説明

印刷装置ネットワークシステム

【課題】各孔版印刷装置から送信されるドラムサイズ関連情報と、PC等のコンピュータより出力する画像データサイズ情報とを基に、最もマスタの使用量が少ない孔版印刷装置を優先的に選択し、最も安価に印刷物を得ることができる孔版印刷装置ネットワークシステムを提供する。
【解決手段】孔版印刷装置1A,1B,1Cにおける各ドラムサイズ記憶手段89Aからの各ドラムサイズ関連情報と、PC100A,100B,100Cの何れか一つにおける画像データサイズ記憶手段103Aからの画像データサイズ情報とに基づいて、PC100A,100B,100Cの何れか一つから送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズのドラム7を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cの何れかを優先的に選択する第1の出力先制御手段として機能するCPU102を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版印刷装置を含む印刷装置ネットワークシステムに関し、さらに詳しくは、複数の印刷装置と少なくとも1つの画像データ送信手段とが通信可能にネットワークを構成する印刷装置ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製版済みのマスタを巻き付けられて回転駆動される多孔性円筒状の版胴を備えた印刷部、マスタを製版しその製版済みのマスタを版胴に巻き付ける製版部および版胴より使用済みのマスタを排版する排版部等を具備した孔版印刷装置と、この孔版印刷装置と通信可能に接続されたコンピュータとで構成され、コンピュータからの信号に基づいて孔版印刷装置が作動する孔版印刷装置ネットワークシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の孔版印刷装置ネットワークシステムにおいて、コンピュータとしてのパソコン(以下、「PC」と略称する)からの指令により、ネットワーク上にある複数の孔版印刷装置の中から1つを選択して印刷物を得る場合には、PC画面上で複数の孔版印刷装置の中から1つを選択して印刷を行っている。この場合、PC画面上には複数の孔版印刷装置の製品名称が表示されており、ユーザの通常作業は、その中から選択するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−35010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PC画面上で表示されるのは製品名称のみで、その孔版印刷装置がどのようなスペック(特には外周部に版胴を備えた印刷ドラム(以下、単に「ドラム」ともいう)のドラムサイズや印刷可能サイズ等の仕様)を持っているのかを、すべてのユーザが知っていることはない。これは、特に不特定多数のユーザがネットワーク上で複数のPCを使用する場合では顕著である。
【0006】
例えば、A4サイズの画像の印刷物を得る際に、孔版印刷装置のスペックを知らないために、ネットワーク上には、A4サイズのドラムを持つ孔版印刷装置があるにも拘わらず、A3サイズの画像が得られる孔版印刷装置を選択する場合がある。このような場合、A3サイズのドラムの版胴に巻かれた製版済みのマスタは、最大でA3サイズ画像を得ることが可能な長さを有しているので、その長さの半分の画像しかないA4サイズの画像を出力して製版してしまうと、消費するマスタが非常に無駄になる問題がある。
また、コストに注目すると、孔版印刷装置で100枚の印刷用紙に印刷を行った場合に、1枚当たりの印刷物(印刷用紙)のコストは、ちなみに次のような括弧内の計算となる〔(1版分のマスタのコスト+100枚印刷した時のインキの消費コスト)/100+印刷用紙1枚の単価〕。通常、印刷に使用するインキのコストは、画像量にもよるが、印刷物(印刷用紙)1枚当たり、数銭〜2、3円である。これと比べて、ドラムの版胴に巻き付ける1版当たりのマスタのコストは、通常、ドラムサイズとしてA3サイズのドラムに巻装するA3サイズのマスタで、10円〜30円程となっている。このことからも、安価に印刷物を得るには、マスタの使用量に密接に関連するドラムサイズを最適にすることが最も重要である。
【0007】
一方で、安価な印刷物を得るのにマスタに次いでコストが掛かるものは、印刷用紙(以下、「用紙」という)である。最終的にA4サイズの印刷物を得る場合には、A4サイズの用紙を使用するのが最も安価である。例えば、B4サイズやA3サイズの用紙では、余白が多くなるばかりで、不経済である。特に印刷装置の中でも孔版印刷装置は、一度に例えば数千枚という多数枚を印刷する場合に使用することが多いので、出力先として選択した孔版印刷装置に装備している用紙サイズが適切なサイズでない場合は、非常に無駄となってしまう。
【0008】
一般的な孔版印刷装置では、複数種類の用紙を給紙可能な所謂「カセットバンク」を装備しているものが少なく、1種類の用紙しか準備できない孔版印刷装置が多い。従って、前述のように、ユーザがPC画面上で複数の孔版印刷装置の中から出力先を選択する際に、装備している用紙サイズを確認する必要があり、これも煩わしい作業である。
【0009】
そこで、本発明は、上述した事情・問題点に鑑みてなされたものであり、孔版印刷装置を含む複数の印刷装置と少なくとも1つの画像データ送信手段(例えばPC等のコンピュータ)とが通信可能にネットワークを構成する印刷装置ネットワークシステムにおいて、各印刷装置から送信されるドラムサイズ関連情報と、PC等のコンピュータより出力する画像データサイズ情報とを基に、最もマスタの使用量が少ない印刷装置を優先的に選択し、最も安価に印刷物を得ることができる印刷装置ネットワークシステムを実現し提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決すると共に上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・発明特定事項(以下、「構成」という)を採っている。
請求項1記載の発明は、製版済みのマスタを外周面に巻装する版胴を備えた印刷ドラム、該版胴上の製版済みのマスタにインキを供給するインキ供給手段、前記印刷ドラムのドラムサイズ関連情報を記憶するドラムサイズ記憶手段、該ドラムサイズ記憶手段に記憶されている前記ドラムサイズ関連情報に応じて、製版済みのマスタを前記版胴の外周面に巻装する給版手段、ネットワークを介して送られてきた画像データを受信する画像データ受信手段および該画像データ受信手段で受信した画像データに基づいて印刷動作を実行させる制御手段を有する複数の印刷装置と、送信する画像データのサイズを記憶する画像データサイズ記憶手段を有し、該画像データを送信する少なくとも1つの画像データ送信手段とが、通信可能にネットワークを構成する印刷装置ネットワークシステムにおいて、前記各印刷装置における前記各ドラムサイズ記憶手段からの前記各ドラムサイズ関連情報と、前記少なくとも1つの画像データ送信手段における前記画像データサイズ記憶手段からの前記画像データサイズ情報とに基づいて、前記少なくとも1つの画像データ送信手段から送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズの前記印刷ドラムを有する前記印刷装置を優先的に選択する第1の出力先制御手段を具備することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の印刷装置ネットワークシステムにおいて、前記各印刷装置は、前記印刷ドラムヘ給送するシートのサイズを検知するシートサイズ検知手段を備えたシート給送部を有しており、前記各印刷装置における前記各ドラムサイズ記憶手段からの前記各ドラムサイズ関連情報と、前記各印刷装置における前記各シートサイズ検知手段からの前記各シートサイズ情報と、前記少なくとも1つの画像データ送信手段における前記画像データサイズ記憶手段からの画像データサイズ情報とに基づいて、前記少なくとも1つの画像データ送信手段から送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズの前記印刷ドラムと最も小さいサイズのシートを給送可能な前記シート給送部とを有する前記印刷装置を優先的に選択する第2の出力先制御手段を具備することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の印刷装置ネットワークシステムにおいて、前記少なくとも1つの画像データ送信手段から送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズの前記印刷ドラムを有する前記印刷装置と、最も小さいサイズのシートを給送可能な前記シート給送部を有する前記印刷装置との何れか一方を優先的に選択可能とする選択手段を具備することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載の印刷装置ネットワークシステムにおいて、前記各ドラムサイズ記憶手段は、前記各ドラムサイズ関連情報として、前記版胴における印刷可能領域サイズを記憶することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載の印刷装置ネットワークシステムにおいて、前記各ドラムサイズ記憶手段は、前記各ドラムサイズ関連情報として、前記版胴の外周面に巻装する製版済みのマスタサイズを記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記課題を解決して新規な印刷装置ネットワークシステムを実現し提供することができる。
