説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】印刷手段が印刷処理で使用する処理条件の設定を行う設定手段の処理負担を軽減することができる印刷装置及び印刷方法を提供する。
【解決手段】データを入力する度に(S1)、データ中の印刷設定情報を保存し(S2)、印刷設定情報が前回と今回の2つなければ(S3で否定判定)、印刷ジョブデータの作成を開始し、ジョブスタート「JS」、印刷設定情報、印刷コマンド、画像データを付加する(S4)。一方、印刷設定情報が前回と今回の2つあれば(S3で肯定判定)、前回と今回の印刷設定情報が同じであるか否かを判定する(S7)。両印刷設定情報が同じである場合には、作成中の印刷ジョブデータに、印刷コマンドと画像データを付加する。つまり、複数の画像データを含む1つの印刷ジョブデータが作成される。この場合、後続のデータについては、設定手段が印刷設定情報を基に行う印刷手段が印刷処理で使用する処理条件の設定が省略される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力したデータを基にジョブデータを生成する機能を備えた印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、複数ページを連続印刷する印刷装置において、現ページの印刷途中に次ページの給送を開始する先行給紙を行って、現ページの印刷終了から、次ページの印刷開始までの時間間隔を短くすることにより、印刷スループットを向上させる印刷装置が開示されている。
【0003】
この印刷装置では、ホスト装置(上位装置)から受信する現ページをバンド単位又はラスター単位で分割した印刷ジョブデータ中に、次ページの先行給紙コマンドを組み込んでおき、現ページの印刷途中に先行給紙コマンドに基づき次ページの先行給紙を開始する構成であった。
【0004】
ところで、ホスト装置が携帯情報端末である場合、パーソナルコンピューター(PC)に比べメモリーの記憶容量が相対的に小さいので、PCに内蔵されるかなりデータサイズの大きなプリンタードライバーをインストールさせることは適切ではない。このため、印刷装置側に、プリンタードライバーがもつ比較的重い機能をもたせ、携帯情報端末から受信した表示用のデータを印刷装置側で処理する構成が採用されている。例えば携帯情報端末から印刷装置へは、印刷設定情報と画像データとを含むデータが送信される。印刷設定情報は、ユーザーが携帯情報端末に入力設定した印刷設定条件であり、用紙種、用紙サイズ、印刷色(カラー/モノクロ)、印刷品質(高画質/ドラフト)等が含まれる。
【0005】
この場合、印刷装置には、携帯情報端末から受信したデータ中の印刷設定情報と画像データとを基に印刷ジョブデータを生成する印刷ジョブ変換部と、印刷ジョブデータ中の画像データに画像処理を施してエンジン制御データを生成し、生成したエンジン制御データに基づき印刷ヘッド及び各種モーターを制御する印刷手段とを備える。印刷手段には、例えば解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理などの画像処理を行ってエンジン制御データを生成する画像加工部と、エンジン制御データなどを基に印刷ヘッド及び各種モーターを制御する印刷エンジンとが含まれる。
【0006】
印刷手段が行う画像処理の内容やエンジン制御の内容は、印刷設定情報に応じて異なる。このため、印刷手段が画像処理やエンジン制御を行う前に、予め画像処理で使用するパラメーターの初期値や、印刷ヘッドやモーターの制御に使用するパラメーターの初期値などを設定する初期化処理を行っておく必要がある。これらの初期化処理(処理条件の設定処理)は、携帯情報端末などのホスト装置から受信するデータ中に含まれる印刷設定情報を基に、データ毎に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−63051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ホスト装置から送られてくる別々のデータでも、印刷設定情報が同じ場合がある。この場合、印刷設定情報が同じで設定されるパラメーターの初期値(処理条件)が同じあるにも関わらず、印刷手段はデータ毎に初期化処理(処理条件の設定処理)を行っていた。この初期化処理は、比較的複雑な演算を伴うため比較的処理時間がかかり、データ送信開始から印刷装置で印刷が開始までの所要時間が相対的に長くなるという問題がある。このように初期化処理をデータ毎に行うことは、印刷開始時期の遅延の大きな要因の1つとなっている。なお、プリンタードライバーを内蔵するホスト装置から印刷ジョブデータを受信して印刷を行う場合も、印刷ジョブデータ毎に初期化処理を行う必要がある場合は、遅延の程度の違いこそあれ同様の課題がある。また、ホスト装置からのデータ受信に限らず、メモリーカード等の外部記憶媒体からのデータ読取りや、印刷装置が複合機である場合にスキャナーから読取りデータの入力をする場合でも、データ毎に初期化処理を行う構成であれば、同様の課題が発生する。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、印刷手段が印刷処理で使用する処理条件の設定を行う設定手段の処理負担を軽減することができる印刷装置及び印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の一つを達成するために、本発明の態様の一つは、入力したデータに基づき印刷を行う印刷装置であって、印刷設定情報と画像データとを含むデータを入力する入力手段と、前記データに基づき印刷処理を行う印刷手段と、前記データに含まれる印刷設定情報を基に前記印刷手段が印刷処理で使用する処理条件を設定する設定手段と、前記入力手段が先に入力した先行データに含まれる印刷設定情報と、当該先行データの次に入力した後続データに含まれる印刷設定情報とを比較し両印刷設定情報が同じであるか否かを判定する判定手段と、を備え、(A)前記判定手段により前記両印刷設定情報が同じであると判定された場合、前記印刷手段は、前記設定手段が先行データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って前記先行データ及び後続データに基づく印刷処理を行い、
(B)前記判定手段により前記両印刷設定情報が異なると判定された場合、前記印刷手段は、前記設定手段が先行データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って前記先行データに基づく印刷処理を行うとともに、前記設定手段が後続データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って当該後続データに基づく印刷処理を行うことを要旨とする。
【0011】
本発明の一実施態様によれば、判定手段は、入力手段が先に入力した先行データに含まれる印刷設定情報と、この先行データの次に入力した後続データに含まれる印刷設定情報とを比較し両印刷設定情報が同じであるか否かを判定する。判定手段により両印刷設定情報が同じであると判定された場合、印刷手段は、設定手段が先行データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って先行データ及び後続データに基づく印刷処理を行う。一方、判定手段により両印刷設定情報が異なると判定された場合、印刷手段は、設定手段が先行データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って先行データに基づく印刷処理を行うとともに、設定手段が後続データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って後続データに基づく印刷処理を行う。よって、判定手段により両印刷設定情報が同じであると判定された場合、設定手段は後続データの印刷設定情報に基づく処理条件の設定処理を行わずに済む。従って、設定手段が行う処理条件の設定処理の負担を軽減できる。例えば印刷装置の印刷スループットの向上に寄与できる。
【0012】
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記入力手段が入力した前記データを基にジョブデータを生成して当該ジョブデータを前記印刷手段へ出力するジョブ生成手段を、更に備え、前記印刷手段は前記ジョブデータに基づいて前記印刷処理を行う構成であり、(A)前記判定手段により前記両印刷設定情報が同じであると判定された場合、前記ジョブ生成手段は、当該印刷設定情報と、前記先行データに含まれる画像データと、前記後続データに含まれる画像データとを含む一つのジョブデータを生成し、(B)前記判定手段により前記両印刷設定情報が異なると判定された場合、前記ジョブ生成手段は、前記先行データと後続データ毎に個別にジョブデータを生成することが好ましい。
【0013】
本発明の一実施態様によれば、判定手段により前記両印刷設定情報が異なると判定されると、先行データと後続データ毎に個別にジョブデータが生成される。一方、判定手段により両印刷設定情報が同じであると判定されると、印刷設定情報と、先行データに含まれる画像データと、後続データに含まれる画像データとを含む一つのジョブデータが生成される。このため、ジョブデータに基づいて印刷処理を行うという印刷手段の構成を変更しなくても、後続データの印刷設定情報に基づく処理条件の設定処理を省くことができる。
【0014】
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記先行データ中の前記印刷設定情報を保存する保存手段を備え、前記ジョブ生成手段は、前記ジョブデータを開始から終了まで生成の順に前記印刷手段へ出力する構成であり、前記先行データに基づき生成された終了前のジョブデータのうち前記印刷手段による印刷処理がまだ行われていない残データが規定値未満になったか否かを判断する判断手段を更に備え、前記ジョブ生成手段は、前記残データが規定値未満になったと判断された場合、前記判定手段による判定に必要な後続データを待つことなく、前記終了前の前記ジョブデータを終了させることが好ましい。
【0015】
本発明の一実施態様によれば、判断手段が、先行データに基づき生成された終了前のジョブデータのうち印刷手段による印刷処理がまだ行われていない残データが規定値未満になったか否かを判断する。残データが規定値未満になったと判断された場合、判定手段による判定に必要な後続データを待つことなく、ジョブ生成手段は、先行データに基づく終了前のジョブデータを終了させる。このため、印刷手段がジョブデータの終了(例えば終了コマンド)を待ち続ける不都合を回避できる。
【0016】
