説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】下層の画像がはみ出ないようにして画質の低下を抑制すること。
【解決手段】光輝性インク及び白色インクの少なくともいずれか一方のインクを媒体に噴射する第1ノズルと、カラーインクを前記媒体に噴射する第2ノズルと、第1画像を前記第1ノズルに形成させ、該第1画像上に第2画像を前記第2ノズルに形成させる制御部であって、前記媒体への画像形成前における前記第1画像のエッジの一部と前記第2画像のエッジの一部とが重なる場合に、前記第2画像において重なるエッジの部分が前記第1画像において重なるエッジの部分の外側に位置するように前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方を変形させる制御部と、を備える印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類のインクを媒体に噴射して印刷を行うインクジェット式プリンターが開発されている。このようなプリンターにおいて、あるインクにより下層の画像を形成してから、この下層の画像の上にカラー画像を形成する印刷が行われることがある。
【0003】
特許文献1には、速乾性のインクの記録に先立って白色インクを記録することが示されている。また、これら両者の一部をずらしてもよいことが示されている。特許文献2には、下地に用いる白色インクを大きく記録することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−246767号公報
【特許文献2】特開2009−56613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属光沢を有するインク(メタリックインク)の上にカラーインクを噴射して有色のメタリック調印刷が行われる場合がある。このような印刷において、メタリックインクによる画像のエッジとカラーインクによる画像のエッジとが一致する部分があるとき、これら両者を確実に一致させるようにインクを噴射して画像を形成しないと下層のメタリック画像がカラー画像からはみ出る。メタリックインクはカラーインクより視覚的にも目立つことから、画像のエッジ箇所においてメタリックインクが部分的に突出すると画質を著しく低下させる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エッジの重複箇所において下層の画像がはみ出ないようにして画質の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、
光輝性インク及び白色インクの少なくともいずれか一方のインクを媒体に噴射する第1ノズルと、
カラーインクを前記媒体に噴射する第2ノズルと、
第1画像を前記第1ノズルに形成させ、該第1画像上に第2画像を前記第2ノズルに形成させる制御部であって、前記媒体への画像形成前における前記第1画像のエッジの一部と前記第2画像のエッジの一部とが重なる場合に、前記第2画像において重なるエッジの部分が前記第1画像において重なるエッジの部分の外側に位置するように前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方を変形させる制御部と、
を備える印刷装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態における印刷システム100のブロック図である。
【図2】第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の斜視図である。
【図3】第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の内部側面図である。
【図4】ヘッド41の構造を説明する断面図である。
【図5】ヘッド41のノズルの説明図である。
【図6】メタリック画像のエッジとカラー画像のエッジとが重なる様子の説明図である。
【図7】画像の拡大処理及び縮小処理の説明図である。
【図8】図8Aは、第1実施形態における画像変形処理を説明する上面図であり、図8Bは、第1実施形態における画像変形処理を説明する横断面図である。
【図9】印刷処理のフローチャートである。
【図10】図10Aは、第2実施形態における画像変形処理を説明する上面図であり、図10Bは、第2実施形態における画像変形処理を説明する横断面図である。
【図11】図11Aは、第3実施形態における画像変形前の画像の横断面図であり、図11Bは、第3実施形態における画像変形後の画像の横断面図である。
