説明

印刷装置

【課題】本発明は、印刷条件に適した印刷方法で印刷を行うことを目的とする。
【解決手段】複数の印刷物を連続媒体上に印刷する印刷物製造方法であって、印刷条件に基づいて、第1印刷モードと第2印刷モードのいずれかを選択し、前記第1印刷モードが選択された場合には、印刷領域に位置する前記連続媒体に複数の第1画像を印刷し、待機時間後に、前記第1画像上に複数の第2画像を印刷する動作と、前記連続媒体を搬送する動作と、を交互に繰り返し、前記第2印刷モードが選択された場合には、前記印刷領域のうちの第1領域に位置する前記連続媒体に前記第1画像を印刷するとともに、前記印刷領域のうちの前記第1領域よりも搬送方向の下流側にある第2領域に位置する前記連続媒体に前記第2画像を印刷する動作と、前記第1画像上に前記第2画像が印刷されるように、前記第1領域で印刷された前記第1画像を前記第2領域に搬送する動作と、を交互に繰り返す印刷物製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物製造方法、及び、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺状の媒体(連続媒体)に多数の印刷物を印刷する印刷装置として、印刷領域に位置する媒体に複数の画像を印刷する印刷動作と、印刷済みの媒体部分が印刷領域外に搬出され、未だ印刷されていない媒体部分が印刷領域に搬送される搬送動作と、を交互に繰り返す印刷装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−118136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
媒体上に異なる複数の画像を重ねた印刷物を製造したい場合がある。このような場合、先に印刷した画像を乾燥させた後に次の画像を印刷しないと、画像が滲んでしまう。このとき、印刷条件により画像の乾燥時間などが異なる。そのため、印刷条件によらずに同じ印刷方法を行ってしまうと、印刷処理時間が長くなってしまう場合がある。また、乾燥時間に限らず、印刷条件に適した印刷を行いたい場合がある。
本発明は、印刷条件に適した印刷方法で印刷を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、複数の印刷物を連続媒体上に印刷する印刷物製造方法であって、印刷条件に基づいて、第1印刷モードと第2印刷モードのいずれかを選択するステップと、前記第1印刷モードが選択された場合には、印刷領域に位置する前記連続媒体に複数の第1画像を印刷し、待機時間後に、前記第1画像上に複数の第2画像を印刷する動作と、前記連続媒体を搬送する動作と、を交互に繰り返し、前記第2印刷モードが選択された場合には、前記印刷領域のうちの第1領域に位置する前記連続媒体に前記第1画像を印刷するとともに、前記印刷領域のうちの前記第1領域よりも搬送方向の下流側にある第2領域に位置する前記連続媒体に前記第2画像を印刷する動作と、前記第1画像上に前記第2画像が印刷されるように、前記第1領域で印刷された前記第1画像を前記第2領域に搬送する動作と、を交互に繰り返すステップと、を有する印刷物製造方法である。
【0006】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】プリンタの全体構成のブロック図である。
【図2】プリンタの全体構成の概略図である。
【図3】印刷領域付近の説明図である。
【図4】本実施形態の印刷物の説明図である。
【図5】第1印刷モードの説明図である。
【図6】第2印刷モードの説明図である。
【図7】図7Aから図7Cは印刷データの説明図である。
【図8】図8Aから図8Cは乾燥時間と搬送時間の関係を示す図である。
【図9】印刷モードを選択するフローを示している。
【図10】単位領域あたりの最大液体吐出量の算出の様子を示す図である。
【図11】単位領域あたりの最大液体吐出量の算出の様子を示す図である。
【図12】乾燥時間と印刷モードを決定するためのテーブルである。
【図13】乾燥時間と印刷モードを決定するためのテーブルである。
【図14】乾燥時間と印刷モードを決定するためのテーブルである。
【図15】図15A及び図15Bは他の印刷物の例を示す図である。
【図16】図16Aは3つの画像を重ねた印刷物の例を示す図であり、図16Bは印刷データを示す図である。
【図17】図17A及び図17Bは他の印刷物の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0009】
即ち、複数の印刷物を連続媒体上に印刷する印刷物製造方法であって、印刷条件に基づいて、第1印刷モードと第2印刷モードのいずれかを選択するステップと、前記第1印刷モードが選択された場合には、印刷領域に位置する前記連続媒体に複数の第1画像を印刷し、待機時間後に、前記第1画像上に複数の第2画像を印刷する動作と、前記連続媒体を搬送する動作と、を交互に繰り返し、前記第2印刷モードが選択された場合には、前記印刷領域のうちの第1領域に位置する前記連続媒体に前記第1画像を印刷するとともに、前記印刷領域のうちの前記第1領域よりも搬送方向の下流側にある第2領域に位置する前記連続媒体に前記第2画像を印刷する動作と、前記第1画像上に前記第2画像が印刷されるように、前記第1領域で印刷された前記第1画像を前記第2領域に搬送する動作と、を交互に繰り返すステップと、を有する印刷物製造方法を実現すること。
このような印刷物製造方法によれば、適切な印刷モードにて印刷物を製造できる。例えば、印刷処理時間が短い方の印刷モードにて印刷物を製造できる。
【0010】
かかる印刷物製造方法であって、前記選択するステップにおいて、所定数の印刷物を印刷する処理時間が短くなる方の印刷モードを選択すること。
このような印刷物製造方法によれば、印刷処理時間を短縮できる。
【0011】
かかる印刷物製造方法であって、前記選択するステップにおいて、前記待機時間と前記搬送する動作にかかる時間とを比較して、所定数の印刷物を印刷する処理時間が短くなる方の印刷モードを選択すること。
このような印刷物製造方法によれば、印刷処理時間を短縮でき、印刷モードを選択する処理も容易となる。
【0012】
かかる印刷物製造方法であって、前記待機時間を、前記第1画像の単位領域あたりの最大液体吐出量に基づいて決定すること。
このような印刷物製造方法によれば、画像が滲むことなく、印刷処理時間を短縮できる。
【0013】
かかる印刷物製造方法であって、前記待機時間を、前記連続媒体の種類に基づいて決定すること。
このような印刷物製造方法によれば、画像が滲むことなく、印刷処理時間を短縮できる。
【0014】
かかる印刷物製造方法であって、前記待機時間を、前記第1画像を印刷するために使用される液体の種類に基づいて決定すること。
このような印刷物製造方法によれば、画像が滲むことなく、印刷処理時間を短縮できる。
【0015】
かかる印刷物製造方法であって、前記待機時間を、前記印刷領域において前記連続媒体を支持しつつ前記印刷物を乾燥させる乾燥手段の使用の有無に基づいて決定すること。
このような印刷物製造方法によれば、画像が滲むことなく、印刷処理時間を短縮できる。
【0016】
また、連続媒体に液体を吐出するヘッドと、前記連続媒体を印刷領域に搬送する搬送機構と、複数の印刷物を前記連続媒体に印刷することを制御する制御部と、を有し、前記制御部は、印刷条件に基づいて、前記印刷領域に位置する前記連続媒体に複数の第1画像を印刷し、待機時間後に、前記第1画像上に複数の第2画像を印刷する動作と、前記連続媒体を搬送する動作と、を交互に繰り返す第1印刷モードと、前記印刷領域のうちの第1領域に位置する前記連続媒体に前記第1画像を印刷するとともに、前記印刷領域のうちの前記第1領域よりも搬送方向の下流側にある第2領域に位置する前記連続媒体に前記第2画像を印刷する動作と、前記第1画像上に前記第2画像が印刷されるように、前記第1領域で印刷された前記第1画像を前記第2領域に搬送する動作と、を交互に繰り返す第2印刷モードと、のいずれかを選択することを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、適切な印刷モードにて印刷物を印刷できる。例えば、印刷処理時間が短い方の印刷モードにて印刷物を印刷できる。
【0017】
===プリンタについて===
