説明

印字装置

【課題】本体ケースの一方側に開口した収納部に積層体を設置して印字を行う印字装置において、専用のアダプタ等を装着しなくても、1枚の被印字媒体に対し所望の態様の両面印刷を実行する。
【解決手段】略シート状の感熱用紙7,7Aを収納する収納部5と、ピックアップローラ20と、サーマルヘッド25と、収納部5の底部5aに立設され、複数枚の感熱用紙7,7Aを順次取り出し可能に積層して収納した用紙パッケージ6の底部6aを、収納部5の底部に5a対して所定の間隙xを介在させつつ保持する突起部51a〜dと、を有し、収納部5は、突起部51a〜dにより保持された用紙パッケージ6が設置される積層体設置部50Uと、積層体設置部50Uに用紙パッケージ6を設置した状態で、当該用紙パッケージ6に積層された感熱用紙7とは別の感熱用紙7Aを設置可能な単票設置部50Lとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の被印字媒体に対し所望の印字を行う印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型の箱体形状の本体ケースに略シート状の被印字媒体を配置して所望の印字を行う印字装置として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
この従来技術の印字装置では、本体ケースの一方側に開口した収納部に、積層体(用紙パッケージ)が設置される。設置された積層体から、ピックアップローラによって複数枚の被印字媒体(感熱用紙)が順次ピックアップされて搬送され、搬送される被印字媒体に対し印字手段(サーマルヘッド)によって所望の印字が行われる。
【0004】
そして、この印字装置では、上記積層体を収納部から取り外し、専用のアダプタ(手差し給紙アタッチメント)を収納部に装着することで、1枚の単票状態の被印字媒体を装置外部から上記アダプタを介しピックアップローラに導入することができる。これにより、上記同様、単票状態の1枚の被印字媒体がピックアップローラにより印字手段へと搬送され、所望の印字が行われる。この結果、操作者が例えば1枚の被印字媒体に対し両面印刷を行いたい場合には、まず通常通りに1枚の被印字媒体に対し片側印刷を行った後、アダプタを用いて当該片側印刷後の被印字媒体を(片側印刷時とは印字面が表裏逆になるようにして)挿入することで、残りの側にも印刷を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−50981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、両面印刷を実行することを目的に単票状態で1枚の被印字媒体を印字手段へと投入するためには、操作者は、別途専用のアダプタを用意し収納部に装着しなければならず、操作が煩わしかった。
【0007】
本発明の目的は、本体ケースの一方側に開口した収納部に積層体を設置して印字を行う印字装置において、専用のアダプタ等を装着しなくても、1枚の被印字媒体に対し所望の態様の両面印刷を実行できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明は、本体ケースと、前記本体ケースの一方側に開口し、印字対象となる略シート状の被印字媒体を収納するための収納部と、前記収納部を覆うように設けられた開閉可能な蓋体と、前記収納部に配置され、前記被印字媒体をピックアップして搬送するピックアップローラと、前記被印字媒体に所望の印字を行う印字手段と、印字手段により印字が行われた前記被印字媒体を排出する排出口と、前記収納部の底部に立設され、複数枚の前記被印字媒体を順次取り出し可能に積層して収納した積層体の底部を、前記収納部の底部に対して所定の間隙を介在させつつ保持する保持部材と、を有する印字装置であって、前記収納部は、上方に開口した前記収納部の開口側に設置され、前記保持部材により保持された前記積層体が設置される積層体設置部と、上方に開口した前記収納部の底部側に設置され、前記積層体設置部に前記積層体を設置した状態で、当該積層体に積層された被印字媒体とは別の被印字媒体を、前記積層体の外部において設置可能な単票設置部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本願発明の印字装置は、開閉可能な蓋体に覆われる、上方が開口した収納部の開口側に、積層体設置部を備えている。すなわち、保持部材が、積層体の底部を保持することにより、保持部材の頂部より上方側を、収納部の底部から所定の間隙だけ離間した積層体設置部とする。この積層体設置部に積層体が設置されると、積層体内部に積層して収納された複数枚の略シート状の被印字媒体がピックアップローラにより順次ピックアップされて搬送される。搬送される被印字媒体は、印字手段により所望の印字が行われた後、排出口から装置外へと排出される。