【図12】図12Aは、第4実施形態における画像変形前の画像の横断面図であり、図12Bは、第4実施形態における画像変形後の画像の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。すなわち、
光輝性インク及び白色インクの少なくともいずれか一方のインクを媒体に噴射する第1ノズルと、
カラーインクを前記媒体に噴射する第2ノズルと、
第1画像を前記第1ノズルに形成させ、該第1画像上に第2画像を前記第2ノズルに形成させる制御部であって、前記媒体への画像形成前における前記第1画像のエッジの一部と前記第2画像のエッジの一部とが重なる場合に、前記第2画像において重なるエッジの部分が前記第1画像において重なるエッジの部分の外側に位置するように前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方を変形させる制御部と、
を備える印刷装置である。
このようにすることで、下層に形成される第1画像と上層に形成される第2画像においてこれらのエッジの一部が重なり合う場合に、第2画像のエッジが第1画像のエッジよりも外側に位置するように画像が変形されてから画像形成が行われるので、エッジの重複箇所において下層の第1画像がはみ出ないようにして画質の低下を抑制することができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方の変形は、前記第1画像の縮小であることが望ましい。
このようにすることで、第1画像よりも第2画像が大きくなるようにした上で、第1画像上に第2画像を形成し、第1画像が第2画像からはみ出ることがないようにして画質の低下を抑制することができる。
【0011】
また、前記第1画像の縮小は、前記第1画像のエッジを検出し、該エッジを前記第1画像の面積を減少させるように移動することにより行われることが望ましい。
このようにすることで、具体的に第1画像を第2画像よりも小さくすることができる。
【0012】
また、前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方の変形は、前記第2画像の拡大であってもよい。
このようにすることで、第1画像よりも第2画像が大きくなるようにした上で、第1画像上に第2画像を形成し、第1画像のインクが第2画像からはみ出ることがないようにして画質の低下を抑制することができる。
【0013】
また、前記第2画像の拡大は、前記第2画像のエッジを検出し、該エッジを前記第2画像の面積を増加させるように移動することにより行われることが望ましい。
このようにすることで、具体的に第2画像を第1画像よりも大きくすることができる。
【0014】
また、前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方の変形は、前記第2画像のエッジ部分において画像の中心側よりもエッジ側の前記カラーインクの噴射量が減少する変形であることとしてもよい。
このようにすることで、第1画像及び第2画像の少なくともいずれか一方を変形させた場合であっても、エッジ部分のインク量が徐々に減少していくので、その変形を目立たないようにすることができる。
【0015】
また、前記媒体は搬送方向に搬送され、前記第1ノズルと前記第2ノズルは、前記搬送方向と交差する交差方向に移動するヘッドに含まれ、前記第1ノズルは前記第2ノズルよりも前記搬送方向に関して前記ヘッドの上流側に設けられ、前記媒体の前記搬送方向の搬送と前記ヘッドの前記交差方向の移動とが繰り返されて前記第1画像と前記第2画像が形成される場合において、前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方の変形は、前記搬送方向についての変形であることとしてもよい。
ヘッドにおいて、第1ノズルが第2ノズルよりも搬送方向に関して上流側に配置されている印刷装置の場合、第1画像と第2画像は搬送方向と交差する方向よりも搬送方向に関してずれて形成されることが多いと考えられる。よって、上記構成のようにすることで、下層の第1画像と上層の第2画像のずれの生じやすい搬送方向にのみ画像を変形させるので、変形による画像サイズの変化を最小限に抑え、さらにインクの消費量も減らすこともできる。
【0016】
また、本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項も明らかとなる。すなわち、