図1は、プリンタ1の全体構成のブロック図である。また、図2は、プリンタ1の全体構成の概略図である。図3は、印刷領域付近の説明図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
【0018】
プリンタ1は、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、ヒータユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、ヒータユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0019】
搬送ユニット10(搬送機構)は、ロール状の媒体(連続媒体に相当、例えば、ロール紙、ロール状シール用紙など)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送する。この搬送ユニット10は、供給機構11と、搬送ローラ12A〜12Fと、巻取機構13とを有する。搬送ローラ12A〜12Bは、供給機構11から供給される媒体を印刷領域まで搬送し、印刷領域で印刷された媒体を巻取機構13まで搬送する。コントローラ60が不図示の搬送モータを制御することによって、搬送ローラ12A〜12Fの回転量が制御され、媒体の搬送量が制御される。
【0020】
キャリッジユニット20は、ヘッドを移動方向に移動させるものであり、所定の方向(移動方向)に移動するキャリッジ21と、キャリッジ21を移動方向に案内するガイド22とを有する。コントローラ60が不図示のキャリッジモータを制御することによって、キャリッジ21の移動が制御される。なお、本実施形態のプリンタでは、キャリッジ21の移動方向は、搬送ユニット10の媒体の搬送方向と同じ方向である。
【0021】
ヘッドユニット30は、紙にインク(液体)を吐出するヘッド31を有する。ヘッド31はキャリッジ21に搭載されているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。ヘッド31の下面には、媒体幅方向に沿ってノズル列が設けられている。このノズル列は、媒体の幅に相当する長さに亘って設けられている。ヘッド31が移動方向に移動中にインクを吐出することによって、印刷領域で媒体が印刷される。
【0022】
不図示であるが、ヘッド31の下面には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどのカラーインクを吐出するノズル列が設けられている。更に、ヘッド31の下面には、白インクを吐出するノズル列、定着剤を吐出するノズル列、及び、コーティング剤を吐出するノズル列なども設けられている。
【0023】
ヒータユニット40は、ホットプラテン41と、乾燥機構42とを有する。ホットプラテン41は、印刷領域において媒体を支持するとともに、ヒータ(乾燥手段に相当)を内蔵しており、印刷領域上の媒体を加熱することによって、印刷領域上で印刷画像の乾燥を促進させる。乾燥機構42は、印刷領域よりも下流側に設けられており、印刷領域で印刷された媒体を加熱することによって、印刷領域外で印刷物の乾燥を促進させる。乾燥機構42の最大加熱範囲は、印刷領域に相当する範囲以上である。但し、乾燥機構42の加熱範囲は、コントローラ60によって切り替え可能であり、例えば、3個の領域(例えば図3の領域A〜領域C)に相当する範囲だけで印刷物を加熱することができる。印刷領域(図3の6個の領域)に相当する範囲が加熱される場合と比べて、3個の領域に相当する範囲だけが加熱される場合の方が、乾燥機構42の消費電力は小さい。なお、ホットプラテン41及び乾燥機構42は、媒体上の印刷画像や印刷物を乾燥させることができる装置であれば良く、例えば温風、赤外線、UV、マイクロ波などの電磁波を媒体に付与するような装置であっても良い。
【0024】
検出器群50には、例えばマーク検出センサ51が含まれる。マーク検出センサ51は媒体に印刷されたマークを検出するのに用いられ、この検出結果に基づいて搬送ユニット10による媒体の搬送量が制御される。なお、検出器群50は、他にも、搬送ローラ12A〜12Fの回転量を検出するためのエンコーダや、キャリッジ21の移動方向の位置を検出するためのリニア式エンコーダなども備えている。
【0025】
コントローラ60は、プリンタの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。また、メモリ63には、印刷対象となる画像データが格納される。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御し、後述する印刷処理を実行させる。また、CPU62は、メモリ63に格納された画像データに従ってヘッド31の各ノズル(不図示)からインク等を吐出させることによって、画像データの示す画像を媒体上に印刷する。
【0026】
印刷処理が実行されると、プリンタ1は、搬送ユニット10によって媒体を搬送方向に搬送する搬送動作と、キャリッジユニット20によってヘッド31を移動させつつ画像データに基づいてヘッド31からインクを吐出して媒体に画像を印刷する印刷動作とを交互に繰り返し、媒体に印刷物を等間隔に印刷する。
【0027】
また、以下の説明では、図3に示すように、印刷領域を6個の領域に分けて各領域に画像が印刷されるとする。6個の領域は、搬送方向上流側の領域から順に、領域A、領域B、領域C、領域D、領域E、領域Fである(図3参照)。また、各領域に印刷される印刷物は、複数の画像が重ねて印刷されるとする。なお、印刷領域の分割数は6個に限られるものではない。また、印刷領域の範囲は印刷物の大きさに応じて可変であり、必ずしもプリンタ1の最大印刷可能範囲(キャリッジ21の移動可能範囲)である必要は無い。
【0028】
===印刷モードについて===
図4は、本実施形態の印刷物の説明図である。本実施形態では、複数の画像が重ねて印刷された印刷物を製造するとする。媒体上に最初に印刷される画像は、白インクを塗布することによって形成される矩形の画像(以下「白画像」、第1画像に相当)である。また、白画像の上に重ねて印刷される画像は、「ABC」という文字画像(以下、「画像ABC」、第2画像に相当)である。即ち、この印刷物は、媒体上に白画像の第1層と、画像ABCの第2層とを重ねて形成することによって得られる。
【0029】
図中の媒体は、一方が被印刷面であり他方が粘着面であるシール部材(基材)と、シール部材の粘着面を覆う剥離部材とから構成されている。シール部材は透明なフィルムから構成されている。但し、シール部材は透明である必要は無く、半透明な部材でも良いし、不透明な部材でも良い。また、媒体は、シール用紙でなくても良く、粘着面の無い透明フィルムであっても良いし、紙でも良い。
【0030】
なお、複数の画像を重ねて印刷する印刷物はこれに限らず、文字画像と図形画像を重ねてもよいし、透明なフィルムなどに背景画像として印刷される画像は白色でなくともよい。また、背景画像である白画像は矩形に限られない。その他、インク吸収性や光沢性、耐水性を向上させる加工を行うために下地画像やコーティング画像を形成してもよく、UVインクにより形成されるUVインク画像でもあってもよい。
【0031】
このように複数の画像を重ねて印刷する場合に、もし最初に印刷された白画像が乾燥しないうちに次の画像ABCを印刷してしまったら、画像ABCが滲んでしまい、画質の悪い印刷物が製造されてしまう。そのため、本実施形態では、白画像を印刷してからその白画像上に画像ABCが印刷されるまでの間に、白画像が乾燥するための時間を設ける。
【0032】
また、本実施形態では、プリンタ1が複数種類の印刷モード(第1印刷モード・第2印刷モード)にて印刷を行うとする。そして、コンピュータ110が、コンピュータ110にインストールされたプリンタドライバに従って、「印刷条件」に基づいて、第1印刷モードと第2印刷モードのいずれかを選択する。まず、第1印刷モードと第2印刷モードについて説明する。
【0033】
<第1印刷モード>
図5は、第1印刷モードの説明図である。第1印刷モードでは、まず、1回目の印刷動作にて、プリンタ1は、ヘッド31を移動方向に移動させながら、6個の「白画像」を印刷領域の領域A〜F(の媒体)にそれぞれ印刷する。次に、プリンタ1は、媒体上に印刷された白画像が乾燥するまで所定の時間待機する(待機動作)。その後、プリンタ1は、2回目の印刷動作にて、ヘッド31を移動方向に移動させながら、6個の「画像ABC」を領域A〜Fにそれぞれ印刷する。その結果、画像ABCは白画像の上に重ねて印刷され、図4に示す印刷物が媒体上に6個印刷される。なお、2回目の印刷動作時に、領域Bに搬送動作に使用するマークも印刷される。