すなわち、本発明によれば、上記構成により、最もコストの掛かるマスタと用紙について、画像データのサイズ情報と、ネットワーク上にある印刷装置からの情報とに基づいて最適な印刷装置を出力先で優先的に選択できるので、ユーザが煩わしい作業を行うことなく、最も安価に印刷物を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態等を示す孔版印刷装置ネットワークシステムの概念図である。
【図2】孔版印刷装置の全体構成および動作を示す正面図である。
【図3】図1における孔版印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】パソコン側の制御構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態における孔版印刷装置ネットワークシステムにおいて、ドラムサイズ記憶手段による版胴サイズの情報例を説明する図である。
【図6】第1の実施形態等において、パソコン側の画像表示装置に表示される出力先設定画面の表示内容(出力先設定および印刷実行)を説明する図である。
【図7】図6とは別の出力先設定画面の表示内容(出力先設定および印刷実行)を説明する図である。
【図8】(a)は、シートサイズ検知手段の設置箇所を示す給紙部の斜視図、(b)は、シートサイズ検知手段を構成する摺動子の拡大平面図である。
【図9】シートサイズ検知手段を構成する各センサの配置を示す斜視図である。
【図10】第2の実施形態における孔版印刷装置ネットワークシステムにおいて、シートサイズ検知手段による用紙サイズの情報例を説明する図である。
【図11】第3の実施形態における孔版印刷装置ネットワークシステムにおいて、シートサイズ検知手段による用紙サイズの情報例およびドラムサイズ記憶手段による製版済みのマスタサイズの情報例を説明する図である。
【図12】第3の実施形態において、パソコン側の画像表示装置に表示される出力先設定画面の表示内容(出力先設定および印刷実行)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0018】
(第1の実施形態)
図1〜図7を参照して、本発明の印刷装置ネットワークシステムに係る第1の実施形態の孔版印刷装置ネットワークシステムを説明する。
図1に示すように、本実施形態の孔版印刷装置ネットワークシステムは、印刷装置として複数(本実施形態例では3台)の孔版印刷装置1A,1B,1Cを用い、画像データ送信手段としてコンピュータの一例である少なくとも1台(本実施形態例では3台)のPC(パソコン)100A,100B,100Cを用いて、これらがネットワーク101を介して互いに通信可能に構成されている。
ネットワーク101の種類としては、有線LANによるものや、無線LAN、赤外線通信等の無線通信によるものでもよい。
【0019】
図2を参照して、孔版印刷装置1A,1B,1Cについて説明する。3台の孔版印刷装置1A,1B,1Cは、実質的に同一の構成を有しており、この共通する構成を中心に孔版印刷装置1Aを代表して説明する。孔版印刷装置1A,1B,1Cで相違する構成・事項は、後でまとめて詳述する。
孔版印刷装置1Aは、印刷部2、製版給版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6および画像読取部としてのスキャナ32から主に構成された周知のものである。
印刷部2は、インキ供給手段8を内部に版胴7aを外周部に備えた印刷ドラム(以下、単に「ドラム」ともいう)7と押圧手段としてのプレスローラ9とから主に構成されている。印刷部2は、回転駆動される版胴7a上の製版済みのマスタにインキ供給手段8よりインキを供給しながら給紙部4から給送されてくるシート・被印刷媒体としての用紙50をプレスローラ9で押し付けて印刷する周知の機能を有する。
【0020】
版胴7aは、ステンレス薄板をエッチング加工したもの、あるいはニッケル電鋳された薄板により円筒状に形成されている。版胴7aは、インキ通過性の孔をその外周面上に多数穿設された印刷可能領域と、ステージ部10を固着された非印刷可能領域とを有している。また、版胴7aの外周面上には、ポリエステルまたはステンレスの細線等で織られた図示しないメッシュスクリーンが1〜3層程度巻き付けられている。さらに版胴7aの外周面上には、版胴7aの軸線方向に延在するステージ部10と、ステージ部10と共にマスタの先端を挟持するクランパ11とが配設されている。クランパ11は、支軸11aに揺動自在に支持され、ステージ部10に対して接離・開閉自在に設けられている。
【0021】
ドラム7における版胴7aの内部には、インキ供給手段8が配設されている。インキ供給手段8は、インキ供給パイプ13、インキローラ14、ドクターローラ15から主に構成されている。
インキ供給パイプ13は、ドラム7の支持軸を兼ねており、その一端を孔版印刷装置本体側に配設された孔版印刷装置1Aの筐体側板(以下、単に「筐体側板」という)に支持されており、その表面には、版胴7aの内周面にインキを供給するための多数の小さな孔が穿設されている。インキ供給パイプ13の下方には、インキローラ14とドクターローラ15とが配設されている。インキローラ14は、インキ供給パイプ13に固着されたインキ側板に回転自在に支持されていて、その外周面を版胴7aの内周面と当接させるよう構成されており、インキ供給パイプ13より供給されたインキを版胴7a内周面に供給する。インキローラ14の近傍には、回転自在なドクターローラ15が配設されている。ドクターローラ15は、その外周面とインキローラ14の外周面との間に僅かな間隙が生じるように配置されており、インキローラ14との外周面の近接部において、断面楔状のインキ溜まり16を形成する。インキ供給パイプ13よりインキ溜まり16へと供給されたインキは、インキローラ14とドクターローラ15との間隙を通過することにより均一な層状とされ、インキローラ14の外周面に供給される。
ドラム7は、版胴7aと共にインキ供給パイプ13の周りを図示しないドラム駆動手段としての駆動モータによって回転駆動される。
【0022】
ドラム7の下方には、図示しない接離手段に支持され、その外周面を版胴7aの外周面に対して接離自在に設けられた回転自在なプレスローラ9が配設されている。プレスローラ9は、図2に二点鎖線で示すように給紙部4より給送されてきた用紙50を版胴7aに押し付け・押圧して用紙50に印刷画像を形成させる印刷位置と、同図に実線で示すように版胴7aの外周面から離間した非印刷位置との間で揺動自在に配設されている。プレスローラ9近傍の上記筐体側板側には、プレスローラ9を印刷位置と非印刷位置との間で版胴7aの回転と同期を取って揺動変位させる接離手段(図示せず)が配設されている。
【0023】
印刷部2の上方の筐体の上部には、原稿の画像を読み取るスキャナ32が配設されている。
スキャナ32は、図示しない原稿受け台上に配置された複数枚の原稿を一枚ずつ自動的に分離・搬送して読取部としてのコンタクトガラス41上に移送した後、図示しない原稿排紙台に排出する周知の構成を具備するADF(自動原稿給送装置)ユニット40と、ADFユニット40により搬送された原稿または手動操作により原稿が載置されるコンタクトガラス41と、コンタクトガラス41上を搬送される原稿または載置された原稿の表面を照明する蛍光灯42と、原稿の表面からの反射光を折り返し反射するミラー群43と、ミラー群43により反射された反射光を縮小レンズ44を介して受光するCCD(電荷結合素子)等の画像読取センサ45とを有する。画像読取センサ45は、受光した反射光に対応して光電変換をし、これにより得られた画像信号を図示しないアナログ/デジタル(以下、「A/D」と略記する)変換部に入力する。
【0024】
スキャナ32の下方であって印刷部2の右方には、マスタ34を製版しその製版済みのマスタ34を版胴7aの外周面に巻き付けるための製版給版部3が配設されている。製版給版部3は、マスタ貯容手段28、製版手段29、切断手段30、搬送手段31等から主に構成されている。
【0025】
マスタ貯容手段28は、孔版印刷装置1Aの上記筐体側板に固着されたマスタ貯容部材33等から主に構成されている。マスタ貯容部材33は、マスタ34をロール状に巻成したマスタロール35の芯部35aを回転自在に支持している。
マスタ貯容手段28の左方には、製版手段29が配設されている。製版手段29は、プラテンローラ36、サーマルヘッド37等から主に構成されている。プラテンローラ36は、上記筐体側板に回転自在に支持され、図示しないステッピングモータによって回転駆動される。サーマルヘッド37は、多数の発熱素子を備え、上記筐体側板に取り付けられており、図示しない付勢手段によってプラテンローラ36に圧接する向きに付勢されている。サーマルヘッド37は、スキャナ32の画像読取センサ45により光電変換された画像信号が上記A/D変換部に入力されてデジタル画像信号に変換され、さらに図2に示す画像処理部91で処理されて送出されるデジタル画像データ信号に基づいて、多数の発熱素子を発熱駆動されることでマスタ34を位置選択的に穿孔・製版する周知の機能を有する。
