説明

印刷装置、及び印刷方法

【課題】再給紙動作における給紙対象以外の用紙を給紙させてしまうことを防止する印刷装置、及び印刷方法の提供を目的とする。
【解決手段】第1のローラーと比べて搬送方向下流に配置され、用紙を搬送する第2のローラーと、前記給紙動作を実行して前記用紙が前記所定位置まで送られなかった場合に、用紙の送り方向の用紙長L2≧第1のローラーの送り量L1、であれば、前記第1のローラーと、前記第2のローラーの回転とを行う第1の再給紙動作で前記用紙を給紙させ、用紙の送り方向の用紙長L2<第1のローラーの送り量L1、であれば、前記第1のローラーの回転を行わず、前記第2のローラーの回転を行う第2の再給紙動作で前記用紙を給紙させる再給紙動作実行手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙動作を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送ローラーにより用紙を記録ヘッドまで搬送して印刷を行う印刷装置が知られている。例えば、印刷装置は、用紙が収容される用紙収容部から記録ヘッドの下部を経由して排紙口を結ぶ経路(搬送経路とも記載する。)を備えており、搬送ローラーはこの搬送経路内に配置されている。また、用紙収容部にセットされた用紙を分離ローラーにより取り出し所定距離だけ搬送方向下流に用紙を送った後、搬送ローラーに受け渡す(このような動作を給紙動作とも記載する。)動作を行うものがある。
【0003】
また、給紙動作が適切に行われない場合に、再度内部のローラーを駆動して給紙動作を行う場合がある(以下、このように給紙動作を繰返すことを再給紙動作、リトライ動作とも記載する。)。給紙動作では、各ローラーに対して用紙を所定距離だけ送るための送り量が設定されているが、ローラーが用紙に対して滑ることで送り量が減少し、所定の送り量が確保できない場合がある。そのため、給紙動作の不良を解消するため、再度各ローラーを駆動して送り量を増やすことで同用紙を所定距離だけ送り、給紙動作を完了させる再給紙を行う場合がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−74766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
再給紙動作によって用紙を所定距離だけ送ることで、的確に給紙動作を完了させることが可能となるが、不必要な用紙まで給紙してしまう場合が起こりうる。例えば、再給紙動作により、分離ローラーの回転が再開することで給紙対象の用紙以外の用紙と分離ローラーが当接し、この用紙を給紙させてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、再給紙動作における給紙対象以外の用紙を給紙させてしまうことを防止する印刷装置、及び印刷方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、第1のローラーを回転させて用紙を搬送経路上の所定位置まで給紙する給紙動作を行う印刷装置であって、前記第1のローラーと比べて搬送方向下流に配置され、用紙を搬送する第2のローラーと、前記給紙動作を実行して前記用紙が前記所定位置まで送られなかった場合に、用紙の送り方向の用紙長L2≧第1のローラーの送り量L1、であれば、前記第1のローラーと、前記第2のローラーの回転を行う第1の再給紙動作で前記用紙を給紙させ、用紙の送り方向の用紙長L2<第1のローラーの送り量L1、であれば、前記第1のローラーの回転を行わず、前記第2のローラーの回転を行う第2の再給紙動作で前記用紙を給紙させる再給紙動作実行手段と、を有する構成としてある。
【0008】
本発明の詳細な構成及び効果は明細書中で開示を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】外装ケースを取り外した状態のプリンター11の斜視図を示す。
【図2】プリンター11内部に形成された用紙Mの搬送経路及びこの搬送経路に配置される各種ローラーを示す側面図である。
【図3】プリンター11の制御ブロックを説明するブロック構成図である。
【図4】プリンター11における印刷動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】ステップS1において実行される給紙動作を説明する図である。
【図6】ステップS1の給紙動作を詳細に示すフローチャートである。
【図7】変則リトライを説明するための図である。
【図8】第2の実施形態に係るプリンター11の各ローラー間と用紙Mとの位置関係を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る給紙動作を詳細に説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.第1の実施形態:
2.第2の実施形態:
3.その他の実施形態:
