説明

印刷装置、印刷方法、制御プログラムおよび印刷物

【課題】レンチキュラーレンズ付きの印刷媒体のインク受容層に印刷されたことにより視認性が低下するインクの視認性を向上させることができる印刷装置を提供すること。
【解決手段】レンチキュラーレンズ2が搭載される、インクを吸収するインク受容層5を有する印刷媒体1に対して、複数種類のインクを噴射する印刷ヘッド16と、印刷ヘッド16の駆動を制御する制御部9と、複数種類のインクを貯蔵するインクタンク17とを有する印刷装置7であって、複数種類のインク中の少なくとも一のインクがインク受容層5で吸収されると視認性が低下するインクである場合、制御部9は、印刷ヘッド16から印刷媒体1のレンチキュラーレンズ2の搭載側と反対側から視認性の低下するインクを噴射したときに、インクが乾く前に、少なくとも視認性の低下するインクが噴射された箇所に視認性の低下するインクと異なるインクを噴射するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷方法、制御プログラムおよび印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷された画像を、立体画像あるいは移動画像(変わり絵)として観賞することができるレンチキュラーレンズ付き印刷媒体が知られている。かかる印刷媒体は、たとえば、特許文献1から5に開示されるように、印刷媒体の背面(レンズ面と反対側の面)に立体画像あるい移動画像用の画像が形成されることで、レンチキュラーレンズを介して画像を観賞したときに、立体画像等として視認することができるものである。
【0003】
特許文献1から4においては、印刷媒体の背面への画像の形成は、オフセット印刷、画像が掲載された転写紙からの転写、あるいは印刷媒体の背面部に形成された感熱発色層への感熱記録により行われている。一方、特許文献5においては、印刷媒体の背面部にインク受容層が形成され、このインク受容層に対して印刷装置により印刷が行われる。インク受容層が形成される印刷媒体においては、インク受容層に吸収されたインクにより形成される画像をレンズを介して観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−30825号
【特許文献2】特開2000−29152号
【特許文献3】特開平11−142995号
【特許文献4】実登録3143782号
【特許文献5】特開2007−30415号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から4に開示される印刷媒体のようにインク受容層を有しない印刷媒体においては、インクの違いにより画像の視認性が低下するという問題はない。しかしながら、特許文献5に開示される印刷媒体のようにインク受容層に吸収されたインクにより画像が形成される印刷媒体においては、インクの種類(材質、色等)によっては、インク受容層を有しない透明なシートに印刷を行った場合に比べて、印刷された画像の視認性が低下することがある。
【0006】
そこで、本発明は、レンチキュラーレンズ付きの印刷媒体のインク受容層に印刷されることにより視認性が阻害された画像の視認性を向上させることができる印刷装置、印刷方法、印刷装置の制御プログラム、該視認性が劣った画像の視認性の向上が図られた印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、かまぼこ形のレンズが並ぶレンチキュラーレンズが搭載される、インクを吸収するインク受容層を有する印刷媒体に対して、複数種類のインクを噴射する印刷ヘッドと、印刷ヘッドの駆動を制御する制御部と、複数種類のインクを貯蔵するインクタンクとを有する印刷装置であって、複数種類のインク中の少なくとも一のインクがインク受容層で吸収されると視認性が低下するインクである場合、制御部は、印刷ヘッドから印刷媒体のレンチキュラーレンズの搭載側と反対側から視認性の低下するインクを噴射したときに、当該インクが乾く前に、少なくとも視認性の低下するインクが噴射された箇所に視認性の低下するインクと異なるインクを噴射するよう制御することとする。
【0008】
印刷装置をこのように構成した場合には、印刷された視認性の低いインクの視認性を向上させることができる。
【0009】
上記発明に加えて、制御部は、視認性の低下するインクが乾いた後で、視認性の低下するインクが受容層のレンチキュラーレンズ搭載側に、視認性の低下するインクと異なるインクがその反対側に形成されるよう印刷装置を制御することとしてもよい。
【0010】
印刷装置をこのように構成した場合には、印刷された視認性の低いインク視認性をさらに向上させることができる。
【0011】
上記発明において、視認性の低下するインクは、黄色、ライトシアン、ライトマゼンタのうちの少なくとも一であることとする。
【0012】
印刷装置をこのように構成した場合には、黄色、ライトシアン、ライトマゼンタのインクについても視認性を向上させることができる。
【0013】
上記発明において、視認性の低下するインクと異なるインクは、透明インク、白インク、メタリックインクのうちの少なくとも一であることとする。
【0014】
印刷装置をこのように構成した場合には、印刷された視認性の低いインクについて視認性をより向上させることができる。
【0015】
上記発明に加えて、印刷ヘッドから印刷媒体に設けられるインク透過層側に、インク受容層で吸収されると視認性の低下するインクを噴射するとともに、インク受容層で吸収されたときの視認性低下がインクに比べて小さいインクを噴射して、両者のインクのドットを含む画像を形成する場合、制御部は画像を形成するインク受容層の視認性が低下するインクと、視認性の低下が小さいインクのレンチキュラーレンズの反対側に、それらと異なるインクを噴射形成することとする。
【0016】
印刷装置をこのように構成した場合には、インク受容層で吸収されると視認性の低下するインクと、インク受容層で吸収されたときの視認性低下がインクに比べて小さいインクを含む画像の視認性を向上させることができる。
【0017】
上記発明に加えて、印刷媒体はインクを透過するインク透過層が、レンチキュラーレンズ搭載側と反対側にインク受容層に対し積層され、インク透過層は光を散乱する半透過性であることとする。
【0018】
印刷装置をこのように構成した場合には、インク受容層で吸収されると視認性の低下するインクの視認性を好適に向上させることができる。
【0019】