【0026】
製版手段29のマスタ搬送方向下流側には、上記筐体側板に取り付けられた固定刃30aと、この固定刃30aに対して回転移動する可動刃30bとからなる切断手段30が配設されている。切断手段30のマスタ搬送方向下流側には、図示しない駆動手段で回転駆動される駆動ローラ31a,31cと、各駆動ローラ31a,31cと連れ回りする従動ローラ31b,31dとから構成される搬送ローラ対等からなる搬送手段31、およびマスタの搬送を案内・補助するガイド板38,39等がそれぞれ配設されている。
搬送手段31のうちの駆動ローラ31cおよび従動ローラ31dは、製版済みのマスタ34を版胴7aの外周面に巻装する給版手段を構成している。給版手段は、上記した駆動ローラ31c、従動ローラ31dの他、クランパ11およびドラム駆動手段としての上記図示しない駆動モータから主に構成される。
【0027】
製版給版部3の下方には、給紙部4が配設されている。給紙部4は、給紙台としての給紙トレイ46、給紙ローラ47、分離手段48、レジストローラ対49等から主に構成されている。
【0028】
給紙トレイ46は、その上面に用紙50を積載し、用紙50の増減と連動して、上記筐体側板に上下動自在に支持されている。また、給紙トレイ46には、シート幅方向に移動自在な左右一対のサイドフェンス51が設けられている。サイドフェンス対51は、図示しないラック&ピニオンの機構により、シートセンタ基準で用紙50の幅に合わせることができる。
【0029】
給紙ローラ47は、給紙トレイ46上の最上位の用紙50と当接するように設けられており、図示しない駆動手段で回転駆動される。分離ローラ48aは、給紙ローラ47を回転駆動する上記駆動手段によって回転駆動され、それぞれ図示しない歯付プーリおよびタイミングベルトからなる駆動力伝達手段を介して給紙ローラ47に連結されている。
分離手段48は、分離ローラ48aと、分離ローラ48aと圧接する方向およびこれから離間する方向に上記筐体側板に移動自在に案内された摩擦分離部材としての分離パッド48bと、この分離パッド48bを分離ローラ48aと圧接する向きに付勢する図示しない圧縮ばねとからなる。給紙ローラ47により複数枚の用紙50が引き出された場合、分離手段48による協働作用によってその最上位の1枚のみが分離される。レジストローラ対49は、分離手段48によって給送された用紙50の先端を突き当てることで用紙50の先端部に所定の撓みを形成し、版胴7aの回転およびプレスローラ9の揺動動作と同期して、版胴7aの外周面とプレスローラ9との間に所定のタイミングで用紙50を給送する。
【0030】
印刷部2の左方には、版胴7aより使用済みのマスタ34を排版する排版部5が配設されている。排版部5は、上部排版部材53、下部排版部材54、排版ボックス55、圧縮板56等から主に構成されている。
【0031】
上部排版部材53は、図示しない駆動手段で回転駆動される駆動ローラ57と従動ローラ58、および各ローラ57,58間に掛け渡された耐油性を有するゴムベルト59から構成されている。下部排版部材54は、駆動ローラ57と図示しないギヤ列によって連結され回転駆動される駆動ローラ60と従動ローラ61、および各ローラ60,61間に掛け渡された耐油性を有するゴムベルト62から構成されている。下部排版部材54は、駆動ローラ57の図示しない支軸を中心に、図示しない移動手段によって左右方向に移動自在に設けられており、駆動ローラ60の外周面は、版胴7aの外周面に対して接離自在となるように構成されている。排版ボックス55は、その内部に剥離搬送された使用済みのマスタ34を貯容する機能・構成を有し、上記筐体側板に対して着脱自在に設けられている。排版ボックス55の上方近傍には、図示しない昇降手段によって図の実線位置と破線位置とを選択的に取り得る上下動自在な圧縮板56が配設されている。
【0032】
排版部5の下方には、印刷部2で印刷された用紙50を版胴7aから剥離し排紙台としての排紙トレイ68に排出する排紙部6が配設されている。排紙部6は、剥離爪63、従動ローラ64、駆動ローラ65、無端ベルト66、吸引ファン67、排紙トレイ68等から主に構成されている。
【0033】
剥離爪63は、版胴7a上の製版済みのマスタ34からインキを転移された印刷済みの用紙50を剥離するものであり、その基端部を上記筐体側板に所定角度回動自在に支持され、その先端を版胴7a上の製版済みのマスタに近接させて印刷済みの用紙50を剥離・分離する分離位置と、その先端を分離位置から離間させることでクランパ11等の障害物がその先端と干渉しない非分離位置との間で揺動変位自在に配設されている。剥離爪63の基端部近傍の上記筐体側板側には、剥離爪63の先端を分離位置と非分離位置との間で、版胴7aの回転と同期を取って揺動変位させる図示しない揺動手段が配設されている。
【0034】
従動ローラ64と駆動ローラ65とは、上記筐体側板に回転自在に支持されており、各ローラ間64,65には、表面に複数の開孔を有する耐油性を有する無端ベルト66が掛け渡されている。駆動ローラ65は、図示しない駆動手段で回転駆動され、この回転力は無端ベルト66を介して従動ローラ64に伝達される。従動ローラ64と駆動ローラ65との間の下方には、無端ベルト66の表面に印刷画像を形成された印刷済みの用紙50を吸引するための吸引ファン67が配設されている。駆動ローラ65の印刷用紙搬送方向下流側には、搬送・排出された印刷済みの用紙50を積載する排紙トレイ68が配設されている。排紙トレイ68は、上記筐体側板側に着脱自在に取り付けられている。
【0035】
孔版印刷装置本体としての孔版印刷装置1Aの筐体(以下、単に「筐体」という)内部には、孔版印刷装置1Aの上記各部・装置の動作を制御して印刷動作を実行させるための制御手段90が配設されている。
筐体の上部には、孔版印刷装置1Aの各部・各装置に所定の動作指示を与えたり動作状態を確認したりするための図2にのみ示す操作パネル69が配置されている。操作パネル69の細部構成は、例えば特許文献1の図5に示されていると同様である。
【0036】
図3を参照して、孔版印刷装置1A側の制御構成を説明する。
同図に示すように、制御手段90は、主制御部85および記憶装置87から構成されている。主制御部85は、CPU(中央演算処理装置)86とタイマ等とら主に構成されている。
記憶装置87は、電池等でバックアップされたRAM88(以下、単に「RAM88」という)と、ROM89で構成されたドラムサイズ記憶手段89A等とから主に構成されている。図3において、画像データ受信手段20は、孔版印刷装置1Aの筐体内に設けられ、図1および図5に示すネットワーク101を介してPC100A,100B,100Cから出力される画像データを受信する装置であり、例えばインターフェース装置およびコントローラからなる。
画像処理部91は、スキャナ32から出力される画像データや、ネットワーク101から画像データ受信手段20および主制御部85を介して、PC100A,100B,100Cから出力される画像データを2値化展開処理等する機能を有する。また同図において、太い実線の矢印は画像データ信号の流れを、細い実線の矢印は制御データ信号の流れをそれぞれ表している。
【0037】
CPU86には、スキャナ32の画像読取センサ45で読み取られ光電変換された画像信号が上記A/D変換部に入力されてデジタル画像信号に変換され、さらに画像処理部91で画像処理されて送出されるデジタルの画像データ信号と、記憶装置87におけるドラムサイズ記憶手段89Aから適宜呼び出されるドラムサイズ関連情報(データ信号)と、操作パネル69の図示しない各種キーからの出力信号と、シートサイズ検知手段52からのシートサイズ情報(データ)に係る出力信号と、PC100A,100B,100Cからのデジタルの印刷用の画像データに係る出力信号とが送信・入力される。
なお、図3において二点鎖線で示すシートサイズ検知手段52は、第1の実施形態では用いられず、第2および第3の実施形態で用いられることを表しており、説明の簡明化のため図3に示したことを付記しておく。
【0038】
図3において、92は、同図に括弧を付して示すスキャナ32を構成する上記モータや画像読取センサ45等のアクチュエータ(制御対象手段)に電気的に接続されていてそれらを駆動するスキャナ駆動回路を示す。93は、同図に括弧を付して示す印刷部2、給紙部4および排紙部6を構成する各モータやファン等のアクチュエータ(制御対象手段)に電気的に接続されていてそれらを駆動する主駆動回路を示す。94は、同図に括弧を付して示す製版給版部3を構成する上記各モータやサーマルヘッド37等のアクチュエータ(制御対象手段)に電気的に接続されていてそれらを駆動する製版給版駆動回路を示す。95は、同図に括弧を付して示す排版部5を構成する各モータ等のアクチュエータ(制御対象手段)に電気的に接続されていてそれらを駆動する排版駆動回路を示す。
スキャナ駆動回路92、主駆動回路93、製版給版駆動回路94、排版駆動回路95は、主制御部85のCPU86に電気的に接続されている。
【0039】
CPU86に入力された上記各信号は、ROM89に記憶された動作プログラムに基づいて演算・制御処理され、RAM88に随時記憶されつつ、操作パネル69の図示しない表示装置と、画像処理部91と、スキャナ駆動回路92と、主駆動回路93と、製版給版駆動回路94と、排版駆動回路95とにそれぞれ各種指令・データ信号として出力される。
