説明

印刷装置、印刷材量判断方法

【課題】印刷材収容容器に収容されている印刷材量の判断精度の向上。
【解決手段】各カートリッジに備えられているセンサ用圧電素子の固有振動数に基づいて、スイッチ制御データを生成する。プリンタはスイッチ制御データに基づき、スイッチのオン/オフを制御するスイッチ制御信号を出力する。スイッチ制御信号がハイレベルの際にスイッチは接続状態となる。従って、スイッチ制御データが[10]である場合、期間Taに亘ってスイッチSW1は接続状態となる。よって、プリンタは、スイッチ制御データに基づきスイッチのオン/オフを制御することにより、1つの駆動信号DSに含まれる2つの信号波形SP1、SP2の駆動信号うち、圧電素子112を有効に励起する駆動信号を圧電素子112に排他的に印加できる。この結果、インク量判断の処理時間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、印刷装置に装着される印刷材収容容器内の印刷材の量を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の印刷装置に装着される印刷材収容容器には、残存する印刷材の量を検出するためのセンサを備えているものがある。センサには、例えば、電圧を印加すると伸縮する性質を有する圧電素子が用いられる。圧電素子は、電圧の印加後に残留振動を生じ、この残留振動により出力信号を出力する。このような圧電素子を有するセンサを用いて印刷材量の検出を行う場合、印刷装置は、圧電素子に電圧を印加し、出力信号に含まれる圧電素子の振動周波数を測定することにより、印刷材収容容器内に印刷材が所定量以上残存するか否かを判断する。
【0003】
従来、圧電素子に印加する電圧の周波数を、センサと印刷材収容容器内に収容されている印刷材との共振周波数とすることにより、圧電素子の振動の振幅を大きくし、振動周波数の測定精度を向上している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−39707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷材収容容器のセンサには製造過程において製造誤差が生じている。しかしながら、センサを駆動する駆動信号は一定であるため、印刷材収容容器内に同量の印刷材が残存していても、センサから出力される出力信号は異なる。そのため、センサの製造誤差に応じて、圧電素子の振動の振幅が小さくなることがあり、圧電素子の振動周波数を安定して精度良く測定することが困難である。この結果、印刷材収容容器に収容されている印刷材量を精度良く検出できないという問題が生じる。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、印刷材収容容器に収容されている印刷材量の判断の精度向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、印刷材収容容器に収容されている印刷材の量を判断する印刷装置を提供する。
本発明の印刷装置は、
前記メモリから、前記周波数情報を取得する取得手段と、
前記圧電素子の駆動に用いられ、第1の周波数の第1信号波形、および、前記第1の周波数と異なる第2周波数の第2信号波形を有する駆動信号を生成して出力する駆動信号生成手段と、
前記周波数情報に基づき、前記出力された駆動信号の前記第1信号波形および前記第2信号波形のうち、前記圧電素子の振動の振幅を増大させる波形を選択し、前記選択された信号波形を有する選択駆動信号を、前記圧電素子に排他的に供給する供給手段と、
前記選択駆動信号の供給停止後に、前記圧電素子の振動に伴い出力される応答信号を検出する検出手段と、
前記応答信号に含まれる前記圧電素子の振動周波数を測定する測定手段と、
前記振動周波数に基づき、前記印刷材収容容器に収容されている前記印刷材の量を判断する判断手段と、を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の印刷装置によれば、1の駆動信号が有する第1信号波形および第2信号波形から、圧電素子の振動の振幅を増大させる信号波形を選択し、選択された信号波形の選択駆動信号を圧電素子に対して排他的に供給できる。従って、1の駆動信号を用いて圧電素子の残留振動を有効に励起できる。よって、印刷材量の判断を行う際に、印刷材収容容器ごとに駆動信号を生成する必要がなくなるため、印刷装置の処理負荷を軽減できるとともに、処理時間を短縮できる。また、応答信号の検出精度を向上でき、印刷材量判断の精度を向上できる。
【0009】
本発明の印刷装置において、
前記駆動信号生成手段は、前記第1信号波形および第2信号波形を直列に並べて前記駆動信号を生成し出力してもよい。
【0010】
本発明の印刷装置によれば、第1の信号波形と第2の信号波形を順次出力できる。従って、簡易な構成で、第1の信号波形および第2の信号波形のいずれか一方を圧電素子に供給できるため、1の駆動信号を用いて、異なる振動周波数を有する印刷材収容容器の印刷材量を精度良く検出できる。さらに、本発明の印刷装置によれば、前記第一信号波形と第二信号波形とを直列に並べて、順次生成し出力するため、印刷装置の構成を簡略化できる。
【0011】
本発明の印刷装置において、
前記供給手段は、
前記周波数情報に基づき、前記選択駆動信号に関する供給制御情報を生成する供給制御情報生成手段と、
前記供給制御情報に基づき、前記第1信号波形または前記第2信号波形を選択し、選択した信号波形を有する前記選択駆動信号を前記圧電素子に供給する供給制御手段と、を備えてもよい。
【0012】
本発明の印刷装置によれば、生成した供給制御情報供給制御情報を用いて、第1信号波形と第2信号波形のうちのいずれか一方を選択できる。従って、簡易な構成で信号波形を選択できるため、印刷装置の処理負荷を軽減できるとともに、処理時間を短縮できる。
【0013】
本発明の印刷装置において、
前記印刷材収容容器は、前記印刷装置に電気的に接続するための第1の端子を備えており、
前記印刷装置は、更に、
前記第1の端子に接続するための第2の端子を備え、