上述の課題を解決するため、レンチキュラーレンズが搭載される、インクを吸収するインク受容層を有する印刷媒体に対してインクを噴射して印刷を行う印刷方法であって、インクがインク受容層で吸収されると視認性が低下するインクである場合に、印刷ヘッドから印刷媒体のレンチキュラーレンズ搭載側と反対側から視認性の低下するインクを噴射する工程、当該インクが乾く前に、少なくとも視認性の低下するインクが噴射された箇所に視認性の低下するインクと異なるインクを噴射する工程を備えることとする。
【0020】
印刷方法をこのようにすることで、インク受容層に噴射された視認性の低いインクの視認性を向上させることができる。
【0021】
上記発明に加えて、印刷媒体はインクを透過するインク透過層が、レンチキュラーレンズ搭載側と反対側にインク受容層に対し積層され、インク透過層は光を散乱する半透過性であることとする。
【0022】
印刷方法をこのようにすることで、インク受容層に噴射された視認性の低いインクの視認性をより向上させることができる。
【0023】
上述の課題を解決するため、レンチキュラーレンズが搭載される、インクを吸収するインク受容層を有する印刷媒体に対してインクを噴射して印刷を行う印刷装置の制御プログラムであって、インクがインク受容層で吸収されると視認性が低下するインクである場合に、印刷ヘッドから印刷媒体のレンチキュラーレンズ搭載側と反対側から視認性の低下するインクを噴射する処理と、当該インクが乾く前に、少なくとも視認性の低下するインクが噴射された箇所に視認性の低下するインクと異なるインクを噴射する処理とをコンピューターに実現させることとする。
【0024】
レンチキュラーレンズが搭載される、インクを吸収するインク受容層を有する印刷媒体に対してインクを噴射して印刷を行う印刷装置の制御プログラムをこのように構成することで、インク受容層で吸収され視認性が低下したインクの視認性を向上させることができる。
【0025】
上述の課題を解決するため、レンチキュラーレンズと、レンチキュラーレンズと積層され、インクを吸収するインク受容層を設けた印刷媒体とを備えた印刷物であって、インク受容層のレンチキュラーレンズ側に、インク受容層に吸収されることにより視認性の低下するインクによる画像が形成され、その反対側に視認性低下を抑制するインクが載置されていることとする。
【0026】
印刷物をこのように構成することで、インク受容層で吸収され視認性が低下したインクの視認性を向上させることができる。
【0027】
上記発明に加えて、印刷物は、インクを透過するインク透過層が、レンチキュラーレンズ搭載側と反対側にインク受容層に対し積層され、インク透過層は光を散乱する半透過性であることととする。
【0028】
印刷物をこのように構成することで、インク受容層で吸収され視認性が低下したインクの視認性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】レンチキュラーレンズシートの断面の概略の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る印刷装置の外観の概略の構成を示す図である。
【図3】図2に示す印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示す印刷装置の印刷ヘッドをノズル形成面の側から見たときの図である。
【図5】図2に示す印刷装置の動作のフローを示す図である。
【図6】レンチキュラーレンズを搭載しない印刷媒体の構成を示す図である。
【図7】低視認インクに対して非低視認インクを噴射したときの様子を示す図である。
【図8】背面側にインク透過層が設けられるレンズシートの構成を示す図である。
【図9】図9に示すレンズシートに噴射された低視認インクに対して非低視認インクを噴射したときの様子を示す図である。
【図10】画像形成用インクと、非低視認インク100との関係を示す図である。
【図11】インク透過層6が、光を散乱する半透過性を有する場合の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の概要)
印刷物としてのレンチキュラーレンズシート(以下、単にレンズシートと言う。)1は、図1に示すように、かまぼこ形のレンズが並ぶレンチキュラーレンズ2と、このレンチキュラーレンズ2が搭載され、インクを吸収するインク受容層5を有する印刷媒体4とを有する。印刷媒体4は、レンチキュラーレンズ2の搭載側に接着層300を有する。レンチキュラーレンズ2は、接着層300によりインク受容層5に接着された状態で搭載されている。なお、接着層300は、粘着層として構成してもよい。レンズシート1は、インク受容層5に記録された画像をレンチキュラーレンズ2を介して視認することができる。したがって、例えば、インク受容層5に、レンチキュラーレンズ2の配設ピッチや焦点距離等に対応させて視差のある画像(以下、単に印刷画像と記載する。)を印刷し、この印刷画像をレンズ面3の側から観察すると、立体画像等として視認することができる。
【0031】
インク受容層5は、インクを吸収し、レンチキュラーレンズ2の側に浸透させ固着させる。インク受容層5には、吸収されたインクにより印刷画像が形成される。観察者は、前面側からレンズシート1を観察すると、レンチキュラーレンズ2を介して、インク受容層5に形成された印刷画像を観察することができる。インク受容層5に吸収されたインクは、インク受容層5に固着されるため、インク受容層5に形成される印刷画像を、レンチキュラーレンズ2に対して所定位置に形成することができる。そのため、レンチキュラーレンズ2側から印刷画像を観察したときに、立体画像の立体感や移動画像の変化状態を好適に視認することができる。このインク受容層5は、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子等を材料として形成することができる。
【0032】
ところで、出願人は、レンズシート1に印刷された印刷画像の中で、黄色のインク(以下、Yインクと記載する。)によって印刷された部分は、彩度が低くなり視認性が低下している現象を見出した。一方、インク受容層5を有しない非吸収性の印刷媒体、たとえば、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用の透明シートにYインクを用いて黄色の画像を印刷した場合には、明確な視認性の低下は認められなかった。つまり、Yインクはインク受容層5に吸収されると、インク受容層5を有しない印刷媒体に印刷された場合に比べて彩度が低くなり視認性が低下するという現象を、出願人は見出した。
