説明

印刷装置及び印刷装置の異常検出方法

【課題】印刷装置の電解コンデンサの異常を速やかに検出する。
【解決手段】本発明の印刷装置は、回路基板と、前記回路基板上に設置された電解コンデンサと、前記回路基板上に設置され、温度を検出するための温度検出素子と、前記回路基板上に設置され、ヘッドの駆動に用いられるトランジスタとを有する印刷装置であって、前記温度検出素子は、前記トランジスタよりも前記電解コンデンサの近くに配置され、前記温度検出素子の出力値に基づき、前記電解コンデンサの異常を検出して、前記トランジスタを用いた前記ヘッドの駆動を停止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷装置の異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の平滑回路等に用いられる電解コンデンサは、電子回路に用いられる素子の中で寿命の短い素子の一つである。電解コンデンサは、時間と共に特性が劣化により徐々に変化(経年劣化)するため、回路設計時には、電解コンデンサの特性の変化を考慮して、余裕のある設計を行うことが望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“テクニカルノート アルミ電解コンデンサの上手な使い方”、[online]、2010年12月28日(電子ファイルのプロパティに記載された更新日)、日本ケミコン株式会社、インターネット<URL: http://www.chemi-con.co.jp/catalog/pdf/al-j/al-sepa-j/001-guide/al-technote-j-110201.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解コンデンサでは、電解液が漏れ出すことがある(いわゆる「液漏れ」)。たとえ設計者が電解コンデンサの寿命を考慮して、装置の寿命に合った電解コンデンサを選定しても、電解コンデンサの製造のばらつきや不良品によって、装置の使用期間中に液漏れが生じることがある。
【0005】
電解コンデンサが液漏れを起こすと、回路の誤動作の原因になる。このため、回路の誤動作等の症状があってから、電解コンデンサの液漏れに気づくことがある。
【0006】
但し、電解コンデンサが液漏れしていても、誤動作等の症状が直ちに表面化しないことが多い。余裕のある回路設計が行われていれば、電解コンデンサが液漏れしても直ちに回路が致命的な故障にならないように設計されているためである。このため、液漏れによる誤動作が生じたときには、液漏れの発生から時間が経っており、電解液によって周囲の回路の腐食が進んでいる場合がある。このような場合、その後に電解液を清拭し、電解コンデンサを交換しても、電子回路を回復させることが困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、印刷装置の電解コンデンサの異常を速やかに検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための主たる発明は、回路基板と、前記回路基板上に設置された電解コンデンサと、前記回路基板上に設置され、温度を検出するための温度検出素子と、前記回路基板上に設置され、ヘッドの駆動に用いられるトランジスタとを有する印刷装置であって、前記温度検出素子は、前記トランジスタよりも前記電解コンデンサの近くに配置され、前記温度検出素子の出力値に基づき、前記電解コンデンサの異常を検出して、前記トランジスタを用いた前記ヘッドの駆動を停止することを特徴とする印刷装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、印刷装置100の構成のブロック図である。
【図2】図2は、印刷装置100の斜視図である。
【図3】図3は、ヘッド制御部HCにおける各種信号の説明図である。
【図4】図4Aは、駆動信号COMを生成する駆動信号生成回路12Bのブロック図である。図4Bは、電流増幅回路を構成するトランジスタの説明図である。
【図5】図5は、電解コンデンサの異常検出方法の概要説明図である。
【図6】図6は、異常検出装置の概略図である。
【図7】図7A及び図7Bは、第1実施形態の説明図である。図7Aは、回路基板1上の電解コンデンサ2とサーミスタ3の斜視図である。図7Bは、電解コンデンサ2とサーミスタ3を横から見た図である。
【図8】図8A及び図8Bは、第1実施形態の第1変形例の説明図である。