【0010】
そして、収納部はまた、上記積層体設置部に加え、底部側に単票設置部を備えている。すなわち、上記保持部材が積層体の底部を収納部の底部から所定の間隙だけ離間させて保持するときの、当該所定の間隙が単票設置部となる。この単票設置部には、積層体が積層体設置部に設置された状態で、積層体に含まれない単票状態の被印字媒体を設置することができる。単票設置部に設置された被印字媒体も、上記同様、ピックアップローラによりピックアップされて搬送された後、印字手段により所望の印字が行われ、排出口から排出される。
【0011】
これにより、本願発明において、操作者がある1枚の被印字用紙に両面印刷を行いたい場合には、まず積層体設置部に積層体を設置して片側印刷を実行する。すなわち、上述したように、積層体設置部に設置された積層体から1枚の被印字媒体がピックアップローラによってピックアップされ、その1枚の被印字媒体の片側に印字手段によって所望の印字が行われた後、排出される。その後、操作者は、排出された1枚の被印字媒体を、上記片側印字時と被印字面が逆の面になるように裏返しにして、単票状態で単票設置部に設置する。これにより、単票設置部に設置された(既に片側に印字がなされた)被印字媒体が上記同様にピックアップローラによってピックアップされ、まだ印字がなされていない側(上記印字がなされた片側と反対側)の被印字面に対し印字手段によって所望の印字が行われる。なお、最初の片側印刷時においても、(前述のように積層体設置部から取り出された1枚の被印字媒体を用いず)単票設置部に両面未印刷の被印字媒体を設置して片側に所望の印字を行うようにしてもよい。
【0012】
以上のようにして、本願発明においては、従来構造のように単票用の専用のアダプタ等を別途収納部に装着しなくても、1枚の被印字媒体に対し、所望の態様の両面印刷を実行することができる。
【0013】
また、収納部の上方側に積層体設置部に積層体が配置されるとともに、収納部の下方の底部側に単票設置部が配置されることにより、単票設置部に被印字媒体がなくなった場合は、それ以降、そのまま、積層体設置部に設置された積層体の複数の被印字媒体を下方側から1枚ずつ順次ピックアップし、印字を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用のアダプタ等を装着しなくても、1枚の被印字媒体に対し所望の態様の両面印刷を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による印字装置の外観を表す斜視図である。
【図2】印字装置のケースカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【図3】ケースカバーを閉めた状態での図2中のIII−III断面での横断面図である。
【図4】印字装置に用いられる用紙パッケージの斜視図である。
【図5】用紙パッケージを構成する保護シートを示す図である。
【図6】用紙パッケージから給紙されるときの印字動作を説明する説明図である。
【図7】単票設置部から給紙されるときの印字動作を説明する説明図である。
【図8】用紙パッケージをケースカバーに取付可能とする変形例におけるケースカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【図9】用紙パッケージをケースカバーに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図10】ケースカバーを閉めた状態での図8中のX−X断面での横断面図である。
【図11】ケースカバーを閉めた状態での図8中のXI−XI断面での横断面図である。
【図12】係止爪に関する変形例を表す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
まず、本実施形態に係る印字装置の概略構成について図1又は図2に基づき説明する。図1及び図2に示すように、印字装置1は、平面視が略矩形となる薄型箱体形状の本体ケース2を有している。この本体ケース2は、例えば、長手方向の長さが約16cm、短手方向の長さが約10cmと略A6サイズの大きさで、厚みが約2cmの、上面が解放された直方体形状となっている。