【0033】
上述の現象を見出した出願人は、Yインクのようにインク受容層5に吸収された場合に印刷画像の視認性が低下するインク(以下、低視認インクと記載する。)を用いて印刷された視認性の低い印刷画像(以下、低視認画像と記載する。)の視認性を向上させるための創意工夫を試みた。その結果、インク受容層5の低視認インクが噴射された箇所に、この低視認インクが乾く前に、レンズシート1のレンチキュラーレンズ2の搭載側と反対側(以下、背面側と記載する。)から、低視認インクとは異なる、たとえば、メタリックインクを噴射することにより、低視認画像の視認性を向上させることができるという印刷方法を発明するに至った。なお、低視認インクが噴射された箇所に、レンズシート1の背面側からメタリックインクを噴射する方法は、スプレー等による噴射でもよく、また、以下に説明するように、印刷装置7を用いて噴射してもよい。
【0034】
(実施の形態)
次に、本発明の実施の形態に係る印刷装置7について説明する。印刷装置7は、上述の印刷方法の発明に基づいてなされたものであり、レンズシート1に形成された低視認画像の視認性を向上することができる。なお、印刷方法、印刷装置7の制御プログラム、および印刷物については、印刷装置7の構成および動作に併せて説明する。
【0035】
(印刷装置7の全体構成)
図2は、本発明に係る印刷装置7のプリンター8の部分について、その外観の概略の構成を示す図である。図3は、印刷装置7の電気的な構成を示すブロック図である。印刷装置7は、印刷媒体である図1に示すレンズシート1に対して印刷画像を形成することができる。
【0036】
印刷装置7は、図2に示すように、プリンター8とコンピュータ(以下、PCと記載する。)9等を有する。本実施の形態では、プリンター8とPC9とを別の物品として印刷装置7を構成しているが、プリンター8内にPC9の機能を持たせた構成としてもよい。プリンター8は、外装筐体10と、この外装筐体10内に収容されるフレーム11と、フレーム11の内側の下部(プリンター8の設置面側)に主走査方向(図2に示すX1−X2方向)に沿って架設されるプラテン12と、キャリッジ13を主走査方向に移動するキャリッジ移動機構14と、レンズシート1を搬送する搬送機構15と、印刷ヘッド16(図3参照)と、インクタンク17等を有する。印刷ヘッド16は、キャリッジ13の下面に配置されている。
【0037】
キャリッジ移動機構14は、キャリッジ13と、ガイド軸18、駆動プーリー19および従動プーリー20と、タイミングベルト21と、キャリッジモーター22等を有する。キャリッジ13は、プラテン12の上方に架設されるガイド軸18に移動可能に支持されている。フレーム11のガイド軸18の両端部と対応する位置には、駆動プーリー19および従動プーリー20が回転自在に支持されている。駆動プーリー19と従動プーリー20との間にはタイミングベルト21が掛装されている。タイミングベルト21には、キャリッジ13が固定されている。駆動プーリー19はキャリッジモーター22に連結されている。したがって、キャリッジ13は、タイミングベルト21を介してキャリッジモーター22の駆動によりガイド軸18に沿って往復移動可能となっている。
【0038】
搬送機構15は、搬送モーター23と、この搬送モーター23により駆動される搬送ローラー24を有し、搬送ローラー24の回転により、レンズシート1を、プラテン12の上面に沿って主走査方向Xと直交する副走査方向(図2に示すY方向)に沿って搬送することができる構成となっている。
【0039】
キャリッジ13の下部には印刷ヘッド16が備えられている。キャリッジ13には、インクタンク17が搭載されている。インクタンク17は、低視認インクとは異なるインク(以下、非低視認インクと記載する。)として、たとえば、メタリックインクが貯蔵されるインクタンク17Aと、印刷画像形成用のインクが貯蔵されるインクタンク17B,17C,17D,17Eとを有する。すなわち、インクタンク17には、複数種類のインクが貯蔵される。インクタンク17B,17C,17D,17Eには、たとえば、順にY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のインクが貯蔵される。Yインクは、上述したように低視認インクである。
【0040】
印刷ヘッド16は、図4に示されるように、インクの種類に一対一で対応したノズル列16A,16B,16C,16D,16Eが設けられている。つまり、本実施の形態では、5つのノズル列が設けられ、ノズル列16Aは、メタリックインク噴射用であり、ノズル列16B,16C,16D,16Eは、順に、Yインク、Mインク、Cインク、Kインクの噴射用である。すなわち、印刷ヘッド16は、複数種類のインクを噴射する。各ノズル列内には、複数のノズル16Lが設けられ、各ノズル列内のノズルは、副走査方向に沿って配列されている。また、5つのノズル列16A,16B,16C,16D,16Eは、主走査方向に並列して配置されている。
【0041】
上述の構成を備えるプリンター8においては、レンズシート1の副走査方向への搬送と印刷ヘッド16の主走査方向への往復移動とが交互に間欠的に行われる。そして、PC9(図3参照)から送られる印刷データに基づき印刷ヘッド16が駆動され、所定のタイミングでインクが噴射されることで、レンズシート1の印刷媒体4に印刷画像が形成される。
【0042】
また、プリンター8は、図3に示すように、キャリッジ移動機構14、搬送機構15、印刷ヘッド16、検出器群25、およびプリンタ制御部26等を有する。プリンター8は、プリンター8の外部装置であるPC9から受信した印刷データに基づき、プリンタ制御部26によって各ユニット(搬送機構15、印刷ヘッド16等)を制御して、印刷データに従ってレンズシート1に印刷画像を印刷する。プリンター8内の状況は検出器群25によって監視されており、検出器群25は、検出結果をプリンタ制御部26に出力する。プリンタ制御部26は、検出器群25から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0043】
検出器群25は、ロータリー式エンコーダー(図示省略)、レンズシート検出センサー(図示省略)等が含まれる。ロータリー式エンコーダは、搬送モーター23やキャリッジモーター22等の回転量や回転速度を検出する。ロータリー式エンコーダの検出結果に基づいて、レンズシート1の搬送量やキャリッジ13の移動量等を検出することができる。
【0044】