【0011】
1.第1の実施形態:
以下、図を参照して、この発明に係る印刷装置を具体化した第1の実施の形態について説明する。なお、以下では、印刷装置としてプリンター11を例に説明を行う。
【0012】
図1は、外装ケースを取り外した状態のプリンター11の斜視図を示す。図1に示すように、プリンター11は、上側が開口する略四角箱状の本体ケース12を備え、この本体ケース12内に架設されたガイド軸13にはキャリッジ14が主走査方向Xに沿って往復動可能な状態で設けられている。キャリッジ14が背面側で固定された無端状のタイミングベルト15は、本体ケース12の背板内面上に配設された一対のプーリー16,17に巻き掛けられ、一方のプーリー16と駆動軸が連結された駆動手段としてのキャリッジモーター(以下、「CRモーター18」とも記載する。)が正逆転駆動されることにより、キャリッジ14は主走査方向Xに往復動する構成となっている。
【0013】
キャリッジ14の下部には、インクを噴射する記録ヘッド(記録手段)19が設けられ、さらに本体ケース12内において記録ヘッド19と対向する下方位置には、記録ヘッド19とターゲットとしての用紙Mとの間隔を規定するプラテン20がX方向に延びる状態で配置されている。また、キャリッジ14の上部には、ブラック用およびカラー用の各インクカートリッジ21,22が着脱可能に装填されている。記録ヘッド19は、各インクカートリッジ21,22から供給された各色のインクを、色ごとのノズルから噴射(吐出)する。
【0014】
プリンター11の背面側には、給紙トレイ23と、給紙トレイ23上に積重された多数枚の用紙Mのうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向Y(搬送方向の上流側から下流側に向かう方向)に供給する自動給紙装置(Auto Sheet Feeder)とが設けられている。
【0015】
また、本体ケース12の図1における右側下部には紙送りモーター(以下、「PFモーター25」という)が配設され、PFモーター25が駆動されることにより、搬送ローラー及び排紙ローラー(いずれも図2を参照)が回転駆動されて、用紙Mが副走査方向Yへ搬送されるようになっている。そして、このプリンター11では、キャリッジ14を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド19のノズルから用紙Mに向けてインクを噴射する印刷動作と、用紙Mを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを略交互(但し、各動作タイミングは一部重複)に繰り返すことで、用紙Mに文字や画像等の印刷が施されるようになっている。
【0016】
また、プリンター11には、キャリッジ14の移動距離に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー26がガイド軸13に沿って延びるように架設されており、リニアエンコーダー26の出力パルスを用いて求められるキャリッジ14の移動位置、移動方向及び移動速度に基づいて、キャリッジ14の速度制御及び位置制御が行われるようになっている。
【0017】
図2は、プリンター11内部に形成された用紙Mの搬送経路及びこの搬送経路に配置される各種ローラーを示す側面図である。図2に示すように、プリンター11の内部には、給紙トレイ23に積重された用紙Mをプラテン20を経由して、プリンター11外部に排紙する搬送経路が形成されている。また、この搬送経路上において、給紙トレイ23の搬送方向上流側には、給紙トレイ23に積重された複数の用紙Mから搬送対象となる用紙Mを取り出す分離ローラー33(第1のローラー)が配設されている。そして、分離ローラー33の搬送方向下流側には、記録ヘッド19の記録位置(つまりプラテン20)を搬送方向に挟んだ前後に、搬送ローラー(第1の搬送ローラー31(第2のローラー)、第2の搬送ローラー32)及び排紙ローラー34がそれぞれ回転可能な状態に配設されている。
【0018】
分離ローラー33は、給紙トレイ23と第1の搬送ローラー31の搬送方向上流側との間に設けられ、PFモーター25から不図示のクラッチ手段を介して伝達される動力により回転する。また、本実施形態では、分離ローラー33の回転方向断面は、円周の一部がカットされた半月状の断面であり、この円周部の長さがL1となっている。そのため、分離ローラー33が給紙トレイ23上の用紙Mと当接して、1回転することで、用紙Mが同分離ローラー33の回転により搬送方向に巻き取られ、理想的には搬送方向下流側に距離L1だけ送られる。一方、分離ローラー33の円周部が用紙Mとの接触を解除する期間(例えば、円周部の一部がカットされた部位が用紙Mと対向する向きにある期間)では、分離ローラー33と用紙Mとは当接しないため、用紙Mは送られない。以下、分離ローラー33が用紙Mとの当接を開始し、給紙を開始するときの位置をホームポジションと記載する。
