印刷装置
【課題】印刷画質の低下を抑制する。
【解決手段】第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、用紙Pの搬送方向に互いに離間して、隣接する動き量センサの間の距離が所定の最小用紙長よりも小さくなるように配置され、搬送方向における最上流に配置された第1動き量センサ8Aと最下流に配置された第3動き量センサ8Cとの間にすべてのインクジェットヘッド22A〜22Dが配置されている。制御部9は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cから、用紙Pの搬送方向への移動に応じて、用紙Pの動き量を検出している動き量センサを選択し、選択した動き量センサにより検出される用紙Pの動き量を用いてインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。
【解決手段】第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、用紙Pの搬送方向に互いに離間して、隣接する動き量センサの間の距離が所定の最小用紙長よりも小さくなるように配置され、搬送方向における最上流に配置された第1動き量センサ8Aと最下流に配置された第3動き量センサ8Cとの間にすべてのインクジェットヘッド22A〜22Dが配置されている。制御部9は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cから、用紙Pの搬送方向への移動に応じて、用紙Pの動き量を検出している動き量センサを選択し、選択した動き量センサにより検出される用紙Pの動き量を用いてインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等の印刷媒体に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送ベルト上に用紙を保持して搬送しつつ、インクジェットヘッドからインクを用紙へと吐出して印刷を行う印刷装置が知られている。
【0003】
このような印刷装置において印刷を行う際、搬送ベルトは一定速度で移動するよう駆動制御される。しかし、搬送ベルトのいわゆる厚みムラ、搬送ベルトが巻回されるローラの偏芯等の影響で、搬送ベルトの移動速度に変化が生じることがある。搬送ベルトの移動速度が一定でないと、インクジェットヘッドから吐出したインクの用紙への着弾位置が所望の位置からずれる、いわゆる「着弾ずれ」が発生する。着弾ずれは、印刷画質の低下を招く。
【0004】
このような着弾ずれを抑制するために、搬送ベルトの厚みムラ、および搬送ベルトが巻回されるローラの偏芯を示すプロファイルデータを予め抽出して記憶し、これを用いてインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御する技術が知られている。
【0005】
しかしながら、上記の技術では、予めプロファイルデータを抽出する工程が必要となる。これに対し、特許文献1では、用紙または搬送ベルトを撮像してその動き量を検出し、この動き量に応じたインクジェットヘッドの吐出制御を行うことで、着弾ずれを抑制し、印刷画質の低下を抑える印刷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−107310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の印刷装置では、複数のインクジェットヘッドに対して用紙の搬送方向における上流側に配置した1つの動き量センサで、用紙または搬送ベルトを撮像して動き量を検出している。したがって、用紙の後端が動き量センサを通過した後は、インクジェットヘッドの下を通過する当該用紙の動き量を直接には検出できず、例えば、搬送ベルトの動き量に基づきインクジェットヘッドの吐出制御が行われる。
【0008】
このため、例えば、用紙と搬送ベルトとの間のすべりにより用紙と搬送ベルトとで動きが一致しない場合などにおいて、特許文献1の印刷装置のような1つの動き量センサに基づく吐出制御では、用紙の実際の動きに応じたインクジェットヘッドの吐出制御ができないことがあった。このため、印刷画質の低下が生じるおそれがあった。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷画質の低下を抑制できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、印刷媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される印刷媒体にインクを吐出する1つ以上のインクジェットヘッドと、前記搬送部により搬送される印刷媒体の動き量を検出する複数の動き量検出部と、前記インクジェットヘッドの吐出制御を行う制御部とを備え、前記複数の動き量検出部は、印刷媒体の搬送方向に互いに離間して、隣接する前記動き量検出部の間の距離が所定の最小印刷媒体長よりも小さくなるように配置され、前記搬送方向における最上流の前記動き量検出部と最下流の前記動き量検出部との間にすべての前記インクジェットヘッドが配置され、前記制御部は、印刷媒体の前記搬送方向への移動に応じて、前記複数の動き量検出部のうち、印刷媒体の動き量を検出している動き量検出部を選択し、選択した前記動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量を用いて前記インクジェットヘッドの吐出制御を行うことにある。
【0011】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴は、印刷媒体の前記搬送方向への移動に応じて、前記インクジェットヘッドの吐出制御に用いる1つの前記動き量検出部を順次切り替えて選択していくことにある。
【0012】
本発明に係る印刷装置の第3の特徴は、前記制御部は、印刷媒体の動き量を検出している前記動き量検出部が複数存在する期間において、当該複数の前記動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量の平均を用いて前記インクジェットヘッドの吐出制御を行うことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る印刷装置の第1の特徴によれば、複数の動き量検出部が、印刷媒体の搬送方向に互いに離間して、隣接する動き量検出部の間の距離が所定の最小印刷媒体長よりも小さくなるように配置されている。また、搬送方向における最上流の動き量検出部と最下流の動き量検出部との間にすべてのインクジェットヘッドが配置されている。そして、制御部が、印刷媒体の移動に応じて、複数の動き量検出部のうち、印刷媒体の動き量を検出している動き量検出部を選択し、選択した動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量を用いてインクジェットヘッドの吐出制御を行う。これにより、制御部は、印刷媒体が最下流のインクジェットヘッドを通過するまで、印刷媒体の実際の動きに応じた吐出制御ができるので、印刷画質の低下を抑制できる。
【0014】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴によれば、制御部は、印刷媒体の移動に応じて、インクジェットヘッドの吐出制御に用いる1つの動き量検出部を順次切り替えて選択する。これにより、制御部の処理負担を軽減できる。
【0015】
本発明に係る印刷装置の第3の特徴によれば、制御部は、印刷媒体の動き量を検出している動き量検出部が複数存在する期間において、当該複数の動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量の平均を用いてインクジェットヘッドの吐出制御を行う。これにより、制御部は、印刷媒体の挙動に対してより適切な吐出制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】第1〜第3動き量センサの配置を示す図である。
【図4】撮像部の概略構成図である。
【図5】第1〜第3動き量センサを用いたインクジェットヘッドの吐出制御を説明するためのフローチャートである。
【図6】動き量センサにより検出される動き量を用いた吐出制御を説明するための図である。
【図7】用紙センサおよび第1〜第3動き量センサにおける用紙検出のタイミングを示す図である。
【図8】搬送印刷部における用紙の移動状況を示す図である。
【図9】吐出タイミングの補正を説明するための図である。
【図10】搬送印刷部における用紙の移動状況を示す図である。
【図11】搬送印刷部における用紙の移動状況を示す図である。
【図12】搬送印刷部における用紙の移動状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0018】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図、図2は、図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明における上下方向、左右方向は、図1において示す上下方向、左右方向を示すものとする。
【0020】
図1において太線で示す経路が、印刷媒体が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
【0021】
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、搬送印刷部3と、上面搬送部4と、排紙部5と、反転部6と、用紙センサ7と、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cと、制御部9と、各部を収納または保持する筐体10とを備える。
【0022】
給紙部2は、搬送印刷部3に給紙する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に設けられる。給紙部2は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ12と、複数の内部給紙台13と、複数の内部給紙ローラ14と、複数対の縦搬送ローラ15と、レジストローラ16とを備える。
【0023】
外部給紙台11は、一部が筐体10の外部に露出して設置され、印刷媒体である用紙Pが積載されるものである。
【0024】
外部給紙ローラ12は、外部給紙台11から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSに沿ってレジストローラ16に向けて搬送する。外部給紙ローラ12は、外部給紙台11の上側に配置されている。
【0025】
内部給紙台13は、筐体10の内部に設けられ、用紙Pが積載されるものである。
【0026】
内部給紙ローラ14は、内部給紙台13から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSに送り出す。内部給紙ローラ14は、内部給紙台13の上側に設けられている。
【0027】
縦搬送ローラ15は、給紙経路RSに沿って配置され、内部給紙台13から取り出された用紙Pをレジストローラ16に向けて搬送する。
【0028】
レジストローラ16は、外部給紙台11、内部給紙台13、反転部6から搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、搬送印刷部3へと送り出す。レジストローラ16は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍の通常経路RC上に配置されている。
