される。メインメモリ56及びEEPROM57には、コントローラ52が実行するプログラムやデータ等が格納されている。コントローラ52は、これらメインメモリ56やEEPROM57に格納されているプログラムを実行して、プリンタ4の動作を統括的に制御する。
【0040】
コントローラ52には、さらに、キャリッジモータ71を駆動する主走査駆動回路61と、紙送りモータ72を駆動する副走査駆動回路62と、印刷ヘッド73を駆動するヘッド駆動回路63と、給紙部74の動作を制御するトレイ選択回路64と、操作パネル75の動作を制御するパネル制御回路65とが接続されている。なお、キャリッジモータ71と、紙送りモータ72と、印刷ヘッド73と、給紙部74とにより印刷駆動部51が構成されている。コントローラ52は、バッファメモリ54に蓄えられている印刷データPDや制御コマンドの中から必要な情報を読み込み、それに基づいて上記各回路61〜65を制御する制御信号を生成する。
【0041】
印刷ヘッド73は、ブラック用インクカートリッジとカラー用インクカートリッジとが搭載された図示しないキャリッジに取り付けられており、給紙部74から供給される記録紙を紙送り方向(主走査方向に垂直な方向:副走査方向)に案内する図示しないプラテンに対向して配置されている。この印刷ヘッド73には、インク滴を吐出するためのノズル孔が複数形成されている。本実施の形態においては、これらの各ノズル孔から、大,中,小の3種類のドット径のうちいずれかのドット径のインク滴が上記イメージバッファ55からラスタ毎に読み出された印刷データPD(ラスタデータ)に基づいてヘッド駆動回路63からの信号により吐出されるようになっている。
【0042】
キャリッジは、主走査駆動回路61からの信号により駆動されるキャリッジモータ71によって主走査方向に往復動される。また、記録紙は、副走査駆動回路62からの信号により駆動される紙送りモータ72によって副走査方向に紙送りされる。そして、キャリッジが往復動される際に所定のタイミングで上記印刷ヘッド73の各ノズル孔からインク滴が吐出され、さらには、こうしたキャリッジの往復動に合わせて記録紙が紙送りされることにより、記録紙への印刷が行われるようになっている。
【0043】
給紙部74は、例えば、給紙ローラ等からなり、トレイ選択回路64からの信号に基づいて、第1トレイPT1及び第2トレイPT2のうち何れか選択されたトレイから記録紙を取り込んで印刷に供給するものとなっている。
【0044】
なお、本実施の形態においては、第1トレイPT1はA4サイズの普通紙を記録紙として給紙し、第2トレイPT2は上記A4サイズの普通紙を含むその他のサイズ及び紙種の記録紙(A判、B判、L判、はがき等)を給紙する構成となっている。即ち、一般に最もよく使用すると考えられるA4サイズの普通紙を専用に給紙するトレイ(本例では第1トレイPT1)を別途設けることで、利便性の向上を図っている。なお、ここでは都合上、プリンタ4の外観等を示す図は割愛しているが、例えば、第1トレイPT1はプリンタ4の前面側に設けられ、第2トレイTP2はプリンタ4の後面側に設けられる。これによりユーザが第1トレイPT1に記録紙(A4サイズの普通紙)をセットする作業を容易とするようにしている。
【0045】
パネル制御回路65は、プリンタ4の操作装置(ユーザインタフェース)として設けられる操作パネル75に電気的に接続されている。この操作パネル75には、電源スイッチや印刷開始スイッチ等の操作キーの他、例えば液晶にてなる表示画面等が設けられている。パネル制御回路65は、操作パネル75の操作キーがユーザにより操作されると、その操作されたキーに対応したキー操作信号をコントローラ52に出力し、それに応答してコントローラ52は、そのキー操作信号に対応した処理を実行する。また、パネル制御回路65は、コントローラ52からの制御信号に基づいて操作パネル75の表示画面上に印刷処理に関する各種ウィンドウの表示を行う。
【0046】
次に、図4〜図7を参照して、本実施の形態における試し印刷について説明する。
図4は、上記プリンタドライバ32(モード制御部)が実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【0047】
まずステップ100で、プリンタドライバ32は、ユーザが印刷条件を設定するための設定画面を表示装置15に表示して、該印刷条件の入力を促す。なお、プリンタドライバ32は、このステップ100でユーザにより設定された印刷条件を上記RAM13(図1参照)等に一時的に保持(保存)する。
【0048】
図5に、上記設定画面の表示例を示す。同図5に示すように、設定画面W1には、上記印刷条件を設定するための複数の項目が設けられている。例えば、記録紙の種類(図中「用紙種類」にて示す)を選択するための選択ボックスSB1、使用するインクの種類(カラー又は黒)を選択するためのチェックボックスCB1a,CB1b、画質モード(印刷解像度:ここでは、高画質、普通又は速いの3段階)を選択するためのチェックボックスCB2a〜CB2c、給紙トレイ(第1トレイ又は第2トレイ)を選択するためのチェックボックスCB3a,CB3b、印刷部数を設定するための増減ボタンSB2等が設けられている。
