説明

印刷装置、及び、印刷方法

【課題】用紙ジャムの発生を抑制する。
【解決手段】媒体を支持するガイドであって、上面が媒体の搬送経路の一部を形成するガイドと、ガイドを介して搬送された媒体に印刷を行う印刷機構と、媒体に当接して当該媒体を前記印刷機構側又は前記ガイド側に搬送する搬送ローラーであって、当該当接位置がガイドと印刷機構の間においてガイドの上面よりも低い位置に設けられた搬送ローラーと、印刷機構によって一方の面に印刷が行われた媒体が、搬送ローラーによってガイド側の下方を通過するように搬送された際に、一方の面がガイドの上面に支持されるように反転させる反転機構と、を備え、ガイドは、搬送可能な或る媒体に対して、搬送ローラー側の端面の媒体幅方向の幅が或る媒体の媒体幅よりも短くなるように、角が面取りされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ローラーによって媒体を所定方向に搬送し、その所定方向の下流側の印刷機構によって媒体に印刷を行う印刷装置が知られている。このような印刷装置として、搬送ローラーの上流側(所定方向の上流側)に、媒体を支持する搬送ガイドが設けられているものがある。また、印刷機構によって一度印刷した媒体を所定方向の逆方向に搬送させて、媒体の表裏を反転し、両面印刷を行なうようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-119081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷を行うと、媒体がカールすることがある。カールとは、媒体が湾曲する現象のことである。上述したような印刷装置において両面印刷を行う場合、一方の面(片面)に印刷を行った媒体がカールしてしまうと、媒体を反転させる際に、カールした部分が搬送経路上の部材(具体的には搬送ガイド)に当たってしまい、用紙ジャムが発生するおそれがあるという問題点があった。
そこで、本発明は、用紙ジャムの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、媒体を支持するガイドであって、上面が媒体の搬送経路の一部を形成するガイドと、前記ガイドを介して搬送された媒体に印刷を行う印刷機構と、媒体に当接して当該媒体を前記印刷機構側又は前記ガイド側に搬送する搬送ローラーであって、当該当接位置が前記ガイドと前記印刷機構の間において前記ガイドの上面よりも低い位置に設けられた搬送ローラーと、前記印刷機構によって一方の面に印刷が行われた媒体が、前記搬送ローラーによって前記ガイド側の下方を通過するように搬送された際に、前記一方の面が前記ガイドの上面に支持されるように反転させる反転機構と、を備え、前記ガイドは、搬送可能な或る媒体に対して、前記搬送ローラー側の端面の媒体幅方向の幅が前記或る媒体の媒体幅よりも短くなるように、角が面取りされている、ことを特徴とする印刷装置である。
【0006】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンターの構成の一部を説明するための概略図である。
【図2】図2A〜図2Fは両面印刷時の動作についての説明図である。
【図3】比較例の搬送ガイドの形状を示す斜視図である。
【図4】印刷後の媒体の状態を示す図である。
【図5】比較例においてカールした紙Sを反転させるときの様子を示す図である。
【図6】図6Aは、本実施形態における搬送ガイドを示す斜視図である。また、図6Bは、本実施形態における搬送ガイドを上から見た図である。
【図7】本実施形態においてカールした紙Sを反転させるときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
