説明

印刷装置

【課題】噴射された紫外線硬化性液体に紫外線を照射して印刷を行うにあたり、紫外線照射面の保守作業が不要で、コスト、メンテナンスの両面で有利な印刷装置を提供する。
【解決手段】液体噴射ヘッド7から紫外線硬化性液体を印刷媒体1に噴射し、その噴射された紫外線硬化性液体に、液体噴射ヘッド7に隣接された紫外線照射ヘッド8から紫外線を照射して紫外線硬化型印刷を行うにあたり、非印刷時には、ワイピングユニット10のワイピング材13を紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に当接し、その状態で巻き上げロール12を回転することで当該ワイピング材13を移動することにより、紫外線照射面に付着しているミストをワイピングすると共に、非印刷時にはワイピングユニット10のワイピング材13を紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に当接させて覆うことで、非印刷時にミストが紫外線照射面に付着するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な液体を複数のノズルから噴射して、その微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした印刷装置に関し、特に紫外線硬化性液体を印刷媒体に噴射して印刷を行う場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
このような印刷装置の1つであるインクジェットプリンタは、印刷対象物の自由度、印刷内容の自由度や、印刷スピード、印刷所要時間などの利点から、所謂記録紙以外にも、食品や工業製品などを印刷媒体とし、日付や製品番号、仕様などの印刷に用いられるようになっている。こうした印刷装置では、例えばインクに紫外線硬化性液体を用い、印刷媒体に紫外線硬化性液体を噴射した後、それに紫外線を照射して当該液体を硬化せしめ、もってにじみにくく、剥がれにくい印刷が行われるようになっている。そして、このような印刷装置では、紫外線硬化性液体を噴射して印刷を行う液体噴射ヘッドに付随して、紫外線を照射する紫外線照射ヘッドが移動するものが開発されている。
【0003】
この種の印刷装置では、液体噴射ヘッドから噴射された紫外線硬化性液体が霧状、所謂ミストになって漂い、そのミストが紫外線照射ヘッドの紫外線照射面に付着して紫外線の光量が低下するという問題がある。そこで、下記特許文献1に記載される印刷装置では、紫外線照射ヘッドに保護板を備え、主としてミストの付着による光量の低下を検出し、光量が低下した場合には警告を促すようにしている。また、下記特許文献2に記載される印刷装置では、長尺な光透過フィルムで紫外線照射ヘッドの紫外線照射面を覆い、光量低下時には、それを巻き取るようにしている。
【特許文献1】特開2005−103838号公報
【特許文献2】特開2005−223961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のように、単に紫外線の光量低下時に警告を促すだけであると、一旦、装置を停止して保護板や紫外線照射面を拭くといった保守作業が必要になる。一方、特許文献2では、そのような保守作業が必要ないが、液体噴射ヘッドから紫外線硬化性液体を噴射していない、非印刷時にもミストが紫外線照射面に付着する恐れがあり、光透過フィルムの巻き取り回数が増大し、コスト面で不利となる。また、光量低下には、光量計などを用いた測定が必要となり、コスト、メンテナンスの面で負荷が大きい。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、紫外線照射面の保守作業が不要で、コスト、メンテナンスの両面で有利な印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記諸問題を解決するため、本発明の印刷装置は、紫外線硬化性液体を印刷媒体に噴射して印刷を行う液体噴射ヘッドと、この液体噴射ヘッドに隣設されて印刷媒体に噴射された紫外線硬化性液体に紫外線を照射する紫外線照射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドによる印刷が行われていない場合に紫外線照射ヘッドの紫外線照射面を覆い且つ当該紫外線照射面をワイピングすることが可能なワイピングユニットとを備え、前記ワイピングユニットは、長尺なワイピング材を巻取ったロールと、このロールのワイピング材を前記紫外線照射ヘッドの紫外線照射面に当接した状態で当該ロールを回転することで当該ワイピング材を移動する移動装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0006】
