印刷装置、及び、印刷方法
【課題】正しく読み取らせるパターンを印刷すること。
【解決手段】第1インクを吐出する第1ノズルと、第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、第1インクによるパターンが既に印刷されている媒体に、第1インクによる新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されているパターンの位置とは異なる媒体上の位置に新たなパターンを印刷させ、且つ、既に印刷されているパターンと新たに印刷されるパターンを識別するための第2インクによる画像を、既に印刷されているパターン上に印刷させる制御部と、を有する印刷装置。
【解決手段】第1インクを吐出する第1ノズルと、第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、第1インクによるパターンが既に印刷されている媒体に、第1インクによる新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されているパターンの位置とは異なる媒体上の位置に新たなパターンを印刷させ、且つ、既に印刷されているパターンと新たに印刷されるパターンを識別するための第2インクによる画像を、既に印刷されているパターン上に印刷させる制御部と、を有する印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、媒体(例えば印刷用紙)に対してノズルからインクを吐出することにより、媒体に画像を印刷するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。ノズルから正常にインクが吐出されない不良ノズルを検出するために、プリンターはパターンを媒体に印刷することがある。何度もパターンを印刷する場合、多数の媒体を消費してしまう。そこで、1枚の媒体に対して、パターンをずらして印刷し、媒体の消費量を削減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−276502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、1枚の媒体に複数のパターンが印刷されていると、誤ったパターンを読み取ってしまう虞がある。
そこで、本発明は、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、第1インクを吐出する第1ノズルと、前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、前記第1インクによるパターンが既に印刷されている媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷させる制御部と、を有することを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターの概略斜視図であり、図2Bはヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図3】ブラックノズル列により印刷されるブラックのパターンを説明する図である。
【図4】不良ノズル検査のフローを説明する図である。
【図5】図5Aから図5Cは第1実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。
【図6】Duty制限値を説明する図である。
【図7】図7Aは第2実施形態の識別画像を説明する図であり、図7Bは、第2実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。
【図8】図8A及び図8Bは第3実施形態の識別画像を説明する図である。
【図9】第4実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。
【図10】ノズルチェックパターンの変形例を示す図である。
【図11】図11Aから図11Cはノズルチェックパターンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、第1インクを吐出する第1ノズルと、前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、前記第1インクによるパターンが既に印刷されている媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷させる制御部と、を有することを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができ、また、媒体の消費量を削減することができる。
【0009】
かかる印刷装置であって、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像が、既に印刷されている前記パターンを前記第2インクで塗りつぶす画像であること。
このような印刷装置によれば、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができ、また、媒体の消費量を削減することができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像が、前記パターンと異なる画像であること。
このような印刷装置によれば、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができ、また、媒体の消費量を削減することができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記第1インクによるパターンと前記第2インクによるパターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクと前記第2インクにより各々新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、既に印刷されている前記第1インクによる前記パターンの上に前記第2インクによる前記異なる画像を印刷させ、既に印刷されている前記第2インクによる前記パターンの上に前記第1インクによる前記異なる画像を印刷させること。
このような印刷装置によれば、パターンを印刷するインクだけで、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像を印刷する場合の方が、実際の画像を印刷する場合に比べて、前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大インク量が少ないこと。
このような印刷装置によれば、媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止できる。
【0013】
かかる印刷装置であって、複数色の前記第1インクが色ごとに複数の前記第1ノズルから吐出され、前記パターンは、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのパターンであり、前記制御部は、複数色の前記第1インクによって色ごとに印刷させた前記パターンに基づいて前記不良ノズルを検出した場合に、前記不良ノズルに対する回復処理を実行させた後、既に印刷されている前記パターンのうち、前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンの上に、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像を印刷させ、前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンを前記媒体に印刷させること。
このような印刷装置によれば、パターンを印刷する数と、既に印刷されているパターンと新たに印刷されるパターンとを識別するための画像を印刷する数とを、削減することができる。
【0014】
また、第1インクによってパターンを媒体に印刷することと、前記パターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷する場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷し、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための画像であって前記第1インクとは異なる色の第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷することと、を有することを特徴とする印刷方法である。
このような印刷方法によれば、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができ、また、媒体の消費量を削減することができる。
【0015】
===印刷システム===
以下、インクジェットプリンター(以下、プリンター)とコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0016】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2Aは、プリンター1の概略斜視図であり、図2Bは、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0017】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるためのものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0019】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが充填されたインク室(不図示)が設けられている。
【0020】
図2Bに示すように、ヘッド41は、ブラックインクを吐出するブラックノズル列K・シアンインクを吐出するシアンノズル列C・マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列M・イエローインクを吐出するイエローノズル列Y・白インクを吐出するホワイトノズル列Wを有する。各ノズル列では、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔(例:180dpi)で並んでいる。
【0021】
このようなプリンター1では、コントローラー10が、ヘッド41を移動方向に移動させながら媒体Sに対してインクを吐出させる吐出動作と、ヘッド41に対して媒体Sを搬送方向に搬送させる搬送動作と、を繰り返し実行させる。その結果、先の吐出動作により形成されたドット位置とは異なる媒体上の位置に、後の吐出動作にてドットを形成することができ、媒体S上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41が移動方向へ1回移動する動作を「パス」と呼ぶ。
【0022】
===不良ノズル検査===
ヘッド41に設けられたノズルから長時間に亘ってインクが吐出されずにインクが増粘したり、ノズルに異物が付着したり、ノズル内に気泡が混入したりすると、インクが吐出されるべき時に規定量のインクがノズルから吐出されなくなってしまう。このようにインクの吐出不良が発生するノズルを「不良ノズル」と呼ぶ。印刷に使用するノズルの中に不良ノズルが含まれると、画像内にドット抜けが生じる等して、画像の画質が劣化してしまう。そのため、本実施形態のプリンター1は、印刷開始前などに、不良ノズルの発生の有無を判断する「不良ノズル検査」を実施する。不良ノズル検査のために、プリンター1は「ノズルチェックパターン」を媒体Sに印刷する。
【0023】