光輝性インク及び白色インクの少なくともいずれか一方のインクを噴射することにより形成される第1画像と、該第1画像上にカラーインクを噴射することにより形成される第2画像において、前記第1画像のエッジの一部と前記第2画像のエッジの一部とが重なる場合に、前記第2画像において重なるエッジの部分が前記第1画像において重なるエッジの部分の外側に位置するように前記第1画像及び前記第2画像の少なくとも一方を変形させることと、
少なくとも一方が変形された前記第1画像と前記第2画像を形成することであって、前記第1画像の上に前記第2画像を形成することと、
を含む印刷方法である。
このようにすることで、下層に形成される第1画像と上層に形成される第2画像においてこれらのエッジの一部が重なり合う場合に、第2画像のエッジが第1画像のエッジよりも外側に位置するように画像が変形されてから画像形成が行われるので、エッジの重複箇所において下層の第1画像がはみ出ないようにして画質の低下を抑制することができる。
【0017】
===実施形態===
図1は、第1実施形態における印刷システム100のブロック図である。以下、これらを参照しつつ、第1実施形態における印刷システム100の概略構成について説明する。
【0018】
印刷システム100は、印刷装置としてのインクジェットプリンター1(以下、単に「プリンター1」ということがある)とコンピューター110と、表示装置120と、入力装置130とを有している。プリンター1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。コンピューター110は、インターフェース112を介してプリンター1と通信可能に接続されている。そして、プリンター1に画像を印刷させるため、コンピューター110は、その画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。このコンピューター110は、CPU113、メモリ114、インターフェース112、及び、記録再生装置140を備える。そして、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータープログラムがインストールされている。記録再生装置140は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置やCD−ROMドライブ装置である。
【0019】
表示装置120は、例えば液晶モニタである。この表示装置120は、例えば、コンピュータープログラムのユーザーインタフェースを表示するためのものである。入力装置130は、例えば、キーボードやマウスである。
【0020】
インクジェットプリンター1は、用紙搬送ユニット20、記録ユニット40、制御ユニット51、及び、駆動信号生成ユニット52を含む。用紙搬送ユニット20は、ロール紙Rから用紙Sのような媒体を記録ユニット40に供給し、印刷後の用紙Sを排出する。記録ユニット40は、後述するように、ヘッド41を搭載するキャリッジ43を移動させ、ヘッド41からインクを噴射して媒体に画像形成を行う。
【0021】
また、インクジェットプリンター1は、上記各構成機器の動作を統括的に制御する制御ユニット51を備える。制御ユニット51は、演算等を行うCPU51a、プログラム及び演算結果等を記憶するメモリ51b、及び、外部装置と通信を行うインターフェース51cを備える。制御ユニット51は、用紙搬送ユニット20、記録ユニット40、及び、駆動信号生成回路52を制御する。
【0022】
駆動信号生成ユニット52は、記録ユニット40のヘッド41の各ピエゾ素子PZT(後述)に駆動信号COMを供給する。駆動信号生成ユニット52には、制御ユニット51から駆動信号の形状を規定するデジタルデータが送られ、これらデジタルデータに基づいて電圧波形である駆動信号COMを生成する。
【0023】
図2は、第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の斜視図である。図3は、第1実施形態におけるインクジェットプリンター1の内部側面図である。以下の説明では、媒体の搬送方向(排出方向)をX軸方向と、X軸方向と直交する搬送路26の幅方向(図3において紙面垂直方向)をY軸方向と、X軸方向及びY軸方向と直交する鉛直方向をZ軸方向と称して説明する場合がある。
【0024】
図2に示すように、このインクジェットプリンター1は、長手方向が水平に配置された記録ユニット40と、記録ユニット40の端部に装着された筐体90と、記録ユニット40の上側に装着された装填部10と、記録ユニット40および筐体90を下方から支持する脚部70とを備える。
【0025】
