説明

印刷装置

【課題】インクリボンを用いて記録紙に印刷する際に、白抜け箇所の発生を防ぐ。
【解決手段】印刷装置は、装置本体3内に、記録紙40にインクリボン62上のインクを転写するサーマルヘッド5と、該サーマルヘッド5よりもインクリボン62の上流側に位置して、記録紙40及びインクリボン62を押さえ込んで走行を案内するガイド材2を設けている。ガイド材2は、記録紙40の走行方向に略直交した幅方向の少なくとも一側部が中央部よりも、記録紙40の走行側に突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンを用いて、記録紙に画像や文字を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の印刷装置の概略を示す正面図である(特許文献1参照)。記録紙(40)は、プラテンローラ(4)に所望の角度だけ巻き付いた後に、ピンチローラ(45)とキャプスタン(46)に挟持されて、図7の左側から右側に送られる。イエロー、マゼンタ、シアンのインクが搬送方向に沿って塗り分けられたインクリボン(62)はシート状のガイド材(2)に案内されて、供給ローラ(61)から巻取りローラ(64)に巻き取られて、左側から右側に走行する。インクリボン(62)の上方にはサーマルヘッド(5)が昇降可能に設けられている。
図8は、サーマルヘッド(5)近傍の拡大図である。印刷時には、インクリボン(62)と記録紙(40)を介して、サーマルヘッド(5)をプラテンローラ(4)に押圧させる。サーマルヘッド(5)に通電して加熱し、この熱によりインクリボン(62)に塗布されたインクを、搬送される記録紙(40)上に転写する。インクリボン(62)はテンションが掛かった状態で搬送され、ガイド材(2)によって走行の乱れが防止される。以下の記載では、記録紙(40)が搬送される方向を前方、逆方向を後方とする。
【0003】
【特許文献1】特開平8−99421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクリボン(62)の走行を安定させるには、ガイド材(2)を厚くして剛性を高め、記録紙(40)とインクリボン(62)を押さえ込むのが有利である。しかし、ガイド材(2)の剛性を高めて記録紙(40)を押さえ込み過ぎると、以下の問題が発生する。
図9は、記録紙(40)の後端部がガイド材(2)を通過した直後の図である。記録紙(40)は、ガイド材(2)の押さえ込みから開放されることにより、反り、即ち弾性によって急に跳ね上がり、サーマルヘッド(5)を稍押し上げる。この為、印刷中の画像が上手く転写されず、所謂白抜け現象が生じる。記録紙(40)の後端と、サーマルヘッド(5)と記録紙(40)が当接する箇所との間隔をLとすれば、図10に示すように、記録紙(40)の後端から距離Lだけ内側に、画像が印刷されない白線部分が生じる。
出願人の実験では、ガイド材(2)の厚みが0.1mmでは支障がないが、0.3mmとなると、剛性が大きくなり、白抜けが生じた。
本発明の目的は、インクリボンを用いて記録紙に印刷する際に、白抜け箇所の発生を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
装置本体(3)内に、記録紙(40)にインクリボン(62)上のインクを転写するサーマルヘッド(5)と、該サーマルヘッド(5)よりもインクリボン(62)の上流側に位置して、記録紙(40)及びインクリボン(62)を押さえ込んで走行を案内するガイド材(2)を設け、
ガイド材(2)は、記録紙(40)の走行方向に略直交した幅方向の少なくとも一側部が中央部よりも、記録紙(40)の走行側に突出している。
【発明の効果】
【0006】
記録紙(40)の後端部が、ガイド材(2)に押さえ込まれた状態から、記録紙(40)が更に前進すると、先ずガイド材(2)の幅方向の中央部が、記録紙(40)から離れる。この時点で、記録紙(40)は未だガイド材(2)の一側部に押さえられている。記録紙(40)が前進するにつれ、記録紙(40)は徐々にガイド材(2)から離れ、最後にガイド材(2)の一側部が記録紙(40)から外れる。このように、記録紙(40)はガイド材(2)から徐々に離れて開放されるから、記録紙(40)は弾性を持って急に跳ね上がることはない。従って、サーマルヘッド(5)は記録紙(40)から離れないから、ガイド材(2)の剛性を保ちつつ、白抜け箇所の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施例を図を用いて詳述する。
図1は、印刷装置の斜視図である。これは、図7に示す従来例とは異なり、プラテンローラ(4)の略全体に記録紙(40)を巻き付けて印刷し、ピンチローラ(45)は設けられていない。また、インクリボン(62)にはイエロー、マゼンタ、シアンのインクが搬送方向に沿って塗り分けられており、該インクリボン(62)はインクカートリッジ(6)内に張られる。インクリボン(62)は、インクカートリッジ(6)内の供給ローラ(61)から送り出されて、巻取りローラ(64)に巻き取られる。
装置本体(3)の側板(31)には、インクカートリッジ(6)が挿入される透孔(30)が開設され、該透孔(30)の下方にはプラテンローラ(4)及び記録紙(40)が収納される給紙トレイ(8)が配備される。装置本体(3)内には、巻取りローラ(64)を回転させる巻取りリール台(7)が設けられている。
装置本体(3)内にて、透孔(30)の上方には、サーマルヘッド(5)を具えた支持板(51)が揺動可能に設けられている。周知の如く、サーマルヘッド(5)がインクカートリッジ(6)内のインクリボン(62)を加熱して、インクを昇華させて、記録紙(40)に画像を印刷する。
【0008】