【図9】図9A及び図9Bは、第1実施形態の第2変形例の説明図である。
【図10】図10A及び図10Bは、第1実施形態の第3変形例の説明図である。
【図11】図11A及び図11Bは、第2実施形態の説明図である。図11Aは、回路基板1上の電解コンデンサ2とサーミスタ3の斜視図である。図11Bは、電解コンデンサ2とサーミスタ3を横から見た図である。
【図12】図12A及び図12Bは、第2実施形態の第1変形例の説明図である。
【図13】図13A及び図13Bは、第2実施形態の第2変形例の説明図である。
【図14】図14A及び図14Bは、第2実施形態の第3変形例の説明図である。
【図15】図15A及び図15Bは、第3実施形態の説明図である。図15Aは、回路基板1上の電解コンデンサ2とサーミスタ3の斜視図である。図15Bは、電解コンデンサ2とサーミスタ3を横から見た図である。
【図16】図16A及び図16Bは、第3実施形態の第1変形例の説明図である。
【図17】図17A及び図17Bは、第3実施形態の第2変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0012】
回路基板と、前記回路基板上に設置された電解コンデンサと、前記回路基板上に設置され、温度を検出するための温度検出素子と、前記回路基板上に設置され、ヘッドの駆動に用いられるトランジスタとを有する印刷装置であって、前記温度検出素子は、前記トランジスタよりも前記電解コンデンサの近くに配置され、前記温度検出素子の出力値に基づき、前記電解コンデンサの異常を検出して、前記トランジスタを用いた前記ヘッドの駆動を停止することを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、電解コンデンサから液漏れした電解液がトランジスタに達する前に、電解コンデンサの異常を速やかに検出できる。
【0013】
前記電解コンデンサと前記回路基板との間に、前記温度検出素子が設けられていることが望ましい。これにより、液漏れ時にサーミスタがショートしやすくなり、電解コンデンサの異常を速やかに検出できる。
【0014】
前記温度検出素子の端子は、前記電解コンデンサの一対のリード線の間に位置していることが望ましい。これにより、液漏れ時にサーミスタがショートしやすくなり、電解コンデンサの異常を速やかに検出できる。
【0015】
前記温度検出素子の端子は、前記電解コンデンサの頂部よりも底部の側に寄った位置にあることが望ましい。これにより、液漏れ時にサーミスタがショートしやすくなり、電解コンデンサの異常を速やかに検出できる。
【0016】
前記温度検出素子の検出した温度に基づいて、前記電解コンデンサの寿命を検出することが望ましい。これにより、電解コンデンサの温度検出と異常検出の両方の目的に同じ温度検出素子を用いることができる。なお、電解コンデンサの寿命は温度に依存するため、温度検出素子を用いて電解コンデンサの寿命を検出できる。
【0017】
===印刷装置===
<基本構成>
図1は、印刷装置100の構成のブロック図である。図2は、印刷装置100の斜視図である。なお、印刷装置100は、ヘッドを往復移動させて印刷を行うシリアル方式のインクジェットプリンターである。
【0018】
印刷装置100は、コントローラー10と、搬送ユニット20と、キャリッジユニット30と、ヘッドユニット40と、センサー群50とを有する。印刷制御装置であるコンピューター110から印刷データを受信した印刷装置100は、コントローラー10によって各ユニットを制御する。
【0019】
コントローラー10は、印刷装置100の制御を行うための制御装置である。コントローラー10は、各種の演算を行うための演算部5と、メモリー11とを備えている。コントローラー10は、メモリー11に格納されているプログラムに従って、各ユニットを制御する。また、コントローラー10は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体Sに画像を印刷する。コントローラー10には、センサー群50が検出した各種の検出信号が入力している。温度を検出するための素子であるサーミスタ3(後述)もセンサー群50に含まれている。
【0020】
コントローラー10は、ヘッド駆動回路12を備えている。ヘッド駆動回路12は、ヘッドユニット40のヘッド41を駆動するための回路である。ヘッド駆動回路12は、タイミング信号生成回路12Aや駆動信号生成回路12Bを有している。ヘッド駆動回路12のタイミング信号生成回路12Aや駆動信号生成回路12Bについては、後述する。