媒体を支持するガイドであって、上面が媒体の搬送経路の一部を形成するガイドと、前記ガイドを介して搬送された媒体に印刷を行う印刷機構と、媒体に当接して当該媒体を前記印刷機構側又は前記ガイド側に搬送する搬送ローラーであって、当該当接位置が前記ガイドと前記印刷機構の間において前記ガイドの上面よりも低い位置に設けられた搬送ローラーと、前記印刷機構によって一方の面に印刷が行われた媒体が、前記搬送ローラーによって前記ガイド側の下方を通過するように搬送された際に、前記一方の面が前記ガイドの上面に支持されるように反転させる反転機構と、を備え、前記ガイドは、搬送可能な或る媒体に対して、前記搬送ローラー側の端面の媒体幅方向の幅が前記或る媒体の媒体幅よりも短くなるように、角が面取りされている、ことを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、媒体の一方の面に印刷後、媒体を反転させる際に、媒体にカールが発生していてもガイドと媒体が当たりにくくなる。よって、媒体を反転させる際の用紙ジャムの発生を抑制することができる。
【0009】
かかる印刷装置であって、前記ガイドは、前記搬送ローラー側の端面に近づくにつれて、媒体幅方向の幅が短くなるように、角が面取りされていることが望ましい。
このような印刷装置によれば、ガイドの端部の形状をカールした媒体の形状に合わせるようにできるので、効率よく用紙ジャムの発生を抑制することができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、前記ガイドの角は、直線形状に面取りされていてもよい。また、曲線形状に面取りされていてもよい。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記ガイドは、前記上面が前記搬送ローラーに近づくように、前記搬送ローラーの前記当接位置における接線方向に対して斜めに設けられていることが望ましい。
このような印刷装置によれば、ガイドから搬送ローラーにスムーズに媒体を供給できるとともに、印刷後の媒体を反転させる際に用紙ジャムを防止することができる。
【0012】
また、媒体を支持するガイドであって、上面が媒体の搬送経路の一部を形成するガイドと、媒体に印刷を行う印刷機構と、媒体との当接位置が前記ガイドと前記印刷機構の間において前記ガイドの上面よりも低い位置に設けられた搬送ローラーと、を備えた印刷装置による印刷方法であって、前記ガイドから供給される媒体を前記搬送ローラーによって前記印刷機構に搬送することと、前記印刷機構によって媒体の一方の面に印刷を行うことと、一方の面に印刷された媒体を前記搬送ローラーによって前記ガイドの下方を通過するように搬送することと、媒体の前記一方の面が前記ガイドの上面に支持されるように反転させることと、を有し、前記ガイドは、搬送可能な或る媒体に対して、前記搬送ローラー側の端面の媒体幅方向の幅が前記或る媒体の媒体幅よりも短くなるように、角が面取りされていることを特徴とする印刷方法が明らかとなる。
【0013】
===印刷装置の構成===
以下の実施形態では印刷装置としてインクジェットプリンター(プリンター10)を例に挙げて説明する。本実施形態のプリンター10は、媒体(紙等)の両面に印刷を行うことのできる印刷装置である。また、プリンター10は、インクジェット式のプリンターであるが、かかるインクジェット式プリンターは、インクを吐出して印刷可能な装置であれば、いかなる吐出方法を採用した装置でも良い。
【0014】
<プリンター10の構成について>
図1は、本実施形態にかかるプリンター10の構成の一部を説明するための概略図である。以下、本明細書においては、図1の右側に示す方向をそれぞれx方向、y方向(媒体幅方向ともいう)、z方向(鉛直方向ともいう)として説明を行う。また、各方向において矢印側をプラス側とし、矢印の反対側をマイナス側とする。また、z方向のプラス側を上側としz方向のマイナス側を下側とする。また、図に示すように時計回り方向をA方向とし、反時計回り方向をB方向とする。
【0015】
プリンター10は、媒体に印刷を行う印刷装置であり、媒体搬送機構30と、媒体支持機構40と、印刷機構50と、これらの各機構を制御するコントローラー(不図示)を備えている。また、本実施形態のプリンター10は、印刷後の媒体の表裏を反転させることによって、媒体の両面に印刷を行う両面印刷が可能になっている。なお、本実施形態のプリンター10は、媒体(例えば紙)を搬送方向に搬送しつつ、媒体幅方向に複数のノズルが配設されたヘッドからインク滴を吐出することで媒体に画像を印刷するプリンター(いわゆるラインプリンター)である。