【0019】
搬送ローラーは、搬送経路上にそれぞれ配置される第1の搬送ローラー31と、第2の搬送ローラー32により構成される。各搬送ローラーは、駆動ローラー31A(32A)と従動ローラー31B(32B)との一対から構成されている。本実施形態では、搬送ローラーは、PFモーター25(図1参照)の駆動力が伝達されて両駆動ローラー31A(32A)が回転駆動される。そのため、分離ローラー33により分離された用紙Mは、第1の搬送ローラー31に渡され、図2における左方向(副走査方向Y)へ搬送される。
【0020】
排紙ローラー34は、排紙口付近に配置され、記録ヘッド19により画像が形成された用紙Mをプリンター11外部へ排紙する。排紙ローラー34は駆動ローラー34Aと従動ローラー34Bとの一対からなり、駆動ローラー34Aの回転に従動ローラー34Bが従動して、用紙Mを排紙する。
【0021】
第2の搬送ローラー32のやや搬送方向上流側の位置には、紙検出センサー35が設けられている。紙検出センサー35は、例えば接触式センサー(スイッチ式センサー)からなり、給紙された用紙Mの先端が検知レバー(図示略)に当たってこれを変位させることでオンし、用紙Mの後端が通過して検知レバーがバネ力で元の待機位置に復帰したときにオフする。この紙検出センサー35により、搬送経路内に用紙Mが存在するか否かを判断することができるし、給紙動作が行われたことを検出することができる。
なお、紙検出センサー35は、用紙Mの紙端を検知可能であればよく、光学式センサー等の非接触式センサーも採用できる。
【0022】
図3は、プリンター11の制御ブロックを説明するブロック構成図である。図3に示すように、プリンター11には、該プリンター11の駆動を統括制御するマイクロコンピューター等からなる制御部37が設けられている。この制御部37は、紙検出センサー35からの入力、リニアエンコーダー26(厳密には、受光側)、及びに、図示しない外装ケースに設けられた操作ボタン38からの入力に基づき、CRモーター18、記録ヘッド19、PFモーター25の駆動を制御する。更に、上記各入力に基づいて、図示しない外装ケースに設けられたモニター39の表示を制御する。
【0023】
図4は、プリンター11における印刷動作を説明するためのフローチャートである。
以下、ステップS1では、分離ローラー33を駆動させて給紙トレイ23に載置された用紙Mを取り出し、搬送方向下流に所定距離だけ送り、同用紙Mを第1の搬送ローラー31に受け渡す(以下、このような動作を給紙動作、給紙工程と記載する。)。また、ステップS2では、給紙された用紙Mに対してキャリッジ14が記録ヘッド19を主走査方向(x方向)に移動させつつ、搬送ローラーが用紙Mを副操作方向(y方向)に移動させて画像形成動作(画像形成工程)を行う。そして、ステップS3において、画像が形成された用紙Mを排紙口から排紙する。
【0024】
図5は、ステップS1において実行される給紙動作を説明する図である。図5Aに示すように、給紙動作では、給紙トレイ23から取り出された用紙M(以下、用紙M1と記載するときは、給紙トレイ23に積重された用紙M2と区別する場合に使用する。)の搬送方向下流側の端部(以下単に用紙先端Meとも記載する。)を地点P0まで送る(以下、このように、用紙Mが給紙される距離を給紙距離Pとも記載する。)。本実施形態では分離ローラー33の1回転により給紙動作が完了するため、理想的には、送り量L1=Pとなる。なお、送り量L1は、分離ローラー33が用紙先端Meを地点P0まで送る距離を示すため、分離ローラー33がn回転で用紙M1の先端を地点P0まで送る場合は、L1=Li×n(ただし、Liは分離ローラー33の1回転での送り量)となる。同様に、分離ローラー33が1回転未満で用紙M1を給紙距離Pまで給紙する場合でも、分離ローラー33の回転角に応じた円周により理想的な送り量L1が設定される。また、地点P0には紙検出センサー35が配置されているため、用紙先端Meが地点P0まで達すると、同紙検出センサー35が用紙M1を検出し、制御部37は給紙動作の完了を判断する。そのため、本実施形態では、給紙距離Pは、搬送経路上の紙検出センサー35と分離ローラー33との間の距離とすることができる。
【0025】
給紙動作の過程において、分離ローラー33が用紙M1に対して滑りを起こし、分離ローラー33の送り量L1がPとならない場合がある。例えば、分離ローラー33の回転に用紙M1が追従せず、分離ローラー33を1回転させても用紙先端Meが地点P0に達しない場合である(図5B)。このような場合、制御部37は分離ローラー33を再度回転させて、給紙動作を繰返すリトライ動作(再給紙動作)を行う。
【0026】
ここで、リトライ動作は、分離ローラー33の回転終了後に、再度、分離ローラー33を回転させるため、給紙対象となる用紙以外の用紙M(M2)が給紙されてしまうことも起こりうる。例えば、リトライ動作により分離ローラー33が用紙M1を送るが、用紙先端MeがP0に達する前に、分離ローラー33が次の用紙M2と当接し、用紙M2の給紙を開始してしまう場合である。そのため、本実施形態では、リトライ動作において給紙対象ではない用紙M2が給紙されないよう、条件に応じてリトライ動作の態様を変化させている。