【0018】
本体ケース2の上面の、本体ケース2の長手方向の一端寄りには、本体上面の1/4を占める大きさで、略矩形の固定カバー3が配設されている。また、本体ケース2の上面の、上記固定カバー3とは逆側の端部には、ケースカバー4(蓋体)が一端を軸として回動可能に設けられている。また、本体ケース2の固定カバー3を除く部分には、印字装置1による印字対象となる被印字媒体としての略シート状の感熱用紙7,7A(詳細は後述)が収納される収納部5が形成されている。なお、固定カバー3に覆われた本体ケース2の内部には、後述する印字機構部12が設けられており、収納部5から搬送された上記感熱用紙7,7Aに対して、印字データの印字が行われる(詳細は後述)。
【0019】
<ケースカバー>
ケースカバー4は、固定カバー3を除く本体ケース2上面の3/4の大きさで、略矩形の形状に形成されている。このケースカバー4は、当該ケースカバー4の長手方向の一端部に形成された開閉軸4bを介して、本体ケース2に対して回動可能に取り付けられている。このとき、図2に示すように、ケースカバー4は、本体ケース2の長手方向の両外側面の一端部(図中左手方向)に形成されたスライド溝2aに開閉軸4bを挿入することで取り付けられている。従って、ケースカバー4を開く場合には、ケースカバー4を固定カバー3から離間する方向へスライド溝2aの長さ分だけ摺動させ、その後、開閉軸4bを回転軸として開閉する操作を行う。なお、ケースカバー4を開く場合とは、例えば、収納部5内に感熱用紙7が積層された用紙パッケージ6(後述の図3、図4参照)を収納する場合や、後述の図7に示すように単票の状態の感熱用紙7Aを設置部50Lに設置する場合、がある。
【0020】
また、ケースカバー4には、収納部5に収納される感熱用紙7の搬送方向幅寸法に基づいて、カバー開口部4aが形成されている。このカバー開口部4aは、ケースカバー4を閉じた状態において、収納部5内と、印字装置1の外部とを連通する。さらに、ケースカバー4には、固定カバー3側の端部にロック片4cが形成されており、該ロック片4cが、本体ケース2の固定カバー3側端部に形成された不図示のロック機構と係合することで、閉じ状態のケースカバー4が容易に開くのを防止している。なお、固定カバー3とケースカバー4との間には、印字終了後の上記感熱用紙7,7Aが排出される排出口Hが設けられている(後述の図6参照)。
【0021】
<用紙押さえ>
ケースカバー4の収納部5と対向する内側の面には、後述する印字機構部12の近傍となる位置に、用紙押さえ9が配設されている(図2参照)。この用紙押さえ9は、感熱用紙7の搬送方向上流側でケースカバー4に一端を固定され、下流側は自由端として配設された押さえ板9aと、押さえ板9aの自由端側において、ケースカバー4と押さえ板9aとの間に配設されるバネ9bとで形成される。この用紙押さえ9は、ケースカバー4を閉じた場合に、押さえ板9aの自由端側の端部が収納部5内部に位置し、収納部5内の用紙パッケージ6を適度な押圧力で下方に押圧する。これにより、用紙パッケージ6から順次取り出される感熱用紙7や、用紙パッケージ6の外部に位置する、単票状態の感熱用紙7A(後述の図7参照)の搬送を円滑に行うことができる。
【0022】
<収納部>
収納部5は、底面が略A7サイズの長方形である直方体の空間として形成されている。本実施形態の最大の特徴である収納部5の構造を、図3及び上記図2により説明する。図3に示すように、収納部5は、上方側に位置するパッケージ設置部50U(積層体設置部)と、下方側に位置する単票設置部50Lとを備えている。すなわち、収納部5の略長方形状の底部には、長方形の長辺2つのそれぞれに2箇所ずつ、合計4箇所の同一高さの保持部材としての突起部51a、突起部51b、突起部51c、及び突起部51d(図示省略)が立設されている。これら突起部51a〜51dは、その頂部によって、複数の感熱用紙7が順次取り出し可能に収納された用紙パッケージ6(積層体)の底部を支持する。
【0023】
上記パッケージ設置部50Uは、この例では、上記突起部51a〜51dの頂部よりも上方側の領域である。用紙パッケージ6の底部6aは、当該パッケージ設置部50Uにおいて、収納部5の底部5aに対して、所定の間隙xだけ離れて支持される。
【0024】