記録ユニット40は、搬送路26に沿って搬送されてくる媒体に対してインクを噴射するヘッド41を備える。ヘッド41は、搬送路14の幅方向に移動自在なキャリッジ43に搭載されている。キャリッジ43には、インクを貯留する不図示のインクカートリッジが装着される。ヘッド41は、複数のノズル列を備え、各ノズル列から所定の色(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、メタリック(Me)(または、ホワイト(W)))のインクをそれぞれ噴射可能な構成となっている。ヘッド41は、媒体の記録面に対してインクを噴射することにより所定の画像や文字等の情報を記録する画像形成を実施する。
【0026】
記録ユニット40にて画像形成を施された媒体は、排出ローラー24から排出される。排出ローラー24は、紙種によってニップするローラーを、ギザローラー25aあるいはコロローラー25bに切り替える機構を備える。
【0027】
排出ローラー24の下流側には、排出された媒体を所定サイズにせん断するカッター装置61が設けられている。カッター装置61は、排出された媒体の高さ位置を規制する規制部材62と、媒体の排出方向(X軸方向)と直交する幅方向(Y軸方向)に移動して媒体をせん断するカッターユニット63とを有する。
【0028】
筐体90の上面には、操作パネル80が配置される。操作パネル80は、ユーザが操作する複数のスイッチ82の他、プリンター1の動作状態を示す表示部84も含む。従って、ユーザは、操作パネル80およびカートリッジホルダが配置された側を前面として、この前面側からプリンター1を操作する。
【0029】
図4は、ヘッド41の構造を説明する断面図である。ヘッド41には、流路416が形成され、インクはこの流路416を通じて供給される。ヘッド41のケース411には、接着用基板412が固定されている。この接着用基板412は、矩形状の板であり、さらに一方の表面にピエゾ素子PZTが接着されている。ピエゾ素子PZTの先端にはアイランド部413が接合され、このアイランド部413の周囲には、弾性膜414による弾性領域が形成されている。
【0030】
ピエゾ素子PZTは、対向する電極間に電位差を与えることにより変形する。この例では、素子の長手方向に伸縮する。この伸縮量は、ピエゾ素子PZTの電位に応じて定まる。そして、ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部413は圧力室415側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部周辺の弾性膜414が変形するので、ノズルNzからインクを効率よく噴射させることができる。
【0031】
このような構造とすることで、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号の振幅を調整することにより複数のサイズのインクを噴射することができる。第1実施形態では、小ドット、中ドット、及び、大ドットを形成することができる。
【0032】
図5は、ヘッド41のノズルの説明図である。第1実施形態におけるヘッド41からは、イエローインクY、マゼンタインクM、シアンインクC、ブラックインクK、及び、メタリックインクMeの5種類のインクが噴射可能である。なお、メタリックインクMeを噴射するノズルをホワイトインクWを噴射するノズルとしてもよい。
【0033】
メタリックインクMeは、金属顔料(メタリック顔料)と有機溶剤を含有する。メタリック顔料は、金属光沢等の機能を有するものであれば特に限定されないが、アルミニウム又はアルミニウム合金、あるいは、銀又は銀合金であることが望ましい。これらの中でも、コストの観点及び高い金属光沢を確保する観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが望ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウムに添加される別の金属元素又は非金属元素としては、金属光沢を有する等の機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等を挙げることができ、これらの単体又はこれらの合金及びこれらの混合物の少なくとも一種が好適に用いられる。第1実施形態では、金属顔料として銀が用いられる。なお、メタリックインクは光輝性インクに含まれる。光輝性インクは、含有される顔料が上記のような金属顔料には限られず、金属光沢を発揮するインクであればよい。
【0034】
また、ホワイトインクWは白色のインクである。第1実施形態では、ホワイトインクWはカラーインクCo(YMCK)とは他の種類のインクとして区別している。
【0035】
