説明

印刷装置およびその所定の部材の制御位置切替方法

【課題】フラグ部材をストッパなどへ当てる制御をすることなく、所定の部材の位置を特定すること。
【解決手段】大弧フラグ部44および複数の小弧フラグ部45を有するフラグ部材42を、印刷装置1内の所定の部材16を2つの所定の制御位置あるいは3つの所定の制御位置の間で切り替える駆動モータにより駆動する。センサ48は、所定の部材16が2つの所定の制御位置の間で切り替えられるときあるいは真中の所定の制御位置となるときに複数の小弧フラグ部45の配列区間を検出する。制御手段62は、駆動開始後に、センサ48の検出レベルが変化するまでのタイマ57により計測される判断時間の長さに基づいて、センサ48が複数の小弧フラグ部45の配列区間を検出しているか否かを判断し、さらにその判断結果およびセンサ48の検出レベルに基づいて所定の部材16あるいはフラグ部材42の位置を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびその所定の部材の制御位置切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プラテンギャップを調整する機構を有する印刷装置を開示する。この印刷装置は、たとえば3個のフラグを有するフラグ固着用円板部材を、異形カムとともにキャリッジ支持軸に設ける。DCモータは、キャリッジ支持軸、異形カムおよびフラグ固着用円板部材を回転させる。フラグセンサは、目標とする位置毎に設けられたフラグを1つずつ検出する。そして、目標とするフラグがフラグセンサで検出されたらDCモータを停止することで、異形カムが当接する異形カム支持軸とキャリッジ支持軸との間隔が設定され、プラテンギャップが調整される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−103835号公報(図10〜14、段落0118〜0153など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のプラテンギャップ調整機構では、たとえば電源投入時や、電源遮断などが生じたときなどにおいて、異形カムの制御開始時の位置が不明である。したがって、特許文献1のプラテンギャップ調整機構において、フラグセンサが目標とするフラグを検出しているか否かを特定するためには、その前に、たとえば回転するフラグと当接するストッパを設け、そのストッパにフラグが当接するまで駆動して、異形カムの位置を出さなければならない。また、その位置出しの後に、目標とするフラグまでのフラグの検出回数などをカウントして、目標とするフラグを検出するようにしなければならない。
【0005】
本発明は、フラグ部材をストッパなどへ当てる制御をすることなく所定の部材の位置を特定することができる印刷装置およびその所定の部材の制御位置切替方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、以下の構成を有するものである。すなわち、駆動モータは、 当該印刷装置内の所定の部材を2つの所定の制御位置あるいは3つの所定の制御位置の間で切り替えるための駆動力を発生する。フラグ部材は、駆動モータにより所定の部材とともに回転駆動される略円板形状のフラグ本体と、フラグ本体から半径方向外側へ突出する大弧フラグ部と、大弧フラグ部よりフラグ本体の回転方向での幅が狭く形成されて、大弧フラグ部を基準としてフラグ本体の回転方向の一方側に配列される複数の小弧フラグ部とを有する。センサは、所定の部材が2つの所定の制御位置の間で切り替えられるときに複数の小弧フラグ部の配列区間を検出し、あるいは所定の部材が3つの所定の制御位置の内の真中の所定の制御位置となるときに複数の小弧フラグ部の配列区間を検出する。タイマは、経過時間を計測する。そして、制御手段は、駆動モータによる所定の部材およびフラグ部材の駆動を開始させた後に、タイマにより計測される所定の長さの判断時間の間にセンサの検出レベルが変化するか否か、あるいはセンサの検出レベルが変化するまでのタイマにより計測される判断時間の長さに基づいて、センサが複数の小弧フラグ部の配列区間を検出しているか否かを判断し、さらにその判断結果およびセンサの検出レベルに基づいて所定の部材あるいはフラグ部材の位置を判断する。
【0007】
この構成を採用すれば、制御手段は、センサの検出レベルと判断時間とに基づいて、所定の部材が2つあるいは3つの所定の制御位置の間のどの位置にあるかを判断することができる。制御手段は、仮にたとえばフラグ部材をストッパなどへ当てる制御をすることなく、所定の部材の位置を特定することができる。
【0008】
本発明に係る印刷装置は、上述した発明の構成に加えて以下の構成を有するものである。すなわち、制御手段は、所定の部材を、判断した位置から所定の目標位置まで駆動するように駆動モータを駆動する。
【0009】
この構成を採用すれば、所定の部材を複数の制御位置の中の所望の位置へ切り替えることができる。
【0010】
本発明に係る印刷装置は、上述した発明の各構成に加えて以下の構成を有するものである。すなわち、所定の部材は、搬送ローラに接する当接制御位置と、搬送ローラから離間する離間制御位置との間で切り替えられる従動ローラである。また、センサは、従動ローラが当接制御位置と離間制御位置との間で切り替えられるときに複数の小弧フラグ部の配列区間を検出する。
【0011】
この構成を採用すれば、仮にたとえばフラグ部材をストッパなどへ当てる制御をすることなく、従動ローラを、搬送ローラに接する当接制御位置と、搬送ローラから離間する離間制御位置との間で切り替えることができる。
【0012】
本発明に係る印刷装置は、上述した発明の各構成に加えて以下の構成を有するものである。すなわち、印刷装置は、略平板形状に形成され、印刷媒体の搬送方向と略垂直な方向に沿った軸の周囲で回転可能に配設され、従動ローラを回転可能に保持するプラスチック樹脂製のフラップ部材と、従動ローラを搬送ローラへ圧接するようにフラップ部材に付勢力を作用させるバネ部材と、を有する。そして、制御手段は、当該印刷装置の起動時、および厚さのある印刷媒体を搬送するために離間制御位置に制御した後に所定のタイムアウト時間が経過した時に、従動ローラが当接制御位置となるように駆動モータを制御する。
【0013】
この構成を採用すれば、印刷装置の起動時、および厚さのある印刷媒体を搬送するために離間制御位置に制御した後に所定のタイムアウト時間が経過した時に、従動ローラは、当接制御位置となるように制御される。従動ローラは、バネ部材の付勢力に抗して制御される離間制御位置に、長時間にわたって保持されてしまうことはない。従動ローラは、基本的に厚みのある印刷媒体を印刷するときだけ、離間制御位置に保持される。
【0014】
したがって、フラップ部材に、離間制御位置に保持することにより作用する大きな力が長時間に渡って作用し続けてしまうことはなく、プラスチック樹脂製のフラップ部材の劣化(変形や破壊など)を効果的に抑制することができる。フラップ部材を、プラスチック樹脂で形成し、従動ローラを駆動ローラへ圧接するために使用することができる。
【0015】
本発明に係る印刷装置は、上述した発明の各構成に加えて以下の構成を有するものである。すなわち、制御手段は、駆動モータの駆動を開始する時点でのセンサの検出レベルが大弧フラグ部を検出したときのレベルと同じレベルである場合、フラグ部材を大弧フラグ部から複数の小弧フラグ部へ向かわせる方向へ駆動モータを回転させ、それ以外の検出レベルである場合、フラグ部材を複数の小弧フラグ部から大弧フラグ部へ向かう方向へ駆動モータを回転させる。
【0016】
この構成を採用すれば、駆動モータが駆動され始めた後に、センサの検出レベルは、必ず変化するようになる。制御手段は、センサの検出レベルが変化することを前提として、センサが複数の小弧フラグ部の配列区間を検出しているか否かを判断することができる。また、フラグ部材の回転のし過ぎを防止するストッパなどが設けられている場合でも、そのストッパにフラグ部材が当たってしまわないようにすることができる。
【0017】
本発明に係る印刷装置は、上述した発明の各構成に加えて以下の構成を有するものである。すなわち、制御手段は、駆動モータの駆動を開始してから、所定の区間駆動時間が経過してもセンサの検出レベルが変化しない場合、駆動モータの制御を中止し、所定のエラー処理を実行する。
【0018】
この構成を採用すれば、所定の区間駆動時間の駆動によってセンサの検出レベルの変化を得ることができない異常な状態、たとえば駆動モータによりフラグ部材および従動ローラを駆動することができないような状態では、駆動モータの制御を中止し、所定のエラー処理を実行することができる。
【0019】