【0034】
2回目の印刷動作の後、プリンタ1は、6個の印刷物の長さに相当する搬送量で媒体を搬送する。領域Bに印刷されたマークをセンサが検出するまで媒体を搬送すれば、6個の印刷物の長さに相当する搬送量の搬送動作が行われるとする。この「搬送動作」によって、未だ画像の印刷されていない媒体が印刷領域に搬送され、再び、印刷動作にて画像を印刷する。
【0035】
以上をまとめると、第1印刷モードでは、プリンタ1は、奇数回目の印刷動作(例:1回目の印刷動作)にて、6個の白画像(第1画像)を印刷領域の各領域A〜Fにそれぞれ印刷し、待機動作にて白画像を乾燥させ(即ち、待機時間後に)、偶数回目の印刷動作(例:2回目の印刷動作)にて、6個の画像ABC(第2画像)を印刷領域の各領域A〜Fにそれぞれ印刷する。その結果、図4に示すような印刷物が媒体上に6個印刷される。ここで、奇数回目の印刷動作と待機動作と偶数回目の印刷動作とを合わせて「画像形成動作」とする。そして、プリンタ1は、「搬送動作(搬送する動作に相当)」として6個の印刷物の長さに相当する搬送量で媒体を搬送し、未だ印刷されていない媒体部分が印刷領域に搬送され、その媒体部分に対して「画像形成動作」を行う。このような「画像形成動作」と「搬送動作」を交互に繰り返すことによって、1回の画像形成動作のたびに6個の印刷物が完成し、媒体上に等間隔に多数の印刷物が印刷(製造)される。
【0036】
<第2印刷モード>
図6は、第2印刷モードの説明図である。第2印刷モードでは、まず、1回目の「印刷動作」にて、プリンタ1は、ヘッド31を移動方向に移動させながら、印刷領域の領域A〜領域Cにそれぞれ「白画像」を印刷し、領域Aから領域Cよりも搬送方向の下流側の領域D〜領域Fにそれぞれ「画像ABC」を印刷する。なお、領域Eに搬送動作に使用されるマークが印刷される。
【0037】
1回目の印刷動作の後、プリンタ1は、「搬送動作」として、3個の印刷物の長さに相当する搬送量で媒体を搬送する。前述の1回目の印刷動作の際に領域Eに印刷されたマークをセンサが検出するまで媒体を搬送すれば、3個の印刷物の長さに相当する搬送量の搬送動作が行われるとする。この搬送動作によって、1回目の印刷動作にて領域Aから領域Cに印刷された白画像が領域Dから領域Fに搬送され、未だ画像が印刷されていない媒体部分が領域Aから領域Cに搬送される。
【0038】
そして、搬送動作後の2回目の印刷動作においても、プリンタ1は、1回目の印刷動作と同様に、領域A〜領域Cの媒体にそれぞれ白画像を印刷し、領域D〜領域Fの媒体にそれぞれ画像ABCを印刷し、領域Eにマークを印刷する。その結果、2回目の印刷動作によって、領域D〜領域Fでは、1回目の印刷動作で印刷された白画像の上に画像ABCが印刷される。その結果、印刷物(図4)が3個完成する。第2印刷モードでは、プリンタ1が「印刷動作」と「搬送動作」を交互に繰り返す。
【0039】
ところで、第1印刷モードでは、白画像を印刷し、白画像を乾燥させる時間を設けた後に、画像ABCを重ねて印刷する。これに対して、第2印刷モードでは、領域Aから領域Cに白画像を印刷した後に、その白画像を領域Dから領域Fに搬送する間に、白画像を乾燥させることができる。即ち、第2印刷モードでは、第1印刷モードのように白画像の乾燥させるためだけの時間(待機動作)を設けなくとも、画像が滲むことを防止できる。つまり、第2印刷モードでは、搬送動作が白画像を乾燥させるための待機動作も兼ねている。但し、3個の印刷物の長さに相当する搬送量の搬送時間が白画像の乾燥時間以上であるとする。
【0040】
以上をまとめると、第2印刷モードでは、プリンタ1は、「印刷動作」にて、3個の白画像(第1画像)を領域A〜領域C(第1領域)の媒体にそれぞれ印刷し、3個の画像ABC(第2画像)を領域D〜領域F(第2領域)の媒体にそれぞれ印刷する。そして、プリンタ1は、「搬送動作(搬送する動作に相当)」にて、3個の印刷物の長さに相当する搬送量で媒体を搬送する。このような「印刷動作」と「搬送動作」を交互に繰り返すことによって、1回の印刷動作のたびに3個の印刷物が完成し、媒体上に等間隔に多数の印刷物が印刷(製造)される。
【0041】
なお、プリンタ1は、媒体上に印刷された印刷物を印刷領域外に搬送し、図2に示す乾燥機構42によって印刷物を乾燥させた後に、巻取機構13によって媒体を巻き取る。そうすることで、白画像上に印刷されたABC画像が乾燥した状態で巻き取られるため、媒体を汚してしまうことを防止できる。第1印刷モードでは1回の搬送動作にて6個の印刷物が印刷領域外に搬送され、第2印刷モードでは1回の搬送動作にて3個の印刷物が印刷領域外に搬送される。このため、第1印刷モードでは、乾燥機構42は6個の印刷物の範囲に亘って媒体を加熱する必要があるが、第2印刷モードでは、乾燥機構42は3個の印刷物の範囲に亘って媒体を加熱すれば良いので、第2印刷モードの方が第1印刷モードよりも省電力化を図れる。
【0042】
<各印刷モードの印刷データについて>
図7A及び図7Bは、第1印刷モードにて印刷物を印刷するための印刷データの説明図である。図7Aが奇数回目の印刷動作のための印刷データであり、図7Bが偶数回目の印刷動作のための印刷データである。奇数回目の印刷動作のための印刷データは、領域A〜領域Fに印刷するための6個の白画像を有する。また、偶数回目の印刷動作のための印刷データは、領域A〜領域Fに印刷するための6個の画像ABCを有し、領域Bに印刷するためのマークを有する。第1印刷モードでは、奇数回目の印刷動作と偶数回目の印刷動作とでは、印刷すべき画像が異なるため、コンピュータ110は、印刷データを作成した後に、メモリに2種類の印刷データをそれぞれ記憶させる必要がある。
【0043】
図7Cは、第2印刷モードにて印刷物を印刷するための印刷データの説明図である。第2印刷モードの印刷データは、領域A〜領域Cに印刷するための3個の白画像と、領域D〜領域Fに印刷するための3個の画像ABCと、領域Eに印刷するためのマークを有する。第2印刷モードでは、いずれの印刷動作においても、印刷すべき画像が同じであるため、コンピュータ110はメモリに1種類の印刷データを記憶するだけでよい。そのため、第2印刷モードは第1印刷モードに比べて、メモリの使用容量を小さくできる。
【0044】
<各印刷モードの印刷処理時間について>
次に、各印刷モードにおける印刷処理時間について説明する。前述のように、第2印刷モードにおける1回の搬送動作の媒体の搬送量(3個の印刷物に相当する媒体長さ)は、第1印刷モードにおける1回の搬送動作の媒体の搬送量(6個の印刷物に相当する媒体長さ)よりも短い。そのため、以下の説明では、第2印刷モードの搬送時間tcは第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短いとする(tc<Tc)。また、白画像を印刷してから画像ABCを印刷するまでに必要な乾燥時間Td(待機動作の時間)は、第1印刷モードも第2印刷モードも同じ時間であるとする。また、第1印刷モード(奇数回と偶数回の両方)も第2印刷モードも、1回の印刷動作で6個の画像を印刷するため、1回の印刷動作に必要な時間Tpは等しいとする。
【0045】
図8Aは、乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短い場合(Td<Tc)の印刷処理時間の説明図である。図は6個の印刷物を製造するために必要な印刷処理時間を示している。また、第2印刷モードの搬送時間tcは、第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短く、乾燥時間Tdとほぼ同程度とする。そうすると、第1印刷モードの印刷処理時間は2回の印刷動作2Tpと1回の乾燥時間Tdと1回の搬送時間Tcを合計した時間(2Tp+Td+Tc)となる。第2印刷モードの印刷処理時間は2回の印刷動作2Tpと2回の乾燥時間2Tdを合計した時間(2Tp+2Td)となる。この図8Aでは、乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短いとしているため、第1印刷モードの搬送時間Tcと乾燥時間Tdの差分だけ、第2印刷モードの方が第1印刷モードよりも印刷処理時間を短くすることができ、短時間に多くの印刷物を印刷できる。つまり、この図8Aでは、第2印刷モードの搬送時間tcと乾燥時間Tdを同程度とし、第2印刷モードでは、搬送動作中に白画像を乾燥させることができ、第1印刷モードのように白画像を乾燥させるためだけの時間がなくなるため、印刷処理時間を短くできる。