【0049】
また、設定画面W1には、上記印刷条件に含まれる複数の項目のうち特定の項目について条件を変更して印刷する「試し印刷モード」を設定するためのチェックボックスCB4がさらに設けられている。なお、このチェックボックスCB4がオフ(設定無効)に設定されている場合には、プリンタドライバ32は試し印刷を行わず、上記設定画面W1上で設定された印刷条件に基づいて、「通常モード」として印刷を行う。この「試し印刷モード」での印刷(試し印刷)については後述する。
【0050】
次にステップ110で、プリンタドライバ32は、印刷開始の操作(本例では設定画面W1上の「OK」ボタンの押下操作)が行われたことを検知すると、次いでステップ120で、「試し印刷モード」が設定されているか否か、即ち、本例ではチェックボックスCB4がオンされているか否かを判断する。
【0051】
このとき、「試し印刷モード」が設定されている(ステップ120:YES)と判断した場合には、プリンタドライバ32は、ステップ130に移行して試し印刷を実行する。一方、「試し印刷モード」が設定されていない(ステップ120:NO)と判断した場合には、プリンタドライバ32は試し印刷を実行せず、後述するステップ160に移行して「通常モード」での印刷を実行する。
【0052】
ここで、ステップ130で実行する試し印刷について説明する。
先にも述べたように、試し印刷は、ステップ100でユーザにより設定(保存)された印刷条件に含まれる複数の項目(図5参照)のうち、特定の項目について条件を変更した印刷条件に基づいて行われる。
【0053】
本実施の形態においては、プリンタドライバ32は、ステップ100で設定された印刷条件に含まれる複数の項目のうち、給紙トレイを選択する項目と、記録紙の種類を選択する項目と、画質モード(印刷解像度)を選択する項目と、印刷部数を選択する項目とについて条件を変更する。具体的には、給紙トレイを“第1トレイ”に変更し、記録紙の種類を“普通紙”に変更し、印刷部数を“1”に変更し、画質モードを“普通”に変更する。なお、これらは、ユーザにより設定された印刷条件と同じであれば変更の必要はない。
【0054】
つまりは、給紙トレイを“第1トレイ”に変更することで、試し印刷を第1トレイPT1にセットされているA4サイズの普通紙にて行うようにしている。
また、これに合わせて記録紙の種類を“普通紙”に変更することで、普通紙への印刷に適した色変換テーブルLUTを用いて印刷データPDを作成するようにしている。これにより、印刷ににじみや擦れなどが生じることを好適に抑制している。即ち、ただ単に普通紙への試し印刷を可能とするのであれば、上記のように給紙トレイの条件を普通紙専用のトレイ(第1トレイPT1)に変更するのみでよいが、このような変更のみでは、印刷ににじみや擦れなどが生じることが懸念される。これは、「通常モード」で印刷する記録紙の種類と「試し印刷モード」で印刷する記録紙の種類(本例では普通紙)とが異なる場合には、印刷時のインク濃度が互いに異なることに起因する。こうした懸念を回避すべく、試し印刷で使用する記録紙の種類に合わせて条件を変更することで、良好な品質を維持するようにしている。
【0055】
また、印刷部数を“1”に変更することで、試し印刷で記録紙(普通紙)が必要以上に消費されることを防止している。
さらには、画質モードを“普通”に変更することで、試し印刷の印刷時間を極力削減しつつ、それでいて印字画質を好適に維持するようにしている。
【0056】
なお、これら試し印刷時に条件を変更させる項目及び設定値は、例えば上記RAM13や記憶装置14等(図1参照)に予めデフォルト値として記憶され、プリンタドライバ32は、これら記憶された内容に基づいて条件を変更するようになっている。
【0057】
プリンタドライバ32は、このような試し印刷の実行時においては、例えば図6に示すような画面W2を表示装置15に表示している。そして、ステップ140で試し印刷が終了したことを検知すると、次いでステップ150で、例えば図7に示すような画面W3を表示装置15に表示して引き続き「通常モード」での印刷を行うかどうかをユーザに問い合わせ、印刷を続行するか否かを判断する。
【0058】
このとき、「通常モード」での印刷を続行する(ステップ150:YES)と判断した場合には、プリンタドライバ32は、ステップ160に移行して、先のステップ100で設定(保存)された印刷条件に基づいて印刷を実行する。そして、ステップ170で印刷が終了したことを検知すると、印刷処理を終了する。
【0059】
一方、「通常モード」での印刷を続行しない(ステップ150:NO)と判断した場合には、プリンタドライバ32は、先のステップ100に戻って、再度、印刷条件の入力(設定の変更)をユーザに促し、上記ステップ110〜ステップ150の処理を繰り返す。
【0060】
図8に、上記のような印刷処理に基づいて実施した試し印刷の例を示す。
なお、ここでは「通常モード」用の印刷条件として、上記設定画面W1上(図5参照)で、記録紙の種類として“はがき”、使用するインクの種類として“カラー”、画質モードとして“高画質”、給紙トレイとして“第2トレイ”、印刷部数として“5”が選択されている。また「試し印刷モード」での印刷を行うべく、そのチェックボックスCB4はオン(設定有効)に設定されている。