プリンター制御部26は、プリンター8の制御を行う。プリンタ制御部26は、インターフェース部27と、CPU28(Central
Processing Unit)と、メモリー29と、ユニット制御回路30とを有する。インターフェース部27は、PC9とプリンター8との間でデータの送受信を行う。CPU28は、プリンター8全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー29は、CPU28のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU28は、メモリー29に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路30を介して各ユニットを制御する。
【0045】
PC9には、PC9に印刷画像の印刷処理を実行させる印刷処理プログラムがインストールされている。印刷処理プログラムは、いわゆるプリンタードライバープログラムや画像処理プログラム等により構成され、モニター9A(図2参照)にユーザーインターフェースを表示させる。また、印刷処理プログラムは、ユーザーの指定した立体画像あるいは移動画像の元となる複数の画像をレンズピッチ等に応じて加工・合成することによって、印刷画像用の印刷データを作成し、この印刷データをプリンター8に送信する。
【0046】
プリンター8は、PC9から受信した印刷画像用の印刷データに基づいて、レンチキュラーレンズ2の配設ピッチや焦点距離等に対応させて、レンズシート1に印刷画像の印刷を行う。レンズシート1は、印刷媒体4の側が印刷ヘッド16に対向し、レンチキュラーレンズ2の側がプラテン12と接触するようにプリンター8に載置されている。したがって、レンズシート1への印刷は、レンズシート1の背面側から行われる。
【0047】
また、レンズシート1への印刷に際しては、印刷ヘッド16からレンズシート1のレンチキュラーレンズ2の搭載側と反対側から低視認インクであるYインクが噴射されたときに、その噴射されたYインクが乾く前に、少なくともYインクが噴射された箇所に非低視認インクとしてのメタリックインクを噴射する。
【0048】
(印刷画像の印刷処理)
上述のような構成を有する印刷装置7において行われる印刷画像の印刷処理について、図5の処理フローに基づいて説明する。
【0049】
印刷処理では、レンズシート1に印刷画像を印刷するための印刷データを作成する。印刷データを作成する処理は次の通りである。先ず、印刷設定値の読み込みを行う(S10)。印刷設定値としては、レンズシート1のレンチキュラーレンズ2のピッチ、印刷される際のサイズ(印刷データのサイズ)、印刷解像度、視差数(立体画像または移動画像の印刷で用いる画像の数。)P、および集約ドット数(レンチキュラーレンズ2の焦線幅(収差幅)に対するプリンター8の細小の印刷幅の比)D等である。
【0050】
印刷設定値の読み込みに続いて、入力画像データの解像度変換を行う(S20)。この解像度変換の処理においては、複数枚の画像データが合成された後の合成画像データの元となる、それぞれの入力画像データにつき、印刷に対応させたサイズの計算が行われる。たとえば、レンズピッチが60lpi、印刷画像の幅方向が6インチ、長手方向が4インチ、印刷解像度が720dpi、視差数Pが4、集約ドット数Dが1である場合、解像度変換後の画像データは、幅方向Wが360ドット(=6インチ×60lpi;レンズ本数に対応)、長手方向Hが2880ドット(=720dpi×4インチ)となる。
【0051】
次に、合成画像データが作成される(S30)。この合成画像データを作成するのにあたっては、解像度変換後の画像データを、レンチキュラーレンズ2の個々の凸レンズの1つずつに配置されるように短冊状に細分化し、1視差分の細長い画像データ(細分化画像データ)を形成する。なお、他の画像データについても同様に処理する。さらに、1つの凸レンズ内で画像が変化する順(視認角度順)に、細分化された画像データを並べて配置する。それにより、1つの凸レンズ内に配置される、視差順かつ短冊状の画像データが作成され、それを全ての凸レンズに対して行う。それにより、合成画像データが作成される。たとえば、解像度変換後の画像データの幅方向Wが360ドット、長手方向Hが2880ドットであり、視差数Pが4である場合、合成画像データの幅方向Wが1440ドット、長手方向Hが2880ドットとなる。
【0052】
続いて、色変換処理を行う(S40)。色変換処理では、色変換ルックアップテーブル(LUT)に基づいて合成画像データのRGB表色系で表現される色成分が、プリンター8で印刷/表現可能なCMYK表色系の色成分に変換される。そして、色変換が為された合成画像データに対して、ハーフトーン処理が行われる(S50)。ここで、ハーフトーン処理とは、原画像データの階調値(本実施形態では256階調)をプリンター8が画素毎に表現可能な階調値に減色する処理をいう。
【0053】
次に、ハーフトーン処理が為された合成画像データから、印刷データを作成する処理が実行される(S60)。ここで、印刷データとは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含むデータであり、不図示の分散テーブルの分散データを参照して作成される。
【0054】
また、印刷処理プログラムは、上述の印刷データに加えて、メタリックインク噴射データを作成する(S70)。メタリックインク噴射データは、印刷ヘッド16から、インク受容層5のYインクが噴射された箇所に、メタリックインクを噴射させるデータである。
【0055】
そして、印刷処理プログラムは、上述のように形成された印刷データおよびメタリックインク噴射データをプリンター8に対して出力する(S80)。
【0056】
PC9での処理が終了し、プリンター8が印刷データおよびメタリックインク噴射データを受信すると、プリンタ制御部26のCPU28は制御指令を発する。この制御指令に基づいて、搬送モーター23、キャリッジモーター22および印刷ヘッド16等が駆動され、レンズシート1に対して印刷が実行される。
【0057】
プリンタ制御部26は、レンズシート1の副走査方向への搬送と、印刷ヘッド16の主走査方向への往復移動とを行い、印刷データおよびメタリックインク噴射データに基づき、印刷ヘッド16からカラー(Y、M、C、K)インクを噴射させ印刷画像を形成すると共に、低視認インクであるYインクが噴射された箇所に、この噴射されたYインクが乾く前に、レンズシート1の背面側からメタリックインクを噴射させる。印刷画像の形成およびメタリックインクの噴射は、具体的には以下のようにして行われる。