【0029】
また、給紙部2は、外部給紙ローラ12および最も下流側の縦搬送ローラ15を回転駆動させるモータと、内部給紙ローラ14および他の縦搬送ローラ15を回転駆動させるモータと、レジストローラ16を回転駆動させるモータ(いずれも図示せず)とを備える。
【0030】
搬送印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに印刷を行う。搬送印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。搬送印刷部3は、ベルト搬送部21と、インクジェットヘッド22A〜22Dとを備える。
【0031】
ベルト搬送部21は、レジストローラ16から搬送されてきた用紙Pを保持して搬送する。ベルト搬送部21は、請求項の搬送部に相当する。ベルト搬送部21は、レジストローラ16の下流側で、インクジェットヘッド22A〜22Dの下方に配置されている。ベルト搬送部21は、搬送ベルト23と、駆動ローラ24と、従動ローラ25〜27と、駆動ローラ24を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0032】
搬送ベルト23は、駆動ローラ24および従動ローラ25〜27に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト23には、用紙Pを吸着保持するためのベルト穴が多数形成されている。搬送ベルト23は、ファン(図示せず)の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト23は、駆動ローラ24の駆動により図1における時計回り方向に回転することで、搬送面(上面)23aに吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0033】
駆動ローラ24および従動ローラ25〜27は、搬送ベルト23が掛け渡されるものである。駆動ローラ24は、搬送ベルト23を回転させる。従動ローラ25〜27は、搬送ベルト23を介して駆動ローラ24に従動する。
【0034】
インクジェットヘッド22A〜22Dは、ベルト搬送部21により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。インクジェットヘッド22A〜22Dは、互いに異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。インクジェットヘッド22A〜22Dは、その下方における用紙Pの搬送方向と略直交する方向に複数のノズルが配列されたラインタイプである。インクジェットヘッド22A〜22Dは、ベルト搬送部21の上方において、左右方向に所定間隔で互いに離間して配置されている。
【0035】
上面搬送部4は、ベルト搬送部21によって搬送されてきた用紙Pを右方向から左方向にUターンするように搬送する。上面搬送部4は、複数対の上面搬送ローラ31と、複数対の上面搬送ローラ31を回転駆動させる複数のモータ(図示せず)とを備える。
【0036】
上面搬送ローラ31は、用紙Pをニップして搬送する。複数対の上面搬送ローラ31は、搬送印刷部3と排紙部5との間の通常経路RCに沿って配置されている。1対の上面搬送ローラ31は、反転経路RRの上流部に配置されている。
【0037】
排紙部5は、印刷済みの用紙Pを排紙して積載する。排紙部5は、切替部41と、排紙ローラ42と、排紙台43と、切替部41を駆動させるソレノイド(図示せず)と、排紙ローラ42を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0038】
切替部41は、排紙経路RDと反転経路RRとの分岐点に配置され、用紙Pの搬送経路を排紙経路RDと反転経路RRとの間で切り替える。排紙ローラ42は、切替部41と排紙台43との間に配置され、上面搬送部4により搬送されてきた用紙Pを排紙経路RDに沿って搬送して排紙台43へと排出する。排紙台43は、排紙ローラ42により搬送されてきた用紙Pを積載する。
【0039】
反転部6は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙Pを搬送印刷部3に再給紙するために、片面印刷済みの用紙Pを反転させてレジストローラ16へと搬送する。反転部6は、反転ローラ51と、スイッチバック部52と、再給紙ローラ53と、切替ゲート54と、反転ローラ51を回転駆動させるモータ(図示せず)と、再給紙ローラ53を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0040】
反転ローラ51は、上面搬送部4により搬送されてきた用紙Pをスイッチバック部52に一時的に搬入した後に搬出して、再給紙ローラ53へと搬送する。反転ローラ51は、最も下流側の上面搬送ローラ31とスイッチバック部52の搬入口との間の反転経路RR上に配置されている。
【0041】
スイッチバック部52は、反転ローラ51が用紙Pを一時的に搬入するための空間であり、排紙台43の下部に形成されている。スイッチバック部52は、反転ローラ51の近傍が用紙Pを搬入するために開口されている。
【0042】
再給紙ローラ53は、反転ローラ51により搬送されてきた用紙Pをレジストローラ16へと搬送する。再給紙ローラ53は、反転ローラ51とレジストローラ16との間の反転経路RR上に配置されている。
【0043】
切替ゲート54は、上面搬送ローラ31によって搬送されてきた用紙Pを反転ローラ51へとガイドする。また、切替ゲート54は、反転ローラ51によってスイッチバック部52から搬出される用紙Pを再給紙ローラ53へとガイドする。切替ゲート54は、最も下流側の上面搬送ローラ31、反転ローラ51、および再給紙ローラ53の3個所の重心近傍に配置されている。
【0044】
用紙センサ7は、レジストローラ16と第1動き量センサ8Aとの間に配置され、通常経路RC上を搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ7は、その検出対象位置に用紙Pが存在している場合にはON信号を出力し、用紙Pが存在していない場合にはOFF信号を出力する。
【0045】
第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、ベルト搬送部21の上方に配置され、ベルト搬送部21により通常経路RCを搬送される用紙Pの搬送方向への動き量を検出する。具体的には、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、移動する用紙Pにレーザ光を照射して撮像し、得られた画像における特定の模様(例えば、用紙Pの表面の凹凸模様)の動きに基づいて、用紙Pの動き量を検出する。撮像対象位置に用紙Pがない状態では、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、搬送ベルト23の搬送面23aを撮像し、その動き量を検出する。第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、請求項の動き量検出部に相当する。
【0046】
第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、左右方向に互いに離間して略等間隔で配置されている。ここで、図3に示すように、隣接する第1動き量センサ8Aと第2動き量センサ8Bとの間の距離、および、第2動き量センサ8Bと第3動き量センサ8Cとの間の距離を、センサ間距離Lsとする。第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、センサ間距離Lsが、最小用紙長(最小印刷媒体長)Lminよりも小さくなるように配置されている。最小用紙長Lminは、印刷装置1で使用される各種の用紙Pのうち、搬送方向における長さである用紙長Lpがもっとも小さい用紙Pの用紙長Lpの値である。
【0047】
また、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cのうち、最も上流側の第1動き量センサ8Aは、最も上流側のインクジェットヘッド22Aよりも上流側に配置されている。最も下流側の第3動き量センサ8Cは、最も下流側のインクジェットヘッド22Dよりも下流側に配置されている。すなわち、左右方向における第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとの間にすべてのインクジェットヘッド22A〜22Dが配置されている。
【0048】
第1動き量センサ8Aは、撮像部61と、動き量算出部62とを備える。第2および第3動き量センサ8B,8Cも第1動き量センサ8Aと同様の構成である。
【0049】
撮像部61は、移動する用紙Pまたは搬送ベルト23を撮像して画像を生成する。撮像部61の概略構成を図4に示す。撮像部61は、レーザダイオード65と、集光レンズ66,67と、エリアセンサ68とを備える。
【0050】
レーザダイオード65は、撮像対象となる用紙Pまたは搬送ベルト23に照射するレーザ光を発する。
【0051】
集光レンズ66は、レーザダイオード65から発せられたレーザ光を用紙Pまたは搬送ベルト23の上に集光する。集光レンズ67は、レーザ光が用紙Pまたは搬送ベルト23で反射された反射光を、エリアセンサ68に集光する。
【0052】
エリアセンサ68は、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を有し、用紙Pまたは搬送ベルト23からの反射光を受光し、受光した光を電気信号に変換し、この電気信号に基づいて画像を生成する。
【0053】
動き量算出部62は、撮像部61で得られた画像における特定の模様がどの程度移動したかを相関関数により算出することで、用紙Pまたは搬送ベルト23の搬送面23aの動き量を算出する。動き量算出部62は、所定の動き量ごとのパルス信号を生成し、これを制御部9に出力する。すなわち、動き量算出部62は、例えばエンコーダパルス信号のような、用紙Pの動き量を示すパルス信号を出力する。
【0054】
制御部9は、CPU、メモリ(いずれも図示せず)等を備えて構成され、印刷装置1の各部を制御するものである。印刷時において、制御部9は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cから、搬送される用紙Pの移動に応じて、用紙Pの動き量を検出している動き量センサを選択し、選択した動き量センサにより検出される用紙Pの動き量を用いてインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。
【0055】
次に、印刷装置1の動作について説明する。
【0056】
印刷装置1の印刷動作は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)から印刷データが入力されることにより開始となる。
【0057】
まず、制御部9は、外部給紙台11および複数の内部給紙台13のいずれかから用紙Pを取り出し、レジストローラ16に向けて搬送するよう給紙部2を制御する。また、制御部9は、ベルト搬送部21の駆動ローラ24を回転駆動させる。これにより、搬送ベルト23が周回駆動される。また、制御部9は、用紙センサ7および第1〜第3動き量センサ8A〜8Cの駆動を開始させる。
【0058】
