説明

印刷装置における印刷媒体搬送制御装置、シリアル式印刷装置及び印刷媒体搬送制御方法

【課題】印刷媒体の所定位置が変速領域に存在するとき、その変速領域に設定された低速な搬送速度で印刷媒体を適切に搬送制御する。
【解決手段】用紙Pを紙送りする際、指令された所定量の紙送りをした場合、用紙Pの後端がBS駆動領域(低速領域)ABS内に位置することになると判断されると、BS駆動領域ABSの入口Pbで一旦紙送りが終わり、その後、残りの紙送りがなされるように紙送り指令の紙送り量を分割する。この分割により一回目の紙送りは通常速度VNRで紙送りされ、二回目の紙送りは低速度VBSで紙送りされる。但し、BS駆動領域ABSより上流側に設定されたBS駆動拡張領域Aから紙送りが開始されるときは、用紙Pの後端がBS駆動領域(低速領域)ABS内に位置する目標位置まで、入口Pbで停止することなく、低速度VBSで紙送りされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷中の印刷媒体(例えば用紙)を搬送(紙送り)する際に、その搬送途中に搬送速度を変更すべき領域が存在する場合、その領域に合わせた適切な搬送速度に制御する印刷装置における印刷媒体搬送制御装置、シリアル式印刷装置及び印刷媒体搬送制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にシリアルプリンタでは、図10に示すように、紙送りローラ30と排紙ローラ31により搬送される用紙Pに対し、両ローラ30,31間に配置されたプラテン32の上方を主走査方向に往復移動するキャリッジ33の下端に備えられた記録ヘッド34からインクが吐出されるなどの方法で印刷が施される。両ローラ30、31は駆動ローラ30A,31Aと従動ローラ30B,31Bからなる一対でそれぞれ構成され、両駆動ローラ30A,31Aが紙送りモータ(図示せず)の動力により回転駆動されることにより用紙Pは紙送り方向へ搬送される。そして、プリンタに内蔵された図示しないASIC(特定用途向けIC)が印刷データに基づきキャリッジモータ、紙送りモータおよび記録ヘッド34を駆動制御する。これにより、キャリッジ33の主走査方向への移動時の記録ヘッド34による印刷動作と、各ローラ30,31が駆動されることによる紙送り動作とが交互に行われ、用紙Pへの印刷は進められる。また、用紙Pの搬送経路上には紙検出センサ35が紙送りローラ30の上流側位置(図10における右側位置)に設けられ、給紙された用紙Pの紙端がこのセンサ35により検出されることで用紙Pの位置が把握され用紙Pの頭出しが行われる。
【0003】
ところで、この種のシリアルプリンタでは図10(a)に示すように、用紙Pの後端が紙送りローラ30から離れる際、用紙Pの後端が回転する紙送りローラ30に蹴飛ばされる(弾き出される)蹴飛ばし現象が起こっていた。特に近年、写真印刷などの高画質印刷に「縁なし印刷」が普及して用紙Pの後端位置まで印刷される場合も多く、この蹴飛ばし現象によって用紙Pの後端付近の位置精度が低下すると、用紙後端付近に印刷される印刷画質の低下にも繋がる。
【0004】
この蹴飛ばし現象に起因する印刷画質の低下を防止するために、例えば図10(b)に示すように、用紙Pの後端が紙送りローラ30を通る範囲(領域)に低速領域を設定し、この低速領域を用紙Pの後端が通過するときはその紙送り速度を通常速度より遅い低速度に変更する方法が考えられていた。すなわち、紙検出センサ35により用紙Pの後端が検出されてから所定量紙送りされることで用紙Pの後端が低速領域に入ると、その低速領域を通過する間は低速の紙送りを行い、それにより用紙Pの後端の蹴飛ばし現象を防止していた(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、低速領域を通るときの用紙Pの搬送速度を低速に落とす方法としては、用紙Pの搬送速度を速度制御により途中で低速に変速させる方法が考えられるが、変速させる方法は変速過程での用紙Pの位置管理が難しく、用紙Pの位置精度を確保することが比較的困難となる。そのため、例えば用紙Pを紙送りする目標位置(紙送り後の紙後端位置)が低速領域にあるとき、または、用紙の紙送り開始位置(現在位置(紙送り前の紙後端位置))が低速領域にあるときは、その紙送りを低速で行う方法が考えられていた。
【特許文献1】特開2002−096512号公報(第10−16頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年のプリンタは、印刷速度の向上の面から多ノズル化の採用により記録ヘッド34の全長(紙送り方向長さ)が長くなる傾向がある。よって、キャリッジ一回移動当たりの印刷幅(紙送り方向幅)が広くなるため、それに合わせて1回分の紙送り量も多くなる。このように1回分の紙送り量が多くなると、用紙Pの後端が低速領域を跨ぐような紙送りの指示がなされることも十分起こり得る。この場合は、低速領域を比較的速い通常速度で用紙Pの後端は通過し、紙送りローラ30による用紙Pの後端の蹴飛ばしが起こってしまう。また、紙送りの目標位置が低速領域内にあるとASICが判断したときは、紙送り開始位置(現在位置)が低速領域からかなり手前の位置であっても、その現在位置から低速で紙送りを行うため効率が悪く、それにより印刷速度の遅延を招くことになる。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、印刷媒体の所定位置が変速領域に存在するとき、その変速領域に設定された低速な搬送速度で印刷媒体を適切に搬送制御できる印刷装置における印刷媒体搬送制御装置、シリアル式印刷装置及び印刷媒体搬送制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、印刷媒体に印刷を行う記録ヘッドと、印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段と、前記記録ヘッドと前記搬送手段とを制御する制御手段とを有する印刷装置における印刷媒体搬送制御装置において、印刷媒体の所定位置が、設定された変速領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記変速領域の入口を越えるときであって、(A)前記入口より上流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、(B)前記拡張領域よりさらに上流側に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、前記入口又は入口近傍に設定された印刷媒体搬送の分割点となる設定位置で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって前記変速領域における印刷媒体搬送を前記第1速度で実行する、ことを要旨とする。ここで、「設定された変速領域」は、固定の変速領域に限らず、例えば印刷媒体の種類(例えば紙種)や印刷モードの種類に応じた所定時期、あるいは印刷媒体の1回の搬送毎などの所定時期に、その都度設定されても構わない。さらに、「設定位置」は、固定位置に限定されず可変位置であってもよい。これらの点は本発明にかかる以下に述べるその他の構成(他の請求項に係る構成)においても同様である。
【0009】
この構成によれば、印刷媒体の所定位置が変速領域の入口を越える搬送が行われるとき、印刷開始位置に応じた印刷媒体搬送制御が行なわれる。まず、(A)入口より上流側に設定される拡張領域に所定位置が位置する搬送開始位置から印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送が第1速度で実行される。従って、印刷媒体の搬送開始時の所定位置が変速領域の入口側の拡張領域内に存在するときは、印刷媒体は所定位置が変速領域の入口側の設定位置で停止されることなく入口側の設定位置を跨ぐように搬送開始位置から第1速度で搬送される。このため、このため、変速領域では低速な第1速度での搬送を実現できるうえ、入口側の設定位置で一旦停止させようとしたがため、印刷媒体の所定位置が変速領域の入口側の設定位置で停止できずこれを超える位置まで第2速度で搬送されてしまう不都合が回避される。一方、(B)拡張領域より上流側に所定位置が位置する搬送開始位置から印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、入口又は入口近傍に設定された印刷媒体搬送の分割点となる設定位置で一旦停止するように所定量が分割される。そして、その分割された最初の印刷媒体搬送が第1速度より高速な第2速度で実行されるとともに、最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって変速領域における印刷媒体搬送が第1速度で実行される。よって、変速領域の上流位置からその入口を超える位置まで搬送が行われる際に、搬送所要時間をなるべく短く済ませつつ変速領域での減速が可能であり、しかも拡張領域から搬送を開始するときでも目標位置での停止位置精度を確保しやすい。
【0010】