上記単票設置部50Lは、上記パッケージ設置部50Uの下方に位置する、上記間隙xに対応した上記突起部51a〜51dの頂部よりも下方側の領域である。この単票設置部50Lには、上記パッケージ設置部50Uに用紙パッケージ6が設置された状態で、1枚又は複数枚の単票状態(=用紙パッケージ6に収納されていない状態)の感熱用紙7Aが設置されている。
【0025】
また、収納部5の両側縁部には、用紙パッケージ6の側面を押圧するガイド部材10が設けられている。ガイド部材10の側面には、用紙パッケージ6の側面と直交する方向に2筋の突起部10aが形成されており、用紙パッケージ6の側面部に対し線で接して押圧力を加えると共に、搬送される感熱用紙7を案内して、給紙時の斜行を防ぐようになっている。
【0026】
<用紙パッケージ及び感熱用紙>
上記用紙パッケージ6を図4及び図5により説明する。用紙パッケージ6は、印字面を下方として複数枚積層されたA7サイズの感熱用紙7と、側面視略コの字状に折り曲げられ、当該積層状態にある感熱用紙7の最上面と最下面と側部とを挟持する保護シート8と、で構成されている(図4参照)。
【0027】
感熱用紙7は、A7サイズの自己発色性を有する感熱シート(いわゆる、サーマルペーパー)であり、感熱用紙7の一面(用紙パッケージ6に収納されてパッケージ設置部50Uに設置された状態で下側の面)は、サーマルヘッド25(後述)に設けられる発熱素子の発熱により、印字される印字面となる。なお、単票設置部50Lに設置される感熱用紙7Aも同様の構成である。そして、感熱用紙7Aも、上記同様、印字面の向きが上記単票設置部50lに設置された状態で下側の面が印字面となるように、設置される。
【0028】
保護シート8は、ほぼ一定の幅寸法の略長方形に形成され、積層された感熱用紙7の最上面に重ねられて、感熱用紙7を外圧から保護する略A7サイズの押圧部8aと、この押圧部8aの搬送方向下流側端縁部(図4中、下側端縁部)から該感熱用紙7の積層可能な高さ寸法だけ延出された延出部8bと、該延出部8bの搬送方向下流側端縁部(図4中、下側端縁部)から押圧部8aの搬送方向長さ寸法よりも所定寸法だけ短くなるように延出された印刷面保護部8cと、感熱用紙7Aの幅方向両側に立設する壁面を構成する(矢印の折り畳み方向参照)ための側壁部8e,8f(図5(b)では図示省略。後述の図3等も参照)と、を備えている。即ち、保護シート8の延出部8bを押圧部8aに対して略直角内側に折り曲げ、更に、印刷面保護部8cを延出部8bに対して略直角内側に折り曲げて、該保護シート8を側面視略コの字形にして、積層された感熱用紙7を挟持して収納部5に装着した場合には、印刷面保護部8cの搬送方向上流側端縁部と、ピックアップローラ20とは、所定隙間を形成する(後述の図6(b)参照)。
【0029】
なお、保護シート8の押圧部8aのうち、用紙パッケージ6を収納部5に収納したときに上側となる表面には、感熱用紙7の大きさを示す「サイズ A7」の情報表示8dが印刷されている。
【0030】
このとき、保護シート8の幅寸法は、感熱用紙7の幅寸法よりも所定寸法だけ大きくなるように形成されている。そして、保護シート8の印刷面保護部8cには、用紙パッケージ6を収納部5に収納した場合に該印刷面保護部8cのガイド部材10(図2参照)に対向する側面部分に、所定幅寸法切り欠かれた逃げ部13が形成されている。これにより、用紙パッケージ6を収納部5に収納して、ケースカバー4を閉じた場合に、ガイド部材10の各突起部10aは、押圧部8aの側面部には当接して、該押圧部8aの他側の側面部をガイド部材10の各突起部10aに押圧するが、印刷面保護部8cの側面部には当接せず、該印刷面保護部8cの他側の側面部はガイド部材10の各突起部10aに接触しても、各突起部10aに押圧されないように構成されている。
【0031】
また、保護シート8の印刷面保護部8cの逃げ部13に対して反対側の側端縁部の表面側には、用紙パッケージ6内に挟持されている被印字媒体である感熱用紙7の種類を表示する4個の略正方形の各種別マーク14a〜14dが搬送方向に沿って印刷されている。これに対応して、収納部5の底面には、各種別マーク14a〜14dに対向する各位置に4個の反射型光センサ15が設けられている(後述の図6参照)。そして、反射型光センサ15が各種別マーク14a〜14dが黒色か白色かを検知することにより、用紙パッケージ6内に挟持されている感熱用紙7等の被印字媒体の種類判別が可能となるように構成されている。