図2は、図1の正面図であり、全体構成の概略を示す。給紙トレイ(8)内の記録紙(40)は、ピックアップローラ(80)により1枚ずつ取り出されて、プラテンローラ(4)には記録紙(40)が巻き付けられる。該プラテンローラ(4)を回転して、インクリボン(62)をサーマルヘッド(5)にて加熱しながら巻取りローラ(64)によって搬送し、イエロー、マゼンタ、シアンの画像情報を順に記録紙(40)に印刷する。印刷が完了すると、装置本体(3)の上端部に形成された排出部(39)から排出される。
【0009】
図3は、サーマルヘッド(5)の近傍を拡大した正面図である。支持板(51)は枢軸(52)を中心に揺動し、該支持板(51)の底面に、インクリボン(62)の走行を案内するガイド材(2)が設けられている。ガイド材(2)は静電対策に鑑みて、PET材のシートから形成されて、記録紙(40)を押さえ込む。
図4は、図3のガイド材(2)を矢印A方向から見た平面図である。ガイド材(2)は記録紙(40)の走行方向に略直交した幅方向(図4のB方向)の両側部(20)(21)が中央部(22)よりも前側、即ち、記録紙(40)の走行側に突出している。換言すれば、ガイド材(2)は記録紙(40)の幅方向の端を最後まで押さえている。これにより、ガイド材(2)はインクリボン(62)の走行を案内するだけでなく、以下の働きをする。
【0010】
記録紙(40)の後端部が、ガイド材(2)に押さえ込まれた状態から、記録紙(40)が更に前進すると、先ずガイド材(2)の中央部(22)が、記録紙(40)から離れる。この時点で、記録紙(40)は未だガイド材(2)の両側部(20)(21)に押さえられている。記録紙(40)が前進するにつれ、記録紙(40)は徐々にガイド材(2)から離れ、最後にガイド材(2)の両側部(20)(21)が記録紙(40)から外れる。このように、記録紙(40)はガイド材(2)から徐々に離れて開放されるから、記録紙(40)は弾性を持って急に跳ね上がることはない。従って、サーマルヘッド(5)は記録紙(40)から離れないから、ガイド材(2)の剛性を保ちつつ、白抜け箇所の発生を防ぐことができる。
【0011】
図5は、別のガイド材(2)を示す平面図である。前記の如く、巻取りローラ(64)は巻取りリール台(7)によって回転され、該巻取りリール台(7)は、記録紙(40)の幅方向の一側部に設けられている。ガイド材(2)は前端部が前後に対して斜めに傾き、巻取りリール台(7)寄りの記録紙(40)の一側部(20)が中央部(22)よりも、記録紙(40)の走行側に突出している。図5では、前方から見てガイド材(2)の右側が、中央部(22)及び左側(21)よりも、前側に位置している。
出願人が製作した印刷装置では、図5の前方から見て、インクリボン(62)の巻取りリール台(7)側が走行が不安定であり、ガイド材(2)にてインクリボン(62)の巻取りリール台(7)側を最後まで押さえている。該ガイド材(2)の形状によっても、記録紙(40)の後端部が徐々にガイド材(2)から外れるから、記録紙(40)は弾性を持って急に跳ね上がることはない。従って、ガイド材(2)の剛性を保ちつつ、白抜け箇所の発生を防ぐことができる。
出願人の実験では、図5に示すガイド材(2)によって、白抜け箇所の発生を有効に防ぐことができた。
【0012】
尚、図5では、前方から見てガイド材(2)の右側が、記録紙(40)の走行方向に突出しているが、これは印刷装置のインクリボンの走行特性に合わせただけであり、図6に示すように、前方から見てガイド材(2)の左側(21)が、記録紙(40)の走行方向に突出してもよい。即ち、ガイド材(2)は記録紙(40)の一方の端を最後まで押さえていればよい。
【0013】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷装置の斜視図である。
【図2】図1の正面図であり、全体構成の概略を示す。
【図3】サーマルヘッドの近傍を拡大した正面図である。
【図4】図3のガイド材を矢印A方向から見た平面図である。
【図5】別のガイド材を示す平面図である。
【図6】別のガイド材を示す平面図である。
【図7】従来の印刷装置の概略を示す正面図である。
【図8】サーマルヘッド近傍の拡大図である。
【図9】サーマルヘッド近傍の拡大図である。
【図10】白抜け箇所の発生を示す平面図である。
【符号の説明】
【0015】
(2) ガイド材
(3) 装置本体
(4) プラテンローラ
(5) サーマルヘッド
(40) 記録紙
(62) インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に、記録紙にインクリボン上のインクを転写するサーマルヘッドと、該サーマルヘッドよりもインクリボンの上流側に位置して、記録紙及びインクリボンを押さえ込んで走行を案内するガイド材を設け、
ガイド材は、記録紙の走行方向に略直交した幅方向の少なくとも一側部が中央部よりも、記録紙の走行側に突出していることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
ガイド材は、記録紙の幅方向の両側部が中央部よりも、記録紙の走行側に位置する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
装置本体内には、インクリボンを巻き取るリール台が設けられ、該リール台は記録紙の幅方向の一側部に設けられ、ガイド材はリール台寄りの記録紙の一側部が中央部よりも、記録紙の走行側に突出している、請求項1に記載の印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−223269(P2007−223269A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49817(P2006−49817)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】