本発明は、印刷媒体に印刷を行う記録ヘッドと、印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段と、前記記録ヘッドと前記搬送手段とを制御する制御手段とを有する印刷装置における印刷媒体搬送制御装置において、印刷媒体の所定位置が、設定された変速領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記変速領域の出口を越えるときであって、(A)前記出口より下流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置することになる目標位置まで前記印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体搬送を前記目標位置まで前記第1速度で実行し、(B)前記拡張領域よりさらに下流側に前記所定位置が位置することになる目標位置まで前記印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体の所定位置が、前記出口又は出口近傍に設定された印刷媒体搬送の分割点となる設定位置で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行する、ことを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、印刷媒体の所定位置が変速領域の出口を越える搬送が行われるとき、目標位置に応じた印刷媒体搬送制御が行なわれる。まず、(A)出口より下流側に設定される拡張領域に所定位置が位置することになる目標位置まで印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体搬送が第1速度で実行される。すなわち、印刷媒体の所定位置が変速領域の出口側の設定位置で停止されることなく出口側の設定位置を跨いで目標位置に達するまで低速な第1速度で搬送される。このため、出口側の設定位置で一旦停止させたがため、所定位置を目標位置に停止させることができなくなる不都合が回避される。従って、印刷媒体の所定位置が目標位置に位置精度よく停止し、例えば高い印刷画質精度が保証される。一方、(B)変速領域の下流側の拡張領域よりさらに下流側に所定位置が位置することになる目標位置まで印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体の所定位置が、出口又は出口近傍に設定された印刷媒体搬送の分割点となる設定位置で一旦停止するように所定量が分割される。そして、その分割された最初の印刷媒体搬送が第1速度で実行されるとともに、最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送が第1速度より高速な第2速度で実行される。従って、変速領域内から外へ出る印刷媒体搬送が行われるとき、変速領域の出口又は出口近傍の設定位置で第1速度から第2速度に切換わるので、例えば変速領域から外へかなり出る目標位置まで搬送される際、第1速度のまま目標位置まで搬送される不都合が回避され易くなる。よって、変速領域内からその出口を超える目標位置まで搬送が行われる際に、変速領域での低速搬送が可能であり、しかも拡張領域まで搬送するときでも目標位置での停止位置精度を確保しやすいうえ、変速領域から外へかなり出る目標位置まで搬送される際でも、搬送所要時間をなるべく短く済ませられる。
【0012】
本発明の印刷媒体搬送制御装置では、前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記変速領域を跨ぐときには、印刷媒体の所定位置が該変速領域の入口又は入口近傍に設定された印刷媒体搬送の分割点となる設定位置と該変速領域の出口又は出口近傍に設定され印刷媒体搬送の別の分割点となる設定位置で一旦停止するように前記所定量を3分割する3回の印刷媒体搬送に分割し、その分割された1回目と3回目の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行し、2回目の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が変速領域を跨ぐときには、当該印刷媒体搬送が3回の印刷媒体搬送に分割される。すなわち、印刷媒体の所定位置が該変速領域の入口又は入口近傍に設定された設定位置と、該変速領域の出口又は出口近傍に設定され印刷媒体搬送の別の分割点となる設定位置で一旦停止するように前記所定量が3分割されて3回の印刷媒体搬送に分割される。その分割された1回目の印刷媒体搬送は第2速度で実行され、1回目が終了して停止した後、2回目の印刷媒体搬送が第2速度より低速な第1速度で実行され、さらに2回目が終了して停止した後、3回目の印刷媒体搬送が第2速度で実行される。よって、印刷媒体の所定位置が変速領域を通るときは、その殆ど全域で印刷媒体は低速な第1速度で搬送される。また、変速領域の上流側と下流側では高速な第2速度で搬送されるので、変速領域で低速で搬送する割に、搬送所要時間がさほど長くならない。
【0014】
本発明の印刷媒体搬送制御装置では、前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記変速領域内に位置することになるときには、印刷媒体の所定位置が前記変速領域の入口又は入口近傍に設定された前記設定位置で一旦停止するように前記所定量を2分割する2回の印刷媒体搬送に分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行するとともに、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度で実行することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が予め設定された変速領域内に位置することになるときには、印刷媒体の所定位置が変速領域の入口又は入口近傍に設定された設定位置で一旦停止するように所定量が2分割されて2回の印刷媒体搬送に分割される。その分割された最初の印刷媒体搬送が第2速度で実行され、最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送が第2速度より低速な第1速度で実行される。従って、印刷媒体の所定位置が変速領域内の目標位置に達するまで印刷媒体が搬送される際、変速領域では適切な搬送速度に変速される。よって、変速領域の上流側では高速な第2速度で搬送されるうえ、印刷媒体の所定位置が変速領域を通るときはその殆ど全域で印刷媒体は低速な第1速度で搬送されるので、変速領域で低速で搬送する割に、搬送所要時間がさほど長くならない。
【0016】
本発明の印刷媒体搬送制御装置では、前記変速領域は、前記記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲に設定されており、前記所定位置は印刷媒体の後端であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲の低速領域で印刷媒体が適正に低速度で搬送されるため、搬送ローラによる印刷媒体の後端の蹴飛ばし現象が低減される。例えば高画質印刷時において印刷媒体の位置精度低下にする印刷媒体後端エリアの印刷画質の低下が抑えられる。
【0018】
本発明の印刷媒体搬送制御装置では、前記制御手段は、(A)前記変速領域の入口の内側に前記搬送手段の最小搬送距離に略等しい長さの第1管理領域を設定し、所定量の印刷媒体搬送を行ったときに前記所定位置が該第1管理領域に位置することになるときは、印刷媒体の所定位置が前記拡張領域の入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、最初の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、(B)一方、前記変速領域の出口の内側に前記搬送手段の最小搬送距離に略等しい長さの第2管理領域を設定し、印刷媒体の所定位置が該第2管理領域に位置する搬送開始位置から印刷媒体の搬送を開始して所定量の印刷媒体搬送を行うときには、印刷媒体の所定位置が前記拡張領域の出口で一旦停止するように前記所定量を分割し、最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第2速度で実行することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、(A)所定量の印刷媒体搬送を行ったときに印刷媒体の所定位置が変速領域の入口の内側に設定された第1管理領域に位置することになるときは、印刷媒体の所定位置が拡張領域の入口で一旦停止するように所定量が分割され、2回の印刷媒体搬送に分割される。そして、拡張領域の入口に至るまでの最初の印刷媒体搬送が第2速度で実行されるとともに、最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、第1管理領域内の目標位置までの残りの印刷媒体搬送が第1速度で実行される。このように残りの印刷媒体搬送で変速領域の入口で停止せず該入口を跨ぐ搬送が行われるので、該入口で停止したためにそこから最小移動距離だけ搬送させただけで目標位置を通過してしまう不都合を回避できる。
【0020】
一方、(B)変速領域の出口の内側に設定された第2管理領域から搬送を開始して所定量の印刷媒体搬送を行うときには、印刷媒体の所定位置が拡張領域の出口で一旦停止するように所定量が分割され、2回の印刷媒体搬送に分割される。そして、拡張領域の出口に至るまでの最初の印刷媒体搬送が第1速度で実行されるとともに、最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送が第2速度で実行される。このように最初の印刷媒体搬送で変速領域の出口で停止せず該出口を跨ぐ搬送が行われるので、第2管理領域内の搬送開始位置から最小移動距離だけ搬送させただけで変速領域の出口を通過してしまうことに起因して、残りの印刷媒体搬送の搬送開始位置の位置精度が低くなり、残りの印刷媒体搬送で搬送された印刷媒体が目標位置に正確に停止できなくなる不都合を回避できる。
【0021】
本発明の印刷媒体搬送制御装置では、前記制御手段は、印刷媒体の搬送後に印刷がなされることがない当該搬送を行うときは、印刷媒体の前記所定位置が前記変速領域の入口又は出口を跨ぐ搬送である場合でも、当該搬送の所定量を分割することなく印刷媒体を前記第2速度で搬送することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、次に印刷がなされることがない搬送時は、印刷媒体が第2速度で搬送されるため、スループットを向上できる。