【0046】
ここで、乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短い場合であっても、第1印刷モードの搬送時間Tcと第2印刷モードの搬送時間tcの差が小さく、第2印刷モードの搬送時間tcが乾燥時間Tdよりも長いと(不図示)、第1印刷モードの方が第2印刷モードよりも印刷処理時間が短くなる場合がある。このように乾燥時間や搬送時間の関係により各印刷モードの印刷処理時間が異なってくる。但し、第2印刷モードの搬送時間tcが第1印刷モードの搬送時間Tcの半分程度であり、乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短い場合には、第2印刷モードの方が第1印刷モードよりも印刷処理時間が短くなる。そのため、以下の説明では、第2印刷モードの搬送時間tcは第1印刷モードの搬送時間Tcの半分程度とする。
【0047】
図8Bは、乾燥時間Tdと第1印刷モードの搬送時間Tcが同じ場合(Td=Tc)の印刷処理時間の説明図である。この場合、図示するように、第1印刷モードの印刷処理時間と第2印刷モードの印刷処理時間は等しい。そのため、どちらの印刷モードにて印刷物を印刷しても、印刷処理時間は同じである。
【0048】
図8Cは、乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tcよりも長い場合(Td>Tc)の印刷処理時間の説明図である。この場合、第1印刷モードは、搬送時間Tcよりも長い乾燥時間Tdを1回分だけ必要とするのに対して、第2印刷モードは、搬送時間tcよりも長い乾燥時間Tdを2回分必要とする。このように、乾燥時間Tdが第1印刷モードTcよりも長いと、第2印刷モードでは、搬送動作中だけでは白画像を乾燥させることができず、搬送動作後に白画像を乾燥させるためだけの時間を長く設けなければならない。その結果、乾燥時間Tdと第1印刷モードの搬送時間Tcの差分だけ、第2印刷モードの方が第1印刷モードよりも印刷処理時間が長くなってしまう。
【0049】
以上をまとめると、1回の印刷動作にて印刷される画像数は、第1印刷モードも第2印刷モードも等しいため、1回の印刷動作における印刷時間は第1印刷モードも第2印刷モードも同程度であり、先に印刷する画像(白画像)の乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcの関係によって、印刷処理時間が短くなり印刷モードが異なる。そのため、乾燥時間Tdや搬送時間Tc,tcに関係なく、どちらか一方の印刷モード(印刷方法)にて印刷すると、印刷処理時間が長くなってしまう虞がある。
そこで、本実施形態では、複数の画像が重なった印刷物を印刷する際の印刷処理時間を出来る限り短縮することを目的とする。
【0050】
===印刷モードの選択方法について===
<印刷モードの選択方法の概略について>
先に印刷する画像の乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcの関係によって、印刷処理時間が短い印刷モード(第1印刷モード又は第2印刷モード)が異なる。そこで、本実施形態では、コンピュータ110が、印刷データを作成するプリンタドライバに従って、乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcに基づいて、第1印刷モードと第2印刷モードのうちの印刷処理時間が短い方の印刷モードを選択する。乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcは印刷する印刷物の印刷条件によって決定するため、コンピュータ110は印刷物の「印刷条件」に基づいて、第1印刷モードと第2印刷モードのいずれかを選択するとも言える。そして、コンピュータ110が選択した印刷モードにてプリンタ1により印刷物が製造される。そうすることで、複数の画像が重なった印刷物を印刷する際の印刷処理時間を出来る限り短縮できる。なお、コンピュータ110が印刷モードを選択するに限らない。本実施形態のようにコンピュータとプリンタを接続した印刷システムではなく、プリンタ単体にて印刷を行う場合には、プリンタ1のコントローラ60(制御部)が印刷モードを選択してもよい。
【0051】
例えば、図4に示すような2つの画像を重ねた印刷物を印刷するとし、図8に示すような乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcの関係が成り立つとする。この場合、先に印刷する画像の乾燥時間Tdの方が第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短ければ、コンピュータ110に第1印刷モードを選択させる(図8A)。逆に、第1印刷モードの搬送時間Tcの方が乾燥時間Tdよりも短ければ、コンピュータ110に第2印刷モードを選択させる(図8C)。そうすることで、プリンタ1は印刷処理時間が短くなる方の印刷モードにて印刷物を印刷し、全体の印刷処理時間を短縮できる。
【0052】
なお、乾燥時間Tdと第1印刷モードの搬送時間Tcが等しい場合には、コンピュータ110はどちらを選択しても良いとする。例えば、図7に示すように、第1印刷モードは2種類の画像データをメモリに記憶させなければいけないのに対して、第2印刷モードは1種類の画像データをメモリに記憶させればよいので、第2印刷モードを選択するとしてもよい。また、ホットプラテン41や印刷後の乾燥機構42を使用する際に、第1印刷モードは6個の白画像を乾燥させるためのヒータ容量が必要となるが、第2印刷モードは3個の白画像を乾燥させるためのヒータ容量で画像の滲みを防止できるので、第2印刷モードを選択するとしてもよい。
【0053】
このように、図8のような乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcの関係が成り立つことをコンピュータ110が予め記憶していれば、コンピュータ110は、先に印刷する画像の乾燥時間Tdと第1印刷モードの搬送時間Tcを比較することで、印刷モードを選択できる。また、これに限らず、例えば、第1印刷モードと第2印刷モードとにおいて、1回の印刷動作に要する時間Tpが異なる場合などは、コンピュータ110が、各印刷モードの印刷時間や搬送時間、各画像の乾燥時間に基づいて、第1印刷モードの印刷処理時間と第2印刷モードの印刷処理時間を実際に算出して比較すればよい。そうすることで、確実に印刷処理時間が短い方の印刷モードを選択できる。
【0054】
以上をまとめると、複数の画像(第1画像と第2画像)を重ねて印刷する印刷物を製造する際に、本実施形態のコンピュータ110(制御部に相当)は印刷条件に基づいて第1印刷モードと第2印刷モードの何れかを選択し、選択した印刷モードにて媒体上(連続媒体上)に複数の印刷物を印刷する。そして、所定数の印刷物を印刷するために要する印刷処理時間が短くなる方の印刷モードを選択する。そうすることで、第1印刷モードにて印刷される場合には待機動作中にて先に印刷される画像が乾燥し、第2印刷モードにて印刷される場合には搬送動作中に先に印刷される画像が乾燥するため、画像が滲むことを防止でき、且つ、印刷処理時間を短縮できる。
【0055】
そして、印刷処理時間に影響する処理は、図8に示すように、第1印刷モード及び第2印刷モードの1回の印刷動作における印刷時間Tpと、先に印刷する画像(白画像)の乾燥時間Tdと、第1印刷モード及び第2印刷モードの1回の搬送動作における搬送時間Tdである。そのため、これらの時間を印刷モードに合わせて合計し、第1印刷モードにて印刷する場合の印刷処理時間と第2印刷モードにて印刷する場合の印刷処理時間を算出して、比較することで、印刷処理時間が短くなる方の印刷モードを選択できる。
【0056】