図3は、ブラックノズル列Kにより印刷されるブラックのパターンP(K)を説明する図である。なお、図では、ブラックノズル列Kに属するノズル数を16個に減らして描いている。本実施形態のプリンター1は、5色のインク(WYMCK)を吐出可能とし、その中の4色のインク(YMCK)により画像を印刷する。画像を印刷するために使用する4色のインク(YMCK)を「印刷インク」と呼ぶ。印刷インク(YMCK)を吐出するノズルの中に不良ノズルが含まれると、画像の画質が劣化してしまう。そのため、プリンター1は、印刷インク(YMCK)を吐出するノズル列を用いてノズルチェックパターンを印刷する。
【0024】
具体的には、ノズルチェックパターンとして、4色の印刷インク(YMCK)の色ごとのパターンが印刷される(即ち、イエローのパターンP(Y)、マゼンタのパターンP(M)、シアンのパターンP(C)、ブラックのパターンP(K)が印刷される)。各色のパターンPは、ヘッド41が移動方向に移動しながら各ノズル列に属するノズルから断続的にインク滴が吐出されることによって、印刷される。その結果、各色のパターンでは、図3に示すように、ノズル列に属する各ノズル#1〜#16によって印刷された移動方向に沿うドット列(ラスターライン)が搬送方向に並ぶことになる。
【0025】
ここで、ブラックノズル列(K)の「ノズル#9」が不良ノズルであり、ノズル#9から全くインクが吐出されないとする。そうすると、図3に示すように、ノズル#9に割り当てられた媒体S上の領域にはドットが形成されず、パターンP(K)に移動方向に沿った白スジが生じる。なお、規定量のインクよりも少ないインクを吐出する不良ノズルが発生している場合、パターンに移動方向に沿った淡い色のスジが生じる。つまり、パターンPに白スジや淡い色のスジが生じているか否かによって、不良ノズルの発生の有無を判断することができ、また、パターンPにおける白スジ等の位置によって不良ノズルの位置を判断することができる。
【0026】
また、本実施形態のプリンター1では、図2Aに示すように、ヘッド41よりも搬送方向の下流側に、ノズルチェックパターンを読み取るための「センサー51」が、キャリッジ31に搭載されている。コントローラー10は、センサー51がノズルチェックパターンを読み取った結果に基づいて、不良ノズルの発生の有無(及び、不良ノズルの位置)を判断する。ただし、これに限らず、例えば、ユーザーがノズルチェックパターンを直接視認して不良ノズルの発生の有無を判断してもよいし、プリンター1の外部のセンサーがノズルチェックパターンを読み取った結果に基づいてコントローラー10が不良ノズルの発生の有無を判断してもよい。
【0027】
===クリーニング動作===
不良ノズル検査の結果、不良ノズルが検出された場合、プリンター1は、不良ノズルから正常にインクが吐出されるように「クリーニング動作」を実施する。ここでは、クリーニング動作の具体例として、フラッシング、ポンプ吸引、ワイピングを挙げる。
【0028】
「フラッシング」とは、ヘッド41とインク回収部(不図示)を対向させた状態で、強制的にノズルからインクを吐出させ、増粘したインクやノズル面に付着した異物をインクとともに吐出させる動作である。
「ポンプ吸引」とは、ヘッド41のノズル面とインク回収部を密着させて、インク回収部の底面に接続されたチューブを介してポンプ吸引する(不図示)。そうすることで、増粘したインクや異物と共に、ヘッド41内のインクを吸引する動作である。
「ワイピング」とは、ゴム製のワイパー等でノズル面を擦って異物などを除去する動作である。
上記クリーニング動作の中の何れか1つの動作を実施してもよいし、複数の動作を組み合わせて実施してもよい。
【0029】
===第1実施形態===
図4は、不良ノズル検査のフローを説明する図である。図5Aから図5Cは、第1実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。不良ノズル検査では、前述のように、4色の印刷インク(YMCK)の色ごとのパターンPが媒体Sに印刷される。ヘッド41が移動方向に移動する1回のパスの間に、まず、イエローノズル列Yに属するノズルからインクが吐出され、次に、マゼンタノズル列Mに属するノズルからインクが吐出され、次に、シアンノズル列Cに属するノズルからインクが吐出され、最後に、ブラックノズル列Kに属するノズルからインクが吐出される。その結果、図5Aに示すように、各色のパターンPが移動方向に並んで印刷される。
【0030】
また、図5Aに示すように、新しい媒体Sにノズルチェックパターンを印刷する場合、プリンター1は、媒体Sの搬送方向下流側の端部から上流側に距離Dだけ離れた地点に各色のパターンPの搬送方向下流側の端部が位置するように、各色のパターンPを印刷する。
【0031】
1回分のノズルチェックパターンが印刷されただけの媒体Sには比較的に大きな余白がある。それにも拘らず、ノズルチェックパターンを印刷する度に、新しい媒体Sをプリンター1に供給したとする。そうすると、何度もノズルチェックパターンを印刷する場合には、多数の媒体Sが消費されてしまう。そこで、本実施形態のプリンター1は、ノズルチェックパターンが既に印刷される媒体を使用して、2回目以降のノズルチェックパターンを印刷する。
【0032】
そのために、プリンター1のコントローラー10は、パターンPが既に印刷されている媒体S上の位置とは異なる位置に、新たなパターンPを印刷させる。そうすることで、1枚の媒体に複数のノズルチェックパターンを印刷することができ、媒体Sの消費量を削減することができる。
【0033】
ただし、1枚の媒体Sに同じ形状のパターンPが多数印刷されていると、センサー51が誤ったパターンPを読み取ってしまう虞がある。そうすると、コントローラー10は、誤ったパターンPの読取結果に基づいて不良ノズルの有無を判断することになり、不良ノズル検査を正確に行うことが出来なくなってしまう。
【0034】
そこで、コントローラー10は、印刷インク(YMCK)によるパターンが既に印刷されている媒体Sに、同じ印刷インクにより新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されているパターンの位置とは異なる媒体S上の位置に新たなパターンを印刷させ、且つ、既に印刷されているパターンと新たに印刷されるパターンを識別するための画像(以下、「識別画像」とも呼ぶ)を、既に印刷されているパターンの上に印刷させる。
【0035】
第1実施形態では、識別画像を、印刷インク(YMCK)とは異なる色の白インク(消去インク)で既に印刷されているパターンPを塗りつぶす画像、即ち、各色のパターンP以上の大きさの白色の画像とする。ここでは、媒体Sの地色を白色とする。よって、既に印刷されているパターンPは、媒体Sと同色系のインクにより塗りつぶされることになる。なお、第1実施形態では、印刷インク(YMCK)が第1インクに相当し、印刷インクを吐出するノズルが第1ノズルに相当し、白インクが第2インクに相当し、白インクを吐出するノズルが第2ノズルに相当する。
【0036】
図4のフローを用いて具体的に説明すると、コントローラー10は、不良ノズル検査を実施する際に、まず、媒体Sに印刷済みのパターンPが有るか否かを判断する(S001)。例えば、パターンPを印刷するために供給された媒体Sをセンサー51に読み取らせ、その読取結果に基づいて、コントローラー10が媒体S上のパターンPの有無を判断するようにしてもよい。また、印刷済みの媒体Sを使用する事をユーザーがプリンター1又はコンピューター60に入力し、その入力結果に基づいて、コントローラー10が媒体S上のパターンPの有無を判断するようにしてもよい。
【0037】
媒体Sに印刷済みのパターンPが無い場合、即ち、新しい媒体Sにノズルチェックパターンを印刷する場合(S001→N)、コントローラー10は、図5Aに示すように各色のパターン(P(Y1),P(M1),P(C1),P(K1))が印刷されるように、ヘッドユニット40に印刷データを送信する。
【0038】
一方、媒体Sに印刷済みのパターンPが有る場合(S001→Y)、コントローラー10は、まず、前回印刷されたノズルチェックパターンとヘッド41が対向するように媒体Sを供給させ、前回印刷された各色のパターンP上に識別画像Pdを印刷させる。即ち、前回印刷された各色のパターンPは、図5Bに示すように、白インクにより塗りつぶされる。その後、コントローラー10は、媒体Sを搬送方向下流側に搬送させて、前回印刷されたノズルチェックパターンよりも搬送方向上流側に距離αだけずれた位置に、今回のノズルチェックパターン(P(Y2),P(M2),P(C2),P(K2))を印刷させる。
【0039】
センサー51は、こうして新たに印刷されたノズルチェックパターンを読み取り、その読取結果をコントローラー10に送信する。コントローラー10は、センサー51から取得した読取結果に基づいて(パターンPに白スジ等が生じているか否かによって)、不良ノズルの発生の有無を判断する(S004)。不良ノズルが発生していなかった場合(S004→N)、コントローラー10は不良ノズル検査を終了する。
【0040】
一方、不良ノズルが発生していた場合(S004→Y)、コントローラー10は、ヘッド41、又は、不良ノズルが発生していたノズル列に対してクリーニング動作を実施する(S005)。その後、クリーニング動作により不良ノズルから正常にインクが吐出されるように回復したか否かを確認するために、コントローラー10は、再度、媒体Sにノズルチェックパターンを印刷させる。
【0041】
こうして、不良ノズルが検出されなくなるまで、ノズルチェックパターンの印刷とクリーニング動作が繰り返し行われる。なお、その際に、図5Cに示すように媒体Sに新たなパターンPを印刷する領域が無くなると、プリンター1は、新しい媒体SにパターンPを印刷する。
【0042】
このように第1実施形態では、媒体Sの消費量を削減するために1枚の媒体Sに複数回分のノズルチェックパターンが印刷されるが、既に印刷されている各色のパターンPを白インクで塗りつぶす(各色のパターンPの上に白色の識別画像Pdを印刷する)。そのため、複数回分のノズルチェックパターンが印刷された媒体Sであっても、今回印刷した1回分のノズルチェックパターンだけが視認可能な状態となっている。
【0043】
よって、センサー51が、前に印刷されたノズルチェックパターンを誤って読み取ってしまうことを防止できる。即ち、本実施形態のプリンター1は、センサー51やユーザーに正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができる。仮に、センサー51が誤って、前に印刷されたノズルチェックパターン、即ち、クリーニング動作を実施する前に印刷されたノズルチェックパターンを読み取ってしまうと、その読取結果に基づいて無駄にクリーニング動作が実施されてしまう。
【0044】
そのため、前に印刷されたノズルチェックパターンを白インクで塗りつぶすことにより、今回印刷されたノズルチェックパターンを正しく読み取らせることができ、不良ノズル検査を正確に行うことができる。その結果、無駄なクリーニング動作の実施を防止することができる。
【0045】
また、媒体Sには今回印刷した1回分のノズルチェックパターンだけが視認可能な状態となっているため、媒体Sに複数回分のノズルチェックパターンを印刷する場合であっても、何れのノズルチェックパターンが今回印刷したノズルチェックパターンであるのかを示す情報を印刷する必要がなくなる。ただし、これに限らず、ノズルチェックパターンに関する情報を、ノズルチェックパターンと共に印刷してもよい。
【0046】
また、ユーザーがノズルチェックパターンを確認する場合においても、前に印刷されたノズルチェックパターンを白インクで塗りつぶすことにより、ユーザーが誤ったノズルチェックパターンに基づいて不良ノズルの発生の有無を判断してしまうことを防止できる。また、ユーザーが今回印刷されたノズルチェックパターンを直ぐに判別することができる。
【0047】