さらに、反射型光センサ15は、上記のようにパッケージ設置部50Uの下方に位置する単票設置部50Lに単票状態の感熱用紙7Aが設置された場合は、当該感熱用紙7Aに遮られることで用紙パッケージ6の上記種別マーク14a〜14dが検知されないことをもって、当該感熱用紙7Aの設置を実質的に検出可能となっている(各請求項記載の検出手段としての機能)。これにより、当該反射型光センサ15の検知結果に基づき印字制御を変更可能であり、例えば、通常の用紙パッケージ6を用いた印字とは異なる、単票の感熱用紙7A独自の制御を行うことも可能となる。この独自の制御の一例としては、例えば、当該単票設置部50Lに設置された1枚の感熱用紙7Aに対してのみ、上記ピックアップ及び搬送、並びに上記印字を行うように、ピックアップローラ20及び印字機構部12を連携して制御することが考えられる(各請求項記載の制御手段としての機能)。この場合には、操作者が単票設置部50Lに1枚の感熱用紙7Aを設置するだけで、上記制御手段としての機能によって当該単票状態の感熱用紙7Aに適した動作(例えば単票モード等)に切り替えられ、当該1枚の感熱用紙7Aに限定したピックアップローラ20の搬送及び印字機構部12の印字を、自動的に行うことができる。
【0032】
図2及び図3に戻り、収納部5は、上記ケースカバー4が回動して閉じ状態となったときに、その上部が、ケースカバー4によって覆われる。上記ケースカバー4が開き状態となったときは、収納部5の上部は開放される(図2参照)。これにより、A7サイズの感熱用紙7が積層された上記用紙パッケージ6や単票状態の感熱用紙7Aを操作者が上方より容易に挿入し、収納部5の内部に収納することができる。このとき、収納部5の側縁には、収納部5の底面方向へ向かって傾斜する斜面部を有する切欠部11が形成されており、上記用紙パッケージ6の脱着時において、利用者が指等を挿入し、用紙パッケージ6を取り出し易くなるように図られている。
【0033】
また、収納部5は固定カバー3側の側面が開放されており、印字機構部12と連通されている(後述の図6参照)。これによって、収納部5内を通過した感熱用紙7,7Aが印字機構部12へ搬送可能となっている。
【0034】
<印字機構>
次に、図6及び図7を用いて、感熱用紙7,7Aの搬送と印字の動作挙動について説明する。
【0035】
図6(a)、図6(b)、及び図7において、既に述べたように、固定カバー3の下方の、本体ケース2の内部には、感熱用紙7,7Aに印字を行う印字機構部12が形成されている。印字機構部12は、感熱用紙7,7Aをピックアップして搬送(給紙)するピックアップローラ20、分離部21、及びガイド板27と、感熱用紙7,7Aをサーマルヘッド25方向に案内するペーパーガイド23と、感熱用紙7,7Aをサーマルヘッド25へ搬送するプラテンローラ22と、プラテンローラ22方向に押圧され、そのプラテンローラ22上で感熱用紙7,7Aに加熱印刷を行うサーマルヘッド25(印字手段)で、構成されている。
【0036】
<用紙パッケージを用いて印字を行う場合>
用紙パッケージ6から感熱用紙7を取り出して印字を行うときの挙動を図6(a)及び図6(b)を用いて説明する。この場合は、操作者が、ケースカバー4をスライド溝2aに沿って移動させた後、ケースカバー4を回動し、収納部5の上記パッケージ設置部50Uに用紙パッケージ6を収納する(言い換えれば、突起部51a〜51d上に用紙パッケージ6を載置する)。なお、この際、単票設置部50Lには感熱用紙7Aがないことを確認する必要がある。
【0037】
その後、操作者が、ケースカバー4を閉じ状態にすることにより、ケースカバー4内側面に配設されているバネ9bの付勢力は、用紙押さえ9及び保護シート8を介し、用紙パッケージ6内に積層された感熱用紙7に作用する(図6(b)参照)。これにより、用紙パッケージ6の最下層に位置する感熱用紙7は、収納部5の底部に位置しているピックアップローラ20方向へと押圧され、ピックアップローラ20に密着する。そして、ピックアップローラ20が回転することにより、最下層の感熱用紙7が用紙パッケージ6より引き出され、印字機構部12内部へと搬送される。ここで、感熱用紙7は、感熱用紙7相互の摩擦力の影響で複数枚が重送される場合がある。そこで、複数枚が重送されたまま搬送されることを防止するため、分離部21のピックアップローラ20に対向する側の面には下方向への傾斜面が形成されている。これにより、重送された感熱用紙7がこの傾斜面に触突すると、感熱用紙7の搬送方向先端面と、この傾斜面との摩擦力により、重送された感熱用紙7が単葉に分離される。