なお、図示していないが、コントローラー10は、搬送ユニットやキャリッジユニットのモーターを駆動するための駆動回路なども備えている。
【0021】
搬送ユニット20は、媒体S(例えば、紙、フィルムなど)を搬送方向に搬送させるための機構である。搬送方向は、キャリッジ31の移動方向と交差する方向である。
【0022】
キャリッジユニット30は、キャリッジ31を移動方向に移動させるための機構である。キャリッジは、移動方向に沿って往復移動可能である。キャリッジ31には、ヘッドユニット40のヘッド41が設けられている。
【0023】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、ヘッド41と、ヘッド31を制御するためのヘッド制御部HCとを備えている。ヘッドユニット40には、コントローラー10からケーブルCBLを介して、ヘッド41を制御するために必要な各種信号が送られている。ヘッドの各ノズルにはピエゾ素子が設けられており、各ピエゾ素子を駆動することによって、各ノズルからインクが吐出される。
【0024】
図3は、ヘッド制御部HCにおける各種信号の説明図である。
駆動信号COMは、繰返し周期T毎に繰り返し生成される。この繰返し周期Tは、キャリッジ31が1画素分の距離を移動するのに要する期間である。このように、キャリッジ31が所定距離移動する毎に、同じ波形の駆動信号COMが駆動信号生成回路12Bから繰り返し生成される。各繰返し周期Tは、5つの区間T1〜T5に分けることができる。第1区間T1には駆動パルスPS1が含まれ、第2区間T2には駆動パルスPS2が含まれ、第3区間T3には駆動パルスPS3が含まれ、第4区間T4には駆動パルスPS4が含まれ、第5区間T5には駆動パルスPS5が含まれるように、駆動信号COMが生成される。なお、駆動パルスPS1〜PS5の波形は、ピエゾ素子に行わせる動作に基づいて定められている。
【0025】
ラッチ信号LATは、繰返し周期Tを規定する信号である。ラッチ信号LATのパルス信号は、キャリッジ31が所定距離移動する毎に出力される。チェンジ信号CHは、繰返し周期Tを5つの区間T1〜T5に区分けするための信号である。ラッチ信号LATやチェンジ信号CHなどのタイミング信号は、ヘッド駆動回路12のタイミング信号生成回路12Aから出力される。
【0026】
なお、ピエゾ素子に印加する印加信号は、各ピエゾ素子に対応する画素データの内容に応じて、波形が異なることになる。画素データは、各画素に形成すべきドットサイズを示すデータであり、ここでは2ビットデータである。画素データが[00]の場合、駆動信号COMの駆動パルスPS1がピエゾ素子に印加され、インクが吐出されない程度の圧力変動がチャンバー内のインクに生じて、インクメニスカス(ノズル部分で露出しているインクの自由表面)が微振動する。画素データが[01]の場合、駆動信号COMの駆動パルスPS3がピエゾ素子に印加され、小インク滴がノズルから吐出され、媒体Sに小ドットが形成される。画素データが[10]の場合、駆動信号COMの駆動パルスPS2がピエゾ素子に印加され、中インク滴がノズルから吐出され、媒体Sに中ドットが形成される。画素データが[11]の場合、駆動信号COMの駆動パルスPS2、PS4及びPS5がピエゾ素子に印加され、大インク滴が吐出され、媒体Sに大ドットが形成される。
【0027】
<駆動信号生成回路12B>
図4Aは、駆動信号COMを生成する駆動信号生成回路12Bのブロック図である。駆動信号生成回路12Bは、D/A変換器と、電圧増幅回路と、電流増幅回路とを備えている。10ビットのDAC値の入力があると、D/A変換器がDAC値に応じたアナログ信号を出力し、そのアナログ信号に応じた出力電圧を電圧増幅回路が電流増幅回路に出力する。
【0028】
図4Bは、電流増幅回路を構成するトランジスタの説明図である。多数のピエゾ素子が支障なく動作できるように、十分な電流を供給するための回路である。電圧増幅回路からの出力電圧が上昇状態にあると、トランジスタQ1がオン状態となる。これに伴い、駆動信号COMの電圧も上昇する。一方、電圧増幅回路からの出力電圧が降下状態にあると、トランジスタQ2がオン状態となる。これに伴い、駆動信号COMの電圧も降下する。なお、電圧増幅回路からの出力電圧が一定である場合、NPN型のトランジスタQ1もPNP型のトランジスタQ2もオフ状態となる。その結果、駆動信号COMは一定電圧となる。このようにして、駆動信号COMが駆動信号生成回路から出力される。
