説明

印刷装置

【課題】所望のジョブの印刷物全部を取得する機会が得られる印刷装置を提供すること。
【解決手段】プリンタ100は,ジョブキューに複数のジョブが登録され,印刷ジョブを連続して実行する際(S104:YES),先行ジョブと後続ジョブとの境で,低排紙処理を実行する(S123)。低排紙処理としては,排紙ペースを下げる処理であればよく,例えば,用紙搬送速度を落とす処理と,用紙搬送を停止する処理と,用紙の搬送間隔を広げる処理と,の少なくとも1つを行う処理が該当する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,用紙に画像を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,プリンタ,コピー機,FAX装置等の印刷機能を有する印刷装置では,印刷速度の向上が著しい。この印刷速度の高速化に伴って,連続印刷中に排紙先のトレイから印刷物を取り除き難い傾向にある。そこで,連続印刷中に,印刷物を取り除く機会を与える機会付与機能に関する技術が開示されている。
【0003】
この機会付与機能に関する技術としては,例えば特許文献1に開示された印刷装置がある。この印刷装置には,排紙先のトレイを切り換える切換スイッチがあり,ユーザが切換スイッチを操作して排紙先を変更することで,ユーザに印刷物を取り除く機会を与えている。また,特許文献1では,一時停止スイッチによって装置を停止させる技術についても言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−016130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の印刷装置には,次のような問題があった。すなわち,スイッチ操作によって排紙先の変更や装置の一時停止を行うことで,印刷物の取り除き易さは向上するものの,ジョブの印刷途中でスイッチが押されると,途中までの印刷物を得ることになる。そのため,当該ジョブの印刷物全部を得るには,再度,印刷物を取り除く作業が必要であり,手間が多くなる。
【0006】
本発明は,前記した従来の印刷装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,所望のジョブの印刷物全部を取得する機会が得られる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は,用紙に印刷を行う印刷部と,印刷部によって印刷された印刷物の排紙先である排紙部と,現在印刷中の印刷ジョブである先行ジョブとその先行ジョブに後続する後続ジョブとの境で,排紙部への排紙能力を低下させる低排紙処理を実行する実行部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の印刷装置は,ジョブキューに複数のジョブが登録され,印刷ジョブを連続して実行する際,先行ジョブと後続ジョブとの境で,低排紙処理を実行する。ここでいう先行ジョブと後続ジョブとの「境」には,先行ジョブの最終用紙の印刷,後続ジョブの先頭用紙の印刷,あるいはその両方,あるいは両ジョブ間を含む。また,「低排紙処理」は,排紙ペースを下げる処理であればよく,例えば,用紙搬送速度を落とす処理と,用紙搬送を停止する処理と,用紙の搬送間隔を広げる処理と,の少なくとも1つを行う処理が該当する。
【0009】
すなわち,本発明の印刷装置では,低排紙処理によって排紙ペースを下げることで,印刷物を取り除き易くする。さらに,この低排紙処理を,先行ジョブと後続ジョブとの境で実行する。このことから,低排紙処理によって取得機会を得る際には,印刷物は1つのジョブの印刷物全体になる。その結果,何回も印刷物を取り除く作業を行わなくて済む。
【0010】
また,本発明の印刷装置は,低排紙処理の実行指令を検出する検出部を備え,実行部は,検出部が実行指令を検出した場合に,低排紙処理を実行するとよい。すなわち,毎ジョブで低排紙処理を実行すると生産性の低下が懸念される。そのため,低排紙処理が必要な場合にのみ実行する方が好ましい。なお,検出部は,キー操作の他,人感センサ,ユーザ認証等によって装置の周辺にユーザが存在することを検出するものであってもよい。
【0011】
また,本発明の印刷装置は,排紙部が複数あり,実行部は,後続ジョブが先行ジョブと同じ排紙部を利用する場合に,低排紙処理を実行するとよい。先行ジョブと後続ジョブとで異なる排紙部を利用する場合は,低排紙処理を実行しなくても印刷物の取り出し作業はそれほど困難にならない。そのため,生産性の観点から,先行ジョブと後続ジョブとが同じ排紙部を利用する場合にのみ低排紙処理を実行可能にする方が望ましい。