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記判断手段により前記残データが規定値未満になっていないと判断されている場合は、(A)前記判定手段により前記両印刷設定情報が異なると判定されると、前記ジョブ生成手段は、前記終了前のジョブデータを終了させ、(B)前記判定手段により前記両印刷設定情報が同じであると判定される度に、前記ジョブ生成手段は、後続データ中の画像データを前記終了前のジョブデータに付加することが好ましい。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、残データが規定値未満になっていなくても、判定手段により両印刷設定情報が異なると判定されると、ジョブ生成手段は、終了前のジョブデータを終了させる。一方、残データが規定値未満にならないうちは、判定手段により両印刷設定情報が同じであると判定される度に、後続データ中の画像データが終了前のジョブデータに順次付加される。よって、先行データに基づくジョブデータに、複数の後続データ中の各画像データを付加することも可能である。よって、処理条件の設定処理を省けるデータ数が増し、設定手段の処理負担を一層軽減し易くなる。
【0018】
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記印刷手段は、前記画像データに画像処理を施す画像処理手段を備え、前記設定手段は、前記印刷設定情報を基に前記画像処理手段が画像処理で使用する画像処理条件を設定することが好ましい。
【0019】
本発明の一実施態様によれば、両印刷設定情報が同じと判定された場合、設定手段が印刷設定情報を基に設定する画像処理条件の設定処理を省くことができる。
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記印刷手段は、印刷媒体に印刷を施す印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを制御する印刷エンジンとを備え、前記設定手段は、前記印刷設定情報を基に前記印刷エンジンが前記印刷ヘッドの制御で使用する制御処理条件を設定することが好ましい。
【0020】
本発明の一実施態様によれば、両印刷設定情報が同じと判定された場合、設定手段が印刷設定情報を基に設定する制御処理条件の設定処理を省くことができる。
本発明の態様の一つである印刷装置では、前記印刷設定情報は、画像データの解像度と、印刷解像度を規定する印刷品質と、印刷媒体の種類とを含むことが好ましい。なお、印刷媒体の種類は、印刷媒体種と印刷媒体サイズとのうち少なくとも一方を含む概念である。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、印刷設定情報に含まれる、画像データの解像度と、印刷解像度を規定する印刷品質と、印刷媒体の種類とを少なくとも用いて、処理条件が設定される。解像度の異なる画像データを入力したり、印刷品質によって印刷解像度が変更されたり、印刷媒体の種類が変更されたりしても、それぞれに応じた処理条件を設定することができる。
【0022】
本発明の態様の一つは、入力したデータに基づき印刷を行う印刷方法であって、印刷設定情報と画像データとを含むデータを入力する入力ステップと、前記データに基づき印刷手段が印刷処理を行う印刷ステップと、前記データに含まれる印刷設定情報を基に前記印刷手段が印刷処理で使用する処理条件を設定する設定ステップと、前記入力ステップで先に入力した先行データに含まれる印刷設定情報と、当該先行データの次に入力した後続データに含まれる印刷設定情報とを比較し両印刷設定情報が同じであるか否かを判定する判定ステップと、を備え、(A)前記判定ステップで前記両印刷設定情報が同じであると判定された場合、前記印刷ステップでは、前記設定ステップで先行データの印刷設定情報を基に設定した印刷処理条件に従って前記先行データ及び後続データに基づく印刷処理を行い、(B)前記判定ステップで前記両印刷設定情報が異なると判定された場合、前記印刷ステップでは、前記設定ステップで先行データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って前記先行データに基づく印刷処理を行うとともに、前記設定ステップで後続データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って当該後続データに基づく印刷処理を行うことを要旨とする。本発明の一実施態様によれば、上記印刷装置の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態における複合型プリンターの斜視図。
【図2】プリンター部の斜視図
【図3】プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図4】プリンターの機能構成を示すブロック図。
【図5】(a)データの構造、(b)印刷ジョブデータの構造を示す模式図。
【図6】(a),(b)印刷ジョブデータの生成方法を説明する模式図。
【図7】印刷ジョブ生成処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を印刷装置の一種であるインクジェット式の複合型プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図7を用いて説明する。
図1に示すように、複合型プリンター(以下、単に「プリンター11」という)は、一台で、スキャナー、プリンター、コピーの3つの機能を備えるインクジェット式のカラープリンタである。プリンター11の略四角箱状の本体12は、その下部が用紙P等の印刷媒体に印刷(記録)を施すプリンター部13となっており、その上部が上面に開閉式の原稿台カバー14aを備えたスキャナー部14となっている。また、本体12の上部前面には操作パネル15が設けられ、操作パネル15の下側には複数枚の用紙Pを収容可能な給紙カセット16が挿抜可能な状態で装着されている。
【0025】
プリンター部13は、給紙カセット16から1枚ずつ給送された用紙Pに印刷を施し、印刷後の用紙Pを本体12の前面中段位置に設けられたスライド式の排紙トレイ17上に排出する。スキャナー部14は原稿台カバー14aの下側の原稿台(図示せず)上にセットされた原稿を読み取る(スキャニングする)ためのものである。また、プリンター11は、スキャナー部14で読み取った原稿の画像をプリンター部13が印刷することで、コピーを行う。
【0026】
また、プリンター11の前面における排紙トレイ17の図1における右側位置には、メモリーカードMCを挿抜可能なカードスロット18、及びホスト装置120(図3参照)と無線通信が可能な通信部19が設けられている。
【0027】
操作パネル15は、プリンター11に対する各種操作を行うための操作部20と、各種メニューや画像などが表示される表示部21とを備えている。操作部20には、電源スイッチ22、印刷開始スイッチ23、コピースイッチ24及び選択スイッチ25等が設けられている。例えば用紙Pに印刷を施す通常の印刷(通常印刷モード)は、印刷開始スイッチ23を押下することで行う。また、選択スイッチ25を操作して表示部21上に表示されるモード選択メニューでは、「カード印刷」「コピー」「スキャン」等を含む複数のモードのうち選択スイッチ25の操作で1つのモードを選択できる。カード印刷モードなどの印刷系のモードでは、選択スイッチ25の操作で印刷条件を個別に設定することが可能である。ここで、「カード印刷」は、カードスロット18に挿着されたメモリーカードMCから読み取った画像データに基づき写真等の画像を印刷するときに用いられる。
【0028】
次にプリンター部13の構成について説明する。図2は外装ハウジングを取り外した状態のプリンター部を示す。図2に示すように、プリンター部13において上側と前側が開口する略四角箱状の本体フレーム30の図2におけるその左右の側壁間には所定長さを有するガイド軸31が架設され、キャリッジ32はこのガイド軸31に沿って主走査方向Xに往復移動可能に設けられている。キャリッジ32は、本体フレーム30の背板内面に取着された一対のプーリー33に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト34と固定されている。図2における右側のプーリー33に駆動軸が取着されたキャリッジモーター35が正逆転駆動されて、タイミングベルト34が正転・逆転することにより、キャリッジ32は主走査方向Xに往復移動する。
【0029】
キャリッジ32の下部には、インクジェット式の印刷ヘッド36が設けられている。この印刷ヘッド36の下面には、インクを噴射する複数のノズルが開口している。また、キャリッジ32の上部には複数個のインクカートリッジ37が装填されている。インクカートリッジ37は、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクがそれぞれ収容されている。もちろんインク色は4色に限らず、3色、5〜8色でもよい。印刷ヘッド36は、各インクカートリッジ37から供給されたインクを色別のノズルからそれぞれ吐出する。なお、印刷ヘッド36には、インクに噴射圧を付与する加圧素子(圧電素子、静電素子、発熱素子等)がノズル毎に内蔵され、加圧素子に所定の電圧が印加されることでそれぞれに対応するノズルからインク滴が噴射(吐出)される。
【0030】
印刷ヘッド36と対向する下方位置には、印刷ヘッド36と用紙Pとの間隔(ギャップ)を規定する支持台38が設けられている。支持台38は印刷ヘッド36による印刷が行われる印刷領域を含む範囲に亘って幅方向(図2におけるX方向)に延びている。印刷中は用紙Pのうち支持台38上の箇所に印刷ヘッド36から噴射されたインクが着弾する。
【0031】
また、キャリッジ32の背面側には、キャリッジ32の移動量に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー39がガイド軸31に沿って延びるように設けられている。
また、本体フレーム30の図2における右側下部には、給送モーター41と、搬送モーター42とが配設されている。給送モーター41は、給紙カセット16内に複数枚セットされた用紙Pを1枚ずつ給送する不図示の給送ローラー(例えばピックアップローラー)を駆動する。
【0032】
搬送方向Yに支持台38を挟んだその上流側と下流側には、それぞれ搬送ローラー対43と排出ローラー対44とが配置されている。搬送ローラー対43は、搬送モーター42の動力で回転駆動する搬送駆動ローラー43aと、搬送駆動ローラー43aに当接して連れ回りする搬送従動ローラー43bとから構成される。また、排出ローラー対44は、搬送モーター42の動力で回転駆動する排出駆動ローラー44aと、排出駆動ローラー44aに当接して連れ回りする排出従動ローラー44bとから構成される。
【0033】
搬送モーター42が回転駆動されることで搬送駆動ローラー43a及び排出駆動ローラー44aが駆動され、用紙Pは両ローラー対43,44に挟持(ニップ)された状態で副走査方向Yに搬送される。