【0029】
<本実施形態の概要>
次に、図5を用いて、電解コンデンサの異常検出方法の概要を説明する。
【0030】
印刷装置100の回路基板1上に、電解コンデンサ2と、サーミスタ3と、トランジスタQ1及びQ2が設けられている。電解コンデンサ2は、印刷装置1の電源回路の平滑回路を構成する素子の一つである。但し、電解コンデンサ2は、電源回路に用いられるものに限らず、他の回路に用いられるものでも良い。サーミスタ3は、温度を検出するための素子(温度検出素子)である。但し、温度検出素子は、サーミスタ3に限らず、他の素子(例えば温度により電流特性が変化するダイオード等)でも良い。トランジスタQ1及びQ2は、駆動信号生成回路12Aの電流増幅回路を構成する素子であり、ヘッドの駆動に用いられる素子である。
【0031】
図に示すように、サーミスタ3は、トランジスタQ1及びQ2よりも、電解コンデンサ2の近くに設置されている。なお、ヘッド駆動回路12を構成する他の素子(トランジスタQ1及びQ2以外の不図示の素子)に対しても、サーミスタ3は電解コンデンサ2の近くに設置されている。例えば、ヘッド駆動回路12のタイミング信号生成回路12Aを構成する素子に対しても、サーミスタ3は電解コンデンサ2の近くに設置されている。
つまり、サーミスタ3は、回路基板上のどの素子よりも電解コンデンサ2の近くに設置されている。言い換えると、電解コンデンサ2から最も近い素子は、サーミスタ3である。
【0032】
このように電解コンデンサ2とサーミスタ3が近接して設置されているため、電解コンデンサ2が液漏れすると、電解液でサーミスタ3がショートする。(少なくとも、回路基板1上の他の素子に電解液が達する前に、サーミスタ3がショートする。)本件では、サーミスタ3のショートを検出することによって、電解コンデンサ2の液漏れを検出している。
【0033】
通常であれば、液漏れが生じたときに回路パターンのショートを回避するために、電解コンデンサ2に近接して配線することは避けるべきはずである。特に、電解コンデンサ2の下に配線することは避けるべきはずである。これに対し、本件では、電解コンデンサ2が液漏れしたときにサーミスタ3がショートし易いように、通常であれば避けるべき位置に、サーミスタ3が配置される。
【0034】
以下、本実施形態を詳しく説明する。
【0035】
===第1実施形態===
<基本構成>
図6は、異常検出装置の概略図である。異常検出装置は、電解コンデンサ2と、サーミスタ3と、サーミスタ3のショートを検出することによって電解コンデンサ2の異常を検出するための検出部として機能する演算部5とを少なくとも備えている。
【0036】
電解コンデンサ2は、例えば電源装置の平滑回路等に用いられている。但し、電解コンデンサ2は、他の用途で用いられていても良い。
【0037】
電解コンデンサ2は、陽極箔及び陰極箔を電解紙を介して巻回したものに電解液を含浸させた素子本体(不図示)と、陽極箔及び陰極箔のそれぞれから引き出されたリード線2Aと、圧力弁が設けられたケースと、リード線2Aを外部に引き出しつつ素子本体をケース内に封止する封口部(封口ゴム、リード線付ラバーベーク板、リード線付モールド樹脂板など、不図示)とを備えている。電解コンデンサ2の構成は周知であるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
以下の説明では、電解コンデンサ2の封口部の側(リード線2Aの側)を「底部」と呼び、電解コンデンサ2の圧力弁の側を「頂部」と呼ぶことがある。
【0039】
電解コンデンサ2は、寿命が温度に依存しており、使用温度が高くなるほど、寿命が短くなることが知られている。このため、電解コンデンサ2の使用温度を検出し、検出された温度に基づいて寿命を算出することが行われている。
【0040】
サーミスタ3は、温度変化に応じて抵抗が変化する素子である。サーミスタ3は、電解コンデンサ3の温度検出に用いられる。ここでは、リードタイプのサーミスタ3が用いられており、素子部分から一対のリード線3A(端子)が延び出ている。但し、サーミスタ3は、リードタイプに限られず、チップタイプでも良い。つまり、サーミスタ3の端子は、リード線のようなものに限られない。
【0041】
温度検出回路4は、サーミスタ3の抵抗値を検出し、抵抗値に基づき温度を検出する回路である。温度検出回路4は、検出した温度を演算部5に出力する。
【0042】