図6は、Duty制限値を説明する図である。本実施形態のインクは、水系インクであり、媒体は、水系インクの吸収性を備える媒体(例えば、紙)であるとする。インク吸収性媒体には吸収可能なインク量に限界がある。そのため、インク吸収性媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうと、媒体内部に吸収しきれないインクが媒体上に溢れだしてしまう。
【0048】
インク吸収性媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止するために、本実施形態のプリンター1では「Duty制限値」が設定されている。「Duty制限値(%)」とは、「媒体上の単位領域に形成可能なドット数」に対する「媒体の吸収能力を超えずに媒体上の単位領域に形成可能なドット数」の割合を意味する。本実施形態のプリンター1では、Duty制限値以下で印刷が行われるように、Duty制限値を考慮した印刷データが作成される。
【0049】
ここで、1つのドットが形成される媒体上の領域を「画素」と呼ぶ。よって、媒体上の単位領域に形成可能なドット数とは、媒体上の単位領域に属する画素数に相当する。例えば、媒体上の単位領域に属する画素数が100画素であり、媒体の吸収能力を超えずに媒体上の単位領域に形成可能なドット数が50個である場合、Duty制限値は「50%(=(50/100)×100)」となる。
【0050】
そして、本実施形態のプリンター1では、識別画像Pdを印刷する時の白インクのDuty制限値(パターンPを白インクで塗りつぶす時のDuty制限値)を、実際の画像を印刷する時の印刷インク(YMCK)の1色あたりのDuty制限値よりも、低い値に設定する。つまり、識別画像Pdを印刷する場合の方が、実際の画像を印刷する場合に比べて、媒体上の単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大インク量を少なくする。なお、「実際の画像」とは、ユーザーが指定した画像データに基づいて印刷する画像であってもよいし、ノズルチェックパターンであってもよい。
【0051】
例えば、実際の画像を印刷する時の印刷インク(YMCK)の1色あたりのDuty制限値が100%に設定され、識別画像Pdを印刷する時の白インクのDuty制限値が50%に設定されているとする。そうすると、実際の画像を印刷する時には、図6の左図に示すように、媒体上の単位領域(4画素×4画素)に対して1色のドットを最大で16個形成することが可能となる。一方、識別画像Pdを印刷する時には、図6の右図に示すように、媒体上の単位領域に対して白インクのドットを最大で8個までしか形成することができない。
【0052】
そうすることで、本実施形態のように、パターンPの上に識別画像Pdを重ねて印刷する場合であっても、媒体Sの吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止することができる。言い換えると、パターンPの上に識別画像Pdを重ねて印刷する場合であっても、識別画像Pdを印刷する時のDuty制限値を低く設定し、媒体に吐出する白インク量を減らした分だけ、パターンPを印刷する時のDuty制限値を高く設定することができる。また、比較的に高価なインクである白インクの消費量を抑えることができる。
【0053】
また、センサー51が誤ったノズルチェックパターンを読み取らない程度に、既に印刷されているノズルチェックパターンを白インクで塗りつぶせばよく、パターンP上に識別画像Pdを重ねて印刷した領域が媒体の地色(白色)と完全に同じでなくても、問題はない。そのため、識別画像Pdを印刷する時の白インクのDuty制限値を下げて、パターンPと識別画像Pdを重ねて印刷した領域がグレイ(例えば、L*a*b*色空間におけるL*値が50で表される色)に視認されても問題ない。
【0054】
なお、白インクは、識別画像Pdを印刷するために使用するに限らず、4色のインク(YMCK)によるカラー画像やモノクロ画像の背景画像を印刷するために使用することもできる。そのため、識別画像Pdを印刷する時の白インクのDuty制限値を、背景画像を印刷する時の白インクのDuty制限値よりも、低い値に設定してもよい。
【0055】
また、白インクを吐出するノズルに不良ノズルが発生しているか否かを確認するために、白インクのパターンPを印刷してもよい。媒体が白色の場合には、印刷インク(YMCK)により印刷した背景画像上に白色のパターンPを印刷するとよい。また、白インクを吐出するノズルに対する不良ノズル検査が行われない場合、識別画像Pdを構成する移動方向に沿うドット列を、複数のノズルで印刷するようにしてもよい。
【0056】
===第2実施形態===
図7Aは、第2実施形態の識別画像Pdを説明する図であり、図7Bは、第2実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。第2実施形態では、識別画像Pdを、パターンPと異なる画像とする。パターンPと異なる画像とは、パターンPの形状と大きさのうちの少なくとも一方が異なる画像であり、ここでは、図7Aに示すように「バツ印(×)」とする。また、バツ印を、既に印刷されているパターンPを印刷した印刷インク(YMCK)と異なる色の白インクで印刷する。よって、第2実施形態では、印刷インク(YMCK)が第1インクに相当し、白インクが第2インクに相当する。
【0057】
既にパターンPが印刷されている媒体Sに新たなパターンPを印刷させる場合、コントローラー10は、図7Bに示すように、前回印刷された各色のパターンP上に白インクでバツ印(識別画像Pd)を印刷させる。その後、コントローラー10は、媒体Sを搬送方向下流側に搬送させて、前回印刷されたノズルチェックパターンよりも搬送方向上流側にずれた位置に、今回のノズルチェックパターンを印刷させる。
【0058】
こうして印刷されたノズルチェックパターン(図7B)をセンサー51が読み取り、その読取結果に基づいて、コントローラー10は不良ノズルの発生の有無を判断する。コントローラー10は、センサー51から取得した読取結果のうち、パターンP上にバツ印(識別画像Pd)が印刷されていないパターンPが、今回印刷されたパターンPであると判断し、そのパターンPの読取結果に基づいて、不良ノズルの発生の有無を判断する。具体的には、コントローラー10は、パターンPの読取結果のうち、移動方向に対して斜めの白すじが生じている読取結果(即ち、不良ノズルにより生じる移動方向に沿う白すじとは異なる白すじが生じている読取結果)は、前に印刷されたパターンPであると判断する。
【0059】
このように、既に印刷されていたパターンPの上に識別画像Pd(ばつ印)を印刷することで、複数回分のノズルチェックパターンが印刷された媒体Sであっても、今回印刷されたノズルチェックパターンを正しく読み取らせることができ、不良ノズル検査を正確に行うことができる。言い換えると、本実施形態のプリンター1は、センサー51やユーザーに正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができる。なお、識別画像Pdは、バツ印(×)に限らず、パターンPと異なる形状の画像(例えば、丸や三角)でもよいし、パターンPと同じ形状(長方形)であるが大きさの異なる画像であってもよい。
【0060】
媒体Sに既に印刷されているパターンPの上に白インクで「バツ印(識別画像Pd)」を印刷する実施形態は、ユーザーがノズルチェックパターンを確認する場合に特に有効であると言える。ユーザーは、第1実施形態のようにパターンPの全域を塗りつぶさなくとも、パターンPにバツ印が印刷されていれば、そのパターンPが前に印刷されたパターンPであることを直ぐに判別することができる。そして、バツ印を印刷する第2実施形態では、パターンPを塗りつぶす第1実施形態に比べて、白インクの消費量を削減することができる。
【0061】
また、バツ印(識別画像Pd)を印刷する時の白インクのDuty制限値を、実際の画像を印刷する時の印刷インク(YMCK)の1色あたりのDuty制限値よりも、低い値に設定してもよい。
【0062】
===第3実施形態===
図8A及び図8Bは、第3実施形態の識別画像Pdを説明する図である。第3実施形態では、前述の第2実施形態と同様に、識別画像Pdを、パターンPと異なる画像、即ち、パターンPの形状と大きさのうちの少なくとも一方が異なる画像とする。ここでも、識別画像Pdを「バツ印(×)」とする。ただし、第3実施形態では、白インクで調整画像Pdを印刷するのではなく、識別画像Pdを印刷するパターンPと異なる色の印刷インク(YMCK)で調整画像Pdを印刷する。
【0063】
即ち、コントローラー10は、4色(YMCK)のパターンPが既に印刷されている媒体に、同じ4色のインク(YMCK)により各々新たなパターンPを印刷させる場合に、既に印刷されているパターンPの位置とは異なる媒体上の位置に新たなパターンPを印刷させ、且つ、例えば、図8Aに示すように、既に印刷されているイエロー、マゼンタ、シアンによるパターンPの上にブラックによる識別画像Pdを印刷させ、ブラックによるパターンPの上にイエローによる識別画像Pdを印刷させる。
【0064】
そうすることで、印刷インク(YMCK)と異なる色のインク(白インク)が無くとも、パターンを印刷する印刷インクだけで、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができる。また、不良ノズル検査を正確に行うことができる。なお、第3実施形態では、印刷インク(YMCK)の中の異なる色のインクがそれぞれ第1インクと第2インクに相当する。
【0065】
図8Aでは、イエローとブラックの2色のインクにより識別画像Pdを印刷しているが、これに限らず、図8Bに示すように、印刷インク(YMCK)を全て使用して識別画像Pdを印刷してもよい。例えば、イエローのパターンP(Y)の上にマゼンタの識別画像Pd(ばつ印)を印刷し、マゼンタのパターンP(M)の上にシアンの識別画像Pdを印刷し、シアンのパターンP(C)の上にブラックの識別画像Pdを印刷し、ブラックのパターンP(K)の上にイエローの識別画像Pdを印刷する。
【0066】
そうすると、クリーニング動作後であり、また、新たなノズルチェックパターンが印刷される前に、全てのノズル列(YMCK)からインクを吐出させることができる。そのため、クリーニング動作で解消しきれなかった不良ノズルが、識別画像Pdを印刷することによって解消されることもある。この場合、不良ノズル検査の時間を短縮することができる。
【0067】
===第4実施形態===
図9は、第4実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。第4実施形態では、媒体Sに既に印刷されているパターンPのうち、不良ノズルが検出されたノズル列の色のパターンPだけを白インクで塗りつぶし、不良ノズルが検出されたノズル列の色のパターンPだけを新たに印刷する。
【0068】
つまり、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのパターンP(ノズルチェックパターン)を印刷させる場合に、コントローラー10は、複数色の印刷インク(YMCK・第1インクに相当)によって色ごとに印刷させたパターンPに基づいて不良ノズルを検出すると、不良ノズルに対する回復処理を実行させた後、既に印刷されているパターンPのうち、不良ノズルから吐出される印刷インクの色のパターンPの上にだけ白インク(第2インクに相当)による識別画像Pdを印刷させ、また、不良ノズルから吐出される印刷インクの色のパターンPだけを新たに媒体Sに印刷させる。
【0069】
例えば、1回目のノズルチェックパターンの読取結果から、イエローとマゼンタの不良ノズルが検出された場合、コントローラー10は、1回目のイエローのパターンP(Y1)とマゼンタのパターンP(M1)だけを白インクで塗りつぶさせ、2回目のノズルチェックパターンとして、イエローのパターンP(Y2)とマゼンタのパターンP(M2)だけを印刷させる。
【0070】