【0016】
印刷機構50は、搬送される媒体に対してインクを吐出することにより画像を形成させる。印刷機構50はヘッド51とプラテン55とを有する。
【0017】
ヘッド51は、媒体にインクを吐出して、媒体上に多数のインク滴を着弾させることにより画像を形成する。ヘッド51の下面(z方向マイナス側の端面)には各インクに対応づけられた不図示のノズル列が設けられていて、このノズル列を構成する複数のノズルにはそれぞれピエゾ素子が配置されている。不図示のインクタンクからインク通路を介してノズルにインクが供給されると、このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズルからインク滴を吐出することが可能となっている。なお、ヘッド51は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、例えばインクをヒーターで加熱し、発生する泡の力を利用するヒーター方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、ミストを電界で制御するミスト方式等を採用しても良い。また、印刷に使用されるインクは、染料系インク/顔料系インク等、いずれの種類のインクでも良い。
【0018】
プラテン55は、ヘッド51の下面と対向する位置に配設され、印刷中の媒体を下側から保持する。また、プラテン55の表面に吸引孔を設け、空気を吸引することにより、印刷中の媒体を吸引保持するようにしてもよい。
【0019】
媒体支持機構40は、搬送される媒体を支持するとともに、搬送経路の一部を形成する。本実施形態のプリンター10では媒体支持機構40として、搬送ガイド41(ガイドに相当する)と、搬送ガイド43を備えている。
【0020】
搬送ガイド41は、例えば板状の部材であり、反転用ローラー対31と搬送ローラー対33の間に設けられている。なお、搬送ガイド41は、x方向に対して斜めに設けられている。そして、搬送ガイド41は、反転用ローラー対31から供給される媒体を上面(z方向プラス側の面)で支持しつつ搬送ローラー対33に送る。つまり、搬送ガイド41の上面が媒体の搬送経路の一部を形成している。搬送ガイド41の形状についての詳細は後で説明する。
【0021】
搬送ガイド43は、搬送ガイド41よりも下方において、上面が反転用ローラー31aの外周に沿うように設けられている。そして、搬送ガイド43は、印刷後の媒体を反転させる際に、搬送ローラー対33から供給される媒体を上面で支持する。なお、搬送ガイド43の上面も搬送経路の一部を形成している。
【0022】
媒体搬送機構30は媒体を搬送方向に沿って搬送させるためのものである。本実施形態の媒体搬送機構30は、x方向マイナス側から順に、反転用ローラー対31と搬送ローラー対33と排出ローラー対35を備えている。
【0023】
反転用ローラー対31は、各ローラー対のうち最もx方向のマイナス側の位置に設けられており、反転用ローラー31aと、従動ローラー31b、31c、31dを有する。反転用ローラー31aは、媒体を搬送経路に沿って搬送するともに印刷後の媒体を反転させるためのものであり、A方向(時計回り方向)のみに回転する。また、従動ローラー31b、31c、31dは、それぞれ、反転用ローラー31aの外周面に沿って設けられている。そして、従動ローラー31b、31c、31dは、反転用ローラー31aが媒体を搬送する際に反転用ローラー31aの回転に従動して、反転用ローラー31aの回転方向(A方向)の逆方向(B方向)に回転する。本実施形態のプリンター10は、媒体の両側の面に印刷を行うこと(両面印刷)が可能になっており、反転用ローラー対31、及び、後述する搬送ガイド43は両面印刷を実行する際に媒体の表裏を反転させる反転機構を構成している。なお、両面印刷の詳細については後述する。
【0024】