前記供給手段は、更に、
前記駆動信号出力手段と前記第2の端子とを電気的に接続する接続部を備え、
前記供給制御手段は、前記供給制御情報に基づき、前記接続部の接続状態を制御してもよい。
【0014】
本発明の印刷装置によれば、供給制御情報に基づいて接続部の接続状態を制御することにより、第1信号波形および第2信号波形のうちのいずれか一方の信号波形の駆動信号のみを圧電素子に供給できる。従って、本発明の印刷装置を用いることにより、簡易な構成で、圧電素子の振動を有効に励起する選択駆動信号を圧電素子に供給できる。
【0015】
本発明の印刷装置において、
第1の信号波形は、少なくとも2周期分の波形を含み、
第2の信号波形は、少なくとも2周期分の波形を含んでもよい。
【0016】
本発明の印刷装置によれば、圧電素子に振動の振幅をより増大させることができ、応答信号の検出精度を向上できる。
【0017】
本発明の印刷装置において、前記第1の信号波形および前記第2の信号波形に含まれる波形の周期数は同一でもよい。
【0018】
本発明の印刷装置によれば、第1の信号波形および第2の信号波形のいずれの信号波形が圧電素子に供給されたとしても、同程度の検出精度で応答信号を検出することができる。
【0019】
本発明において、上述した種々の態様は、適宜、組み合わせたり、一部を省略したりして適用することができる。また、本発明は、上述した印刷装置としての構成の他に、印刷装置による印刷材量検出方法、印刷装置に印刷材残量を判断させるためのコンピュータプログラム、かかるコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体等としても構成できる。いずれの構成においても、上述した各態様を適宜適用可能である。コンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクや、CD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ハードディスク等種々の媒体を利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき、適宜図面を参照しながら説明する。
【0021】
A.実施例:
A1.システム構成:
実施例の印刷システムの概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、印刷システムの概略構成を示す説明図である。印刷システムは、プリンタ20、コンピュータ90を備える。プリンタ20は、コネクタ80を介してコンピュータ90と接続されている。
【0022】
プリンタ20は、副走査送り機構、主走査送り機構、ヘッド制御機構、および、各機構を制御する主制御部40を備える。副走査送り機構は、紙送りモータ22およびプラテン26を備える。副走査送り機構は、紙送りモータの回転をプラテンに伝達することによって用紙Pを副走査方向に搬送する。主走査送り機構は、キャリッジモータ32、プーリ38、キャリッジモータ32とプーリ38との間に張設された駆動ベルト36、および、プラテン26の軸と並行に設けられた摺動軸34を備える。摺動軸34は、駆動ベルト36に固定されたキャリッジ30を摺動可能に保持している。キャリッジモータ32の回転は、駆動ベルト36を介してキャリッジ30に伝達される。キャリッジ30は、摺動軸34に沿ってプラテン26の軸方向(主走査方向)に往復動する。ヘッド制御機構は、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60を備える。ヘッド制御機構は、印刷ヘッドを駆動して用紙P上にインクを吐出させる。プリンタ20は、更に、ユーザによるプリンタの種々の設定や、プリンタのステータスの確認に利用される操作部70を備える。
【0023】
印刷ヘッドユニット60は、印刷ヘッド69とカートリッジ装着部を備える。カートリッジ装着部には、6つのインクカートリッジ100a〜100fが装着される。印刷ヘッドユニット60は、更に、サブ制御部50を備える。
【0024】
印刷ヘッド69は、複数のノズルと、複数の圧電素子とを含み、各圧電素子に印加される電圧に応じて、各ノズルからインク滴を吐出し、用紙P上にドットを形成する。本実施例では、圧電素子にはピエゾ素子を利用する。
【0025】
各インクカートリッジ100a〜100fには、それぞれ圧電素子を用いたセンサが備えられている。プリンタ20は、このセンサの圧電素子に駆動信号を供給する。プリンタ20は、駆動信号の供給停止後に、圧電素子に生じる残留振動に伴って圧電素子から出力される応答信号に含まれる圧電素子の振動周波数測定することにより、インクカートリッジに収容されているインク量を判断する。以降、本実施例では、インクカートリッジを単に「カートリッジ」と呼ぶ。
【0026】
A2.プリンタの回路構成:
プリンタ20の回路構成について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、本実施例における主制御部40の電気的構成を示す説明図である。図3は、本実施例におけるサブ制御部50およびカートリッジの電気的構成を示す説明図である。図4は、本実施例におけるスイッチ制御部の機能ブロックを例示する説明図である。
【0027】
主制御部40は、CPU41、メモリ42、クロック信号を生成する発振器43、周辺機器との信号の授受およびサブ制御部50と情報の授受を行う入出力部(PIO)44、駆動信号生成回路46、駆動バッファ47および分配出力器48を備える。これらは、バス49を介して接続されている。また、バス49は、コネクタ80とも接続されており、主制御部40は、バス49およびコネクタ80を介してコンピュータ90と接続されている。このように接続されることにより、以上の各構成要素は相互にデータの授受が可能となる。
【0028】
駆動バッファ47は、印刷ヘッド69にドットのオン/オフ信号を供給するバッファとして使用される。分配出力器48は、駆動信号生成回路46から供給される駆動信号を所定のタイミングで印刷ヘッド69に分配する。
【0029】