【0061】
このような印刷条件に対して、試し印刷時には、記録紙の種類が“はがき”→“普通紙”に、画質モードが“高画質”→“普通”に、給紙トレイが“第2トレイ”→“第1トレイ”に、印刷部数が“5”→“1”に変更される。即ち、第1トレイPT1より給紙される普通紙に対して印刷するべく印刷条件に変更される。そして、この変更された印刷条件に基づいて印刷が実行されることにより、図8に示すように、はがき印刷を普通紙(A4サイズ)の記録紙Pにて試し印刷することができる。
【0062】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)試し印刷モードでは、通常モード用に設定された印刷条件に含まれる複数の項目のうち少なくとも給紙トレイを選択する項目について条件を変更するようにした。これにより、試し印刷モードで使用する給紙トレイを通常モードで使用する給紙トレイと異なるものにして、試し印刷を好適に行うことができる。
【0063】
(2)試し印刷モードでは、更に、記録紙の種類を変更するようにしたことで、使用する記録紙の種類に応じた適切なインク濃度となるよう印刷データPDを作成することができる。
【0064】
(3)試し印刷モードでは、更に、記録紙の種類に合わせて印刷解像度を変更するようにしたことで、印字画質の向上を図ることができる。
(4)試し印刷モードでは、更に、印刷部数を1部とするようにしたことで、必要以上に記録紙が消費されることを防止することができる。
【0065】
(5)通常モード用に設定された印刷条件を一時的に保存するようにしたことで、試し印刷モードの実行後に、上記保存した印刷条件に基づいて通常モードを実行することができる。
【0066】
なお、上記実施の形態では、以下の態様に変更した変形例を採用してもよい。
(変形例1)上記実施の形態では、コンピュータシステムよりなるコンピュータ3と、それに接続されたプリンタ4とを含む印刷システム1により印刷を実行する態様としたが、プリンタ4をスタンドアロン機として使用し、該プリンタ4単体で印刷を実行する態様としてもよい。この場合には、プリンタドライバ32をプリンタ4側にて構築し、コンピュータ3の機能を同プリンタ4にて兼ねるように構成すればよい。即ち、プリンタドライバ用プログラムを例えばプリンタ4のメモリ等に格納し、該プリンタ4のコントローラ52がプリンタドライバ用プログラム(モード制御部の機能)を実行する構成とする。なお、このようにプリンタドライバ32をプリンタ4側で構築した場合には、上記印刷条件を設定するための設定画面W1等をプリンタ4の操作パネル75に表示させるようにする。こうすれば、プリンタ4単体で印刷を実行する場合においても、試し印刷を好適に行うことができる。
【0067】
(変形例2)上記実施の形態では、試し印刷モードのときの印刷条件を通常モード用に設定された印刷条件をもとに特定の項目について変更するようにしたが、次のように変更してもよい。即ち、ユーザが印刷毎に設定する通常モード用の印刷条件とは別に試し印刷用の印刷条件を予め設定しておき、それをRAM13や記憶装置14等に格納しておく。例えば、給紙トレイを“第1トレイPT1”、記録紙の種類を“普通紙”、画質モード(印刷解像度)を“普通”、印刷部数を“1”、インクの種類を“カラー”に設定した印刷条件を試し印刷用の印刷条件として予めRAM13や記憶装置14等に格納しておく。そして、試し印刷モードが選択された場合には、この試し印刷用の印刷条件を読み出して、それに基づいて印刷を行うようにしてもよい。
【0068】
(変形例3)上記実施の形態では、試し印刷を普通紙に行うようにしたが必ずしも普通紙に限られない。また、画質モードもその他のモードとしてもよい。さらには、印刷部数についても必ずしも1部に限定されない。
【0069】
(変形例4)上記実施の形態では、試し印刷モードのときには、給紙トレイ、記録紙の種類、画質モード、印刷部数について条件を変更するようにしたが、必ずしもこれら全てについて条件を変更する必要はない。即ち、少なくとも給紙トレイを選択する項目について条件を変更するようにすれば、通常モードのときとは異なる給紙トレイを使用して試し印刷を行うことができる。
【0070】
(変形例5)上記実施の形態では、プリンタ4に備える給紙トレイを2つ(第1及び第2トレイPT1,PT2)としたが、3以上でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】印刷システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】コンピュータの機能構成を示すブロック図。
【図3】プリンタの構成を示すブロック図。
【図4】プリンタドライバが実行する印刷処理を示すフローチャート。
【図5】印刷条件の設定画面例を示す説明図。
【図6】試し印刷実行時の画面例を示す説明図。
【図7】試し印刷終了時の画面例を示す説明図。
【図8】試し印刷の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0072】