【0040】
ROM89内のドラムサイズ記憶手段89Aは、ドラム7のドラムサイズ関連情報を記憶する機能を有する。孔版印刷装置1A,1B,1Cでそれぞれ予め設定されていてドラムサイズ記憶手段89Aに記憶されているドラムサイズ関連情報としては、第1に版胴7a自体のサイズとしての版胴サイズ、第2に版胴7aにおける印刷可能領域サイズ、第3に版胴7aの外周面に巻装する製版済みのマスタサイズが挙げられる。
【0041】
次に、図4を参照して、画像データ送信手段としてのPC100A,100B,100C側の制御構成を説明する。PC100A,100B,100Cは、実質的に同一の構成であるため、PC100Aを代表して説明する。
PC100Aのハードウェアは、PC本体に内蔵されている演算装置および制御装置としての主制御部102および記憶装置103と、外付けされている入力装置104およびPC本体で処理された情報を出力する装置である出力装置としての画像表示装置105とから主に構成されている。
【0042】
主制御部102は、演算機能および制御機能を有するCPU等からなる。主制御部102の上記両機能は、主として上記CPUが担っていることから、後述する説明の簡明化のために、「主制御部102」を「CPU102」ともいう。
記憶装置103は、例えばキャッシュやレジスタを含む内部記憶装置(メインメモリ)と、例えばHDD(ハードディスク・ドライブ)からなる外部記憶装置とを有する。記憶装置103には、PC100A側での動作プログラムが予め記憶されている他、PC100A側で随時作成する画像データのサイズ(2次元サイズ)を記憶する画像データサイズ記憶手段103Aが設けられている。
【0043】
入力装置104は、主制御部102に対して指示を与えたりデータを入力する装置であり、本実施形態では周知構成のキーボードおよびマウス等を有する。画像表示装置105は、CRT(陰極線管・表示装置)を有するが、CRTに代えてLCD(液晶表示装置)も用いられる。また、入力装置としてはイメージスキャナやデジタルカメラあるいはデジタルビデオ、出力装置としてはプリンタ等も随時用いられる。
【0044】
PC100Aのソフトウェア構成は、基本ソフトウェアとしてのOS(オペレーティング・システム)110と、アプリケーション・ソフトウェアとしてのアプリケーション112と、ユーティリティ・ソフトあるいはユーティリティ・プログラムとも呼ばれるユーティリティとしての印刷管理ユーティリティ113とから主に構成されていて、これらは相互に関連付けられている。
OS110には、ユーザが孔版印刷装置1A,1B,1Cを利用できる環境を提供するためのソフトウェアとして、例えばWindows(登録商標)が使用されていて、アプリケーション・ソフトウェアを共通して利用できるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の提供のための、孔版印刷装置1A,1B,1Cを選択して印刷実行の指示を与えたり、動作を制御する指示を与えたりする印刷装置用ドライバ111が設定されている。
【0045】
画像表示装置105には、印刷装置用ドライバ111を作動させるために、図6に示す出力先設定画面114を表示させることができる。出力先設定画面114は、例えばウインドウズ(登録商標)のデスクトップ画面またはWord(ワード:商品名)メニュー画面のファイルから、マウスによるカーソル移動操作や、キーボードの各種キーの組み合わせによるショートカットキー操作で呼び出すことができる。
【0046】
図6に示す出力先設定画面114には、後述するように優先出力先の孔版印刷装置1A,1B,1Cの優先順位が自動的に表示されるので、ユーザはマウスによるカーソル移動操作やキーボードの各種キーもしくはショートカットキー操作(以下、単に「マウスやキーボード操作」という)で、「印刷実行」を選択・設定することができる。
【0047】
本実施形態におけるPC100A,100B,100CのCPU102は、図3に示した孔版印刷装置1A,1B,1Cにおける各ドラムサイズ記憶手段89Aからの各ドラムサイズ関連情報(データ)と、PC100A,100B,100Cの何れか一つにおける画像データサイズ記憶手段103Aからの画像データサイズ情報(データ)とに基づいて、PC100A,100B,100Cの何れか一つから送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズのドラム7を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cの何れかを優先的に選択する第1の出力先制御手段として機能する。
第1の出力先制御手段としてのCPU102は、さらに具体的には、PC100A,100B,100Cの何れか一つから送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズのドラム7を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cの何れかを優先的に選択したとき、画像データを送信したPC100A,100B,100Cの何れか一つの画像表示装置105に出力先設定画面114を立ち上げて表示・報知させる機能も有する。
【0048】
次に、孔版印刷装置1A,1B,1CおよびPC100A,100B,100Cにおいて、相違する構成・動作を中心に説明する。上述したように、孔版印刷装置1A,1B,1Cには、図3に示したように、ドラム7における版胴7aのサイズを記憶するドラムサイズ記憶手段89Aがあり、ドラムサイズ関連情報としての版胴サイズの情報(データ)がドラムサイズ記憶手段89Aに記憶されている。ここで、「版胴サイズ」とは、具体的には図2において、円筒状に巻かれた版胴7a外周面の円周長さ(直径でも無論よい)を指す。例えば、具体的には版胴サイズがA4サイズの版胴7aの円周長さは450mm、版胴サイズがB4サイズの版胴7aの円周長さは500mm、版胴サイズがA3サイズの版胴7aの円周長さは560mmとなっている。一般的には、印刷可能な用紙サイズにより、版胴7aの円周長さが異なるようにドラム7は構成されている。
無論、A3サイズのドラム7でA4サイズの画像をA4サイズの用紙に印刷することは可能だが、A3サイズのドラム7には、常にA3サイズ以上のマスタを巻装している。それ故に、画像部分以外のマスタは無駄になっている。
【0049】
図5に示すように、孔版印刷装置1AはA4サイズ、孔版印刷装置1BはB4サイズ、孔版印刷装置1CはA3サイズとそれぞれ異なる版胴サイズのドラム7を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cがネットワーク101上に接続・設置されている。
また、図2および図3に示したように、それぞれの孔版印刷装置1A,1B,1Cには、送信された画像データに基づいてマスタ34に画像データを書き込み、穿孔製版した製版済みのマスタ34を版胴7aへ巻装し、用紙50に印刷する一連の印刷動作を実行する制御手段90を備えている。
【0050】
画像データを送信する画像データ送信手段としてのPC100A,100B,100Cは、図5に示すように前述のネットワーク101に接続されている。以下、PC100A,100B,100Cの何れか一つを表す場合、「PC100」と略称する。
PC100にて、出力すべき画像データが準備できたら、図4に示した印刷装置用ドライバ111が起動することによりアプリケーション112から印刷要求が実行される。ここでは、ユーザによる入力装置104(キーボードやマウス)等の操作で作成された印刷用の画像データが生成されると同時に、画像データの出力サイズが設定される。このとき、設定された画像データの出力サイズ情報(データ)を画像データサイズ記憶手段103Aに記憶する。
【0051】
次に、PC100にて、出力先を設定する。このとき、ネットワーク101上の孔版印刷装置1A,1B,1Cに設定されているドラムサイズ記憶手段89Aからの情報(データ信号)と、PC100(PC100A,100B,100Cの何れか一つ)からの画像データサイズ記憶手段103Aからの情報(データ信号)とに基づいて、PC100上にある第1の出力先制御手段としてのCPU102(図4参照)により、画像データを出力可能で、かつ、最もドラム7の版胴サイズが小さい孔版印刷装置を判別し、図6に示すように、安価に印刷できる孔版印刷装置の優先順位を表示し、PCユーザに状況を報知する。
【0052】
この際、CPU102(第1の出力先制御手段)では、以下のような判断を行う。画像データはA4サイズである。対するネットワーク101上にある複数の孔版印刷装置1A,1B,1Cは、前述のように版胴サイズが孔版印刷装置1AではA4サイズ、孔版印刷装置1BではB4サイズ、孔版印刷装置1CではA3サイズのドラム7を有している。画像データのA4サイズに対して、孔版印刷装置1AのA4サイズのドラム7は、画像データサイズと版胴サイズとが一致しており、無駄となる部分が無い。一方、孔版印刷装置1B、孔版印刷装置1Cはそれぞれ、B4、A3サイズの版胴サイズであるので、本来出力可能な画像データサイズに対して、画像データサイズは小さく、B4サイズ、A3サイズの順に無駄が発生してしまう。そこで、優先順位1:孔版印刷装置1A、優先順位2:孔版印刷装置1B、優先順位3:孔版印刷装置1Cとする。図6では、孔版印刷装置1Aを最優先(第一優先)、孔版印刷装置1Bを第二優先、孔版印刷装置1Cを第三優先と表示している。