駆動信号生成回路46は、分配出力器48を介して印刷ヘッド69に供給されるヘッド駆動信号PSと、サブ制御部50を介してカートリッジ100a〜100fのセンサ110の圧電素子112に供給される駆動信号DSとを生成する。本実施例では、以降、「駆動信号」とはセンサ駆動信号を指す。駆動信号生成回路46は、サブ制御部50を介して駆動信号DS出力する。駆動信号DSは、周波数F1の第1信号波形と周波数F1とは異なる周波数F2の第2信号波形とを有する。本実施例では、第1信号波形と第2信号波形とは直列に並ぶように生成され、駆動信号生成回路46から順次出力される。
【0030】
CPU41は、サブ制御部50を介してメモリ42に記憶されている周波数情報135(図3)を取得する。
【0031】
CPU41は、取得した周波数情報135に基づいて、第1信号波形SP1および第2信号波形SP2のいずれかを選択し、選択された信号波形のみを有する駆動信号(すなわち、駆動信号の一部分であり、以降、本実施例では「選択駆動信号」と呼ぶ)のみを圧電素子に供給するための第1のスイッチ制御データSD1を生成する。CPU41は、生成した第1のスイッチ制御データSD1をサブ制御部50に送信する。第1のスイッチ制御データSD1は、第1のスイッチSW1を制御するためのデータであり、請求の範囲における「供給制御情報」に当たる。またCPU41は、第2のスイッチSW2を制御するための第2のスイッチ制御データSD2および第3のスイッチSW3を制御するための第3のスイッチ制御データSD3を生成してサブ制御部50に送信する。スイッチ制御データSDについては、後に詳述する。
【0032】
サブ制御部50は、主制御部40と協働して、カートリッジ100a〜100fに関連する処理を実行する回路である。図3には、カートリッジ100a〜100fに関連する処理のうち、インク残量判断処理に必要な部分を選択的に示している。サブ制御部50は、図3に示すように、計算機51と、3つのスイッチSW1〜SW3と、増幅部52とを備える。
【0033】
計算機51は、CPU511、メモリ513、インターフェース514、および、サブ制御部50内の構成要素およびカートリッジ100a〜100fと信号の授受を行うための入出力部(SIO)515、および、スイッチ制御部516を備える。主制御部40の上記各構成要素は、バス519を介して接続されている。計算機51は、インターフェース514を介して主制御部40と信号の授受を行う。計算機51は、スイッチ制御部516を介して3つのスイッチSW1〜SW3を制御する。また、計算機51は、SIO515を介して増幅部52からの出力を受信する。
【0034】
スイッチ制御部516は、スイッチ制御データSDに従って、第1のスイッチSW1〜第3のスイッチSW3を制御する。スイッチ制御部516の詳細な機能ブロックについて図4を用いて説明する。
【0035】
図4に示すように、スイッチ制御部516は、制御部210と、スイッチごとに構成されているスイッチ制御信号出力回路220a、220bおよび220cを備える。スイッチ制御信号出力回路220aは、第1のスイッチSW1に接続されており、第1のスイッチSW1の接続状態を制御する。スイッチ制御信号出力回路220bは、第2のスイッチSW2に接続されており、第2のスイッチSW2の接続状態を制御する。スイッチ制御信号出力回路220cは、第3のスイッチSW3に接続されており、第3のスイッチSW3の接続状態を制御する。各スイッチ制御信号出力回路220a〜220cは、シフトレジスタ200と、ラッチ回路201、データデコーダ202を備える。
【0036】
CPU41から、クロック信号CLK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、および、スイッチ制御データSDがスイッチ制御部516に入力される。スイッチ制御データSDは、主制御部40の発振器43からのクロック信号CLKに同期して、シフトレジスタ200に転送される。転送されたスイッチ制御データSDは、一旦、ラッチ回路201によってラッチされる。ラッチされたスイッチ制御データSDは、データデコーダ202に入力される。
【0037】
制御部210には、ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CHが入力される。制御部210は、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHに基づき、スイッチのオン/オフを制御するスイッチ制御信号CSを生成する。制御部210により生成されたスイッチ制御信号CSは、データデコーダ202に入力される。データデコーダ202は、ラッチされたスイッチ制御データSDに基づき、スイッチ制御信号CSをスイッチに対して出力する。スイッチ制御信号CSについては後に詳述する。
【0038】
第1のスイッチSW1は、1チャネルのアナログスイッチである。第1のスイッチSW1の一方の端子は主制御部40の駆動信号生成回路46に接続されており、他方の端子は、第2のスイッチSW2および第3のスイッチSW3に接続されている。第1のスイッチSW1は、選択駆動信号SDSが供給される間、接続状態に設定され、センサ110からの応答信号RSを検出する際に非接続状態に設定される。
【0039】
第2のスイッチSW2は、6チャネルのアナログスイッチである。第2のスイッチSW2の一方の側の1つの端子は第1のスイッチSW1および第3のスイッチSW3に接続されており、他方の側の6つの端子は、6つのカートリッジ100a〜100fのそれぞれのセンサ110の一方の電極に接続されている。なお、各センサ110の他方の電極は接地されている。第2のスイッチSW2を順次切り換えることにより、6つのカートリッジ100a〜100fが順次選択される。
【0040】
第3のスイッチSW3は、1チャネルのアナログのスイッチである。第3のスイッチSW3の一方の端子は第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2と接続されており、他方の端子は、増幅部52と接続されている。第3のスイッチSW3は、センサ110に駆動信号DSを供給する際に非接続状態に設定され、センサ110からの応答信号RSを検出する際に、スイッチ制御部516からオン信号が与えられて接続状態に設定される。