本発明に係る印刷装置の所定の部材の制御位置切替方法は、印刷装置に設けられ、駆動モータの駆動により2つの所定の制御位置あるいは3つの所定の制御位置の間で切り替えられる所定の部材の制御位置切替方法である。そして、この制御位置切替方法は、略円板形状の部材のフラグ本体から半径方向外側へ突出するように大弧フラグ部および複数の小弧フラグ部がその順番で配設されたフラグ部材を、所定の部材が2つの所定の制御位置の間で切り替えられるときにあるいは所定の部材が3つの所定の制御位置の内の真中の所定の制御位置となるときに複数の小弧フラグ部の配列区間がセンサにより検出されるように、駆動モータにより所定の部材とともに回転駆動するステップと、駆動開始後のタイマにより計測される所定の長さの判断時間の間にセンサの検出レベルが変化するか否か、あるいはセンサの検出レベルが変化するまでのタイマにより計測される判断時間の長さに基づいて、センサが複数の小弧フラグ部の配列区間を検出しているか否かを判断するステップと、センサが複数の小弧フラグ部の配列区間を検出していない場合、センサの検出レベルに応じて所定の部材の位置あるいはフラグ部材の位置を判断するステップと、を有するものである。
【0020】
この方法を採用すれば、センサの検出レベルと判断時間とに基づいて、所定の部材が2つあるいは3つの所定の制御位置の間のどの位置にあるかを判断することができる。仮にたとえばフラグ部材をストッパなどへ当てる制御をすることなく、所定の部材の位置を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る印刷装置およびその所定の部材の制御位置切替方法を、図面に基づいて説明する。印刷装置は、インクジェットプリンタを例として説明する。印刷装置の所定の部材の制御位置切替方法は、PF従動ローラの位置を制御する動作の一部として説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1を示す構成図である。インクジェットプリンタ1は、図示外のコンピュータなどから印刷データが供給されると、給紙トレイ11に載置されている用紙などの印刷媒体Pをキャリッジ21とプラテン17との間の印刷領域まで搬送し、印刷領域にある印刷媒体Pをキャリッジ21で走査してインクを吐出し、さらにインクが付着した印刷媒体Pを排紙トレイ20まで搬送することで印刷を実行する。
【0023】
インクジェットプリンタ1において印刷媒体Pを走査してインクを吐出するインク吐出機構は、キャリッジ21を有する。キャリッジ21は、プラテン17の上方において図1の紙面に垂直な方向(以下、主走査方向とよぶ。)に沿って配設されるキャリッジ軸22により、その軸方卯へ移動可能に保持される。キャリッジ21には、プラテン17と対向する側面に、記録ヘッド23が設けられる。記録ヘッド23は、複数のインク吐出ノズル24を有する。複数のインク吐出ノズル24内には、キャリッジ21上部に配設されるインクタンク25から供給されるインクが充填される。また、各インク吐出ノズル24内には、印加された電圧に応じて変形する図示外のピエゾ素子が配設される。キャリッジ21は、図示外のCR(キャリッジ)モータにより主走査方向へ直線駆動される。
【0024】
インクジェットプリンタ1において印刷媒体Pを搬送する搬送機構は、給紙トレイ11と一体的に設けられるホッパ12と、LD(ロード)ローラ13と、搬送ローラとしてのPF(ペーパフィード)ローラ15と、所定の部材および従動ローラとしてのPF従動ローラ16と、排紙ローラ18と、排紙従動ローラ19と、を有する。
【0025】
LDローラ13は、給紙トレイ11と対向して配設される。PFローラ15とPF従動ローラ16とは、給紙トレイ11とプラテン17との間において、互いに圧接可能に配設される。PFローラ15と給紙トレイ11との間には、印刷媒体Pの搬送方向を規制するガイド部材14が配設される。排紙ローラ18と排紙従動ローラ19とは、プラテン17と排紙トレイ20との間において、互いに圧接されて配設される。LDローラ13、PFローラ15および排紙ローラ18は、図示外のギアユニットを介して、図示外のPFモータにより回転駆動される。
【0026】
ところで、PFローラ15は、たとえば金属材料を円柱形状に形成したものであり、その円柱軸方向が図1の紙面と略垂直となる向きで回転可能に配設される。円柱形状の金属棒の外周面には、すべり止め用のセラミック製の粒子が外周面に微小な凸凹を形成するように固着している。また、PF従動ローラ16は、たとえばゴムなどの弾性材料からなるチューブに、円柱形状の軸材を挿入した構造を有する。
【0027】
PF従動ローラ16は、フラップ部材31により回転可能に保持される。フラップ部材31は、所謂POM(ポリオキシメチレン)材などのエンジニアリングプラスチック材料を、略平板形状に形成したものである。キャリッジ軸22とLDローラ13との間には、図1の紙面に垂直な方向に沿ってフラップ軸32が配設される。フラップ部材31は、その略中央部分において、フラップ軸32により回転可能に保持される。PF従動ローラ16は、フラップ部材31の、印刷媒体Pの搬送方向下流側(図1において左側)の端部に、PFローラ15と当接できるように配設される。
【0028】
また、フラップ軸32には、バネ部材としての巻バネ33が配設される。巻バネ33は、その一端部がインクジェットプリンタ1のフレーム34に当たり、他端がフラップ部材31の図1における上面に当たるように配設される。巻バネ33は、この配設状態において圧縮されており、フレーム34を基準としてフラップ部材31を押し下げる向きの付勢力を作用する。
【0029】
このようなPFローラ15とPF従動ローラ16との組合せおよび配設構造とすることで、PF従動ローラ16は、PFローラ15に強い力で圧接される。PF従動ローラ16は、その外周部の弾性部が押しつぶされて変形した状態で、PFローラ15に圧接される。その結果、PFローラ15による印刷媒体Pの搬送能力は、LDローラ13の搬送能力や排紙ローラ18の搬送能力に比べて高くなる。印刷媒体Pの搬送量は、PFローラ15の回転量に好適に追従するようになる。このときのPF従動ローラ16の位置が当接制御位置となる。
【0030】
PF従動ローラ16がPFローラ15に圧接されている状態でのフラップ部材31の、印刷媒体Pの搬送方向上流側の端部の上側には、カム部材36が配設される。巻バネ33により押し下げられるフラップ部材31は、カム部材36に当接する。カム部材36は、図1の紙面に垂直な方向のカム軸37の周囲で回転可能に配設される。カム部材36は、カム軸37を基準として一方向へ突出する大径部38を有する。巻バネ33の付勢力に抗してカム部材36を回転させ、この大径部38が図1において下向きとなるように制御すると、フラップ部材31の、印刷媒体Pの搬送方向上流側の端部は、押し下げられる。これにより、フラップ部材31の、印刷媒体Pの搬送方向下流側の端部に配設されるPF従動ローラ16は、持上げられ、PFローラ15から離間する。このときのPF従動ローラ16の位置が離間制御位置となる。
【0031】
カム部材36は、駆動モータとしてのレリースモータ41により駆動される。レリースモータ41は、たとえばDCモータである。レリースモータ41は、この他にもたとえばステッピングモータなどのパルスモータであってもよい。
【0032】
レリースモータ41は、カム部材36とともに、フラグ部材42を回転駆動する。フラグ部材42は、略円板形状のフラグ本体43を有する。フラグ本体43には、フラグ本体43から半径方向外側に突出するように、大弧フラグ部44と、複数の小弧フラグ部45とが設けられる。小弧フラグ部45は、フラグ本体の回転方向での幅が大弧フラグ部44より狭く形成される。また、小弧フラグ部45は、大弧フラグ部44のフラグ本体43への配設位置を基準として、フラグ本体の回転方向の一方側(図1では、後述するリトラクトリミッタ46側)に配列される。フラグ部材42は、たとえば光を透過しない黒色のエンジニアリングプラスチック材料などにより形成される。フラグ部材42は、インクジェットプリンタ1に回転可能に配設される。
【0033】
フラグ本体43の周囲には、フラグ本体43を回転させたときにフラグ部44と当接する位置に、ストッパの一種としてのホームストッパ46と、ストッパの一種としてのリトラクトストッパ47とが配設される。ホームストッパ46は、図1においてフラグ本体43の上側に配設される。リトラクトストッパ47は、図1においてフラグ本体43の上側に配設される。このようなホームストッパ46やリトラクトストッパ47を設けることで、フラグ部材42およびそれとともに駆動されるPF従動ローラ16が、想定外の位置へ駆動されてしまわないようにすることができる。
【0034】