用紙Pがレジストローラ16に突き当たり、用紙Pに所定の大きさのたるみが形成されると、制御部9は、外部給紙ローラ12または縦搬送ローラ15の駆動を停止させ、レジストローラ16の駆動を開始させる。これにより、レジストローラ16は、用紙Pを、たるみを解消しつつベルト搬送部21に向けて送り出す。ベルト搬送部21は、レジストローラ16から送られてきた用紙Pを搬送ベルト23の搬送面23a上に保持して搬送する。
【0059】
第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、撮像部61により、搬送される用紙Pまたは搬送ベルト23の搬送面23aを撮像する。そして、動き量算出部62が、用紙Pまたは搬送ベルト23の搬送面23aの動き量を算出し、その動き量に応じたパルス信号を制御部9へと出力する。
【0060】
制御部9は、搬送ベルト23により搬送される用紙Pに対して、インクジェットヘッド22A〜22Dからインクを吐出させる。この際、制御部9は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを用いて、用紙Pの動きに応じたインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。この第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを用いたインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御については後述する。
【0061】
なお、印刷に使用する用紙Pの用紙長Lpが第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとの間の距離より大きい場合、すなわち、Lp>2×Lsである場合、インクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御に第2動き量センサ8Bを用いる必要がない。Lp>2×Lsであれば、用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aを通過するときには、用紙Pの先端が第3動き量センサ8Cに到達しており、制御部9は、第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとで連続的に用紙Pの動き量を取得できるからである。したがって、制御部9は、Lp>2×Lsである場合、第2動き量センサ8Bの駆動を省略できる。制御部9は、印刷に使用する用紙Pの用紙長Lpを、印刷に使用する用紙Pの種類から判断できる。印刷に使用する用紙Pの種類は、例えば、PCからの印刷データにより指示される。
【0062】
片面印刷の場合、搬送印刷部3で印刷された用紙Pは、ベルト搬送部21から上面搬送部4へと送られ、上面搬送部4により搬送される。そして、用紙Pは、排紙部5の切替部41によって排紙ローラ42へと導かれ、排紙台43に排紙される。
【0063】
両面印刷の場合、片面印刷の場合と同様に一方の面に印刷された用紙Pが、切替部41によって上面搬送部4から反転部6へと導かれる。反転部6では、用紙Pは、切替ゲート54により反転ローラ51へと導かれ、反転ローラ51によりスイッチバック部52へと搬入される。その後、用紙Pは、反転ローラ51によりスイッチバック部52から搬出されるとともに、切替ゲート54により再給紙ローラ53へと導かれる。次いで、用紙Pは、再給紙ローラ53によりレジストローラ16へと搬送され、レジストローラ16によりベルト搬送部21へと送り出される。ここで、用紙Pは、反転部6によって反転されているので、未印刷面(他方の面)がインクジェットヘッド22A〜22Dに向けられている。インクジェットヘッド22A〜22Dにより用紙Pの他方の面に印刷された後、両面印刷済みの用紙Pは、上面搬送部4により搬送され、排紙部5において排紙台43に排紙される。
【0064】
次に、上述した印刷動作時における第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを用いたインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御について説明する。ここでは、印刷に使用する用紙Pの用紙長Lpが第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとの間の距離以下である場合、すなわち、Lp≦2×Lsである場合について説明する。この場合、制御部9は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cのすべてをインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御に用いる。
【0065】
図5は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを用いたインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を説明するためのフローチャートである。
【0066】
印刷動作を開始すると、図5のステップS10において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になったか(用紙Pの先端が検出されたか)否かを判断する。用紙センサ7の出力信号がOFF信号であると判断した場合(ステップS10:NO)、制御部9は、ステップS10の処理を繰り返す。
【0067】
用紙センサ7の出力信号がON信号になったと判断した場合(ステップS10:YES)、ステップS20において、制御部9は、第1動き量センサ8Aで検出される動き量を用いた吐出制御を開始する。
【0068】
具体的には、制御部9は、第1動き量センサ8Aから入力される用紙Pの動き量を示すパルス信号に基づき、吐出パルス信号を生成する。吐出パルス信号は、インクジェットヘッド22A〜22Dの吐出駆動タイミングを決めるためのクロック信号である。具体的には、用紙センサ7の出力信号がON信号になってから最初に第1動き量センサ8Aから入力されるパルスを図6に示すパルスPa(1)とすると、制御部9は、パルスPa(1)の立ち上がりの時点から内蔵のタイマによるカウントを開始する。そして、制御部9は、次に入力されるパルスPa(2)の立ち上がりまでのカウント値Ca(1)を記憶する。制御部9は、このカウント値Ca(1)に対応する時間を周期T(1)とするデューティ比50%のパルスPt(1)を生成する。すなわち、パルスPt(1)のパルス幅τ(1)は、周期T(1)の1/2となっている。ここで、制御部9は、カウント値Ca(1)を取得してからパルスPt(1)を生成するため、パルスPt(1)は、対応する第1動き量センサ8AからのパルスPa(1)に対して時間的に遅れて現れる。制御部9として処理速度が高速なCPUを用いれば、この遅れは短縮できる。
【0069】
以降同様に、制御部9は、第1動き量センサ8Aから入力されるパルスPa(2),Pa(3),…からパルスPt(2),Pt(3),…を生成し、これを吐出パルス信号とする。パルスPt(2),Pt(3)のパルス幅τ(2),τ(3)、および周期T(2),T(3)は、カウント値Ca(2),Ca(3)から算出される値となる。
【0070】
制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点からの吐出パルス信号のパルス数と、印刷対象の画像データとに基づいて、インクジェットヘッド22A〜22Dの各ノズルからのインクの吐出を制御する。制御部9は、各ノズルからインクを吐出させるタイミングを示すパルス数として、用紙センサ7から各ノズルまでの距離に応じたパルス数を予め設定している。なお、図7に示すように、用紙Pの先端が第1動き量センサ8Aに到達するまでは、第1動き量センサ8Aは、搬送ベルト23の搬送面23aの動き量を検出していることになる。ここで、図7は、1ページのみの通紙時の用紙センサおよび第1〜第3動き量センサにおける用紙検出のタイミングを示す図である。
【0071】
次いで、ステップS30において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から、時間t1が経過したか否かを判断する。時間t1は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから第2動き量センサ8Bに到達するまでの時間として予め設定された時間である。時間t1が経過していないと判断した場合(ステップS30:NO)、制御部9は、ステップS30の処理を繰り返す。
【0072】
時間t1が経過したと判断した場合(ステップS30:YES)、ステップS40において、制御部9は、吐出制御に用いる動き量センサを第1動き量センサ8Aから第2動き量センサ8Bへと切り替える。また、制御部9は、後述する吐出タイミングの補正を開始する。
【0073】
前述のように、センサ間距離Lsが最小用紙長Lminより小さいため、Ls<Lpである。このため、図7、図8に示すように、用紙Pの先端が第2動き量センサ8Bに到達した時点において、第1動き量センサ8Aでも用紙Pを検出している。ここで吐出制御に用いる動き量センサを第1動き量センサ8Aから第2動き量センサ8Bへと切り替えることで、制御部9は、用紙Pの動き量を連続的に取得して吐出制御できる。
【0074】
なお、時間t1は、ベルト搬送部21の搬送速度で用紙センサ7から第2動き量センサ8Bまで用紙Pを搬送するために要する時間の理論値よりも大きい値としてもよい。これにより、確実に用紙Pが第2動き量センサ8Bに到達してから、吐出制御に用いる動き量センサを第1動き量センサ8Aから第2動き量センサ8Bへと切り替えることが可能となる。
【0075】
制御部9は、第1動き量センサ8Aと第2動き量センサ8Bとの両方で用紙Pが検出されている期間では、第2動き量センサ8Bで検出された用紙Pの動き量に基づく吐出タイミングを、第1動き量センサ8Aで検出された用紙Pの動き量を用いて補正する。
【0076】
この吐出タイミングの補正について説明する。制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から時間t1が経過するまでは、前述のように、第1動き量センサ8Aから入力されるパルス信号に基づいて吐出パルス信号を生成する。すなわち、図9に示すように、第1動き量センサ8Aから入力されるパルスPa(m−2),Pa(m−1)に対応するカウント値Ca(m−2),Ca(m−1)に基づき、吐出パルス信号のパルスPt(m−2),Pa(m−1)を生成する。パルスPt(m−2),Pt(m−1)のパルス幅τ(m−2),τ(m−1)、および周期T(m−2),T(m−1)は、カウント値Ca(m−2),Ca(m−1)から算出される値となる。
【0077】
時間t1が経過すると、制御部9は、第2動き量センサ8Bから入力されるパルスPb(n)に対応するカウント値Cb(n)に加えて、第1動き量センサ8Aから入力されるパルスPa(m)に対応するカウント値Ca(m)も用いて、吐出パルス信号のパルスPt(m)を生成する。具体的には、制御部9は、カウント値Cb(n)とカウント値Ca(m)との平均値(Cb(n)+Ca(m))/2を算出する。そして、制御部9は、この平均値(Cb(n)+Ca(m))/2に対応する時間を周期T(m)とし、パルス幅τ(m)=T(m)/2のパルスPt(m)を生成する。以降同様に、制御部9は、パルスPb(n+1),Pb(n+2),…およびパルスPa(m+1),Pa(m+2),…から、吐出パルス信号のパルスPt(m+1),Pt(m+2),…を生成する。
【0078】