【0053】
図6に示すように、孔版印刷装置1Aの出力でよい場合は、PCユーザが、出力先設定画面114より「印刷実行」をマウスやキーボード操作で設定し、画像データを孔版印刷装置1Aに送信する。
その後、孔版印刷装置1Aでは、図3において、ネットワーク101を介して送られた画像データを画像データ受信手段20で受信し、その画像データに基づいて印刷動作を実行する。この印刷動作は、制御手段90の指令の下に実行される。
【0054】
図6の出力先設定画面114が表示された場合において、PCユーザが所定の時間内に「印刷実行」を設定しなかったときには、CPU102(第1の出力先制御手段)からの指令によって、「印刷実行」を設定する操作を行う旨の表示・報知や、CPU102が自動的に「印刷実行」を設定するようにしてもよい。
【0055】
また、図7には、安価に印刷できる優先出力先:孔版印刷装置選択表示例の1つを示す。同図の出力先設定画面114Aでは、ネットワーク上101に接続されている孔版印刷装置1A,1B,1Cの全てを表示しないで、最優先で選択した孔版印刷装置1Aのみを表示している。ここで、PCユーザは、同図の孔版印刷装置1Aからの出力でよい場合は、PCユーザが、画面より「印刷実行」をマウスやキーボード操作で設定し、画像データを孔版印刷装置1Aに送信する。また、孔版印刷装置1Aではなく、他の孔版印刷装置1B,1Cを選択する場合には、画面上の「▽」をマウスやキーボード操作で選択・設定し、優先順に表示されている他の孔版印刷装置1B,1Cから選択することも可能である。
【0056】
図7の出力先設定画面114A、入力装置104(マウスやキーボード等)は、PC100A,100B,100Cの何れか1つから送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズのドラム7を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cと、最も小さいサイズの用紙を給送可能な給紙部4を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cとの何れか一方を優先的に選択可能とする選択手段を構成している。
図7の出力先設定画面114Aを表示設定できると、PCユーザの自由意思で上記の孔版印刷装置1B,1Cの何れかを優先的に選択可能となるので、例えば数千枚というような多数枚の用紙に印刷する場合であって、マスタのコストよりも、最も小さいサイズの用紙を積載している孔版印刷装置1B,1Cを優先的に選択して印刷した方が総合的に勘案して安価になるとPCユーザが判断するようなことも可能となる。また、例えば孔版印刷装置1Aでの印刷が実質的に不可である種々の状態において、例えばマスタの残量が少なく製版不可の場合や、用紙の補充がなく用紙補充を要するような場合であって、PCユーザがコストを度外視して何よりも早く印刷物を得たいような場合などにも有効である。
【0057】
次に、PC100から出力される画像データに基づいて、孔版印刷装置1Aで複数枚印刷する場合の、CPU86の指令の下に実行される全体動作を説明する。
先ず、排版部5では、版胴7aの外周面上から使用済みマスタ34を剥離する排版動作が行われる。
外周面上に使用済みのマスタ34を巻装している版胴7aを備えたドラム7は、図示しない駆動モータによって回転駆動され、図2において反時計回り方向に回転を開始する。版胴7aが、その外周面上に巻装した使用済みのマスタ34の後端が駆動ローラ60と対応する所定の排版位置に到達したことを、図示しないセンサからの信号に基づいてCPU86が判断すると、CPU86からの指令により図示しない移動手段と駆動手段とが作動し、各駆動ローラ57,60を回転させると共に下部排版部材54を版胴7a側に移動させる。駆動ローラ60の外周面が版胴7aの外周面上の使用済みのマスタ34と当接したとき、版胴7aは反時計回り方向への回転を継続しており、駆動ローラ60と当接してすくい上げられた使用済みのマスタ34は、下部排版部材54と上部排版部材53とで挟持された状態で搬送され、版胴7aの外周面より順次剥離される。剥離された使用済みのマスタ34は、下部排版部材54と上部排版部材53とで搬送されて排版ボックス55内に廃棄された後、圧縮板56によって圧縮される。
【0058】
版胴7aの外周面より使用済みのマスタ34が全て剥離されると、版胴7aはさらに回転を継続する。そして、版胴7aはクランパ11が図2に示す給版位置であるホームポジションに到達し、図示しないホームポジションセンサで検知されると、図示しない駆動モータの回転が停止する。図示しない駆動モータの停止により、版胴7aがホームポジションで停止すると、クランパ11が時計回り方向に回動し、版胴7aが図2に示す給版待機状態となって排版動作が完了する。
【0059】
排版動作が完了すると、これに続いてもしくは一部並行して製版・給版動作が行われる。版胴7aが給版待機状態となると、図示しないステッピングモータが作動してプラテンローラ36と各駆動ローラ31a,31cが回転駆動され、マスタロール35からマスタ34が引き出される。そして、上記ステッピングモータのステップ数より、マスタ34の画像形成領域がサーマルヘッド37の発熱素子と対応する位置に達したことをCPU86が判断すると、CPU86から指令信号が、画像処理部91から2値化された画像データ信号がそれぞれ送られることで、PC100Aから送られた画像データ信号に基づいてサーマルヘッド37の発熱素子が位置選択的に発熱し、マスタ34上に穿孔・製版画像が形成される。
【0060】
穿孔製版画像を形成されたマスタ34は、各ガイド板38,39にガイドされつつ搬送手段31によってクランパ11へと搬送され給版動作が開始される。すなわち、上記ステッピングモータのステップ数より、マスタ34の先端がクランパ11とステージ部10との間の所定位置まで到達したことをCPU86が判断すると、図示しない開閉手段に指令信号が送られてクランパ11が反時計回り方向に揺動・開閉し、ステージ部10とクランパ11とでマスタ34の先端部を挟持する。その後、CPU86より図示しない駆動モータに指令信号が送られ、版胴7aがマスタ34の搬送速度と同じ周速度か僅かに速い周速度で時計回り方向に回転駆動され、マスタ34の版胴7aへの巻装動作が行われる。そして、上記ステッピングモータのステップ数より、1版分の製版が完了したことをCPU86が判断すると、プラテンローラ36と各駆動ローラ31a,31cの回転が停止すると共に、可動刃30bが回転移動してマスタ34が切断される。切断されたマスタ34の後端は版胴7aの回転動作によって引き出され、版胴7aが再びホームポジションに到達すると、CPU86からの指令によって図示しない駆動モータが停止して巻装・給版動作が完了する。
【0061】
給版動作に引き続き、版付け動作が行われる。すなわち、版胴7aがホームポジションで停止すると、図示しない駆動モータが再び起動することにより、版胴7aが低速で回転駆動されると共に給紙ローラ47、分離ローラ48a、駆動ローラ65、吸引ファン67がそれぞれ回転駆動される。給紙ローラ47と分離ローラ48aとの回転により、給紙トレイ46上に積載された複数枚の印刷用紙のうち、最上位の1枚の用紙50のみが分離されて引き出され、レジストローラ対49のニップ部に突き当てられ所定の撓みを形成されて一時的にその状態が保持される。版胴7aに巻装された製版済みのマスタ34の製版画像領域の、版胴7aの回転方向における先端がプレスローラ9と対向する位置近傍に到達すると、レジストローラ対49が回転することにより、製版済みのマスタ34の製版画像領域の先端との位置を合わせたタイミングで、版胴7aとプレスローラ9との間に用紙50を給送する。続いて、プレスローラ9が図2中二点鎖線で示すように揺動・上昇されることにより、レジストローラ対49より給送された用紙50は、プレスローラ9によって版胴7a上の製版済みのマスタ34に押し付けられる。この押圧動作により、プレスローラ9と用紙50と製版済みのマスタ34と版胴7aの外周面とが圧接し、インキローラ14によって版胴7aの内周面に供給されたインキは、版胴7aの外周面の開孔部とメッシュスクリーンより滲出した後、版胴7aの外周面と製版済みのマスタ34との空隙部に充填され、さらにマスタ34の穿孔部から用紙50に転移される。インキを転移された用紙50は、剥離爪63の先端で版胴7aの外周面より剥離されて下方へと落下し、吸引ファン67の吸引力によって無端ベルト66の上面に引き付けられつつ左方へと搬送され、排紙トレイ68上に排出される。この一連の工程によって版付け動作が完了し、孔版印刷装置1Aは印刷待機状態となる。
【0062】