【0012】
また,本発明の印刷装置の実行部は,後続ジョブが先行ジョブとユーザが異なる場合に,低排紙処理を実行するとよい。先行ジョブと後続ジョブとでユーザが同じ場合は,両ジョブの境で印刷物を取り除く必要性が低い。そのため,生産性の観点から,先行ジョブと後続ジョブとでユーザが異なる場合にのみ低排紙処理を実行可能にする方が望ましい。
【0013】
また,本発明の印刷装置は,低速印刷モードと高速印刷モードとがあり,実行部は,高速印刷モードである場合に,低排紙処理を実行するとよい。低速印刷モードでは,印刷物を取り除く際の困難が生じ難い。そのため,低速印刷モードでは生産性を優先して低排紙処理を実行せず,高速印刷モードでのみ低排紙処理を実行する方が望ましい。
【0014】
また,本発明の印刷装置の実行部は,未印刷のジョブの量が規定値以下である場合には,低排紙処理の実行を制限するとよい。未印刷のジョブの量(例えば,残りの総印刷枚数)が規定値以下の場合は,印刷が早期に完了すると予測される。印刷が早期に完了するのであれば,低印刷処理を行わずとも印刷完了を待って印刷物を取り除いてもユーザの不満は少ない。
【0015】
また,本発明の印刷装置は,低排紙処理の実行を契機に,低排紙処理が実行されていることをユーザに報知する報知手段を備えるとよい。低排紙処理として印刷動作を変更すると,ユーザを不安にさせるおそれがある。そのため,低排紙処理の実行を報知することで,その不安を軽減することが期待できる。
【0016】
また,本発明の印刷装置の実行部は,所定時間が経過したことを契機に,低排紙処理の実行を取り消すとよい。低排紙処理は,あくまでも印刷物を取り除く機会を与える処理であり,長時間実行されることは好ましくない。低排紙処理を実行する期間を設け,その期間を越えた場合には従前の状態に戻すことが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,所望のジョブの印刷物全部を取得する機会が得られる印刷装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態にかかるプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示したプリンタの内部構成を示す断面図である。
【図3】図1に示したプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】第1の形態にかかる取出ボタン押下処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】取出ボタンが押下された際の表示部の表示例を示す図である。
【図6】第1の形態にかかる印刷制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】低排紙処理が実行された際の表示部の表示例を示す図である。
【図8】第2の形態にかかる印刷制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】第3の形態にかかる印刷制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下,本発明にかかる印刷装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,高速印刷が可能な電子写真方式のプリンタに本発明を適用したものである。
【0020】
[プリンタの全体構成]
本形態のプリンタ100は,図1に示すように,用紙に印刷を行う本体部10と,本体部10で印刷された用紙の排紙先となる排紙トレイを複数具備する増設排紙部20とを備えている。本体部10は,カバー11内に印刷エンジンとなるプロセスカートリッジを収容する。増設排紙部20は,本体部10の上面に本体部10から着脱可能に取り付けられる。
【0021】
本体部10は,その底部に,印刷前の用紙を収容する給紙カセット91を備えている。なお,給紙カセット91は,1つに限るものではない。例えば,給紙カセット91のさらに下面に,増設給紙カセットを取り付けてもよい。また,本体部10は,その上面に,印刷後の用紙(印刷物)を印刷面が下向きになるように載置する排紙トレイ93を備えている。
【0022】