このようにして、制御部9は、第2動き量センサ8Bから入力されるパルス信号に基づく吐出タイミングを、第1動き量センサ8Aから入力されるパルス信号を用いて補正する。換言すれば、制御部9は、第1動き量センサ8Aおよび第2動き量センサ8Bか検出する動き量の平均を用いて吐出タイミングを制御する。
【0079】
次いで、ステップS50において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から、時間t2が経過したか否かを判断する。時間t2は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから、用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aに到達するまでの時間として予め設定された時間である。時間t2は、使用する用紙Pの用紙長Lpによって異なる。時間t2が経過していないと判断した場合(ステップS50:NO)、制御部9は、ステップS50の処理を繰り返す。
【0080】
時間t2が経過したと判断した場合(ステップS50:YES)、ステップS60において、制御部9は、上述した吐出タイミングの補正を終了する。図7、図10に示すように、用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aに到達すると、その後、第1動き量センサ8Aで検出する動き量は、用紙Pではなく搬送ベルト23の搬送面23aの動き量である。このため、制御部9は、時間t2が経過すると、第2動き量センサ8Bのみを用いた吐出制御を行う。具体的には、制御部9は、図9に示すように、時間t2が経過すると、第2動き量センサ8Bから入力されるパルスPb(n+i+1),Pb(n+i+2)に対応するカウント値Cb(n+i+1),Cb(n+i+2)に基づき、吐出パルス信号のパルスPt(m+i+1),Pt(m+i+2)を生成する。
【0081】
なお、時間t2は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから、用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aに到達するまでの時間の理論値よりも大きい値としてもよい。これにより、確実に用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aを通過してから、吐出タイミングの補正を終了できる。
【0082】
次いで、ステップS70において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から、時間t3が経過したか否かを判断する。時間t3は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから第3動き量センサ8Cに到達するまでの時間として予め設定された時間である。時間t3が経過していないと判断した場合(ステップS70:NO)、制御部9は、ステップS70の処理を繰り返す。
【0083】
時間t3が経過したと判断した場合(ステップS70:YES)、ステップS80において、制御部9は、吐出制御に用いる動き量センサを第2動き量センサ8Bから第3動き量センサ8Cへと切り替える。また、制御部9は、吐出タイミングの補正を開始する。図7、図11に示すように、用紙Pの先端が第3動き量センサ8Cに到達したとき、第2動き量センサ8Bでも用紙Pを検出している。
【0084】
ここで制御部9が行う吐出タイミングの補正は、第3動き量センサ8Cから入力されるパルス信号に基づく吐出タイミングを、第2動き量センサ8Bから入力されるパルス信号を用いて補正するものである。この補正の処理内容は、上述のステップS40で説明した処理内容と同様のものであるため、説明を省略する。
【0085】
なお、時間t3は、ベルト搬送部21の搬送速度で用紙センサ7から第3動き量センサ8Cまで用紙Pを搬送するために要する時間の理論値よりも大きい値としてもよい。これにより、確実に用紙Pが第3動き量センサ8Cに到達してから、吐出制御に用いる動き量センサを第2動き量センサ8Bから第3動き量センサ8Cへと切り替えることが可能となる。
【0086】
次いで、ステップS90において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から、時間t4が経過したか否かを判断する。時間t4は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから、用紙Pの後端が第2動き量センサ8Bに到達するまでの時間として予め設定された時間である。時間t4は、使用する用紙Pの用紙長Lpによって異なる。時間t4が経過していないと判断した場合(ステップS90:NO)、制御部9は、ステップS90の処理を繰り返す。
【0087】
時間t4が経過したと判断した場合(ステップS90:YES)、ステップS100において、制御部9は、ステップS80で開始した吐出タイミングの補正を終了する。図7、図12に示すように、用紙Pの後端が第2動き量センサ8Bに到達すると、その後、第3動き量センサ8Cでのみ、用紙Pの動き量が検出される。したがって、制御部9は、時間t4が経過すると、第3動き量センサ8Cのみを用いた吐出制御を行う。すなわち、制御部9は、第3動き量センサ8Cから入力されるパルス信号に基づき、吐出パルス信号を生成する。
【0088】
なお、時間t4は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから、用紙Pの後端が第2動き量センサ8Bに到達するまでの時間の理論値よりも大きい値としてもよい。これにより、確実に用紙Pの後端が第2動き量センサ8Bを通過してから、吐出タイミングの補正を終了できる。
【0089】
そして、ステップS110において、制御部9は、印刷対象の画像データに基づくインクの吐出が終了したか否かを判断する。インクの吐出が終了していないと判断した場合(ステップS110:NO)、制御部9は、ステップS110の処理を繰り返す。インクの吐出が終了したと判断した場合(ステップS110:YES)、制御部9は、インクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を終了する。
【0090】
以上により1ページ分の印刷が終了する。複数ページ印刷する場合は、各ページについて上述した図5のフローチャートの処理が行われる。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態の印刷装置1は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを有する。第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、センサ間距離Lsが、最小用紙長Lminよりも小さくなるように配置されている。また、左右方向における第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとの間にすべてのインクジェットヘッド22A〜22Dが配置されている。そして、制御部9が、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cから、搬送される用紙Pの移動に応じて、用紙Pの動き量を検出している動き量センサを選択し、選択した動き量センサにより検出される用紙Pの動き量を用いてインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。これにより、印刷装置1では、用紙Pが最下流のインクジェットヘッド22Dを通過するまで、用紙Pの実際の動きに応じた吐出制御ができるので、印刷画質の低下を抑制できる。
【0092】
また、制御部9は、吐出制御に用いる動き量センサを切り替えた際に、切り替え前の動き量センサにより検出される用紙Pの動き量を用いて、切り替え後の動き量センサにより検出される用紙Pの動き量に基づく吐出タイミングを補正する。すなわち、複数の動き量センサが用紙Pの動き量を検出している期間において、当該複数の複数の動き量センサにより検出される用紙Pの動き量の平均を用いてインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。これにより、用紙Pの挙動に対してより適切な吐出制御ができる。例えば、用紙Pの後端部がレジストローラ16から抜けることによる影響などにより、先端側と後端側とで用紙Pの挙動に差異が生じる可能性がある。このような場合でも、上記の吐出タイミングの補正を行うことで、適切な吐出制御ができ、印刷画質の低下を抑制できる。
【0093】
なお、上記の吐出タイミングの補正を省略してもよい。すなわち、制御部9は、用紙Pの移動に応じて、インクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御に用いる1つの動き量センサを順次切り替えて選択していくようにしてもよい。この場合、例えば、図9の例では、時間t1が経過した時点から、制御部9は、第2動き量センサ8Bから入力されるパルスPb(n),Pb(n+1),…のみに基づく吐出パルス信号の生成を開始する。このようにすれば、制御部9による吐出タイミング制御の処理負担を軽減できる。例えば、複数の動き量センサで用紙Pの動き量を検出している期間が短い場合や、用紙Pの先端部の挙動から用紙P全体の挙動を近似できるような場合において、制御部9の処理負担を軽減しつつ、用紙Pの実際の動きに応じた吐出制御が可能となる。
【0094】
また、本実施の形態では、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを左右方向に等間隔で配置したが、等間隔でなくてもよい。また、動き量センサは3つでなくてもよい。また、インクジェットヘッドも4つに限らない。センサ間距離が最小用紙長Lminよりも小さく、最上流の動き量センサと最下流の動き量センサとの間にすべてのインクジェットヘッドが配置されていればよい。
【0095】
また、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cとして、レーザドップラ速度計を有する検出器を用いることも可能である。
【0096】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 印刷装置
2 給紙部
3 搬送印刷部
4 上面搬送部
5 排紙部
6 反転部
7 用紙センサ
8A〜8C 第1〜第3動き量センサ
9 制御部
21 ベルト搬送部
22A〜22D インクジェットヘッド
61 撮像部
62 動き量算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等の印刷媒体に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送ベルト上に用紙を保持して搬送しつつ、インクジェットヘッドからインクを用紙へと吐出して印刷を行う印刷装置が知られている。
【0003】
このような印刷装置において印刷を行う際、搬送ベルトは一定速度で移動するよう駆動制御される。しかし、搬送ベルトのいわゆる厚みムラ、搬送ベルトが巻回されるローラの偏芯等の影響で、搬送ベルトの移動速度に変化が生じることがある。搬送ベルトの移動速度が一定でないと、インクジェットヘッドから吐出したインクの用紙への着弾位置が所望の位置からずれる、いわゆる「着弾ずれ」が発生する。着弾ずれは、印刷画質の低下を招く。
【0004】