そして、2回目のノズルチェックパターンの読取結果から、イエローの不良ノズルだけが検出された場合、コントローラー10は、2回目のイエローのパターンP(Y2)だけを白インクで塗りつぶさせ、3回目のノズルチェックパターンとして、イエローのパターンP(Y3)だけを印刷させる。
【0071】
そうすることで、クリーニング動作を繰り返すに従って不良ノズル数が減るため、前回印刷したパターンPの上に印刷する識別画像Pdの数を減らすことができ、今回印刷するパターンPの数を減らすことができる。その結果、インク消費量(特に高価な白インクの消費量)を削減することができ、不良ノズル検査に要する時間を短縮することができる。
【0072】
また、不良ノズルが検出されなかった色のパターンPは新たに印刷されない。そのため、前回印刷されたパターンPのうち、不良ノズルが検出されなかった色のパターンPの上に、識別画像Pdを印刷しなくとも、センサー51が誤ったパターンPを読み取ってしまう虞が無い。
【0073】
===変形例===
図10は、ノズルチェックパターンの変形例を示す図である。前述の実施形態では、図5に示すように、4色インク(YMCK)による各パターンPをヘッド41の移動方向に並べて印刷し、次のノズルチェックパターンを媒体Sの搬送方向にずらして印刷しているが、これに限らない。図10の左図に示すように、1回目の各色のパターン(P(Y1),P(M1),P(C1),P(K1))を媒体Sの搬送方向に並べて印刷し、図10の右図に示すように、2回目のノズルチェックパターン(P(Y2),P(M2),P(C2),P(K2))をヘッド41の移動方向にずらして印刷してもよい。
【0074】
図11Aから図11Cは、ノズルチェックパターンの変形例を示す図である。この変形例では、図11Aに示すように、媒体Sを搬送方向下流側の第1領域T1と搬送方向上流側の第2領域T2に分け、各領域T1,T2に、4色の印刷インク(YMCK)による各色のパターンPを印刷する。各色のパターンPは、搬送方向および移動方向にずれて印刷されている。
【0075】
2つの領域T1,T2にそれぞれノズルチェックパターンを印刷した後、第1領域T1に印刷されている1回目のノズルチェックパターン(P(Y1),P(M1),P(C1),P(K1))に対して移動方向の右側に少しずれた位置に3回目のノズルチェックパターン(P(Y3),P(M3),P(C3),P(K3))を印刷する(図11B)。この時、1回目のノズルチェックパターンの上には識別画像Pdを印刷するが(白インクで塗りつぶすが)、第2領域T2に印刷されている2回目のノズルチェックパターン(P(Y2),P(M2),P(C2),P(K2))の上には識別画像Pdを印刷しなくてもよい。
【0076】
これは、1回目のノズルチェックパターンに比べて2回目のノズルチェックパターンは、3回目のノズルチェックパターンから離れた位置に印刷されているため、2回目のノズルチェックパターンを誤って3回目のノズルチェックパターンとして読み取る虞が少ないからである。
【0077】
同様に、図11Cに示すように、第1領域T1に印刷されている1回目のノズルチェックパターンに対して搬送方向の上流側に少しずれた位置に3回目のノズルチェックパターンを印刷してもよい。この時、1回目のノズルチェックパターンの上には識別画像Pdを印刷するが、第2領域T2に印刷されている2回目のノズルチェックパターンの上には識別画像Pdを印刷しない。
【0078】
このように媒体S上に設定した同じ領域に印刷されるパターンPの上にだけ識別画像Pdを印刷してもよい。そうすることで、パターンPを正しく読み取らせつつ、印刷する識別画像Pdの数を減らすことができる。よって、識別画像Pdを印刷するインク(白インク)の消費量を削減することができ、ノズルチェックパターンの印刷時間を短縮することができる。
【0079】
また、前述の実施形態では、パターンとして、不良ノズルを検出するためのノズルチェックパターンを例に挙げているが、これに限らない。例えば、ノズルの特性差による濃度むらを抑制する補正値を算出するためのパターンでもよい。また、ヘッドが移動方向の一方側に移動する際に吐出するインクの着弾位置とヘッドが移動方向の他方側に移動する際に吐出するインクの着弾位置がずれる場合がある。このずれを解消する補正値を算出するためのパターンでもよい。
【0080】
また、ある不良ノズル検査で不良ノズルが検出されなくなった後、その不良ノズル検査で使用した媒体を、次の不良ノズル検査でも使用してもよい。また、媒体の表面だけでなく裏面にもパターンを印刷するようにしてもよい。そうすることで、媒体の消費量をより削減することができる。また、前述の実施形態では、不良ノズルが検出されなくなるまで、ノズルチェックパターンの印刷とクリーニング動作を繰り返しているが、これに限らず、例えば、ノズルチェックパターンの印刷とクリーニング動作を所定回数だけ行うようにしてもよい。
【0081】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として印刷装置について記載されているが、印刷方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0082】
<制御部について>
前述の実施形態では、プリンター1内のコントローラー10が、媒体に既に印刷されているパターンの上に識別画像を印刷させ、既にパターンが印刷されている位置からずれた位置に新たなパターンを印刷させる制御(例えば、ヘッドユニット40に印刷データを送信する処理)を実施しているため、コントローラー10が制御部に相当し、プリンター1単体が印刷装置に相当する。
【0083】
ただし、これに限らず、プリンター1に接続されたコンピューター60にインストールされたプリンタードライバー(プログラム)が、上記の制御を実施してもよい。この場合、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター60とプリンター1のコントローラー10が制御部に相当し、プリンター1とコンピューター60が接続された印刷システムが印刷装置に相当する。
【0084】
つまり、プリンタードライバーが、第1インクによってパターンを媒体に印刷する機能と、前記パターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷する場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷し、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための画像であって前記第1インクとは異なる色の第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷する機能とを、印刷装置に実現するためのプログラムであってもよい。
【0085】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッド41が移動方向に移動しながら画像を形成する動作と媒体が搬送方向に搬送される搬送動作とが繰り返されるプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、ノズルが紙幅方向に並んだ固定ヘッドから、固定ヘッドの下を通過する媒体に対して、インクを吐出するプリンター(所謂ラインヘッドプリンター)でもよい。
また、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、用紙が連続する方向にヘッドを移動しながら画像を印刷する動作と、ヘッドを用紙の幅方向に移動する動作と、を繰り返して2次元の画像を印刷し、その後、未だ画像が印刷されていない連続用紙の部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0086】
<白色について>
本明細書における「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、所謂「白っぽい色」のように社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-oneProを用いて、測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製測色計CM2022を用いて測定モードD502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色か、をいい、純粋な白に限られない。
【符号の説明】
【0087】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、51 センサー、
60 コンピューター
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、媒体(例えば印刷用紙)に対してノズルからインクを吐出することにより、媒体に画像を印刷するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。ノズルから正常にインクが吐出されない不良ノズルを検出するために、プリンターはパターンを媒体に印刷することがある。何度もパターンを印刷する場合、多数の媒体を消費してしまう。そこで、1枚の媒体に対して、パターンをずらして印刷し、媒体の消費量を削減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−276502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、1枚の媒体に複数のパターンが印刷されていると、誤ったパターンを読み取ってしまう虞がある。
そこで、本発明は、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、第1インクを吐出する第1ノズルと、前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、前記第1インクによるパターンが既に印刷されている媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷させる制御部と、を有することを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターの概略斜視図であり、図2Bはヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図3】ブラックノズル列により印刷されるブラックのパターンを説明する図である。
【図4】不良ノズル検査のフローを説明する図である。
【図5】図5Aから図5Cは第1実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。
【図6】Duty制限値を説明する図である。
【図7】図7Aは第2実施形態の識別画像を説明する図であり、図7Bは、第2実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。
【図8】図8A及び図8Bは第3実施形態の識別画像を説明する図である。
【図9】第4実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。
【図10】ノズルチェックパターンの変形例を示す図である。
【図11】図11Aから図11Cはノズルチェックパターンの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、第1インクを吐出する第1ノズルと、前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、前記第1インクによるパターンが既に印刷されている媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷させる制御部と、を有することを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができ、また、媒体の消費量を削減することができる。