【0041】
増幅部52は、オペアンプを含んでおり、応答信号RSと基準電圧Vrefとを比較して、応答信号RSの電圧が基準電圧Vref以上である場合にはハイ信号を出力し、応答信号RSの電圧が基準電圧Vref未満である場合にはロー信号を出力するコンパレータとして機能する。従って、増幅部52からの出力信号QCは、ハイ信号とロー信号のみからなるデジタル信号となる。
【0042】
CPU41は、増幅部52から出力された出力信号QCをカウントして、圧電素子112の振動周波数を測定し、この振動周波数に基づき、インクカートリッジに収容されているインク量を判断する。こうすることにより、CPU41はインク量の判断結果をコンピュータ90のディスプレイに表示でき、ユーザにインク量の判断結果について通知できる。
【0043】
A3.インクカートリッジおよびセンサの詳細構成:
インクカートリッジおよびセンサの詳細構成について、図5および図6を用いて説明する。図5は、インクカートリッジの構成を例示する正面図(図5(a))および側面図(図5(b))である。図6(a)および図6(b)は、インクカートリッジに設けられたセンサ周辺部の断面図である。
【0044】
図5(a)及び図5(b)に示すように、カートリッジ100aの筐体102はインクを収容する複数の収容室を備える。主収容室MRMは、収容室全体の容積の大部分を占める。第1の副収容室SRM1は、底面においてインク供給口104と連通している。第2の副収容室SRM2は、底面近傍において主収容室MRMと連通している。
【0045】
図6(a)および図6(b)は、図5(b)のA−A断面で切断したセンサ周辺部を、上方から見た断面図である。図6(a)および図6(b)に示すように、センサ110は、圧電素子112とセンサアタッチメント113とを備える。圧電素子112は、圧電部114と、圧電部114を挟む2つの電極115、116を備え、センサアタッチメント113に設置されている。圧電部114は、強誘電体であり、例えば、PZT(Pb(ZrxTi1−x)O3)で形成されている。センサアタッチメント113内には、ブリッジ流路BRが略コの字形状に形成されている。センサアタッチメント113は、ブリッジ流路BRと圧電素子112との間が薄膜状に形成されている。このように構成することにより、ブリッジ流路BRを含む圧電素子112の周辺部分は圧電素子112と共に振動する。
【0046】
カートリッジ100aに収容されているインクは、図5(a)、(b)および図6(a)、(b)において、実線矢印で示すように流動する。具体的には、主収容室MRMに収容されているインクは、底面近傍から第2の副収容室SRM2に流入する。第2の副収容室SRM2に流入したインクは、第2の側面孔76、センサアタッチメント113のブリッジ流路BRおよび第1の側面孔75を通って、第1の副収容室SRM1に流入する。第1の副収容室SRM1に流入したインクは、インク供給口104を通って、印刷ヘッドユニット60に供給される。
【0047】
図6(a)は、カートリッジ100aにインクが所定量以上存在する状態(本実施例では、以降、「インク有り時」と言う)を示す。インク有り時は、図6(a)に示すように、センサ110の一部であるセンサアタッチメント113内に形成されたブリッジ流路BR内にインクが充填されている状態である。換言すれば、インク有り時とは、カートリッジ100aにおいてセンサ110が設置されている位置(インク検出位置)にインクが存在しており、センサアタッチメント113の、ブリッジ流路BRと圧電素子112とに挟まれている薄膜状の部分(インク検出領域)にインクが接触している状態である。
【0048】
一方、図6(b)は、カートリッジ100aにインクが所定量未満しか存在しない状態(本実施例では、以降、「インク無し時」と言う)を示す。インク無し時には、ブリッジ流路BR内にインクが充填されていない状態である。換言すれば、インク無し時とは、インク検出位置にインクが存在せず、インク検出領域にインクが接触していない状態である。
【0049】
A4.駆動信号について:
ここで、振動周波数の検出精度を向上させるための駆動信号について説明する。既述の通り、プリンタ20は、カートリッジに設けられている圧電素子に駆動信号を供給し、圧電素子から出力される応答信号の周波数を測定することによりカートリッジに収容されているインクの量を判断している。このため、応答信号の振動周波数の検出精度を向上する観点からは、応答信号の振幅を大きくすることが望まれる。従って、応答信号の振動周波数の検出精度を向上するためには、駆動信号の周波数を圧電素子112の固有振動数に揃えることが好ましい。圧電素子の固有振動数と同じ周波数の駆動信号を圧電素子に供給することにより、圧電素子は共振し、振幅の大きい応答信号を出力するからである。
【0050】
しかしながら、製造過程においてカートリッジ・センサには製造誤差が生じる。従って、一般的に、カートリッジにおいて、インク有り時の固有振動数fF、インク無し時の固有振動数fEはそれぞれ目標とするインク有り時の固有振動数H1、インク無し時の固有振動数H2と誤差がある。この誤差について、図7を用いて説明する。図7(a)および図7(b)は、本実施例におけるカートリッジの固有振動数の誤差範囲を例示する説明図である。図7(a)は、インク有り時における圧電素子の固有振動数の誤差範囲を示しており、図7(b)は、インク無し時における圧電素子の固有振動数の誤差範囲を示している。
【0051】
図7(a)に示すように、インク有り時の固有振動数fFの誤差範囲ER1は「HFmin(KHz)〜HFmax(KHz)」である。一方、図7(b)に示すように、インク無し時の固有振動数fEの誤差範囲ER2は「HEmin(KHz)〜HEmax(KHz)」である。なお、誤差範囲ER1に含まれる振動数は誤差範囲ER2に含まれる振動数よりも低い。
【0052】