このような着弾ずれを抑制するために、搬送ベルトの厚みムラ、および搬送ベルトが巻回されるローラの偏芯を示すプロファイルデータを予め抽出して記憶し、これを用いてインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御する技術が知られている。
【0005】
しかしながら、上記の技術では、予めプロファイルデータを抽出する工程が必要となる。これに対し、特許文献1では、用紙または搬送ベルトを撮像してその動き量を検出し、この動き量に応じたインクジェットヘッドの吐出制御を行うことで、着弾ずれを抑制し、印刷画質の低下を抑える印刷装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−107310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の印刷装置では、複数のインクジェットヘッドに対して用紙の搬送方向における上流側に配置した1つの動き量センサで、用紙または搬送ベルトを撮像して動き量を検出している。したがって、用紙の後端が動き量センサを通過した後は、インクジェットヘッドの下を通過する当該用紙の動き量を直接には検出できず、例えば、搬送ベルトの動き量に基づきインクジェットヘッドの吐出制御が行われる。
【0008】
このため、例えば、用紙と搬送ベルトとの間のすべりにより用紙と搬送ベルトとで動きが一致しない場合などにおいて、特許文献1の印刷装置のような1つの動き量センサに基づく吐出制御では、用紙の実際の動きに応じたインクジェットヘッドの吐出制御ができないことがあった。このため、印刷画質の低下が生じるおそれがあった。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、印刷画質の低下を抑制できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、印刷媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される印刷媒体にインクを吐出する1つ以上のインクジェットヘッドと、前記搬送部により搬送される印刷媒体の動き量を検出する複数の動き量検出部と、前記インクジェットヘッドの吐出制御を行う制御部とを備え、前記複数の動き量検出部は、印刷媒体の搬送方向に互いに離間して、隣接する前記動き量検出部の間の距離が所定の最小印刷媒体長よりも小さくなるように配置され、前記搬送方向における最上流の前記動き量検出部と最下流の前記動き量検出部との間にすべての前記インクジェットヘッドが配置され、前記制御部は、印刷媒体の前記搬送方向への移動に応じて、前記複数の動き量検出部のうち、印刷媒体の動き量を検出している動き量検出部を選択し、選択した前記動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量を用いて前記インクジェットヘッドの吐出制御を行うことにある。
【0011】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴は、印刷媒体の前記搬送方向への移動に応じて、前記インクジェットヘッドの吐出制御に用いる1つの前記動き量検出部を順次切り替えて選択していくことにある。
【0012】
本発明に係る印刷装置の第3の特徴は、前記制御部は、印刷媒体の動き量を検出している前記動き量検出部が複数存在する期間において、当該複数の前記動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量の平均を用いて前記インクジェットヘッドの吐出制御を行うことにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る印刷装置の第1の特徴によれば、複数の動き量検出部が、印刷媒体の搬送方向に互いに離間して、隣接する動き量検出部の間の距離が所定の最小印刷媒体長よりも小さくなるように配置されている。また、搬送方向における最上流の動き量検出部と最下流の動き量検出部との間にすべてのインクジェットヘッドが配置されている。そして、制御部が、印刷媒体の移動に応じて、複数の動き量検出部のうち、印刷媒体の動き量を検出している動き量検出部を選択し、選択した動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量を用いてインクジェットヘッドの吐出制御を行う。これにより、制御部は、印刷媒体が最下流のインクジェットヘッドを通過するまで、印刷媒体の実際の動きに応じた吐出制御ができるので、印刷画質の低下を抑制できる。
【0014】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴によれば、制御部は、印刷媒体の移動に応じて、インクジェットヘッドの吐出制御に用いる1つの動き量検出部を順次切り替えて選択する。これにより、制御部の処理負担を軽減できる。
【0015】
本発明に係る印刷装置の第3の特徴によれば、制御部は、印刷媒体の動き量を検出している動き量検出部が複数存在する期間において、当該複数の動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量の平均を用いてインクジェットヘッドの吐出制御を行う。これにより、制御部は、印刷媒体の挙動に対してより適切な吐出制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】第1〜第3動き量センサの配置を示す図である。
【図4】撮像部の概略構成図である。
【図5】第1〜第3動き量センサを用いたインクジェットヘッドの吐出制御を説明するためのフローチャートである。
【図6】動き量センサにより検出される動き量を用いた吐出制御を説明するための図である。
【図7】用紙センサおよび第1〜第3動き量センサにおける用紙検出のタイミングを示す図である。
【図8】搬送印刷部における用紙の移動状況を示す図である。
【図9】吐出タイミングの補正を説明するための図である。
【図10】搬送印刷部における用紙の移動状況を示す図である。
【図11】搬送印刷部における用紙の移動状況を示す図である。
【図12】搬送印刷部における用紙の移動状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0018】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図、図2は、図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明における上下方向、左右方向は、図1において示す上下方向、左右方向を示すものとする。
【0020】
図1において太線で示す経路が、印刷媒体が搬送される搬送経路である。搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、破線で示す経路が排紙経路RD、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。
【0021】
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、搬送印刷部3と、上面搬送部4と、排紙部5と、反転部6と、用紙センサ7と、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cと、制御部9と、各部を収納または保持する筐体10とを備える。
【0022】
給紙部2は、搬送印刷部3に給紙する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に設けられる。給紙部2は、外部給紙台11と、外部給紙ローラ12と、複数の内部給紙台13と、複数の内部給紙ローラ14と、複数対の縦搬送ローラ15と、レジストローラ16とを備える。
【0023】
外部給紙台11は、一部が筐体10の外部に露出して設置され、印刷媒体である用紙Pが積載されるものである。
【0024】
外部給紙ローラ12は、外部給紙台11から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSに沿ってレジストローラ16に向けて搬送する。外部給紙ローラ12は、外部給紙台11の上側に配置されている。
【0025】
内部給紙台13は、筐体10の内部に設けられ、用紙Pが積載されるものである。
【0026】
内部給紙ローラ14は、内部給紙台13から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSに送り出す。内部給紙ローラ14は、内部給紙台13の上側に設けられている。
【0027】
縦搬送ローラ15は、給紙経路RSに沿って配置され、内部給紙台13から取り出された用紙Pをレジストローラ16に向けて搬送する。
【0028】
レジストローラ16は、外部給紙台11、内部給紙台13、反転部6から搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、搬送印刷部3へと送り出す。レジストローラ16は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍の通常経路RC上に配置されている。
【0029】
また、給紙部2は、外部給紙ローラ12および最も下流側の縦搬送ローラ15を回転駆動させるモータと、内部給紙ローラ14および他の縦搬送ローラ15を回転駆動させるモータと、レジストローラ16を回転駆動させるモータ(いずれも図示せず)とを備える。
【0030】
搬送印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに印刷を行う。搬送印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。搬送印刷部3は、ベルト搬送部21と、インクジェットヘッド22A〜22Dとを備える。
【0031】
ベルト搬送部21は、レジストローラ16から搬送されてきた用紙Pを保持して搬送する。ベルト搬送部21は、請求項の搬送部に相当する。ベルト搬送部21は、レジストローラ16の下流側で、インクジェットヘッド22A〜22Dの下方に配置されている。ベルト搬送部21は、搬送ベルト23と、駆動ローラ24と、従動ローラ25〜27と、駆動ローラ24を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0032】
搬送ベルト23は、駆動ローラ24および従動ローラ25〜27に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト23には、用紙Pを吸着保持するためのベルト穴が多数形成されている。搬送ベルト23は、ファン(図示せず)の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト23は、駆動ローラ24の駆動により図1における時計回り方向に回転することで、搬送面(上面)23aに吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0033】
駆動ローラ24および従動ローラ25〜27は、搬送ベルト23が掛け渡されるものである。駆動ローラ24は、搬送ベルト23を回転させる。従動ローラ25〜27は、搬送ベルト23を介して駆動ローラ24に従動する。
【0034】
インクジェットヘッド22A〜22Dは、ベルト搬送部21により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。インクジェットヘッド22A〜22Dは、互いに異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。インクジェットヘッド22A〜22Dは、その下方における用紙Pの搬送方向と略直交する方向に複数のノズルが配列されたラインタイプである。インクジェットヘッド22A〜22Dは、ベルト搬送部21の上方において、左右方向に所定間隔で互いに離間して配置されている。