【0027】
図6は、ステップS1の給紙動作を詳細に示すフローチャートである。以下、図6に示すフローチャートをもとに本実施形態に係る給紙動作を説明する。プリンター11に対して印刷命令が入力すると、ステップS11では、制御部37は分離ローラー33及び搬送ローラー31、32を駆動させて給紙動作を実行する。また、図6に示す処理により制御部37は、本発明の再給紙動作実行手段を実現する。
【0028】
ステップS12では、制御部37は、用紙先端Meが地点P0に到達したか否かを判断する。即ち、制御部37は紙検出センサー35の入力を監視しており、紙検出センサー35が用紙Mを検出し、入力信号がハイに変化した場合は(ステップS12:YES)、ステップS13において給紙動作を終了する。本実施形態では、制御部37は、分離ローラー33の回転を停止させて、第1の搬送ローラー31に用紙Mを受け渡す。
【0029】
一方、所定期間経過又は分離ローラー33が1回転した後も、用紙先端Meが地点P0に到達していない場合(ステップS12:NO)、制御部37は、給紙不良が発生したと判断し、以下の処理においてリトライ動作を行う。
【0030】
そのため、制御部37は、ステップS14において、現在のリトライ回数を判断し、リトライ回数が閾値n以下であれば(ステップS14:YES)、ステップS16に進む。ステップS14によるリトライ回数の判断は、制御部37が、給紙対象用紙が紙詰まりを起こしているか否かを判断するものである。即ち、用紙Mが紙詰まりを起こしている場合、リトライ動作を繰返しても(リトライ回数>n)用紙Mが給紙されることはないため、制御部37はこのような場合にステップS15においてエラー通知を行う。
【0031】
ステップS16では、制御部37は、下記(1)式に示す条件をもとに、第1のリトライ動作(第1の再給紙動作)又は第2のリトライ動作(第2の再給紙動作)のいずれかを選択する。

用紙長L2<分離ローラーの送り量L1 …(1)

ここで、用紙M1の搬送方向の長さは、例えば、印刷開始時におけるプロパティー画面において選択された用紙Mのサイズもとに制御部37により判断される値である。例えば、用紙Mとして「A4」が選択され(用紙サイズ:210mm×297mm)、この用紙Mの短辺(210mmとなる辺)を搬送方向(y方向)と交差させて給紙する場合、搬送方向での長さL2は「297mm」となる。
【0032】
そして、用紙Mの搬送方向での長さL2が送り量L1以上である場合(ステップS16:NO)、ステップS17において、制御部37は通常のリトライ動作を選択する。通常のリトライ動作では、通常の給紙動作と同様に分離ローラー33と搬送ローラー31、32とを回転させて用紙Mを搬送方向下流に送る。本実施形態では、分離ローラー33は外周が扇状であるため、分離ローラー33をホームポジションまで回転させた後、再度、分離ローラー33を用紙Mと当接させて再給紙動作を行う。そして、ステップS12に進み、紙検出センサー35により用紙Mが検出された場合は、ステップS13に進み給紙動作を終了させる。無論、通常のリトライ動作は、紙検出センサー35が用紙Mを検出する(ステップS12:YES)まで繰返される。
【0033】
一方、用紙Mの搬送方向での長さL2が送り量L1以上である場合(ステップS16:YES)、制御部37は、ステップS18に進み、変則リトライ動作を選択する。この変則リトライ動作では、給紙対象外の用紙(図5のM2)が給紙されないようリトライ動作が行われる。
【0034】
図7は、変則リトライを説明するための図である。図7AはステップS18で実行される変則リトライ動作を説明するフローチャート(ステップS181。)である。また、図7Bは、変則リトライ動作を説明する図である。図7に示す変則リトライ動作では、制御部37は、分離ローラー33の回転を停止させて、第1の搬送ローラー31及び第2の搬送ローラー32のみを回転させて給紙動作を行う。即ち、この変則リトライ動作では、用紙M1の給紙は第1の搬送ローラー31のみで実行され、分離ローラー33は関与しない。そのため、変則リトライ動作では、分離ローラー33が回転しないため、給紙対象外の用紙(M2)が給紙されてしまうのを防止することが可能となる。
【0035】
以下、ステップS12に戻り、紙検出センサー35が用紙Mを検出したら(ステップS12:YES)、給紙動作を終了し(ステップS13)、図4のステップS2に進む。一方、紙検出センサー35が用紙Mを検出しない場合は(ステップS12:NO)、再度、変則リトライ動作が繰返される(ステップS18)。
【0036】