誤差範囲ER1の中間振動数Hmを駆動信号の周波数に設定した場合のインク無し時の応答信号の周波数について説明する。駆動信号の周波数を中間振動数Hmと同じ周波数に設定し、駆動信号を圧電素子に供給した場合、インク無し時の処理対象カートリッジの圧電素子の固有振動数fEが以下に示す(式1)の範囲内に含まれていれば、充分な精度を見込める。本実施例では、以降、(式1)により表される範囲を検出可能範囲DRと呼ぶ。
【0053】
(駆動信号周波数F*3)−α%≦固有振動数fE≦(駆動信号周波数F*3)+α% …(式1)
【0054】
(式1)における数値αは、製造過程における製造試験に基づき算出される誤差許容率であり、本実施例ではα=8である。処理対象カートリッジの固有振動数fEが検出可能範囲DR(DRmin(KHz)〜DRmax(KHz))に含まれていれば、圧電素子の残留振動は有効に励起され、応答信号の振幅を増幅できる。しかしながら、図7に示すように、処理対象カートリッジの固有振動数fEが、DRmax(KHz)より高い場合(図7(b)におけるハッチング範囲)には、圧電素子の残留振動は有効に励起されず、応答信号の検出精度が低下する。
【0055】
また、駆動信号の周波数を処理対象カートリッジの圧電素子の固有振動数に揃えるためには、インク量判断処理の度に処理対象カートリッジごとに周波数の異なる駆動信号を生成する必要があり、処理時間がかかる。
【0056】
そこで、本実施例のプリンタは、周波数の異なる2種類の信号波形を有する駆動信号を生成して出力し、第1のスイッチSW1の接続状態を制御して、駆動信号が有する2種類の信号波形SP1,2のうち、圧電素子の固有振動数に近い周波数の信号波形を選択し、選択された信号波形の選択駆動信号を圧電素子に供給する。こうすることにより、処理対象カートリッジごとに周波数の異なる駆動信号を生成する必要なく圧電素子の残留振動を有効に励起する駆動信号を圧電素子に対して供給できる。
【0057】
本実施例では、誤差範囲ER1に含まれ、誤差範囲ER1の中間振動数Hmより高い周波数の任意の周波数F1の波形を第1信号波形SP1とし、誤差範囲ER1に含まれ、誤差範囲ER1の中間振動数Hmより低い周波数の任意の周波数F2の波形を第2信号波形SP2とする。
【0058】
以下に、駆動信号生成回路46によって生成される駆動信号DSについて図8を参照して説明する。図8は、出力される駆動信号および圧電素子に印加される選択駆動信号SDSを例示する波形図である。
【0059】
CPU41はメモリ42に記憶されている駆動信号生成用パラメータを用いて駆動信号生成回路46に対して駆動信号の生成指示を行い、駆動信号生成回路46は、CPU41からの駆動信号生成指示に応じて、図8に示す駆動信号DSを生成する。駆動信号生成用パラメータには、駆動電圧Vh、最大電圧VH、最小電圧VL、駆動電圧Vhと基準電圧Vrefの関係を規定する比率、周波数F1、周波数F2等の駆動信号の生成に必要な種々のパラメータが含まれている。
【0060】
駆動信号DSは、駆動信号周期Tにおける期間Taで生成され第1信号波形SP1と、期間Tbで生成される第2信号波形SP2を含んでいる。期間Taは、第1信号波形SP1の1周期であり、Ta=1/F1である。期間Tbは、第2信号波形SP2の1周期であり、Tb=1/F2である。駆動信号周期T(期間Ta+期間Tb)が、駆動信号DSの1周期Tに相当する。
【0061】
第1信号波形SP1および第2信号波形SP2から、圧電素子に供給する選択駆動信号の波形を選択する駆動信号選択処理について説明する。駆動信号選択処理はCPU41により実行される。以下の(式2)を用いて誤差範囲ER1、誤差範囲ER2および固有振動数fEから固有振動数fFが算出される。インク無し時の固有振動数fEは、製造過程の試験において測定により求められる。
【0062】
fF=(fE―HEmin)*(HFmax−HFmin)/(HEmax−HEmin)+HFmin …(式2)
【0063】
メモリ130には、予め、周波数情報135として、製造試験において測定されたインク無し時の圧電素子の固有振動数fEが記憶されている。CPU41はサブ制御部50を介して処理対象カートリッジのメモリ130から固有振動数fEを取得し、上記(式2)を利用して固有振動数fFを算出する。CPU41は、算出された固有振動数fFが中間振動数Hmよりも高い場合には、選択駆動信号の波形として第1信号波形SP1を選択し、算出された固有振動数fFが中間振動数Hmよりも低い場合には、選択駆動信号の波形として第2信号波形SP2を選択する。
【0064】
(式2)を適用して算出された固有振動数fFが「固有振動数fF>中間振動数Hm」である場合、CPU41は、選択駆動信号の波形として第1信号波形SP1を選択する。
【0065】
第1信号波形SP1のみを有する選択駆動信号を圧電素子に供給した場合、検出可能範囲DRは、(式1)を用いて算出される。処理対象カートリッジの圧電素子の固有振動数fEが、検出可能範囲DRに含まれている場合には、圧電素子のインク無し時の残留振動は有効に励起される。また、インク有り時の固有振動数fFは「駆動信号周波数F±25%」の範囲内に含まれていれば圧電素子のインク有り時の残留振動は有効に励起される。
【0066】
A5.スイッチ制御データについて:
CPU41は、この選択結果に基づいて第1のスイッチ制御データSD1を生成する。第1のスイッチ制御データSD1について、図9を参照して説明する。図9は、選択駆動信号の選択パターンと第1のスイッチ制御データSD1を説明する説明図である。図9に示す選択テーブル500は、信号波形の選択パターンおよび選択パターンに応じた第1のスイッチ制御データSD1と固有振動数fFとの関連づけを表している。例えば、CPU41は、既述の通り、固有振動数fF>中間振動数Hmの場合、選択駆動信号の波形として第1信号波形SP1を選択する。この場合、図9に示すように、第1のスイッチ制御データSD1は[10]であるため、CPU41は、第1のスイッチ制御データSD1[10]を生成する。一方、固有振動数fF≦中間振動数Hmの場合、選択駆動信号の波形として第2信号波形SP2を選択する。この場合、図9に示すように、第1のスイッチ制御データSD1は[01]であるため、CPU41は、第1のスイッチ制御データSD1[01]を生成し、計算機51に送信する。