【0009】
かかる印刷装置であって、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像が、既に印刷されている前記パターンを前記第2インクで塗りつぶす画像であること。
このような印刷装置によれば、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができ、また、媒体の消費量を削減することができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像が、前記パターンと異なる画像であること。
このような印刷装置によれば、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができ、また、媒体の消費量を削減することができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記第1インクによるパターンと前記第2インクによるパターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクと前記第2インクにより各々新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、既に印刷されている前記第1インクによる前記パターンの上に前記第2インクによる前記異なる画像を印刷させ、既に印刷されている前記第2インクによる前記パターンの上に前記第1インクによる前記異なる画像を印刷させること。
このような印刷装置によれば、パターンを印刷するインクだけで、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像を印刷する場合の方が、実際の画像を印刷する場合に比べて、前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大インク量が少ないこと。
このような印刷装置によれば、媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止できる。
【0013】
かかる印刷装置であって、複数色の前記第1インクが色ごとに複数の前記第1ノズルから吐出され、前記パターンは、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのパターンであり、前記制御部は、複数色の前記第1インクによって色ごとに印刷させた前記パターンに基づいて前記不良ノズルを検出した場合に、前記不良ノズルに対する回復処理を実行させた後、既に印刷されている前記パターンのうち、前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンの上に、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像を印刷させ、前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンを前記媒体に印刷させること。
このような印刷装置によれば、パターンを印刷する数と、既に印刷されているパターンと新たに印刷されるパターンとを識別するための画像を印刷する数とを、削減することができる。
【0014】
また、第1インクによってパターンを媒体に印刷することと、前記パターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷する場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷し、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための画像であって前記第1インクとは異なる色の第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷することと、を有することを特徴とする印刷方法である。
このような印刷方法によれば、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができ、また、媒体の消費量を削減することができる。
【0015】
===印刷システム===
以下、インクジェットプリンター(以下、プリンター)とコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0016】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2Aは、プリンター1の概略斜視図であり、図2Bは、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0017】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるためのものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0019】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが充填されたインク室(不図示)が設けられている。
【0020】
図2Bに示すように、ヘッド41は、ブラックインクを吐出するブラックノズル列K・シアンインクを吐出するシアンノズル列C・マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列M・イエローインクを吐出するイエローノズル列Y・白インクを吐出するホワイトノズル列Wを有する。各ノズル列では、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔(例:180dpi)で並んでいる。
【0021】
このようなプリンター1では、コントローラー10が、ヘッド41を移動方向に移動させながら媒体Sに対してインクを吐出させる吐出動作と、ヘッド41に対して媒体Sを搬送方向に搬送させる搬送動作と、を繰り返し実行させる。その結果、先の吐出動作により形成されたドット位置とは異なる媒体上の位置に、後の吐出動作にてドットを形成することができ、媒体S上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41が移動方向へ1回移動する動作を「パス」と呼ぶ。
【0022】
===不良ノズル検査===
ヘッド41に設けられたノズルから長時間に亘ってインクが吐出されずにインクが増粘したり、ノズルに異物が付着したり、ノズル内に気泡が混入したりすると、インクが吐出されるべき時に規定量のインクがノズルから吐出されなくなってしまう。このようにインクの吐出不良が発生するノズルを「不良ノズル」と呼ぶ。印刷に使用するノズルの中に不良ノズルが含まれると、画像内にドット抜けが生じる等して、画像の画質が劣化してしまう。そのため、本実施形態のプリンター1は、印刷開始前などに、不良ノズルの発生の有無を判断する「不良ノズル検査」を実施する。不良ノズル検査のために、プリンター1は「ノズルチェックパターン」を媒体Sに印刷する。
【0023】
図3は、ブラックノズル列Kにより印刷されるブラックのパターンP(K)を説明する図である。なお、図では、ブラックノズル列Kに属するノズル数を16個に減らして描いている。本実施形態のプリンター1は、5色のインク(WYMCK)を吐出可能とし、その中の4色のインク(YMCK)により画像を印刷する。画像を印刷するために使用する4色のインク(YMCK)を「印刷インク」と呼ぶ。印刷インク(YMCK)を吐出するノズルの中に不良ノズルが含まれると、画像の画質が劣化してしまう。そのため、プリンター1は、印刷インク(YMCK)を吐出するノズル列を用いてノズルチェックパターンを印刷する。
【0024】
具体的には、ノズルチェックパターンとして、4色の印刷インク(YMCK)の色ごとのパターンが印刷される(即ち、イエローのパターンP(Y)、マゼンタのパターンP(M)、シアンのパターンP(C)、ブラックのパターンP(K)が印刷される)。各色のパターンPは、ヘッド41が移動方向に移動しながら各ノズル列に属するノズルから断続的にインク滴が吐出されることによって、印刷される。その結果、各色のパターンでは、図3に示すように、ノズル列に属する各ノズル#1〜#16によって印刷された移動方向に沿うドット列(ラスターライン)が搬送方向に並ぶことになる。
【0025】
ここで、ブラックノズル列(K)の「ノズル#9」が不良ノズルであり、ノズル#9から全くインクが吐出されないとする。そうすると、図3に示すように、ノズル#9に割り当てられた媒体S上の領域にはドットが形成されず、パターンP(K)に移動方向に沿った白スジが生じる。なお、規定量のインクよりも少ないインクを吐出する不良ノズルが発生している場合、パターンに移動方向に沿った淡い色のスジが生じる。つまり、パターンPに白スジや淡い色のスジが生じているか否かによって、不良ノズルの発生の有無を判断することができ、また、パターンPにおける白スジ等の位置によって不良ノズルの位置を判断することができる。
【0026】
また、本実施形態のプリンター1では、図2Aに示すように、ヘッド41よりも搬送方向の下流側に、ノズルチェックパターンを読み取るための「センサー51」が、キャリッジ31に搭載されている。コントローラー10は、センサー51がノズルチェックパターンを読み取った結果に基づいて、不良ノズルの発生の有無(及び、不良ノズルの位置)を判断する。ただし、これに限らず、例えば、ユーザーがノズルチェックパターンを直接視認して不良ノズルの発生の有無を判断してもよいし、プリンター1の外部のセンサーがノズルチェックパターンを読み取った結果に基づいてコントローラー10が不良ノズルの発生の有無を判断してもよい。
【0027】
===クリーニング動作===
不良ノズル検査の結果、不良ノズルが検出された場合、プリンター1は、不良ノズルから正常にインクが吐出されるように「クリーニング動作」を実施する。ここでは、クリーニング動作の具体例として、フラッシング、ポンプ吸引、ワイピングを挙げる。
【0028】
「フラッシング」とは、ヘッド41とインク回収部(不図示)を対向させた状態で、強制的にノズルからインクを吐出させ、増粘したインクやノズル面に付着した異物をインクとともに吐出させる動作である。
「ポンプ吸引」とは、ヘッド41のノズル面とインク回収部を密着させて、インク回収部の底面に接続されたチューブを介してポンプ吸引する(不図示)。そうすることで、増粘したインクや異物と共に、ヘッド41内のインクを吸引する動作である。
「ワイピング」とは、ゴム製のワイパー等でノズル面を擦って異物などを除去する動作である。
上記クリーニング動作の中の何れか1つの動作を実施してもよいし、複数の動作を組み合わせて実施してもよい。
【0029】
===第1実施形態===
図4は、不良ノズル検査のフローを説明する図である。図5Aから図5Cは、第1実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。不良ノズル検査では、前述のように、4色の印刷インク(YMCK)の色ごとのパターンPが媒体Sに印刷される。ヘッド41が移動方向に移動する1回のパスの間に、まず、イエローノズル列Yに属するノズルからインクが吐出され、次に、マゼンタノズル列Mに属するノズルからインクが吐出され、次に、シアンノズル列Cに属するノズルからインクが吐出され、最後に、ブラックノズル列Kに属するノズルからインクが吐出される。その結果、図5Aに示すように、各色のパターンPが移動方向に並んで印刷される。
【0030】
また、図5Aに示すように、新しい媒体Sにノズルチェックパターンを印刷する場合、プリンター1は、媒体Sの搬送方向下流側の端部から上流側に距離Dだけ離れた地点に各色のパターンPの搬送方向下流側の端部が位置するように、各色のパターンPを印刷する。
【0031】