フラグ本体43の周囲には、さらに、センサとしてのフラグセンサ48が配設される。フラグセンサ48は、図示外の発光素子と受光素子とが離間して対向配置される透過式光学センサである。フラグ本体43が回転すると、大弧フラグ部44と複数の小弧フラグ部45とが発光素子と受光素子の間を順番に通過する。受光素子は、受光光量に応じたレベル信号を出力する。このレベル信号は、受光光量があるときハイレベルとなり、受光光量が無いときローレベルとなる。
【0035】
図2は、図1中のフラグセンサ48の検出レベルと、カム部材36の姿勢との設定関係を示す説明図である。(A)は、フラグセンサ48の検出レベルである。(B)は、カム部材36の姿勢である。(B)の波形では、ハイレベルがカム部材36の大径部38によりフラップ部材31を押し下げている状態に対応し、ローレベルがカム部材36の大径部38によりフラップ部材31を押し下げていない状態に対応する。カム部材36の大径部38によりフラップ部材31を押し下げているとき、PF従動ローラ16は、PFローラ15から離間する離間制御位置にある。カム部材36の大径部38によりフラップ部材31を押し下げていないとき、PF従動ローラ16は、PFローラ15に圧接される当接制御位置にある。
【0036】
図2に示すように、フラグ部材42は、フラグ部44がホームストッパ46に当接する位置から、リトラクトストッパ47に当接する位置まで回転可能である。また、この間、フラグセンサ48の検出レベルは、大弧フラグ部44および複数の小弧フラグ部45の検出状態に応じて、ローレベルとハイレベルとの間で変化する。
【0037】
フラグ部44がホームストッパ46に当接する側(図2では左側)での、検出レベルがローレベルとなる期間では、PF従動ローラ16は当接制御位置に制御される。フラグ部44がリトラクトストッパ47に当接する側(図2では右側)での、検出レベルがハイレベルとなる期間では、PF従動ローラ16は離間制御位置に制御される。また、検出レベルがハイレベルとローレベルとの間で繰り返し変化する中央部分での期間中に、PF従動ローラ16の制御位置は、当接制御位置と離間制御位置との間で切り替わる。
【0038】
そして、この実施の形態では、フラグ部材42の位置を制御するために、フラグ部44がホームストッパ46に当接する側(図2では左側)での、検出レベルがローレベルとなる期間中に、フラグ部材42のホーム検出位置を設定する。フラグ部44がリトラクトストッパ47に当接する側(図2では右側)での、検出レベルがハイレベルとなる期間中に、フラグ部材42のリトラクト検出位置を設定する。また、検出レベルがハイレベルとローレベルとの間で繰り返し変化する期間中に、フラグ部材42の中間検出位置を設定する。
【0039】
なお、これらホーム検出位置、中間検出位置およびリトラクト検出位置は、フラグ部材42の位置制御の際に目標とされる検出位置であり、実際の制御によりフラグ部材42が停止する位置は、図2に示す対応関係での位置になるとは限らない。フラグ部材42を所望の検出位置へ制御したとしても、フラグ部材42の駆動制御後の実際の停止位置は、図2に示す3つの検出位置からずれていることもある。
【0040】
説明を図1に戻す。インクジェットプリンタ1は、上述した機構部材の他にも、電源スイッチ51、通信I/F(Inter Face)52、モータドライバ53、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)54、マイクロコンピュータ55、メモリIC56、タイマIC57などを有する。
【0041】
電源スイッチ51は、たとえばオン状態とオフ状態とに切替可能なプッシュスイッチである。なお、電源スイッチ51の替わりにリセットスイッチなどを設けてもよい。
【0042】
通信I/F52は、たとえばUSBケーブルなどを接続する図示外のコネクタを有する。通信I/F52は、このUSBケーブルなどにより、図示外のパーソナルコンピュータに接続される。パーソナルコンピュータは、ユーザが選択した文章や画像を印刷するための印刷データを生成し、USBケーブルを介して通信I/F52へ送信する。パーソナルコンピュータが生成する印刷データには、PostScript、HP−PCL、LIPS、ESC/P、PRESCRIBEなどのページ記述言語で記述された印刷データがある。
【0043】
なお、通信I/F52は、ケーブルにより有線通信をするものであっても、無線通信をするものであってもよい。また、通信I/F52は、DSC(Digital Still Camera)などと通信するものであってもよい。DSCは、画像を印刷するために、Pict Bridge、Direct Print Serviceなどの規格に準拠した形式の印刷データを生成し、送信する。
【0044】
モータドライバ53は、アナログ波形の制御信号を生成し、レリースモータ41などへ出力する。レリースモータ41などの駆動モータは、この制御信号に基づいてカム部材36などを駆動する。なお、インクジェットプリンタ1に設けられる駆動モータとしては、レリースモータ41の他に、たとえば図示外のPFモータ、図示外のCRモータなどがある。モータドライバ53は、これらのモータに対しても制御信号を出力する。
【0045】
ASIC54は、マイクロコンピュータの一種であり、たとえば図示外のCPU(Central Processing Unit)、図示外のI/O(入出力)ポート、メモリ58などを有する。ASIC54のI/Oポートには、電源スイッチ51、通信I/F52、モータドライバ53、マイクロコンピュータ55などが接続される。
【0046】
ASIC54のメモリ58は、たとえば図示外のDCユニットプログラムや、フラグセンサ48の検出データ59などを記憶する。検出データ59は、フラグセンサ48の検出レベルに応じた値に更新されるものであり、検出レベルがハイレベルであるときの値と、ローレベルであるときの値とをとる。
【0047】
ASIC54のCPUがDCユニットプログラムを読み込んで実行することで、ASIC54には、DCユニット61が実現される。DCユニット61は、モータドライバ53などへデジタル値に基づく制御データや制御信号を出力する。
【0048】
メモリIC56は、たとえばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)などで構成される。メモリIC56は、フラグ部材42の制御開始前の検出位置を示す開始前検出データ60を記憶する。開始前検出データ60は、レリースモータ41の初期位置出し処理の際に利用されるものであり、検出データ59の値に基づいて更新される。
【0049】
タイマIC57は、時間を計測する。
【0050】
マイクロコンピュータ55は、図示外のCPU、図示外のI/Oポート、図示外のメモリなどを有する。マイクロコンピュータ55のI/Oポートには、ASIC54、メモリIC56、タイマIC57などが接続される。マイクロコンピュータ55の図示外のメモリには、図示外のプリンタ制御プログラムなどが記憶される。なお、プリンタ制御プログラムなどは、メモリIC56などに記憶されていてもよい。マイクロコンピュータ55のCPUがプリンタ制御プログラムを読み込んで実行することで、マイクロコンピュータ55には、制御手段の一部としてのリセット制御部62、印刷制御部63、制御手段の一部としての状態管理部64などが実現される。
【0051】
リセット制御部62は、PF従動ローラ16を当接制御位置へ制御する初期化シーケンスなどを実行する。リセット制御部62は、ASIC54のDCユニット61に、フラグ部材42をホーム検出位置へ駆動するための制御データや制御信号を出力させる。
【0052】
印刷制御部63は、印刷データに基づいて図示外のPFモータおよび図示外のCRモータの駆動などを制御する。印刷制御部63は、印刷データ中の用紙種データなどに基づいて次に実行する印刷が厚紙への印刷であると判断すると、ASIC54のDCユニット61に、フラグ部材42をホーム検出位置からリトラクト検出位置へ駆動するための制御データや制御信号を出力させる。また、印刷制御部63は、ASIC54のDCユニット61に、図示外のPFモータや図示外のCRモータを駆動するための制御データや制御信号を出力させる。また、印刷制御部63は、記録ヘッド23の複数のインク吐出ノズル24内の複数のピエゾ素子に対して、印刷データに基づく波形の電圧を印加させる。
【0053】
状態管理部64は、印刷時に離間制御位置へ駆動されたPF従動ローラ16を、たとえば所定のタイムアウト時間の経過の後に、当接制御位置へ設定するシーケンスなどを実行する。実際には、状態管理部64は、ASIC54のDCユニット61に、フラグ部材42をリトラクト検出位置からホーム検出位置へ駆動するための制御データや制御信号を出力させる。
【0054】