図には、4つのノズル列が示されている。これらノズルのうち、下流側のノズルはカラーインクを噴射する。上流側のノズルはメタリックインクMeを噴射する。
【0036】
具体的には、Aノズル列NAのノズル#1〜#90はブラックインクKを噴射する。Aノズル列NAのノズル#91〜#180はメタリックインクMeを噴射する。同様に、Bノズル列NBのノズル#1〜#90はシアンインクCを噴射する。Bノズル列NBのノズル#91〜#180はメタリックインクMeを噴射する。
【0037】
同様に、Cノズル列NCのノズル#1〜#90はマゼンタインクMを噴射する。Cノズル列NCのノズル#91〜#180はメタリックインクMeを噴射する。同様に、Dノズル列NDのノズル#1〜#90はイエローインクYを噴射する。Dノズル列NDのノズル#91〜#180はメタリックインクMeを噴射する。
【0038】
このような構成とすることで、少なくともメタリックインクMeを媒体に噴射し、さらにその上にカラーインクを噴射することができる。また、前述の通り、各ノズル列のノズル#91〜#180からはホワイトインクWを噴射することとしてもよく、この場合、少なくともホワイトインクWを媒体に噴射し、さらにその上にカラーインクを噴射することができる。
【0039】
なお、このように同一ヘッドのノズル列を分割する方法ではなく、複数の異なるヘッドを配列することでメタリックインクMeとカラーインクを噴射する方法を採用することとしてもよい。
【0040】
図6は、メタリック画像のエッジとカラー画像のエッジとが重なる様子の説明図である。図には、カラーインクCoによる画像(以下、カラー画像)とメタリックインクMeによる画像(以下、メタリック画像)が示されている。ここでは、説明を容易にするためにカラー画像とメタリック画像の形状を同一にしてある。そして、メタリック画像とカラー画像とは、それぞれのエッジが一致するように重なる。このような印刷を行うことにより、カラーのメタリック調印刷を行うことができる。
【0041】
このような画像を印刷する際、搬送時の搬送誤差、及び、インク噴射方向の誤差が生じなければ、カラー画像とメタリック画像は確実に重なり合い、メタリック画像の一部がカラー画像からはみ出ることはない。
【0042】
しかしながら、搬送時において搬送を担うローラーの偏心が存在する場合、搬送方向について搬送誤差が生ずる。第1実施形態におけるヘッドでは、ヘッドの上流側のノズルがメタリックインクを噴射し、下流側のノズルがカラーインクを噴射するため、偏心による搬送誤差を生ずると、メタリックインクの着弾位置とカラーインクの着弾位置との間に相対的な誤差を生ずることになる。
【0043】
特に、1回目の搬送によって媒体を搬送しつつメタリック画像を印刷し、その後、媒体を搬送方向と逆方向に逆搬送し、2回目の搬送によって媒体を搬送しつつカラー画像を印刷する場合には、搬送動作が多いため搬送誤差も大きくなると考えられる。
【0044】
また、搬送を担うローラーが完全な円柱形ではないとき、搬送中に媒体は搬送方向と交差する方向にも若干ながら変位を生じ、所謂蛇行現象が発生する。このように蛇行が生じた場合にも、メタリックインクの着弾位置とカラーインクの着弾位置との間に相対的な誤差を生ずることになる。
【0045】
上記のようなメタリックインクの着弾位置とカラーインクの着弾位置との間に相対的な誤差を生ずることとなると、メタリックインクによる下層の画像とカラーインクによる上層の画像との間にずれを生ずる。
【0046】
このとき、図6に示すようにメタリック画像とカラー画像とが同一形状であって、両者のエッジが確実に重なり合うことが前提の場合、下層の画像が上層の画像に対してはみ出ることになる。さらに、下層の画像がメタリックインクによりなされる場合、上層のカラー画像からはみ出ると視覚的に目立ち、画質を低下させる。
以下に示す実施形態では、このような画質の低下を抑制する手法を提供する。
【0047】
図7は、画像の拡大処理及び縮小処理の説明図である。第1実施形態では、前述のように媒体の上にメタリックインクMeによるメタリック画像が形成され、メタリック画像の上にカラーインクCoによるカラー画像が形成される。なお、下層にメタリックインクMeによるメタリック画像ではなく、ホワイトインクWによるホワイト画像が形成されてもよい。
【0048】
搬送誤差などの影響により下層のメタリック画像と上層のカラー画像との間にずれを生じた場合であっても、カラー画像に重なるメタリック画像がはみ出ないようにするためには、下層のメタリック画像のエッジをカラー画像の内側に縮小するか、上層のカラー画像のエッジをメタリック画像のエッジの外側に拡大するか、又は、その両方を実行するかのいずれかになる。
