印字ヘッド及びこれを備えたプリンタ
【課題】印字ワイヤの先端と印刷媒体との距離を調整可能にすることにより、印字力の低下を防止する印字ヘッド及びこれを備えたプリンタを提供する。
【解決手段】印字ヘッド1の使用状況が進んで、ワイヤ11の先端が摩耗して印字用紙20の印字面とワイヤ11の先端との距離が増えてきて印字力が低下した場合に、抜取りスペーサ14を抜き取る。抜取りスペーサ14を抜き取ると、なぞりローラ12の先端とフレームの基準面16aとの距離L2がL1−2tと縮まり、距離L2と等しい印刷用紙20の印字面とフレームの基準面16aとの距離も縮まる。突出したワイヤ11の先端と印刷用紙20の印字面との距離d2もd1−2tと縮まり、ワイヤ11の先端が印字用紙20の印字面に接近して、ワイヤ11が摩耗する前の距離d2となる。
【解決手段】印字ヘッド1の使用状況が進んで、ワイヤ11の先端が摩耗して印字用紙20の印字面とワイヤ11の先端との距離が増えてきて印字力が低下した場合に、抜取りスペーサ14を抜き取る。抜取りスペーサ14を抜き取ると、なぞりローラ12の先端とフレームの基準面16aとの距離L2がL1−2tと縮まり、距離L2と等しい印刷用紙20の印字面とフレームの基準面16aとの距離も縮まる。突出したワイヤ11の先端と印刷用紙20の印字面との距離d2もd1−2tと縮まり、ワイヤ11の先端が印字用紙20の印字面に接近して、ワイヤ11が摩耗する前の距離d2となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤの先端を打ちつけて印字媒体に印字を行う印字ヘッド及びこれを備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
ドットインパクト式の印字ヘッドが印刷装置、記録装置等に用いられている。このような印字ヘッドとして、特許文献1に示すように、励磁コイルに給電して磁気コア部に発生させた磁力により吸着されるとともに復帰ばねにより待機位置へと付勢されることにより揺動する印字レバーと、この印字レバーの一端にそれぞれ固定され、印字レバーにより付勢されてインクリボンを介して印字用紙の印字面を打撃して印字する印字ワイヤとを複数それぞれ備えたものがある。
また、特許文献2に示すように、印字ワイヤの先端部と印字用紙の印字面との距離を確保するためのローラを備えたものもある。
【特許文献1】特開平11−334115号公報
【特許文献2】特開平11−179997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1や特許文献2の印字ヘッドにおいては、長く使用している間に印字ワイヤの先端が印字用紙の印字面に何度も打撃されることにより摩耗してしまうことがあった。
【0004】
このように印字ワイヤの先端が摩耗してしまうと、印字ワイヤの先端が印字用紙の印字面に届かなくなり印字がかすれる等印字用紙への印字力が低下してしまうという問題があった。
特許文献2のものでは、印字ヘッドを搭載するキャリアにローラの支持部をネジ止めするための開口が調整方向に伸びており、ネジを緩めて印字面に対するローラの位置を調整することによって印字ワイヤの先端と印字面との距離の調整が可能となっていたが、調整量を規定する構成がなく、調整作業が煩雑であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、印字力の低下を防止するための印字ワイヤの先端と印刷媒体との距離を容易に調整可能にする印字ヘッド及びこれを備えたプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の印字ヘッドは、
印字媒体の印字面に打ちつけられる先端部を有する複数のワイヤと、前記印字媒体と前記ワイヤの先端部との距離を確保するため前記印字媒体上を摺動する回転自在なローラと、該ローラの支持部と、該ローラの支持部が取り付けられるフレームとを備えた印字ヘッドであって、
前記ローラの支持部と前記フレームとの間に、前記印字媒体と前記ワイヤの先端部との距離を調整するためのスペーサを備え、当該スペーサは前記ローラの支持部と前記フレームとの間で抜き取り可能に挟持されることを特徴とする。
【0007】
また、前記スペーサは、複数枚から構成するとよい。
【0008】
また、前記スペーサには、左右いずれかに偏って摘みが形成されるようにしてもよい。
【0009】