なお、温度検出回路4は、サーミスタ3がショートしたときにも、抵抗値に応じた温度(異常温度)を出力する(そして、演算部5は、温度検出回路4から異常温度の入力があったときに、サーミスタ3がショートしていることを検出する。)。
【0043】
演算部5は、寿命検出部5Aの機能を果たすマイクロコンピューターで構成されている。寿命検出部5Aは、温度検出回路4で検出した温度と、タイマー(不図示)で計測した使用時間とに基づいて、電解コンデンサ2の寿命を演算する。必要に応じて、寿命検出部5は、残りの寿命時間を表示部6に表示する。
【0044】
更に、演算部5は、液漏れ検出部5Bとしても機能する。液漏れ検出部5Bは、温度検出回路4からの異常温度の入力の有無を検出し、異常温度の入力があったときに、サーミスタ3のショートを検出する。そして、液漏れ検出部5Bは、サーミスタ3のショートを検出したときには、電解コンデンサ2に異常(液漏れ)が生じた旨の警告を表示部6に表示するとともに、回路基板1などへの通電を遮断する。これにより、印刷装置100の動作が停止する。このとき、当然、印刷装置100のコントローラー10のヘッド駆動回路12などの動作も停止し、トランジスタQ1及びQ2を用いたヘッドの駆動も停止することになる。
【0045】
上記の形態では、温度検出回路4は、単にサーミスタ3の抵抗値に応じた温度を出力するだけであり、サーミスタ3のショートは、温度検出回路4からの異常温度の入力に基づき演算部5によって検出されている。但し、これに限られるものではない。例えば、温度検出回路4が、サーミスタ3の温度だけでなく、ショートを検出しても良い。この場合、温度検出回路4が、電解コンデンサ2の異常を検出するための検出部として機能する。なお、この場合、温度検出回路4は、サーミスタ3のショートを検出したときに液漏れ警告信号を出力するのが望ましい。
【0046】
<電解コンデンサ2とサーミスタ3の位置関係>
次に、電解コンデンサ2が液漏れしたときにサーミスタ3がショートし易くなるような、電解コンデンサ2とサーミスタ3の位置関係について説明する。
【0047】
図7A及び図7Bは、第1実施形態の説明図である。図7Aは、回路基板1上の電解コンデンサ2とサーミスタ3の斜視図である。図7Bは、電解コンデンサ2とサーミスタ3を横から見た図である。
【0048】
第1実施形態では、回路基板1は、水平に置かれている。このため、基板表面の法線方向は、鉛直方向である。
【0049】
回路基板1上には、電解コンデンサ2が設けられている。電解コンデンサ2の底部は、回路基板1の表面から1mm〜数mm程度だけ離れている。
【0050】
第1実施形態では、電解コンデンサ2の素子本体は、鉛直方向に沿っている。つまり、電解コンデンサ2の底部は、頂部に対して下側に位置している。
【0051】
サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2に取り付けられている。ここでは、サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2の頂部に取り付けられている。これにより、サーミスタ3は、電解コンデンサ2の頂部の温度を検出することになる。
【0052】
サーミスタ3のリード線3Aは、電解コンデンサ2の下にて回路基板1に結線されている。更に、サーミスタ3の一対のリード線3Aは、電解コンデンサ2の一対のリード線2Aの間で結線されていることが望ましい。
【0053】
電解コンデンサ2が液漏れするとき、主に電解コンデンサ2の底部の封口部から電解液が漏れ出ることが想定される。このため、電解コンデンサが液漏れすると、電解液は、電解コンデンサ2の封口部の下側に溜まりやすい。したがって、サーミスタ3のリード線3Aを電解コンデンサ2の下に配置することによって、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くなる。
【0054】
更に、電解コンデンサ2が液漏れするとき、電解コンデンサ2の底部のリード線2Aを伝って電解液が漏れ出ることが想定される。このため、電解コンデンサが液漏れすると、電解液は、リード線2Aの周囲に溜まりやすい。したがって、サーミスタ3の一対のリード線3Aを電解コンデンサ2の一対のリード線2Aの間に配置することによって、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くなる。
【0055】
また、電解コンデンサ2の温度を検出するサーミスタ3を用いて、電解コンデンサ2の液漏れを検出しているため、異常検出用のサーミスタを別途追加する必要がない。つまり、電解コンデンサの温度検出と異常検出の両方の目的に同じサーミスタを用いることができる。これにより、部品点数を減らし、省コスト化を図ることができる。