【0067】
A6.スイッチ制御信号:
計算機51は、CPU41から送信された第1のスイッチ制御データSD1に応じて第1のスイッチSW1の接続状態を制御する第1のスイッチ制御信号CSを出力する。スイッチ制御信号および圧電素子112に印加される選択駆動信号の波形について、図8を参照して説明する。図8に示されている選択駆動信号とは、圧電素子に印加される駆動信号を指す。
【0068】
スイッチ制御部516は、CPU41から入力されるラッチ信号LAT、チェンジ信号CHおよび第1のスイッチ制御データSD1に基づき、第1のスイッチSW1のオン/オフを制御するスイッチ制御信号CSを出力する。スイッチ制御信号CSがハイレベルの際に第1のスイッチSW1は接続状態となる。従って、図8に示すように、第1のスイッチ制御データSD1が[10]である場合、スイッチ制御部516は、期間Taに亘ってハイレベルの信号(オン信号)を出力するため第1のスイッチSW1は接続状態となり、期間Tbに亘ってローレベルの信号を出力するため第1のスイッチSW1は非接続状態となる。よって、図8の選択駆動信号SDS1に示すように、第1信号波形SP1の信号のみが圧電素子112に供給される。また、第1のスイッチ制御データSD1が[01]である場合、スイッチ制御部516は、期間Taに亘ってローレベルの信号を出力するためスイッチは非接続状態となり、期間Tbに亘ってハイレベルの信号を出力するためスイッチは接続状態となる。よって、図8の選択駆動信号SDS2に示すように、第2信号波形SP2の信号のみが圧電素子112に供給される。こうすることにより、1つの駆動信号DSに含まれる2つの信号波形SP1、SP2の駆動信号うち、圧電素子112を有効に励起する駆動信号を圧電素子112に排他的に印加できる。
【0069】
A7.インク量判断処理:
プリンタ20の主制御部40およびサブ制御部50が協働して実行するインク量判断処理について、図10〜図11を用いて説明する。図10は、本実施例におけるインク量判断処理を説明するフローチャートである。図11は、本実施例における周波数測定処理を説明するタイミングチャートである。
【0070】
インク量判断処理は、カートリッジに収容されているインクの量が所定量以上であるか所定量未満であるかを、カートリッジごとに判断する処理である。インク量判断処理は、例えば、プリンタ20の電源投入時に実行される。
【0071】
主制御部40のCPU41は、インク量判断処理を開始すると、6つのカートリッジ100a〜100fの中から、インク量判断処理の処理対象となるカートリッジを選択する(ステップS101)。
【0072】
主制御部40は、処理対象カートリッジに備えられているメモリ130から圧電素子112の固有振動数に関する周波数情報135を取得する(ステップS102)。具体的には、主制御部40は、サブ制御部50に処理対象カートリッジのメモリ130に格納されている周波数情報135を取得させるコマンドを、サブ制御部50の計算機51に対して送信する。計算機51のCPU511はコマンドの指示に従って、周波数情報135を取得してサブ制御部50に対して送信する。
【0073】
主制御部40は、取得した周波数情報135に基づき、第1のスイッチ制御データSD1を決定するスイッチ制御データを生成する(ステップS103)。第1のスイッチ制御データの生成については、既述の通りである。本実施例では、第2信号波形SP2が選択され、第1のスイッチ制御データSD1[01]が生成される。
【0074】
主制御部40は、第1信号波形SP1と第2信号波形SP2とを有する駆動信号DSを生成して圧電素子に対して出力し、周波数測定処理を実行する(ステップS105)。周波数測定処理について、図11に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。図11に示すクロック信号CLK、測定コマンドCM、ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CHは、周波数測定処理において、主制御部40からサブ制御部50の計算機51に送信される信号である。スイッチ制御信号CSは、スイッチ制御部516から出力される信号である。測定コマンドCMには、周波数測定処理の実行を指示する命令と共に、処理対象カートリッジを指定する情報が含まれる。駆動信号DSは、既述のように、主制御部40の駆動信号生成回路46から出力される信号である。応答信号RSは、駆動信号DSが供給された後に、圧電素子の残留振動に伴って生じる信号である。
【0075】
サブ制御部50の計算機51は、ラッチ信号のラッチパルスP1を受信したタイミングで、先に受信している測定コマンドCMに従って第2のスイッチSW2を制御し、処理対象カートリッジの圧電素子112をサブ制御部50と接続状態にする。更に、計算機51は、ラッチパルスP1を受信したタイミングで、第1のスイッチ制御データSD1の最初のデータに基づき第1のスイッチSW1の接続状態を制御する。本実施例では、第1のスイッチ制御データSD1[01]がスイッチ制御部516に入力される。第1のスイッチ制御データSD1の最初のデータは[0]であるため、スイッチ制御部516から第1のスイッチSW1に対してオン信号は出力されず、第1のスイッチSW1は非接続状態となる。更に、計算機51は、ラッチパルスP1を受信したタイミングで第3のスイッチSW3を非接続状態にする。こうすることにより、増幅部52は、駆動信号生成回路46および圧電素子112と電気的に切り離され、駆動信号DSが増幅部52に印加されない。
【0076】
期間Taの終了するタイミングで、主制御部40は、チェンジ信号のチェンジパルスP2を発生させる。計算機51は、チェンジパルスP2を受信したタイミングで、第1のスイッチ制御データSD1の2番目のデータに基づき第1のスイッチSW1の接続状態を制御する。本実施例では、第1のスイッチ制御データSD1の2番目のデータは[1]であるため、スイッチ制御部516から第1のスイッチSW1に対してオン信号が出力される。第1のスイッチSW1は、オン信号を受けて接続状態に設定される。こうすることで、第2信号波形SP2の選択駆動信号のみが圧電素子112に印加される。