【0038】
次に、分離された感熱用紙7が傾斜面に案内されてガイド板27に触突すると、ガイド板27の面方向に従って水平方向に搬送され、ペーパーガイド23へと案内される。ペーパーガイド23は劣弧状の断面形状を成しており、搬送された感熱用紙7の搬送方向はペーパーガイド23の凹面部に沿う方向に矯正される。プラテンローラ22の外周面はペーパーガイド23の内弧面と略密着状態にあり、感熱用紙7はペーパーガイド23によってプラテンローラ22に密着するように押圧され、プラテンローラ22との間に発生する摩擦力によってその外周面上を搬送される。
【0039】
プラテンローラ22の上部には、サーマルヘッド25がプラテンローラ22に対峙し、プラテンローラに対して線接するように押圧されている。従って、搬送された感熱用紙7は、サーマルヘッド25とプラテンローラ22との間隙にはさまれ、サーマルヘッド25の加熱によって感熱用紙7のライン印字が行われる。その後、サーマルヘッド25によって、印字データが印字された感熱用紙7は、プラテンローラ22により搬送され、分離部21の上側の傾斜面を介して、上記排出口Hより印字装置1外へと排出される。このようにして、用紙パッケージ6に挟持された感熱用紙7は、1枚ずつ所望の印字がなされる(図6(b)参照)。
【0040】
なお、上記のようにして感熱用紙7への印字を繰り返すことにより、保護シート8に挟持されている感熱用紙7の枚数が減少し、感熱用紙7の枚数が少なくなった場合であっても、用紙押さえ9により保護シート8の押圧部8aが押圧され、間接的に最下層の感熱用紙7がピックアップローラ20に押圧される。従って、最後の1枚の感熱用紙7であっても、ピックアップローラ20の駆動に伴い、感熱用紙7は搬送され、サーマルヘッド25による印字が行われる。
【0041】
<単票状態の感熱用紙7Aに印字を行う場合>
単票設置部50Lから感熱用紙7Aを搬送して印字を行うときの挙動を図7を用いて説明する。操作者が、上記同様にケースカバー4を回動し、収納部5の上記突起部51a〜51dの間の単票設置部50Lに単票状態の感熱用紙7Aを設置する。その後、操作者は、当該単票設置部50Lの感熱用紙7Aの上方に覆い被さるように突起部51a〜51d上に用紙パッケージ6を載置することで、上記パッケージ設置部50Uに用紙パッケージ6を収納する。
【0042】
その後、操作者が、ケースカバー4を閉じ状態にすることにより、ケースカバー4内側面に配設されているバネ9bの付勢力は、用紙押さえ9及び保護シート8を介し、用紙パッケージ6に作用し、さらに用紙パッケージ6の下方に位置する単票設置部50Lの感熱用紙7Aに作用する(図7参照)。
【0043】
上記の押圧力の作用により、用紙パッケージ6の下方の単票設置部50Lに位置する感熱用紙7Aは、収納部5の底部に位置しているピックアップローラ20方向へと押圧され、ピックアップローラ20に密着する。そして、ピックアップローラ20が回転することにより、当該感熱用紙7Aがピックアップされ、印字機構部12内部へと搬送される。なお、上記のように、単票設置部50Lに感熱用紙7Aがない場合にはパッケージ設置部50Uの用紙パッケージ6からの感熱用紙7がピックアップローラ20にピックアップされる。その一方、単票設置部50Lに感熱用紙7Aがある場合にはパッケージ設置部50Uに用紙パッケージ6が設置してあっても、単票設置部50Lの感熱用紙7Aが優先的にピックアップローラ20によってピックアップされる。上記のようにしてピックアップされた感熱用紙7Aに対する以降の搬送及び印字動作は、前述の感熱用紙7と同様であるので、説明を省略する。
【0044】
以上説明した本実施形態の印字装置1においては、単票設置部50Lを活用することで、1枚の感熱用紙7,7Aに対して両面印刷を行うことができる。上記したようにパッケージ設置部50Uに用紙パッケージ6を設置すると、用紙パッケージ6から1枚の感熱用紙7がピックアップローラ20によってピックアップされ、その1枚の感熱用紙7の片側にサーマルヘッド25によって所望の印字が行われた後、排出口Hから排出される。
【0045】