また、前記スペーサは、表裏交互に重ねて配置されるようにしてもよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のプリンタは、上述した印字ヘッドを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印字ワイヤの先端と印刷媒体との距離を調整可能にすることにより、印字力の低下を防止する印字ヘッド及びこれを備えたプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る印字ヘッドについて、以下図面を参照して説明する。印字ヘッド1は、ドットインパクト式のプリンタに用いられるものであり、ワイヤ11の先端が印字用紙20等の印刷媒体の印刷面にインクリボン32を介して打ちつけられることにより印字を行うものである。
【0013】
印字ヘッド1は、図1から図4に示すように、ワイヤ11と、なぞりローラ12と、なぞりローラ12を支持するローラ支持部13と、抜取りスペーサ14と、ワイヤ枠15と、フレーム16と、高さ調整用スペーサ18とを備えている。フレーム16内には、複数のワイヤ11の後端部にそれぞれ一端が固定された図示しない複数のレバーが放射状に配置され、また、複数のレバーを揺動させるための磁力を発生させる図示しないコイル、ヨーク等も配置されている。
【0014】
レバーを磁力による吸着により揺動させることによって、ワイヤ11は先端がワイヤ枠15の開口15aから突出して印字面に打ちつけられる。
【0015】
ワイヤ11は、ワイヤ枠15内に複数配設されている。ワイヤ11は先端が、ワイヤ枠15の先端に形成された二列の開口15aから突出できるように揺動可能にワイヤ枠15内に配設されている。ワイヤ枠15は、フレーム16の底面16aに立設するように取り付けられる。
【0016】
なぞりローラ12は、図5及び図6に示すように、印字用紙20とワイヤ11の先端との距離を確保するためのものである。なぞりローラ12は、図5に示すように、搬送される印字用紙20をプラテン36上で押さえて印字用紙20とワイヤ11の先端との距離を安定させる。なぞりローラ12は、回転自在であり印字用紙20上を摺動する。
【0017】
なぞりローラ12は、印字ヘッド1の移動方向に回転自在にローラ支持部13に支持されている。ローラ支持部13はフレーム16の底面16aに立設するように取付られる。すなわち、ワイヤ11が配設されたワイヤ枠15とローラ支持部13は平行になるようにフレーム16に取り付けられる。
ローラ支持部13は、固定ねじ17によって高さ調整用スペーサ18及び抜取りスペーサ14を介してフレーム16の底面16aに固定される。なぞりローラ12はワイヤ枠15の上部に接近して配置される。
【0018】
高さ調整用スペーサ18は、なぞりローラ12のフレーム16の基準面(底面)16aからの高さを調整するためのスペーサである。高さ調整用スペーサ18には、固定ねじ17によってローラ支持部13とフレーム16の基準面16aとの間に固定されるための固定孔18aが形成されている。
【0019】
抜取りスペーサ14は、図6に示すように、なぞりローラ12のフレーム16の基準面16aからの高さを調整するための抜き取り可能なスペーサである。すなわち、抜取りスペーサ14は、なぞりローラ12の高さを調整すべく引き抜かれて、印字用紙20とフレーム16の基準面16aとの距離を縮め、印字用紙20とワイヤ11の先端との距離を縮めるためのものである。
【0020】
抜取りスペーサ14は2枚備えられている。抜取りスペーサ14には、丸孔141aが形成された摘み14aと、固定ねじ17が遊嵌される溝14bとが形成されている。摘み14aは左右いずれかに偏って形成されている。したがって、図1及び図3に示すように、一方の抜取りスペーサ14に対して他方の抜取りスペーサ14を裏返して交互に重ねて配置することにより、2枚の抜取りスペーサ14の摘み14aは左右に位置がそれぞれ振り分けられる。また、丸孔141aにより摘み14aは把持しやすくなっている。
【0021】
2枚のスペーサ14は、固定ねじ17によって高さ調整用スペーサ18とローラ支持部13の底面のフランジ部13aとの間に固定される。なお、スペーサ14は、図3に示すように、摘み14aがローラ支持部13のフランジ部13aによって重なって隠れないようにフランジ部13aの外縁より把持可能な程度に外側に配置される。
【0022】
抜取りスペーサ14は、固定ねじ17を緩めることによって、溝14bには固定ねじ17が遊嵌されているだけなので、摘み14aを把持して容易に抜取ることが可能である。なお、抜取りスペーサ14の厚さは0.05mm程度である。