【0056】
<第1実施形態の変形例>
図8A及び図8Bは、第1実施形態の第1変形例の説明図である。前述の形態では、サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2の頂部に取り付けられていたが、第1変形例では、サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2の側面に取り付けられている。このように、サーミスタ3の素子部分は、必要に応じて、電解コンデンサ2のいずれかの部位に取り付けることが可能である。
【0057】
但し、第1変形例においても、サーミスタ3のリード線3Aは、電解コンデンサ2の下にて回路基板1に結線されている。これにより、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くなる。
【0058】
図9A及び図9Bは、第1実施形態の第2変形例の説明図である。このように、サーミスタ3の素子部分を電解コンデンサ2の底部に取り付けることも可能である。また、サーミスタ3の素子部分を電解コンデンサ2の底部に取り付けると、電解コンデンサ2の内部の電解液の温度を検出するのに有利である。第2変形例では、サーミスタ3の全体が電解コンデンサ2の下に配置されることになる。液漏れ時に電解液はサーミスタ3の下側に溜まりやすいので、第2変形例によれば、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くなる。
【0059】
図10A及び図10Bは、第1実施形態の第3変形例の説明図である。このように、チップタイプのサーミスタ3’を採用することも可能である。そして、サーミスタ3’の全部若しくは少なくとも一部を電解コンデンサ2の下側に配置することによって、液漏れ時にサーミスタ3’がショートし易くなる。
【0060】
===第2実施形態===
図11A及び図11Bは、第2実施形態の説明図である。図11Aは、回路基板1上の電解コンデンサ2とサーミスタ3の斜視図である。図11Bは、電解コンデンサ2とサーミスタ3を横から見た図である。
【0061】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、回路基板1は、水平に置かれている。このため、基板表面の法線方向は、鉛直方向である。
【0062】
第2実施形態では、電解コンデンサ2のリード線2Aが折り曲げ加工されている。そして、電解コンデンサ2の素子本体は、基板表面に沿っている。つまり、電解コンデンサ2の底部と頂部は、ほぼ同じ高さで水平な位置である。なお、電解コンデンサ2の素子本体は、回路基板1の表面から1mm〜数mm程度だけ離れている。
【0063】
サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2のいずれかの位置に取り付けられている。ここでは、サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2の頂部に取り付けられている。
【0064】
サーミスタ3のリード線3Aは、電解コンデンサ2の下にて回路基板1に結線されている。また、サーミスタ3のリード線3Aは、電解コンデンサ2の底部寄り(封口部寄り)の下側で結線されている。
【0065】
電解コンデンサ2のリード線2Aが折り曲げ加工され、電解コンデンサ2の素子本体が基板表面に沿っている場合であっても、電解コンデンサ2が液漏れするとき、電解液は、電解コンデンサの下側に溜まりやすい。したがって、サーミスタ3のリード線3Aを電解コンデンサ2の下に配置することによって、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くなる。
【0066】
また、電解コンデンサ2のリード線2Aが折り曲げ加工され、電解コンデンサ2の素子本体が基板表面に沿っている場合であっても、電解コンデンサが液漏れすると、電解液は、電解コンデンサの封口部の下側に溜まりやすい。したがって、サーミスタ3のリード線3Aが、電解コンデンサ2の底部寄り(封口部寄り、図中の右寄り)の下側で結線されていることによって、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くなる。
【0067】
<第2実施形態の変形例>