以上、説明したように第1の実施形態に係るプリンター11では、給紙不良が発生した場合に、用紙長L2と分離ローラー33の送り量L1との関係をもとに、この給紙不良を解消するリトライ動作の態様を選択する。即ち、用紙長L2が送り量L1以下である場合は、リトライ動作において分離ローラー33を回転させることなく用紙Mを再給紙する。そのため、給紙を行う用紙Mがどのようなサイズであっても、給紙対象以外の用紙Mを給紙することを防止することができる。
【0037】
2.第2の実施形態:
リトライ動作を選択する条件は、用紙長L2と分離ローラー33の送り量L1との関係以外にも、用紙長L2と給紙距離Pとの関係をもとに判断するものであってもよい。図8は、第2の実施形態に係るプリンター11の各ローラー間と用紙Mとの位置関係を示す図である。
【0038】
第2の実施形態に示すプリンター11では、給紙距離P>用紙長L2となる用紙Mを印刷する場合、分離ローラー33と第1の搬送ローラー31とが協力して給紙動作を行う。即ち、図8に示すように、給紙距離P>L2となる用紙M1を給紙する場合、用紙M1と分離ローラー33の当接が解除されるまで分離ローラー33の送りが行われても、用紙先端Meは地点P0に到達していない。そのため、プリンター11では、分離ローラー33と用紙M1との当接が解除された後も、第1の搬送ローラー31の回転により用紙M1を給紙距離Pまで送る構成となっている。なお、分離ローラー33と用紙M1との当接が解除された後は、分離ローラー33の円周の一部がカットされた部位が用紙M2と対向するよう位置するため、用紙M2と分離ローラー33とは当接することなくホームポジションまで回転を維持する。
なお、給紙距離Pは、用紙M1の先端Meが給紙される距離であればよいため、図8に示すような直線距離以外にも、実際の経路の距離であってもよい。
【0039】
このような構成のプリンター11においてリトライ動作が行われる場合、リトライ動作が所定期間繰返されることで、分離ローラー33がホームポジションを越えて回転し、円周部が用紙M2と再度と当接することで、用紙M2を給紙してしまう場合がある。そのため、第2の実施形態では、上記のような問題を予防するリトライ動作を行う。
【0040】
図9は、第2の実施形態に係る給紙動作を詳細に説明するフローチャートである。図9に示す処理は、第1の実施形態に比べてリトライ動作を判断する条件において異なる。
【0041】
プリンター11に対して印刷命令が入力すると、ステップS21では、制御部37は、分離ローラー33及び搬送ローラー31、32を駆動させて給紙動作を実行する。また、ステップS22では、制御部37は、用紙先端Meが地点P0に到達したか否かを判断する。そのため、所定期間経過又は分離ローラー33が1回転した後も、用紙先端Meが地点P0に到達していない場合(ステップS22:NO)、制御部37は給紙不良が発生したと判断し、以下の処理においてリトライ動作を行う。
【0042】
制御部37は、ステップS24において、現在のリトライ回数を判断し、リトライ回数が閾値n以下であれば(ステップS24:YES)、ステップS26に進む。そして、ステップS26では、制御部37は、下記(2)式に示す条件をもとに、通常リトライ動作又は変則リトライ動作のいずれかを選択する。

用紙長L2<給紙距離P … (2)

ここで、給紙距離Pはプリンター11毎に異なる値を有するため、使用されるプリンター11の形状に応じて予め設定しておく必要がある。また、用紙Mの搬送方向の長さは、第1の実施形態と同様、印刷対象として設定された用紙形状により判断する。
【0043】
そして、用紙Mの搬送方向での長さL2が給紙距離P以上である場合(ステップS26:NO)、ステップS27において、制御部37は通常のリトライ動作を選択する。用紙長L2>給紙距離Pとなる用紙Mにおいては、分離ローラー33の回転により用紙Mを給紙するため、通常のリトライ動作は第1の実施形態で記載したものと同じである。そして、ステップS22に進み、紙検出センサー35により用紙Mが検出された場合は、ステップS23に進み給紙動作を終了させる。
【0044】
一方、用紙Mの搬送方向での長さL2が給紙距離P以下である場合(ステップS26:YES)、制御部37は、ステップS28に進み、変則リトライ動作を選択する。用紙長L2<給紙距離Pとなる用紙Mにおいては、給紙過程で分離ローラー33が同用紙Mと離れ、第1の搬送ローラー31のみで給紙を行う期間が発生するが、変則リトライ動作の態様は、第1の実施形態に示すものと同様である。即ち、第2の実施形態に係る変則リトライ動作では、制御部37は、分離ローラー33の回転を停止させて、第1の搬送ローラー31及び第2の搬送ローラー32のみを回転させて給紙動作を行う。即ち、この変則リトライ動作では、用紙Mの送りは第1の搬送ローラー31のみで実行される。
【0045】
以下、ステップS22に戻り、紙検出センサー35が用紙Mを検出したら(ステップS22:YES)、給紙動作を終了し(ステップS23)、図4のステップS2に進む。一方、紙検出センサー35が用紙Mを検出しない場合は(ステップS22:NO)、再度、変則リトライ動作が繰返される(ステップS28)。