【0023】
次に、この印字ヘッド1を備えたプリンタ30について説明する。プリンタ30は、図5に示すように、印字ヘッド1と、印字ヘッド1にセットされるリボンカセット31と、リボンカセット31が備えるインクリボン32と、印字ヘッド1のキャリッジ33と、キャリッジ33を図5(a)において左右方向に移動可能に支持するキャリッジ軸34と、印字用紙20を図5(b)において矢印方向に搬送するための搬送ローラ35と、印字用紙20を支持するプラテン36と、プラテン36を印字ヘッド1の方向へ付勢する付勢ばね37とを備えている。キャリッジ軸34及び搬送ローラ35は、筐体40に平行に架設されている。
【0024】
このプリンタ30では、リボンカセット31がセットされた印字ヘッド1をキャリッジ33を介してキャリッジ軸34の延伸方向に移動させながら、必要に応じて印字用紙20を搬送ローラ35により搬送ローラ35の延伸方向と垂直方向に搬送させる。
【0025】
印字ヘッド1のワイヤ枠15の開口15aから選択的にワイヤ11の先端を突出させて、ワイヤ11の先端をインクリボン32を介してプラテン36上に支持された印字用紙20の印字面に打撃させて印字を行う。
【0026】
ここで、抜取りスペーサ14を抜き取ることにより、印字用紙20とワイヤ11の先端との距離を調整する方法について、図6を用いて説明する。ここでは理解しやすくするために2枚の抜取りスペーサ14をいっしょに抜き取る例について説明する。
【0027】
抜取りスペーサ14を抜き取る前の状態を図6(a)に示し、2枚の抜取りスペーサ14を抜き取った後の状態を図6(b)に示す。図6(a)に示すように、抜取りスペーサ14を抜き取る前のなぞりローラ12の先端とフレーム16の基準面16aとの距離をL1とし、1枚の抜取りスペーサ14の厚さをtとし、抜取りスペーサ14を抜き取る前の突出したワイヤ11の先端と印刷用紙20の印字面との距離をd1とする。
【0028】
印字ヘッド1の使用状況が進んで、ワイヤ11の先端が摩耗して印字用紙20の印字面とワイヤ11の先端との距離が増えてきて印字力が低下した場合に、図6(a)に示した状態から、2枚の抜取りスペーサ14を抜き取る。2枚の抜取りスペーサ14を抜き取ると、なぞりローラ12の先端とフレーム16の基準面16aとの距離L2がL1−2tと縮まる。この縮まる距離L2は、印刷用紙20の印字面とフレーム16の基準面との距離でもある。
【0029】
その結果、突出したワイヤ11の先端と印刷用紙20の印字面との距離もd1−2tと縮まり、ワイヤ11の先端が印字用紙20の印字面に接近して、ワイヤ11が摩耗する前の距離となる。これにより、再度、良好な印字が得られる。
【0030】
このように本実施の形態の印字ヘッドでは、抜取りスペーサ14を抜き取ることによりワイヤ11の先端が摩耗した場合にも、ワイヤ11の先端と印字用紙20の印字面との距離を調整して縮めることができるようにしたので、印字力の低下を防止することができる。
【0031】
また、本実施の形態の印字ヘッドでは、2枚の抜取りスペーサ14を備えているために、段階的にワイヤ11の先端と印字用紙20の印字面との距離を調整することができる。
【0032】
また、本実施の形態の印字ヘッドでは、一方の抜取りスペーサ14に対して他方の抜取りスペーサ14を裏返して交互に重ねて配置することにより、2枚の抜取りスペーサ14の摘み14aは左右に位置がそれぞれ振り分けられるので、容易に1枚ずつ抜取りスペーサ14を抜き取ることができる。このように複数枚のスペーサを使用する際は、スペーサの平面形状を互いの摘みが重ならないようなものとすれば、同様に容易に1枚ずつ抜取りスペーサを抜き取ることができる。
【0033】
また、本実施の形態のプリンタでは、上述したような印字ヘッドを備えるようにしたため、良好な印字作業を印字力が低下することなく行うことができる。
【0034】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、本実施形態では抜取りスペーサ14を2枚備えた例について説明したが、抜取りスペーサは1枚でもよく、3枚以上であってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、抜取りスペーサ14の厚さを0.05mm程度に形成する例について説明したが、ワイヤ11の摩耗の度合い等を考慮して、抜取りスペーサ14の厚さは任意に決定することができるし、使用するスペーサ14の枚数も適宜に決定することができる。例えば、印字ヘッドを搭載するプリンタに特定のワイヤ11の印字数又は複数のワイヤ11の平均印字数をカウントするカウンタ及びそのカウント値の表示部を設け、所定のカウント値に応じて、複数の抜取りスペーサ14を所定の順序で抜き取るようにしても良い。