【0034】
図2に示すように、キャリッジ32を主走査方向Xに往復動させながら印刷ヘッド36のノズルから用紙Pにインクを吐出する印字動作と、用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する送り動作とを交互に繰り返すことで、用紙Pに文書や画像等の印刷が施される。
【0035】
なお、プリンター部13には、印刷ヘッド36と支持台38との間隔(ギャップ)を調整可能に、キャリッジ32を上下方向に移動させるギャップ自動調整装置(以下、「APG装置45」と称す)が装備されている。ホスト装置から印刷のため受信したデータに含まれる印刷設定情報又は操作パネル15で設定された印刷設定情報から、取得した用紙種に応じた適切なギャップが確保されるようにAPG装置45は駆動され、キャリッジ32はその適切なギャップが確保される高さに位置調整される。
【0036】
図2においてキャリッジ32の移動経路上の一端位置(図2では右端位置)がホーム位置(ホームポジション)となっている。ホーム位置に配置されたキャリッジ32の直下には、印刷ヘッド36に対してノズルクリーニング等のメンテナンスを行うメンテナンス装置46が配設されている。メンテナンス装置46により印刷ヘッド36のノズルから吸引排出された廃インクは支持台38の下側に配置された廃液タンク47に排出されるようになっている。
【0037】
なお、本実施形態では、搬送モーター42は、搬送駆動ローラー43a及び排出駆動ローラー44aの他、APG装置45、メンテナンス装置46の共通の動力源となっている。キャリッジ32がホーム位置近傍の切換位置に配置されると動力伝達切換装置48の接続が切断され、この切断状態で搬送モーター42が駆動されることで動力を出力すべき接続先(切り換え先)が選択される。キャリッジ32が切換位置から印刷領域側へ退避すると、選択された接続先へ動力伝達切換装置48が接続される構成となっている。
【0038】
次にプリンター11の電気的構成を図3に基づいて説明する。プリンター11は、スキャン、印刷、コピー、表示系などを統括的に制御するコントローラー50を備えている。このコントローラー50には、印刷ヘッド36、キャリッジモーター35、給送モーター41、搬送モーター42、リニアエンコーダー39、エンコーダー51、スキャンモーター52、ラインセンサー53、メモリーインターフェイス(以下、「メモリーI/F54」という)、USBインターフェイス(以下、「USBI/F55」という)及び通信部19(通信インターフェイス)を備えている。本例の通信部19は、無線通信に対応している。もちろん、通信部19は有線の通信に対応している構成でもよい。
【0039】
エンコーダー51は、搬送駆動ローラー43aの軸部又はこの軸部と輪列を介して連結された他の軸部の回転を検出し、搬送駆動ローラー43aの回転速度に反比例する周期のパルスを回転量に比例する数だけコントローラー50へ出力する。また、スキャンモーター52は、スキャナー部14を構成する読取りヘッド(図示せず)を走査方向に移動させる動力源である。ラインセンサー53は、読取りヘッドにその移動方向と直交する向きに取り付けられ、読取りヘッドの移動とともに原稿を読み取り、その読取り信号を出力する。
【0040】
図3に示すように、コントローラー50は、コンピューター60、モータードライバー61〜64及び入力I/F65を内蔵している。コンピューター60は、印刷ヘッド36と接続されるとともに、モータードライバー61〜64を介してキャリッジモーター35、給送モーター41、及び搬送モーター42と接続されている。また、コンピューター60は、リニアエンコーダー39及びエンコーダー51に接続され、これらよりパルス信号を入力する。さらに、コンピューター60は、モータードライバー64を介してスキャンモーター52と接続されるとともに、入力I/Fを介してラインセンサー53と接続されている。また、コンピューター60は、メモリーI/F54、通信部19及びUSBI/F55とそれぞれ接続されている。また、コンピューター60には、操作パネル15の操作部20と表示部21が接続されている。
【0041】
図3に示すように、コンピューター60は、CPU66、ASIC67(Application SpecificIC)、不揮発性メモリー68、RAM69等を内蔵している。不揮発性メモリー68には、ファームウェアをはじめとする各種のプログラム及び各種処理に必要な設定データなどが記憶されている。CPU66は不揮発性メモリー68から読み出したプログラムを実行して、スキャン、印刷、コピーなどの各種の処理を行う。また、ASIC67は、印刷やコピーなどの印刷処理に使う印刷用のデータを生成するために後述する画像処理などを行う。
【0042】
また、プリンター11は、ホスト装置110,120(図3参照)から受信したデータを基に印刷することも可能である。この場合、ユーザーはホスト装置110,120の操作部(図示せず)を操作して印刷対象とする文書や画像の指定と、印刷条件の設定とを行ったうえで印刷実行操作を行う。この印刷実行操作が行われると、ホスト装置110はその印刷対象のデータを印刷設定情報とともにプリンター11へ送信する。
【0043】
ホスト装置110は、例えばパーソナルコンピューター(PC)等からなり、プリンタードライバーを内蔵している。このため、プリンタードライバーが作成した印刷ジョブデータがプリンター11へ送信される。一方、ホスト装置120は、例えば携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))や携帯電話などからなる。この種のホスト装置120は、メモリーの容量が比較的小さいため、プリンタードライバーのような比較的データ量の大きなソフトウェアは内蔵されず、プリンター11へデータを送信する送信機能など印刷機能の実現上、最小限の機能のみ内蔵されている。そのため、プリンター11は、プリンタードライバーを有さないホスト装置120から受信したデータに基づく印刷を実現すべく、プリンタードライバーと同様の処理を行う処理部を備えている。本例では、この種のホスト装置120から印刷を行うユーザーは、まず印刷対象の文書や画像などを指定し、必要に応じて印刷条件を設定したうえで、印刷実行操作を行う。すると、ホスト装置120が備える通信部(図示省略)から、印刷対象のデータが、例えば無線通信でプリンター11へ送信されるようになっている。
【0044】
また、プリンター11は、通常印刷、カード印刷、コピーを行うときには、表示部21に印刷条件を設定するための設定画面を表示可能である。ユーザーは、選択スイッチ25の操作で必要な印刷設定項目を選択した後、印刷開始スイッチ23又はコピースイッチ24を押下することで行う。また、ホスト装置120において詳細な印刷条件の設定ができない場合に対応し、予めプリンター11側にホスト装置120用の印刷条件を設定しておくことも可能になっている。
【0045】
ここで、印刷条件には、用紙種、用紙サイズ、印刷色(カラーモード)(カラー/モノクロ(グレイスケール))、印刷品質(高品質モード/ドラフトモード)、画像補正、レイアウトなどがある。「印刷色」には、画像をカラーで印刷する場合に設定する「カラー」と、画像をモノクロ(グレイスケール)で印刷する場合に設定する「モノクロ(グレイスケール)」とがある。「印刷品質」には、印刷速度よりも印刷画質を優先する「高品質モード」と、印刷画質よりも印刷速度を優先する「ドラフトモード」とが用意されている。「レイアウト」では、用紙エリアにおける印刷画像の配置位置を規定する「印刷レイアウト」の設定と、用紙の周縁に余白(縁)がない状態で画像を印刷する「縁なし印刷」の有無が設定される。また、「画像補正」には、シーンに合わせて空の青色や人物の肌色を色補正する「シーン補正」の有無と、写真画像中の人物の赤目を補正する「赤目補正」の有無が設定される。なお、以下の説明においては、「レイアウト」のうち「縁なし印刷の有無」の設定情報を、レイアウトの項目から離した別項目とする。
【0046】
印刷品質で「高画質モード」が設定された場合、印刷画像の画像品質を高めるためにマイクロウィーブ印刷が行われる。ここで、マイクロウィーブ印刷とは、印刷ヘッド36のノズル位置の加工精度のばらつきに起因し、隣接するノズルで用紙上に印刷される主走査方向Xに並ぶドット列からなるラスターラインが副走査方向Yに隣接する配置をとる場合、ラスターラインの間隔がノズル位置のばらつきに起因してばらつくことを回避する方式である。マイクロウィーブ処理を行うことで、ラスターラインの間隔がノズル位置のばらつきに起因しばらつくことが原因で印刷画像に発生するバンディング(白スジ等)を抑制できる。高画質モードが選択されたときには、副走査方向Yに隣接するラスターラインを印刷するノズルが隣接ノズルとならないように、各ノズルに画素の行を割付けるマイクロウィーブ処理が行われる。
【0047】
プリンター11が受信するデータには、ホスト装置110から送られてきた印刷ジョブデータと、ホスト装置120から送られてきたデータとがある。ここで、印刷ジョブデータはホスト装置110内のプリンタードライバーが作成したもので、印刷設定情報と印刷コマンドと印刷画像データとを含む。印刷画像データとは、表示表色系の画像データに、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、必要に応じてマイクロウィーブ処理などの画像処理を施して得られたもので、プリンター11側での画像加工が不要なデータである。一方、データDは、印刷設定情報と画像データを含み、その中の画像データへの画像加工が必要なデータである。なお、ホスト装置110が通信部19を介してプリンター11に印刷ジョブデータを送信することも、ホスト装置120がUSBI/F55を介してプリンター11にデータDを送信することも可能である。
【0048】
次にプリンターの機能構成を説明する。プリンター11は、データ処理の流れ方向において上流側から順に、入力部71、印刷ジョブ変換部72、画像加工部73(画像処理部)及び印刷エンジン74を備えている。また、データ処理の過程でデータが一時的に格納される、入力バッファー75、中間バッファー76及び出力バッファー77が設けられている。これらの各バッファー75〜77は、RAM69により構成される。なお、本実施形態では、入力部71により入力手段の一例が構成され、画像加工部73及び印刷エンジン74により印刷手段の一例が構成される。また、画像加工部73により画像処理手段の一例が構成される。
【0049】