而して、本発明の印刷装置によれば、ワイピングユニットのワイピング材を紫外線照射ヘッドの紫外線照射面に当接し、その状態でロールを回転することで当該ワイピング材を移動することにより、紫外線照射面に付着しているミストをワイピングすることができると共に、液体噴射ヘッドの非印刷時にはワイピングユニットのワイピング材を紫外線照射ヘッドの紫外線照射面に当接させて覆うことで、非印刷時にミストが紫外線照射面に付着するのを防止することができ、紫外線照射面の保守作業を不要とし、コスト、メンテナンスの両面で有利となる。
【0007】
また、本発明の印刷装置は、前記ワイピングユニットによる前記紫外線照射面のワイピングを制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドから噴射される紫外線硬化性液体の量を求め、その紫外線硬化性液体量が所定値になったとき前記紫外線照射面のワイピングを行うことを特徴とするものである。
本発明の印刷装置によれば、光量計などを用いた紫外線の光量測定が不要となり、コスト、メンテナンス面で有利となる。
また、本発明の印刷装置は、前記制御手段は、紫外線硬化性液体のドットの数及びドットの大きさから紫外線硬化性液体量を算出することを特徴とするものである。
本発明の印刷装置によれば、液体噴射ヘッドから得られる紫外線硬化性液体のドットの数及びドットの大きさから紫外線硬化性液体量を容易に算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の印刷装置の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成図であり、工業製品を印刷媒体とするものである。印刷媒体1は搬送テーブル2に載置固定され、印刷媒体1を搭載した搬送テーブル2は搬送レール3に沿って図の右手前から左奥方に搬送される。また、印刷媒体1を排出した搬送テーブル2は搬送レール3に沿って図の左奥方から右手前に搬送される。
【0009】
搬送レール3の長手方向中間部上方には、キャリッジ搬送軸4が当該搬送レール3を横切るように横架されており、キャリッジ搬送軸4を支持する支持脚5は搬送レール3の長手方向側方に固定されている。このキャリッジ搬送軸4には、その軸方向、即ち長手方向であって、搬送レール3を横切る方向に摺動自在にキャリッジ6が取付けられており、このキャリッジ6に、後述する液体噴射ヘッド及び紫外線照射ヘッドが搭載されている。即ち、液体噴射ヘッド及び紫外線照射ヘッドは、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向に移動される。
【0010】
図2に、前記キャリッジ6に搭載された液体噴射ヘッド7及び紫外線照射ヘッド8の詳細を示す。本実施形態の液体噴射ヘッド7及び紫外線照射ヘッド8は、共に立方形状であり、キャリッジ6に対して、互いに隣接して搭載されている。液体噴射ヘッド7の図示下面、即ち印刷媒体1側面(以下、ノズル面とも記す)には、例えば印刷媒体1の搬送方向、即ち液体噴射ヘッド7の移動方向と交差する方向に複数のノズルが形成されてノズル列を形成しており、その夫々にノズルアクチュエータが配設されている。ノズルアクチュエータは、ノズル内の液体をノズルから噴射するためのものであり、例えば圧電素子などからなる。そして、夫々のノズルアクチュエータを駆動して、例えばノズル内の液体を引込み、次いでノズル内の液体を押出してノズルから液体を噴射する。この液体の引込み方や引込み量、液体の押出し方や押出し量を種々に変更することで、種々の大きさの液体のドットを印刷媒体1上に形成することができる。このドットの大きさの制御は、図示しないホストコンピュータによって行われる。ちなみに、本実施形態の液体噴射ヘッド7では、紫外線硬化性液体をノズルから印刷媒体1に向けて噴射する。
【0011】
紫外線照射ヘッド8は、図示下面、即ち印刷媒体1側面が紫外線照射面となっており、そこから印刷媒体1側に紫外線を照射する。従って、例えば図2でキャリッジ6と共に液体噴射ヘッド7が左方向に移動している場合には、キャリッジ6の移動と共に印刷すべき位置を通過するノズルのノズルアクチュエータを駆動して当該ノズルから紫外線硬化性液体を噴射すると、その印刷媒体1に噴射された紫外線硬化性液体に紫外線照射ヘッド8から紫外線が照射され、当該紫外線硬化性液体が硬化し、印刷媒体1に固着することになり、にじみにくく、剥がれにくい印刷を行うことができる。なお、印刷媒体1に対して印刷を行わない非印刷時には、キャリッジ6は図2bに示す右方端部に移動する。
【0012】