本発明は、記録ヘッドとキャリッジの駆動により印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段と、印刷媒体搬送と印刷実行を交互に行うよう前記印刷手段と搬送手段とを制御する制御手段とを有するシリアル式印刷装置において、印刷媒体の所定位置が、予め設定された固定領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、前記制御手段は、前記所定位置が前記固定領域の上流にあるときに印刷のための所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記固定領域の入口を越えるときであって、(A)前記固定領域の入口より上流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、(B)前記拡張領域よりさらに上流側に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、前記入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって前記固定領域における印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、前記固定領域は、前記記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲に設定されており、前記所定位置は印刷媒体の後端であることを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、まず、(A)印刷媒体の後端(所定位置)が固定領域の入口側の拡張領域内に位置する搬送開始位置から印刷媒体が搬送されるときは、印刷媒体は後端が固定領域の入口で停止されることなく入口を跨ぐように搬送開始位置から第1速度で搬送される。このため、固定領域では低速な第1速度での搬送を実現できるうえ、入口で一旦停止させようとしたがため、印刷媒体の後端が固定領域の入口で停止できずこれを超える位置まで第2速度で搬送されてしまう不都合が回避される。一方、(B)拡張領域より上流側に後端が位置する搬送開始位置から印刷媒体が搬送されるときは、印刷媒体はその後端が入口に一致する位置まで高速な第2速度で搬送され、入口で一旦停止後、低速な第1速度に切り替えられて残りの印刷媒体搬送が実行される。例えば搬送ローラによる印刷媒体の後端の蹴飛ばし現象が低減される。よって、固定領域の上流位置からその入口を超える位置まで搬送が行われる際に、固定領域での減速が可能であり、しかも拡張領域から搬送を開始するときでも目標位置での停止位置精度を確保しやすいうえ、拡張領域より上流位置から搬送を開始するときでも、搬送所要時間をなるべく短く済ませられる。
【0024】
本発明は、記録ヘッドとキャリッジの駆動により印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段と、印刷媒体搬送と印刷実行を交互に行うよう前記印刷手段と搬送手段とを制御する制御手段とを有するシリアル式印刷装置において、印刷媒体の所定位置が、予め設定された固定領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、前記制御手段は、前記所定位置が前記固定領域にあるときに印刷のための所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記固定領域の出口を越えるときであって、(A)前記固定領域の出口より下流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置することになる目標位置への前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、(B)前記拡張領域よりさらに下流側に前記所定位置が位置することになる目標位置への前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、前記出口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行し、前記固定領域は、前記記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲に設定されており、前記所定位置は印刷媒体の後端であることを要旨とする。
【0025】
この構成によれば、(A)印刷媒体の後端(所定位置)が拡張領域内に位置することになる目標位置へ印刷媒体が搬送されるときには、印刷媒体の後端が固定領域の出口で停止されることなく出口を跨いで目標位置に達するまで低速な第1速度で搬送される。このため、出口で一旦停止させたがため、後端を目標位置に停止させることができなくなる不都合が回避される。従って、印刷媒体の後端が目標位置に位置精度よく停止するので、例えば高い印刷画質精度が保証される。一方、(B)印刷媒体の後端が固定領域内に位置する搬送開始位置から、拡張領域より下流側に位置することになる目標位置へ印刷媒体が搬送されるとき、印刷媒体はその後端が固定領域の出口で一旦停止して第1速度から第2速度に切換わる。このため、例えば搬送ローラによる印刷媒体の後端の蹴飛ばし現象が低減されるうえ、固定領域から外へかなり出る目標位置まで搬送される際、低速な第1速度のまま目標位置まで搬送される不都合が回避され易くなる。よって、固定領域内からその出口を超える目標位置まで搬送が行われる際に、固定領域での低速搬送が可能であり、しかも出口側の拡張領域まで搬送するときでも目標位置での停止位置精度を確保しやすいうえ、固定領域から外へかなり出る目標位置まで搬送される際でも、搬送所要時間をなるべく短く済ませられる。
【0026】
本発明のシリアル式印刷装置では、前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記固定領域を跨ぐときには、印刷媒体の所定位置が該固定領域の入口と該固定領域の出口で一旦停止するように前記所定量を3分割する3回の印刷媒体搬送に分割し、その分割された1回目と3回目の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行し、2回目の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、印刷媒体の後端(所定位置)が固定領域を通るときは、その殆ど全域で印刷媒体は低速な第1速度で搬送される。また、固定領域の上流側と下流側では高速な第2速度で搬送されるので、固定領域で低速で搬送する割に、搬送所要時間がさほど長くならない。
【0028】
本発明のシリアル式印刷装置では、前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記固定領域内に位置することになるときには、印刷媒体の所定位置が前記固定領域の入口で一旦停止するように前記所定量を2分割する2回の印刷媒体搬送に分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行するとともに、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度で実行することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、印刷媒体の後端(所定位置)が固定領域内の目標位置に達するまで印刷媒体が搬送される際、固定領域では適切な搬送速度に変速される。よって、固定領域の上流側では高速な第2速度で搬送されるうえ、印刷媒体の後端が固定領域を通るときはその殆ど全域で印刷媒体は低速な第1速度で搬送されるので、固定領域で低速で搬送する割に、搬送所要時間がさほど長くならない。
【0030】
本発明のシリアル式印刷装置では、前記固定領域の入口の内側に前記搬送手段の最小搬送距離に略等しい長さの第1管理領域を設定されるとともに、前記固定領域の出口の内側に前記搬送手段の最小搬送距離に略等しい長さの第2管理領域が設定され、前記制御手段は、(A)所定量の印刷媒体搬送を行ったときに前記所定位置が前記第1管理領域に位置することになるときは、印刷媒体の所定位置が前記拡張領域の入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、最初の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、一方、(B)印刷媒体の所定位置が前記第2管理領域に位置する搬送開始位置から印刷媒体の搬送を開始して所定量の印刷媒体搬送を行うときには、印刷媒体の所定位置が前記拡張領域の出口で一旦停止するように前記所定量を分割し、最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第2速度で実行することが好ましい。
【0031】
この構成によれば、(A)印刷媒体の後端(所定位置)が第1管理領域に位置することになる目標位置へ印刷媒体が搬送されるときは、印刷媒体の後端が拡張領域の入口で一旦停止するように所定量が分割される。そして、印刷媒体の後端が固定領域の上流側の拡張領域の入口に一致する位置までの最初の印刷媒体搬送が第2速度で実行され、後端が第1管理領域内に位置する目標位置までの残りの印刷媒体搬送が第1速度で実行される。一方、(B)印刷媒体の後端が第2管理領域に位置する搬送開始位置からの印刷媒体が行われるときには、印刷媒体の後端が固定領域の下流側の拡張領域の出口で一旦停止するように所定量が分割される。後端が拡張領域の出口に一致する位置までの最初の印刷媒体搬送が第1速度で実行され、後端が第2管理領域内に位置することになる目標位置までの残りの印刷媒体搬送が第2速度で実行される。
【0032】
本発明のシリアル式印刷装置では、前記制御手段は、印刷媒体の搬送後に印刷がなされることがない当該搬送を行うときは、印刷媒体の前記所定位置が前記固定領域の入口又は出口を跨ぐ搬送である場合でも、当該搬送の所定量を分割することなく印刷媒体を前記第2速度で搬送することが好ましい。
【0033】
この構成によれば、次に印刷がなされることがない搬送時は、印刷媒体が第2速度で搬送されるため、スループットを向上できる。
本発明は、印刷媒体に印刷を行う記録ヘッドと、印刷媒体を前記記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段とを有する印刷装置における印刷媒体搬送制御方法において、印刷媒体の所定位置が、設定された変速領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、印刷媒体の所定位置が前記変速領域の入口を越えることになる目標位置へ所定量の印刷媒体搬送を行うときは、印刷媒体の搬送開始位置に応じて以下の二つのステップを選択し、(A)前記入口より上流側に設定される拡張領域内に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップと、(B)前記拡張領域よりさらに上流側に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、前記入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって前記変速領域における印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップとを備えることを要旨とする。