1回分のノズルチェックパターンが印刷されただけの媒体Sには比較的に大きな余白がある。それにも拘らず、ノズルチェックパターンを印刷する度に、新しい媒体Sをプリンター1に供給したとする。そうすると、何度もノズルチェックパターンを印刷する場合には、多数の媒体Sが消費されてしまう。そこで、本実施形態のプリンター1は、ノズルチェックパターンが既に印刷される媒体を使用して、2回目以降のノズルチェックパターンを印刷する。
【0032】
そのために、プリンター1のコントローラー10は、パターンPが既に印刷されている媒体S上の位置とは異なる位置に、新たなパターンPを印刷させる。そうすることで、1枚の媒体に複数のノズルチェックパターンを印刷することができ、媒体Sの消費量を削減することができる。
【0033】
ただし、1枚の媒体Sに同じ形状のパターンPが多数印刷されていると、センサー51が誤ったパターンPを読み取ってしまう虞がある。そうすると、コントローラー10は、誤ったパターンPの読取結果に基づいて不良ノズルの有無を判断することになり、不良ノズル検査を正確に行うことが出来なくなってしまう。
【0034】
そこで、コントローラー10は、印刷インク(YMCK)によるパターンが既に印刷されている媒体Sに、同じ印刷インクにより新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されているパターンの位置とは異なる媒体S上の位置に新たなパターンを印刷させ、且つ、既に印刷されているパターンと新たに印刷されるパターンを識別するための画像(以下、「識別画像」とも呼ぶ)を、既に印刷されているパターンの上に印刷させる。
【0035】
第1実施形態では、識別画像を、印刷インク(YMCK)とは異なる色の白インク(消去インク)で既に印刷されているパターンPを塗りつぶす画像、即ち、各色のパターンP以上の大きさの白色の画像とする。ここでは、媒体Sの地色を白色とする。よって、既に印刷されているパターンPは、媒体Sと同色系のインクにより塗りつぶされることになる。なお、第1実施形態では、印刷インク(YMCK)が第1インクに相当し、印刷インクを吐出するノズルが第1ノズルに相当し、白インクが第2インクに相当し、白インクを吐出するノズルが第2ノズルに相当する。
【0036】
図4のフローを用いて具体的に説明すると、コントローラー10は、不良ノズル検査を実施する際に、まず、媒体Sに印刷済みのパターンPが有るか否かを判断する(S001)。例えば、パターンPを印刷するために供給された媒体Sをセンサー51に読み取らせ、その読取結果に基づいて、コントローラー10が媒体S上のパターンPの有無を判断するようにしてもよい。また、印刷済みの媒体Sを使用する事をユーザーがプリンター1又はコンピューター60に入力し、その入力結果に基づいて、コントローラー10が媒体S上のパターンPの有無を判断するようにしてもよい。
【0037】
媒体Sに印刷済みのパターンPが無い場合、即ち、新しい媒体Sにノズルチェックパターンを印刷する場合(S001→N)、コントローラー10は、図5Aに示すように各色のパターン(P(Y1),P(M1),P(C1),P(K1))が印刷されるように、ヘッドユニット40に印刷データを送信する。
【0038】
一方、媒体Sに印刷済みのパターンPが有る場合(S001→Y)、コントローラー10は、まず、前回印刷されたノズルチェックパターンとヘッド41が対向するように媒体Sを供給させ、前回印刷された各色のパターンP上に識別画像Pdを印刷させる。即ち、前回印刷された各色のパターンPは、図5Bに示すように、白インクにより塗りつぶされる。その後、コントローラー10は、媒体Sを搬送方向下流側に搬送させて、前回印刷されたノズルチェックパターンよりも搬送方向上流側に距離αだけずれた位置に、今回のノズルチェックパターン(P(Y2),P(M2),P(C2),P(K2))を印刷させる。
【0039】
センサー51は、こうして新たに印刷されたノズルチェックパターンを読み取り、その読取結果をコントローラー10に送信する。コントローラー10は、センサー51から取得した読取結果に基づいて(パターンPに白スジ等が生じているか否かによって)、不良ノズルの発生の有無を判断する(S004)。不良ノズルが発生していなかった場合(S004→N)、コントローラー10は不良ノズル検査を終了する。
【0040】
一方、不良ノズルが発生していた場合(S004→Y)、コントローラー10は、ヘッド41、又は、不良ノズルが発生していたノズル列に対してクリーニング動作を実施する(S005)。その後、クリーニング動作により不良ノズルから正常にインクが吐出されるように回復したか否かを確認するために、コントローラー10は、再度、媒体Sにノズルチェックパターンを印刷させる。
【0041】
こうして、不良ノズルが検出されなくなるまで、ノズルチェックパターンの印刷とクリーニング動作が繰り返し行われる。なお、その際に、図5Cに示すように媒体Sに新たなパターンPを印刷する領域が無くなると、プリンター1は、新しい媒体SにパターンPを印刷する。
【0042】
このように第1実施形態では、媒体Sの消費量を削減するために1枚の媒体Sに複数回分のノズルチェックパターンが印刷されるが、既に印刷されている各色のパターンPを白インクで塗りつぶす(各色のパターンPの上に白色の識別画像Pdを印刷する)。そのため、複数回分のノズルチェックパターンが印刷された媒体Sであっても、今回印刷した1回分のノズルチェックパターンだけが視認可能な状態となっている。
【0043】
よって、センサー51が、前に印刷されたノズルチェックパターンを誤って読み取ってしまうことを防止できる。即ち、本実施形態のプリンター1は、センサー51やユーザーに正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができる。仮に、センサー51が誤って、前に印刷されたノズルチェックパターン、即ち、クリーニング動作を実施する前に印刷されたノズルチェックパターンを読み取ってしまうと、その読取結果に基づいて無駄にクリーニング動作が実施されてしまう。
【0044】
そのため、前に印刷されたノズルチェックパターンを白インクで塗りつぶすことにより、今回印刷されたノズルチェックパターンを正しく読み取らせることができ、不良ノズル検査を正確に行うことができる。その結果、無駄なクリーニング動作の実施を防止することができる。
【0045】
また、媒体Sには今回印刷した1回分のノズルチェックパターンだけが視認可能な状態となっているため、媒体Sに複数回分のノズルチェックパターンを印刷する場合であっても、何れのノズルチェックパターンが今回印刷したノズルチェックパターンであるのかを示す情報を印刷する必要がなくなる。ただし、これに限らず、ノズルチェックパターンに関する情報を、ノズルチェックパターンと共に印刷してもよい。
【0046】
また、ユーザーがノズルチェックパターンを確認する場合においても、前に印刷されたノズルチェックパターンを白インクで塗りつぶすことにより、ユーザーが誤ったノズルチェックパターンに基づいて不良ノズルの発生の有無を判断してしまうことを防止できる。また、ユーザーが今回印刷されたノズルチェックパターンを直ぐに判別することができる。
【0047】
図6は、Duty制限値を説明する図である。本実施形態のインクは、水系インクであり、媒体は、水系インクの吸収性を備える媒体(例えば、紙)であるとする。インク吸収性媒体には吸収可能なインク量に限界がある。そのため、インク吸収性媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうと、媒体内部に吸収しきれないインクが媒体上に溢れだしてしまう。
【0048】
インク吸収性媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止するために、本実施形態のプリンター1では「Duty制限値」が設定されている。「Duty制限値(%)」とは、「媒体上の単位領域に形成可能なドット数」に対する「媒体の吸収能力を超えずに媒体上の単位領域に形成可能なドット数」の割合を意味する。本実施形態のプリンター1では、Duty制限値以下で印刷が行われるように、Duty制限値を考慮した印刷データが作成される。
【0049】
ここで、1つのドットが形成される媒体上の領域を「画素」と呼ぶ。よって、媒体上の単位領域に形成可能なドット数とは、媒体上の単位領域に属する画素数に相当する。例えば、媒体上の単位領域に属する画素数が100画素であり、媒体の吸収能力を超えずに媒体上の単位領域に形成可能なドット数が50個である場合、Duty制限値は「50%(=(50/100)×100)」となる。
【0050】
そして、本実施形態のプリンター1では、識別画像Pdを印刷する時の白インクのDuty制限値(パターンPを白インクで塗りつぶす時のDuty制限値)を、実際の画像を印刷する時の印刷インク(YMCK)の1色あたりのDuty制限値よりも、低い値に設定する。つまり、識別画像Pdを印刷する場合の方が、実際の画像を印刷する場合に比べて、媒体上の単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大インク量を少なくする。なお、「実際の画像」とは、ユーザーが指定した画像データに基づいて印刷する画像であってもよいし、ノズルチェックパターンであってもよい。
【0051】
例えば、実際の画像を印刷する時の印刷インク(YMCK)の1色あたりのDuty制限値が100%に設定され、識別画像Pdを印刷する時の白インクのDuty制限値が50%に設定されているとする。そうすると、実際の画像を印刷する時には、図6の左図に示すように、媒体上の単位領域(4画素×4画素)に対して1色のドットを最大で16個形成することが可能となる。一方、識別画像Pdを印刷する時には、図6の右図に示すように、媒体上の単位領域に対して白インクのドットを最大で8個までしか形成することができない。
【0052】
そうすることで、本実施形態のように、パターンPの上に識別画像Pdを重ねて印刷する場合であっても、媒体Sの吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止することができる。言い換えると、パターンPの上に識別画像Pdを重ねて印刷する場合であっても、識別画像Pdを印刷する時のDuty制限値を低く設定し、媒体に吐出する白インク量を減らした分だけ、パターンPを印刷する時のDuty制限値を高く設定することができる。また、比較的に高価なインクである白インクの消費量を抑えることができる。
【0053】
また、センサー51が誤ったノズルチェックパターンを読み取らない程度に、既に印刷されているノズルチェックパターンを白インクで塗りつぶせばよく、パターンP上に識別画像Pdを重ねて印刷した領域が媒体の地色(白色)と完全に同じでなくても、問題はない。そのため、識別画像Pdを印刷する時の白インクのDuty制限値を下げて、パターンPと識別画像Pdを重ねて印刷した領域がグレイ(例えば、L*a*b*色空間におけるL*値が50で表される色)に視認されても問題ない。
【0054】
なお、白インクは、識別画像Pdを印刷するために使用するに限らず、4色のインク(YMCK)によるカラー画像やモノクロ画像の背景画像を印刷するために使用することもできる。そのため、識別画像Pdを印刷する時の白インクのDuty制限値を、背景画像を印刷する時の白インクのDuty制限値よりも、低い値に設定してもよい。
【0055】
また、白インクを吐出するノズルに不良ノズルが発生しているか否かを確認するために、白インクのパターンPを印刷してもよい。媒体が白色の場合には、印刷インク(YMCK)により印刷した背景画像上に白色のパターンPを印刷するとよい。また、白インクを吐出するノズルに対する不良ノズル検査が行われない場合、識別画像Pdを構成する移動方向に沿うドット列を、複数のノズルで印刷するようにしてもよい。
【0056】
===第2実施形態===