なお、ASIC54のメモリ58に記憶される図示外のDCユニットプログラムや、マイクロコンピュータ55のメモリなどに記憶される図示外のプリンタ制御プログラムは、インクジェットプリンタ1の出荷前にこれらのメモリに記憶されているものであっても、インクジェットプリンタ1の出荷後にこれらのメモリに記憶されているものであってもよい。また、これらのプログラムの一部が、インクジェットプリンタ1の出荷後にこれらのメモリに記憶されているものであってもよい。インクジェットプリンタ1の出荷後にこれらのメモリに記憶されるこれらのプログラムは、たとえばCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されたものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体などを介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0055】
次に、以上の構成を有する図1のインクジェットプリンタ1の動作を説明する。
【0056】
電源スイッチ51が操作され、インクジェットプリンタ1に電源が投入されると、ASIC54にはDCユニット61などが実現され、マイクロコンピュータ55には、リセット制御部62、印刷制御部63、状態管理部64などが実現される。また、ASIC54は、フラグセンサ48の検出レベルを周期的にサンプリングし、そのサンプリングしたレベルに基づいて検出データ59を更新する。検出データ59は、フラグセンサ48の検出レベルがハイレベルであるとき、ハイレベルの値へ更新され、フラグセンサ48の検出レベルがローレベルであるとき、ローレベルの値へ更新される。
【0057】
図3は、図1中のリセット制御部62が、インクジェットプリンタ1の電源投入時および電源遮断後の復帰時に実行する初期化シーケンスを示すフローチャートである。図4は、図3中のフラグ変化後処理のサブルーチンを示すフローチャートである。リセット制御部62は、この初期化シーケンスを実行することで、異常を検出することが無い限り、フラグ部材42をホーム検出位置に制御する。
【0058】
なお、フラップ部材31やフラグ部材42は、インクジェットプリンタ1の内部に配設される。したがって、フラップ部材31の位置やフラグ部材42の位置は、基本的に、ユーザなどが故意に手をいれて動かそうとしないかぎり、制御された位置から動いてしまうことは無い。しかしながら、インクジェットプリンタ1を制御するに当たっては、そのような通常はありえない動きがあったとしても、フラグ部材42をホーム検出位置に制御できるようにする必要がある。図3の初期化シーケンスは、そのような制御を実現する。
【0059】
まず、フラグ部材42がホーム検出位置に制御され、その状態のまま、電源が投入されたり、復旧がなされたりする正常な場合での初期化処理について説明する。この場合、フラグセンサ48は、フラグ部材42のフラグ部44を検出しておらず、ASIC54のメモリ58に記憶される検出データ59は、ローレベルの値に更新され続ける。
【0060】
初期化シーケンスにおいてリセット制御部62は、まず、ASIC54のメモリ58から検出データ59を読み込み、メモリIC56に記憶される開始前検出データ60の値を、検出データ59のレベルの値に更新する(ステップST1)。次に、リセット制御部62は、検出データ59がローレベルの値であるか否かを判断する(ステップST2)。検出データ59がハイレベルの値であるとき、フラグセンサ48によりフラグ部材42の大弧フラグ部44あるいは小弧フラグ部45が検出されている。実際には、ASIC54のメモリ58に記憶される検出データ59は、ローレベルの値である。リセット制御部62は、検出データ59がローレベルの値であると判断する。
【0061】
検出データ59がローレベルの値であると判断したリセット制御部62は、レリースモータ41の駆動制御を開始する。リセット制御部62は、フラグ部材42をホーム検出位置からリトラクト検出位置へ向かって回転するように、レリースモータ41の駆動制御を開始する(ステップST3)。リセット制御部62は、ASIC54のDCユニット61に対して、フラグ部材42をホーム検出位置から中間検出位置へ駆動する駆動方向(CW方向)と、駆動力の大きさと、所定の区間駆動時間とを指定する。この区間駆動時間は、たとえば図2においてフラグ部材42をホーム検出位置から中間検出位置までの1区間を駆動するために必要な時間である。
【0062】
DCユニット61は、指定された駆動方向および駆動力の大きさに基づく制御データや制御信号を、モータドライバ53へ出力する。モータドライバ53は、アナログ波形の制御信号を生成し、レリースモータ41などへ出力する。レリースモータ41は、この制御信号に基づいてフラグ部材42およびカム部材36を回転駆動する。モータドライバ53は、DCユニット61に指定された区間駆動時間が経過すると、制御データや制御信号の出力を停止する。レリースモータ41は、フラグ部材42およびカム部材36の回転駆動を終了する。
【0063】
フラグ部材42およびカム部材36は、この区間駆動時間において回転する。これにより、フラグ部材42は、ホーム検出位置から中間検出位置へ駆動される。この間、フラグ部材42の小弧フラグ部45が、フラグセンサ48の図示外の発光素子と受光素子との間を通過する。あるいは、小弧フラグ部45は、フラグセンサ48の図示外の発光素子と受光素子との間で停止する。フラグセンサ48が小弧フラグ部45を検出すると、ASIC54は、メモリ58に記憶する検出データ59を、ハイレベルの値へ更新する。
【0064】
レリースモータ41の駆動を開始したリセット制御部62は、タイマIC57に、所定の区間駆動時間の計測を開始させる(ステップST4)。タイマIC57に所定の区間駆動時間の計測を開始させた後、リセット制御部62は、その所定の区間駆動時間が経過するまで、ASIC54の検出データ59を監視する(ステップST5およびST6)。リセット制御部62は、たとえば検出データ59を所定の短い周期で繰り返し取得することで、検出データ59を監視する。そして、新たに取得した最新の検出データ59が開始前検出データ60の値と一致しなくなったら、リセット制御部62は、タイマIC57による区間駆動時間の計測を終了させ(ステップST8)、ホーム検出位置への駆動制御を続行する。
【0065】
なお、繰り返し取得する新しい検出データ59の値が開始前検出データ60の値と一致するまでに所定の区間駆動時間が経過すると(ステップST5でYes)、リセット制御部62は、レリースモータ41の制御を中止し、エラー処理を実行する(ステップST7)。エラー処理では、インクジェットプリンタ1は、たとえば所定のエラーを表示や音などにより報知する。なお、このエラー通知が、インクジェットプリンタ1からパーソナルコンピュータへ送信され、パーソナルコンピュータにおいて、所定のエラーの報知がなされてもよい。
【0066】
所定の区間駆動時間が経過する前にASIC54の検出データ59の値が開始前検出データ60の値と一致しなくなり(ステップST6でYes)、タイマIC57による区間駆動時間の計測を終了させた後(ステップST8)、リセット制御部62は、フラグ変化後処理を実行する(ステップST9)。フラグ変化後処理の詳細は、図4に示される。
【0067】
図4のフラグ変化後処理では、リセット制御部62は、まず、タイマIC57に、所定の判断時間の計測を開始させる(ステップST21)。この判断時間は、たとえば図2に示すように、小弧フラグ部45がフラグセンサ48の検出位置を通過する期間より長い時間であって、且つ、小弧フラグ部45の検出周期の1周期分より短い時間に設定される。リセット制御部62は、その判断時間が経過すると(ステップST22)、ASIC54の検出データ59が開始前検出データ60の値と一致するように変化したか否かを判断する(ステップST23)。
【0068】
ASIC54の検出データ59が開始前検出データ60の値と一致するように変化した場合、リセット制御部62は、検出データ59が開始前検出データ60の値と一致すると判断し(ステップST23でYes)、フラグ部材42の現在位置が中間検出位置であると判断する(ステップST24)。図3のステップST6において検出データ59の最初の変化が検出され、且つ、判断時間の後のステップST23において二回目の変化が検出される場合、その判断時間内での検出データの変化は、小弧フラグ部45がフラグセンサ48を通過したことによる変化である。また、制御前のフラグ部材42の位置がホーム検出位置である場合、最初の小弧フラグ部45が通過することにより、この二回の検出データ59の変化が生じる。リセット制御部62は、フラグ部材42の現在位置が中間検出位置であると判断した後、タイマIC57による制御時間の計測を終了させ(ステップST25)、処理を図3のメインシーケンスに戻す。
【0069】