【0058】
本実施の形態では、主走査方向X1−X2の一端(矢印X1側)から他端方向(矢印X2側)に向かう方向である往路方向(矢印R方向)に向けた印刷ヘッド16の移動に併せて、印刷画像の形成と、Yインクが噴射された箇所へのメタリックインクの噴射とが行われる。Yインクが噴射された箇所へのメタリックインクの噴射は、噴射された低視認インクが乾く前に行われる。印刷ヘッド16が往路方向に移動する際には、レンズシート1の搬送は停止され、停止しているレンズシート1に対して、印刷ヘッド16が往路方向に移動しながらインクを噴射することで印刷画像が形成される。印刷ヘッド16が往路方向に1回移動すると、ノズル列の長さ(ノズルの配置方向の長さ)に応じた印刷幅である1ライン分の印刷画像が形成される。一方、印刷ヘッド16が、他端から一端方向に向かう方向である復路方向に移動される際には、インクの噴射は行われず、印刷ヘッド16の復路方向への移動に併せて、1ライン分だけレンズシート1が搬送される。なお、図4に示すように、ノズル列16Aは、印刷ヘッド16の往路方向に対して他のノズル列よりも後方側(一端側)に配置されている。
【0059】
プリンタ制御部26は、レンズシート1を1ライン分毎、間欠的に搬送し、搬送が停止している間に、印刷ヘッド16を往路方向に移動させながら、印刷データに基づき、ノズル列16B,16C,16D,16Eから所定色のインクを噴射させ印刷画像を形成する。また、プリンタ制御部26は、印刷ヘッド16が往路方向に移動するときに、ノズル列の中で最も後方側(一端側)に配置されるノズル列16Aから、メタリックインク噴射データに基づき、Yインクが噴射された箇所に、この噴射されたYインクが乾く前にメタリックインクを噴射する。
【0060】
プリンタ制御部26は、印刷ヘッド16を往路方向に移動させながら、印刷画像の形成とYインクが噴射された箇所へのメタリックインクの噴射とを1ライン分行った後、印刷ヘッド16を復路方向に移動させ一端側に配置する。復路方向への移動の際には、印刷ヘッド16からインクは噴射されない。プリンタ制御部26は、印刷ヘッド16の復路方向への移動に併せて、レンズシート1を所定量(1ライン分)搬送する。この搬送が完了した後、再び、印刷ヘッド16を往路方向に移動しながら、上述の印刷画像の形成とYインクが噴射された箇所へのメタリックインクの噴射を新たに1ライン分行う。上述の印刷ヘッド16の往復移動と、インクの噴射と、レンズシート1の間欠的な搬送を繰り返すことで、レンズシート1に印刷画像が形成されると共に、Yインクが噴射された箇所へのメタリックインクの噴射が行われる。
【0061】
なお、メタリックインクが噴射されるノズル列16Aは、図4に示すように、ノズル列16B,16C,16D,16Eよりも往路方向の後方に配置されている。したがって、レンズシート1(インク受容層5)に印刷画像を形成した後、Yインクが噴射された箇所に背面からメタリックインクを噴射することができる。これに対し、ノズル列16Aに加えて、メタリックインクを噴射するノズル列をノズル列16B,16C,16D,16Eを挟んで他端側にも備える構成とした場合には、復路において印刷画像を形成することができると共に、Yインクが噴射された箇所へのメタリックインクの噴射も行うことができる。往路においては、ノズル列16Aからメタリックインクを噴射し、復路においては他端側に配置されるノズル列からメタリックインクを噴射する。
【0062】
図7は、低視認インクであるYインク(黄色インク)100Yが印刷媒体4に噴射されたときに、Yインク100Yに対してメタリックインク100ZMを噴射したときの様子を示す図である。インク滴を噴射する場合(印刷媒体4に印刷を行う場合)、レンチキュラーレンズ2搭載側(レンズ面3側)を重力方向下側にして印刷媒体4のレンチキュラーレンズ搭載側と反対側(レンチキュラーレンズ2の背面側)から画像形成用のYインク100Yを噴射する(図7(A))。Yインク100Yはインク受容層5中に重力方向下側に細長く形成される(図7(B))。通常はこのままインクがインク受容層5内で乾燥し、細長く形成されたYインク100Yはレンチキュラーレンズ2を通して見たときにインク受容層5のない媒体に印刷した場合に比べて視認性が低下する。しかるに、本発明では、Yインク100Yが乾燥する前に、非低視認インクとしてのメタリックインク100ZMを少なくともYインク100Yの噴射した箇所を覆うように噴射する。すると、乾燥前のYインク100Yはメタリックインク100ZMで下側のレンチキュラーレンズ2側に押されて移動する(図7(C))。従って、インク受容層5内で細長く拡散したYインク100Yはメタリックインク100ZMで押し下げられた分、レンチキュラーレンズ側に移動して乾燥するため、図7Bのような状態でそのまま乾燥した場合に比べて視認性が向上し、視認性の低下を抑制できる。上述のように、非低視認インクがメタリックインク100ZMの場合は、メタル成分によりレンチキュラーレンズ2側からの光をメタリック調の色彩を帯びながら反射する。非低視認インクとしてメタリックインク100ZMに換えて透明インクとした場合には、Yインク100Yの色調を害することがない。非低視認インクが白色インクであると、Yインク100Yの色調を害することがなく、また、レンチキュラーレンズ2側からの光を拡散反射する。上記、いずれの非低視認インクしても、Yインク100Yの元々の色調は保たれる。
【0063】
(本実施の形態の主な効果)
上述したように、かまぼこ形のレンズが並ぶレンチキュラーレンズ2が搭載される、インクを吸収するインク受容層5を有する印刷媒体4に対して印刷を行う印刷装置7は、複数種類のインクを噴射する印刷ヘッド16と、印刷ヘッド16の駆動を制御する制御部としてのPC9およびプリンタ制御部26と、複数種類のインクを貯蔵するインクタンク17とを有する。そして、複数種類のインク中の少なくとも一のインクがインク受容層5で吸収されると視認性が低下するインクであるYインク100Yである場合、制御部は、印刷ヘッド16から印刷媒体4のレンチキュラーレンズ2の搭載側と反対側からYインク100Yを噴射したときに、このYインク100Yが乾く前に、少なくともYインク100Yが噴射された箇所に視認性の低下するインクと異なるインクとして、たとえば、メタリックインク100ZMを噴射するよう制御する。
【0064】