図7Aは、第2実施形態の識別画像Pdを説明する図であり、図7Bは、第2実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。第2実施形態では、識別画像Pdを、パターンPと異なる画像とする。パターンPと異なる画像とは、パターンPの形状と大きさのうちの少なくとも一方が異なる画像であり、ここでは、図7Aに示すように「バツ印(×)」とする。また、バツ印を、既に印刷されているパターンPを印刷した印刷インク(YMCK)と異なる色の白インクで印刷する。よって、第2実施形態では、印刷インク(YMCK)が第1インクに相当し、白インクが第2インクに相当する。
【0057】
既にパターンPが印刷されている媒体Sに新たなパターンPを印刷させる場合、コントローラー10は、図7Bに示すように、前回印刷された各色のパターンP上に白インクでバツ印(識別画像Pd)を印刷させる。その後、コントローラー10は、媒体Sを搬送方向下流側に搬送させて、前回印刷されたノズルチェックパターンよりも搬送方向上流側にずれた位置に、今回のノズルチェックパターンを印刷させる。
【0058】
こうして印刷されたノズルチェックパターン(図7B)をセンサー51が読み取り、その読取結果に基づいて、コントローラー10は不良ノズルの発生の有無を判断する。コントローラー10は、センサー51から取得した読取結果のうち、パターンP上にバツ印(識別画像Pd)が印刷されていないパターンPが、今回印刷されたパターンPであると判断し、そのパターンPの読取結果に基づいて、不良ノズルの発生の有無を判断する。具体的には、コントローラー10は、パターンPの読取結果のうち、移動方向に対して斜めの白すじが生じている読取結果(即ち、不良ノズルにより生じる移動方向に沿う白すじとは異なる白すじが生じている読取結果)は、前に印刷されたパターンPであると判断する。
【0059】
このように、既に印刷されていたパターンPの上に識別画像Pd(ばつ印)を印刷することで、複数回分のノズルチェックパターンが印刷された媒体Sであっても、今回印刷されたノズルチェックパターンを正しく読み取らせることができ、不良ノズル検査を正確に行うことができる。言い換えると、本実施形態のプリンター1は、センサー51やユーザーに正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができる。なお、識別画像Pdは、バツ印(×)に限らず、パターンPと異なる形状の画像(例えば、丸や三角)でもよいし、パターンPと同じ形状(長方形)であるが大きさの異なる画像であってもよい。
【0060】
媒体Sに既に印刷されているパターンPの上に白インクで「バツ印(識別画像Pd)」を印刷する実施形態は、ユーザーがノズルチェックパターンを確認する場合に特に有効であると言える。ユーザーは、第1実施形態のようにパターンPの全域を塗りつぶさなくとも、パターンPにバツ印が印刷されていれば、そのパターンPが前に印刷されたパターンPであることを直ぐに判別することができる。そして、バツ印を印刷する第2実施形態では、パターンPを塗りつぶす第1実施形態に比べて、白インクの消費量を削減することができる。
【0061】
また、バツ印(識別画像Pd)を印刷する時の白インクのDuty制限値を、実際の画像を印刷する時の印刷インク(YMCK)の1色あたりのDuty制限値よりも、低い値に設定してもよい。
【0062】
===第3実施形態===
図8A及び図8Bは、第3実施形態の識別画像Pdを説明する図である。第3実施形態では、前述の第2実施形態と同様に、識別画像Pdを、パターンPと異なる画像、即ち、パターンPの形状と大きさのうちの少なくとも一方が異なる画像とする。ここでも、識別画像Pdを「バツ印(×)」とする。ただし、第3実施形態では、白インクで調整画像Pdを印刷するのではなく、識別画像Pdを印刷するパターンPと異なる色の印刷インク(YMCK)で調整画像Pdを印刷する。
【0063】
即ち、コントローラー10は、4色(YMCK)のパターンPが既に印刷されている媒体に、同じ4色のインク(YMCK)により各々新たなパターンPを印刷させる場合に、既に印刷されているパターンPの位置とは異なる媒体上の位置に新たなパターンPを印刷させ、且つ、例えば、図8Aに示すように、既に印刷されているイエロー、マゼンタ、シアンによるパターンPの上にブラックによる識別画像Pdを印刷させ、ブラックによるパターンPの上にイエローによる識別画像Pdを印刷させる。
【0064】
そうすることで、印刷インク(YMCK)と異なる色のインク(白インク)が無くとも、パターンを印刷する印刷インクだけで、正しく読み取らせることのできるパターンを印刷することができる。また、不良ノズル検査を正確に行うことができる。なお、第3実施形態では、印刷インク(YMCK)の中の異なる色のインクがそれぞれ第1インクと第2インクに相当する。
【0065】
図8Aでは、イエローとブラックの2色のインクにより識別画像Pdを印刷しているが、これに限らず、図8Bに示すように、印刷インク(YMCK)を全て使用して識別画像Pdを印刷してもよい。例えば、イエローのパターンP(Y)の上にマゼンタの識別画像Pd(ばつ印)を印刷し、マゼンタのパターンP(M)の上にシアンの識別画像Pdを印刷し、シアンのパターンP(C)の上にブラックの識別画像Pdを印刷し、ブラックのパターンP(K)の上にイエローの識別画像Pdを印刷する。
【0066】
そうすると、クリーニング動作後であり、また、新たなノズルチェックパターンが印刷される前に、全てのノズル列(YMCK)からインクを吐出させることができる。そのため、クリーニング動作で解消しきれなかった不良ノズルが、識別画像Pdを印刷することによって解消されることもある。この場合、不良ノズル検査の時間を短縮することができる。
【0067】
===第4実施形態===
図9は、第4実施形態におけるノズルチェックパターンの印刷方法を説明する図である。第4実施形態では、媒体Sに既に印刷されているパターンPのうち、不良ノズルが検出されたノズル列の色のパターンPだけを白インクで塗りつぶし、不良ノズルが検出されたノズル列の色のパターンPだけを新たに印刷する。
【0068】
つまり、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのパターンP(ノズルチェックパターン)を印刷させる場合に、コントローラー10は、複数色の印刷インク(YMCK・第1インクに相当)によって色ごとに印刷させたパターンPに基づいて不良ノズルを検出すると、不良ノズルに対する回復処理を実行させた後、既に印刷されているパターンPのうち、不良ノズルから吐出される印刷インクの色のパターンPの上にだけ白インク(第2インクに相当)による識別画像Pdを印刷させ、また、不良ノズルから吐出される印刷インクの色のパターンPだけを新たに媒体Sに印刷させる。
【0069】
例えば、1回目のノズルチェックパターンの読取結果から、イエローとマゼンタの不良ノズルが検出された場合、コントローラー10は、1回目のイエローのパターンP(Y1)とマゼンタのパターンP(M1)だけを白インクで塗りつぶさせ、2回目のノズルチェックパターンとして、イエローのパターンP(Y2)とマゼンタのパターンP(M2)だけを印刷させる。
【0070】
そして、2回目のノズルチェックパターンの読取結果から、イエローの不良ノズルだけが検出された場合、コントローラー10は、2回目のイエローのパターンP(Y2)だけを白インクで塗りつぶさせ、3回目のノズルチェックパターンとして、イエローのパターンP(Y3)だけを印刷させる。
【0071】
そうすることで、クリーニング動作を繰り返すに従って不良ノズル数が減るため、前回印刷したパターンPの上に印刷する識別画像Pdの数を減らすことができ、今回印刷するパターンPの数を減らすことができる。その結果、インク消費量(特に高価な白インクの消費量)を削減することができ、不良ノズル検査に要する時間を短縮することができる。
【0072】
また、不良ノズルが検出されなかった色のパターンPは新たに印刷されない。そのため、前回印刷されたパターンPのうち、不良ノズルが検出されなかった色のパターンPの上に、識別画像Pdを印刷しなくとも、センサー51が誤ったパターンPを読み取ってしまう虞が無い。
【0073】
===変形例===
図10は、ノズルチェックパターンの変形例を示す図である。前述の実施形態では、図5に示すように、4色インク(YMCK)による各パターンPをヘッド41の移動方向に並べて印刷し、次のノズルチェックパターンを媒体Sの搬送方向にずらして印刷しているが、これに限らない。図10の左図に示すように、1回目の各色のパターン(P(Y1),P(M1),P(C1),P(K1))を媒体Sの搬送方向に並べて印刷し、図10の右図に示すように、2回目のノズルチェックパターン(P(Y2),P(M2),P(C2),P(K2))をヘッド41の移動方向にずらして印刷してもよい。
【0074】
図11Aから図11Cは、ノズルチェックパターンの変形例を示す図である。この変形例では、図11Aに示すように、媒体Sを搬送方向下流側の第1領域T1と搬送方向上流側の第2領域T2に分け、各領域T1,T2に、4色の印刷インク(YMCK)による各色のパターンPを印刷する。各色のパターンPは、搬送方向および移動方向にずれて印刷されている。
【0075】
2つの領域T1,T2にそれぞれノズルチェックパターンを印刷した後、第1領域T1に印刷されている1回目のノズルチェックパターン(P(Y1),P(M1),P(C1),P(K1))に対して移動方向の右側に少しずれた位置に3回目のノズルチェックパターン(P(Y3),P(M3),P(C3),P(K3))を印刷する(図11B)。この時、1回目のノズルチェックパターンの上には識別画像Pdを印刷するが(白インクで塗りつぶすが)、第2領域T2に印刷されている2回目のノズルチェックパターン(P(Y2),P(M2),P(C2),P(K2))の上には識別画像Pdを印刷しなくてもよい。
【0076】
これは、1回目のノズルチェックパターンに比べて2回目のノズルチェックパターンは、3回目のノズルチェックパターンから離れた位置に印刷されているため、2回目のノズルチェックパターンを誤って3回目のノズルチェックパターンとして読み取る虞が少ないからである。
【0077】
同様に、図11Cに示すように、第1領域T1に印刷されている1回目のノズルチェックパターンに対して搬送方向の上流側に少しずれた位置に3回目のノズルチェックパターンを印刷してもよい。この時、1回目のノズルチェックパターンの上には識別画像Pdを印刷するが、第2領域T2に印刷されている2回目のノズルチェックパターンの上には識別画像Pdを印刷しない。
【0078】
このように媒体S上に設定した同じ領域に印刷されるパターンPの上にだけ識別画像Pdを印刷してもよい。そうすることで、パターンPを正しく読み取らせつつ、印刷する識別画像Pdの数を減らすことができる。よって、識別画像Pdを印刷するインク(白インク)の消費量を削減することができ、ノズルチェックパターンの印刷時間を短縮することができる。
【0079】
また、前述の実施形態では、パターンとして、不良ノズルを検出するためのノズルチェックパターンを例に挙げているが、これに限らない。例えば、ノズルの特性差による濃度むらを抑制する補正値を算出するためのパターンでもよい。また、ヘッドが移動方向の一方側に移動する際に吐出するインクの着弾位置とヘッドが移動方向の他方側に移動する際に吐出するインクの着弾位置がずれる場合がある。このずれを解消する補正値を算出するためのパターンでもよい。
【0080】
また、ある不良ノズル検査で不良ノズルが検出されなくなった後、その不良ノズル検査で使用した媒体を、次の不良ノズル検査でも使用してもよい。また、媒体の表面だけでなく裏面にもパターンを印刷するようにしてもよい。そうすることで、媒体の消費量をより削減することができる。また、前述の実施形態では、不良ノズルが検出されなくなるまで、ノズルチェックパターンの印刷とクリーニング動作を繰り返しているが、これに限らず、例えば、ノズルチェックパターンの印刷とクリーニング動作を所定回数だけ行うようにしてもよい。