また,本体部10は,その前面に,手差し給紙を可能にする多目的トレイ94が設けられている。多目的トレイ94は,本体部10のカバー11に開閉自在に配設されており,下辺側に設けられた回転軸を中心に回動させると開放状態となる。そして,開放状態とすることで,多目的トレイ94を利用した給紙が可能になる。また,本体部10は,その背面に,印刷物を印刷面が上向きになるように載置する排紙トレイ95が設けられている。排紙トレイ95も,本体部10のカバー11に開閉自在に配設されており,開放状態とすることで排紙トレイ95を排紙先として利用可能になる。
【0023】
また,本体部10の上面には,液晶ディスプレイからなる表示部41と,OKボタン,キャンセルボタン,テンキー,ユーザ認証ボタン等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられている。特に,ボタン群42には,印刷物の取り出し機会の取得を指示するための取出ボタン421が含まれる。この操作パネル40により,動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になる。
【0024】
増設排紙部20は,5段の排紙トレイ群96を備えている。本形態では,排紙トレイ群96を構成する各排紙トレイを,下から順に上に向かって,排紙トレイ961,962,963,964,965とする。なお,増設排紙トレイ部20は,5段の排紙トレイに限るものではない。すなわち,4段以下であってもよいし,6段以上であってもよい。
【0025】
[プリンタの内部構成]
続いて,プリンタ100の内部構成について,図2を参照しつつ説明する。プリンタ100の本体部10は,電子写真方式によってトナー像を形成し,そのトナー像を用紙に転写するプロセス部50と,転写後の未定着のトナーを用紙に定着させる定着装置8と,用紙搬送に利用される各種ローラ(例えば,給紙ローラ71,レジストローラ72,排紙ローラ73,搬入ローラ74,排紙ローラ75)とを備えている。また,増設排紙部20は,排紙トレイ961に用紙を搬送する排紙ローラ761と,排紙トレイ962に用紙を搬送する排紙ローラ762と,排紙トレイ963に用紙を搬送する排紙ローラ763と,排紙トレイ964に用紙を搬送する排紙ローラ764と,排紙トレイ965に用紙を搬送する排紙ローラ765とを備えている。
【0026】
また,プリンタ100の本体部10内には,底部に位置する給紙カセット91に収容された用紙が,給紙ローラ71,レジストローラ72,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ73を介して排紙トレイ93への導かれるように,略S字形状の搬送路21(図2中の一点鎖線)が設けられている。
【0027】
また,プリンタ100の本体部10内には,多目的トレイ94から搬入された用紙が搬入ローラ74を介してプロセス部50へ導かれるように,略直線状の搬送経路24が設けられている。また,プリンタ100の本体部10内には,定着装置8を通過した用紙が排紙ローラ75を介して排紙トレイ95へ導かれるように,略直線状の搬送経路25が設けられている。
【0028】
また,プリンタ100内には,印刷済みの用紙を増設排紙トレイ部20に搬入し,所定の排紙先に導かれるように,搬送路22が設けられている。具体的には,増設排紙部20に搬入された用紙は,排紙ローラ761を介して排紙トレイ961に導かれる。あるいは,排紙ローラ762を介して排紙トレイ962に導かれる。排紙ローラ763を介して排紙トレイ963に導かれる。排紙ローラ764を介して排紙トレイ964に導かれる。排紙ローラ765を介して排紙トレイ965に導かれる。
【0029】
プロセス部50は,周知の電子写真方式によってトナー像を形成するものであり,感光体1と,感光体1の表面を一様に帯電する帯電装置2と,感光体1の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置3と,静電潜像に対してトナーによる現像を行う現像装置4と,感光体1上のトナー像を用紙に転写する転写装置5とを有している。感光体1,帯電装置2,および現像装置4は,プロセスカートリッジとして構成され,本体部10に対して着脱可能になっている。
【0030】
プロセス部50では,感光体1の表面が帯電装置2によって一様に帯電される。その後,露光装置3からの光により露光され,用紙に形成すべき画像の静電潜像が形成される。次いで,現像装置4を介して,着色剤であるトナーが感光体1に供給される。これにより,感光体1上の静電潜像は,トナー像として可視像化される。
【0031】