【0034】
本発明は、印刷媒体に印刷を行う記録ヘッドと、印刷媒体を前記記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段とを有する印刷装置における印刷媒体搬送制御方法において、印刷媒体の所定位置が、設定された変速領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、印刷媒体の所定位置が前記変速領域の出口を越えることになる目標位置へ所定量の印刷媒体搬送を行うときは、印刷媒体搬送の目標位置に応じて以下の二つのステップを選択し、(A)前記出口より下流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置することになる目標位置まで前記印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップと、(B)前記拡張領域よりさらに下流側に前記所定位置が位置することになる目標位置まで前記印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体の所定位置が、前記出口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するステップとを備えたことを要旨とする。
【0035】
本発明は、記録ヘッドとキャリッジの駆動により印刷媒体に印刷を行う印刷手段による印刷実行と、印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段による印刷媒体搬送とを交互に行って印刷媒体に印刷を施す印刷装置における印刷媒体搬送制御方法であって、前記記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲には予め固定領域が設定されるとともに、印刷媒体の後端が前記固定領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、印刷媒体の後端が前記固定領域の上流にある搬送開始位置から印刷のための所定量の印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の後端が前記固定領域の入口を越えることになる目標位置へ所定量の印刷媒体搬送を行うときは、印刷媒体の搬送開始位置に応じて以下の二つのステップを選択し、(A)印刷媒体の後端が前記固定領域の入口より上流側に設定される拡張領域内に位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップと、(B)印刷媒体の後端が前記拡張領域より上流側に位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の後端が、前記入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって前記固定領域における印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップとを備えたことを要旨とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、シリアルプリンタ1の電気的な構成図である。シリアルプリンタ1には、CPU2、CPU2にバス3を介して接続されたROM4、RAM5およびASIC(App lication Specific IC(特定用途向けIC))6が搭載されている。ROM4にはCPU2により実行される制御プログラムが記憶されている。RAM5は、ホストコンピュータ(PC)7からインタフェイス8を介して受信した印刷データやプリンタ内部で所定処理が施された印刷データが一時蓄積される受信バッファおよび印刷バッファとして機能し、またCPU2が実行する各種プログラムに用いられるデータ等が一時記憶されるメモリ領域も備える。もちろん、受信バッファ、印刷バッファおよびメモリ領域を別々のRAMで構成してもよい。
【0037】
ASIC6は、CPU2からの制御信号およびホストコンピュータ7から受信した印刷データに基づき印刷制御を実行し、シリアルプリンタ1の印刷メカニカル機構を構成するアクチュエータ類を駆動制御する処理回路である。ASIC6は、ヘッド駆動回路9およびモータ駆動回路10,11を介して記録ヘッド12、紙送りモータ13およびキャリッジモータ14等とそれぞれ電気的に接続されており、キャリッジ制御、ヘッド制御(インク吐出制御)および紙送り制御などの印刷制御を実行する。また、紙送りモータ13の回転はエンコーダ19により検出されるようになっており、エンコーダ19により検出された検出パルスはASIC6に入力される。
【0038】
図2はプリンタの紙送り機構部分を示す模式平面図、図3は紙送り機構部分を示す模式側面図である。図2,図3に示すように、キャリッジ20は、主走査方向に延びるガイドロッド(図示省略)に案内されるとともにキャリッジモータ14が正転・逆転駆動されることで正逆転するタイミングベルト(図示省略)に固定されており、キャリッジモータ14の正転・逆転駆動によって主走査方向に往復移動する。記録ヘッド12は、キャリッジ20の下端に取り付けられキャリッジ20と一体に主走査方向に往復移動可能となっている。
【0039】
図1,図3に示すように、記録ヘッド12を紙送り方向に挟むその上流側と下流側には紙送りローラ15と排紙ローラ16がそれぞれ配置されている。両ローラ15,16は、駆動ローラ15A,16Aと従動ローラ15B,16Bからなる一対でそれぞれ構成されている。紙送りモータ13はギヤ列(図示省略)を介して各駆動ローラ15A,16Aと作動連結されており、紙送りモータ13の駆動によって両ローラ15,16は同期回転するようになっている。また、両ローラ15,16間には記録ヘッド12と対向する下側にプラテン17が配置されており、用紙Pにはプラテン17の上側に載る部分に印刷が施される。
【0040】
紙検出センサ18は、紙送りローラ15のやや用紙搬送方向上流側に配置され、例えば接触式センサ(スイッチ式センサ)からなる。紙検出センサ18は、例えば待機位置と用紙検知位置との間を揺動可能な検知レバーと、用紙検知位置にあるときの検知レバーを検知可能な光学センサ(投光器と受光器)とから構成される。検知レバーは搬送経路上の用紙Pと干渉可能に配置されており、紙検出センサ18は、給紙された用紙Pの先端が検知レバーに当たってこれを変位させることでオンし、用紙Pの後端が検知レバーを通過してその検知レバーが元の待機位置に復帰することによりオフする。
【0041】
図1に示すように、ASIC6は位置カウンタ21を内蔵し、エンコーダ19から入力される検出パルスのパルス数を位置カウンタ21により計数する。この位置カウンタ21は、紙検出センサ18によって用紙先端が検知された後、所定カウント値を計数して用紙Pが頭出しされた時にリセットされる。従って、位置カウンタ21は、用紙Pの頭出しされた位置を始点「0」とした紙送り量の累積値を計数する。ASIC6は、位置カウンタ21の計数値に基づき用紙Pの現在位置を把握する。なお、位置カウンタ21の計数値は用紙Pの先端位置を示すが、現在印刷中の用紙Pの「用紙長」についてはホストコンピュータ7から受信した印刷データに含まれる情報から既知であるため、位置カウンタ21の計数値から用紙Pの後端位置を把握することができる。
【0042】
そして、ASIC6は、印刷終了コマンドを受け付ければその時点で印刷制御から排紙制御に移行し、そうでないときは位置カウンタ21の計数値に基づき用紙Pが最終印刷位置に到達したと判断するとその最終印刷位置の印刷を終えると印刷制御から排紙制御に移行する。
【0043】
また、ASIC6は、印刷データに基づき紙種および印刷モードを把握するとともに、紙送りコマンドから印刷時の紙送り量を把握する。ここで、紙種には、光沢紙(写真用紙)、普通紙などがある。また、印刷モードには、写真印刷(高画質印刷)モード、通常印刷(普通画質印刷)モード、縁無し印刷モードなどがある。
【0044】
通常速度で紙送りされると、紙送りローラ15が用紙Pの後端を蹴飛ばす現象が発生する。高画質印刷時はこの蹴飛ばし現象が印刷画質の低下を招く。このため、本実施形態では、「写真印刷モード」かつ「光沢紙」が選択されている高画質印刷時は、紙送りローラ15が用紙Pの後端を蹴飛ばす現象を防止するため、紙送りローラ15を挟む範囲に用紙Pの搬送速度(紙送り速度)を通常速度より低速にする低速領域ABSを設定するようにしている。そして、用紙Pの後端が紙送りローラ15を通過するときに紙送りローラ15が低速度で回転することで、紙送りローラ15による用紙Pの後端の蹴飛ばし現象が回避される。
【0045】
ここで、通常速度とは予め印刷モード毎に設定された印刷速度(mm/s)で、PID制御で速度制御される。すなわち、ASIC6はエンコーダ19からの検出パルスに基づき用紙Pの実搬送速度を検出し、その実搬送速度を予め設定された通常速度用の目標速度パターンに沿った目標速度に一致させるように、紙送りモータ13をPID制御(フィードバック制御)する。また、ASIC6には、低速度用の目標速度パターンも予め設定されており、用紙Pの低速搬送条件成立時は、検出された実搬送速度を低速用の目標速度パターンに沿った目標速度に一致させるように、紙送りモータ13をフィードバック制御する。いずれの目標速度パターンも、搬送距離(搬送パルス数)に対する搬送速度(モータ駆動速度)のパターンが台形のラインを描き、一定加速度で立ち上がる加速領域と定速領域と一定減速度で立ち下がる減速領域とを有する。なお、本実施形態では、紙送りモータ13の通常速度の駆動を「PS駆動」、低速度の駆動を「BS駆動」と呼ぶものとする。
【0046】