入力部71は、前述の入力I/F65、通信部19、USBI/F55及びメモリーI/F54により構成される。入力部71の入力I/F65は、スキャナー部14を構成するラインセンサー53の読取りデータを基にスキャンエンジン78が生成した画像データと、プリンター11でコピーモードを選択して設定された印刷条件に基づく印刷設定情報とを入力する。入力部71の通信部19は、ホスト装置120から印刷設定情報と画像データとを含むデータDを受信する。入力部71のUSBI/F55は、ホスト装置110から印刷ジョブデータを受信する。入力部71のメモリーI/F54は、メモリーカードMCから読み出した画像データと、プリンター11でカード印刷モードを選択して設定された印刷条件に基づく印刷設定情報とを入力する。
【0050】
スキャンエンジン78は原稿を読み取って得たRGBデータをYUVデータに変換する色変換処理と、YUVデータに圧縮処理を施して所定圧縮形式(例えばJPEG形式)の画像データを生成し、この画像データIDが入力部71の入力I/F65に入力される。
【0051】
また、メモリーカードMCには、例えばデジタルカメラで撮影されて所定圧縮形式(例えばJPEG形式)に圧縮された写真画像などの画像データIDが記憶されている。カード印刷を行うときには、ユーザーが操作部20を操作することにより表示部21にメモリーカードMC内の画像が順番に表示され、画像を選択して印刷実行の操作を行うと、入力部71のメモリーI/F54は、メモリーカードMCから、不図示のファイルシステムに指示されたアドレス先から画像データIDを入力する。このとき、ユーザーが操作部20の操作で設定した印刷条件に基づく印刷設定情報SDも入力部71は入力する。
【0052】
図4に示す印刷ジョブ変換部72、画像加工部73及び印刷エンジン74は、CPU66が不揮発性メモリー68に記憶されたプログラムを実行することにより構築されるソフトウェアと、ASIC67を構成する各種の電子回路により構成されるハードウェアとの協働により構成されている。もちろん、各部72〜74は、ソフトウェアのみ、あるいはハードウェアのみにより構成されてもよい。
【0053】
図4に示す入力部71は、入力(受信)したデータDを入力バッファー75に格納する。データDは、印刷設定情報SDと画像データIDとを含む。印刷ジョブ変換部72は、入力バッファー75からデータDを読み込み、その読み込んだデータDを基に印刷ジョブデータJDを生成する。
【0054】
図5(a)に示すように、データDは、印刷設定情報SDと画像データIDとを含む。なお、図5では、右側がデータの先頭、左側がデータの末端となる向きで示されている。
印刷設定情報SDは、入力解像度、用紙種、用紙サイズ、印刷色(カラーモード)、印刷品質、画像補正、レイアウト、縁あり印刷の有無などの設定情報が含まれる。ここで、入力解像度とは、入力された画像データIDの解像度を指す。また、用紙種、用紙サイズ、印刷色、印刷品質、画像補正、レイアウトなどは、印刷条件として設定された内容を各部72〜74が解釈可能な値で示したものである。
【0055】
「用紙種」には、その選択肢として、例えば「普通紙、OHPシート、マット紙、光沢紙、半光沢紙、…」がある。「用紙サイズ」には、その選択肢として、例えば「A4,2L判,L判、ハガキ、Letter,Legal,…」がある。さらに「印刷色」には、その選択肢として、「カラー」と「モノクロ(グレイスケール)」がある。「印刷品質」には、その選択肢として、例えば「高品質モード」と「ドラフトモード」がある。また、「レイアウト」には、「印刷レイアウト」の選択と「縁なし印刷」の有無がある。
【0056】
印刷ジョブ変換部72は、第1解析部81、コマンド生成部82、判断手段の一例としての監視部83、保存手段の一例としての格納部84、判定手段の一例としての比較判定部85、及びジョブ生成手段の一例としての印刷ジョブ作成部86を備えている。
【0057】
第1解析部81は、入力バッファー75から読み込んだデータDを解析し、印刷設定情報SDを取得する。第1解析部81は、取得した印刷設定情報SDを格納部84に保存する。また、印刷設定情報SD及び画像データIDのうちコマンド生成に用いられる少なくとも一部が、コマンド生成部82に渡される。
【0058】
コマンド生成部82は、印刷設定情報SD及び画像データIDの少なくとも一部に基づいて印刷コマンドを生成する。印刷コマンドとしては、例えば改頁コマンドなどが生成される。なお、画像加工部73による画像処理途中又は画像処理後のデータに基づいて設定すべき印刷コマンドも生成する必要がある場合は、コマンド生成部82を、印刷ジョブ変換部72と画像加工部73の両方、あるいは画像加工部73のみに設ける構成も採用できる。
【0059】
監視部83は、中間バッファー76に格納された印刷ジョブデータJDの残データの容量を監視する。監視部83による監視方法としては、2種類の方法を挙げることができる。1つは、中間バッファー76の残データの容量(残量)を直接監視し、残データが規定値未満になったか否かを判定する方法である。また、他の1つは、格納した印刷ジョブデータJDの容量と、画像加工部73の処理速度とに基づいて中間バッファー76の残データが規定値未満になるまでの所要時間を求め、印刷ジョブデータJDの中間バッファー76への格納開始時点から計時を開始した計時時間(経過時間)が所要時間に達したことをもって、残データが規定値未満になったと判定する方法である。もちろん、監視部83が監視する残データは、中間バッファー76のものに限定されず、出力バッファー77の残データを監視してもよい。この場合、監視部83は、出力バッファー77の残データが規定値未満になったか否かを監視する。本例では、規定値として、画像加工部73が処理すべき画像データが中間バッファー76から無くなる直前の値、あるいは印刷エンジン74が処理すべきエンジン制御データが出力バッファー77から無くなる直前の値を設定している。ここで、監視部83が残データの量を監視するための規定値は、画像加工部73が処理すべき画像データが中間バッファー76から無くなる直前の値〜印刷エンジン74が処理すべきエンジン制御データが出力バッファー77から無くなる直前の値の範囲内で、かつプリンター11の印刷動作に待ちができない限りにおいて任意に設定できる。
【0060】
格納部84は、第1解析部81が取得した印刷設定情報SDを格納するための格納領域である。この格納部84は、少なくとも前回と今回の2回分の印刷設定情報SDを格納可能な記憶容量を有している。格納部84は、例えばRAM69の一部の記憶領域を用いて構成されている。
【0061】
比較判定部85は、格納部84に前回と今回の印刷設定情報SDが蓄積される度に、前回と今回の印刷設定情報SDを比較し、両印刷設定情報SDが同じであるか否かを判定する。比較判定の結果、両印刷設定情報SDが同じであれば、その旨が印刷ジョブ作成部86に通知され、両印刷設定情報SDが同じでなければ(つまり異なれば)、その旨が印刷ジョブ作成部86に通知される。本実施形態では、印刷設定情報SDには、後述する比較判定に必要な設定情報だけを含んでいるが、比較判定以外の他の処理に使う余分な設定情報を含んでいてもよい。余分な設定情報を含む場合は、印刷設定情報SDのうちその余分な情報を除いた一部の設定情報のみを比較判定対象とすることになる。ここで、比較判定対象の設定情報とは、後述する初期化処理部92,101がパラメーターの初期化に使用する印刷設定情報SDを指す。
【0062】
印刷ジョブ作成部86は、データDを基に印刷ジョブデータJDを作成する。このとき、印刷ジョブ作成部86は、比較判定部85の判定結果に応じた印刷ジョブデータJDを作成する。印刷ジョブ作成部86は、比較判定部85から両印刷設定情報SDが同じである旨の通知を受け付けると、前回以前のデータDを基に作成されその前回以前の回から前回までの画像データIDを含む作成中(終了前)の印刷ジョブデータJDに、今回のデータDに含まれる画像データIDを付加する処理を行う。一方、比較判定部85から両印刷設定情報SDが異なる旨の通知を受け付けると、前回のデータに含まれる画像データIDと今回のデータに含まれる画像データIDを、1つの印刷ジョブデータJDに結合することなく、各々の画像データIDを個別に含む印刷ジョブデータJD,JDを作成する。
【0063】
図5(b)に示す印刷ジョブデータJDは、プリンター11内の印刷ジョブ変換部72が、入力したデータDを基に生成したものである。図5(b)に示すように、先頭にジョブの開始を示すジョブスタート「JS」、終端にジョブの終了を示すジョブエンド「JE」が配置されている。そして、ジョブスタートJSとジョブエンドJEとの間には、先頭側(図5(b)の右側)から順に、印刷設定情報SD、印刷コマンドCM、画像データIDが配置されている。
【0064】
印刷ジョブ作成部86は、「JS」を先頭に付して印刷ジョブデータを開始し、続けて印刷設定情報SD、コマンド生成部82により生成された印刷コマンドCM、画像データIDをこの順に配置して、「JE」は付さないままにする。「JE」を付さないことで、印刷ジョブデータJDは作成途中(終了前)の状態となる。次のデータDが入力され、前回と今回の両印刷設定情報SDが同じである場合、作成途中の印刷ジョブデータJDにおける前回の画像データIDに続けて、今回の印刷コマンドCMと今回の画像データIDをこの順で配列する。このように前回と今回の両印刷設定情報SDが同じであると判定されているうちは、「JE」を付さず、今回の印刷コマンドCM及び今回の画像データIDを、前回の画像データIDに続けて配置する。
【0065】
そして、前回と今回の両印刷設定情報SDが異なると判定された場合、印刷ジョブ作成部86は、前回の画像データIDの後に「JE」を付け、印刷ジョブデータJDを終了する。そして、新たに先頭に「JS」を付して次の印刷ジョブデータを開始し、「JS」に続けて今回の印刷コマンドCM及び今回の画像データIDを配置する。
【0066】
ここで、今回のデータD中の印刷設定情報SDを格納部84に格納した後、次回のデータDがなかなか入力(受信)されない場合がある。この場合、待機したままであると、後段の画像加工部73は、「JE」がいつまで経ってもこないので、印刷ジョブの終了を確認できないままとなる。このため、本実施形態では、所定時期になると、「JE」を付して印刷ジョブデータJDを終了させるようにしている。所定時期は、監視部83が、監視する中間バッファー76の残データが規定値未満になったときに設定している。そして、印刷ジョブ作成部86は、比較判定部85から両印刷設定情報SDが異なる旨の通知を受け付けなくても、監視部83から中間バッファー76の残りデータが規定値未満になった旨の通知を受け付けると、その時点で、「JE」を付して印刷ジョブデータJDを終了させるようにしている。
【0067】
画像加工部73は、第2解析部91、初期化処理部92、解像度変換部93、画像補正部94、色変換処理部95、ハーフトーン処理部96及びマイクロウィーブ処理部97を備えている。
【0068】