また、どちらの印刷モードにおいても、同じ画像数(ここでは6個)、即ち、同じ印刷領域(領域Aから領域F)に亘って印刷するため、プリンタによっては、第1印刷モードの1回の印刷動作における印刷時間Tpと第2印刷モードの1回の印刷動作における印刷時間Tpが等しくなる。このようなプリンタであれば、図8に示すように、先に印刷する画像の乾燥時間Td(待機時間)と搬送時間Tc,tcとを比較することで、すなわち、乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcに基づいて、印刷処理時間が短くなる方の印刷モードを選択できる。そのために、乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcの比較した結果、どちらの印刷モードを選択すればよいのかをコンピュータ110のメモリ等に記憶させておけば、コンピュータ110は印刷モードを選択する処理時間を短縮できる。
【0057】
また、前述の実施例(図8)では、乾燥時間Tdと第1印刷モードの搬送時間Tcの比較により、印刷処理時間が短くなる方の印刷モードを選択できるとし、第2印刷モードの搬送時間tcによらずに印刷モードが決定できる。そのため、印刷モードを選択する処理時間を更に短縮できる。但し、図8Aが成り立つには、第1印刷モードの搬送時間Tcが第2印刷モードの搬送時間tcよりも短い(半分程度)という条件が必要である。その条件により、乾燥時間Tdと第2印刷モードの搬送時間tcが同程度となり、第2印刷モードの印刷処理時間の方が短くなる。第1印刷モードの搬送時間Tcと第2印刷モードの搬送時間tcの関係は、重ねて印刷する画像数(ここでは2個)やプリンタの機構によって、変わってくる。そこで、重ねて印刷する画像数やプリンタの機構などの条件に合わせて、図8に示すような関係を予め導き出しコンピュータ110に記憶させておけば、乾燥時間Tdと第1印刷モードの搬送時間Tcの比較によって印刷モードを選択でき、印刷モードを選択する処理時間を更に短縮できる。
【0058】
以下の選択例1から選択例5において具体的な印刷モードの選択方法を示す。選択例1から選択例5では説明のため、2つの画像(白画像とABC画像)を重ねた印刷物を印刷するとし、図8に示すような乾燥時間Tdと搬送時間Tc,tcの関係が成り立つとする。
【0059】
<印刷モードの選択例1>
図9は、コンピュータ110が印刷モードを選択するフローを示している。まず、コンピュータ110は、各アプリケーションソフトから印刷すべき印刷物の画像データを受信すると(S001)、その印刷物は画像を重ねて印刷するのか否かを調べる(S002)。画像を重ねて印刷しない場合には(S002→NO)、印刷領域の媒体に等間隔に画像を印刷する動作と搬送動作が交互に繰り返されるように印刷データを作成する(不図示)。一方、画像を重ねて印刷する場合には、コンピュータ110は、第1印刷モードと第2印刷モードのいずれかの印刷モードを選択する。
【0060】
ここで、各印刷モードの搬送時間Tc,tcは、1回の搬送動作における媒体の搬送量によって決定する。そのため、図4に示す印刷物のように、2つの画像を重ねた印刷物を印刷する場合には、第1印刷モードの搬送量は6個の印刷物の長さに相当する搬送量となり、第2印刷モードの搬送量は3個の印刷物の長さに相当する搬送量となる。そして、この搬送量に応じて搬送時間Tc,tcが決定する。つまり、印刷物を形成する際に重ねる画像数や画像の大きさによって搬送量が決定するため、搬送時間Tc,tcは、製造する印刷物によって自ずと決定する。なお、媒体搬送機構の搬送速度によっても搬送時間が変わってくるが、搬送速度が一定であれば、製造する印刷物によって決定される。
【0061】
一方、乾燥時間Tdは種々の印刷条件によって変わる。そのため、コンピュータ110は印刷データを作成する際に、乾燥時間Tdに影響する種々の印刷条件のうちの何れか、又は、全ての印刷条件に基づいて、乾燥時間Tdを決定する。その結果、コンピュータ110は、先に印刷する画像の乾燥時間Tdと第1印刷モードの搬送時間Tcを比較することができ、乾燥時間Tdと搬送時間Tcの関係(図8)により、印刷処理時間が短い方の印刷モードを選択できる。
【0062】
通常、媒体に吐出される液体量が多いほど乾燥に必要な時間が長くなる。そこで、この選択例1では、コンピュータ110は媒体に吐出される液体量が多いほど乾燥時間Tdを長く設定する。つまり、選択例1では、「媒体に吐出される液体量(画像の濃度)」に基づいて、乾燥時間Tdが決定され、印刷処理時間が短い方の印刷モードが選択される。そのため、図9のフローにて示すように、画像を重ねて印刷する場合には(S002→YES)、先に印刷する画像の単位領域あたりの最大液体吐出量を算出する(S004)。
【0063】
図10は、単位領域あたりの最大液体吐出量の算出の様子を示す図である。本実施形態では、白画像が先に印刷する画像データであるため、白画像の単位領域あたりの最大液体吐出量を算出する。図10に示すように、まず、白画像の画像データを複数の単位領域(例えば16画素×16画素)に分割する。図中の小さいマス目が単位領域に相当する。そして、各単位領域に対して吐出される液体量を算出する。図10では、全く白インクが吐出されない単位領域や、一部の領域にのみ白インクが吐出される単位領域や、全体に白インクが吐出される単位領域がある。そして、各単位領域への液体吐出量のうちの最大液体吐出量を決定する。その後、コンピュータ110は、単位領域あたりの最大液体吐出量に基づいて、先に印刷する画像の乾燥時間Tdを決定する(S005)。
【0064】
乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tc以下である場合には(S006→YES)、図8に示す乾燥時間Tdと搬送時間Tcの関係により、第2印刷モードを選択すればよいと判断でき(S008)、コンピュータ110は第2印刷モードにて印刷するための印刷データを作成する。逆に、乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tcよりも長い場合には(S006→NO)、第1印刷モードを選択すればよいと判断でき(S007)、コンピュータ110は第1印刷モードにて印刷するための印刷データを作成する。
【0065】
つまり、この選択例1では、コンピュータ110は、先に印刷される画像の単位領域当たりの最大液体吐出量に基づいて、乾燥時間Tdの長さを設定し、乾燥時間Tdと第1印刷モードの搬送時間Tcとを比較することで、印刷モードを選択する。そうすることで、画像が滲むことなく印刷処理時間を短縮できる。
【0066】
なお、単位領域当たりの液体吐出量は、例えば、白画像の画像データ全体の白インク吐出量でも良いが、図10に示すように、白画像の画像データを小さい範囲に分割した単位領域を設定し、その小さい範囲の白インク吐出量に基づいて、乾燥時間および印刷モードを選択することが好ましい。なぜならば、ABC画像の背景となる白画像であれば、画像全体に打ち込まれる白インク量が均一であるが、ある一部の領域に局所的に液体が打ち込まれる画像もあるからである。画像データ全体の液体吐出量が等しくとも、全体的に均一に液体が吐出される画像と局所的に液体が吐出される画像とでは、局所的に液体が吐出される画像の方が、画像が乾燥するまでに長い時間を要する。そのため、画像データ全体の液体吐出量にて乾燥時間を判断しようとすると、局所的に液体が吐出される画像が未だ乾燥しないうちに次の画像が印刷されてしまったり、均一に液体が吐出される画像の乾燥時間を不必要に長くしてしまったりする虞がある。そのため、コンピュータ110が、画像データよりも小さい単位領域の液体吐出量に基づいて乾燥時間を判断することで、画像の滲みを防止し、乾燥時間を出来る限り短縮できる。
【0067】
図11は、白画像とABC画像の一部分が重なる印刷物において、単位領域あたりの最大液体吐出量を算出する様子を示す図である。図11に示す印刷物では、画像ABCのうちの文字「A」だけが白画像上に印刷される。このような場合、白画像の画像データを構成する各単位領域の液体吐出量を全て算出する必要はない。図中の斜線の単位領域にて示すように、白画像とABC画像が重ねて印刷される単位領域の液体吐出量を算出すればよい。また、白画像とABC画像が重ねて印刷される単位領域だけでなく、その周辺の単位領域の液体吐出量を算出してもよい。そうすることで、単位領域あたりの液体吐出量の算出時間を短縮でき、印刷モードの決定時間も短縮できる。また、例えば、画像が重ねて印刷されない領域の液体吐出量は多いが、画像が重ねて印刷される領域の液体吐出量が少ない場合には、乾燥時間を短く設定できる。この場合、次の画像を印刷する際に、次の画像が重ねて印刷されない先の画像の領域がまだ乾燥していなくとも、重ねて印刷される画像が滲んでしまうことが無いため問題ないといえる。
【0068】
<印刷モードの選択例2>