【0049】
上層のカラー画像のエッジをメタリック画像のエッジの外側に拡大する場合には、カラー画像のエッジを検出し、このエッジの部分をカラー画像の面積を増加させる方向に移動させる(図7の上図)。
【0050】
一方、下層のメタリック画像のエッジをカラー画像のエッジの内側に縮小する場合には、メタリック画像のエッジを検出し、このエッジの部分をメタリック画像の面積を減少させる方向に移動させる(図7の下図)。
【0051】
図8Aは、第1実施形態における画像変形処理を説明する上面図であり、図8Bは、第1実施形態における画像変形処理を説明する横断面図である。図8Aには、上述のようにしてメタリック画像又はカラー画像を変形させた場合における両画像の重なり具合が上面図として示されている。また、図8Bには、両画像の重なり具合が横断面図として示されている。これらの両画像は、もともと図6に示されるように互いに同形状であり、それぞれのエッジも一致する画像であった。これらの画像が、図7のような処理により図8A及び図8Bに示されるように変形された。そして、カラー画像のインクが媒体S上においてメタリック画像を完全に覆うように、カラー画像又はメタリック画像が変形された。
【0052】
図9は、印刷処理のフローチャートである。以下、本フローチャートを参照しつつ第1実施形態における印刷処理を説明する。
【0053】
まず、画像データが入力(S102)される。画像データの入力は、コンピューター110上において画像ソフトを介して画像が作成されることにより行われる。この画像ソフトは、メタリック画像を扱うメタリックレイヤーとカラー画像を扱うカラーレイヤーを扱うことができることが望ましい。
【0054】
次に、メタリック画像とカラー画像の両者が重なり合い、かつ、これら両者のエッジが重なり合う部分が特定される(S104)。そして、特定された重なり合うエッジ部分について、拡大縮小処理(S106)が行われる。拡大縮小処理は、前述(図7)に示されるような方法で行うことができる。また、拡大処理と縮小処理は何れか一方を行うこととしてもよいし、両方行うこととしてもよい。なお、拡大処理を行う際、カラー画像のエッジのインク量がエッジに向かうにしたがって減少するような画像としてもよい。
【0055】
次に、拡大縮小処理された画像データの変換処理(S108)が行われる。画像データの変換処理では、解像度変換処理と色変換処理が行われる。解像度変換処理は、各レイヤーの画像について印刷する際の解像度に変換する処理である。色変換処理は、カラー画像のRGBの各レイヤーの各画素データをCMYK色空間の画像データに変換する処理である。これらの処理は既存の手法により行うことができる。
【0056】
次に、変換処理後のカラー画像及びメタリック画像についてハーフトーン処理(S110)が行われる。ハーフトーン処理は、CMYK画素データ及びメタリックMe画素データから、プリンター1で表現可能な少段階の階調データに変換する処理である。このハーフトーン処理により、例えば256階調を示すCMYK画素データ及びメタリックMe画素データから、4段階(大ドット、中ドット、小ドット、ドット無し)の階調値を示すデータに変換される。これにより、インク色毎に4段階の階調値を示すデータに変換されることになる。
【0057】
以上の処理により、シアンインクC、マゼンタインクM、イエローインクY、ブラックインクK、及び、メタリックインクMeのそれぞれについて、どの画素にどのサイズのドットを形成するかが決定されることになる。
【0058】
次にラスタライズ処理(S112)が行われる。ラスタライズ処理は、ハーフトーン処理で得られたドットデータを、インクを噴射すべきデータ順に変更する処理である。そして、ラスタライズ処理後のデータに基づいてプリンター1は印刷を実行する(S114)。
【0059】
ステップS104以降の処理は、コンピューター110にインストールされたプリンタドライバにおいて行われることとすることができる。このようにプリンタドライバにより画像変形がされる場合、制御ユニット51とプリンタドライバを実行するコンピューター110が制御部に相当し、制御ユニット51のみにより行われる場合には、制御ユニット51が制御部に相当することになる。
【0060】
このようにして、下層に形成されるメタリック画像のエッジと上層に形成されるカラー画像のエッジとが重なり合う状況下において、搬送誤差等によりエッジの位置がずれてしまう場合であっても、上層に形成される画像が下層に形成される画像よりも大きくなるようにエッジの部分が変形されるので、下層の画像がはみ出ることがない。そして、形成される画像の画質の低下を抑制することができる。