その後、操作者は、当該排出口Hから排出された片側印字済みの1枚の感熱用紙7を、上記片側印字時と被印字面が逆の面になるように裏返しにし、単票状態で感熱用紙7Aとして単票設置部50Lに設置すればよい。これにより、単票設置部50Lに設置された、既に片側に印字がなされた当該感熱用紙7Aが上記同様にピックアップローラ20によってピックアップされ、まだ印字がなされていない側(上記印字がなされた片側と反対側)の被印字面に対しサーマルヘッド25によって所望の印字が行われる。なお、最初の片側印刷時においても、上記のように用紙パッケージ6から取り出された1枚の感熱用紙7を用いず単票設置部50Lに両面未印刷の感熱用紙7Aを設置して片側に所望の印字を行うようにしてもよい。
【0046】
以上のようにして、本実施形態によれば、従来構造のように単票用の専用のアダプタ等を別途収納部に装着しなくても、1枚の感熱用紙7,7Aに対し、所望の態様の両面印刷を実行することができる。
【0047】
また、本実施形態では特に、単票設置部50Lに設置された感熱用紙7Aが、パッケージ設置部50Uに設置された用紙パッケージ6が積層する感熱用紙7よりも優先的にピックアップローラ25にピックアップされるように、構成されている。これにより、パッケージ設置部50Uに用紙パッケージ6が設置されるとともに、単票設置部50Lに単票状態で1枚の感熱用紙7Aが設置された場合に、確実に単票設置部50Lの感熱用紙7Aがピックアップされ、印字を行うことができる。また、単票設置部50Lの感熱用紙7Aに対し印字が行われて排出口Hから排出され単票設置部50Lに感熱用紙7Aがなくなった場合は、それ以降、そのまま、パッケージ設置部50Uに設置された用紙パッケージ6から通常通りに複数の感熱用紙7を1枚ずつ順次ピックアップし、印字を行うことができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限られず、その技術思想の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について説明する。
【0049】
(1)用紙パッケージをケースカバーに取付可能とする場合
本変形例を図8〜図11により説明する。図8に示すように、本変形例では、ケースカバー4の(閉じ状態での)略長方形状の下面に、長方形の2つの長辺に沿って2箇所ずつ、合計4箇所の同一形状の係止爪61a,61b、61c,61d(付随手段)が設けられている。これら係止爪61a〜61dは、図9に示すように、用紙パッケージ6の幅方向両側縁部、詳細には上記保護シート8の上記側壁部8e,8fをこの例では抱きかかえるようにして保持し係止している(図10も参照。図9では図示の煩雑を避けるために用紙パッケージ6は外形線のみを概略的に図示している)。これにより、図10に示すように、ケースカバー4の閉じ状態においては用紙パッケージ6は上記パッケージ設置部50Uに位置するとともに、ケースカバー4の開き状態においては用紙パッケージ6は開き状態のケースカバー4とともに回動して収納部5から離脱する。
【0050】
またこのとき、図11及び上記図8に示すように、上記ケースカバー4の閉じ状態において、係止爪61aは収納部5のうち上記突起部51aと突起部51bとの間の位置に挿入され、係止爪61bは収納部5のうち上記突起部51bよりも上記開閉軸4b側の位置に挿入され、係止爪61cは収納部5のうち上記突起部51cと突起部51dとの間の位置に挿入され、係止爪61dは収納部5のうち上記突起部51dよりも上記開閉軸4b側の位置に挿入される。言い換えれば、上記ケースカバー4の閉じ状態において、係止爪61a,61b及び上記突起部51a,51bは互いに交互に配列され、係止爪61c,61d及び上記突起部51c,51dは互いに交互に配列されている。
【0051】
以上のように構成した本変形例においては、ケースカバー4の係止爪61a〜61dにより、用紙パッケージ6を係止して保持する。これにより、操作者がケースカバー4を上方へ開くことで、その開いたケースカバー4に随伴して用紙パッケージ6が移動し、収納部5内の下方に位置する単票設置部50Lが露出する(図9参照)。この結果、操作者は、ケースカバー4を開くだけで、特に用紙パッケージ6を収納部5から取り外す操作を行わなくても容易に単票設置部50Lに1枚の感熱用紙7Aを設置することができる。
【0052】
(2)係止爪形状のバリエーション
係止爪61a,61bの形状は上記(1)の変形例の形状には限られない。すなわち、例えば、図12に示すように、係止爪61a,61bの下端部が、積層体設置部50Uに設置された状態の用紙パッケージ6の底部6aよりも上方に位置するような形状としてもよい。この場合は、当該係止爪61a,61bは、前述の抱きかかえるような保持とは異なり、図示のように上記保護シート8の側壁部8e,8fに当接して係止する構造となる。