図12は、印刷物が印刷される媒体の種類に基づいて、乾燥時間Tdと印刷モードを決定するためのテーブルである。媒体の種類によって、媒体上に着弾した液体(インク)を吸収し易い媒体と、媒体上に着弾した液体を吸収し難い媒体とがある。液体を吸収し難い媒体では、液体が媒体に浸透せずに、乾燥時間が長くなる。つまり、媒体の種類は乾燥時間Tdに影響するため、この選択例2では、コンピュータ110は「媒体の種類」に基づいて、乾燥時間Tdを設定し、印刷モードを選択する。本実施形態のプリンタ1は、例えば、7種類の媒体(媒体Aから媒体G)に画像を印刷可能とする。媒体は、前述のような透明のフィルムや、上質紙、アート紙、ミラーコート紙、ホイル紙、クラフト紙、和紙、ユポ紙・布などが挙げられる。
【0069】
プリンタ1が印刷可能な媒体A〜媒体Gを、比較的に液体吸収性の悪い媒体A〜Cと、比較的に液体の吸収性の良い媒体D〜Gに分ける。そして、媒体A〜媒体Cに印刷物を印刷する場合には、第1印刷モードの搬送時間Tcよりも長い乾燥時間Td1を必要とする。その結果、第2印刷モードよりも第1印刷モードにて印刷する方が、印刷処理時間が短くなるとする(図8C)。一方、媒体D〜媒体Gに印刷物を印刷する場合には、第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短い乾燥時間Td2を必要とする。その結果、第1印刷モードよりも第2印刷モードにて印刷する方が、印刷処理時間が短くなるとする(図8A)。即ち、「媒体の種類」に基づいて乾燥時間Tdが決定する。
【0070】
そして、この選択例2では、コンピュータ110のメモリに図12に示すようなテーブルを記憶させる。コンピュータ110は、画像データを受信すると、前述の選択例1と同様に、画像を重ねた印刷物を印刷するか否かを判断する。そして、画像を重ねた印刷物を印刷する場合には、コンピュータ110は、画像データの中からユーザーに指示された媒体の種類を検出し、その媒体の種類と図12に示すテーブルを照合する。例えば、画像データの示す媒体の種類が「媒体B」であれば、コンピュータ110は、乾燥時間Tdを乾燥時間Td1に設定し、第1印刷モードにて印刷することを選択する。また、画像データの示す媒体の種類が「媒体F」であれば、コンピュータ110は、乾燥時間Tdを乾燥時間Td2に設定し、第2印刷モードにて印刷することを選択する。そして、選択した印刷モードにて印刷するための印刷データを作成する。
【0071】
このように、媒体の種類に応じて、先に印刷する画像が乾燥するために必要な時間が異なってくるため、媒体の種類に基づいて、乾燥時間Tdを設定し、印刷モードを選択することで、画像が滲むことなく印刷処理時間を短縮できる。なお、図12のテーブルでは、媒体に応じて2種類の乾燥時間Td1,Td2に設定しているが、これに限らず、多段階的に乾燥時間Tdを設定し、その乾燥時間Tdに基づいて、印刷モードを選択してもよい。
【0072】
<印刷モードの選択例3>
図13は、印刷物を印刷する液体の種類に基づいて、乾燥時間Tdと印刷モードを決定するためのテーブルである。液体の種類によって、媒体に浸透しやすい液体と、媒体に浸透し難い液体とがある。媒体に浸透しやすい液体は乾燥し易く、乾燥に要する時間が短くなり、媒体に浸透し難い液体は乾燥し難く、乾燥に要する時間が長くなる。媒体に浸透しやすい液体とは、例えば、浸透剤を多く含む液体(インク)である。つまり、液体の種類が乾燥時間Tdに影響するため、この選択例3では、コンピュータ110は「液体の種類」に基づいて、乾燥時間Tdを設定し、印刷モードを選択する。本実施形態のプリンタ1は、例えば、6種類の媒体(液体Aから媒体F)を用いて画像を形成するとする。液体の種類としては、画像を印刷するための染料インクや顔料インク、UV照射するUVインクや、定着材などが挙げられる。
【0073】
プリンタ1が印刷可能な液体A〜液体Fを、比較的に媒体に浸透し難い液体A〜液体Cと、比較的に媒体に浸透し易い液体D〜液体Fに分ける。そして、液体A〜液体Cにて印刷物を印刷する場合には、第1印刷モードの搬送時間Tcよりも長い乾燥時間Td1を必要とする。その結果、第2印刷モードよりも第1印刷モードにて印刷する方が、印刷処理時間が短くなるとする(図8C)。一方、液体D〜液体Fにて印刷物を印刷する場合には、第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短い乾燥時間Td2を必要とする。その結果、第1印刷モードよりも第2印刷にて印刷する方が、印刷処理時間が短くなるとする(図8A)。即ち、「先に印刷する画像に使用する液体の種類」に基づいて乾燥時間Tdが決定する。
【0074】
そして、この選択例3では、コンピュータ110のメモリに図13に示すようなテーブルを記憶させる。コンピュータ110は、画像データを受信すると、前述の選択例1と同様に、画像を重ねた印刷物を印刷するか否かを判断する。そして、画像を重ねた印刷物を印刷する場合には、コンピュータ110は、先に印刷する画像の液体の種類を検出し、その液体の種類と図13に示すテーブルを照合する。例えば、画像データの示す液体の種類が「液体A」であれば、コンピュータ110は、乾燥時間Tdを乾燥時間Td1に設定し、第1印刷モードにて印刷することを選択する。また、画像データの示す媒体の種類が「媒体D」であれば、コンピュータ110は、乾燥時間Tdを乾燥時間Td2に設定し、第2印刷モードにて印刷することを選択する。そして、選択した印刷モードにて印刷するための印刷データを作成する。
【0075】
このように、液体の種類に応じて、先に印刷する画像が乾燥するために必要な時間が異なってくるため、液体の種類に応じて、乾燥時間Tdを設定し、印刷モードを選択することで、画像が滲むことなく印刷処理時間を短縮できる。なお、図13のテーブルでは、液体に応じて2種類の乾燥時間Td1,Td2に設定しているが、これに限らず、多段階的に乾燥時間Tdを設定し、その乾燥時間Tdに基づいて、印刷モードを選択してもよい。
【0076】
<印刷モードの選択例4>
この選択例4では、図2に示すように、印刷領域における媒体乾燥手段としてホットプラテン41を有するプリンタ1の印刷モードの選択例を示す。ホットプラテン41は、媒体を支持するとともに、ヒータ(乾燥手段)を内蔵しており、印刷領域の媒体を加熱することによって、印刷領域上で印刷画像の乾燥を促進する。なお、ホットプラテン41が内蔵するヒータはプリンタ1の電源が入っている際にもオン・オフを可能とし、印刷中であってもヒータの必要が無い場合にはヒータをオフできるとする。例えば、画像を重ねて印刷しない印刷物を印刷する場合や、乾燥しやすい画像を印刷する場合には、ホットプラテン41のヒータをオフすると省電力化を図れる。
【0077】
この選択例4では、コンピュータ110は、前述の選択例1から選択例3にて示したように、乾燥時間Tdに影響する印刷条件、即ち、「液体吐出量」、「媒体の種類」、「液体の種類」のうちの何れか1つ又は複数の印刷条件に基づいて、ホットプラテンの使用の有無を決定するとする。ホットプラテン41を使用すると乾燥時間が短縮され、その分だけ印刷処理時間が短縮される。そのため、例えば、ユーザーから高速印刷モードを指定された場合などに、ホットプラテン41を使用するとしてもよい。また、熱に弱い媒体などはホットプラテン41を使用することができないため、媒体の種類に応じて、ホットプラテン41の使用の有無を決定してもよい。即ち、ホットプラテン41を使用出来るか否かによって、ホットプラテン41の使用の有無を決定してもよい。
【0078】
ホットプラテン41を使用することで乾燥時間Tdを短縮できる。そのため、コンピュータ110は、ホットプラテン41を使用する場合には、第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短い乾燥時間Tdに設定する。その結果、コンピュータ110は、第1印刷モードよりも第2印刷モードにて印刷する方が、印刷処理時間が短くなると判断し(図8A)、第2印刷モードを選択する。一方、ホットプラテン41を使用しない場合には、コンピュータ110は、第1印刷モードの搬送時間Tcよりも長い乾燥時間Tdを設定する。その結果、コンピュータ110は、第2印刷モードよりも第1印刷にて印刷する方が、印刷処理時間が短くなると判断し(図8C)、第1印刷モードを選択する。
【0079】