搬送ローラー対33は、搬送ローラー33aと、従動ローラー33bを有している。搬送ローラー33aは、x方向の位置が搬送ガイド41とヘッド51との間に設けられており、媒体に当接してA方向又はB方向に回転することで媒体を搬送する。なお、搬送ローラー33aがA方向に回転すると媒体はx方向プラス側(ヘッド51側)に搬送され、搬送ローラー33aがB方向に回転すると媒体はx方向マイナス側(搬送ガイド41側)に搬送される。また、搬送ローラー33aは、媒体との当接位置が、搬送ガイド41の上面よりも低い位置で、且つ、搬送ガイド43の上面よりも高い位置になるように設けられている。従動ローラー33bは、搬送ローラー33aと対向するように設けられている。そして、従動ローラー33bは、搬送ローラー33aが媒体を搬送する際に、搬送ローラー33aの回転に従動して搬送ローラー33aの回転の逆方向に回転する。
【0025】
排出ローラー対35は、ヘッド51よりもx方向プラス側に設けられている。排出ローラー対35は、排出ローラー35aと、従動ローラー35bを有している。この、排出ローラー対35の構成は、搬送ローラー対33の構成と同様である。つまり、排出ローラー35aは、媒体に当接して回転することにより、当該媒体をヘッド51側、又は、排紙(排出)側に搬送する。従動ローラー35bは、排出ローラー35aが媒体を搬送する際に、排出ローラー35aの回転に従動して、排出ローラー35aの回転方向と逆方向に回転する。
【0026】
なお、媒体搬送機構30の反転用ローラー31a、搬送ローラー33a、排出ローラー35aの回転の動作は、コントローラー(不図示)によって制御されている。コントローラーは、各ローラーの回転速度や回転方向を制御し、媒体を搬送経路に沿って搬送させる。なお、コントローラーは、各ローラーに対応して設けられたモーター(不図示)をそれぞれ別々に駆動させることにより、各ローラーをそれぞれ独立して回転させる。
【0027】
コントローラーは、CPU、ROM、RAM、PROM、ASIC、モータードライバー等を具備しており、これらのハードウエアと、ROMやPROMに記憶されているソフトウエア及び/又はデータの協働、又は特有の処理を行う回路や構成要素の追加等によって、各ローラーの回転の制御を行なう。
【0028】
===両面印刷時の動作について===
図2A〜図2Fは両面印刷時の動作についての説明図である。なお、図1と同様にx方向、y方向、z方向を設定し、図において時計回り方向をA方向、反時計回り方向をB方向とする。なお、以下の各ローラーによる搬送の動作およびヘッド51による印刷の動作は、不図示のコントローラーによる制御によって行われる。
【0029】
まず、媒体(紙S)が反転用ローラー対31に搬送されてくると、コントローラーは反転用ローラー31aをA方向に回転させる。紙Sは、反転用ローラー31aによって搬送されつつ従動ローラー31b、31c、31dに導かれて搬送方向(A方向)に進み、反転用ローラー31aと、従動ローラー31b、31c、31dとの間を順に通過していく。このように紙Sは、反転用ローラー31aの外周に沿って搬送される(図2A)。
【0030】
紙Sの先端が従動ローラー31dを通過すると、紙Sは搬送ガイド41によって支持されるようになる。そして、紙Sは搬送ガイド41の上面で支持されつつ、搬送ローラー対33側(x方向プラス側)に搬送される。紙Sが搬送ローラー対33に到達すると、コントローラーは搬送ローラー33aをA方向に回転させる。これにより、紙Sはヘッド51側(x方向プラス側)に搬送される(図2B)。
【0031】
紙Sがx方向プラス側に搬送されることによって、紙Sはプラテン55に支持されつつヘッド51の下を通るようになる。このとき、コントローラーは、プラテン55に対向するヘッド51のノズルからインク滴を吐出させる。これにより紙Sの一方の面にドットが形成され画像が印刷される(図2C)。なお、コントローラーは、排出ローラー35aをA方向に回転させ、ヘッド51を通過した紙Sをさらにx方向プラス側に搬送させる。
【0032】
紙Sの片面への印刷が終わると、コントローラーは、排出ローラー対35の排出ローラー35aの回転方向を逆転させる(B方向に回転させる)。また、搬送ローラー33aもB方向に回転させる。これにより、印刷後の紙Sはx方向マイナス側に逆搬送されるようになる。このとき、搬送ローラー33aと紙Sの当接位置は、搬送ガイド41の上面よりも低くなっているため、紙Sは、搬送ガイド41の下方を通過して、反転用ローラー31aと搬送ガイド43の上面の間を通るように搬送される(図2D)。