【0035】
上面搬送部4は、ベルト搬送部21によって搬送されてきた用紙Pを右方向から左方向にUターンするように搬送する。上面搬送部4は、複数対の上面搬送ローラ31と、複数対の上面搬送ローラ31を回転駆動させる複数のモータ(図示せず)とを備える。
【0036】
上面搬送ローラ31は、用紙Pをニップして搬送する。複数対の上面搬送ローラ31は、搬送印刷部3と排紙部5との間の通常経路RCに沿って配置されている。1対の上面搬送ローラ31は、反転経路RRの上流部に配置されている。
【0037】
排紙部5は、印刷済みの用紙Pを排紙して積載する。排紙部5は、切替部41と、排紙ローラ42と、排紙台43と、切替部41を駆動させるソレノイド(図示せず)と、排紙ローラ42を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0038】
切替部41は、排紙経路RDと反転経路RRとの分岐点に配置され、用紙Pの搬送経路を排紙経路RDと反転経路RRとの間で切り替える。排紙ローラ42は、切替部41と排紙台43との間に配置され、上面搬送部4により搬送されてきた用紙Pを排紙経路RDに沿って搬送して排紙台43へと排出する。排紙台43は、排紙ローラ42により搬送されてきた用紙Pを積載する。
【0039】
反転部6は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙Pを搬送印刷部3に再給紙するために、片面印刷済みの用紙Pを反転させてレジストローラ16へと搬送する。反転部6は、反転ローラ51と、スイッチバック部52と、再給紙ローラ53と、切替ゲート54と、反転ローラ51を回転駆動させるモータ(図示せず)と、再給紙ローラ53を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0040】
反転ローラ51は、上面搬送部4により搬送されてきた用紙Pをスイッチバック部52に一時的に搬入した後に搬出して、再給紙ローラ53へと搬送する。反転ローラ51は、最も下流側の上面搬送ローラ31とスイッチバック部52の搬入口との間の反転経路RR上に配置されている。
【0041】
スイッチバック部52は、反転ローラ51が用紙Pを一時的に搬入するための空間であり、排紙台43の下部に形成されている。スイッチバック部52は、反転ローラ51の近傍が用紙Pを搬入するために開口されている。
【0042】
再給紙ローラ53は、反転ローラ51により搬送されてきた用紙Pをレジストローラ16へと搬送する。再給紙ローラ53は、反転ローラ51とレジストローラ16との間の反転経路RR上に配置されている。
【0043】
切替ゲート54は、上面搬送ローラ31によって搬送されてきた用紙Pを反転ローラ51へとガイドする。また、切替ゲート54は、反転ローラ51によってスイッチバック部52から搬出される用紙Pを再給紙ローラ53へとガイドする。切替ゲート54は、最も下流側の上面搬送ローラ31、反転ローラ51、および再給紙ローラ53の3個所の重心近傍に配置されている。
【0044】
用紙センサ7は、レジストローラ16と第1動き量センサ8Aとの間に配置され、通常経路RC上を搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ7は、その検出対象位置に用紙Pが存在している場合にはON信号を出力し、用紙Pが存在していない場合にはOFF信号を出力する。
【0045】
第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、ベルト搬送部21の上方に配置され、ベルト搬送部21により通常経路RCを搬送される用紙Pの搬送方向への動き量を検出する。具体的には、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、移動する用紙Pにレーザ光を照射して撮像し、得られた画像における特定の模様(例えば、用紙Pの表面の凹凸模様)の動きに基づいて、用紙Pの動き量を検出する。撮像対象位置に用紙Pがない状態では、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、搬送ベルト23の搬送面23aを撮像し、その動き量を検出する。第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、請求項の動き量検出部に相当する。
【0046】
第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、左右方向に互いに離間して略等間隔で配置されている。ここで、図3に示すように、隣接する第1動き量センサ8Aと第2動き量センサ8Bとの間の距離、および、第2動き量センサ8Bと第3動き量センサ8Cとの間の距離を、センサ間距離Lsとする。第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、センサ間距離Lsが、最小用紙長(最小印刷媒体長)Lminよりも小さくなるように配置されている。最小用紙長Lminは、印刷装置1で使用される各種の用紙Pのうち、搬送方向における長さである用紙長Lpがもっとも小さい用紙Pの用紙長Lpの値である。
【0047】
また、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cのうち、最も上流側の第1動き量センサ8Aは、最も上流側のインクジェットヘッド22Aよりも上流側に配置されている。最も下流側の第3動き量センサ8Cは、最も下流側のインクジェットヘッド22Dよりも下流側に配置されている。すなわち、左右方向における第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとの間にすべてのインクジェットヘッド22A〜22Dが配置されている。
【0048】
第1動き量センサ8Aは、撮像部61と、動き量算出部62とを備える。第2および第3動き量センサ8B,8Cも第1動き量センサ8Aと同様の構成である。
【0049】
撮像部61は、移動する用紙Pまたは搬送ベルト23を撮像して画像を生成する。撮像部61の概略構成を図4に示す。撮像部61は、レーザダイオード65と、集光レンズ66,67と、エリアセンサ68とを備える。
【0050】
レーザダイオード65は、撮像対象となる用紙Pまたは搬送ベルト23に照射するレーザ光を発する。
【0051】
集光レンズ66は、レーザダイオード65から発せられたレーザ光を用紙Pまたは搬送ベルト23の上に集光する。集光レンズ67は、レーザ光が用紙Pまたは搬送ベルト23で反射された反射光を、エリアセンサ68に集光する。
【0052】
エリアセンサ68は、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を有し、用紙Pまたは搬送ベルト23からの反射光を受光し、受光した光を電気信号に変換し、この電気信号に基づいて画像を生成する。
【0053】
動き量算出部62は、撮像部61で得られた画像における特定の模様がどの程度移動したかを相関関数により算出することで、用紙Pまたは搬送ベルト23の搬送面23aの動き量を算出する。動き量算出部62は、所定の動き量ごとのパルス信号を生成し、これを制御部9に出力する。すなわち、動き量算出部62は、例えばエンコーダパルス信号のような、用紙Pの動き量を示すパルス信号を出力する。
【0054】
制御部9は、CPU、メモリ(いずれも図示せず)等を備えて構成され、印刷装置1の各部を制御するものである。印刷時において、制御部9は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cから、搬送される用紙Pの移動に応じて、用紙Pの動き量を検出している動き量センサを選択し、選択した動き量センサにより検出される用紙Pの動き量を用いてインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。
【0055】
次に、印刷装置1の動作について説明する。
【0056】
印刷装置1の印刷動作は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)から印刷データが入力されることにより開始となる。
【0057】
まず、制御部9は、外部給紙台11および複数の内部給紙台13のいずれかから用紙Pを取り出し、レジストローラ16に向けて搬送するよう給紙部2を制御する。また、制御部9は、ベルト搬送部21の駆動ローラ24を回転駆動させる。これにより、搬送ベルト23が周回駆動される。また、制御部9は、用紙センサ7および第1〜第3動き量センサ8A〜8Cの駆動を開始させる。
【0058】
用紙Pがレジストローラ16に突き当たり、用紙Pに所定の大きさのたるみが形成されると、制御部9は、外部給紙ローラ12または縦搬送ローラ15の駆動を停止させ、レジストローラ16の駆動を開始させる。これにより、レジストローラ16は、用紙Pを、たるみを解消しつつベルト搬送部21に向けて送り出す。ベルト搬送部21は、レジストローラ16から送られてきた用紙Pを搬送ベルト23の搬送面23a上に保持して搬送する。
【0059】
第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、撮像部61により、搬送される用紙Pまたは搬送ベルト23の搬送面23aを撮像する。そして、動き量算出部62が、用紙Pまたは搬送ベルト23の搬送面23aの動き量を算出し、その動き量に応じたパルス信号を制御部9へと出力する。
【0060】
制御部9は、搬送ベルト23により搬送される用紙Pに対して、インクジェットヘッド22A〜22Dからインクを吐出させる。この際、制御部9は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを用いて、用紙Pの動きに応じたインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。この第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを用いたインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御については後述する。
【0061】
なお、印刷に使用する用紙Pの用紙長Lpが第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとの間の距離より大きい場合、すなわち、Lp>2×Lsである場合、インクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御に第2動き量センサ8Bを用いる必要がない。Lp>2×Lsであれば、用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aを通過するときには、用紙Pの先端が第3動き量センサ8Cに到達しており、制御部9は、第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとで連続的に用紙Pの動き量を取得できるからである。したがって、制御部9は、Lp>2×Lsである場合、第2動き量センサ8Bの駆動を省略できる。制御部9は、印刷に使用する用紙Pの用紙長Lpを、印刷に使用する用紙Pの種類から判断できる。印刷に使用する用紙Pの種類は、例えば、PCからの印刷データにより指示される。