このように、ホットプラテン41の使用の有無によって(乾燥手段であるヒータの使用の有無によって)、乾燥時間Tdを設定し、印刷モードを選択することで、画像が滲むことなく印刷処理時間を短縮できる。また、前述のように印刷領域における媒体乾燥手段は、ヒータの熱によって媒体を乾燥させるものに限らない。即ち、「印刷領域における媒体乾燥手段の使用の有無」に基づいて乾燥時間Tdが決定する。
【0080】
<印刷モードの選択例5>
選択例1から選択例4では乾燥時間Tdに影響する1つの印刷条件に基づいて、印刷モードを選択しているが、これに限らない。選択例1から選択例4に示している印刷条件、即ち、「液体吐出量」、「媒体の種類」、「液体の種類」、「ホットプランンの使用の有無」のうちの複数の印刷条件に基づいて、コンピュータ110は、乾燥時間Tdを設定し、印刷モードを選択するとしてもよい。
【0081】
図14は、乾燥時間Tdに関わる上述の4つの全ての印刷条件に基づいて、乾燥時間Tdと印刷モードを決定するためのテーブルである。コンピュータ110は画像データを受信すると、まず、先に印刷する画像において、単位領域あたりの最大液体吐出量Xを算出する。また、コンピュータ110はホットプラテンを使用するか否かを決定する。そうして、コンピュータ110は、図14に示すテーブルと、算出した最大液体吐出量X・画像データに示される「媒体と液体の種類」・「ホットプラテンの使用の有無」とを照合し、乾燥時間Td=T1〜T16を決定する。なお、単位領域あたりの最大液体吐出量に対して閾値を設定し、最大液体吐出量Xが閾値よりも小さければ乾燥時間Tdが短くなり、最大液体吐出量Xが閾値以上であれば乾燥時間Tdが長くなるようにするとよい。
【0082】
乾燥時間Tdが決定したら、コンピュータ110は、第1印刷モードの搬送時間Tcと乾燥時間Tdを比較し印刷モードを選択する。乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tcよりも長かったら第1印刷モードを選択し、乾燥時間Tdが第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短かったら第2印刷モードを選択する。そうすることで、印刷処理時間を短縮できる。
【0083】
なお、本実施形態では、選択例1から選択例4にて示している印刷条件「液体吐出量・媒体の種類・液体の種類・ホットプラテン41の使用の有無」が乾燥時間に影響する印刷条件としている。しかし、これに限らず、その他の乾燥時間Tdに影響する印刷条件に基づいて、乾燥時間Tdと印刷モードを決定しても良い。
【0084】
===変形例1:印刷物の違いについて===
図15A及び図15Bは、複数の画像を重ねた印刷物の他の例を示す図である。ここまで、白画像の上にABC画像を重ねて印刷する印刷物を例に挙げているがこれに限らない。例えば、図15Aに示すように白画像と画像ABCを印刷する順序が異なる印刷物でもよい。図15Aの印刷物は、印刷物の剥離部材(画像が印刷されない側)を外し、シール部材の粘着面を例えば室内側から窓に貼れば、室外側からシール部材越しに文字「ABC」が見える。そのため、画像ABCは鏡像になっている。また、図15Bに示すように、白画像ではない画像の上にABC画像を印刷した印刷物でもよい。例えば、媒体上に最初に印刷される画像が、液体の吸収を促進するような定着材を塗布することによって形成される矩形の下地画像であってもよい。
【0085】
図15Aの印刷物も図15Bの印刷物も、図4の印刷物と同様に、2つの画像を重ねて印刷する。ゆえに、これらの印刷物を印刷する際の搬送時間Tc,tcは印刷物によらずに等しい。また、1回の印刷動作にて6個の画像が印刷されるため、1回の印刷動作の印刷時間も印刷物によらずに等しいと言える。そのため、図4や図15Aや図15Bの印刷物を印刷する印刷モードは、先に印刷する画像の乾燥時間Tdによって異なってくる。
【0086】
例えば、コンピュータ110が前述の選択例1のように「単位領域あたりの最大液体吐出量」に基づいて印刷モードを決定するとする。そして、画像データが図4に示す印刷物を印刷するように示していれば、白画像の画像データにおける単位領域あたりの最大液体吐出量に基づいて、乾燥時間Tdと印刷モードが決定される。一方、画像データが図15Aに示す印刷物を印刷するように示していれば、ABC画像の画像データにおける単位領域あたりの最大液体吐出量に基づいて、乾燥時間Tdと印刷モードが決定される。白画像はベタ塗り画像であり、画像ABCよりも、単位領域あたりの最大液体吐出量が多いとする。そうすると、図4に示す印刷物の乾燥時間Tdは第1印刷モードの搬送時間Tcよりも長く、第1印刷モードが選択され(図8C)、図15Aに示す印刷物の乾燥時間Tdは第1印刷モードの搬送時間Tcよりも短く、第2印刷モードが選択されることになる(図8A)。
【0087】
図16Aは3つの画像を重ねた印刷物の例を示す図であり、図16Bは第2印刷モードにて3つの画像を重ねて印刷するための印刷データを示す図である。ここまで、2つの異なる画像を重ねて印刷する印刷物を例に挙げているがこれに限らない。例えば、図16Aに示すように3個の異なる画像を重ねて印刷する印刷物でもよい。この印刷物は、媒体上に最初に鏡像ABCを印刷し、その上に白画像を印刷し、最後に「XYZ」という文字画像を印刷して得られる。このように鏡像ABCと画像XYZの間に白画像が形成される印刷物によれば、窓などに貼ると、室外側から文字「ABC」を見たときに画像XYZは見えず、室内側から文字「XYZ」を見たときに画像「ABC」は見えない。
【0088】
このように3つの画像を重ねた印刷物を第1印刷モードにて印刷する場合、3回の印刷動作ごとに6個の印刷物が完成する。また、3回の印刷動作の合間には2回の待機動作が必要となる。一方、第2印刷モードにて印刷する場合、図16Bに示す印刷データを繰り返し印刷する。そのため、1回の搬送動作の搬送量が2個の印刷物の長さに相当する搬送量となり、1回の印刷動作ごとに2個の印刷物が完成する。このように3つの画像を重ねて印刷する場合であっても、2つの画像を重ねて印刷する場合(図8)と同様に、先に印刷する画像の乾燥時間と搬送時間の関係によって、印刷処理時間が短くなる印刷モードが異なる。そのため、3つの画像を重ねて印刷する場合であっても、コンピュータ110に、乾燥時間と搬送時間の関係、即ち、印刷条件に基づいて、印刷処理時間が短い方の印刷モードを選択させるとよい。そうすれば、画像が滲むことなく印刷処理時間を短縮できる。なお、このように3個の画像を重ねて印刷する際には、コンピュータ110は、1回目の画像が乾燥するために必要な時間と2回目の画像が乾燥するために必要な時間が異なって設定される場合があるため、その事を考慮して、印刷処理時間が短くなる印刷モードを選択するとよい。
【0089】
図17A及び図17Bは、3つの画像を重ねた印刷物の他の例を示す図である。3つの画像を重ねた印刷物は、図16Aに示す印刷物に限らない。例えば、図17Aに示すように、媒体上に最初に白画像を印刷し、次に画像ABCを印刷し、その上にコーティング剤を塗布する印刷物であっても良い。このような印刷物によれば、白画像や画像ABCの光沢性を向上させる作用や耐水性を向上させる作用などがある。また、図17Bに示すように、1層目の白画像の上に更に白画像を重ねて、画像ABCを印刷する印刷物であっても良い。こうすることで、背景用の白画像を濃く印刷でき、文字「ABC」が見やすくなる。このような印刷物を製造する場合も同様に、コンピュータ110は、先に印刷する画像に基づいて乾燥時間を設定し、設定した乾燥時間に基づいて、印刷処理時間が短くなる印刷モードを選択するとよい。
【0090】
===変形例2:第1画像と第2画像の比較について===
前述の実施形態では、コンピュータ110は、先に印刷される画像(白画像)の乾燥時間と搬送時間の関係により、印刷処理時間が短くなる方の印刷モードを選択している。更に、この変形例2では、先に印刷される画像の乾燥時間と後に印刷される画像の乾燥時間を比較する。
【0091】
例えば、白画像の上にABC画像が印刷される印刷物において、図4に示すように白画像側に媒体が位置しても、図15に示すようにABC画像側に媒体が位置しても良い場合に、白画像の乾燥時間とABC画像の乾燥時間を比較する。2つの画像の乾燥時間を設定するために、選択例1に示すように「単位領域あたりの最大液体吐出量」を比較しても良いし、選択例3に示すように「液体の種類」に基づいて比較しても良い。例えば、ベタ塗りする白画像よりもABC画像の方が、乾燥時間が短ければ、図15に示すように先にABC画像を印刷するとよい。乾燥時間が短い方の画像を先に印刷することで、先に印刷される画像の乾燥時間Tdを短縮でき、全体の印刷処理時間を短縮できる。