第2解析部91は、印刷ジョブデータJDを解析し、印刷設定情報SDと印刷コマンドCMとを取得し、印刷設定情報SDを初期化処理部92に渡すとともに、印刷エンジン74に印刷設定情報SDと印刷コマンドCMとを送る。本例では、印刷設定情報SDに含まれる、「入力解像度」、「用紙種」、「用紙サイズ」、「印刷色」、「印刷品質」、「画像補正」、「レイアウト」「縁あり印刷の有無」の各種設定情報が、初期化処理部92に渡される。
【0069】
初期化処理部92は、印刷設定情報SDを基に各部93〜97が画像処理で使用するパラメーターの初期値を設定する初期化処理を行う。各部93〜97は、設定されたパラメーターの初期値を用いて画像処理を行うことで、印刷設定情報SDに適った画像データを生成することが可能になる。なお、初期化処理の詳細は後述する。
【0070】
解像度変換部93は、画像データIDを入力解像度から印刷解像度(出力解像度)に変換する解像度変換処理を行う。ここで、印刷解像度は、「印刷品質」の印刷モードに応じて決定される。高品質モード(きれいモード)のときには、高解像度の第1印刷解像度が設定され、ドラフトモードのときには、低解像度の第2印刷解像度が設定される。また、解像度変換部93は、この解像度変換処理において、画像データIDの画像サイズを印刷サイズに変倍(拡大又は縮小等)する変倍処理も併せて行う。また、印刷画像が用紙から大きくはみ出る場合に印刷画像を印刷サイズに収まるように切り取るクリッピング処理等が必要に応じて事前に行われる。なお、画像データIDとしては、例えばJPEG画像データ等が挙げられ、画像データIDと共に入力解像度などの属性情報も一緒に入力部71に入力される。この入力解像度は、印刷設定情報SDの1つとなる。
【0071】
画像補正部94は、「画像補正」の選択項目で「画像補正あり」が設定されていた場合、画像データIDに画像補正処理を施す。本例の画像補正には、シーン補正及び赤目補正などが含まれる。シーン補正は、画像データID中の特定色を検出し、その検出した特定色の位置や領域から特定されるシーンに応じた色補正を画像データIDに施す。例えば画像補正部94は、画像データID中の所定領域(例えば上領域)に青色が検出された場合、その領域を「空」とみなし、画像データIDに対して室外で撮影された写真に合った色補正を施す。また、画像データID中に肌色が検出された場合は、人物を撮影した写真であるとみなし、画像データIDに対して人物の写真に合った色補正を施す。また、画像補正部94は、画像データIDに対して赤目検出処理を行い、赤目が検出された場合は、画像データIDに対して目の赤色を通常の目の色(例えば黒色又は茶色)に変換する色補正を施す。
【0072】
色変換処理部95は、画像データIDを表示用の表色系から印刷用の表色系へ色変換する色変換処理を行う。ここで、画像データIDが例えばJPEGデータである場合、画像データIDは、不図示の解凍処理部でYUV画像データに解凍され、さらにYUV画像データからRGB画像データに色変換される。色変換処理部95は、RGB表色系で表現されたRGB画像データを、色変換テーブル(図示せず)を参照して、CMYK表色系の印刷画像データに変換する。このとき、印刷色がカラーであれば、カラー用の色変換テーブルが選択され、印刷色がモノクロであれば、モノクロ用の色変換テーブルが使用される。
【0073】
ハーフトーン処理部96は、多段階の階調値(例えば256階調値)を有するCMYK画素データを、プリンター部13が表現可能な、少段階の階調値(例えば2〜8階調のうちの所定階調値)を有するCMYK画素データに変換する処理である。例えば2階調であれば、ドットなし/ドットありの2段階で表現され、例えば4階調であれば、ドットなし、小ドット、中ドット、大ドットの4段階で表現される。ハーフトーン処理部96は、公知の組織的ディザ法や誤差拡散法などを用いてハーフトーン処理を行う。
【0074】
マイクロウィーブ処理部97は、ハーフトーンデータに対してマイクロウィーブ処理を行う。マイクロウィーブ処理部97は、印刷ヘッド36のノズル位置(ノズルピッチ)のばらつきが原因で、主走査方向に印刷されたドット列(ラスターライン)の副走査方向Yの隙間(行間)がばらつくことに起因するバンディング(スジ状の濃度むら)を抑制するため、各ノズルに画素(ドット)を割り付ける処理を行う。マイクロウィーブ処理では、副走査方向Yに隣接する印刷ドット列の印刷に使用するノズルを変えるように、ノズルにドット(画素)を割り当てる。ここで、マイクロウィーブ処理は、印刷品質が高品質モードのときに行われ、ドラフト印刷モードでは採用されない。こうして、画像加工部73が、画像データIDに各種の画像処理等を施して生成したCMYK表色系の印刷画像データは出力バッファー77に格納される。
【0075】
ここで、初期化処理部92は、各部93〜97がそれぞれの画像処理で使用する各種のパラメーターの初期値を、印刷設定情報SD中の「入力解像度」、「用紙種」、「用紙サイズ」、「印刷色」、「印刷品質」、「画像補正」、「レイアウト(縁あり印刷の有無を含む)」を用いて設定及び演算する。以下、初期化処理について、解像度変換処理、画像補正、色変換処理、ハーフトーン処理、マイクロウィーブ処理部の順に説明する。
【0076】
初期化処理部92は、解像度変換部93が解像度変換処理で使用するパラメーターを、「入力解像度」、「用紙サイズ」、「印刷品質」、「レイアウト」、「縁あり印刷の有無」を用いて初期化する。パラメーターとしては、印刷解像度、印刷サイズ、変倍率、間引き処理又は補間処理の設定値などがある。前述のとおり、印刷解像度は、「印刷品質」から決まる印刷モードに応じて決定される。すなわち、高品質モードであれば、印刷解像度は「高解像度」(第1解像度)に設定され、一方、「ドラフトモード」であれば、印刷解像度は「低解像度」(第2解像度)に設定される。このとき、印刷サイズ(印刷画像のサイズ)は、「用紙サイズ」と「レイアウト」と「縁なし印刷の有無」に基づいて演算される。
【0077】
例えば「縁なし印刷あり」の場合は、印刷領域が用紙領域から規定量だけはみ出すように印刷サイズが設定される。また、「縁なし印刷なし」の場合は、用紙領域の周縁の余白量が考慮されて印刷サイズが設定される。印刷サイズと印刷解像度が決まると、画像サイズ及び入力解像度の画像を、印刷サイズ及び印刷解像度の印刷画像にするために必要な変倍率が演算される。変倍率が100%より大きければ(つまり拡大であれば)、画素間に画素を追加する補間処理が選択され、変倍率が100%未満であれば画素間の画素を間引きする間引き処理が選択される。そして、変倍率に基づき、補間処理で画素を追加する補間の程度(割合)を示す補間設定値、又は間引き処理で画素を間引きする間引きの程度(割合)を示す間引き設定値が演算される。
【0078】
このように初期化処理部92は、「入力解像度」、「用紙サイズ」、「印刷品質」、「レイアウト」、「縁あり印刷の有無」の各設定情報を基に、印刷解像度、印刷サイズ、変倍率を演算し、これらの演算値を用いて、間引き処理や補間処理で使用する間引き設定値や補間設定値などの解像度変換処理用の設定パラメーターの初期値を演算する。
【0079】
また、初期化処理部92は、「画像補正」の設定情報(シーン補正の有無、赤目補正の有無)を基に、画像補正部94が画像補正処理(色補正処理)で使用するパラメーターの初期値を演算する初期化処理を行う。例えば「画像補正」で「シーン補正あり」の場合、青色補正で使用する青色補正パラメーターの初期値、肌色補正で使用する肌色補正パラメーターの初期値などシーン補正における各種の色補正で使用する色補正パラメーターの初期値を演算する。また、「画像補正」で「赤目補正あり」の場合、赤目補正で使用する赤目補正パラメーターの初期値を演算する。
【0080】
さらに初期化処理部92は、色変換処理部95が色変換処理で使用する色変換テーブルを、「用紙種」及び「印刷色」に応じて選択設定する初期化処理を行う。用紙種に応じて用紙Pの白色が微妙に異なるため、初期化処理部92は、用紙種に応じた紙色に合った色変換テーブルを選択設定する。このとき、初期化処理部92は、印刷色がカラーであればカラー用の色変換テーブルを選択設定し、モノクロ(グレイスケール)であればグレイスケール用の色変換テーブルを選択設定する。
【0081】
また、初期化処理部92は、「用紙種」、「印刷色」、「印刷品質」を基に、ハーフトーン処理部96がハーフトーン処理で使用するパラメーターの初期値を演算する。詳しくは、初期化処理部92は、「用紙種」と、「印刷色」と、「印刷品質」から決まる「印刷解像度」とを基に、ハーフトーン処理で用いられる公知の組織的ディザ法又は誤差拡散法などの処理条件を規定するハーフトーン処理モードの決定と、そのチェック処理とを行う。
【0082】
また、初期化処理部92は、「印刷品質」が「高品質モード」のときに、マイクロウィーブ処理部97がマイクロウィーブ処理で使用するパラメーターを初期化する。さらに初期化処理部92は、画像サイズに応じて、画像加工処理用のバッファーの確保(割り当て)とその初期化を行う。また、初期化処理部92は、ハーフトーン処理部96とマイクロウィーブ処理部97にアクセスし、それぞれの初期化とそれぞれの処理用パラメーターを設定する。
【0083】
印刷エンジン74は、初期化処理部101、ヘッド制御部102、キャリッジ制御部(以下、「CR制御部103」と記す)、給送制御部104及び搬送制御部105を備えている。印刷エンジン74は、画像加工部73内の第2解析部91から印刷コマンドCMを及び印刷設定情報SDを取得するとともに、出力バッファー77からエンジン制御データPDを取得する。
【0084】
初期化処理部101は、印刷設定情報SDを用いて、ヘッド制御部102、CR制御部103及び搬送制御部105が制御に使用するパラメーターの初期値を設定する初期化処理を行う。ここで、初期化処理の具体的な内容を説明する前に、まず各部102〜105の制御内容を説明する。なお、エンジン制御データPDには、印刷ヘッド36を制御するためにヘッド制御部102が使用するヘッド制御データ、及び搬送制御部105が搬送モーター42を制御するために使用するモーター制御データ等が含まれる。
【0085】
ヘッド制御部102は、出力バッファー77から読み出したヘッド制御データを、印刷ヘッド36へ転送し、転送したヘッド制御データにより印刷ヘッド36を制御する。印刷ヘッド36に内蔵されたヘッド駆動回路(図示せず)は、ヘッド制御データと、リニアエンコーダー39の出力パルスから生成された噴射制御信号とを入力し、ヘッド制御データに基づく印刷ヘッド36のノズルからのインクの噴射を、噴射制御信号に同期した噴射タイミングで行う。
【0086】