上述の孔版印刷装置1Aによって、排版、製版・給版、版付けの各動作が完了して印刷待機状態となった際、PC100の画像表示装置105の画面が、試し刷りから正規の印刷動作を指示するための印刷動作指示画面表示に自動的に切り替わる。ここで、PCユーザによる入力装置104(キーボード、マウス等)の操作により、図示しない試し刷りの設定がなされると、版付け動作と同様に、給紙トレイ46上の最上位の1枚の印刷用紙が給紙ローラ47と分離手段48とによって分離されて引き出され、レジストローラ対49のニップ部に突き当てられ所定の撓みを形成されて一時的にその状態が保持される。図示しない駆動モータが印刷速度の設定値に応じた印刷速度で回転駆動することにより、版胴7aが版付け動作時よりも高速の設定された印刷速度で回転駆動される。レジストローラ対49は、版付け動作と同じタイミングで、かつ、設定された印刷速度に対応した速度で回転することで、高速回転している版胴7aとプレスローラ9との間に用紙50を給送する。給送された用紙50は、プレスローラ9によって版胴7a上の製版済みのマスタ34に押圧されてインキを転移され、その上面に印刷画像を形成された後、剥離爪63によって版胴7aの外周面より剥離され、無端ベルト66によって左方へと搬送されて、排紙トレイ68上に排出される。版胴7aは再びホームポジションに戻り、試し刷り動作が完了する。
【0063】
この試し刷りによって印刷画像の濃度や位置を確認し、これらを印刷動作指示画面の操作で再度試し刷りを行った後、PCユーザによる入力装置104(キーボード、マウス等)の操作により、上記印刷動作指示画面で印刷枚数を設定し印刷速度を設定して印刷スタート設定を行うことにより、給紙部4より用紙50が連続的に送られて通常の正規の印刷動作が行われる。印刷動作完了後にも、版胴7aは再びホームポジションに戻る。
【0064】
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態の変形例1について説明する。
変形例1は、第1の実施形態と比較して、孔版印刷装置1A,1B,1Cに設定されているドラムサイズ記憶手段89Aに記憶するドラムサイズ関連情報が異なる点のみ相違する。変形例1では、ドラムサイズ関連情報を単に版胴サイズとせずに、より厳密に、版胴7aの開口部における「印刷可能領域サイズ」としている点が異なる。第1の実施形態において、版胴サイズ=版胴7aの円周長さとしていたが、孔版印刷装置1A,1B,1C本体の共通化により、版胴7aの円周長さをそのままにして、部品の共通化を図り、安価にシリーズ展開を行う場合がある。この場合、版胴7aの円周長さがそのままで、版胴7aの開口部、つまり、印刷可能領域サイズのみ変更している。このような形態では、前述の第1の実施形態にある版胴7aの円周長さをドラムサイズ記憶手段89Aに記憶する情報としては、実際の印刷可能領域サイズと版胴7aの円周長さが一致しないという矛盾を生じる。例えば、孔版印刷装置1A,1B,1C本体をB4サイズに合わせて設計したものに対して、マスタ34の幅とドラム7の版胴7aにおける開口部等を変更するだけでA4サイズ仕様の孔版印刷装置1A,1B,1Cとする。この時、版胴7aの円周長さは、B4サイズ仕様もA4サイズ仕様も500mmであるが、版胴7aの開口部は、B4仕様が267mm×394mmであるのに対し、A4仕様では、220mm×327mmとなる。ちなみにA3サイズの例としては、307mm×450mmである。
それ故に、ドラムサイズ記憶手段89Aに記憶する情報が、版胴7aの開口部、つまり、「印刷可能領域サイズ」とすることで、よりきめ細かく最も安価に印刷できる孔版印刷装置1A,1B,1Cの何れかを選択することが可能となる。
上述した以外の変形例1の動作、制御は、第1の実施形態と同様なので、省略する。変形例1は、後述する第2および第3の実施形態等にも適用して、その効果を奏することができることは無論である。
【0065】
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態の変形例2について説明する。
変形例2は、第1の実施形態および変形例1と比較して、孔版印刷装置1A,1B,1Cに設定されているドラムサイズ記憶手段89Aに記憶するドラムサイズ関連情報が異なる点のみ相違する。
変形例2では、ドラムサイズ関連情報を、版胴7aに巻装する製版済みマスタサイズとしている点が異なる。変形例1において、版胴7aの開口部における印刷可能領域サイズとしたが、版胴7aに巻装する製版済みマスタ34のサイズとしても問題ない。というのも、製版済みのマスタサイズは、版胴7aの開口部における印刷可能領域サイズに対して、その幅方向および長さ方向ともやや大きめに設定されているので、相関関係があるからである。
変形例2は、後述する第2および第3の実施形態等にも適用して、その効果を奏することができることは無論である。
【0066】
(第2の実施形態)
図3、図8〜図10を参照して、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、ドラムサイズ記憶手段89Aを採用せずにこれに代えて、孔版印刷装置1A,1B,1Cで用いる用紙(シート)のサイズを検知するシートサイズ検知手段52(図3、図8および図9参照)を採用して、最も安価に印刷物を得られる孔版印刷装置1A,1B,1Cを自動的に選択・設定する点および第3の出力先制御手段としてのCPU102を用いる点が主に相違する。
シートサイズ検知手段52は、既知のものであり、シート搬送方向およびこれと直交するシート幅方向の2方向にて、用紙のサイズを検知するものである。用紙(シート)の積載部は、所謂ストレートパスによる給紙台のものでも、複数の用紙積載部を持ちトレイ状になった給紙トレイ機構のどちらでもよい。
【0067】
図8および図9を参照して、シートサイズ検知手段52の一例を説明する。上記したように、孔版印刷装置1A,1B,1Cのサイドフェンス対51は、図示しないラック&ピニオンの機構により、シートセンタ基準で用紙の幅に合わせることができる。
シートサイズ検知手段52は、図8(b)に拡大して示すように、図において右側のサイドフェンス51と一体的に設けられ、シート幅方向に関して長さの異なる複数の摺動子560と、図9に示すシート有無検知手段としての用紙無し検知センサ570S、複数の用紙長さセンサ580S1,580S2,580S3とから構成されている。
【0068】
各摺動子560は、電気的導体からできている。給紙トレイ46側には、これらの摺動子560とそれぞれ対応して、かつ、シート幅方向の位置を異ならせて固定された接点が配設されていて、各摺動子560と各接点とで組を構成している。接点と摺動子とが接触するとオン、離れているとオフの電気信号が得られる。
かかる構成により、上記各接点について、オン、オフ信号が図3に示す制御手段90に入力され、上述した信号の組み合わせにより、サイドフェンス51の幅方向の位置、つまり用紙の幅サイズを検知することができる。
【0069】
さらに、給紙トレイ46上であって、給紙トレイ46上に用紙が載置される位置に対応させて用紙無し検知センサ570Sを設けると共に、用紙の後端側を検知するための複数の用紙長さセンサ580S1,580S2,580S3を設けることで、用紙の長さを自動検知することもできる。用紙無し検知センサ570Sおよび用紙長さセンサ580S1,580S2,580S3は、反射型のフォトセンサからなる。
【0070】
図10に示すように、孔版印刷装置1AはA4サイズの用紙、孔版印刷装置1BはB4サイズの用紙、孔版印刷装置1CはA3サイズの用紙とそれぞれ異なるサイズの用紙がセットされている孔版印刷装置1A,1B,1Cがネットワーク101上に設置・接続されている。
また、図2および図3に示したように、それぞれの孔版印刷装置1A,1B,1Cには、送信された画像データに基づいてマスタ34に画像データを書き込み、穿孔製版した製版済みのマスタ34を版胴7aへ巻装し、用紙50に印刷する一連の印刷動作を実行する制御手段90を備えている。
【0071】
画像データを送信する画像データ送信手段としてのPC100A,100B,100Cは、図10に示すネットワーク101に接続されている。
PC100(PC100A,100B,100Cの何れか一つ)にて、出力すべき画像データが準備できたら、図4の印刷装置用ドライバ111が起動することによりアプリケーション112から印刷要求が実行される。ここでは、ユーザによる入力装置104(キーボードやマウス)等の操作で作成された印刷用の画像データが生成されると同時に、画像データの出力サイズが設定される。このとき、設定された画像データの出力サイズ情報(データ)を画像データサイズ記憶手段103Aに記憶する。
【0072】
次にPC100にて、出力先を設定する。このとき、ネットワーク101上の孔版印刷装置1A,1B,1Cの給紙トレイ46におけるシートサイズ検知手段52からの情報(データ信号)と、PC100(PC100A,100B,100Cの何れか一つ)の画像データサイズ記憶手段103Aからの情報(データ信号)とに基づいて、PC100上にある第3の出力先制御手段としてのCPU102により、画像データを出力可能でかつ、最も用紙サイズが小さい孔版印刷装置を判別し、図6に示すように、安価に印刷できる孔版印刷装置の優先順位を表示し、PCユーザに状況を報知する。
【0073】
この際、CPU102(第3の出力先制御手段)では、以下のような判断を行う。画像データはA4サイズである。対するネットワーク101上にある複数の孔版印刷装置1A,1B,1Cの給紙トレイ46には、前述のように用紙サイズ(シートサイズ)が孔版印刷装置1AではA4サイズ、孔版印刷装置1BではB4サイズ、孔版印刷装置1CではA3サイズのそれぞれの用紙を積載している。画像データのA4サイズに対して、孔版印刷装置1AのA4サイズの用紙は、画像データサイズと用紙サイズとが一致しており、無駄となる部分が無い。一方、孔版印刷装置1B、孔版印刷装置1Cはそれぞれ、B4サイズ、A3サイズの用紙であるので、本来出力可能な画像サイズに対して、画像データは小さく、B4サイズ、A3サイズの順に無駄が発生してしまう。そこで、優先順位1:孔版印刷装置1A、優先順位2:孔版印刷装置1B、優先順位3:孔版印刷装置1Cとする。図6では、孔版印刷装置1Aを最優先(第一優先)、孔版印刷装置1Bを第二優先、孔版印刷装置1Cを第三優先と表示している。