【0061】
図10Aは、第2実施形態における画像変形処理を説明する上面図であり、図10Bは、第2実施形態における画像変形処理を説明する横断面図である。上述の第1実施形態では、仮にヘッド41の移動方向に噴射誤差が生じ、移動方向についてメタリックインクとカラーインクの着弾位置にずれが生じた場合でも対応できるべく、搬送方向のみならずヘッドの移動方向についても画像を変形させる形態を説明した。
【0062】
しかしながら、ヘッド41の移動方向に噴射誤差が生じない場合(異なるカラーインク(例えば、シアンとマゼンタ)同士は同一パスにおいて噴射されるのでカラーインク同士のヘッド移動方向の着弾誤差が生じにくい)であって、さらに、媒体の搬送においてヘッドの移動方向への変位が極めて小さい場合が生じうる。これは、媒体の搬送誤差の大部分が媒体の搬送を担うローラーの偏心によるものだからである。このような場合には、メタリック画像とカラー画像との間で搬送方向にのみ画像を変形することとしてもよい。図10Aは、カラー画像を媒体の搬送方向に関してのみ変形させたときの図である。そして、図10Bは、このように変形させた画像データに基づいて印刷を行ったときの印刷物の断面図である。
【0063】
第2実施形態では、図10A及び図10Bに示すように、ヘッド41の移動方向に関しては、カラー画像の拡大又はメタリック画像の縮小を行わず、媒体の搬送方向に関してのみカラー画像の拡大又はメタリック画像の縮小を行っている。
【0064】
このようにすることで、媒体の搬送方向についてのみインクの着弾誤差が生ずるおそれがある環境下において、画像変形により元画像に与える影響を最小限にしつつ、カラー画像を拡大したときのカラーインクの消費量を可能な限り削減して、メタリック画像がはみ出ることによる画質の低下を抑制することができる。
【0065】
図11Aは、第3実施形態における画像変形前の画像の横断面図であり、図11Bは、第3実施形態における画像変形後の画像の横断面図である。前述の第1実施形態及び第2実施形態におけるカラー画像は、1色のカラーインク又は複数色のインクの合成色によるものであった。第3実施形態では、複数色のインクを用いながらも合成色によるものではないカラー画像をメタリック画像上に形成する場合の特殊なケースついて説明する。
【0066】
図11Aには、第1のカラーインクCo1(例えば、シアンインクC)による画像と第2のカラーインクCo2(例えば、マゼンタインクM)による画像がメタリック画像上に形成されている様子が示されている。第1のカラーインクCo1による画像と第2のカラーインクCo2による画像はそれぞれ重なり合うことはなく、第1のカラーインクCo1と第2のカラーインクCo2はそれぞれメタリック画像の異なる領域に着弾している。
【0067】
また、第1のカラーインクCo1による画像のエッジの少なくとも一部と、メタリック画像のエッジの少なくとも一部とが重なり合う様子が示されている。また、第2のカラーインクCo2による画像のエッジの少なくとも一部と、メタリック画像のエッジの少なくとも一部とが重なり合う様子が示されている。第3実施形態において特殊であるのは、第2のカラーインクCo2による画像はメタリック画像のエッジ部分のみに重なり合っていることである。
【0068】
このような状況下でも、搬送誤差等により下層の画像と上層の画像とのエッジの位置がずれてしまう場合が起こりうる。よって、この場合でも図11Bに示すようにカラー画像を拡大するか、又は、メタリック画像を縮小する。このとき、第2のカラーインクCo2はメタリック画像の上に着弾しないことも考えられるが、メタリック画像がカラー画像からはみ出ることによる画質の低下のほうが顕著であるので、図11Bに示すように第2のカラーインクCo2がメタリック画像の上に形成されないような画像に変形されることができる。
【0069】
図12Aは、第4実施形態における画像変形前の画像の横断面図であり、図12Bは、第4実施形態における画像変形後の画像の横断面図である。図12Aに示すように、エッジの一部同士は重なり合うものの、メタリック画像の一部にのみカラー画像が形成される場合も起こりうる。このような場合も、搬送誤差等により下層の画像と上層の画像とのエッジの位置がずれてしまうことが生じうる。よって、この場合でも図12Bに示すようにカラー画像を拡大するか、又はメタリック画像を縮小する。このようにすることで、メタリック画像とカラー画像とが重なり合うエッジ部分については、メタリック画像のエッジ部分がカラー画像からはみ出ることのないようにして、画質の低下を抑制することができる。