プリンタ100は,給紙カセット91に載置されている用紙あるいは多目的トレイ94から送り込まれた用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙をプロセス部50に搬送する。そして,プロセス部50の感光体1上に形成されたトナー像を転写装置5によってその用紙に転写する。その後は,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を,ジョブに指定された排紙トレイに排出する。
【0032】
[プリンタの電気的構成]
続いて,プリンタ100の電気的構成について説明する。プリンタ100は,図3に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース36とを備えた制御部30を有している。制御部30は,プロセス部50,操作パネル40,さらには本体部10や増設排紙部20内に配置された各種ローラの駆動モータ(不図示)等と電気的に接続されている。
【0033】
CPU31は,プリンタ100における印刷機能や,後述する機会付与機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。ROM32には,プリンタ100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM(Non Volatile RAM)34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定ないし画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0034】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,プリンタ100の各構成要素をASIC35を介して制御する。
【0035】
ネットワークインターフェース36は,インターネット等のネットワークに接続され,パーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置との接続を可能にしている。そして,ネットワークインターフェース36を介してジョブを受け渡すことができる。
【0036】
[機会付与機能]
[第1の形態]
続いて,ユーザに印刷物を取り除く機会を与える機会付与機能について説明する。第1の形態では,連続印刷中に取出ボタン421が押下された場合,印刷ジョブの最後で排紙能力を低下させ,印刷物の排紙ペースを下げる。ここでいう「排紙能力」とは,用紙1枚につき,給紙から排紙に至るまでにかかる搬送の能力であり,排紙能力が高いほど印刷物の排紙ペースが速い。具体的には,用紙搬送速度を落とす,用紙搬送を一時停止する,用紙の搬送間隔を広げるの,少なくとも1つを行うことで,排紙能力を低下させる。排紙能力が低下すると,印刷物の排紙ペースが下がり,先に排紙された印刷物を取り除き易くなる。つまり,第1の形態では,排紙能力を低下させることによって,ユーザに印刷物を取り除く機会を与える。第1の形態では,この排紙能力を低下させる処理を「低排紙処理」とする。
【0037】
[取出ボタン押下処理]
前述した機会付与機能は,取出ボタン421が押下されたことを記憶する取出ボタン押下処理と,各印刷ジョブの印刷動作を制御する印刷制御処理とによって実現される。そこで,始めに,取出ボタン押下処理の手順について,図4のフローチャートを参照しつつ説明する。取出ボタン押下処理は,取出ボタン421が押下される度に,CPU31によって実行される。
【0038】
まず,取出ボタン421が押下されたことを記憶する取出フラグがオンしているか否かを判断する(S001)。取出フラグは,RAM33に記憶され,取出ボタン421が押下された状態ではオンとなり,押下されていない状態あるいは印刷ジョブの完了後ではオフになる。取出フラグがすでにオンしている場合には(S001:YES),取出ボタン押下処理を終了する。
【0039】
取出フラグがオフしている場合には(S001:NO),取出フラグをオンする(S002)。その後,図5に示すように,取出ボタン421が押下された状態であることを表示部41に表示する(S003)。S003の後,取出ボタン押下処理を終了する。
【0040】
[印刷制御処理]
続いて,印刷制御処理の手順について,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。印刷制御処理は,ジョブキューにある各印刷ジョブを実行する度に,CPU31によって実行される。