【0074】
図6に示すように、孔版印刷装置1Aの出力でよい場合は、PCユーザが、出力先設定画面114より「印刷実行」をマウスやキーボード操作で設定し、画像データを孔版印刷装置1Aに送信する。
その後、孔版印刷装置1Aでは、図3において、ネットワーク101を介して送られた画像データを画像データ受信手段20で受信し、その画像データに基づいて、制御手段90の指令の下に、上述した第1の実施形態と同様の印刷動作が実行される。
【0075】
図6の出力先設定画面114が表示された場合において、PCユーザが所定の時間内に「印刷実行」を設定しなかったときには、CPU102(第3の出力先制御手段)からの指令によって、「印刷実行」を設定する操作を行う旨の表示・報知や、CPU102が自動的に「印刷実行」を設定するようにしてもよい。
【0076】
また、第1の実施形態と同様に、図7に示した出力先設定画面114Aのように、ネットワーク上101に接続されている孔版印刷装置1A,1B,1Cの全てを表示しないで、最優先で選択した孔版印刷装置1Aのみを表示している。ここで、PCユーザは、同図の孔版印刷装置1Aからの出力でよい場合は、PCユーザが、画面より「印刷実行」をマウスやキーボード操作で設定し、画像データを孔版印刷装置1Aに送信する。また、孔版印刷装置1Aではなく、他の孔版印刷装置1B,1Cを選択する場合には、画面上の「▽」をマウスやキーボード操作で選択・設定し、優先順に表示されている他の孔版印刷装置1B,1Cから選択することも可能である。
【0077】
第1の実施形態と同様に、PCユーザの自由意思で上記の孔版印刷装置1B,1Cの何れかを優先的に選択可能となるので、例えば数千枚というような多数枚の用紙に印刷する場合であって、マスタのコストよりも、最も小さいサイズの用紙を積載している孔版印刷装置1B,1Cを優先的に選択して印刷した方が総合的に勘案して安価になるとPCユーザが判断するようなことも可能となる。また、例えば孔版印刷装置1Aでの印刷が実質的に不可である種々の状態において、例えばマスタの残量が少なく製版不可の場合や、用紙の補充がなく用紙補充を要するような場合であって、PCユーザがコストを度外視して何よりも早く印刷物を得たいような場合などにも有効である。
【0078】
上述したとおり、本実施形態におけるPC100A,100B,100CのCPU102(第3の出力先制御手段)は、孔版印刷装置1A,1B,1Cにおける各シートサイズ検知手段52からの各用紙サイズ情報(データ)と、PC100A,100B,100Cの何れか一つにおける画像データサイズ記憶手段103Aからの画像データサイズ情報(データ)とに基づいて、PC100A,100B,100Cの何れか一つから送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズの用紙を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cの何れかを優先的に選択する機能を有する。
第3の出力先制御手段としてのCPU102は、さらに具体的には、PC100A,100B,100Cの何れか一つから送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズの用紙50を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cの何れかを優先的に選択したとき、画像データを送信したPC100A,100B,100Cの何れか一つの画像表示装置105に出力先設定画面114を立ち上げて表示・報知させる機能も有する。
【0079】
(第3の実施形態)
図11、図12を参照して、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態、変形例1および2におけるドラムサイズ記憶手段89Aからのドラムサイズ関連情報と、第2の実施形態におけるシートサイズ検知手段52からの情報とを合わせて採用して、最も安価に印刷物を得られる孔版印刷装置1A,1B,1Cを自動的に選択・設定する点および第2の出力先制御手段としてのCPU102を用いる点が主に相違する。
本実施形態におけるドラムサイズ記憶手段89Aで記憶している情報は、変形例2におけるドラムサイズ関連情報としての、版胴7aの外周面に巻装する製版済みのマスタサイズであるが、勿論、第1の実施形態の版胴サイズ(版胴の円周長さ)や、変形例1における版胴における印刷可能領域サイズとしてもよい。
【0080】
図11に示すように、孔版印刷装置1AはA4サイズの用紙が、孔版印刷装置1BはA4サイズの用紙が、がそれぞれセットされている。そして、孔版印刷装置1Cは、2つの第1、第2給紙トレイ46を有していて、第1給紙トレイ46にはA4サイズが、第2給紙トレイ46にはA3サイズの用紙がそれぞれ積載・セットされている。孔版印刷装置1A,1B,1Cの各給紙トレイ46に配設された各シートサイズ検知手段52が孔版印刷装置1A,1B,1Cセットされている用紙サイズを検知している。
【0081】
また、版胴7aの外周面に巻装する製版済みのマスタサイズに関して、孔版印刷装置1Aでは「260mm×377mm」が、孔版印刷装置1Bでは「280mm×444mm」が、孔版印刷装置1Cでは「320mm×500mm」が、版胴7aの外周面に巻装する製版済みのマスタサイズ情報として、ドラムサイズ記憶手段89Aに記憶されている。
上述のような孔版印刷装置1A,1B,1Cが図11に示すネットワーク101上に設置・接続されている。
【0082】
また、図2および図3に示したように、それぞれの孔版印刷装置1A,1B,1Cには、送信された画像データに基づいてマスタ34に画像データを書き込み、穿孔製版した製版済みのマスタ34を版胴7aへ巻装し、用紙50に印刷する一連の印刷動作を実行する制御手段90を備えている。
【0083】
画像データを送信する画像データ送信手段としてのPC100A,100B,100Cは、図11に示すネットワーク101に接続されている。
PC100(PC100A,100B,100Cの何れか一つ)にて、出力すべき画像データが準備できたら、図4の印刷装置用ドライバ111が起動することによりアプリケーション112から印刷要求が実行される。ここでは、ユーザによる入力装置104(キーボードやマウス)等の操作で作成された印刷用の画像データが生成されると同時に、画像データの出力サイズが設定される。このとき、設定された画像データの出力サイズ情報(データ)を画像データサイズ記憶手段103Aに記憶する。
【0084】
次にPC100にて、出力先を設定する。このとき、ネットワーク101上の孔版印刷装置1A,1B,1Cの給紙トレイ46におけるシートサイズ検知手段52からの情報(データ信号)と、PC100(PC100A,100B,100Cの何れか一つ)の画像データサイズ記憶手段103Aからの情報(データ信号)とに基づいて、PC100上にある第2の出力先制御手段としてのCPU102により、画像データを出力可能でかつ、最も用紙サイズが小さい孔版印刷装置を判別し、図12に示すように、安価に印刷できる孔版印刷装置の優先順位を表示(図12では孔版印刷装置1Aを最優先としている)し、PCユーザに状況を報知する。
【0085】
この際、CPU102(第2の出力先制御手段)では、以下のような判断を行う。画像データはA4サイズである。対するネットワーク101上にある複数の孔版印刷装置1A,1B,1Cの給紙トレイ46には、前述のように用紙サイズ(シートサイズ)が孔版印刷装置1AではA4サイズ、孔版印刷装置1BではA4サイズ、孔版印刷装置1CではA4サイズとA3サイズのそれぞれの用紙を積載している。画像データのA4サイズに対して、孔版印刷装置1A,1B,1Cそれぞれに、A4サイズの用紙が積載されているので、この用紙サイズの条件では、どの孔版印刷装置1A,1B,1Cを使用しても良い条件となっている。
【0086】
しかし、ドラムサイズ記憶手段89Aで記憶している版胴7aの外周面に巻装する製版済みのマスタサイズの情報に関しては、孔版印刷装置1Aでは「260mm×377mm」が、孔版印刷装置1Bでは「280mm×444mm」が、孔版印刷装置1Cでは「320mm×500mm」が、版胴7aの外周面に巻装する製版済みのマスタサイズの情報として、ドラムサイズ記憶手段89Aに記憶されている。
画像データサイズであるA4と製版済みのマスタサイズとが一致して、無駄となるマスタが無い孔版印刷装置は孔版印刷装置1Aである。そこで、優先順位1:孔版印刷装置1A、優先順位2:孔版印刷装置1B、優先順位3:孔版印刷装置1Cとする。図12に示す出力先設定画面114Bでは、孔版印刷装置1Aを最優先(第一優先)、孔版印刷装置1Bを第二優先、孔版印刷装置1Cを第三優先と表示している。
【0087】
図12に示すように、孔版印刷装置1Aの出力でよい場合は、PCユーザが、出力先設定画面114Bより「印刷実行」をマウスやキーボード操作で設定し、画像データを孔版印刷装置1Aに送信する。