図12A及び図12Bは、第2実施形態の第1変形例の説明図である。前述の形態では、サーミスタ3のリード線3Aが電解コンデンサ2の底部寄り(封口部寄り、図中の右寄り)の下側で結線されていたが、第1変形例では、サーミスタ3のリード線3Aは、電解コンデンサ2の頂部寄り(圧力弁寄り、図中の左寄り)の下側で結線されている。
【0068】
電解コンデンサ2のリード線2Aが折り曲げ加工され、電解コンデンサ2の素子本体が基板表面に沿っている場合、電解コンデンサ2の頂部の圧力弁が開くことによって、頂部から電解液が漏れ出ることも想定される。このため、電解コンデンサが液漏れすると、電解液が、電解コンデンサ2の頂部の下側に溜まることも想定される。したがって、サーミスタ3のリード線3Aが、電解コンデンサ2の頂部寄り(圧力弁寄り、図中の左寄り)の下側で結線されていることによって、電解コンデンサ2の頂部からの液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くすることが可能である。
【0069】
図13A及び図13Bは、第2実施形態の第2変形例の説明図である。第2変形例では、サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2の下側の側面に取り付けられている。このように、電解コンデンサ2のリード線2Aが折り曲げ加工され、電解コンデンサ2の素子本体が基板表面に沿っている場合においても、第1実施形態と同様に、サーミスタ3の素子部分を電解コンデンサ2の別の部位に取り付けることが可能である。
【0070】
図14A及び図14Bは、第2実施形態の第3変形例の説明図である。このように、サーミスタ3の素子部分を電解コンデンサ2の別の部位に取り付ける場合においても、電解コンデンサ2のリード線2Aが折り曲げ加工され、電解コンデンサ2の素子本体が基板表面に沿っている場合には、サーミスタ3のリード線3Aを、電解コンデンサ2の頂部寄り(圧力弁寄り、図中の左寄り)の下側で結線しても良い。これにより、電解コンデンサ2の頂部からの液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くすることが可能である。
【0071】
===第3実施形態===
図15A及び図15Bは、第3実施形態の説明図である。図15Aは、回路基板1上の電解コンデンサ2とサーミスタ3の斜視図である。図15Bは、電解コンデンサ2とサーミスタ3を横から見た図である。
【0072】
第3実施形態では、回路基板1が、垂直に置かれている。このため、基板表面の法線方向は、水平方向である。そして、電解コンデンサ2の素子本体は、水平方向に沿って回路基板1上に設けられている。図中では、電解コンデンサ2の素子本体は、回路基板1の表面から1mm〜数mm程度だけ離れているように示されているが、電解コンデンサ2の底部が回路基板1に接していても良い。
【0073】
サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2のいずれかの位置に取り付けられている。ここでは、サーミスタ3の素子部分は、電解コンデンサ2の頂部に取り付けられている。
【0074】
第3実施形態では、サーミスタ3のリード線3Aは、電解コンデンサ2のリード線2Aの下にて回路基板1に結線されている。但し、第1実施形態とは異なり、回路基板1が垂直に置かれているため、サーミスタ3のリード線3Aは、電解コンデンサ2の底部と対向する位置で結線されているわけではない。
【0075】
電解コンデンサ2が液漏れするとき、主に電解コンデンサ2の底部のリード線2Aを伝って電解液が漏れ出ることが想定される。そして、回路基板1が垂直に置かれている場合には、電解コンデンサが液漏れすると、リード線2Aを伝って回路基板1に達した電解液が更に下側に流れ落ちることが想定される。このため、サーミスタ3のリード線3Aを電解コンデンサ2のリード線2Aの下に配置することによって、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くなる。
【0076】
<第3実施形態の変形例>
図16A及び図16Bは、第3実施形態の第1変形例の説明図である。図17A及び図17Bは、第3実施形態の第2変形例の説明図である。このように、回路基板1が垂直におかれている場合においても、サーミスタ3の素子部分を電解コンデンサ2の別の部位に取り付けることが可能である。そして、このような場合においても、サーミスタ3のリード線3Aを電解コンデンサ2の下に配置することによって、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易くなる。