印刷装置7をこのように構成することで、印刷されたYインク100Yの視認性を向上させることができる。なお、視認性の低下するインクと異なるインクとしては、メタリックインクの他、白インクを用いることもできる。白インクは、Yインク100Yの色調を害することがなく、また、レンチキュラーレンズ2側からの光を拡散反射する。そのため、印刷されたYインク100Yの視認性を好適に向上させることができる。また、視認性の低下するインクと異なるインクとして、クリアインクを用いることもできる。透明インクとした場合には、Yインク100Yの色調を害することがない。
【0065】
上述のように、レンズシート1への印刷は、印刷ヘッド16から噴射されるインクに低視認インクであるYインク100Yが含まれる場合に、印刷ヘッド16からレンズシート1のレンチキュラーレンズ2搭載側と反対側から低視認インクであるYインク100Yを噴射する工程と、噴射されたYインク100Yが乾く前に、少なくともYインク100Yが噴射された箇所に非低視認インクであるメタリックインク100ZMを噴射する工程を有する。印刷をこのように行うことで、印刷されたYインク100Yの視認性を向上させることができる。
【0066】
レンズシート1に対して印刷を行う印刷装置7の制御プログラムは、PC9にインストールされる印刷処理プログラムやメモリー29に記憶されるプリンター8を制御するプログラムにより構成される。制御プログラムは、インク受容層5に噴射されるインクに低視認インクであるYインク100Yが含まれる場合に、印刷ヘッド16からレンズシート1のレンチキュラーレンズ2搭載側と反対側からYインク100Yを噴射する処理と、この噴射されたYインク100Yが乾く前に、少なくともこのYインク100Yが噴射された箇所に非低視認インクであるメタリックインク100ZMを噴射する処理とをコンピューターに実現させる。制御プログラムを上述の構成とすることで、印刷されたYインク100Yの視認性を向上させることができる。
【0067】
レンズシート1は、レンチキュラーレンズ2と、レンチキュラーレンズ2と積層され、インクを吸収するインク受容層5を設けた印刷媒体4とを備え、インク受容層5のレンチキュラーレンズ2側に、低視認インクであるYインクによる印刷画像が形成され、その反対側に非低視認インクであるメタリックインクが載置されている印刷物として構成されている。
【0068】
レンズシート1は、上述の構成を有することで、黄色インクにより形成される印刷画像の視認性を向上させた印刷物として構成される。
【0069】
以上の説明においては、インク受容層5で吸収されると視認性が低下するインクである低視認インクの一例として、Yインク100Yを例示したが、低視認インクとしては、黄色の他に、ライトシアン、ライトマゼンタがある。印刷装置7のインクタンク17には、少なくともこれら低視認インクのうちの一つが貯蔵され、これらの低視認インクが噴射された場合に、この低視認インクが乾く前に、少なくとも低視認インクが噴射された箇所に視認性の低下するインクと異なるインクである非低視認インクが噴射される。
【0070】
上述の印刷装置7においては、複数種類のインクが貯留されるインクタンク17のインクタンク17Aには、非低視認インクとしてメタリックが貯蔵されるが、インタンクク17Aも含め他のインクタンク17Bから17Eの全てのインクタンクに低視認インクを貯蔵する構成としてもよい。このように構成した場合には、インクタンク17の他に非低視認インクのみを貯蔵するインクタンクを備え、このインクタンクに貯蔵される非低視認インクを低視認インクが噴射された箇所に噴射する。
【0071】
(変形例1)
印刷媒体4に印刷する場合、上述のように、レンチキュラーレンズ2を搭載したままでもよいが、印刷時にレンチキュラーレンズ2が損傷するのを防止するため、レンチキュラーレンズ2を搭載しない状態の印刷媒体4に印刷を行い、その後で、印刷媒体4とレンチキュラーレンズ2とを接着層300で接着させてもよい。この場合、接着層300がプラテン12等の印刷装置7側の構造物に接着してしまわないように、図6に示すように、印刷媒体4の接着層300の外側に剥離フィルム301を設けておく。そして、印刷終了後に剥離層301を剥がしてレンチキュラーレンズ2と印刷媒体4とを接着させる。なお、レンチキュラーレンズ2側(接着層300側のレンチキュラーレンズ2側)に透明な保護層(図示せず)を形成して、レンチキュラーレンズ2の透明な保護層が印刷媒体4に接着層300を介して接着するようにしてもよい。
【0072】
(変形例2)
上述の実施の形態で説明した印刷装置7は、記録媒体4に印刷されたYインクが乾く前に、Yインクが噴射された箇所にメタリックインクの噴射を行っているが、Yインクが乾いた後で、Yインクがインク受容層5のレンチキュラーレンズ搭載2側に、その反対側にメタリックインクが形成されるようにしてもよい。印刷ヘッド16の往路方向への移動が終了し復路方向への移動を開始するまでには、往路において噴射されたYインクは乾いている。そこで、印刷ヘッド16の往路におけるYインクとメタリックインクの噴射を行った後、復路方向へ印刷ヘッド16を移動する際に、再度、往路においてメタリックインクが噴射された箇所にさらにメタリックインクを噴射する。これにより、Yインクが乾いた後に、Yインクがインク受容層5のレンチキュラーレンズ2搭載側に、メタリックインクをその反対側に噴射することができる。
【0073】
このように、Yインクが乾いた後で、Yインクが受容層5のレンチキュラーレンズ2搭載側に、メタリックインクがその反対側に形成されるようにすることで印刷されたYインクの視認性をより向上させることができる。なお、Yインクが乾いた後に、さらに噴射される非低視認インクは、メタリックインクの他に、クリアインクまたは白インクであってもよい。
【0074】
(変形例3)
レンズシート1は、図8に示すように、インク受容層5の背面側にインク透過層6が設けられる構成であってもよい。インク透過層6はインク受容層6側から噴射されたインクを透過してインク受容層5に通過させる。インク透過層6は半透過性の層である。光を半透過させ、また散乱する。図8に示すレンズシート1は、レンチキュラーレンズ2の反対側から光源400によりバックライトを照射して、レンチキュラーレンズ2側からインク受容層5上に形成された印刷画像を見るものである。
【0075】