前記非印刷時位置には、液体噴射ヘッド7のノズル面に対向するクリーニングユニット9及び紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に対向するワイピングユニット10が配設されている。また、非印刷時には、キャリッジ6が下降し、クリーニングユニット9及びワイピングユニット10が上昇して、クリーニングユニット9は液体噴射ヘッド7のノズル面に当接し、ワイピングユニット10は紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に当接する。
【0013】
クリーニングユニット9は、例えば液体噴射ヘッド7のノズル面に形成されているノズルを覆い且つ当該ノズル面に密着可能な方形有底のキャップ体と、その底部に配設された液体吸収体と、キャップ体の底部に接続されたチューブポンプと、キャップ体を昇降する昇降装置とで構成されている。そこで、キャップ体が液体噴射ヘッド7のノズル面に密着している状態で、チューブポンプによってキャップ体内を負圧にすると、液体噴射ヘッド7のノズル面に開設されているノズルから液体や気泡が吸い出され、液体噴射ヘッド7をクリーニングすることができる。なお、クリーニングが終了しても、非印刷中はキャップを液体噴射ヘッド7のノズル面に密着させておくことで、ノズルの汚損やノズル内の液体の増粘などを抑制することができ、この状態をキャッピングとも称する。
【0014】
ワイピングユニット10は、紙や布でできたワイピングクロスと称する長尺なワイピング材13を巻き取った巻き取りロール11と、この巻き取りロール11に巻き取られているワイピング材13を巻き上げる巻き上げロール12とを備え、少なくとも巻き上げロール12には、当該巻き上げロール12を回転する図示しないモータなどの回転駆動源が接続されている。巻き取りロール11から巻き上げロール12に巻き上げられるワイピング材13は、図示しないガイドによってワイピングユニット10の上面を通過する。従って、ワイピングユニット10が紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に当接している状態では、ワイピング材13は当該紫外線照射面に当接し、巻き上げられるワイピング材13によって当該紫外線照射面に付着している液体のミストをワイピング、即ち吸収したり払拭したりすることができる。
【0015】
このワイピングユニット10は、前記巻き上げロール12の回転駆動源を制御する制御回路14を備えている。この制御回路14は、例えばマイクロコンピュータなどの演算処理装置を備え、液体噴射ヘッド7のノズルアクチュエータや印刷装置全体を制御しているホストコンピュータと通信している。この制御回路14では、非印刷時にキャリッジ6が非印刷時位置に復帰する毎に図4の演算処理を行い、ワイピング処理のタイミングを制御する。この演算処理では、まずステップS1で、ホストコンピュータとの通信により、前回の演算処理以後の紫外線硬化性液体のドットの数及びドットの大きさを読込む。
【0016】
次にステップS2に移行して、前記ステップS1で読込んだ紫外線硬化性液体のドットの数及びドットの大きさから紫外線硬化性液体の量を算出する。具体的な算出手法としては、紫外線硬化性液体のドットの大きさで一個のドットに必要な紫外線硬化性液体の量が決まるから、そのドットの数分の紫外線硬化性液体量を求め、それを各ドットの大きさ毎に算出し、それらを加算して紫外線硬化性液体量を算出する。
【0017】
次にステップS3に移行して、ステップS2で算出された紫外線硬化性液体量が予め設定された所定値に到達したか否かを判定し、紫外線硬化性液体量が所定値に到達した場合にはステップS4に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。ちなみに、紫外線硬化性液体量の所定値は、紫外線硬化性液体のミストが紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に付着し、当該紫外線照射面からの紫外線の光量が必要光量以下になってしまうときの液体噴射ヘッド7から噴射された総紫外線硬化性液体量から設定する。
【0018】
ステップS4では、図示しない個別の演算処理によりワイピング処理を行う。具体的には、巻き上げローラ12でワイピング材13を所定量巻き上げることで、紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に付着しているミストをワイピングし、それを吸収したり払拭したりして当該紫外線照射面を清浄な状態とする。
次にステップS5に移行して、ステップS2で算出した紫外線硬化性液体量をリセットしてからメインプログラムに復帰する。