【0077】
駆動信号の印加が終了するタイミングで、主制御部40は、チェンジパルスP3を発生させる。サブ制御部50の計算機51は、チェンジパルスP3を受信したタイミングで、第1のスイッチSW1を非接続状態とする。ラッチパルスP1からチェンジパルスP3までの期間を駆動電圧印加期間T1と呼ぶ。
【0078】
駆動電圧印加期間T1終了後、駆動信号によって振動を励起された圧電素子112は、振動に伴う歪みに応じて、応答信号RSを出力する。チェンジパルスP3の発生後、主制御部40は、チェンジパルスP4を発生させる。サブ制御部50の計算機51は、チェンジパルスP4を受信したタイミングで、第3のスイッチSW3を接続状態にする。この結果、圧電素子112からの応答信号RSは、増幅部52に入力される。
【0079】
増幅部52は、既述のとおりコンパレータとして機能し、応答信号RSの波形に応じたデジタル信号である出力信号QCを計算機51に出力する。計算機51は、取得した出力信号QCに基づいて応答信号RSの振動周波数Hを算出し、主制御部40に送信する。
【0080】
主制御部40は、振動周波数Hを取得すると、振動周波数Hに基づき処理対象カートリッジのインク量を判定する(ステップS105)。主制御部40は、振動周波数Hが上述した固有振動数H1に近似している場合には、処理対象カートリッジのインク量は所定量以上であると判断する(ステップS106)。主制御部40は、振動周波数Hが上述した固有振動数H2に近似している場合には、処理対象カートリッジのインク量は所定量未満であると判断する(ステップS107)。
【0081】
主制御部40は、インク量の判定結果をコンピュータ90に送信する。こうすることにより、コンピュータ90は、受信したインク量の判定結果をユーザに通知できる。
【0082】
本実施例の印刷システムによれば、周波数の異なる複数の信号波形を有する駆動信号を出力し、各インクカートリッジの固有振動数に応じて、駆動信号に含まれる信号波形のうち1の信号波形を選択し、選択された信号波形のみを有する選択駆動信号を圧電素子に対して供給できる。従って、インク量判断処理において、処理対象カートリッジ毎に駆動信号を生成し直す必要がなくなるため、印刷装置の処理負荷を軽減できるとともに、処理時間を短縮できる。
【0083】
また、本発明の印刷システムによれば、複数の信号波形を生成するために、信号波形ごとに個別に回路を構成する必要がないため、インク量判断処理を実行する回路を簡素化できる。
【0084】
また、本発明の印刷システムによれば、第1信号波形SP1の駆動信号または第2信号波形SP2の駆動信号のうち、圧電素子の残留振動の振幅を有効に励起する駆動信号を圧電素子に供給できるため、応答信号の検出精度を向上でき、インク量判断の判断精度を向上できる。
【0085】
B.第2実施例:
上述の第1実施例では、駆動信号DSの1周期内に、第1信号波形SP1および第2信号波形SP2がそれぞれ1ショット(1周期分)ずつ含まれている。第2実施例では、例えば、各信号波形を2ショット(2周期分)ずつ含んでもよい。
【0086】
B1.駆動信号の波形:
図12は、第2実施例における駆動信号DS’を例示する波形図である。駆動信号DS’は、駆動信号生成回路46から出力される信号である。駆動信号生成回路46は、図12に示すように、駆動信号DS’の駆動信号周期Tには、それぞれ2周期分の波形を含む第1信号波形SP1’と第2信号波形SP2とが含まれている。期間Taは周波数F1の信号の1周期Tを示しており、期間Tbは周波数F2の信号の1周期を示している。
【0087】
本実施例では、例えば、圧電素子に供給する選択駆動信号の波形として第1信号波形SP1が選択されると、2周期分の波形を含む第1信号波形SP1’のみが圧電素子に供給され、第2信号波形SP2’は圧電素子に供給されない。
【0088】
圧電素子は、供給される波形の周期数(ショット数)の増加に伴い、残留振動の振幅が大きく励起されるため、応答信号の検出精度を向上できる。しかしながら、インク量判断処理においては、圧電素子に供給される波形のショット数の増加に伴い、処理時間が増大してしまう。よって、選択駆動信号の波形は、2ショット以下とすることが好ましい。こうすれば、圧電素子112の振動の振幅を増大させることができ、応答信号の検出精度を更に向上できるとともに、処理時間を短縮できる。
【0089】
また、図12に示すように、信号波形SP1’および第2信号波形SP2’に含まれるショット数は、同一とすることが好ましい。第1信号波形SP1’および第2信号波形SP2’のいずれの信号が圧電素子に供給されても、同程度の、かつ、高い検出精度で応答信号を検出できるからである。
【0090】
C.変形例:
(1)
上述した実施例では、インク有り時の固有振動数の誤差範囲ER1から2種類の周波数の波形を有する駆動信号を生成しているが、例えば、インク有り時のインク量判断処理を実行するための駆動信号の波形とインク無し時のインク量判断処理を実行するための駆動信号の波形と有する駆動信号を生成してもよい。こうすれば、インク有り時とインク無し時におけるそれぞれのインク量判断処理を行う際に、駆動信号を生成し直す必要がなくなるため処理時間を短縮でき好適である。また、インク有り時とインク無し時における各インク量判断処理の際に利用される駆動信号を生成するための回路を個別に構成する必要がないため、回路の大型化を抑制できる。
【0091】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成をとることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施例における印刷システムの概略構成を示す説明図。
【図2】第1実施例における主制御部の電気的構成を示す説明図。
【図3】第1実施例におけるサブ制御部およびカートリッジの電気的構成を示す説明図。