【0036】
また、本実施形態は、抜取りスペーサ14を裏表交互に配置する例について説明したが、あらかじめ摘みの位置が左右にそれぞれ偏って形成された抜取りスペーサを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る印字ヘッドの構成を表す分解斜視図である。
【図2】図1に示した印字ヘッドの側面図である。
【図3】図1に示した印字ヘッドの正面図である。
【図4】図1に示した印字ヘッドの平面図である。
【図5】(a)は図1に示した印字ヘッドを備えたプリンタの平面図であり、(b)は(a)に示したプリンタのA−A矢視断面図である。
【図6】(a)は図1に示した印字ヘッドの抜取りスペーサの抜取り前の状態を表す説明図であり、(b)は図1に示した印字ヘッドの抜取りスペーサの抜取り後の状態を表す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 印字ヘッド
11 ワイヤ
12 なぞりローラ
13 ローラ支持部
14 抜取りスペーサ
14a 摘み
16 フレーム
16a 基準面(底面)
17 固定ねじ
18 高さ調整用スペーサ
20 印字用紙
30 プリンタ
32 インクリボン
36 プラテン
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤの先端を打ちつけて印字媒体に印字を行う印字ヘッド及びこれを備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
ドットインパクト式の印字ヘッドが印刷装置、記録装置等に用いられている。このような印字ヘッドとして、特許文献1に示すように、励磁コイルに給電して磁気コア部に発生させた磁力により吸着されるとともに復帰ばねにより待機位置へと付勢されることにより揺動する印字レバーと、この印字レバーの一端にそれぞれ固定され、印字レバーにより付勢されてインクリボンを介して印字用紙の印字面を打撃して印字する印字ワイヤとを複数それぞれ備えたものがある。
また、特許文献2に示すように、印字ワイヤの先端部と印字用紙の印字面との距離を確保するためのローラを備えたものもある。
【特許文献1】特開平11−334115号公報
【特許文献2】特開平11−179997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1や特許文献2の印字ヘッドにおいては、長く使用している間に印字ワイヤの先端が印字用紙の印字面に何度も打撃されることにより摩耗してしまうことがあった。
【0004】
このように印字ワイヤの先端が摩耗してしまうと、印字ワイヤの先端が印字用紙の印字面に届かなくなり印字がかすれる等印字用紙への印字力が低下してしまうという問題があった。
特許文献2のものでは、印字ヘッドを搭載するキャリアにローラの支持部をネジ止めするための開口が調整方向に伸びており、ネジを緩めて印字面に対するローラの位置を調整することによって印字ワイヤの先端と印字面との距離の調整が可能となっていたが、調整量を規定する構成がなく、調整作業が煩雑であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、印字力の低下を防止するための印字ワイヤの先端と印刷媒体との距離を容易に調整可能にする印字ヘッド及びこれを備えたプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の印字ヘッドは、
印字媒体の印字面に打ちつけられる先端部を有する複数のワイヤと、前記印字媒体と前記ワイヤの先端部との距離を確保するため前記印字媒体上を摺動する回転自在なローラと、該ローラの支持部と、該ローラの支持部が取り付けられるフレームとを備えた印字ヘッドであって、
前記ローラの支持部と前記フレームとの間に、前記印字媒体と前記ワイヤの先端部との距離を調整するためのスペーサを備え、当該スペーサは前記ローラの支持部と前記フレームとの間で抜き取り可能に挟持されることを特徴とする。
【0007】
また、前記スペーサは、複数枚から構成するとよい。
【0008】
また、前記スペーサには、左右いずれかに偏って摘みが形成されるようにしてもよい。