この演算処理によれば、紫外線の光量を測定することなく、紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面から照射される紫外線の光量が低下するころ、当該紫外線照射面のワイピングを行うことが可能となり、コスト、メンテナンスの面で有利である。
【0019】
このように本実施形態の印刷装置によれば、液体噴射ヘッド7から紫外線硬化性液体を印刷媒体1に噴射して印刷を行い、この印刷媒体1に噴射された紫外線硬化性液体に液体噴射ヘッド7に隣接された紫外線照射ヘッド8から紫外線を照射する印刷装置において、非印刷時には、ワイピングユニット10のワイピング材13を紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に当接し、その状態で巻き上げロール12を回転することで当該ワイピング材13を移動することにより、紫外線照射面に付着しているミストをワイピングすることができると共に、非印刷時にはワイピングユニット10のワイピング材13を紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面に当接させて覆うことで、非印刷時にミストが紫外線照射面に付着するのを防止することができ、紫外線照射面の保守作業を不要とし、コスト、メンテナンスの両面で有利となる。
【0020】
また、制御回路14は、液体噴射ヘッド7から噴射される紫外線硬化性液体の量を求め、その紫外線硬化性液体量が所定値になったとき、紫外線照射ヘッド8の紫外線照射面のワイピングを行うことにより、光量計などを用いた紫外線の光量測定が不要となり、コスト、メンテナンス面で有利となる。
また、紫外線硬化性液体のドットの数及びドットの大きさから紫外線硬化性液体量を算出することにより、紫外線硬化性液体量を容易に算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の印刷装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1の印刷装置のキャリッジ搬送軸及びキャリッジ近傍の詳細図である。
【図3】図2の印刷装置の紫外線照射ヘッド及びワイピングユニットの説明図である。
【図4】図3のワイピングユニットの制御回路で行われるワイピング処理のタイミング制御のための演算処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1は印刷媒体、2は搬送テーブル、3は搬送レール、4はキャリッジ搬送軸、5は支持脚、6はキャリッジ、7は液体噴射ヘッド、8は紫外線照射ヘッド、9はクリーニングユニット、10はワイピングユニット、11は巻き取りロール、12は巻き上げロール、13はワイピング材、14は制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化性液体を印刷媒体に噴射して印刷を行う液体噴射ヘッドと、この液体噴射ヘッドに隣設されて印刷媒体に噴射された紫外線硬化性液体に紫外線を照射する紫外線照射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドによる印刷が行われていない場合に紫外線照射ヘッドの紫外線照射面を覆い且つ当該紫外線照射面をワイピングすることが可能なワイピングユニットとを備え、前記ワイピングユニットは、長尺なワイピング材を巻取ったロールと、このロールのワイピング材を前記紫外線照射ヘッドの紫外線照射面に当接した状態で当該ロールを回転することで当該ワイピング材を移動する移動装置とを備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ワイピングユニットによる前記紫外線照射面のワイピングを制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドから噴射される紫外線硬化性液体の量を求め、その紫外線硬化性液体量が所定値になったとき前記紫外線照射面のワイピングを行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、紫外線硬化性液体のドットの数及びドットの大きさから紫外線硬化性液体量を算出することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−178947(P2009−178947A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20348(P2008−20348)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】