【0081】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として印刷装置について記載されているが、印刷方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0082】
<制御部について>
前述の実施形態では、プリンター1内のコントローラー10が、媒体に既に印刷されているパターンの上に識別画像を印刷させ、既にパターンが印刷されている位置からずれた位置に新たなパターンを印刷させる制御(例えば、ヘッドユニット40に印刷データを送信する処理)を実施しているため、コントローラー10が制御部に相当し、プリンター1単体が印刷装置に相当する。
【0083】
ただし、これに限らず、プリンター1に接続されたコンピューター60にインストールされたプリンタードライバー(プログラム)が、上記の制御を実施してもよい。この場合、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター60とプリンター1のコントローラー10が制御部に相当し、プリンター1とコンピューター60が接続された印刷システムが印刷装置に相当する。
【0084】
つまり、プリンタードライバーが、第1インクによってパターンを媒体に印刷する機能と、前記パターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷する場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷し、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための画像であって前記第1インクとは異なる色の第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷する機能とを、印刷装置に実現するためのプログラムであってもよい。
【0085】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッド41が移動方向に移動しながら画像を形成する動作と媒体が搬送方向に搬送される搬送動作とが繰り返されるプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、ノズルが紙幅方向に並んだ固定ヘッドから、固定ヘッドの下を通過する媒体に対して、インクを吐出するプリンター(所謂ラインヘッドプリンター)でもよい。
また、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、用紙が連続する方向にヘッドを移動しながら画像を印刷する動作と、ヘッドを用紙の幅方向に移動する動作と、を繰り返して2次元の画像を印刷し、その後、未だ画像が印刷されていない連続用紙の部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0086】
<白色について>
本明細書における「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、所謂「白っぽい色」のように社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-oneProを用いて、測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製測色計CM2022を用いて測定モードD502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色か、をいい、純粋な白に限られない。
【符号の説明】
【0087】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、51 センサー、
60 コンピューター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インクを吐出する第1ノズルと、
前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、
前記第1インクによるパターンが既に印刷されている媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷させる制御部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像が、既に印刷されている前記パターンを前記第2インクで塗りつぶす画像である、
印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像が、前記パターンと異なる画像である、
印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記第1インクによるパターンと前記第2インクによるパターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクと前記第2インクにより各々新たなパターンを印刷させる場合に、
既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、
既に印刷されている前記第1インクによる前記パターンの上に前記第2インクによる前記異なる画像を印刷させ、既に印刷されている前記第2インクによる前記パターンの上に前記第1インクによる前記異なる画像を印刷させる、
印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の印刷装置であって、
既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像を印刷する場合の方が、実際の画像を印刷する場合に比べて、前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大インク量が少ない、
印刷装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の印刷装置であって、
複数色の前記第1インクが色ごとに複数の前記第1ノズルから吐出され、
前記パターンは、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのパターンであり、
前記制御部は、
複数色の前記第1インクによって色ごとに印刷させた前記パターンに基づいて前記不良ノズルを検出した場合に、前記不良ノズルに対する回復処理を実行させた後、
既に印刷されている前記パターンのうち、前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンの上に、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像を印刷させ、
前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンを前記媒体に印刷させる、
印刷装置。
【請求項7】
第1インクによってパターンを媒体に印刷することと、
前記パターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷する場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷し、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための画像であって前記第1インクとは異なる色の第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷することと、
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項1】
第1インクを吐出する第1ノズルと、
前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、
前記第1インクによるパターンが既に印刷されている媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷させる場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷させる制御部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像が、既に印刷されている前記パターンを前記第2インクで塗りつぶす画像である、
印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像が、前記パターンと異なる画像である、
印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記第1インクによるパターンと前記第2インクによるパターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクと前記第2インクにより各々新たなパターンを印刷させる場合に、
既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷させ、且つ、
既に印刷されている前記第1インクによる前記パターンの上に前記第2インクによる前記異なる画像を印刷させ、既に印刷されている前記第2インクによる前記パターンの上に前記第1インクによる前記異なる画像を印刷させる、
印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の印刷装置であって、
既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像を印刷する場合の方が、実際の画像を印刷する場合に比べて、前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大インク量が少ない、
印刷装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の印刷装置であって、
複数色の前記第1インクが色ごとに複数の前記第1ノズルから吐出され、
前記パターンは、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのパターンであり、
前記制御部は、
複数色の前記第1インクによって色ごとに印刷させた前記パターンに基づいて前記不良ノズルを検出した場合に、前記不良ノズルに対する回復処理を実行させた後、
既に印刷されている前記パターンのうち、前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンの上に、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための前記画像を印刷させ、
前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンを前記媒体に印刷させる、
印刷装置。
【請求項7】
第1インクによってパターンを媒体に印刷することと、
前記パターンが既に印刷されている前記媒体に、前記第1インクによる新たなパターンを印刷する場合に、既に印刷されている前記パターンの位置とは異なる前記媒体上の位置に新たな前記パターンを印刷し、且つ、既に印刷されている前記パターンと新たに印刷される前記パターンを識別するための画像であって前記第1インクとは異なる色の第2インクによる画像を、既に印刷されている前記パターン上に印刷することと、
を有することを特徴とする印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−139965(P2012−139965A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−732(P2011−732)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]