【0070】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、印刷装置としてプリンター1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0071】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0072】
<ヘッドについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェットプリンター、
10 装填部、
24 排出ローラー、25a ギザローラー、25b コロローラー、26 搬送路、
40 記録ユニット、41 ヘッド、42 トップカバー、
43 キャリッジ、44 フロントカバー、
61 カッター装置、62 規制部材、63 カッターユニット、
70 脚部、
80 操作パネル、82 スイッチ、84 表示部、
90 筐体、
R ロール、
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性インク及び白色インクの少なくともいずれか一方のインクを媒体に噴射する第1ノズルと、
カラーインクを前記媒体に噴射する第2ノズルと、
第1画像を前記第1ノズルに形成させ、該第1画像上に第2画像を前記第2ノズルに形成させる制御部であって、前記媒体への画像形成前における前記第1画像のエッジの一部と前記第2画像のエッジの一部とが重なる場合に、前記第2画像において重なるエッジの部分が前記第1画像において重なるエッジの部分の外側に位置するように前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方を変形させる制御部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方の変形は、前記第1画像の縮小である、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1画像の縮小は、前記第1画像のエッジを検出し、該エッジを前記第1画像の面積を減少させるように移動することにより行われる、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方の変形は、前記第2画像の拡大である、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第2画像の拡大は、前記第2画像のエッジを検出し、該エッジを前記第2画像の面積を増加させるように移動することにより行われる、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方の変形は、前記第2画像のエッジ部分において画像の中心側よりもエッジ側の前記カラーインクの噴射量が減少する変形である、請求項1〜5のいずれかいに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記媒体は搬送方向に搬送され、
前記第1ノズルと前記第2ノズルは、前記搬送方向と交差する交差方向に移動するヘッドに含まれ、前記第1ノズルは前記第2ノズルよりも前記搬送方向に関して前記ヘッドの上流側に設けられ、
前記媒体の前記搬送方向の搬送と前記ヘッドの前記交差方向の移動とが繰り返されて前記第1画像と前記第2画像が形成される場合において、
前記第1画像及び前記第2画像の少なくともいずれか一方の変形は、前記搬送方向についての変形である、請求項1〜6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
光輝性インク及び白色インクの少なくともいずれか一方のインクを噴射することにより形成される第1画像と、該第1画像上にカラーインクを噴射することにより形成される第2画像において、前記第1画像のエッジの一部と前記第2画像のエッジの一部とが重なる場合に、前記第2画像において重なるエッジの部分が前記第1画像において重なるエッジの部分の外側に位置するように前記第1画像及び前記第2画像の少なくとも一方を変形させることと、
少なくとも一方が変形された前記第1画像と前記第2画像を形成することであって、前記第1画像の上に前記第2画像を形成することと、
を含む印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−91225(P2013−91225A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234236(P2011−234236)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】