【0092】
同様に、図16に示すように白画像を境にXYZ画像とABC画像を印刷する印刷物において、ABC画像側に媒体が位置しても、XYZ画像側に媒体が位置しても良い場合に、ABC画像の乾燥時間とXYZの乾燥時間とを比較するとよい。そして、乾燥時間が短い方の画像を先に印刷することで、より印刷処理時間を短縮できる。
【0093】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてプリンタについて記載されているが、その中には、印刷装置、記録装置、液体の吐出装置、印刷方法、記録方法、液体の吐出方法、印刷システム、記録システム、コンピュータシステム、プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体、印刷物の製造方法、等の開示が含まれていることは言うまでもない。
【0094】
また、一実施形態としてのプリンタ等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0095】
<印刷モードの選択方法について>
印刷方法を選択する印刷条件は、前述のような画像の乾燥時間に限らない。例えば、第1印刷モードでは、印刷データを記憶するのに必要なメモリの容量が、第2印刷モードより大きい。そこで、印刷すべき画像データのデータ量が所定量より多い場合に、第2印刷モードで印刷を行い、少ない場合に第1印刷モードで印刷を行うよう印刷モードを選択することとしてもよい。つまり、種々の印刷条件によって印刷モードを選択することとしてもよい。
【0096】
また、使用者の入力によって、印刷装置が印刷モードを選択する事としても良い。例えば、使用者が省電力モードを選択したとする。第1印刷モードでは、印刷領域における媒体乾燥手段(ホットプラテン)や下流側の乾燥機構にて、図5の領域A〜Fで媒体の乾燥が必要なのに対して、第2印刷モードでは、領域A〜Cにおいて媒体を乾燥させればよい。そのため、第2印刷モードを選択すれば、第1印刷モードよりも省電力で印刷することができる。このように、使用者の入力を印刷条件として、これによって印刷モードを選択しても良い。
【0097】
<プリンタについて>
前述のプリンタでは、キャリッジを搬送方向に1回移動させることによって、印刷領域の全面に印刷を行うことが可能である。但し、このようなプリンタに限られるものではない。例えば、印刷領域上でキャリッジを2次元的に移動させて、印刷領域に印刷を行うようなプリンタであっても良い。このようなプリンタであれば、前述のプリンタと比べて、印刷動作に時間がかかるものの、ヘッドの大きさを小さくできる。
【0098】
<画像について>
前述の実施形態では、透明なフィルム等の媒体上に背景用の画像として白インクの画像を印刷し、その上に文字画像(ABC)を印刷しているが、背景用の画像は、白色に限られない。また、背景用の画像、下地画像、コーティング画像等のような下塗り画像は矩形であったが、矩形に限られるものではなく、その他の形状であっても良い。また、インク吸収性や光沢性や耐水性を向上させる加工を行うために下地画像やコーティング画像が形成されているが、加工を行うための加工用画像は前述の下地画像やコーティング画像に限られるものではない。例えば、加工用画像は、接着層を形成するための接着層用画像であっても良いし、スクラッチカード(コインで銀色の隠蔽層を削ると画像が現れるカード)の隠蔽層を形成するための隠蔽層用画像であっても良い。
【符号の説明】
【0099】
1 プリンタ、10 搬送ユニット、11 供給機構、12A〜12F 搬送ローラ、13 巻取機構、20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、22 ガイド、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、40 ヒータユニット、41 ホットプラテン、42 乾燥機構、50 検出器群、51 マーク検出センサ、60 コントローラ、61 インターフェース部、62 CPU、63 メモリ、64 ユニット制御回路、110 コンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷物を連続媒体上に印刷する印刷物製造方法であって、
印刷条件に基づいて、第1印刷モードと第2印刷モードのいずれかを選択するステップと、
前記第1印刷モードが選択された場合には、印刷領域に位置する前記連続媒体に複数の第1画像を印刷し、待機時間後に、前記第1画像上に複数の第2画像を印刷する動作と、前記連続媒体を搬送する動作と、を交互に繰り返し、
前記第2印刷モードが選択された場合には、前記印刷領域のうちの第1領域に位置する前記連続媒体に前記第1画像を印刷するとともに、前記印刷領域のうちの前記第1領域よりも搬送方向の下流側にある第2領域に位置する前記連続媒体に前記第2画像を印刷する動作と、前記第1画像上に前記第2画像が印刷されるように、前記第1領域で印刷された前記第1画像を前記第2領域に搬送する動作と、を交互に繰り返すステップと、を有する印刷物製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷物製造方法であって、
前記選択するステップにおいて、所定数の印刷物を印刷する処理時間が短くなる方の印刷モードを選択する印刷物製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷物製造方法であって、
前記選択するステップにおいて、前記待機時間と前記搬送する動作にかかる時間とを比較して、所定数の印刷物を印刷する処理時間が短くなる方の印刷モードを選択する印刷物製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷物製造方法であって、
前記待機時間を、前記第1画像の単位領域あたりの最大液体吐出量に基づいて決定する印刷物製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷物製造方法であって、
前記待機時間を、前記連続媒体の種類に基づいて決定する印刷物製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷物製造方法であって、
前記待機時間を、前記第1画像を印刷するために使用される液体の種類に基づいて決定する印刷物製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷物製造方法であって、
前記待機時間を、前記印刷領域において前記連続媒体を支持しつつ前記印刷物を乾燥させる乾燥手段の使用の有無に基づいて決定する印刷物製造方法。
【請求項8】
連続媒体に液体を吐出するヘッドと、
前記連続媒体を印刷領域に搬送する搬送機構と、
複数の印刷物を前記連続媒体に印刷することを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、印刷条件に基づいて、
前記印刷領域に位置する前記連続媒体に複数の第1画像を印刷し、待機時間後に、前記第1画像上に複数の第2画像を印刷する動作と、前記連続媒体を搬送する動作と、を交互に繰り返す第1印刷モードと、
前記印刷領域のうちの第1領域に位置する前記連続媒体に前記第1画像を印刷するとともに、前記印刷領域のうちの前記第1領域よりも搬送方向の下流側にある第2領域に位置する前記連続媒体に前記第2画像を印刷する動作と、前記第1画像上に前記第2画像が印刷されるように、前記第1領域で印刷された前記第1画像を前記第2領域に搬送する動作と、を交互に繰り返す第2印刷モードと、のいずれかを選択することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−39838(P2013−39838A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262318(P2012−262318)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2008−143108(P2008−143108)の分割
【原出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】