【0041】
まず,印刷対象となる印刷ジョブの情報を取得する(S101)。この情報には,ユーザ情報,印刷枚数,排紙先等の情報が含まれる。その後,その印刷ジョブの先頭ページの印刷を開始する(S102)。
【0042】
次に,印刷対象のページが,印刷対象の印刷ジョブの最終ページか否かを判断する(S103)。最終ページでなければ(S103:NO),現在の印刷対象のページを印刷し(S111),次のページを印刷対象にする(S112)。S112の後,S103に戻る。
【0043】
一方,最終ページであれば(S103:YES),現在印刷中の印刷ジョブに後続する後続ジョブがジョブキューにあるか否かを判断する(S104)。後続ジョブがなければ,最終ページの印刷後に印刷が完了することになる。そのため,後述する低排紙処理は不要である。そこで,後続ジョブがジョブキューにない場合には(S104:NO),低排紙処理を実行することなく,最終ページを印刷する(S105)。その後,取出フラグがオンしているか否かを判断し(S106),オフしている場合には(S106:NO),印刷制御処理を終了し,オンしている場合には(S106:YES),取出フラグをオフし(S125),印刷制御処理を終了する。
【0044】
後続ジョブがジョブキューにある場合には(S104:YES),取出フラグがオンしているか否か,すなわち取出ボタン421が押下されたか否かを判断する(S121)。取出フラグがオフしている場合には(S121:NO),S122以降の低排紙処理は不要であり,S105に移行して最終ページを印刷する。
【0045】
取出フラグがオンしている場合には(S121:YES),S122に移行して低排紙処理の準備を行う。本形態では,図7に示すように低排紙処理が動作中である旨のメッセージを表示部41に表示する(S122)。すなわち,低排紙処理として印刷動作を変更すると,ユーザを不安にさせるおそれがある。このことから,メッセージ表示することで,ユーザに低排紙処理の実行を報知し,その不安を軽減する。
【0046】
その後,排紙能力を低下させる低排紙処理を実行しながら最終ページを印刷する(S123)。例えば,低排紙処理として,用紙搬送速度を減速する場合には,最終ページの印刷を低速で行う。印刷を低速で行う方法としては,用紙搬送速度を落としてもよいし,紙間を長くしてもよい。また,低排紙処理として,用紙搬送を一時停止する場合には,最終ページの印刷および排紙後に一定時間用紙搬送を停止する。また,低排紙処理として,用紙搬送速度の減速と用紙搬送の一時停止との両方を行ってもよい。
【0047】
その後,低排紙処理を取り消し,排紙能力を元に戻す(S124)。例えば,用紙搬送速度を減速した場合には,最終ページの印刷後に,用紙搬送速度を変更前の状態に戻す。また,用紙搬送を一時停止する場合には,用紙搬送を停止した後,所定時間が経過したことを条件に用紙搬送を再開する。排紙能力が戻った後は,取出フラグをオフする(S125)。S125の後,印刷制御処理を終了する。
【0048】
第1の形態では,取出ボタン421の押下を条件として低排紙処理が実行される。さらに,第1の形態では,連続印刷中に取出ボタン421が押下されたとしても,現在印刷中の印刷ジョブの最終ページになるまで低排紙処理は実行されず,最終ページの印刷にて低排紙処理が実行される。従って,低排紙処理の実行によって印刷物を取り除く際には,印刷ジョブの印刷物全部を取り除くことができる。
【0049】
[第2の形態]
[印刷制御処理]
続いて,機会付与機能の第2の形態について説明する。第2の形態では,プリンタ100自身が所定の条件に基づいて低排紙処理が必要か否かを判断し,その条件を満たした場合に低排紙処理を実行する。この点,ユーザからの低排紙処理の実行指示(取出ボタン421の押下)に応じて低排紙処理を実行する第1の形態とは異なる。
【0050】
以下,第2の形態の印刷制御処理について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。第2の形態の印刷制御処理も,第1の形態と同様に,ジョブキューにある各印刷ジョブを実行する度に,CPU31によって実行される。なお,第1の形態と同様の処理については,同じステップ番号を付し,説明を省略する。特に,第2の形態の印刷制御処理は,印刷対象のページが最終ページであった場合(S103:YES)以降の処理が第1の形態と異なるため,それ以前の処理については説明を省略する。
【0051】