CR制御部103は、キャリッジ32の1回の走査である1パス分ずつのヘッド制御データを解析してキャリッジ32の1パスにおける始動位置と停止位置を取得する。そして、CR制御部103は、第2解析部91から受け取った印刷コマンドCM及びモーター制御データに従って、始動位置から停止位置までキャリッジ32を移動させるべくキャリッジモーター35を制御する。CR制御部103は、リニアエンコーダー39の出力パルスのパルスエッジを計数する不図示のキャリッジカウンターの計数値に基づいてキャリッジ32の位置を把握する。キャリッジカウンターはキャリッジ32がホーム位置から離れる往動過程で入力するパルスエッジの数を加算し、キャリッジ32がホーム位置へ近づく復動過程で入力するパルスエッジの数を減算することで、キャリッジ32の主走査方向における位置に応じた計数値を計数する。不揮発性メモリー68には、キャリッジモーター35を制御するための速度制御テーブルが記憶されている。速度制御テーブルは、キャリッジ位置とキャリッジ速度(キャリッジモーター回転速度)との関係を示すテーブルであり、印刷品質から決まる印刷モード(高品質モード、ドラフトモード)毎に用意されている。
【0087】
給送制御部104は、印刷開始時又は改頁コマンドの入力時に、給送モーター41を駆動させることにより、用紙Pを給送する。
搬送制御部105は、キャリッジ32が1回の走査(1パス)を終える度に、搬送モーター42を用紙Pが次の印刷位置に配置されるまでの駆動量だけ駆動させることにより、用紙Pを搬送(紙送り)させる。搬送制御部105は、CR制御部103からキャリッジ32が1回の走査を終える直前のタイミングで送られてくる搬送開始指令に従って搬送モーター42の駆動を開始させる。そして、搬送制御部105は、搬送コマンド及びモーター制御データに従って、搬送モーター42を制御する。
【0088】
不揮発性メモリー68には、搬送モーター42を制御するための速度制御テーブルが記憶されている。速度制御テーブルは、搬送中の用紙の位置(搬送位置)と搬送速度(搬送モーター回転速度)との関係を示すテーブルであり、印刷品質から決まる印刷モード(高品質モード、ドラフトモード)毎、及び用紙種毎に用意されている。そして、1種類の速度制御テーブルが決まると、搬送制御部105は、その中から搬送コマンドから把握した搬送量に応じた搬送モーター42の1つの速度制御テーブルを選択し、その搬送量だけ用紙Pを搬送する過程において、選択した速度制御テーブルに従って搬送モーター42を速度制御することにより1回の搬送を行う。搬送制御部105は1回の搬送を終える度に、CR制御部103へキャリッジ起動指令を送る。こうして、キャリッジ32の駆動と用紙Pの搬送とが交互に行われ、用紙Pへの印刷が進められる。
【0089】
初期化処理部101は、印刷設定情報SDのうち「用紙サイズ」、「印刷品質」及び「縁なし印刷の有無」を基に、縁なし印刷時にヘッド制御データの用紙領域からのはみ出し量を規定値(例えば1〜5mmの範囲内の所定値)以下に制限するために、ヘッド制御データの一部をマスクするマスクパターンを生成する処理を行う。このとき、印刷サイズは、「印刷品質」から決まる印刷モードに応じた印刷解像度などを基に、先に演算されたものを用いる。印刷サイズと用紙サイズとからはみ出し量が決まり、はみ出し量を規定値にしうるマスクパターンデータを生成する。ヘッド制御データとマスクパターンデータは印刷ヘッド36内のヘッド駆動回路に入力され、マスクパターンデータに基づくマスク領域では印刷ヘッド36のノズルからのインクの噴射が禁止される。
【0090】
また、初期化処理部101は、「印刷品質」が高品質モードである場合、ヘッド制御部102がマイクロウィーブ印刷時に使用する、マイクロウィーブ設定値に応じたマイクロウィー動作モードパラメーターを初期化する。さらに初期化処理部101は、「印刷色」の指定値に応じて、カラー/モノクロ(グレイスケール)のどちらであるかを初期値として設定する。また、初期化処理部101は、「用紙サイズ」の設定に応じて、用紙サイズの初期値を設定する。この用紙サイズの初期値は、用紙サイズを超えるサイズのヘッド制御データが送られてきたときに、用紙サイズを超えたはみ出し部分を除いた適正サイズの部分だけを切り取るクリッピング処理に用いられる。
【0091】
本実施形態のプリンター11では、同じ印刷ジョブ内の複数ページを印刷するときには、印刷済みの先行紙の排出(排紙)と後続紙の給送(給紙)とを同時並行に行う給排紙重ね合わせ制御が行われる。この給排紙重ね合わせ制御が行われるときには、先行紙の排出を終えるのを待って後続紙の給送を開始する通常の給排紙モードに比べ、先行紙の印刷終了から後続紙の印刷開始までの時間間隔を短くでき、複数枚印刷時の印刷スループットの向上に寄与する。但し、異なる印刷ジョブ間では給排紙重ね合わせ制御は行われず、通常の給排紙が行われる。
【0092】
これは、印刷エンジン74が、印刷ジョブデータJD中のジョブエンド「JE」を検出すると、1つの印刷ジョブが終了したと判断し、その印刷ジョブの最終ページの排紙が完了するまで待った後、次の印刷ジョブの1ページ目の給送を開始するからである。なお、先行紙の排出の完了は、先行紙の後端が支持台38より搬送方向下流側の規定位置に達するまで搬送されたことをもって判断する。あるいは、この規定位置に達してから規定量だけ搬送モーター42が駆動された時点を先行紙の排出の完了と判断する。
【0093】
なお、ホスト装置110からプリンタードライバーが生成した印刷ジョブデータを入力したときには、比較判定部85の判定結果に基づく印刷ジョブ変換部72による印刷ジョブデータJDの再構築が行われる。但し、この場合、解像度変換処理、画像補正、色変換処理、ハーフトーン処理は、既にホスト装置110内のプリンタードライバーが行っているので、画像加工部73では高品質モードのときのマイクロウィーブ処理だけが行われる。よって、初期化処理部92の設定もマイクロウィーブ処理に関係する初期化処理のみ行われる。そして、マイクロウィーブ処理が必要なときだけ、マイクロウィーブ処理部97はマイクロウィーブ処理を行う。
【0094】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用を、図6及び図7に基づいて説明する。図7は、CPU66が実行する印刷ジョブ生成処理のフローチャートである。ここでは、プリンター11の電源投入後、最初のデータを入力する場合を例に説明する。以下の説明では、入力部71が先(1番目)に入力する先行データDに含まれる印刷設定情報及び画像データをそれぞれSD1,ID1と示し、その次(2番目)に入力する後続データDに含まれる印刷設定情報及び画像データをそれぞれSD2,ID2と示す場合がある。つまり、n番目に入力したデータDについては、印刷設定情報SDn及び画像データIDn(但し、n=1,…,k(kは2以上の自然数))と示す場合がある。また、入力部71が入力するデータD中の印刷設定情報SDには、「入力解像度」、「用紙種」、「用紙サイズ」、「印刷品質」、「画像補正」、「レイアウト」、「縁なし印刷の有無」が含まれる。なお、入力部71が入力するデータDを構成する印刷設定情報SDは、ホスト装置120から画像データIDと共にプリンター11へ送られてくる場合、ホスト装置120から一部のみ送られてきて残りの一部はプリンター11に設定されたものを入力する場合、全てプリンター11に設定されたものを入力する場合とがある。これらいずれの場合も、入力部71は、印刷設定情報SDと画像データIDとを含むデータDを入力する。なお、印刷設定情報SDと画像データIDは別々に入力されても構わない。
【0095】
ステップS1では、データDを入力したか否かを判断する。データDの入力があった場合はステップS2に進み、データDの入力がない場合はステップS5に進む。
ステップS2では、印刷設定情報SD1を保存(格納)する。すなわち、第1解析部81がデータDを解析して印刷設定情報SD1を取得し、その取得した印刷設定情報SD1を格納部84に保存する。
【0096】
次のステップS3では、印刷設定情報SDが2つあるか否かを判断する。印刷設定情報SDが今回の1つ分しかなければステップS4に進み、印刷設定情報SDが前回と今回の2つ分あればステップS7に進む。この例では、プリンター11の電源投入後、最初(1番目)のデータDを入力したときであり、印刷設定情報SDが今回の1つしかなくステップS3の判定結果が否定判定となるので、ステップS4に進む。
【0097】
ステップS4では、印刷ジョブデータJDの作成を開始する。すなわち、印刷ジョブ作成部86が、ジョブスタート「JS」、印刷設定情報SD、印刷コマンドCM、画像データIDまでの印刷ジョブデータJDを生成する。
【0098】
こうして図6(a)に示すように、先行データDを入力すると、その中の印刷設定情報SDを格納部84に保存するとともに、ジョブスタート「JS」、印刷設定情報SD、印刷コマンドCM、画像データIDを含む途中までの印刷ジョブデータJDを作成する。この作成中の印刷ジョブデータJDは生成順に中間バッファー76へ順次格納される。そして、後段の画像加工部73が中間バッファー76から印刷ジョブデータJDを順次読み出し、読み出した印刷ジョブデータJDに基づいて画像加工処理を行う。画像加工部73は、印刷ジョブデータJD中の印刷設定情報SDを基に画像加工処理で使用するパラメーターを初期化する初期化処理を行う。そして、初期化されたパラメーターを用いて各部93〜97による各画像処理が進められる。
【0099】
こうして1番目のデータDの入力に基づく処理(S1〜S4)を終えると、再びステップS1の処理に戻る。そして、ステップS1において、データDの入力がなければ(否定判定)、ステップS5に進む。
【0100】
ステップS5では、印刷ジョブ作成中であるか否かを判断する。すなわち、前回の印刷ジョブデータJDの作成開始後、ジョブエンド「JE」を付して印刷ジョブデータJDを終了させていなければ、印刷ジョブ作成中であると判断する。例えば印刷ジョブ作成中であるか否かを判断するフラグが用意され、印刷ジョブ作成開始のときにフラグを「1」とし、印刷ジョブ作成終了のときにフラグを「0」にする。フラグが「1」であれば印刷ジョブ作成中と判断し、「0」であれば印刷ジョブ作成中ではないと判断する。本例では、前回処理のステップS4で、印刷ジョブデータJDの作成を開始したままなので、印刷ジョブ作成中である(S5で肯定判定)と判断される。このため、ステップS6に進む。
【0101】
ステップS6では、バッファーの残データが規定値未満であるか否かを判断する。この判断は、監視部83が行う。バッファーの残データが規定値未満であればステップS9に進み、規定値未満でなければステップS1に戻る。こうして、バッファーの残データが規定値未満になるか(S6で肯定判定)、次のデータの入力がある(S1で肯定判定)まで、S1、S5、S6の各処理を繰り返す。
【0102】
その後、次(2番目)のデータDを入力すると、ステップS1においてデータDが入力されたと判定してステップS2に進み、印刷設定情報SDを保存する。この結果、格納部84には、前回の印刷設定情報SD1と今回の印刷設定情報SD2とが保存される。次のステップS3では、前回の印刷設定情報SD1と今回の印刷設定情報SD2の2つあると判断されるため、ステップS7に進む。
【0103】