【0033】
紙Sは、搬送ガイド43の上面に支持されつつ反転用ローラー31aの周面に沿って搬送されていき、図2Aの場合と同様に、反転用ローラー対31によって、反転用ローラー31aの外周に沿うように搬送されるようになる(図2E)。このとき紙Sの印刷面(一方の面)は、反転用ローラー31a側を向いている。つまり、図2Eでは、紙Sの表裏の関係が図2Aと逆になっている。
【0034】
そして、紙Sは、再び、搬送ガイド41及び搬送ローラー対33によって、x方向プラス側に搬送される(図2F)。なお、この際に、印刷面が搬送ガイド41の上面、及び、搬送ローラー33aとそれぞれ当接することになる。そして、紙Sがヘッド51の下を通るとき、ヘッド51のノズルからインク滴を吐出し、他方の面(印刷面の反対側の面)に印刷を行なう。このようにして、両面に印刷が行われた紙Sは、排出ローラー対35によって、プリンター10の外部に排出される。
【0035】
===搬送ガイド41の形状について===
<比較例>
図3は、比較例の搬送ガイド41(便宜上、搬送ガイド41´とする)の形状を示す斜視図である。搬送ガイド41´は長方形の板状の部材であり、媒体幅方向(y方向)の幅D1は、搬送可能な媒体(例えば紙S)の媒体幅よりも長くなっている。図のように比較例では、搬送ガイド41´の幅は、x方向の位置にかかわらずD1である。この比較例の場合、図2で説明したような両面印刷を行うと媒体を反転させる際に用紙ジャムが発生するおそれがある。以下、この理由について説明する。
【0036】
図4は、印刷後の紙Sの状態の一例を示す図である。なお、図の点線は印刷前の状態を示し、実線は印刷後の状態を示している。印刷を行うと媒体が図のように湾曲する現象(カール)が発生することがある。カールの原因は、印刷によるインクの打ち込み、加熱、媒体搬送時の各ローラーによる力などが考えられる。また、カールの発生の有無やカールの程度(量)は、媒体の種類、大きさ、厚さ等にも依存する。例えば、ハガキサイズの紙よりもA4サイズの紙のほうがカールしやすく、厚手の紙よりも普通紙のほうがカールしやすい。
【0037】
図5は、比較例においてカールした紙Sを反転させるときの様子の一例を示す図である。図5は図2Dの直前の状態を搬送ガイド41´の裏側(下面側)から見た図である。なお、前述したように、搬送ガイド41´はx方向(言い換えると、搬送ローラー33aと紙Sとの当接位置における接線方向)に対して斜めに設けられている。こうすることにより、搬送ガイド41の上面が搬送ローラー33aに近づくので、紙Sをスムーズに搬送ローラー33aに搬送できる。
また、紙Sと搬送ローラー33aとの当接位置は、搬送ガイド41´の上面よりも低くなっている。このため、搬送ローラー33aによって紙Sをx方向のマイナス側(搬送ガイド41´側)に搬送させると、紙Sは搬送ガイド41´の下方を通過して搬送ガイド43によって搬送されることになる(図2D参照)。
このとき、片面の印刷後の紙Sが図4のようにカールしていると、搬送ガイド41´がx方向に対して斜めに設けられているため、紙Sのカールした部分と、搬送ガイド41´の角が図のように当たってしまうことがある。この場合、搬送ガイド41´の端部(端面41a´側)と搬送ローラー33aの位置が近いため、紙Sのこし(剛性)が強い状態で搬送ガイド41と当たることになり、用紙ジャムが発生する。このように、紙Sを反転させる際に用紙ジャムが起こりやすいという問題がある。
そこで、以下の実施形態では、紙Sを反転させる際の用紙ジャムの発生を抑制するようにしている。
【0038】
<本実施形態>
図6Aは、本実施形態における搬送ガイド41を示す斜視図である。また、図6Bは、本実施形態における搬送ガイド41を上(z方向プラス側)から見た図である。また、図6A、図6Bにおいて、比較例の搬送ガイド41´の形状を点線で示している。
本実施形態の搬送ガイド41は、図6A及び図6Bに示すように、比較例の搬送ガイド41´と比べると、x方向プラス側(すなわち搬送ローラー33a側)の端面41a´の角が面取りされている。そして、この面取りによって、本実施形態の端面41aにおけるy方向の幅D2は、搬送ガイド41の幅D1よりも短くなっている。