図4は、用紙搬送制御上において設定された各種設定領域を説明するものである。用紙Pの後端がこれら各種領域のうちどの領域に属するかによって用紙搬送制御上のシーケンスが進められる。同図に示すように、低速領域(以下、BS駆動領域という)ABSは、紙送りローラ15を中央に挟む所定の範囲に設定されている。このBS駆動領域ABSは蹴飛ばし現象を回避できる限りにおいてなるべく狭い方がよい。BS駆動領域ABSはその入口Pbとその出口Pcの間の領域として特定される。BS駆動領域ABSの上流側と下流側(同図では左方が上流)には、入口Pbより少し上流側位置に閾値Paが設定され、出口Pcより少し下流側位置に閾値Pdが設定されている。閾値Paと入口Pbの間にはBS駆動拡張領域Aが設定され、出口Pcと閾値Pdの間にはBS駆動拡張領域Bが設定されている。駆動拡張領域AはA パルス分の長さで、BS駆動拡張領域BはBパルス分の長さに設定されている。両領域幅のパルス長A,Bの設定理由については後述する。
【0047】
また、給紙元(図4における左側)から紙検出センサ(PE検出器)18の検出位置PEまでは「通常紙送り領域」となっており、この位置PEから前記閾値Paまでは「BS駆動準備領域」となっている。また、用紙Pの後端が紙検出センサ18を過ぎた後、用紙Pが印刷領域の最終印刷位置に搬送されるまでの範囲がオーバライド領域となっており、閾値Pdからオーバライド領域の出口までの範囲が通常紙送り領域に設定されている。この通常紙送り領域を用紙Pの後端が越えると排紙処理に移行する。
【0048】
本実施形態では、用紙Pの後端が「BS駆動領域(低速領域)」内を搬送されるときは適正にその領域に見合った低速度で用紙Pが搬送されるように、「BS駆動領域(低速領域)」の境界部である入口Pbと出口Pcで一旦停止し搬送速度が変速されるようにしている。すなわち、入口Pbと出口Pcのうち少なくとも一方を跨ぐ紙送りが指令された際は、入口Pbと出口Pcのうちその跨ぐ位置で紙送りを一旦停止させるように紙送りを分割するとともに、その分割した各紙送り毎の搬送速度(紙送り速度)をその搬送される領域に応じて変速させる。但し、紙送りによっては、制御の精度上、入口Pbで正しく停止できない不都合や、出口Pcで停止させると次の目標位置に位置精度よく停止させられない不都合があるため、これらの不都合を解消するために紙送り分割しない例外としてBS駆動拡張領域A,Bを設けている。つまり、入口Pbの極手前からの開始位置であるとPS駆動の最小移動距離を進めただけで入口Pbを越えてしまう場合があり、また出口Pcで一旦停止させてしまうと、出口PcからPS駆動の最小移動距離を進めただけで目標位置を越えてしまう場合がある。そこで、前者の対策のため、PS駆動の最小移動距離に等しい長さA pulseのBS駆動拡張領域Aを設定し、用紙Pの後端の紙送りの開始位置(現在位置)がこのBS駆動拡張領域A内に位置する状態から紙送りを開始するときは直接BS駆動させて用紙Pの後端が入口Pbを跨ぐように用紙Pを低速度で搬送する。一方、後者の対策のため、PS駆動の最小移動距離に等しい長さB pulseのBS駆動拡張領域Bを設定している。そして、このBS駆動拡張領域B内に用紙Pの後端の搬送先である目標位置P2が位置することになるときは出口Pcで紙送りを停止させることなく用紙Pの後端が出口Pcを跨いで直接目標位置に至るように用紙PをBS駆動で低速搬送する。
【0049】
なお、その他の不都合として、入口Pbで一旦停止させてしまうと、入口PbからBS駆動の最小移動距離を進めただけで目標位置を越えてしまう場合があり、また出口Pcの極手前からBS駆動でその最小移動距離を進めただけで出口Pcを越えてしまう場合がある。前者の対策としては、BS駆動領域ABSにおける入口Pbの内側にBS駆動の最小移動距離に等しい長さの第1管理領域としてのBS駆動管理領域を設定し、このBS駆動管理拡張領域に目標位置があるときはまず閾値Paで紙送りを分割する。
【0050】
そして一旦停止した閾値Paから入口Pbで紙送りを停止させることなく2回目の紙送りを用紙Pの後端が入口Pbを跨いで直接目標位置に至るようにBS駆動で行う。一方、後者の対策としては、BS駆動領域ABSにおける出口Pcの内側にBS駆動の最小移動距離に等しい長さの第2管理領域としてのBS駆動管理領域を設定し、このBS駆動管理領域から紙送りを開始するときは直接BS駆動させて用紙Pをその後端が入口Pbを跨いで閾値Pdに至るまで低速度で搬送する。そして閾値Pdで一旦停止させた後、次の2回目の紙送りで用紙PをPS駆動で目標位置まで搬送する。もちろん、用紙Pを目標位置に位置精度よく停止させる対策のためのBS駆動拡張領域、BS駆動管理領域のみを採用することもできる。
【0051】
図8,図9は紙送り分割処理の動作を説明する説明図である。ここで、図8は、(1)閾値Paより上流側の現在位置(開始位置)P1からBS駆動領域ABS内の目標位置P2まで紙送りする紙送り指令があった場合と、(2)BS駆動領域ABS内の現在位置P1から通常紙送り領域内の目標位置P2まで紙送りする紙送り指令があった場合との2種類の動作を説明する。また、図9は、(3)閾値Paより上流側の現在位置からBS駆動領域ABSを跨いで通常紙送り領域内の目標位置まで紙送りする紙送り指令があった場合の動作を説明する。なお、指令のあった紙送りの開始位置を「P1」、目標位置を「P2」とする。
【0052】
図8に示すように、まず用紙Pの後端が入口Pbを跨いでBS駆動領域ABS内の目標位置に達するまで紙送りする上記(1)の紙送り指令があった場合は、次のような紙送り分割処理が行われる。その指令のあった1回分の紙送り量を、用紙Pの後端が入口Pbで一旦停止するよう2分割し、用紙Pの後端が開始位置P1から入口Pbまで移動する1回目の紙送りと、入口Pbから目標位置P2まで移動する2回目の紙送りとに分割する。このため、BS駆動領域ABSの入口Pbまでの紙送りはPS駆動による通常速度VNRで行われ、その入口Pbから目標位置までの紙送りはBS駆動により低速度VBSで行われる。
【0053】
そして、用紙Pの後端が出口Pcを跨いでBS駆動領域ABS内の現在位置から下流側の通常送り領域内の目標位置に達するまで紙送りする上記(2)の紙送り指令があった場合は、次のような紙送り分割処理が行われる。その指令のあった1回分の紙送り量を、用紙Pの後端が出口Pcで一旦停止するよう2分割し、用紙Pの後端が開始位置P1から出口Pcまで移動する1回目の紙送りと、出口Pcから目標位置P2まで移動する2回目の紙送りとに分割する。このため、BS駆動領域ABSの出口Pcまでの紙送りはBS駆動による低速度VBSで行われ、その出口Pcから目標位置までの紙送りはPS駆動により通常速度VNRで行われる。
【0054】
また、図9に示すように、BS駆動領域ABSを跨ぐ紙送りを指示する上記(3)の紙送り指令があった場合は、次のような紙送り分割処理が行われる。すなわち、同図に示すように、用紙Pの後端を開始位置P1から目標位置P2まで移動させる1回の紙送りを、用紙Pの後端を入口Pbと出口Pcで一旦停止するように3分割し、その1回分の紙送り量を各停止位置に合わせて3分割する。そして、この1回の紙送りを、用紙Pの後端が開始位置P1から入口Pbまで移動する1回目の紙送りと、入口Pbから出口Pcまで移動する2回目の紙送りと、出口Pcから目標位置P2まで移動する3回目の紙送りとに分割する。そして、1回目の紙送りでは用紙Pの後端が入口Pbに達するまで通常速度VNRで送られ、2回目の紙送りでは入口Pbから出口PcまでのBS駆動領域をBS駆動で低速度VBSで送られ、3回目の紙送りでは出口Pcから目標位置P2まで通常速度VNRで送られる。
【0055】
以上の紙送り分割処理における分割ルールをまとめると、指令された紙送りを分割するか否かは、用紙後端の開始位置(現在位置)P1と目標位置P2とによって以下のように決まる。但し、P1<P2である。
(A)入口Pbで2分割:
開始位置P1<Pa、且つ、Pb<目標位置P2≦Pdが成立したとき。
(B)出口Pcで2分割:
Pa≦開始位置P1、且つ、Pd<目標位置P2が成立したとき。
(C)入口Pbと出口Pcで3分割:
開始位置P1<位置Pa、且つ、目標位置P2>Pdが成立したとき。
(D)分割なしで低速搬送(BS駆動):
Pa≦開始位置P1、且つ、目標位置P2≦Pd
ASIC6は、メモリに紙送り分割処理のためのプログラムを記憶しており、このプログラムを実行することにより紙送り分割処理を行う。図5〜図7に示すフローチャートがこのプログラムを示すものである。以下、図5〜図7に示すフローチャートに従って紙送り分割処理について説明する。なお、このプログラムは、紙送りコマンドを受け付けて次の紙送りを行う前に実行され、この実行に先立ち予め次の紙送り量は取得されている。
【0056】
ステップ(以下、単に「S」と記す)10では、紙種、印刷モードを判別して紙送り分割処理の該当条件を満たすか否かを判断する。すなわち、本実施形態では、例えば「写真印刷(高画質印刷)モード」で「光沢紙」を用いて印刷するときが条件に該当し、紙送り分割処理の対象とされる。この条件に該当するときはS20に進み、この条件に該当しないときはS90に進む。S90に移行した場合は、PS駆動モードで通常速度の紙送りが実行される。
【0057】
S20では、用紙後端が紙検出センサ(PE)18により検出されたか否かを判断する。用紙後端が検出されないうちはS90に進んで通常速度の紙送りが行われ、用紙後端が既に検出されていればS30に進む。
【0058】
S30では、位置カウンタ21により計数された計数値から用紙後端位置を取得する。
次のS40では、紙後端の現在位置P 1と次の紙送り後の目標位置P2が、P2>PbとP1<Pcを満たすか否かを判断する。この条件を満たさなければ、すなわち目標位置P2が入口Pbと一致または手前であったり(P2≦Pb)、用紙後端が既に出口Pcを通過している(P1≧Pc)場合はS90に進み、一方、この条件を満たす場合はS50に進む。
【0059】
S50では、紙後端の現在位置P1がP1<Paを満たすか否かを判断する。P1<Paが成立すればS60に進み、P1<Paが不成立であればS100(図6)に進む。
S60では、用紙後端の次の紙送り後の目標位置P2が、BS駆動領域内またはBS駆動拡張領域B(B Pulse)内にあるか否かを判断する。この条件が成立すればS70に進み、この条件が不成立であればS160(図7)に進む。
【0060】
S70では、用紙後端が入口Pbに達するまでPS駆動モードで紙送りする。
次のS80では、用紙後端が目標位置P2に達するまでBS駆動モードで紙送りする。