【0009】
また、前記スペーサは、表裏交互に重ねて配置されるようにしてもよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のプリンタは、上述した印字ヘッドを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印字ワイヤの先端と印刷媒体との距離を調整可能にすることにより、印字力の低下を防止する印字ヘッド及びこれを備えたプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る印字ヘッドについて、以下図面を参照して説明する。印字ヘッド1は、ドットインパクト式のプリンタに用いられるものであり、ワイヤ11の先端が印字用紙20等の印刷媒体の印刷面にインクリボン32を介して打ちつけられることにより印字を行うものである。
【0013】
印字ヘッド1は、図1から図4に示すように、ワイヤ11と、なぞりローラ12と、なぞりローラ12を支持するローラ支持部13と、抜取りスペーサ14と、ワイヤ枠15と、フレーム16と、高さ調整用スペーサ18とを備えている。フレーム16内には、複数のワイヤ11の後端部にそれぞれ一端が固定された図示しない複数のレバーが放射状に配置され、また、複数のレバーを揺動させるための磁力を発生させる図示しないコイル、ヨーク等も配置されている。
【0014】
レバーを磁力による吸着により揺動させることによって、ワイヤ11は先端がワイヤ枠15の開口15aから突出して印字面に打ちつけられる。
【0015】
ワイヤ11は、ワイヤ枠15内に複数配設されている。ワイヤ11は先端が、ワイヤ枠15の先端に形成された二列の開口15aから突出できるように揺動可能にワイヤ枠15内に配設されている。ワイヤ枠15は、フレーム16の底面16aに立設するように取り付けられる。
【0016】
なぞりローラ12は、図5及び図6に示すように、印字用紙20とワイヤ11の先端との距離を確保するためのものである。なぞりローラ12は、図5に示すように、搬送される印字用紙20をプラテン36上で押さえて印字用紙20とワイヤ11の先端との距離を安定させる。なぞりローラ12は、回転自在であり印字用紙20上を摺動する。
【0017】
なぞりローラ12は、印字ヘッド1の移動方向に回転自在にローラ支持部13に支持されている。ローラ支持部13はフレーム16の底面16aに立設するように取付られる。すなわち、ワイヤ11が配設されたワイヤ枠15とローラ支持部13は平行になるようにフレーム16に取り付けられる。
ローラ支持部13は、固定ねじ17によって高さ調整用スペーサ18及び抜取りスペーサ14を介してフレーム16の底面16aに固定される。なぞりローラ12はワイヤ枠15の上部に接近して配置される。
【0018】
高さ調整用スペーサ18は、なぞりローラ12のフレーム16の基準面(底面)16aからの高さを調整するためのスペーサである。高さ調整用スペーサ18には、固定ねじ17によってローラ支持部13とフレーム16の基準面16aとの間に固定されるための固定孔18aが形成されている。
【0019】
抜取りスペーサ14は、図6に示すように、なぞりローラ12のフレーム16の基準面16aからの高さを調整するための抜き取り可能なスペーサである。すなわち、抜取りスペーサ14は、なぞりローラ12の高さを調整すべく引き抜かれて、印字用紙20とフレーム16の基準面16aとの距離を縮め、印字用紙20とワイヤ11の先端との距離を縮めるためのものである。
【0020】
抜取りスペーサ14は2枚備えられている。抜取りスペーサ14には、丸孔141aが形成された摘み14aと、固定ねじ17が遊嵌される溝14bとが形成されている。摘み14aは左右いずれかに偏って形成されている。したがって、図1及び図3に示すように、一方の抜取りスペーサ14に対して他方の抜取りスペーサ14を裏返して交互に重ねて配置することにより、2枚の抜取りスペーサ14の摘み14aは左右に位置がそれぞれ振り分けられる。また、丸孔141aにより摘み14aは把持しやすくなっている。
【0021】
2枚のスペーサ14は、固定ねじ17によって高さ調整用スペーサ18とローラ支持部13の底面のフランジ部13aとの間に固定される。なお、スペーサ14は、図3に示すように、摘み14aがローラ支持部13のフランジ部13aによって重なって隠れないようにフランジ部13aの外縁より把持可能な程度に外側に配置される。
【0022】