例えば、紙SがA4サイズの普通紙である場合、搬送ガイド41の幅D1はA4サイズの紙幅よりも長くなっている。これにより、紙Sの搬送時に安定して紙Sを支えることができる。一方、搬送ガイド41の端面41aの幅D2はA4サイズの紙幅よりも短くなっている。これにより、片面の印刷後の紙Sにカールが発生していても、紙Sを反転させる際に、紙Sのカールした部分と搬送ガイド41とを当たりにくくすることができる。
【0039】
図7は、本実施形態においてカールした紙Sを反転させるときの様子の一例を示す図である。なお、図7は比較例(図5)と同様に、図2Dの直前の状態を搬送ガイド41の裏側(下面側)から見た図である。
比較例では、印刷後の紙Sを反転させる際に紙Sがカールしていると、カールした部分が搬送ガイド41´の角に当たってしまい、用紙ジャムが発生するおそれがあった。これに対し、本実施形態の搬送ガイド41では、搬送ガイド41´の搬送ローラー33側の端面41a´の角が面取りされている。よって図7に示すように、印刷後の紙Sを反転させる際に、搬送ガイド41が紙Sのカールした部分の当たる可能性を低くすることができる。よって、用紙ジャムの発生を抑えるようにすることができる。
なお、搬送ガイド43と搬送ローラー33a間の距離は、搬送ガイド41と搬送ローラー間の距離よりも長くなっている。このため、搬送ガイド41の下方を通過した紙Sは自重でz方向マイナス側にしなるようになり(剛性が低下し)、搬送ガイド43に支持されるようになる。よってここではカールによる用紙ジャムは起こりにくい。
【0040】
このように、本実施形態の搬送ガイド41は、比較例の搬送ガイド41´の端面41a´の角を面取りしている。これにより、両面印刷を行う場合に、一方の面に印刷後の紙Sがカールしていても、搬送ガイド41に当たる可能性を低くすることができる。よってy用紙ジャムの発生を抑制することができる。
なお、図からわかるように、面取りの量が小さいと、媒体が搬送ガイド41に当たる可能性が高くなる。よって面取りの量は、搬送可能な媒体において起こりえるカールの最大値に合わせて設定することが望ましい。例えば、カールが大きい紙Sの場合、搬送ガイド41の端部の形状(上から見た形状)をV字状にしてもよい。また、面取りの角度もカールの大きさに合わせて設定するようにすればよい。ただし、面取りの量を大きくしすぎると、媒体を上面で支持しつつ搬送する際に、媒体を安定して支持できなくなるおそれがある。
【0041】
<変形例>
前述した実施形態では、搬送ガイド41´の角を直線形状に切り落とすように面取りしていたが、これには限られず、例えば、搬送ガイド41のコーナー部分が所定の曲率になるように搬送ガイド41´の角を曲線形状に面取りしてもよい。また、搬送ガイド41´の搬送ローラー33a側の端部の形状を、例えばU字状にしてもよい。少なくとも、搬送ガイド41の端面41aの幅D2が媒体幅よりも短くなっていればよい。こうすることで、媒体を反転させる際に、媒体がカールしていても、カールした部分と当たりにくくなるので、用紙ジャムの発生を抑制することができる。
【0042】
===その他の実施形態===
一実施形態としての印刷装置を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0043】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、印刷装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。
また、前述した実施形態では、ヘッドから媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンターであったが、これには限られず、例えば、ドラムと呼ばれる感光体にレーザー光線を照射し、感光体に付着したトナーを、熱と圧力によって媒体に定着させるレーザープリンターであってもよい。