一方、S100(図6)においては、用紙後端の次の紙送り後の目標位置P2が、BS駆動領域内またはBS駆動拡張領域B(B Pulse)内にあるか否かを判断する。この条件が成立すればS110に進み、BS駆動モードで停止位置まで紙送りをする。一方、この条件が不成立であればS120に進む。
【0061】
S120では、次の紙送り量Fが最大送り量Bmaxより大きい(F>Bmax)か否かを判断する。ここで、最大送り量Bmax(Band max)とは、用紙Pが最終印刷位置まで搬送されるときの紙送り量である。この値Bmax以下の範囲の紙送りであれば次に印刷もくるが、この値Bmaxを超える送り量の紙送りであると、印刷位置(ヘッド位置)が用紙上の空白または改行の位置にくるか、印刷領域を通過して排紙処理への移行位置にくることになるので、次に印刷がくることがない。よって、次の紙送り量Fが最大送り量Bmaxより大きい(F>Bmax)ときは、紙送りしても空白、改行、排紙処理移行のいずれかの位置にきて次に印刷がくることがないので、用紙Pを低速搬送する必要がない。従って、この条件(F>Bmax)が成立すればS130に進み、次の紙送り後の目標位置P2までPS駆動モードの紙送りをする。一方、この条件(F>Bmax)が不成立のときはS140に進む。
【0062】
S140では、BS駆動領域をBS駆動モードで紙送りする。そして次のS150では、目標位置P2までP S駆動モードで紙送りする。
一方、S160(図7)では、次の紙送り量FがBmaxより大きい(F>Bmax)か否かを判断する。この条件が成立すればS170に進み、目標位置P2までPS駆動モードの紙送りをする。一方、この条件が不成立のときはS180に進む。
【0063】
S180では、用紙後端が入口Pbに達するまでPS駆動モードで紙送りする。
次のS190では、BS駆動領域をBS駆動で紙送りする。さらにS200では、目標位置P2までPS駆動モードで紙送りする。
【0064】
こうして図8,図9に示すような分割紙送り処理が行われる。よって、光沢紙を用いて写真印刷(高画質印刷)モードで印刷するときは、用紙Pの後端が紙送りローラ15を通過するときに紙送りローラ15がBS駆動で低速回転するので、用紙Pの後端が紙送りローラ15から離間する際に、蹴飛ばし現象が発生しにくくなる。この結果、用紙Pの後端付近における印刷画質の精度が高くなる。
【0065】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)用紙Pを紙送りする過程で用紙Pの後端が低速領域(BS駆動領域)ABSを跨ぐ紙送り指令があった場合は、紙送り量を3分割する。そして、低速領域ABSの入口Pbまで通常速度VNRで紙送りして一旦停止し、次に低速領域ABSを低速度VBSで紙送りして一旦停止し、さらに低速領域ABSの出口Pcから目標位置P2まで通常速度VNRで紙送りされる。従って、低速度VBSで紙送りされる距離を必要最小限に留めることができる。この結果、高画質印刷時におけるスループットを向上させることができる。また、従来技術で述べた搬送方法のように、低速領域を跨ぐ紙送りのときに通常速度で紙送りされる不都合も回避できる。従って、このような低速領域を跨ぐ紙送りの際も、用紙Pの後端付近における印刷画質の精度を高めることができる。
【0066】
(2)用紙Pを紙送りする過程で低速領域(BS駆動領域)ABS内に入るか、低速領域(BS駆動領域)ABS内から外へ出るかの紙送り指令があった場合は、紙送り量を2分割する。そして、前者の場合は、低速領域の入口Pbまで通常速度で紙送りして一旦停止した後、次に低速領域内の目標位置P2まで低速度で紙送りする。また、後者の場合は、低速領域ABSの出口Pcまで低速度で紙送りして一旦停止した後、次に目標位置P2まで通常速度VNRで紙送りする。従って、このような場合も、低速度VBSで紙送りされる距離を必要最小限に留めることができ、例えば高画質印刷時におけるスループットを向上させることができる。
【0067】
(3)紙送りを途中で一旦停止させることなく低速領域ABSの境界部で変速させるだけの構成(以下、変速制御構成という)では、変速過程における用紙Pの位置管理が比較的難しい。これに対し本実施形態では、1回分の紙送りを複数の紙送りに分割し、前記変速制御構成に比べ単純な各紙送りを分割の数だけ繰り返す構成なので用紙Pを位置管理し易い。従って、低速領域ABSの境界部で紙送りを変速させても、用紙Pを目標位置に正しく停止させ易くなる。さらに前記変速制御構成では、変速用の速度パターンデータ等のデータを追加する必要があるが、本実施形態の構成では、これまでの通常用と低速用の速度パターンデータを流用でき、データの新規追加が不要であるとともに、分割した個々の紙送りの制御もこれまでと同じで済む。
【0068】
(4)PS駆動の最小移動距離に等しい長さA pulseのBS駆動拡張領域Aを設定し、用紙Pの後端の紙送り開始時の位置である開始位置P1がこのBS駆動拡張領域A内に位置する状態から紙送りを開始するときは直接BS駆動させて用紙Pの後端が入口Pbを跨ぐように用紙Pを低速搬送する。従って、用紙Pの後端を入口Pbで一旦停止させようとしたがため、用紙Pの後端が低速領域ABSの入口Pbで停止できずこれを超える位置まで通常速度VNRで搬送されてしまう不都合が回避される。よって、低速領域ABSでは従来技術に比べより確実に低速搬送を実現できる。
【0069】
(5)PS駆動の最小移動距離に等しい長さB pulseのBS駆動拡張領域Bを設定し、このBS駆動拡張領域B内に用紙Pの後端の搬送先である目標位置P2が位置するときは出口Pcで紙送りを停止させることなく用紙Pの後端が出口Pcを跨いで直接目標位置に至るよう用紙PをBS駆動で低速搬送する。従って、用紙Pの後端を出口Pcで一旦停止させたがため、用紙Pの後端を目標位置P2に停止させることができなくなる不都合が回避される。よって、用紙Pの後端が目標位置P2に位置精度よく停止するので、高い印刷画質精度を保証できる。
【0070】
なお、実施の形態は、上記に限定されず次のような態様でも実施できる。
(変形例1)前記実施形態では、通常速度領域と低速領域とを設け、用紙後端が低速領域を通る際に低速度で紙送りされるようにした。これに対し、通常速度と高速領域とを設け、例えば用紙の所定位置が高速領域を通るときに通常速度より高速で紙送りする制御において適用することもできる。要するに、変速速度は、通常速度に対し低速でも高速でもどちらでよい。また、用紙の所定位置も用紙後端に限定されない。
【0071】
(変形例2)図8の紙送り分割制御と、図9の紙送り分割制御のいずれか一方のみを採用するだけの制御方法でも構わない。
(変形例3)前記実施形態では、紙送りの分割点となる設定位置を変速領域((低速領域)(BS駆動領域))の入口と出口に設定したが、これに限定されるものではない。低速領域の入口手前のBS駆動拡張領域(A Pulse)で紙送りが一旦終わるように、設定位置をBS駆動拡張領域(A Pulse)に設定してもよいし、設定位置を低速領域の入口より少し領域内に入った位置に設定しても構わない。また、低速領域の出口より少し下流側位置のBS駆動拡張領域(B Pulse)で紙送りが一旦終わるように、設定位置をBS駆動拡張領域(B Pulse)に設定してもよいし、設定位置を低速領域の出口より少し領域内に入った位置に設定しても構わない。要するに、紙送り量を分割する設定位置は、変速領域(低速領域)の入口近傍の所定位置や出口近傍の所定位置であれば足りる。なお、分割点となる設定位置は、請求項1では変速領域の境界部に該当する。
【0072】
(変形例4)前記実施形態では、エンコーダの検出パルスを計数して用紙Pの位置を把握したが、エンコーダが無い構成において、紙送りモータを駆動させるための指令パルスを計数することにより用紙Pの位置を把握する構成を採用することもできる。
【0073】
(変形例5)前記実施形態では、用紙の印刷のための搬送エリア内に変速領域を設定し、用紙Pの所定位置(後端)が変速領域(低速領域(BS駆動領域))を通る間だけ搬送速度を変速速度(低速度)に変更する構成とした。これに対し、用紙がはじめは低速度(通常速度)で搬送され、設定された変速領域を通る間だけ搬送速度を通常の高速度(変速速度)に戻す搬送制御を採用することもできる。また、用紙が給紙のはじめから変速領域を通るように変速領域が位置設定され、はじめに低速度(変速速度)で搬送された用紙Pが変速領域から出ると通常の高速度(通常速度)に戻る構成としてもよい。
【0074】
(変形例6)変速領域(BS駆動領域)は、予め設定された固定領域であることに限定されない。ASIC6が判断処理を行うときまでに変速領域は設定されていれば足り、例えば紙種や印刷モードの種類に応じた所定時期、あるいは1回の紙送りの度にその都度、変速領域が設定されても構わない。
【0075】
(変形例7)前記実施形態では、紙送りの分割点とする設定位置を、変速領域(BS駆動領域)の入口Pbおよび出口Pcに設定したが、変速領域の入口位置とは異なる入口近傍位置や、変速領域の出口位置とは異なる出口近傍位置を設定位置に設定することができる。つまり、搬送した場合に、印刷媒体の所定位置が超えるか否かを判断する判断の基準とする基準位置と、印刷媒体搬送(紙送り)を分割する分割点(分割位置)(一旦停止させる停止位置)とが異なる位置であっても構わない。さらに、設定位置は、予め決められた固定位置であることに限らず、可変位置であってもよい。
【0076】
(変形例8)用紙の種類と印刷モードとに基づいて紙送り分割処理を採用するか否かを判断する構成としたが、いずれか一方のみに基づいて紙送り分割処理を採用するか否かを判断する構成とすることもできる。その他、紙送り分割処理を採用するか否かを判断する判断内容は適宜設定することができる。
【0077】
(変形例9)印刷装置は用紙に印刷するものに限定されない。印刷媒体は例えばフィルム状又はシート状の基板であってもよい。例えば液晶ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)、等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等を備えた産業用途の印刷装置(液体噴射装置)に適用することもできる。
【0078】
前記実施形態及び別例から把握される技術的思想を、以下に記載する。