処理を図3へ戻したリセット制御部62は、判断した検出位置(ここでは中間検出位置)からホーム検出位置への区間駆動制御を実行する(ステップST10)。リセット制御部62は、レリースモータ41が駆動されている場合には、その駆動を停止し、ASIC54のDCユニット61に対して、フラグ部材42を中間検出位置からホーム検出位置へ駆動する駆動方向と、駆動力の大きさと、所定の区間駆動時間とを指定する。なお、レリースモータ41の駆動停止制御は、図4のステップST22において判断時間が経過したと破断したときに実行するようにしてもよい。
【0070】
DCユニット61は、指定された駆動方向および駆動力の大きさに基づく制御データや制御信号を、モータドライバ53へ出力する。モータドライバ53は、アナログ波形の制御信号を生成し、レリースモータ41などへ出力する。レリースモータ41は、この制御信号に基づいてフラグ部材42およびカム部材36を回転駆動する。モータドライバ53は、DCユニット61に指定された区間駆動時間が経過すると、制御データや制御信号の出力を停止する。レリースモータ41は、フラグ部材42およびカム部材36の回転駆動を終了する。
【0071】
これにより、フラグ部材42は、中間検出位置からホーム検出位置へ駆動される。PF従動ローラ16は、PFローラ15に圧接される当接制御位置に制御される。また、ホーム検出位置では、フラグセンサ48により、小弧フラグ部45および大弧フラグ部44は検出されない。メモリ58に記憶する検出データ59は、ASIC54によりローレベルの値へ更新される。
【0072】
以上の処理により、フラグ部材42がホーム検出位置に制御され、その状態のまま電源が投入されたり、復旧がなされたりする場合での、リセット制御部62による初期化シーケンスが終了する。
【0073】
なお、上述したように、リセット制御部62が初期化シーケンスを実行するとき、通常は、フラグ部材42がホーム検出位置に制御されている。しかしながら、たとえばインクジェットプリンタ1の電源が遮断された場合などにおいてその復帰をする時などにあっては、フラグ部材42が中間検出位置やリトラクト検出位置にある可能性がある。以下、それらの場合でのリセット制御部62の初期化動作を詳しく説明する。
【0074】
まず、フラグ部材42がリトラクト検出位置にある状態でたとえば電源遮断などにより停止し、その後、電源が投入されたり、復旧がなされたりする場合での初期化シーケンスを説明する。この場合、制御開始時点では、フラグセンサ48は、フラグ部材42の大弧フラグ部44を検出する。ASIC54のメモリ58に記憶される検出データ59は、ハイレベルの値となる。
【0075】
フラグセンサ48がフラグ部材42の大弧フラグ部44を検出し、ASIC54のメモリ58に記憶される検出データ59がハイレベルの値である場合、リセット制御部62は、まず、ASIC54のメモリ58から検出データ59を読み込み、開始前検出データ60をハイレベルに更新する(図3のステップST1)。また、リセット制御部62は、検出データがハイレベルであると判断し(ステップST2)、レリースモータ41をCCW方向へ駆動する区間駆動制御を指示する(ステップST11)。これにより、レリースモータ41は、フラグ部材42およびカム部材36の駆動を開始する。フラグ部材42は、リトラクト検出位置側からホーム検出位置側へ向かって回転駆動される。
【0076】
また、リセット制御部62は、タイマIC57に所定の区間駆動時間を計測させる(図3のステップST4)。リセット制御部62は、タイマIC57によりその区間駆動時間が計測される前に検出データ59の値が開始前検出データ60の値と一致しなくなったら、つまりハイレベルからローレベルへ変化したら(ステップST6でYes)、タイマIC57の計測を停止し(ステップST8)、フラグ変化後処理を実行する(ステップST9)。
【0077】
フラグ変化後処理では、図4に示すように、リセット制御部62は、タイマIC57により判断時間が計測されると(ステップST21およびST22)、検出データ59の値と開始前検出データ60の値との一致判断を実行する(ステップST23)。
【0078】
制御開始前のフラグ部材42の位置がリトラクト検出位置である場合、フラグセンサ48の検出レベルの変化は、大弧フラグ部44と小弧フラグ部45との間と、小弧フラグ部45との検出により変化する。判断時間後には、検出データ59の値は、開始前検出データ60の値と一致するようにハイレベルへ変化する。リセット制御部62は、検出データ59と開始前検出データ60の値とが一致すると判断し(図4のステップST23でYes)、フラグ部材42の現在位置が中間検出位置であると判断する(ステップST24)。リセット制御部62は、タイマIC57による制御時間の計測を終了させ(ステップST25)、処理を図3のメインシーケンスに戻す。リセット制御部62は、判断した現在位置(ここでは中間検出位置)からホーム検出位置への区間駆動制御を実行する(ステップST10)。
【0079】
以上の処理により、フラグ部材42がリトラクト検出位置に制御された状態でたとえば電源遮断などにより停止し、その後、電源が投入されたり、復旧がなされたりする場合での、リセット制御部62による初期化シーケンスが終了する。この初期化シーケンスを正常に終了した時点では、フラグ部材42はホーム検出位置にある。
【0080】
次に、フラグ部材42が中間検出位置にある状態でたとえば電源遮断などにより停止し、その後、電源が投入されたり、復旧がなされたりする場合での初期化シーケンスを説明する。この場合、フラグセンサ48は、制御開始時点において、フラグ部材42の小弧フラグ部45を検出するか、あるいは隣接する2つの小弧フラグ部45の間や小弧フラグ部45と大弧フラグ部44との間を検出する。フラグセンサ48がフラグ部材42の小弧フラグ部45を検出する場合、ASIC54のメモリ58に記憶される検出データ59は、ハイレベルの値となる。フラグセンサ48が隣接する2つの小弧フラグ部45の間や小弧フラグ部45と大弧フラグ部44との間を検出する場合、ASIC54のメモリ58に記憶される検出データ59は、ローレベルの値となる。
【0081】
まず、制御開始時点において、フラグセンサ48がフラグ部材42の小弧フラグ部45を検出している場合、リセット制御部62は、まず、ASIC54のメモリ58からハイレベルの値の検出データ59を読み込み、開始前検出データ60をハイレベルに更新し(図3のステップST1)。また、リセット制御部62は、検出データがハイレベルであると判断し(ステップST2)、レリースモータ41をCCW方向へ駆動する区間駆動制御を指示する(ステップST11)。これにより、レリースモータ41は、フラグ部材42およびカム部材36の駆動を開始する。フラグ部材42は、リトラクト検出位置側からホーム検出位置側へ向かって回転駆動される。
【0082】
また、リセット制御部62は、タイマIC57に所定の区間駆動時間を計測させ(図3のステップST4)、その区間駆動時間が経過する前に検出データ59の値が開始前検出データ60の値と一致しなくなったら、つまりローレベルとなったら(ステップST6でYes)、タイマIC57の計測を停止し(ステップST8)、フラグ変化後処理を実行する(ステップST9)。フラグ変化後処理では、図4に示すように、リセット制御部62は、タイマIC57により判断時間が計測されると(ステップST21およびST22)、検出データ59の値と開始前検出データ60の値との一致判断を実行する(ステップST23)。
【0083】
制御開始時点において、フラグセンサ48がフラグ部材42の小弧フラグ部45を検出している場合においてCCW方向へ駆動したとき、フラグセンサ48は、判断時間後に、最初に検出していた小弧フラグ部45の隣りの小弧フラグ部45を検出するか、あるいはフラグ部材42の位置がホーム検出位置となってしまって小弧フラグ部45を検出しなくなる。
【0084】
そして、フラグセンサ48が判断時間後に隣りの小弧フラグ部45を検出する場合、検出データ59の値は、開始前検出データ60の値と一致するようにハイレベルへ変化する。この場合、リセット制御部62は、フラグ部材42の現在位置が中間検出位置であると判断し(図4のステップST24)、タイマIC57による制御時間の計測を終了させる(ステップST25)。リセット制御部62は、図3の処理に戻り、判断した現在位置(ここでは中間検出位置)からホーム検出位置への区間駆動制御を実行する(ステップST10)。
【0085】
また、フラグ部材42の位置がホーム検出位置となってしまい、フラグセンサ48が判断時間後に小弧フラグ部45を検出しない場合、リセット制御部62は、検出データ59の値が開始前検出データ60の値と一致しないと判断し(図4のステップST23でNo)、さらに、検出データ59がローレベルであるか否かを判断する(ステップST26)。リセット制御部62は、検出データ59はローレベルであると判断する。