また、前述した実施形態では、ラインプリンターについて説明されていたが、これには限られず、例えば、ヘッドを移動方向に移動させながらヘッドから媒体にインクを吐出することによって媒体にドットを形成するドット形成動作と、媒体を搬送方向に搬送する搬送動作を交互に行うプリンター(いわゆるシリアルプリンター)であってもよい。
【0044】
<媒体について>
上述の各実施形態において、媒体を紙等として説明しているが、搬送可能なシート状のものであれば「紙」以外の媒体を使用しても良い。例えば、フィルム状の部材、樹脂製のシート、アルミ箔等を媒体として用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 プリンター、
30 媒体搬送機構、31 反転用ローラー対、31a 反転用ローラー、
31b〜31d 従動ローラー、33 搬送ローラー対、33a 搬送ローラー、
33b 従動ローラー、35 排出ローラー対、35a 排出ローラー、
35b 従動ローラー、
40 媒体支持機構、41 搬送ガイド、43 搬送ガイド、
50 印刷機構、51 ヘッド、55 プラテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持するガイドであって、上面が媒体の搬送経路の一部を形成するガイドと、
前記ガイドを介して搬送された媒体に印刷を行う印刷機構と、
媒体に当接して当該媒体を前記印刷機構側又は前記ガイド側に搬送する搬送ローラーであって、当該当接位置が前記ガイドと前記印刷機構の間において前記ガイドの上面よりも低い位置に設けられた搬送ローラーと、
前記印刷機構によって一方の面に印刷が行われた媒体が、前記搬送ローラーによって前記ガイド側の下方を通過するように搬送された際に、前記一方の面が前記ガイドの上面に支持されるように反転させる反転機構と、
を備え、
前記ガイドは、搬送可能な或る媒体に対して、前記搬送ローラー側の端面の媒体幅方向の幅が前記或る媒体の媒体幅よりも短くなるように、角が面取りされている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記ガイドは、前記搬送ローラー側の端面に近づくにつれて、媒体幅方向の幅が短くなるように、角が面取りされている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
前記ガイドの角は、直線形状に面取りされている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
前記ガイドの角は、曲線形状に面取りされている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記ガイドは、前記上面が前記搬送ローラーに近づくように、前記搬送ローラーの前記当接位置における接線方向に対して斜めに設けられている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
媒体を支持するガイドであって、上面が媒体の搬送経路の一部を形成するガイドと、媒体に印刷を行う印刷機構と、媒体との当接位置が前記ガイドと前記印刷機構の間において前記ガイドの上面よりも低い位置に設けられた搬送ローラーと、を備えた印刷装置による印刷方法であって、
前記ガイドから供給される媒体を前記搬送ローラーによって前記印刷機構に搬送することと、
前記印刷機構によって媒体の一方の面に印刷を行うことと、
一方の面に印刷された媒体を前記搬送ローラーによって前記ガイドの下方を通過するように搬送することと、
媒体の前記一方の面が前記ガイドの上面に支持されるように反転させることと、
を有し、
前記ガイドは、搬送可能な或る媒体に対して、前記搬送ローラー側の端面の媒体幅方向の幅が前記或る媒体の媒体幅よりも短くなるように、角が面取りされている
ことを特徴とする印刷方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−86969(P2012−86969A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236623(P2010−236623)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】