抜取りスペーサ14は、固定ねじ17を緩めることによって、溝14bには固定ねじ17が遊嵌されているだけなので、摘み14aを把持して容易に抜取ることが可能である。なお、抜取りスペーサ14の厚さは0.05mm程度である。
【0023】
次に、この印字ヘッド1を備えたプリンタ30について説明する。プリンタ30は、図5に示すように、印字ヘッド1と、印字ヘッド1にセットされるリボンカセット31と、リボンカセット31が備えるインクリボン32と、印字ヘッド1のキャリッジ33と、キャリッジ33を図5(a)において左右方向に移動可能に支持するキャリッジ軸34と、印字用紙20を図5(b)において矢印方向に搬送するための搬送ローラ35と、印字用紙20を支持するプラテン36と、プラテン36を印字ヘッド1の方向へ付勢する付勢ばね37とを備えている。キャリッジ軸34及び搬送ローラ35は、筐体40に平行に架設されている。
【0024】
このプリンタ30では、リボンカセット31がセットされた印字ヘッド1をキャリッジ33を介してキャリッジ軸34の延伸方向に移動させながら、必要に応じて印字用紙20を搬送ローラ35により搬送ローラ35の延伸方向と垂直方向に搬送させる。
【0025】
印字ヘッド1のワイヤ枠15の開口15aから選択的にワイヤ11の先端を突出させて、ワイヤ11の先端をインクリボン32を介してプラテン36上に支持された印字用紙20の印字面に打撃させて印字を行う。
【0026】
ここで、抜取りスペーサ14を抜き取ることにより、印字用紙20とワイヤ11の先端との距離を調整する方法について、図6を用いて説明する。ここでは理解しやすくするために2枚の抜取りスペーサ14をいっしょに抜き取る例について説明する。
【0027】
抜取りスペーサ14を抜き取る前の状態を図6(a)に示し、2枚の抜取りスペーサ14を抜き取った後の状態を図6(b)に示す。図6(a)に示すように、抜取りスペーサ14を抜き取る前のなぞりローラ12の先端とフレーム16の基準面16aとの距離をL1とし、1枚の抜取りスペーサ14の厚さをtとし、抜取りスペーサ14を抜き取る前の突出したワイヤ11の先端と印刷用紙20の印字面との距離をd1とする。
【0028】
印字ヘッド1の使用状況が進んで、ワイヤ11の先端が摩耗して印字用紙20の印字面とワイヤ11の先端との距離が増えてきて印字力が低下した場合に、図6(a)に示した状態から、2枚の抜取りスペーサ14を抜き取る。2枚の抜取りスペーサ14を抜き取ると、なぞりローラ12の先端とフレーム16の基準面16aとの距離L2がL1−2tと縮まる。この縮まる距離L2は、印刷用紙20の印字面とフレーム16の基準面との距離でもある。
【0029】
その結果、突出したワイヤ11の先端と印刷用紙20の印字面との距離もd1−2tと縮まり、ワイヤ11の先端が印字用紙20の印字面に接近して、ワイヤ11が摩耗する前の距離となる。これにより、再度、良好な印字が得られる。
【0030】
このように本実施の形態の印字ヘッドでは、抜取りスペーサ14を抜き取ることによりワイヤ11の先端が摩耗した場合にも、ワイヤ11の先端と印字用紙20の印字面との距離を調整して縮めることができるようにしたので、印字力の低下を防止することができる。
【0031】
また、本実施の形態の印字ヘッドでは、2枚の抜取りスペーサ14を備えているために、段階的にワイヤ11の先端と印字用紙20の印字面との距離を調整することができる。
【0032】
また、本実施の形態の印字ヘッドでは、一方の抜取りスペーサ14に対して他方の抜取りスペーサ14を裏返して交互に重ねて配置することにより、2枚の抜取りスペーサ14の摘み14aは左右に位置がそれぞれ振り分けられるので、容易に1枚ずつ抜取りスペーサ14を抜き取ることができる。このように複数枚のスペーサを使用する際は、スペーサの平面形状を互いの摘みが重ならないようなものとすれば、同様に容易に1枚ずつ抜取りスペーサを抜き取ることができる。
【0033】
また、本実施の形態のプリンタでは、上述したような印字ヘッドを備えるようにしたため、良好な印字作業を印字力が低下することなく行うことができる。