【0086】
検出データ59がローレベルであると判断すると(図4のステップST26でYes)、リセット制御部62は、フラグ部材42の現在位置はホーム検出位置であると判断し(ステップST27)、タイマIC57による制御時間の計測を終了させる(ステップST25)。リセット制御部62は、処理を図3に戻し、判断した現在位置(ここではホーム検出位置)からホーム検出位置への区間駆動制御を実行する(ステップST10)。
【0087】
なお、このホーム検出位置からホーム検出位置への区間駆動制御では、リセット制御部62は、具体的な制御を実行しなくとも、あるいはたとえばホーム検出位置から中間検出位置への区間駆動制御と、中間検出位置からホーム検出位置への区間駆動制御との二段階の区間駆動制御を実行するようにしてもよい。
【0088】
次に、制御開始時点において、フラグセンサ48が隣接する2つの小弧フラグ部45の間あるいは小弧フラグ部45と大弧フラグ部44との間を検出している場合について説明する。リセット制御部62は、まず、ASIC54のメモリ58から検出データ59を読み込み、開始前検出データ60をローレベルに更新し(図3のステップST1)。検出データがローレベルであると判断し(ステップST2)、レリースモータ41をCW方向へ駆動する区間駆動制御を指示する(ステップST3)。これにより、レリースモータ41は、フラグ部材42およびカム部材36の駆動を開始する。フラグ部材42は、ホーム検出位置側からリトラクト検出位置側へ向かって回転駆動される。
【0089】
また、リセット制御部62は、タイマIC57に所定の区間駆動時間を計測させ(図3のステップST4)、その区間駆動時間が経過する前に検出データ59の値が開始前検出データ60の値と一致しなくなったら、つまりハイレベルとなったら(ステップST6でYes)、タイマIC57の計測を停止し(ステップST8)、フラグ変化後処理を実行する(ステップST9)。フラグ変化後処理では、図4に示すように、リセット制御部62は、タイマIC57により判断時間が計測されると(ステップST21およびST22)、検出データ59の値と開始前検出データ60の値との一致判断を実行する(ステップST23)。
【0090】
制御開始時点において、フラグセンサ48が隣接する2つの小弧フラグ部45の間を検出している場合においてCW方向へ駆動したとき、フラグセンサ48は、判断時間後に、最初に検出していた2つの小弧フラグ部45の間の隣りの間か、あるいは小弧フラグ部45と大弧フラグ部44との間を検出する。検出データ59の値は、開始前検出データ60の値と一致するようにローレベルへ変化する。この場合、リセット制御部62は、検出データ59の値が開始前検出データ60の値と一致すると判断し(図4のステップST23でYes)、フラグ部材42の現在位置が中間検出位置であると判断し(ステップST24)、タイマIC57による制御時間の計測を終了させる(ステップST25)。リセット制御部62は、図3の処理に戻り、判断した現在位置(ここでは中間検出位置)からホーム検出位置への区間駆動制御を実行する(ステップST10)。
【0091】
また、制御開始時点において、フラグセンサ48が小弧フラグ部45と大弧フラグ部44との間を検出している場合、フラグセンサ48は、判断時間後に、大弧フラグ部44を検出する。検出データ59の値は、ハイレベルのままとなり、開始前検出データ60の値と一致しない。この場合、リセット制御部62は、検出データ59の値が開始前検出データ60の値と一致しないと判断し(図4のステップST23でNo)、さらに、検出データ59はローレベルであるか否かを判断する(ステップST26)。リセット制御部62は、検出データ59はローレベルでないと判断する。
【0092】
検出データ59がローレベルでないと判断すると(図4のステップST26でNo)、リセット制御部62は、フラグ部材42の現在位置はリトラクト検出位置であると判断し(ステップST28)、タイマIC57による制御時間の計測を終了させる(ステップST25)。リセット制御部62は、処理を図3に戻し、判断した現在位置(ここではリトラクト検出位置)からホーム検出位置への区間駆動制御を実行する(ステップST10)。
【0093】
以上のように、リセット制御部62は、インクジェットプリンタ1の電源投入時および電源遮断後の復帰時に図3および図4の初期化シーケンスを実行する。これにより、リセット制御部62は、その初期化シーケンスの実行中に異常を検出したりすることが無いかぎり、フラグ部材42をホーム検出位置に制御する。
【0094】
リセット制御部62による初期化処理などが完了すると、インクジェットプリンタ1は、印刷データの受信待ち状態となる。通信I/F52が印刷データを受信すると、受信された印刷データは、ASIC54を経由してマイクロコンピュータ55へ供給される。マイクロコンピュータ55の印刷制御部63は、印刷シーケンスを実行する。
【0095】
印刷シーケンスにおいて、印刷制御部63は、まず、印刷データ有りを判断する。次に、印刷制御部63は、受信した印刷データ中の用紙種データなどを確認し、印刷をする印刷媒体Pが厚紙であるか否かを判断する。厚紙には、たとえばダンボール用紙などがある。そして、印刷をする印刷媒体Pがたとえば普通紙などであり、厚紙ではない場合、印刷制御部63は、印刷データに基づく印刷制御を開始する。
【0096】
印刷制御において、印刷制御部63は、まず、DCユニット61に給紙を指示する。DCユニット61は、PFモータの駆動を制御し、給紙トレイ11上の印刷媒体Pを、印刷領域まで、LDローラ13およびPFローラ15により搬送させる。
【0097】
印刷領域への給紙処理を終えると、印刷制御部63は、DCユニット61に印字処理を指示する。具体的にはたとえば、印刷制御部63は、DCユニット61に、図示外のCRモータの駆動を指示するとともに、印刷データに基づく駆動波形データを供給する。DCユニット61は、CRモータの駆動を制御する。また、DCユニット61は、駆動波形データに基づく波形の電圧を複数のピエゾ素子に印加する。これにより、印刷媒体Pの、印刷領域に供給される部位には、インクにより印刷がなされる。
【0098】
インク吐出処理を終えると、印刷制御部63は、DCユニット61に紙送りを指示する。DCユニット61は、PFモータの駆動を制御する。印刷領域に給紙されている印刷媒体Pは、LDローラ13およびPFローラ15により所定の紙送り量で搬送する。その結果、印刷領域には、印刷媒体Pのたとえば未印刷部分が設定される。
【0099】
その後、印刷制御部63は、たとえば印刷データが終わるまで、DCユニット61に対して印字処理と紙送り処理とを繰り返し指示する。また、たとえば印刷データが終わると、印刷制御部63は、DCユニット61に対して排紙処理を指示する。DCユニット61は、PFモータの駆動を制御する。印刷領域に給紙されている印刷媒体Pは、LDローラ13およびPFローラ15により搬送され、排紙トレイ20へ排出される。これにより、排紙トレイ20には、印刷データに基づく印刷がなされた印刷媒体Pが排出される。
【0100】
印刷データに基づく印刷制御を終えると、印刷制御部63は、再び、印刷し終えた印刷データ中の用紙種データなどを確認し、印刷を指定された印刷媒体Pが厚紙であったか否かを判断する。この場合、印刷を指定された印刷媒体Pは、たとえば普通紙などである。印刷制御部63は、印刷制御を終了する。
【0101】
また、印刷データに基づく印刷制御前の判断において、印刷をする印刷媒体Pが厚紙であると判断すると、印刷制御部63は、DCユニット61に対して、フラグ部材42をホーム検出位置からリトラクト検出位置に設定するように区間駆動制御を指示する。印刷制御部63は、具体的にはたとえば、まず、DCユニット61に対して、フラグ部材42をホーム検出位置から中間検出位置へ駆動するための駆動方向と、駆動力の大きさと、駆動時間とを指示し、さらにフラグ部材42を中間検出位置からリトラクト検出位置へ駆動するための駆動方向と、駆動力の大きさと、駆動時間とを指示する。なお、これらの場合の区間駆動制御の詳細な制御動作は、先に説明したリセット制御部62の指示に基づく区間駆動制御と同様であり説明を省略する。これにより、フラグ部材42は、リトラクト検出位置に制御される。また、PF従動ローラ16は、離間制御位置に制御される。
【0102】
以上の一連の制御によりフラグ部材42をホーム検出位置からリトラクト検出位置に設定した後、印刷制御部63は、タイマIC57に、所定のタイムアウト時間の計測を開始させる。このタイムアウト時間は、フラグ部材42をリトラクト検出位置に保持し続ける最大の時間であり、たとえば約30分程度の時間とすればよい。タイマIC57は、フラグ部材42をリトラクト検出位置に保持してからの経過時間を計測し始める。