(1)印刷媒体の種類と印刷モードとのうち少なくとも一方に応じて印刷媒体の搬送速度を変更する変速領域を設定するか否かを判断する判断手段を備え、前記制御手段は、前記判断手段により前記変速領域の設定が必要であると判断されたときに限り、前記変速領域を設定して印刷媒体の搬送速度変更処理を実行することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の印刷装置における印刷媒体搬送制御装置。
【0079】
この構成によれば、印刷媒体の種類と印刷モードとのうち少なくとも一方に応じて印刷媒体の搬送速度を変更する変速領域を設定することが必要と判断されたときに限り、変速領域を設定し、印刷媒体の搬送速度変更処理が実行される。例えば高画質印刷する際は、高画質印刷時に用いられる種類の印刷媒体(例えば光沢紙)であることや、高画質印刷モード(例えば写真印刷モード)であると、変速領域が設定される。その結果、印刷媒体の所定位置が変速領域にあるときに印刷媒体が低速で搬送されることにより、印刷媒体の蹴飛ばし現象などが緩和又は防止され、高画質印刷が可能となる。また、変速領域で低速での搬送が必要ないときは変速領域が設定されず、印刷媒体は第2速度で高速搬送される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】シリアルプリンタの電気的構成図。
【図2】紙送り機構部分を示す模式平面図。
【図3】紙送り機構部分を示す模式側面図。
【図4】紙送り分割処理における設定領域を説明する説明図。
【図5】紙送り分割処理のフローチャート。
【図6】同じく紙送り分割処理のフローチャート。
【図7】同じく紙送り分割処理のフローチャート。
【図8】2分割紙送り処理を説明する説明図。
【図9】3分割紙送り処理を説明する説明図。
【図10】(a),(b)従来技術における紙送り制御を示す模式側面図。
【符号の説明】
【0081】
1…印刷装置及びシリアル式印刷装置としてのプリンタ、6…制御手段としてのASIC、12…印刷手段を構成する記録ヘッド、13…搬送手段を構成する紙送りモータ、14…印刷手段を構成するキャリッジモータ、15…搬送手段を構成するとともに搬送ローラとしての紙送りローラ、20…キャリッジ、P…印刷媒体としての用紙、ABS…変速領域及び固定領域としてのBS駆動領域(低速領域)、Pb…入口側の設定位置としての入口、Pc…出口側の設定位置としての出口、A…入口側の拡張領域としてのBS駆動拡張領域、B…出口側の拡張領域としてのBS駆動拡張領域、P1…開始位置(現在位置)、P2…目標位置、VNR…第2速度としての通常速度、VBS…第1速度としての低速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に印刷を行う記録ヘッドと、
印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段と、
前記記録ヘッドと前記搬送手段とを制御する制御手段とを有する印刷装置における印刷媒体搬送制御装置において、
印刷媒体の所定位置が、設定された変速領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、
前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記変速領域の入口を越えるときであって、
(A)前記入口より上流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、
(B)前記拡張領域よりさらに上流側に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、前記入口又は入口近傍に設定された印刷媒体搬送の分割点となる設定位置で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって前記変速領域における印刷媒体搬送を前記第1速度で実行する、ことを特徴とする印刷装置における印刷媒体搬送制御装置。
【請求項2】
印刷媒体に印刷を行う記録ヘッドと、
印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段と、
前記記録ヘッドと前記搬送手段とを制御する制御手段とを有する印刷装置における印刷媒体搬送制御装置において、
印刷媒体の所定位置が、設定された変速領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、
前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記変速領域の出口を越えるときであって、
(A)前記出口より下流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置することになる目標位置まで前記印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体搬送を前記目標位置まで前記第1速度で実行し、
(B)前記拡張領域よりさらに下流側に前記所定位置が位置することになる目標位置まで前記印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体の所定位置が、前記出口又は出口近傍に設定された印刷媒体搬送の分割点となる設定位置で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行する、ことを特徴とする印刷装置における印刷媒体搬送制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記変速領域を跨ぐときには、印刷媒体の所定位置が該変速領域の入口又は入口近傍に設定された印刷媒体搬送の分割点となる設定位置と該変速領域の出口又は出口近傍に設定され印刷媒体搬送の別の分割点となる設定位置で一旦停止するように前記所定量を3分割する3回の印刷媒体搬送に分割し、その分割された1回目と3回目の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行し、2回目の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置における印刷媒体搬送制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記変速領域内に位置することになるときには、印刷媒体の所定位置が前記変速領域の入口又は入口近傍に設定された前記設定位置で一旦停止するように前記所定量を2分割する2回の印刷媒体搬送に分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行するとともに、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度で実行することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置における印刷媒体搬送制御装置。
【請求項5】
前記変速領域は、前記記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲に設定されており、前記所定位置は印刷媒体の後端であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置における印刷媒体搬送制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、(A)前記変速領域の入口の内側に前記搬送手段の最小搬送距離に略等しい長さの第1管理領域を設定し、所定量の印刷媒体搬送を行ったときに前記所定位置が該第1管理領域に位置することになるときは、印刷媒体の所定位置が前記拡張領域の入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、最初の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、
(B)一方、前記変速領域の出口の内側に前記搬送手段の最小搬送距離に略等しい長さの第2管理領域を設定し、印刷媒体の所定位置が該第2管理領域に位置する搬送開始位置から印刷媒体の搬送を開始して所定量の印刷媒体搬送を行うときには、印刷媒体の所定位置が前記拡張領域の出口で一旦停止するように前記所定量を分割し、最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第2速度で実行することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の印刷装置における印刷媒体搬送制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、印刷媒体の搬送後に印刷がなされることがない当該搬送を行うときは、印刷媒体の前記所定位置が前記変速領域の入口又は出口を跨ぐ搬送である場合でも、当該搬送の所定量を分割することなく印刷媒体を前記第2速度で搬送することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の印刷装置における印刷媒体搬送制御装置。
【請求項8】
記録ヘッドとキャリッジの駆動により印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、
印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段と、
印刷媒体搬送と印刷実行を交互に行うよう前記印刷手段と搬送手段とを制御する制御手段とを有するシリアル式印刷装置において、
印刷媒体の所定位置が、予め設定された固定領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、
前記制御手段は、前記所定位置が前記固定領域の上流にあるときに印刷のための所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記固定領域の入口を越えるときであって、
(A)前記固定領域の入口より上流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、