【0034】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、本実施形態では抜取りスペーサ14を2枚備えた例について説明したが、抜取りスペーサは1枚でもよく、3枚以上であってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、抜取りスペーサ14の厚さを0.05mm程度に形成する例について説明したが、ワイヤ11の摩耗の度合い等を考慮して、抜取りスペーサ14の厚さは任意に決定することができるし、使用するスペーサ14の枚数も適宜に決定することができる。例えば、印字ヘッドを搭載するプリンタに特定のワイヤ11の印字数又は複数のワイヤ11の平均印字数をカウントするカウンタ及びそのカウント値の表示部を設け、所定のカウント値に応じて、複数の抜取りスペーサ14を所定の順序で抜き取るようにしても良い。
【0036】
また、本実施形態は、抜取りスペーサ14を裏表交互に配置する例について説明したが、あらかじめ摘みの位置が左右にそれぞれ偏って形成された抜取りスペーサを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る印字ヘッドの構成を表す分解斜視図である。
【図2】図1に示した印字ヘッドの側面図である。
【図3】図1に示した印字ヘッドの正面図である。
【図4】図1に示した印字ヘッドの平面図である。
【図5】(a)は図1に示した印字ヘッドを備えたプリンタの平面図であり、(b)は(a)に示したプリンタのA−A矢視断面図である。
【図6】(a)は図1に示した印字ヘッドの抜取りスペーサの抜取り前の状態を表す説明図であり、(b)は図1に示した印字ヘッドの抜取りスペーサの抜取り後の状態を表す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 印字ヘッド
11 ワイヤ
12 なぞりローラ
13 ローラ支持部
14 抜取りスペーサ
14a 摘み
16 フレーム
16a 基準面(底面)
17 固定ねじ
18 高さ調整用スペーサ
20 印字用紙
30 プリンタ
32 インクリボン
36 プラテン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体の印字面に打ちつけられる先端部を有する複数のワイヤと、前記印字媒体と前記ワイヤの先端部との距離を確保するため前記印字媒体上を摺動する回転自在なローラと、該ローラの支持部と、該ローラの支持部が取り付けられるフレームとを備えた印字ヘッドであって、
前記ローラの支持部と前記フレームとの間に、前記印字媒体と前記ワイヤの先端部との距離を調整するためのスペーサを備え、当該スペーサは前記ローラの支持部と前記フレームとの間で抜き取り可能に挟持される
ことを特徴とする印字ヘッド。
【請求項2】
前記スペーサは、複数枚からなることを特徴とする請求項1に記載の印字ヘッド。
【請求項3】
前記スペーサには、左右いずれかに偏って摘みが形成されたことを特徴とする請求項2に記載の印字ヘッド。
【請求項4】
前記スペーサは、表裏交互に重ねて配置されることを特徴とする請求項3に記載の印字ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前記印字ヘッドを備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項1】
印字媒体の印字面に打ちつけられる先端部を有する複数のワイヤと、前記印字媒体と前記ワイヤの先端部との距離を確保するため前記印字媒体上を摺動する回転自在なローラと、該ローラの支持部と、該ローラの支持部が取り付けられるフレームとを備えた印字ヘッドであって、
前記ローラの支持部と前記フレームとの間に、前記印字媒体と前記ワイヤの先端部との距離を調整するためのスペーサを備え、当該スペーサは前記ローラの支持部と前記フレームとの間で抜き取り可能に挟持される
ことを特徴とする印字ヘッド。
【請求項2】
前記スペーサは、複数枚からなることを特徴とする請求項1に記載の印字ヘッド。
【請求項3】
前記スペーサには、左右いずれかに偏って摘みが形成されたことを特徴とする請求項2に記載の印字ヘッド。
【請求項4】
前記スペーサは、表裏交互に重ねて配置されることを特徴とする請求項3に記載の印字ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の前記印字ヘッドを備えたことを特徴とするプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−276331(P2007−276331A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107274(P2006−107274)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]