【0103】
フラグ部材42をリトラクト位置に制御し、且つ、タイマIC57に経過時間の計測を開始させた後、印刷制御部63は、印刷データに基づく印刷制御を開始する。この印刷制御において、PF従動ローラ16は離間制御位置に制御されているので、印刷媒体Pとしての厚紙は、PF従動ローラ16とPFローラ15との間にスムースに入り込み、PFローラ15の回転量にしたがった搬送量で搬送される。
【0104】
印刷データに基づく印刷制御を終えると、印刷制御部63は、再び、印刷し終えた印刷データ中の用紙種類の指定データなどを確認し、印刷をした印刷媒体Pが厚紙であったか否かを判断する。この場合、印刷をした印刷媒体Pは厚紙である。
【0105】
この印刷制御後のステップST44の判断において、印刷をする印刷媒体Pが厚紙であると判断すると、印刷制御部63は、DCユニット61に対して、フラグ部材42をリトラクト検出位置からホーム検出位置に設定するように区間駆動制御を指示する。印刷制御部63は、具体的にはたとえば、まず、DCユニット61に対して、フラグ部材42をリトラクト検出位置から中間検出位置へ駆動するための駆動方向と、駆動力の大きさと、駆動時間とを指示し、次に、フラグ部材42を中間検出位置からホーム検出位置へ駆動するための駆動方向と、駆動力の大きさと、駆動時間とを指示する。なお、これらの場合の区間駆動制御の詳細な制御動作は、先に説明したリセット制御部62の指示に基づく区間駆動制御と同様であり説明を省略する。これにより、フラグ部材42は、ホーム検出位置に制御される。また、PF従動ローラ16は、当接制御位置に制御される。
【0106】
また、印刷制御部63は、フラグ部材42をホーム検出位置に設定した後、タイマIC57によるタイムアウト時間の計測を終了させる。印刷制御部63は、印刷制御を終了する。
【0107】
次に、状態管理部64の動作を説明する。状態管理部64は、まず、動作時のフラグ部材42の位置を判断する。状態管理部64は、たとえば図示外の不揮発性メモリなどに記憶されるフラグ部材42の位置データを取得し、それに基づいてフラグ部材42の位置を判断すればよい。フラグ部材42の現在位置がホーム検出位置である場合、状態管理部64は、処理を終了する。
【0108】
フラグ部材42の現在位置がホーム検出位置でない場合、状態管理部64は、さらに、タイマIC57が計測している経過時間を取得する。そして、取得した経過時間が所定のタイムアウト時間より短い場合、状態管理部64は、処理を終了する。
【0109】
取得した経過時間が所定のタイムアウト時間以上である場合、状態管理部64は、現在位置からホーム検出位置までの区間駆動制御を実行する。状態管理部64は、DCユニット61に対して、フラグ部材42を現在検出位置からホーム検出位置へ駆動する駆動方向と、駆動力の大きさと、駆動時間とを指定する。なお、現在検出位置がリトラクト検出位置である場合、状態管理部64は、中間検出位置までの指示と、ホーム検出位置までの指示とに分けて指示するようにしてもよい。なお、この場合の区間駆動制御の詳細な制御動作は、先に説明したリセット制御部62の指示に基づく区間駆動制御と同様であり説明を省略する。これにより、フラグ部材42は、ホーム検出位置に制御される。また、PF従動ローラ16は、当接制御位置に制御される。
【0110】
以上のように、この実施の形態では、レリースモータ41は、当接制御位置と離間制御位置との間で切り替えられるPF従動ローラ16とともにフラグ部材42を駆動する。フラグ部材42が回転すると、大弧フラグ部44および複数の小弧フラグ部45がフラグセンサ48により検出される。
【0111】
そして、リセット制御部62は、レリースモータ41によるPF従動ローラ16およびフラグ部材42の駆動を開始させた後に、タイマIC57により計測される判断時間の間にフラグセンサ48の検出レベルが変化するか否かに基づいて、フラグセンサ48が複数の小弧フラグ部45の配列区間を検出しているか否かを判断し、さらにその判断結果およびフラグセンサ48の検出レベルに基づいてPF従動ローラ16あるいはフラグ部材42の位置を判断する。リセット制御部62は、具体的には、判断時間の間にフラグセンサ48の検出レベルが変化するとき中間検出位置にあると判断し、その変化が無く且つフラグセンサ48の検出レベルがローレベルであるときホーム検出位置にあると判断し、さらに、その変化が無く且つフラグセンサ48の検出レベルがハイレベルであるときリトラクト検出位置にあると判断する。
【0112】
したがって、リセット制御部62は、フラグセンサ48の検出レベルと判断時間とに基づいて、PF従動ローラ16が離間制御位置と当接制御位置との間のどの位置にあるかを判断することができる。リセット制御部62は、仮にたとえばフラグ部材42をストッパなどへ当てる制御をすることなく、PF従動ローラ16の位置を特定することができる。その後、リセット制御部62などは、フラグ部材42の位置をホーム検出位置と、中間検出位置と、リトラクト検出位置との間で切り替えることができる。
【0113】
また、この実施の形態では、状態管理部64は、厚さのある印刷媒体Pを搬送するために離間制御位置に制御した後に所定のタイムアウト時間が経過した時に、PF従動ローラ16が当接制御位置となるようにレリースモータ41を制御する。したがって、PF従動ローラ16は、巻バネ33の付勢力に抗して制御される離間制御位置に、長時間にわたって保持されてしまうことはない。PF従動ローラ16は、基本的に厚みのある印刷媒体Pを印刷するときだけ、離間制御位置に保持される。
【0114】
その結果、フラップ部材31をプラスチック樹脂材料で形成しても、フラップ部材31に大きな力が長時間に渡って作用し続けてしまうことはなく、その劣化(変形や破壊など)を効果的に抑制することができる。フラップ部材31を、プラスチック樹脂で形成し、PF従動ローラ16をPFローラ15へ圧接するために使用することができる。
【0115】
また、この実施の形態のリセット制御部62は、レリースモータ41の駆動を開始する時点でのフラグセンサ48の検出レベルが大弧フラグ部44を検出したときのレベルと同じハイレベルである場合、フラグ部材42をリトラクト検出位置側からホーム検出位置側へ回転駆動し、ローレベルである場合、フラグ部材42をホーム検出位置側からリトラクト検出位置側へ回転駆動する。
【0116】
したがって、フラグセンサ48の検出レベルは、駆動開始後に必ず変化する。リセット制御部62は、フラグセンサ48の検出レベルが変化することを前提として、フラグセンサ48が複数の小弧フラグ部45の配列区間を検出しているか否かを判断することができる。また、フラグ部材42の回転のし過ぎを防止するホームストッパ46やリトラクトストッパ47などが設けられている場合でも、それらのストッパにフラグ部材42が当たってしまわないようにすることができる。
【0117】
また、この実施の形態のリセット制御部62は、レリースモータ41の駆動を開始してから、所定の区間駆動時間が経過してもフラグセンサ48の検出レベルが変化しない場合、レリースモータ41の制御を中止し、所定のエラー処理を実行する。したがって、所定の区間駆動時間の駆動によってフラグセンサ48の検出レベルの変化を得ることができない異常な状態である場合、たとえばレリースモータ41によりフラグ部材42および従動ローラを駆動することができないような状態である場合、レリースモータ41の制御を中止し、所定のエラー処理を実行することができる。
【0118】
以上の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。
【0119】
上記実施の形態では、フラグ部材42は、大弧フラグ部44および複数の小弧フラグ部45を有する。この他にもたとえば、フラグ部材42は、大弧フラグ部44および複数の小弧フラグ部45と対応する位置関係でフラグ本体43を切り欠いて、大弧切欠部および複数の小弧切欠部を有するものであってもよい。
【0120】
上記実施の形態では、当接制御位置と離間制御位置との間で切り替えられるPF従動ローラ16の制御に、開始前検出データ60を記憶するメモリIC56、フラグ部材42およびフラグセンサ48を使用している。インクジェットプリンタ1は、PF従動ローラ16のほかにもたとえば、給紙トレイ11の印刷媒体PをLDローラ13との間で挟むために位置が制御されるホッパ12部材やLD従動ローラ、印刷媒体Pとの距離を調整するために位置が制御されるキャリッジ21、大判の印刷媒体Pへ吐出したインクの発色を測定する際にその印刷媒体Pを抑えるために位置が制御される紙抑え機構などを有する場合がある。開始前検出データ60を記憶するメモリIC56、フラグ部材42およびフラグセンサ48などは、これらの部材の位置を制御するために利用されてもよい。
【0121】