(B)前記拡張領域よりさらに上流側に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、前記入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって前記固定領域における印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、
前記固定領域は、前記記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲に設定されており、前記所定位置は印刷媒体の後端であることを特徴とするシリアル式印刷装置。
【請求項9】
記録ヘッドとキャリッジの駆動により印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、
印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段と、
印刷媒体搬送と印刷実行を交互に行うよう前記印刷手段と搬送手段とを制御する制御手段とを有するシリアル式印刷装置において、
印刷媒体の所定位置が、予め設定された固定領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、
前記制御手段は、前記所定位置が前記固定領域にあるときに印刷のための所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記固定領域の出口を越えるときであって、
(A)前記固定領域の出口より下流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置することになる目標位置への前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、
(B)前記拡張領域よりさらに下流側に前記所定位置が位置することになる目標位置への前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、前記出口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行し、
前記固定領域は、前記記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲に設定されており、前記所定位置は印刷媒体の後端であることを特徴とするシリアル式印刷装置。
【請求項10】
前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記固定領域を跨ぐときには、印刷媒体の所定位置が該固定領域の入口と該固定領域の出口で一旦停止するように前記所定量を3分割する3回の印刷媒体搬送に分割し、その分割された1回目と3回目の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行し、2回目の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行することを特徴とする請求項8又は9に記載のシリアル式印刷装置。
【請求項11】
前記制御手段は、所定量の印刷媒体搬送を実行する際、その指示された印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の所定位置が前記固定領域内に位置することになるときには、印刷媒体の所定位置が前記固定領域の入口で一旦停止するように前記所定量を2分割する2回の印刷媒体搬送に分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行するとともに、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度で実行することを特徴とする請求項8に記載のシリアル式印刷装置。
【請求項12】
前記固定領域の入口の内側に前記搬送手段の最小搬送距離に略等しい長さの第1管理領域を設定されるとともに、前記固定領域の出口の内側に前記搬送手段の最小搬送距離に略等しい長さの第2管理領域が設定され、
前記制御手段は、(A)所定量の印刷媒体搬送を行ったときに前記所定位置が前記第1管理領域に位置することになるときは、印刷媒体の所定位置が前記拡張領域の入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、最初の印刷媒体搬送を前記第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度で実行し、
一方、(B)印刷媒体の所定位置が前記第2管理領域に位置する搬送開始位置から印刷媒体の搬送を開始して所定量の印刷媒体搬送を行うときには、印刷媒体の所定位置が前記拡張領域の出口で一旦停止するように前記所定量を分割し、最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送を終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第2速度で実行することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載のシリアル式印刷装置。
【請求項13】
前記制御手段は、印刷媒体の搬送後に印刷がなされることがない当該搬送を行うときは、印刷媒体の前記所定位置が前記固定領域の入口又は出口を跨ぐ搬送である場合でも、当該搬送の所定量を分割することなく印刷媒体を前記第2速度で搬送することを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載のシリアル式印刷装置。
【請求項14】
印刷媒体に印刷を行う記録ヘッドと、印刷媒体を前記記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段とを有する印刷装置における印刷媒体搬送制御方法において、
印刷媒体の所定位置が、設定された変速領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、
印刷媒体の所定位置が前記変速領域の入口を越えることになる目標位置へ所定量の印刷媒体搬送を行うときは、印刷媒体の搬送開始位置に応じて以下の二つのステップを選択し、
(A)前記入口より上流側に設定される拡張領域内に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップと、
(B)前記拡張領域よりさらに上流側に前記所定位置が位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の所定位置が、前記入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって前記変速領域における印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップと
を備えることを特徴とする印刷装置における印刷媒体搬送制御方法。
【請求項15】
印刷媒体に印刷を行う記録ヘッドと、印刷媒体を前記記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段とを有する印刷装置における印刷媒体搬送制御方法において、
印刷媒体の所定位置が、設定された変速領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、
印刷媒体の所定位置が前記変速領域の出口を越えることになる目標位置へ所定量の印刷媒体搬送を行うときは、印刷媒体搬送の目標位置に応じて以下の二つのステップを選択し、
(A)前記出口より下流側に設定される拡張領域に前記所定位置が位置することになる目標位置まで前記印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップと、
(B)前記拡張領域よりさらに下流側に前記所定位置が位置することになる目標位置まで前記印刷媒体の搬送を行うときは、印刷媒体の所定位置が、前記出口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するステップとを備えたことを特徴とする印刷装置における印刷媒体搬送制御方法。
【請求項16】
記録ヘッドとキャリッジの駆動により印刷媒体に印刷を行う印刷手段による印刷実行と、印刷媒体を記録ヘッドを挟んで上流から下流へ搬送する搬送手段による印刷媒体搬送とを交互に行って印刷媒体に印刷を施す印刷装置における印刷媒体搬送制御方法であって、
前記記録ヘッドより上流側に位置する搬送ローラを挟む範囲には予め固定領域が設定されるとともに、印刷媒体の後端が前記固定領域にあるうちは、該印刷媒体が第1速度で搬送されるようになっており、
印刷媒体の後端が前記固定領域の上流にある搬送開始位置から印刷のための所定量の印刷媒体搬送を実行した場合に、印刷媒体の後端が前記固定領域の入口を越えることになる目標位置へ所定量の印刷媒体搬送を行うときは、印刷媒体の搬送開始位置に応じて以下の二つのステップを選択し、
(A)印刷媒体の後端が前記固定領域の入口より上流側に設定される拡張領域内に位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップと、
(B)印刷媒体の後端が前記拡張領域より上流側に位置する搬送開始位置から前記印刷媒体の搬送を開始するときは、印刷媒体の後端が、前記入口で一旦停止するように前記所定量を分割し、その分割された最初の印刷媒体搬送を前記第1速度より高速な第2速度で実行するとともに、該最初の印刷媒体搬送が終了して停止した後、残りの印刷媒体搬送であって前記固定領域における印刷媒体搬送を前記第1速度で実行するステップと
を備えたことを特徴とする印刷装置における印刷媒体搬送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−30523(P2007−30523A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293164(P2006−293164)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【分割の表示】特願2002−357855(P2002−357855)の分割
【原出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】