1:印刷システム、3:コンピュータ、4:プリンタ(印刷装置)、15:表示装置、32:プリンタドライバ、50:印刷制御部、51:印刷駆動部、64:トレイ選択回路、74:給紙部、D1:画像データ、LUT:色変換テーブル、P:記録紙、PD:印刷データ、PT1,PT2:第1及び第2トレイ(複数の給紙トレイ)、W1:印刷条件の設定画面、W2:試し印刷実行時の画面、W3:試し印刷終了時の画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給紙トレイを有し、印刷条件に基づいて前記複数の給紙トレイの中から選択したいずれか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷を行う印刷装置において、
前記印刷条件に基づいて印刷を行うための通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件とは別に予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷を行うための試し印刷モードと、のうちいずれかを選択して実行するモード制御部を備えた印刷装置。
【請求項2】
複数の給紙トレイを有し、印刷条件に基づいて前記複数の給紙トレイの中から選択したいずれか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷を行う印刷装置において、
前記印刷条件に基づいて印刷を行うための通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件に含まれる複数の項目のうち、少なくとも前記給紙トレイを選択する項目について条件を変更した試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷を行うための試し印刷モードと、のうちいずれかを選択して実行するモード制御部を備えた印刷装置。
【請求項3】
前記モード制御部は、前記試し印刷モードでは、更に前記記録紙の種類を選択する項目について条件を変更する、
請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記モード制御部は、前記試し印刷モードでは、前記記録紙の種類に合わせて更に印刷解像度を選択する項目について条件を変更する、
請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記モード制御部は、前記試し印刷モードでは、更に印刷部数を設定する項目について該印刷部数を1部とするように条件を変更する、
請求項2乃至4のいずれか一項記載の印刷装置。
【請求項6】
前記モード制御部は、前記通常モード用に設定された前記印刷条件を保存し、前記試し印刷モードを選択して実行した後には前記通常モードを実行可能とする、
請求項1乃至5のいずれか一項記載の印刷装置。
【請求項7】
前記モード制御部は、前記試し印刷モードを選択して実行した後には、前記通常モードを続行するかどうかをユーザに問い合わせる画面を表示装置に表示する、
請求項6記載の印刷装置。
【請求項8】
印刷条件に基づいて印刷データを作成するプリンタドライバを備えたコンピュータと、複数の給紙トレイを有し、前記印刷条件に基づいて前記複数の給紙トレイの中から選択されたいずれか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷を行う印刷装置とが接続されてなる印刷システムにおいて、
前記プリンタドライバは、前記印刷条件に基づいて印刷を行うための通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件とは別に予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷を行うための試し印刷モードと、のうちいずれかを選択して実行するモード制御部を備える、ことを特徴とする印刷システム。
【請求項9】
コンピュータにより実行され、ユーザにより設定された印刷条件に基づいて複数の給紙トレイの中から選択したいずれか一つの給紙トレイより給紙される記録紙に印刷を行うためのプログラムであって、
前記コンピュータが、
前記印刷条件の入力を前記ユーザから受け付ける第1のステップと、
前記印刷条件に基づいて印刷を行うための通常モードと、該通常モード用に設定された前記印刷条件とは別に予め設定された試し印刷用の印刷条件に基づいて印刷を行うための試し印刷モードと、のうちいずれのモードを実行するかを判断する第2のステップと、
前記第2のステップでの判断結果に基づいて、前記通常モードと前記試し印刷モードとのうちいずれかのモードで印刷データを作成する第3のステップと、
を実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−102990(P2006−102990A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288827(P2004−288827)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】