ステップS7では、前回と今回の印刷設定情報SD1,SD2が同じであるか否かを判断する。両印刷設定情報SD1,SD2が同じであれば、ステップS8に進み、一方、両印刷設定情報SD1,SD2が異なればステップS9に進む。
【0104】
例えば両印刷設定情報SD1,SD2が同じであった場合(S7で肯定判定)は、ステップS8において、作成中の印刷ジョブデータJDに、今回の印刷コマンドと画像データID2を付与する。つまり、印刷ジョブ作成部86は、作成中の印刷ジョブデータJDの末尾(前回の画像データID1の末尾)に続けて、コマンド生成部82が生成した今回の印刷コマンドCMと、今回の画像データID2とを付与する。
【0105】
一方、両印刷設定情報SD1,SD2が異なる場合(S7で否定判定)は、ステップS9において、印刷ジョブデータJDの作成を終了する。つまり、印刷ジョブ作成部86は、作成中の印刷ジョブデータJDの最後に、ジョブエンド「JE」を付し、印刷ジョブデータJDを終了させる。
【0106】
そして、次のステップS10では、印刷ジョブデータJDの作成を開始する。すなわち、印刷ジョブ作成部86は、ジョブスタート「JS」、印刷設定情報SD2、印刷コマンドCM、画像データID2までの印刷ジョブデータJDを生成する。こうして2番目のデータDの入力に基づく処理を終えると、再びステップS1の処理に戻る。
【0107】
このように後続のデータDを入力した場合は、図6(b)に示すように、入力した後続のデータDを解析して印刷設定情報SD2を取得し、その取得した印刷設定情報SD2を格納部84に保存する。この結果、格納部84には、前回と今回の印刷設定情報SD1,SD2が保存される。そして、比較判定部85が、前回と今回の印刷設定情報SD1,SD2が同じであるか否かを判定する。
【0108】
図6(b)に示すように、比較判定部85が、前回と今回の印刷設定情報SD1,SD2が同じである(SD1=SD2)と判定したときは、作成中の印刷ジョブデータJDの末尾(つまり前回の画像データID1の末尾)に、今回の印刷コマンドCMと今回の画像データID2とを付加する。つまり、前回の画像データID1と今回の画像データID2とを含む一つの印刷ジョブデータJDが作成される。この場合、まだ印刷ジョブデータJDの作成中の状態が継続される。そして、次(3番目)のデータDが入力され、比較判定部85が、前回と今回の印刷設定情報SD2,SD3が同じであると判定すると、作成中の印刷ジョブデータJDの末尾(つまり前回の画像データID2の末尾)に、今回の印刷コマンドCMと今回の画像データID3とを付加する。つまり、1番目〜3番目の画像データID1〜ID3を含む一つの印刷ジョブデータJDが作成される。こうして、前回と今回の印刷設定情報SDn,SDn+1が異なると判定されるか(S7で否定判定)、あるいはバッファーの残データが規定値未満であると判定される(S6で肯定判定)まで、1番目〜n番目の画像データID1〜IDnを含む一つの印刷ジョブデータJDが作成される。
【0109】
一方、図6(b)に示すように、比較判定部85が、前回と今回の印刷設定情報SD1,SD2が異なる(SD1≠SD2)と判定したときには、作成中の印刷ジョブデータJDの末尾に、ジョブエンド「JE」を付加する。この場合、作成中の印刷ジョブデータJDは終了する。そして、今回の印刷コマンドCMと今回の画像データID2とを含む次の印刷ジョブデータJD(図6(b)では図示省略)の作成が開始される。
【0110】
こうして生成された印刷ジョブデータJDは、先頭から順に中間バッファー76に格納され、画像加工部73により中間バッファー76から先頭から順に読み取られる。画像加工部73内の第2解析部91は印刷ジョブデータJDを先頭から順に解析し、取得した印刷設定情報SDを初期化処理部92,101に渡す。初期化処理部92は、印刷設定情報SDを基に、各部93〜97がそれぞれの画像処理で使用する各パラメーターの初期値を求め、求めた各初期値を対応する各部93〜97に設定する。また、初期化処理部101は、印刷設定情報SDを基に、各部102,103,105がそれぞれの制御で使用する各パラメーターの初期値を求め、求めた各初期値を対応する各部102,103,105に設定する。
【0111】
例えば先行データDと後続データDの各印刷設定情報SD1,SD2が同じであれば、印刷設定情報SD1と各画像データID1,ID2とを含む1つの印刷ジョブデータJDが作成される。この場合、初期化処理部92,101は、印刷設定情報SD1を基に初期化処理を行う。そして、各画像データID1,ID2に対する各部93〜97による画像処理や、各部102,103,105による各種制御は、印刷設定情報SD1を基に行った初期化処理結果を用いて行われる。つまり、印刷設定情報SD2に基づく初期化処理が省略される。初期化処理は比較的時間を要するが、両印刷設定情報SD1,SD2が同じである場合は後続データDの分の初期化処理は省略される。そして、n+1番目のデータDまで両印刷設定情報SDn,SDn+1が同じである場合、後続データDの分の初期化処理が連続してn回省略される。
【0112】
以上詳述したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)前回(n番目)と今回(n+1番目)の印刷設定情報SDn,SDn+1が同じであると判定されている(S7で肯定判定)うちは、1番目〜n+1番目の画像データID1〜IDn+1を含む一つの印刷ジョブデータJDを生成する。この結果、画像加工部73及び印刷エンジン74内の各初期化処理部92,101が印刷ジョブデータJD中の印刷設定情報SDを基に行う初期化処理は、印刷設定情報SDが同じ複数のデータDに対して1回のみ行えばよい。つまり、印刷設定情報SDが同じ複数のデータDのうち2回目以降のデータDについての初期化処理を省略できる。よって、初期化処理の省略によりプリンター11の印刷スループットを向上させることができる。
【0113】
(2)前回(n番目)と今回(n+1番目)の印刷設定情報SDn,SDn+1が異なると判定されると(S7で否定判定)、ジョブエンド「JE」を付加し、作成中の印刷ジョブデータJDを終了させる。そして、今回の印刷設定情報SDn+1と今回の画像データIDn+1を含む印刷ジョブデータJDを新規に作成する。よって、今回の印刷設定情報SDn+1を基に初期化処理を行い、得られた適正なパラメーターを使用して適切な画像加工及び印刷制御を行うことができる。
【0114】
(3)バッファー76(又は77)の残データが規定値未満であると判定されると、ジョブエンド「JE」を付加し、作成中の印刷ジョブデータJDを終了させる。このため、中間バッファー76(又は出力バッファー77)に画像加工部73が処理すべきデータがなくなったにも関わらずジョブエンド「JE」がなく、ジョブエンド「JE」に基づき行われる排紙などの印刷制御の開始時期が遅延する事態を回避できる。この結果、この種の印刷制御の遅延に起因する印刷スループットの低下を回避し易くなる。
【0115】
(4)監視部83が残データを監視する規定値として、画像加工部73が処理すべき画像データが中間バッファー76から無くなる直前の値〜印刷エンジン74が処理すべきエンジン制御データが出力バッファー77から無くなる直前の値の範囲内で、かつ印刷エンジン74による排紙などの印刷制御に待ちが発生しない値を採用している。このため、少しでも長く待ってより多くの画像データIDを一つの印刷ジョブデータJDに含め易くなる。この結果、少しでも多くの初期化処理を省略することができ、初期化処理の省略による印刷スループットの向上を一層図り易くなる。
【0116】
(5)同じ印刷設定情報SDを含む複数のデータDを入力する場合は、そのうち先頭のデータDの印刷設定情報SDと、複数のデータDに含まれる各画像データIDとを含む一つの印刷ジョブデータJDを作成する。つまり、先行するデータDを基に作成を開始した印刷ジョブデータJDに、後続のデータD中の画像データIDを順次付加する構成とした。このため、画像加工部73及び印刷エンジン74の構成はそのままで、複数の画像データIDに対する初期化処理を1回で済ませることができる。例えば、複数の画像データIDを1つにまとめた印刷ジョブデータJDの形態をとらなくても、初期化処理を省略する旨の指示を、印刷ジョブ変換部72から画像加工部73及び印刷エンジン74に通知する構成も採用できるが、この場合、初期化処理を省略する旨の指示に対応できるように画像加工部73及び印刷エンジン74の構成の変更が必要になる。これに対して、本実施形態によれば、このような画像加工部73及び印刷エンジン74の構成の変更が必要ない。
【0117】
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・印刷設定情報SDが同じ複数の画像データを、1つの印刷ジョブデータJDに結合する構成に限定されない。例えば前回と今回の印刷設定情報SDが同じであると判定した場合でも、1つの画像データIDを含む一つの印刷ジョブデータJDを作成する。そして、先行の印刷ジョブデータと後続の印刷ジョブデータを印刷手段に渡すとともに、印刷手段を構成する画像加工部73と印刷エンジン74に、判定手段の判定結果に応じた指示を送る構成とする。このとき、両印刷設定情報SDが同じであると判定された場合は、先行の印刷ジョブデータ中の印刷設定情報SDを基に初期化処理(処理条件の設定処理)を行って求めたパラメーターを使用して、後続の印刷ジョブデータの印刷処理を行うよう印刷手段に指示する。一方、両印刷設定情報SDが異なると判定された場合、先行の印刷ジョブデータと後続の印刷ジョブデータとで個別に初期化処理を行って各々パラメーターの初期値を求め、異なるパラメーターを使用して印刷処理を行うよう印刷手段に指示する。指示する方法としては次の方法が挙げられる。例えば両印刷設定情報SDが同じであると判定された場合、後続の印刷ジョブデータJDに、判定結果あるいは初期化処理不要の旨(前回の初期化処理結果を使用する旨)を通知するフラグを組み込む。印刷手段(画像加工部73及び印刷エンジン74)はフラグの値に基づき初期化処理の要否を判断し、不要であれば初期化処理を省略し、必要であれば初期化処理を行う構成とする。この構成によっても、先行の印刷ジョブデータと後続の印刷ジョブデータとに含まれる両印刷設定情報が同じである場合に、後続の印刷ジョブデータの初期化処理(処理条件の設定処理)を省略できる。
【0118】
・印刷手段を構成する画像加工部73と印刷エンジンの各初期化処理部92,101のうち一方の初期化処理のみ省略する構成でもよい。
・前回と今回の印刷設定情報SDn,SDn+1が同じである場合に省略する初期化処理は、画像加工部73を構成する各部93〜97が自身の画像処理で使用するパラメーターの初期化のうち一部のみを省略する構成でもよい。また、各部93〜97のうち初期化処理部92が初期化処理を行う対象は、適宜変更できる。
【0119】