図9は、上述したように、インク透過層6を、レンチキュラーレンズ2と反対側に、インク受容層5に積層させたものである。レンチキュラーレンズ2と反対側からバックライトを照射し、インク受容層5に形成された印刷画像をレンチキュラーレンズ側から見るのに主として用いられる。インク透過層6は半透明の乳白色である。印刷媒体4に印刷する場合、レンチキュラーレンズ2を搭載したままでもよいが、印刷時にレンチキュラーレンズ2が損傷するのを防止するため、レンチキュラーレンズ2を搭載しないで印刷媒体4に印刷し、その後で、印刷媒体4とレンチキュラーレンズ2とを接着層300で接着させてもよい。印刷媒体4は、接着層300の外側に剥離フィルム301を設けておく。印刷終了後は剥離フィルム301を剥がしてレンチキュラーレンズ2と印刷媒体4とを接着させる。レンチキュラーレンズ2側(接着層300側のレンチキュラーレンズ2側)に透明な保護層(図示せず)を形成して、レンチキュラーレンズ2の透明な保護層が印刷媒体4に接着層を介して接着するようにしてもよい。インク滴を噴射する場合、レンチキュラーレンズ2搭載側を重力方向下側にして印刷媒体4のレンチキュラーレンズ2の搭載側と反対側から画像形成用のYインク100Yを噴射する(図9(A))。インクはインク透過層6側から噴射される。Yインク100Yは、インク透過層6を透過していく(図9(B))。画像形成用のYインク100Yはインク透過層6を通過してインク受容層5に到達し、インク受容層5中に重力方向下側に細長く形成される(図9(C))。通常はこのままインクがインク受容層5内で乾燥し、細長く形成されたインキ滴であるYインク100Yはレンチキュラーレンズ2を通して見たときにインク受容層5のない媒体に印刷した場合に比べて視認性が低下する。しかるに、本発明では、Yインク100Yが乾燥する前に、別のインク100Z(透明インク、白インク、メタリックインク等)を少なくともインク100Yの噴射した箇所を覆うように噴射する。すると、乾燥前のYインク100Yはインク100Zで下側のレンチキュラーレンズ2側に押されて移動する。従って、インク受容層5内で細長く拡散したYインク100Yはインク100Zで押し下げられた分、レンチキュラーレンズ2側に移動して乾燥する(図9(D))。そのため、図9(C)のような状態でそのまま乾燥した場合に比べて視認性が向上し、視認性の低下を抑制できる。
【0076】
(変形例3)
図10の上段(A)と下段(B)は、インク受容層5に形成された画像形成用インクと、視認性低下を抑制するインク100Zとの状態を示す図である。
印刷装置10は、インク受容層5で吸収されると視認性の低下するインクである低視認インク(たとえば、Yインク100Y、ライトシアンインク100LC)を噴射するとともに、インク受容層5で吸収されたときの視認低下が低視認インクに比べて小さいインク(たとえば、黒インク100B、シアンインク100C)を噴射して、両者のインクのドットを含む印刷画像200を形成する場合、制御部は印刷画像200を形成するインク受容層5の視認性が低下するインクと、視認性の低下が小さいインクのレンチキュラーレンズ2の反対側に、それらと異なるインクである非低視認インクとしてメタリックインク100ZMを噴射するようにしてもよい。
【0077】
図10(A)に示すように、メタリックインク100ZMは、Yインク100Y、ライトシアンインク100LCが噴射された箇所に噴射するようにしてもよい。
黒インク100Bやシアンインク100Cは、元々視認性が高いため、このようにしても、黒インク100Bやシアンインク100C等の視認低下が低視認インクに比べて小さいインクにより形成されるドットや、当該ドットを含む印刷画像の視認性の低下は抑制できる。このようにすると、視認性低下を抑制するメタリックインク100ZMの消費を抑えることができる。
【0078】
また、図10(B)に示すように、印刷画像200を形成するために噴射されたインクの色に関係なく、メタリックインク100ZMを噴射するようにしてもよい。視認性が低下するYインク100Y、ライトシアンインク100LCの噴射箇所だけでなく、元々視認性が高く、視認性の低下のない(視認性低下が問題とならない)黒インク100Bや、シアンインク100Cの噴射箇所にも、メタリックインク100ZMが噴射されている。換言すると、インク受容層5で吸収されたとき視認性が低下するインクによるドットが含まれた印刷画像200全体(インク受容層5で吸収されたとき視認性低下が問題とならない黒色インク100Bとシアンインク100Cのドットもある印刷画像であるが、インク受容層200で吸収されると視認性が低下するYインク100Yやライトシアンインク100LCのドットも含まれた画像全体)に、Yインク100Yやライトシアンインク100LCが乾く前にメタリックインク100ZMが噴射され、印刷画像200のインク受容層5のレンチキュラーレンズ2側に画像が形成され、その反対側に当該印刷画像200の領域全体についてメタリックインク100ZMが噴射、形成されている。
【0079】
(変形例4)
図11に示すように、レンチキュラーレンズ2の搭載側と反対側にインク受容層5に対し積層されるインク透過層6は、光を散乱する半透過性を有することとしてもよい。図11は、印刷媒体4(インク受容層5)にインクドットで印刷画像が形成されたレンズシート1(レンチキュラーレンズ2が搭載された印刷媒体4)にレンチキュラーレンズ2と反対側から光源400によりバックライトを照射してレンチキュラーレンズ2側から見た状態を説明した図である。図11の上段(A)は視認性の低下を抑制するインクとして透明なインク100ZTを使用した様子を示す図である。バックライト光はインク透過層6中の白粒子61で散乱される。レンチキュラーレンズ2側からの光もインク透過層6中の白粒子61で散乱される。レンチキュラーレンズ2側からの光は、Yインク100Yのある部分で反射したり、Yインク100Yのある箇所と透明なインク100ZTのある箇所との境で反射したり、透明なインクのある箇所とインク受容層5との境で反射する。黄色のインク100Yが透明なインク100ZTによりレンチキュラーレンズ2側に押されてきたため、視認性の低下が抑制される。
【0080】
図11の中断(B)は、視認性の低下を抑制するインクとして白インク100ZWを使用した様子を示す図である。バックライト光はインク透過層5中の白粒子61で散乱される。レンチキュラーレンズ2側からの光もインク透過層6中の白粒子61で散乱される。レンチキュラーレンズ2側からの光は、Yインク100Yのある部分で反射したり、Yインク100Yのある箇所と透明なインク100ZTのある箇所との境で反射したり、透明なインク100ZTのある箇所とインク受容層5との境で反射する。Yインク100Yが白色インク100ZWによりレンチキュラーレンズ2側に押されてきたため、視認性の低下が抑制される。なお、この場合は、図9(A)に加え、更に、白色インク100ZWはレンチキュラーレンズ2側から来る光や、レンチキュラーレンズ2と反対側(図上の上側)から来る光を散乱、反射する。