第2の形態の印刷制御処理では,印刷対象のページが最終ページであった場合(S103:YES),後続ジョブがあるか否かを判断する(S104)。後続ジョブがジョブキューになければ(S104:NO),低排紙処理は不要であり,最終ページを印刷し(S105),印刷制御処理を終了する。
【0052】
一方,後続ジョブがジョブキューにあれば(S104:YES),低排紙処理を実行するための実行条件を満たしているか否かを判断する(S221)。プリンタ100は,あらかじめ少なくとも1つの実行条件をROM32に記憶している。
【0053】
実行条件としては,例えば,高速印刷モードでの印刷であることが該当する。プリンタ100は,高速印刷モードと低速印刷モードとを有している。そして,用紙種別や解像度によって印刷モードが決まる。例えば,厚紙に印刷する場合には,定着に時間がかかることから低速印刷モードになる。また,基準値以上の高解像度印刷を行う場合にも低速印刷モードになる。これらの要件を満たさない場合には,高速印刷モードになる。低速印刷モードでの印刷の際には,排紙ペースが遅く,印刷物が取り難くなる問題が生じ難い。そこで,高速印刷モードで印刷中の場合に,実行条件を満たすものとする。
【0054】
この他,例えば,現在印刷中の印刷ジョブである(先行ジョブ)とそれに後続するジョブとが異なるユーザであることが該当する。先行ジョブと後続ジョブとでユーザが同じ場合は,そのユーザが両ジョブの印刷物を纏めて取り除くことが考えられ,両ジョブの境で印刷物を取り除く必要性が低い。そのため,生産性の観点から,先行ジョブと後続ジョブとでユーザが異なる場合に,実行条件を満たすものとする。
【0055】
この他,例えば,現在印刷中のジョブとそれに後続するジョブとが同じ排紙先であることが該当する。先行ジョブと後続ジョブとで異なる排紙トレイを利用する場合は,低排紙処理を実行しなくても印刷物の取り出し作業はそれほど困難にならない。そのため,生産性の観点から,先行ジョブと後続ジョブとが同じ排紙トレイを利用する場合に,実行条件を満たすものとする。
【0056】
この他,例えば,現在印刷中のジョブがセキュア印刷であり,それに後続するジョブが非セキュア印刷であることが該当する。ここでいうセキュア印刷とは,ジョブを印刷する際にパスワードの入力が必要なジョブのことである。セキュア印刷を行うユーザは印刷完了後に即時にその印刷物を取り除く可能性が高く,低排紙処理の必要性が高い。一方で,後続ジョブがセキュア印刷であれば,パスワードの入力操作が必須となり,先行ジョブの印刷物を取り除く機会がある。そこで,現在印刷中のジョブがセキュア印刷であり,それに後続するジョブが非セキュア印刷であれば,実行条件を満たすものとする。
【0057】
プリンタ100は,これら実行条件のうちの少なくとも1つを記憶しており,実行条件を満たすか否かを判断する。なお,実行条件は,1つに限るものではなく,複数用意して組み合わせてもよい。実行条件を満たしていない場合には(S221:NO),低排紙処理は不要であり,S105に移行して最終ページを印刷する。
【0058】
実行条件を満たす場合には(S221:YES),ジョブキューにある全後続ジョブの総印刷枚数(以下,「印刷残枚数」とする)を計算し,その印刷残枚数が閾値以下であるか否かを判断する(S222)。印刷残枚数が閾値以下であれば,早期に印刷が完了することが予想される。印刷が早期に完了するのであれば,印刷完了を待ったとしてもユーザの不満は少ない。そこで,印刷残枚数が閾値以下の場合には(S222:YES),実行条件を満たしていたとしても低排紙処理は不要であり,最終ページを印刷し(S105),印刷制御処理を終了する。
【0059】
一方,印刷残枚数が閾値よりも多い場合には(S222:NO),低排紙処理が動作中である旨のメッセージを表示部41に表示する(S122)。その後,低排紙処理を実行しながら最終ページを印刷する(S123)。その後,排紙能力を元に戻し(S124),印刷制御処理を終了する。
【0060】
第2の形態では,所定の実行条件を満たすと低排紙処理が実行される。さらに,第2の形態では,印刷ジョブの最終ページになるまで実行条件の成立判断は行われず,低排紙処理は実行されない。そして,最終ページの印刷時に実行条件の成立判断が行われ,最終ページの印刷時に低排紙処理が実行される。従って,低排紙処理の実行によって印刷物を取り除く際には,印刷ジョブの印刷物全部を取り除くことができる。
【0061】
[第3の形態]
[印刷制御処理]