また、開始前検出データ60を記憶するメモリIC56、フラグ部材42およびフラグセンサ48は、PF従動ローラ16の制御位置を当接制御位置と離間制御位置との2つの制御位置の間で切り替えるために利用されている。この他にもたとえば、開始前検出データ60を記憶するメモリIC56、フラグ部材42およびフラグセンサ48は、PF従動ローラ16などの所定の部材を、3つの制御位置の間で切り替えるために利用することもできる。制御位置が3つある場合、その3つの制御位置に、ホーム検出位置、中間検出位置およびリトラクト検出位置の3つの検出位置を対応付ければよい。
【0122】
上記実施の形態では、リセット制御部62は、電源スイッチ51がオンにされた電源投入時に所定の初期化シーケンスを実行している。この他にもたとえばリセット制御部62は、インクジェットプリンタ1にリセットスイッチなどを設け、このリセットスイッチなどの操作に基づく起動時に所定の初期化シーケンスを実行するようにしてもよい。
【0123】
上記実施の形態では、インクジェットプリンタ1を例として説明している。この他にもたとえば、開始前検出データ60を記憶するメモリIC56、フラグ部材42およびフラグセンサ48は、レーザプリンタやドットインパクトプリンタなどにおいて、2つの制御位置の間で切り替えられるPF従動ローラ16や、3つの制御位置の間で切り替えられる所定の部材の制御に利用するようにしてもよい。さらに他にもたとえば、インクジェットプリンタ1などのインクジェットプリンタ1とともにスキャナ装置などを備える所謂複合機、インクジェットプリンタ1などのインクジェットプリンタ1を備える複写機やファクシミリ装置などにおいて、2つの制御位置の間で切り替えられるPF従動ローラ16や、3つの制御位置の間で切り替えられる所定の部材の制御に、開始前検出データ60を記憶するメモリIC56、フラグ部材42およびフラグセンサ48を利用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、インクジェットプリンタなどの印刷装置において、2つの制御位置あるいは3つの制御位置の間で切り替えられるPF従動ローラなどの駆動制御において好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構成図である。
【図2】図1中のフラグセンサとカム部材との関係を示す説明図である。
【図3】図1中のリセット制御部の初期化シーケンスを示すフローチャートである。
【図4】図3中のフラグ変化後処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0126】
1 インクジェットプリンタ(印刷装置)、15 PFローラ(搬送ローラ)、16 PF従動ローラ(所定の部材、従動ローラ)、31 フラップ部材、33 巻バネ(バネ部材)、41 レリースモータ(駆動モータ)、42 フラグ部材、43 フラグ本体、44 大弧フラグ部、45 小弧フラグ部、46 ホームストッパ(ストッパの一種)、47 リトラクトストッパ(ストッパの一種)、48 フラグセンサ(センサ)、56 不揮発性メモリIC(不揮発性メモリ)、59 検出データ、60 最終検出位置フラグ、62 リセット制御部(制御手段の一部)、64 状態管理部(制御手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該印刷装置内の所定の部材を2つの所定の制御位置あるいは3つの所定の制御位置の間で切り替えるための駆動力を発生する駆動モータと、
上記駆動モータにより上記所定の部材とともに回転駆動される略円板形状のフラグ本体、上記フラグ本体から半径方向外側へ突出する大弧フラグ部、および上記大弧フラグ部より上記フラグ本体の回転方向での幅が狭く形成されて、上記大弧フラグ部を基準として上記フラグ本体の回転方向の一方側に配列される複数の小弧フラグ部を有するフラグ部材と、
上記所定の部材が上記2つの所定の制御位置の間で切り替えられるときに上記複数の小弧フラグ部の配列区間を検出し、あるいは上記所定の部材が上記3つの所定の制御位置の内の真中の所定の制御位置となるときに上記複数の小弧フラグ部の配列区間を検出するセンサと、
経過時間を計測するタイマと、
上記駆動モータによる上記所定の部材および上記フラグ部材の駆動を開始させた後に、上記タイマにより計測される所定の長さの判断時間の間に上記センサの検出レベルが変化するか否か、あるいは上記センサの検出レベルが変化するまでの上記タイマにより計測される判断時間の長さに基づいて、上記センサが上記複数の小弧フラグ部の配列区間を検出しているか否かを判断し、さらにその判断結果および上記センサの検出レベルに基づいて上記所定の部材あるいは上記フラグ部材の位置を判断する制御手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記所定の部材を、判断した位置から所定の目標位置まで駆動するように前記駆動モータを駆動することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記所定の部材は、搬送ローラに接する当接制御位置と、上記搬送ローラから離間する離間制御位置との間で切り替えられる従動ローラであり、
前記センサは、上記従動ローラが上記当接制御位置と上記離間制御位置との間で切り替えられるときに上記複数の小弧フラグ部の配列区間を検出すること、
を特徴とする請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
略平板形状に形成され、印刷媒体の搬送方向と略垂直な方向に沿った軸の周囲で回転可能に配設され、前記従動ローラを回転可能に保持するプラスチック樹脂製のフラップ部材と、
前記従動ローラを前記搬送ローラへ圧接するように上記フラップ部材に付勢力を作用させるバネ部材と、を有し、
前記制御手段は、当該印刷装置の起動時、および厚さのある印刷媒体を搬送するために前記離間制御位置に制御した後に所定のタイムアウト時間が経過した時に、前記従動ローラが前記当接制御位置となるように前記駆動モータを制御することを特徴とする請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記駆動モータの駆動を開始する時点での前記センサの検出レベルが前記大弧フラグ部を検出したときのレベルと同じレベルである場合、前記フラグ部材を前記大弧フラグ部から前記複数の小弧フラグ部へ向かわせる方向へ前記駆動モータを回転させ、それ以外の検出レベルである場合、前記フラグ部材を前記複数の小弧フラグ部から前記大弧フラグ部へ向かう方向へ前記駆動モータを回転させることを特徴とする請求項1から4の中のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記駆動モータの駆動を開始してから、所定の区間駆動時間が経過しても前記センサの検出レベルが変化しない場合、前記駆動モータの制御を中止し、所定のエラー処理を実行することを特徴とする請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷装置に設けられ、駆動モータの駆動により2つの所定の制御位置あるいは3つの所定の制御位置の間で切り替えられる所定の部材の制御位置切替方法であって、
略円板形状の部材のフラグ本体から半径方向外側へ突出するように大弧フラグ部および複数の小弧フラグ部がその順番で配設されたフラグ部材を、上記所定の部材が上記2つの所定の制御位置の間で切り替えられるときにあるいは上記所定の部材が上記3つの所定の制御位置の内の真中の所定の制御位置となるときに上記複数の小弧フラグ部の配列区間がセンサにより検出されるように、上記駆動モータにより上記所定の部材とともに回転駆動するステップと、
上記駆動開始後の上記タイマにより計測される所定の長さの判断時間の間に上記センサの検出レベルが変化するか否か、あるいは上記センサの検出レベルが変化するまでの上記タイマにより計測される判断時間の長さに基づいて、上記センサが上記複数の小弧フラグ部の配列区間を検出しているか否かを判断するステップと、
上記センサが上記複数の小弧フラグ部の配列区間を検出していない場合、上記センサの検出レベルに応じて上記所定の部材の位置あるいは上記フラグ部材の位置を判断するステップと、
を有することを特徴とする印刷装置の所定の部材の制御位置切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−68416(P2008−68416A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246394(P2006−246394)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】