【0062】
片面印刷の場合、搬送印刷部3で印刷された用紙Pは、ベルト搬送部21から上面搬送部4へと送られ、上面搬送部4により搬送される。そして、用紙Pは、排紙部5の切替部41によって排紙ローラ42へと導かれ、排紙台43に排紙される。
【0063】
両面印刷の場合、片面印刷の場合と同様に一方の面に印刷された用紙Pが、切替部41によって上面搬送部4から反転部6へと導かれる。反転部6では、用紙Pは、切替ゲート54により反転ローラ51へと導かれ、反転ローラ51によりスイッチバック部52へと搬入される。その後、用紙Pは、反転ローラ51によりスイッチバック部52から搬出されるとともに、切替ゲート54により再給紙ローラ53へと導かれる。次いで、用紙Pは、再給紙ローラ53によりレジストローラ16へと搬送され、レジストローラ16によりベルト搬送部21へと送り出される。ここで、用紙Pは、反転部6によって反転されているので、未印刷面(他方の面)がインクジェットヘッド22A〜22Dに向けられている。インクジェットヘッド22A〜22Dにより用紙Pの他方の面に印刷された後、両面印刷済みの用紙Pは、上面搬送部4により搬送され、排紙部5において排紙台43に排紙される。
【0064】
次に、上述した印刷動作時における第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを用いたインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御について説明する。ここでは、印刷に使用する用紙Pの用紙長Lpが第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとの間の距離以下である場合、すなわち、Lp≦2×Lsである場合について説明する。この場合、制御部9は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cのすべてをインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御に用いる。
【0065】
図5は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを用いたインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を説明するためのフローチャートである。
【0066】
印刷動作を開始すると、図5のステップS10において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になったか(用紙Pの先端が検出されたか)否かを判断する。用紙センサ7の出力信号がOFF信号であると判断した場合(ステップS10:NO)、制御部9は、ステップS10の処理を繰り返す。
【0067】
用紙センサ7の出力信号がON信号になったと判断した場合(ステップS10:YES)、ステップS20において、制御部9は、第1動き量センサ8Aで検出される動き量を用いた吐出制御を開始する。
【0068】
具体的には、制御部9は、第1動き量センサ8Aから入力される用紙Pの動き量を示すパルス信号に基づき、吐出パルス信号を生成する。吐出パルス信号は、インクジェットヘッド22A〜22Dの吐出駆動タイミングを決めるためのクロック信号である。具体的には、用紙センサ7の出力信号がON信号になってから最初に第1動き量センサ8Aから入力されるパルスを図6に示すパルスPa(1)とすると、制御部9は、パルスPa(1)の立ち上がりの時点から内蔵のタイマによるカウントを開始する。そして、制御部9は、次に入力されるパルスPa(2)の立ち上がりまでのカウント値Ca(1)を記憶する。制御部9は、このカウント値Ca(1)に対応する時間を周期T(1)とするデューティ比50%のパルスPt(1)を生成する。すなわち、パルスPt(1)のパルス幅τ(1)は、周期T(1)の1/2となっている。ここで、制御部9は、カウント値Ca(1)を取得してからパルスPt(1)を生成するため、パルスPt(1)は、対応する第1動き量センサ8AからのパルスPa(1)に対して時間的に遅れて現れる。制御部9として処理速度が高速なCPUを用いれば、この遅れは短縮できる。
【0069】
以降同様に、制御部9は、第1動き量センサ8Aから入力されるパルスPa(2),Pa(3),…からパルスPt(2),Pt(3),…を生成し、これを吐出パルス信号とする。パルスPt(2),Pt(3)のパルス幅τ(2),τ(3)、および周期T(2),T(3)は、カウント値Ca(2),Ca(3)から算出される値となる。
【0070】
制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点からの吐出パルス信号のパルス数と、印刷対象の画像データとに基づいて、インクジェットヘッド22A〜22Dの各ノズルからのインクの吐出を制御する。制御部9は、各ノズルからインクを吐出させるタイミングを示すパルス数として、用紙センサ7から各ノズルまでの距離に応じたパルス数を予め設定している。なお、図7に示すように、用紙Pの先端が第1動き量センサ8Aに到達するまでは、第1動き量センサ8Aは、搬送ベルト23の搬送面23aの動き量を検出していることになる。ここで、図7は、1ページのみの通紙時の用紙センサおよび第1〜第3動き量センサにおける用紙検出のタイミングを示す図である。
【0071】
次いで、ステップS30において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から、時間t1が経過したか否かを判断する。時間t1は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから第2動き量センサ8Bに到達するまでの時間として予め設定された時間である。時間t1が経過していないと判断した場合(ステップS30:NO)、制御部9は、ステップS30の処理を繰り返す。
【0072】
時間t1が経過したと判断した場合(ステップS30:YES)、ステップS40において、制御部9は、吐出制御に用いる動き量センサを第1動き量センサ8Aから第2動き量センサ8Bへと切り替える。また、制御部9は、後述する吐出タイミングの補正を開始する。
【0073】
前述のように、センサ間距離Lsが最小用紙長Lminより小さいため、Ls<Lpである。このため、図7、図8に示すように、用紙Pの先端が第2動き量センサ8Bに到達した時点において、第1動き量センサ8Aでも用紙Pを検出している。ここで吐出制御に用いる動き量センサを第1動き量センサ8Aから第2動き量センサ8Bへと切り替えることで、制御部9は、用紙Pの動き量を連続的に取得して吐出制御できる。
【0074】
なお、時間t1は、ベルト搬送部21の搬送速度で用紙センサ7から第2動き量センサ8Bまで用紙Pを搬送するために要する時間の理論値よりも大きい値としてもよい。これにより、確実に用紙Pが第2動き量センサ8Bに到達してから、吐出制御に用いる動き量センサを第1動き量センサ8Aから第2動き量センサ8Bへと切り替えることが可能となる。
【0075】
制御部9は、第1動き量センサ8Aと第2動き量センサ8Bとの両方で用紙Pが検出されている期間では、第2動き量センサ8Bで検出された用紙Pの動き量に基づく吐出タイミングを、第1動き量センサ8Aで検出された用紙Pの動き量を用いて補正する。
【0076】
この吐出タイミングの補正について説明する。制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から時間t1が経過するまでは、前述のように、第1動き量センサ8Aから入力されるパルス信号に基づいて吐出パルス信号を生成する。すなわち、図9に示すように、第1動き量センサ8Aから入力されるパルスPa(m−2),Pa(m−1)に対応するカウント値Ca(m−2),Ca(m−1)に基づき、吐出パルス信号のパルスPt(m−2),Pa(m−1)を生成する。パルスPt(m−2),Pt(m−1)のパルス幅τ(m−2),τ(m−1)、および周期T(m−2),T(m−1)は、カウント値Ca(m−2),Ca(m−1)から算出される値となる。
【0077】
時間t1が経過すると、制御部9は、第2動き量センサ8Bから入力されるパルスPb(n)に対応するカウント値Cb(n)に加えて、第1動き量センサ8Aから入力されるパルスPa(m)に対応するカウント値Ca(m)も用いて、吐出パルス信号のパルスPt(m)を生成する。具体的には、制御部9は、カウント値Cb(n)とカウント値Ca(m)との平均値(Cb(n)+Ca(m))/2を算出する。そして、制御部9は、この平均値(Cb(n)+Ca(m))/2に対応する時間を周期T(m)とし、パルス幅τ(m)=T(m)/2のパルスPt(m)を生成する。以降同様に、制御部9は、パルスPb(n+1),Pb(n+2),…およびパルスPa(m+1),Pa(m+2),…から、吐出パルス信号のパルスPt(m+1),Pt(m+2),…を生成する。
【0078】
このようにして、制御部9は、第2動き量センサ8Bから入力されるパルス信号に基づく吐出タイミングを、第1動き量センサ8Aから入力されるパルス信号を用いて補正する。換言すれば、制御部9は、第1動き量センサ8Aおよび第2動き量センサ8Bか検出する動き量の平均を用いて吐出タイミングを制御する。
【0079】
次いで、ステップS50において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から、時間t2が経過したか否かを判断する。時間t2は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから、用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aに到達するまでの時間として予め設定された時間である。時間t2は、使用する用紙Pの用紙長Lpによって異なる。時間t2が経過していないと判断した場合(ステップS50:NO)、制御部9は、ステップS50の処理を繰り返す。
【0080】
時間t2が経過したと判断した場合(ステップS50:YES)、ステップS60において、制御部9は、上述した吐出タイミングの補正を終了する。図7、図10に示すように、用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aに到達すると、その後、第1動き量センサ8Aで検出する動き量は、用紙Pではなく搬送ベルト23の搬送面23aの動き量である。このため、制御部9は、時間t2が経過すると、第2動き量センサ8Bのみを用いた吐出制御を行う。具体的には、制御部9は、図9に示すように、時間t2が経過すると、第2動き量センサ8Bから入力されるパルスPb(n+i+1),Pb(n+i+2)に対応するカウント値Cb(n+i+1),Cb(n+i+2)に基づき、吐出パルス信号のパルスPt(m+i+1),Pt(m+i+2)を生成する。
【0081】
なお、時間t2は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから、用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aに到達するまでの時間の理論値よりも大きい値としてもよい。これにより、確実に用紙Pの後端が第1動き量センサ8Aを通過してから、吐出タイミングの補正を終了できる。
【0082】