・前回と今回の印刷設定情報SDn,SDn+1が同じである場合に省略する初期化処理は、印刷エンジン74を構成する各部102,103,105が自身の制御で使用するパラメーターの初期化のうち一部のみを省略する構成でもよい。また、初期化処理部101が各部102〜105に対し初期化処理を行う構成であって、両印刷設定情報SDn,SDn+1が同じである場合に、各部102〜105に対する初期化処理を全て省略したり、一部のみ省略したりしてもよい。さらに、各部102〜105のうち初期化処理部101が初期化処理を行う対象は、適宜変更できる。
【0120】
・監視部83が残データを監視する際の規定値は、画像加工部73が処理すべき画像データが中間バッファー76から無くなったときに印刷ジョブデータJDの作成を終了しうる値でもよい。さらに、計時時間で判断する場合、画像加工部73が処理すべき画像データが中間バッファー76から無くなってから更に後の所定時期までの所要時間を求め、計時時間が所要時間に達した時点で、印刷ジョブデータJDの作成を終了する構成としてもよい。また、残データを監視するのではなく、印刷ジョブ変換部72が印刷ジョブデータJDを後段の印刷手段(画像加工部73等)側に渡し始めてから、予め設定した設定時間を経過した時点で印刷ジョブデータJDの作成を終了する構成も採用できる。
【0121】
・印刷エンジン74の初期化処理部は、印刷ヘッドの制御に使用するパラメーターのみを初期化する構成でもよい。
・印刷設定情報SDは、用紙種、用紙サイズ、印刷色、印刷品質、画像補正、レイアウト、縁なし印刷の有無の全てを含むことに限定されない。例えば用紙種が固定の印刷装置、用紙サイズが固定の印刷装置、印刷色が固定の印刷装置、印刷品質(又は印刷解像度)が固定の印刷装置、レイアウトが固定の印刷装置、画像補正が固定の印刷装置などにおいては、その値が固定の情報は、印刷設定情報SDに含まれなくてもよい。
【0122】
・印刷装置は、インクジェット方式のプリンターに限定されず、ワイヤインパクト方式の印刷装置、熱転写式の印刷装置、電子写真式の印刷装置を採用してもよい。また、スキャナー機能を備えない印刷装置を採用してもよい。
【0123】
前記実施形態及び変形例等から把握される技術的思想を以下に記載する。
(1)前記画像処理手段は、前記画像処理として、少なくとも色変換処理とハーフトーン処理を行い、前記設定手段は、前記色変換処理で使用する色変換処理条件の設定と、前記ハーフトーン処理で使用するハーフトーン処理条件の設定とを行うことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。この構成によれば、両印刷設定情報が同じであるときには、後続データについては、色変換処理条件の設定と、ハーフトーン処理条件の設定とを省くことができる。
【0124】
(2)前記技術的思想(1)において、前記画像処理手段は、前記画像処理として、前記画像データを色補正する画像補正を更に行い、前記設定手段は、前記画像補正で使用する色補正処理条件の設定を更に行うことを特徴とする印刷装置。この構成によれば、両印刷設定情報が同じであるときには、後続データについては、色補正処理条件の設定を省くことができる。
【符号の説明】
【0125】
11…電子機器の一例としての複合型プリンター、13…プリンター部、14…スキャナー部、19…入力手段を構成する一例である通信部、20…カードスロット、32…キャリッジ、36…印刷ヘッド、41…給送モーター、42…搬送モーター、50…コントローラー、54…入力手段を構成する一例であるメモリーI/F、55…入力手段を構成する一例であるUSBI/F、60…コンピューター、65…入力手段を構成する一例である入力I/F、66…CPU、67…ASIC、68…不揮発性メモリー、69…RAM、71…入力手段の一例である入力部、72…印刷ジョブ変換部、73…画像加工部、74…印刷エンジン、75…入力バッファー、76…中間バッファー、77…出力バッファー、81…第1解析部、82…コマンド生成部、83…判断手段の一例である監視部、84…保存手段の一例である格納部、85…判定手段の一例である比較判定部、86…ジョブ生成手段の一例である印刷ジョブ作成部、91…第2解析部、92…設定手段の一例を構成する初期化処理部、93…解像度変換部、94…画像補正部、95…色変換処理部、96…ハーフトーン処理部、97…マイクロウィーブ処理部、101…設定手段の一例を構成する初期化処理部、102…ヘッド制御部、103…キャリッジ制御部、104…給送制御部、105…搬送制御部、110,120…ホスト装置、MC…メモリーカード、D…データ、JD…印刷ジョブデータ、SD…印刷設定情報、ID…画像データ、JS…ジョブスタート、JE…ジョブエンド、P…媒体としての用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力したデータに基づき印刷を行う印刷装置であって、
印刷設定情報と画像データとを含むデータを入力する入力手段と、
前記データに基づき印刷処理を行う印刷手段と、
前記データに含まれる印刷設定情報を基に前記印刷手段が印刷処理で使用する処理条件を設定する設定手段と、
前記入力手段が先に入力した先行データに含まれる印刷設定情報と、当該先行データの次に入力した後続データに含まれる印刷設定情報とを比較し両印刷設定情報が同じであるか否かを判定する判定手段と、を備え、
(A)前記判定手段により前記両印刷設定情報が同じであると判定された場合、前記印刷手段は、前記設定手段が先行データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って前記先行データ及び後続データに基づく印刷処理を行い、
(B)前記判定手段により前記両印刷設定情報が異なると判定された場合、前記印刷手段は、前記設定手段が先行データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って前記先行データに基づく印刷処理を行うとともに、前記設定手段が後続データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って当該後続データに基づく印刷処理を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記入力手段が入力した前記データを基にジョブデータを生成して当該ジョブデータを前記印刷手段へ出力するジョブ生成手段を、更に備え、
前記印刷手段は前記ジョブデータに基づいて前記印刷処理を行う構成であり、
(A)前記判定手段により前記両印刷設定情報が同じであると判定された場合、前記ジョブ生成手段は、当該印刷設定情報と、前記先行データに含まれる画像データと、前記後続データに含まれる画像データとを含む一つのジョブデータを生成し、
(B)前記判定手段により前記両印刷設定情報が異なると判定された場合、前記ジョブ生成手段は、前記先行データと後続データ毎に個別にジョブデータを生成することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記先行データ中の前記印刷設定情報を保存する保存手段を備え、
前記ジョブ生成手段は、前記ジョブデータを開始から終了まで生成の順に前記印刷手段へ出力する構成であり、
前記先行データに基づき生成された終了前のジョブデータのうち前記印刷手段による印刷処理がまだ行われていない残データが規定値未満になったか否かを判断する判断手段を更に備え、
前記ジョブ生成手段は、前記残データが規定値未満になったと判断された場合、前記判定手段による判定に必要な後続データを待つことなく、前記終了前の前記ジョブデータを終了させることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記判断手段により前記残データが規定値未満になっていないと判断されている場合は、
(A)前記判定手段により前記両印刷設定情報が異なると判定されると、前記ジョブ生成手段は、前記終了前のジョブデータを終了させ、
(B)前記判定手段により前記両印刷設定情報が同じであると判定される度に、前記ジョブ生成手段は、後続データ中の画像データを前記終了前のジョブデータに付加することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷手段は、前記画像データに画像処理を施す画像処理手段を備え、
前記設定手段は、前記印刷設定情報を基に前記画像処理手段が画像処理で使用する画像処理条件を設定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷手段は、印刷媒体に印刷を施す印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを制御する印刷エンジンとを備え、
前記設定手段は、前記印刷設定情報を基に前記印刷エンジンが前記印刷ヘッドの制御で使用する制御処理条件を設定することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷設定情報は、画像データの解像度と、印刷解像度を規定する印刷品質と、印刷媒体の種類とを含むことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
入力したデータに基づき印刷を行う印刷方法であって、
印刷設定情報と画像データとを含むデータを入力する入力ステップと、
前記データに基づき印刷手段が印刷処理を行う印刷ステップと、
前記データに含まれる印刷設定情報を基に前記印刷手段が印刷処理で使用する処理条件を設定する設定ステップと、
前記入力ステップで先に入力した先行データに含まれる印刷設定情報と、当該先行データの次に入力した後続データに含まれる印刷設定情報とを比較し両印刷設定情報が同じであるか否かを判定する判定ステップと、を備え、
(A)前記判定ステップで前記両印刷設定情報が同じであると判定された場合、前記印刷ステップでは、前記設定ステップで先行データの印刷設定情報を基に設定した印刷処理条件に従って前記先行データ及び後続データに基づく印刷処理を行い、
(B)前記判定ステップで前記両印刷設定情報が異なると判定された場合、前記印刷ステップでは、前記設定ステップで先行データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って前記先行データに基づく印刷処理を行うとともに、前記設定ステップで後続データの印刷設定情報を基に設定した処理条件に従って当該後続データに基づく印刷処理を行うことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213963(P2012−213963A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81681(P2011−81681)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】