続いて,機会付与機能の第3の形態について説明する。第3の形態では,先行ジョブと後続ジョブとの境で,毎回,低排紙処理を実行する。この点,ユーザからの低排紙処理の実行指示(取出ボタン421の押下)に応じて低排紙処理を実行する第1の形態や,所定の実行条件の成立に応じて低排紙処理を実行する第2の形態とは異なる。
【0062】
以下,第3の形態の印刷制御処理について,図9のフローチャートを参照しつつ説明する。第3の形態の印刷制御処理も,第1の形態と同様に,ジョブキューにある各印刷ジョブを実行する度に,CPU31によって実行される。なお,第1の形態と同様の処理については,同じステップ番号を付し,説明を省略する。特に,第3の形態の印刷制御処理は,印刷対象のページが最終ページであった場合(S103:YES)以降の処理が第1の形態と異なるため,それ以前の処理については説明を省略する。
【0063】
第3の形態の印刷制御処理では,印刷対象のページが最終ページであった場合(S103:YES),後続ジョブがあるか否かを判断する(S104)。後続ジョブがジョブキューになければ(S104:NO),低排紙処理は不要であり,最終ページを印刷し(S105),印刷制御処理を終了する。
【0064】
一方,後続ジョブがジョブキューにあれば(S104:YES),最終ページを印刷する(S321)。その後,低排紙処理が動作中である旨のメッセージを表示部41に表示する(S122)。
【0065】
次に,現在印刷中のジョブとそれに後続するジョブとが同じユーザであるか否かを判断する(S324)。同じユーザであれば(S324:YES),次のジョブの印刷動作を開始するまで5秒間待機する(S325)。一方,同じユーザでなければ(S324:NO),次のジョブの印刷動作を開始するまで10秒間待機する(S325)。すなわち,先行ジョブと後続ジョブとでユーザが同じ場合は,両ジョブの境で印刷物を取り除く必要性が低い。そのため,先行ジョブと後続ジョブとでユーザが同じ場合には,ユーザが異なる場合と比較して,ユーザに印刷物を取り除く機会を与えるための待機時間を短くする。
【0066】
第3の形態では,現在印刷中の印刷ジョブの最終ページの印刷時に低排紙処理が実行される。換言すると,最終ページになるまで低排紙処理は実行されない。そのため,低排紙処理の実行によって印刷物を取り除く際には,印刷ジョブの印刷物全部を取り除くことができる。
【0067】
以上詳細に説明したように実施の形態のプリンタ100では,低排紙処理によって排紙ペースを下げることで,印刷物を取り除き易くする。さらに,この低排紙処理を,先行ジョブと後続ジョブとの境で実行する。このことから,低排紙処理によって取得機会を得る際には,印刷物は1つのジョブの印刷物全体になる。その結果,何回も印刷物を取り除く作業を行わなくて済む。また,1つのジョブの印刷物が複数の排紙先に散在することがないため,印刷物を回収しやすい。
【0068】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,プリンタに限らず,複写機,複合機,FAX装置等,印刷機能を備えるものであれば適用可能である。また,プロセス部50の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0069】
また,実施の形態では,ユーザからの実行指示(第1の形態),あるいはプリンタ100の判断(第2の形態)で,それぞれ低排紙処理を実行しているが,これらを組み合わせてもよい。例えば,ユーザからの実行指示があり,かつ実行条件が成立した場合に,低排紙処理を実行する構成であってもよい。また,例えば,ユーザからの実行指示がある,もしくは実行条件が成立した場合に,低排紙処理を実行する構成であってもよい。また,例えば,ユーザからの実行指示があったとしても,印刷残枚数が閾値以下の場合は,低排紙処理の実行を制限する構成であってもよい。
【0070】
また,第3の形態と,第1ないし第2の形態とを組み合わせてもよい。例えば,ユーザからの実行指示あるいは実行条件を満たした場合に,先行ジョブのユーザと後続ジョブのユーザとが同じか否かによって,ジョブ間での待機時間が異なる構成であってもよい。また,例えば,第3の形態に,印刷残枚数が閾値以下の場合は低排紙処理の実行を制限する構成(第2の形態のS222)を組み合わせてもよい。
【0071】
また,実施の形態では,低排紙処理で用紙搬送速度を落とす場合,現在印刷中のジョブ(先行ジョブ)の最終ページのみに対して低排紙処理を適用しているが,これに限るものではない。例えば,最終ページを含む所定枚数の連続ページに対して低排紙処理を適用してもよい。
【0072】