【0081】
図11の下段(C)は、視認性の低下を抑制するインクとしてメタリックインク100ZMを使用した様子を示す図である。図9(B)と同様であるが、メタリックインク100ZMの場合は、インク中にアルミニウム、銅等の粒子や小片といった金属成分が含まれている。そのため、メタリックインク100ZM中に入った光は金属成分で反射され、金属色の光(メタリック調の光)となる。
【符号の説明】
【0082】
1 … レンズシート(印刷媒体 印刷物) 2 … レンチキュラーレンズ 5 … インク受容層 6 … インク透過層 7 … 印刷装置 9 … PC(制御部) 16 … 印刷ヘッド 17 … インクタンク 26 … プリンター制御部(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かまぼこ形のレンズが並ぶレンチキュラーレンズが搭載される、インクを吸収するインク受容層を有する印刷媒体に対して、複数種類のインクを噴射する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの駆動を制御する制御部と、前記複数種類のインクを貯蔵するインクタンクと、を有する印刷装置であって、
前記複数種類のインク中の少なくとも一のインクが前記インク受容層で吸収されると視認性が低下するインクである場合、前記制御部は、前記印刷ヘッドから前記印刷媒体の前記レンチキュラーレンズの搭載側と反対側から前記視認性の低下するインクを噴射したときに、当該インクが乾く前に、少なくとも前記視認性の低下するインクが噴射された箇所に前記視認性の低下するインクと異なるインクを噴射するよう制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記視認性の低下するインクが乾いた後で、前記視認性の低下するインクが前記受容層の前記レンチキュラーレンズ搭載側に、前記視認性の低下するインクと異なるインクがその反対側に形成されるよう前記印刷装置を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1乃至2に記載の印刷装置であって、
前記視認性の低下するインクは、黄色、ライトシアン、ライトマゼンタのうちの少なくとも一であることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1乃至2に記載の印刷装置であって、
前記視認性の低下するインクと異なるインクは、透明インク、白インク、メタリックインクのうちの少なくとも一であることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1乃至2に記載の印刷装置であって、
前記印刷ヘッドから前記印刷媒体に設けられるインク透過層側に、前記インク受容層で吸収されると前記視認性の低下するインクを噴射するとともに、前記インク受容層で吸収されたときの視認性低下が前記インクに比べて小さいインクを噴射して、両者のインクのドットを含む画像を形成する場合、
前記制御部は前記画像を形成する前記インク受容層の前記視認性が低下するインクと、視認性の低下が小さいインクの前記レンチキュラーレンズの反対側に、それらと異なるインクを噴射形成することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記印刷媒体はインクを透過するインク透過層が、前記レンチキュラーレンズ搭載側と反対側に前記インク受容層に対し積層され、
前記インク透過層は光を散乱する半透過性であることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
レンチキュラーレンズが搭載される、インクを吸収するインク受容層を有する印刷媒体に対してインクを噴射して印刷を行う印刷方法であって、
インクが前記インク受容層で吸収されると視認性が低下するインクである場合に、印刷ヘッドから前記印刷媒体の前記レンチキュラーレンズ搭載側と反対側から前記視認性の低下するインクを噴射する工程、
当該インクが乾く前に、少なくとも前記視認性の低下するインクが噴射された箇所に前記視認性の低下するインクと異なるインクを噴射する工程、
を備えたことを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷方法であって、
前記印刷媒体はインクを透過するインク透過層が、前記レンチキュラーレンズ搭載側と反対側に前記インク受容層に対し積層され、前記インク透過層は光を散乱する半透過性であることを特徴とする印刷方法。
【請求項9】
レンチキュラーレンズが搭載される、インクを吸収するインク受容層を有する印刷媒体に対してインクを噴射して印刷を行う印刷装置の制御プログラムであって、
インクが前記インク受容層で吸収されると視認性が低下するインクである場合に、印刷ヘッドから前記印刷媒体の前記レンチキュラーレンズ搭載側と反対側から前記視認性の低下するインクを噴射する処理と、
当該インクが乾く前に、少なくとも前記視認性の低下するインクが噴射された箇所に前記視認性の低下するインクと異なるインクを噴射する処理と、
をコンピューターに実現させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項10】
レンチキュラーレンズと、
前記レンチキュラーレンズと積層され、インクを吸収するインク受容層を設けた印刷媒体と、
を備えた印刷物であって、
前記インク受容層の前記レンチキュラーレンズ側に、前記インク受容層に吸収されることにより視認性の低下するインクによる画像が形成され、その反対側に前記視認性低下を抑制するインクが載置されていることを特徴とする印刷物。
【請求項11】
請求項10に記載の印刷物であって、
前記印刷媒体はインクを透過するインク透過層が、前記レンチキュラーレンズ搭載側と反対側に前記インク受容層に対し積層され、
前記インク透過層は光を散乱する半透過性であることを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−107267(P2013−107267A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253722(P2011−253722)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】