その後、孔版印刷装置1Aでは、図3において、ネットワーク101を介して送られた画像データを画像データ受信手段20で受信し、その画像データに基づいて、制御手段90の指令の下に、上述した第1の実施形態と同様の印刷動作が実行される。
【0088】
図6の出力先設定画面114が表示された場合において、PCユーザが所定の時間内に「印刷実行」を設定しなかったときには、CPU102(第3の出力先制御手段)からの指令によって、「印刷実行」を設定する操作を行う旨の表示・報知や、CPU102が自動的に「印刷実行」を設定するようにしてもよい。
【0089】
また、第1および第2の実施形態と同様に、図7に示した出力先設定画面114Aのように、ネットワーク上101に接続されている孔版印刷装置1A,1B,1Cの全てを表示しないで、最優先で選択した孔版印刷装置1Aのみを表示している。ここで、PCユーザは、同図の孔版印刷装置1Aからの出力でよい場合は、PCユーザが、画面より「印刷実行」をマウスやキーボード操作で設定し、画像データを孔版印刷装置1Aに送信する。また、孔版印刷装置1Aではなく、他の孔版印刷装置1B,1Cを選択する場合には、画面上の「▽」をマウスやキーボード操作で選択・設定し、優先順に表示されている他の孔版印刷装置1B,1Cから選択することも可能である。
【0090】
第1および第2の実施形態と同様に、図7の出力先設定画面114Aを表示設定できると、PCユーザの自由意思で上記の孔版印刷装置1B,1Cの何れかを優先的に選択可能となるので、例えば数千枚というような多数枚の用紙に印刷する場合であって、マスタのコストよりも、最も小さいサイズの用紙を積載している孔版印刷装置1B,1Cを優先的に選択して印刷した方が総合的に勘案して安価になるとPCユーザが判断するようなことも可能となる。また、例えば孔版印刷装置1Aでの印刷が実質的に不可である種々の状態において、例えばマスタの残量が少なく製版不可の場合や、用紙の補充がなく用紙補充を要するような場合であって、PCユーザがコストを度外視して何よりも早く印刷物を得たいような場合などにも有効である。
【0091】
上述したとおり、本実施形態におけるPC100A,100B,100CのCPU102(第2の出力先制御手段)は、孔版印刷装置1A,1B,1Cにおける各ドラムサイズ記憶手段89Aからのドラムサイズ関連情報としての版胴7aの外周面に巻装する製版済みのマスタサイズ情報(データ)と、孔版印刷装置1A,1B,1Cにおける各シートサイズ検知手段52からの各用紙サイズ情報(データ)と、PC100A,100B,100Cの何れか一つにおける画像データサイズ記憶手段103Aからの画像データサイズ情報(データ)とに基づいて、PC100A,100B,100Cの何れか一つから送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズのドラムに相当するマスタサイズと最も小さいサイズの用紙を給送可能な給紙部4とを有する孔版印刷装置1A,1B,1Cの何れかを優先的に選択する機能を有する。
第2の出力先制御手段としてのCPU102は、さらに具体的には、PC100A,100B,100Cの何れか一つから送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズのドラムに相当するマスタサイズと、最も小さいサイズの用紙50を有する孔版印刷装置1A,1B,1Cの何れかを優先的に選択したとき、画像データを送信したPC100A,100B,100Cの何れか一つの画像表示装置105に出力先設定画面114Bを立ち上げて表示・報知させる機能も有する。
【0092】
以上説明したとおり、ネットワーク上にある複数の印刷装置としての孔版印刷装置から、少なくとも1つの画像データ送信手段としてのコンピュータ(PC)から送信される画像データに応じて印刷する際に、必要最小限のマスタと用紙(シート)とを有する孔版印刷装置を優先的に選択可能とすることで、ユーザは、特に専門的な知識がない場合でも、最も安価に印刷物を得ることが可能となる。
【0093】
本発明に係る印刷装置は、上記実施形態の孔版印刷装置に限らず、例えば、特開平7−17013号公報(特許第2790963号公報)に開示されているような印刷ドラムの外側からインキを供給する構成のもの、つまり印刷ドラム上のマスタにインキを供給して、印刷画像を用紙上に形成するいわば凹版印刷装置とも呼べるような構成の印刷装置にも準用できる。
以上述べたとおり、本発明を特定の実施例を含む実施形態等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および目的・用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【符号の説明】
【0094】
1A,1B,1C 孔版印刷装置(印刷装置)
2 印刷部
3 製版給版部
4 給紙部
5 排版部
6 排紙部
7 印刷ドラム
7a 版胴
8 インキ供給手段
11 クランパ(給版手段を構成)
20 画像データ受信手段
52 シートサイズ検知手段
89A ドラムサイズ記憶手段
90 制御手段
100A,100B,100C パソコン(PC:画像データ送信手段)
101 ネットワーク
102 CPU(第1〜第3の出力先制御手段)
114,114A,114B 出力先設定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版済みのマスタを外周面に巻装する版胴を備えた印刷ドラム、該版胴上の製版済みのマスタにインキを供給するインキ供給手段、前記印刷ドラムのドラムサイズ関連情報を記憶するドラムサイズ記憶手段、該ドラムサイズ記憶手段に記憶されている前記ドラムサイズ関連情報に応じて、製版済みのマスタを前記版胴の外周面に巻装する給版手段、ネットワークを介して送られてきた画像データを受信する画像データ受信手段および該画像データ受信手段で受信した画像データに基づいて印刷動作を実行させる制御手段を有する複数の印刷装置と、
送信する画像データのサイズを記憶する画像データサイズ記憶手段を有し、該画像データを送信する少なくとも1つの画像データ送信手段とが、
通信可能にネットワークを構成する印刷装置ネットワークシステムにおいて、
前記各印刷装置における前記各ドラムサイズ記憶手段からの前記各ドラムサイズ関連情報と、前記少なくとも1つの画像データ送信手段における前記画像データサイズ記憶手段からの前記画像データサイズ情報とに基づいて、前記少なくとも1つの画像データ送信手段から送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズの前記印刷ドラムを有する前記印刷装置を優先的に選択する第1の出力先制御手段を具備することを特徴とする印刷装置ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置ネットワークシステムにおいて、
前記各印刷装置は、前記印刷ドラムヘ給送するシートのサイズを検知するシートサイズ検知手段を備えたシート給送部を有しており、
前記各印刷装置における前記各ドラムサイズ記憶手段からの前記各ドラムサイズ関連情報と、前記各印刷装置における前記各シートサイズ検知手段からの前記各シートサイズ情報と、前記少なくとも1つの画像データ送信手段における前記画像データサイズ記憶手段からの画像データサイズ情報とに基づいて、前記少なくとも1つの画像データ送信手段から送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズの前記印刷ドラムと最も小さいサイズのシートを給送可能な前記シート給送部とを有する前記印刷装置を優先的に選択する第2の出力先制御手段を具備することを特徴とする印刷装置ネットワークシステム。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置ネットワークシステムにおいて、
前記少なくとも1つの画像データ送信手段から送信される画像データに応じて印刷するのに必要とされる、最も小さいサイズの前記印刷ドラムを有する前記印刷装置と、最も小さいサイズのシートを給送可能な前記シート給送部を有する前記印刷装置との何れか一方を優先的に選択可能とする選択手段を具備することを特徴とする印刷装置ネットワークシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載の印刷装置ネットワークシステムにおいて、
前記各ドラムサイズ記憶手段は、前記各ドラムサイズ関連情報として、前記版胴における印刷可能領域サイズを記憶することを特徴とする印刷装置ネットワークシステム。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れか一つに記載の印刷装置ネットワークシステムにおいて、
前記各ドラムサイズ記憶手段は、前記各ドラムサイズ関連情報として、前記版胴の外周面に巻装する製版済みのマスタサイズを記憶することを特徴とする印刷装置ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−158792(P2010−158792A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−823(P2009−823)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】