【0046】
以上、説明したように、第2の実施形態に係るプリンター11においては、用紙長L2がプリンター11内部の給紙距離Pと比べて短い用紙Mを給紙する場合においても、リトライ動作において、給紙対象外の用紙Mを給紙することを予防することができる。
【0047】
3.その他の実施形態:
本発明は様々な実施形態が存在する。
分離ローラー33の形状は、円周の一部がカットされた形状に限定されない。即ち、分離ローラー33は、回転方向断面が円状のものを使用してもよい。
プリンター11により使用される搬送ローラーの数は実施形態において示したものに限定されない。
【0048】
なお、本発明は上記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。即ち、上記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること、上記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって上記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること、上記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が上記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること、は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0049】
11…プリンター、12…本体ケース、13…ガイド軸、14…キャリッジ、15…タイミングベルト、16,17…プーリー、18…CRモーター、19…記録ヘッド、20…プラテン、21,22…インクカートリッジ、23…給紙トレイ、25…PFモーター、26…リニアエンコーダー、31…第1の搬送ローラー、32…第2の搬送ローラー、33…分離ローラー、34…排紙ローラー、35…紙検出センサー、37…制御部、38…操作ボタン、39…モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のローラーを回転させて用紙を搬送経路上の所定位置まで給紙する給紙動作を行う印刷装置であって、
前記第1のローラーと比べて搬送方向下流に配置され、用紙を搬送する第2のローラーと、
前記給紙動作を実行して前記用紙が前記所定位置まで送られなかった場合に、
用紙の送り方向の用紙長L2≧第1のローラーの送り量L1、
であれば、前記第1のローラーと、前記第2のローラーの回転とを行う第1の再給紙動作で前記用紙を給紙させ、
用紙の送り方向の用紙長L2<第1のローラーの送り量L1、
であれば、前記第1のローラーの回転を行わず、前記第2のローラーの回転を行う第2の再給紙動作で前記用紙を給紙させる再給紙動作実行手段と、を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記再給紙動作実行手段は、前記第1の再給紙動作又は前記第2の再給紙動作のいずれかが所定回数繰返された場合は、給紙不良を示すエラー通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1のローラーは、1回転で用紙を送り量L1だけ送ることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項4】
前記所定位置には、用紙を検出する紙検出センサーが配置されており、前記紙検出センサーが用紙を検出することで、前記給紙動作が完了することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
第1のローラーを回転させて用紙を搬送経路上の所定位置まで給紙する給紙動作を行う給紙工程と、
前記給紙動作を実行して前記用紙が前記所定位置まで送られなかった場合に、
用紙の送り方向の用紙長L2≧第1のローラーの送り量L1、
であれば、前記第1のローラーの回転と、前記第1のローラーと比べて搬送方向下流に配置された第2のローラーの回転とを行う第1の再給紙動作で前記用紙を給紙させ、
用紙の送り方向の用紙長L2<第1のローラーの送り量L1、
であれば、前記第1のローラーの回転を行わず、前記第2のローラーの回転を行う第2の再給紙動作で前記用紙を給紙させる再給紙動工程と、
前記給紙された用紙を搬送して、印刷を行う画像形成工程と、を有することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−201420(P2012−201420A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64563(P2011−64563)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】