【0077】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。以下、その他の実施形態について説明する。
【0078】
前述の実施形態では、サーミスタ3のリード線3Aは、電解コンデンサ2の下で回路基板1に結線されていた。但し、サーミスタ3のリード線3Aの結線位置は、このような形態に限られるものではない。図5に示すように、サーミスタ3のリード線3Aが電解コンデンサ2の下で結線されていなくても、液漏れ時にサーミスタ3がショートすることによって、電解コンデンサ2の液漏れを検出することは可能である。但し、サーミスタ3のリード線3Aが電解コンデンサ2の下に位置する方が、液漏れ時にサーミスタ3がショートし易い。
【0079】
また、前述の実施形態では、サーミスタ3の素子部分が電解コンデンサ2のいずれかの部位に取り付けられていた。但し、サーミスタ3の素子部分の取付位置は、これに限られるものではない。図5に示すように、サーミスタ3の素子部分が電解コンデンサ2に取り付けられていなくても、液漏れ時にサーミスタ3がショートすることによって、電解コンデンサ2の液漏れを検出することは可能である。
【0080】
また、前述の実施形態では、サーミスタ3は、電解コンデンサ2の温度を検出するためのものであった。但し、サーミスタ3の使用目的は、これに限られるものではない。サーミスタ3がトランジスタQ1やQ2の温度を検出しても良いし、サーミスタ3が電解コンデンサ2とトランジスタQ1やQ2の両方の温度を検出しても良い。また、サーミスタ3が回路基板1の周辺温度を検出するものであっても良い。このようなサーミスタ3であっても、液漏れ時にサーミスタ3がショートすることによって、電解コンデンサ2の液漏れを検出することは可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 回路基板、2 電解コンデンサ、
2A リード線、2B 封口部、2C 圧力弁、2D 電解液、
3 サーミスタ、3A リード線、4 温度検出回路、
5 演算部、5A 寿命演算部、5B 液漏れ検出部、6 表示部、
10 コントローラー、11 メモリー、12 ヘッド駆動回路、
12A タイミング信号生成回路、12B 駆動信号生成回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、HC ヘッド制御部、
50 センサー群、
Q1・Q2 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板上に設置された電解コンデンサと、
前記回路基板上に設置され、温度を検出するための温度検出素子と、
前記回路基板上に設置され、ヘッドの駆動に用いられるトランジスタと
を有する印刷装置であって、
前記温度検出素子は、前記トランジスタよりも前記電解コンデンサの近くに配置され、
前記温度検出素子の出力値に基づき、前記電解コンデンサの異常を検出して、前記トランジスタを用いた前記ヘッドの駆動を停止することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記電解コンデンサと前記回路基板との間に、前記温度検出素子が設けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記温度検出素子の端子は、前記電解コンデンサの一対のリード線の間に位置していることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の異常検出装置であって、
前記温度検出素子の端子は、前記電解コンデンサの頂部よりも底部の側に寄った位置にあることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の異常検出装置であって、
前記温度検出素子の検出した温度に基づいて、前記電解コンデンサの寿命を検出することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−22896(P2013−22896A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161712(P2011−161712)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】