【図4】第1実施例におけるスイッチ制御部の機能ブロックを例示する説明図。
【図5】第1実施例におけるインクカートリッジの構成を例示する説明図。
【図6】第1実施例におけるインクカートリッジのセンサ周辺部を説明する断面模式図。
【図7】第1実施例におけるカートリッジの固有振動数の誤差範囲を例示する説明図。
【図8】第1実施例における駆動信号のパルス波形を例示する波形図。
【図9】第1実施例におけるスイッチ制御データについて例示する説明図。
【図10】第1実施例におけるインク量判断処理を説明するフローチャート。
【図11】第1実施例における周波数測定処理を説明するタイミングチャート。
【図12】第2実施例における駆動信号のパルス波形を例示する波形図。
【符号の説明】
【0093】
20…プリンタ
22…モータ
26…プラテン
30…キャリッジ
32…キャリッジモータ
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
40…主制御部
41…CPU
42…メモリ
43…発振器
46…駆動信号生成回路
47…駆動バッファ
48…分配出力器
49…バス
50…サブ制御部
51…計算機
52…増幅部
60…印刷ヘッドユニット
69…印刷ヘッド
70…操作部
75…第1の側面孔
76…第2の側面孔
80…コネクタ
90…コンピュータ
100a…カートリッジ
102…筐体
104…インク供給口
110…センサ
112…圧電素子
113…センサアタッチメント
114…圧電部
115…電極
130…メモリ
135…周波数情報
200…シフトレジスタ
201…ラッチ回路
202…データデコーダ
210…制御部
220a、220b、220c…スイッチ制御信号出力回路
511…CPU
513…メモリ
514…インターフェース
516…スイッチ制御部
519…バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容されている印刷材の量を検出するための圧電素子と前記圧電素子の固有振動数に関する周波数情報が記憶されているメモリとを備える印刷材収容容器が着脱可能に装着される印刷装置であって、
前記メモリから、前記周波数情報を取得する取得手段と、
前記圧電素子の駆動に用いられ、第1の周波数の第1信号波形、および、前記第1の周波数と異なる第2周波数の第2信号波形を有する駆動信号を生成して出力する駆動信号生成手段と、
前記周波数情報に基づき、前記出力された駆動信号の前記第1信号波形および前記第2信号波形のうち、前記圧電素子の振動の振幅を増大させる波形を選択し、前記選択された信号波形を有する選択駆動信号を、前記圧電素子に排他的に供給する供給手段と、
前記選択駆動信号の供給停止後に、前記圧電素子の振動に伴い出力される応答信号を検出する検出手段と、
前記応答信号に含まれる前記圧電素子の振動周波数を測定する測定手段と、
前記振動周波数に基づき、前記印刷材収容容器に収容されている前記印刷材の量を判断する判断手段と、を備える、印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記駆動信号生成手段は、前記第1信号波形および第2信号波形を直列に並べて前記駆動信号を生成し出力する、印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の印刷装置であって、
前記供給手段は、
前記周波数情報に基づき、前記選択駆動信号に関する供給制御情報を生成する供給制御情報生成手段と、
前記供給制御情報に基づき、前記第1信号波形または前記第2信号波形を有する前記選択駆動信号を前記圧電素子に供給する供給制御手段と、を備える印刷装置。
【請求項4】
請求項3記載の印刷装置であって、
前記印刷材収容容器は、前記印刷装置に電気的に接続するための第1の端子を備えており、
前記印刷装置は、更に、
前記第1の端子に接続するための第2の端子を備え、
前記供給手段は、更に、
前記駆動信号生成手段と前記第2の端子とを電気的に接続する接続部を備え、
前記供給制御手段は、前記供給制御情報に基づき、前記接続部の接続状態を制御する、印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれか記載の印刷装置であって、
第1の信号波形は、少なくとも2周期分の波形を含み、
第2の信号波形は、少なくとも2周期分の波形を含む、印刷装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5記載の印刷装置であって、
前記第1の信号波形および前記第2の信号波形に含まれる波形の周期数は同一である、印刷装置。
【請求項7】
収容されている印刷材の量を検出するための圧電素子と前記圧電素子の固有振動数に関する周波数情報が記憶されているメモリとを備える印刷材収容容器が着脱可能に装着される印刷装置が実行する印刷材量判断方法であって、
前記メモリから、前記周波数情報を取得し、
前記圧電素子の駆動に用いられ、第1の周波数の第1信号波形、および、前記第1の周波数と異なる第2周波数の第2信号波形を有する駆動信号を生成して出力し、
前記周波数情報に基づき、前記出力された駆動信号の前記第1信号波形および前記第2信号波形のうち、前記圧電素子の振動の振幅を増大させる波形を選択し、前記選択された信号波形を有する選択駆動信号を、前記圧電素子に排他的に供給し、
前記選択駆動信号の供給停止後に、前記圧電素子の振動に伴い出力される応答信号を検出し、
前記応答信号に含まれる前記圧電素子の振動周波数を測定する測定手段と、
前記振動周波数に基づき、前記印刷材収容容器に収容されている前記印刷材の量を判断する、印刷材量判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−283695(P2007−283695A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115482(P2006−115482)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】