また,実施の形態では,低排紙処理で用紙搬送速度を落とす場合,現在印刷中のジョブ(先行ジョブ)の最終ページに対して低排紙処理を適用しているが,これに限るものではない。例えば,後続ジョブの先頭ページに対して低排紙処理を適用してもよい。また,先行ジョブの最終ページと後続ジョブの先頭ページとの両方で低排紙処理を行ってもよい。
【0073】
また,実施の形態の第1の形態では,取出ボタン421の押下を検知することで低排紙処理を実行する構成になっているが,これに限るものではない。例えば,人感センサ,ユーザ認証等によって装置の周辺にユーザが存在することを検知することで低排紙処理を実行してもよい。
【0074】
また,実施の形態では,プリンタ100が増設排紙部20を装着し,複数の排紙トレイを備えているが,排紙トレイが1つしかない印刷装置であっても本発明を適用できる。この場合,第2の形態において,実行条件として他のトレイについての判断は行わなくてもよい。
【0075】
また,実施の形態では,低排紙処理として一時停止する際,規定時間の経過を待って一時停止を取り消しているが,一時停止の取り消し条件はこれに限るものではない。例えば,一時停止の取り消しを指示する入力ボタンを設け,その入力ボタンの押下を契機に,一時停止を取り消してもよい。また,各排紙トレイに重量センサを配置し,排紙先となっている排紙トレイのセンサが印刷物が取り除かれたことを検知したことを契機に,一時停止を取り消してもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 本体部
20 増設排紙部
40 操作パネル
41 表示部
50 プロセス部
91 給紙カセット
93 排紙トレイ
100 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に印刷を行う印刷部と,
前記印刷部によって印刷された印刷物の排紙先である排紙部と,
現在印刷中の印刷ジョブである先行ジョブとその先行ジョブに後続する後続ジョブとの境で,前記排紙部への排紙能力を低下させる低排紙処理を実行する実行部と,
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷装置において,
前記低排紙処理の実行指令を検出する検出部を備え,
前記実行部は,前記検出部が前記実行指令を検出した場合に,前記低排紙処理を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する印刷装置において,
前記排紙部が複数あり,
前記実行部は,後続ジョブが先行ジョブと同じ排紙部を利用する場合に,前記低排紙処理を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記実行部は,後続ジョブが先行ジョブとユーザが異なる場合に,前記低排紙処理を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する印刷装置において,
低速印刷モードと高速印刷モードとがあり,
前記実行部は,前記高速印刷モードである場合に,前記低排紙処理を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記実行部は,未印刷のジョブの量が規定値以下である場合には,前記低排紙処理の実行を制限することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記低排紙処理の実行を契機に,前記低排紙処理が実行されていることをユーザに報知する報知手段を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記実行部は,所定時間が経過したことを契機に,前記低排紙処理の実行を取り消すことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載する印刷装置において,
前記低排紙処理は,用紙搬送速度を落とす処理と,用紙搬送を停止する処理と,用紙の搬送間隔を広げる処理と,の少なくとも1つを行うことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−25059(P2012−25059A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166721(P2010−166721)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】