次いで、ステップS70において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から、時間t3が経過したか否かを判断する。時間t3は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから第3動き量センサ8Cに到達するまでの時間として予め設定された時間である。時間t3が経過していないと判断した場合(ステップS70:NO)、制御部9は、ステップS70の処理を繰り返す。
【0083】
時間t3が経過したと判断した場合(ステップS70:YES)、ステップS80において、制御部9は、吐出制御に用いる動き量センサを第2動き量センサ8Bから第3動き量センサ8Cへと切り替える。また、制御部9は、吐出タイミングの補正を開始する。図7、図11に示すように、用紙Pの先端が第3動き量センサ8Cに到達したとき、第2動き量センサ8Bでも用紙Pを検出している。
【0084】
ここで制御部9が行う吐出タイミングの補正は、第3動き量センサ8Cから入力されるパルス信号に基づく吐出タイミングを、第2動き量センサ8Bから入力されるパルス信号を用いて補正するものである。この補正の処理内容は、上述のステップS40で説明した処理内容と同様のものであるため、説明を省略する。
【0085】
なお、時間t3は、ベルト搬送部21の搬送速度で用紙センサ7から第3動き量センサ8Cまで用紙Pを搬送するために要する時間の理論値よりも大きい値としてもよい。これにより、確実に用紙Pが第3動き量センサ8Cに到達してから、吐出制御に用いる動き量センサを第2動き量センサ8Bから第3動き量センサ8Cへと切り替えることが可能となる。
【0086】
次いで、ステップS90において、制御部9は、用紙センサ7の出力信号がON信号になった時点から、時間t4が経過したか否かを判断する。時間t4は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから、用紙Pの後端が第2動き量センサ8Bに到達するまでの時間として予め設定された時間である。時間t4は、使用する用紙Pの用紙長Lpによって異なる。時間t4が経過していないと判断した場合(ステップS90:NO)、制御部9は、ステップS90の処理を繰り返す。
【0087】
時間t4が経過したと判断した場合(ステップS90:YES)、ステップS100において、制御部9は、ステップS80で開始した吐出タイミングの補正を終了する。図7、図12に示すように、用紙Pの後端が第2動き量センサ8Bに到達すると、その後、第3動き量センサ8Cでのみ、用紙Pの動き量が検出される。したがって、制御部9は、時間t4が経過すると、第3動き量センサ8Cのみを用いた吐出制御を行う。すなわち、制御部9は、第3動き量センサ8Cから入力されるパルス信号に基づき、吐出パルス信号を生成する。
【0088】
なお、時間t4は、ベルト搬送部21の搬送速度において、用紙Pの先端が用紙センサ7に到達してから、用紙Pの後端が第2動き量センサ8Bに到達するまでの時間の理論値よりも大きい値としてもよい。これにより、確実に用紙Pの後端が第2動き量センサ8Bを通過してから、吐出タイミングの補正を終了できる。
【0089】
そして、ステップS110において、制御部9は、印刷対象の画像データに基づくインクの吐出が終了したか否かを判断する。インクの吐出が終了していないと判断した場合(ステップS110:NO)、制御部9は、ステップS110の処理を繰り返す。インクの吐出が終了したと判断した場合(ステップS110:YES)、制御部9は、インクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を終了する。
【0090】
以上により1ページ分の印刷が終了する。複数ページ印刷する場合は、各ページについて上述した図5のフローチャートの処理が行われる。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態の印刷装置1は、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを有する。第1〜第3動き量センサ8A〜8Cは、センサ間距離Lsが、最小用紙長Lminよりも小さくなるように配置されている。また、左右方向における第1動き量センサ8Aと第3動き量センサ8Cとの間にすべてのインクジェットヘッド22A〜22Dが配置されている。そして、制御部9が、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cから、搬送される用紙Pの移動に応じて、用紙Pの動き量を検出している動き量センサを選択し、選択した動き量センサにより検出される用紙Pの動き量を用いてインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。これにより、印刷装置1では、用紙Pが最下流のインクジェットヘッド22Dを通過するまで、用紙Pの実際の動きに応じた吐出制御ができるので、印刷画質の低下を抑制できる。
【0092】
また、制御部9は、吐出制御に用いる動き量センサを切り替えた際に、切り替え前の動き量センサにより検出される用紙Pの動き量を用いて、切り替え後の動き量センサにより検出される用紙Pの動き量に基づく吐出タイミングを補正する。すなわち、複数の動き量センサが用紙Pの動き量を検出している期間において、当該複数の複数の動き量センサにより検出される用紙Pの動き量の平均を用いてインクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御を行う。これにより、用紙Pの挙動に対してより適切な吐出制御ができる。例えば、用紙Pの後端部がレジストローラ16から抜けることによる影響などにより、先端側と後端側とで用紙Pの挙動に差異が生じる可能性がある。このような場合でも、上記の吐出タイミングの補正を行うことで、適切な吐出制御ができ、印刷画質の低下を抑制できる。
【0093】
なお、上記の吐出タイミングの補正を省略してもよい。すなわち、制御部9は、用紙Pの移動に応じて、インクジェットヘッド22A〜22Dの吐出制御に用いる1つの動き量センサを順次切り替えて選択していくようにしてもよい。この場合、例えば、図9の例では、時間t1が経過した時点から、制御部9は、第2動き量センサ8Bから入力されるパルスPb(n),Pb(n+1),…のみに基づく吐出パルス信号の生成を開始する。このようにすれば、制御部9による吐出タイミング制御の処理負担を軽減できる。例えば、複数の動き量センサで用紙Pの動き量を検出している期間が短い場合や、用紙Pの先端部の挙動から用紙P全体の挙動を近似できるような場合において、制御部9の処理負担を軽減しつつ、用紙Pの実際の動きに応じた吐出制御が可能となる。
【0094】
また、本実施の形態では、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cを左右方向に等間隔で配置したが、等間隔でなくてもよい。また、動き量センサは3つでなくてもよい。また、インクジェットヘッドも4つに限らない。センサ間距離が最小用紙長Lminよりも小さく、最上流の動き量センサと最下流の動き量センサとの間にすべてのインクジェットヘッドが配置されていればよい。
【0095】
また、第1〜第3動き量センサ8A〜8Cとして、レーザドップラ速度計を有する検出器を用いることも可能である。
【0096】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 印刷装置
2 給紙部
3 搬送印刷部
4 上面搬送部
5 排紙部
6 反転部
7 用紙センサ
8A〜8C 第1〜第3動き量センサ
9 制御部
21 ベルト搬送部
22A〜22D インクジェットヘッド
61 撮像部
62 動き量算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される印刷媒体にインクを吐出する1つ以上のインクジェットヘッドと、
前記搬送部により搬送される印刷媒体の動き量を検出する複数の動き量検出部と、
前記インクジェットヘッドの吐出制御を行う制御部とを備え、
前記複数の動き量検出部は、印刷媒体の搬送方向に互いに離間して、隣接する前記動き量検出部の間の距離が所定の最小印刷媒体長よりも小さくなるように配置され、
前記搬送方向における最上流の前記動き量検出部と最下流の前記動き量検出部との間にすべての前記インクジェットヘッドが配置され、
前記制御部は、印刷媒体の前記搬送方向への移動に応じて、前記複数の動き量検出部のうち、印刷媒体の動き量を検出している動き量検出部を選択し、選択した前記動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量を用いて前記インクジェットヘッドの吐出制御を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、印刷媒体の前記搬送方向への移動に応じて、前記インクジェットヘッドの吐出制御に用いる1つの前記動き量検出部を順次切り替えて選択していくことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、印刷媒体の動き量を検出している前記動き量検出部が複数存在する期間において、当該複数の前記動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量の平均を用いて前記インクジェットヘッドの吐出制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項1】
印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される印刷媒体にインクを吐出する1つ以上のインクジェットヘッドと、
前記搬送部により搬送される印刷媒体の動き量を検出する複数の動き量検出部と、
前記インクジェットヘッドの吐出制御を行う制御部とを備え、
前記複数の動き量検出部は、印刷媒体の搬送方向に互いに離間して、隣接する前記動き量検出部の間の距離が所定の最小印刷媒体長よりも小さくなるように配置され、
前記搬送方向における最上流の前記動き量検出部と最下流の前記動き量検出部との間にすべての前記インクジェットヘッドが配置され、
前記制御部は、印刷媒体の前記搬送方向への移動に応じて、前記複数の動き量検出部のうち、印刷媒体の動き量を検出している動き量検出部を選択し、選択した前記動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量を用いて前記インクジェットヘッドの吐出制御を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、印刷媒体の前記搬送方向への移動に応じて、前記インクジェットヘッドの吐出制御に用いる1つの前記動き量検出部を順次切り替えて選択していくことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、印刷媒体の動き量を検出している前記動き量検出部が複数存在する期間において、当該複数の前記動き量検出部により検出される印刷媒体の動き量の平均を用いて前記インクジェットヘッドの吐出制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−71395(P2013−71395A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213801(P2011−213801)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
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