【0053】
この場合、係止爪61a,61bが単票設置部50Lに一切侵入しない構造とすることができ、レイアウトの自由度が向上する効果がある。すなわち、上記図8に示したような、係止爪61a,61b及び突起部51a,51bの交互配列や、係止爪61c,61d及び突起部51c,51dの交互配列等の構造とする必要がなくなる。つまり、図12に示すように、係止爪61a,61b及び突起部51a,51bを本体ケース2の長手方向に沿った同一の位置に配置したり、係止爪61c,61d及び突起部51c,51dを本体ケース2やケースカバー4の長手方向に沿った同一の位置に配置することも可能となる。
【0054】
なお、上記(1)及び(2)の変形例では、付随手段としての係止爪61a〜61dをケースカバー4に設けたが、これに限られず、例えば両面粘着テープ等の他の付随手段を設けてもよい。また、それら係止爪や両面粘着テープ等を用紙パッケージ6側に設けてもよい。その場合には、当該係止爪が係止されるケースカバー4側の被係止部や当該両面粘着テープが粘着するケースカバー4側の被粘着部が、各請求項記載の付随手段として機能する。
【0055】
(3)その他
例えば、以上においては、被印字媒体として、自己発色性を有する感熱シートである感熱用紙7,7Aを採用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、サーマルヘッド25の加熱により穿孔される穿孔層を基材層上に積層した感熱穿孔タイプのものを使用する構成であっても良い。また、感熱用紙7,7Aの印字面の裏面側に粘着層を有し、当該粘着層を介して剥離紙が貼着されたラベル用印字媒体を使用することも可能である。
【0056】
また、上記においては、感熱用紙7,7Aは、既にA7サイズに切断されたものであったが、これに限定するものではない。例えば、長尺状に形成された感熱シートが巻回されたロールシートを被印字媒体として手差印字に使用することも可能である。この場合、印字機構部12を通過し、印字装置1外部へと排出される排出口の開口縁には、長尺状の感熱シートを所望の位置で切断可能な切断手段(例えば、カッター等)が配設されていることが望ましい。
【0057】
さらに、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0058】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 印字装置
2 本体ケース
4 ケースカバー(蓋体)
5 収納部
5a 底部
6 用紙パッケージ(積層体)
6a 底部
7 感熱用紙(被印字媒体)
7A 感熱用紙(別の被印字媒体)
15 反射型光センサ(検出手段)
20 ピックアップローラ
25 サーマルヘッド(印字手段)
50U 積層体設置部
50L 単票設置部
51a〜d 突起部(保持部材)
61a〜d 係止爪(付随手段)
H 排出口
x 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケースの一方側に開口し、印字対象となる略シート状の被印字媒体を収納するための収納部と、
前記収納部を覆うように設けられた開閉可能な蓋体と、
前記収納部に配置され、前記被印字媒体をピックアップして搬送するピックアップローラと、
前記被印字媒体に所望の印字を行う印字手段と、
印字手段により印字が行われた前記被印字媒体を排出する排出口と、
前記収納部の底部に立設され、複数枚の前記被印字媒体を順次取り出し可能に積層して収納した積層体の底部を、前記収納部の底部に対して所定の間隙を介在させつつ保持する保持部材と、
を有する印字装置であって、
前記収納部は、
上方に開口した前記収納部の開口側に設置され、前記保持部材により保持された前記積層体が設置される積層体設置部と、
上方に開口した前記収納部の底部側に設置され、前記積層体設置部に前記積層体を設置した状態で、当該積層体に積層された被印字媒体とは別の被印字媒体を、前記積層体の外部において設置可能な単票設置部と
を備える
ことを特徴とする印字装置。
【請求項2】
請求項1記載の印字装置において、
前記単票設置部は、
設置された前記被印字媒体が、前記積層体設置部に設置された前記積層体が積層する被印字媒体よりも優先的に前記ピックアップローラにピックアップされるように、構成されている
ことを特徴とする印字装置。
【請求項3】
請求項1記載の印字装置において、
前記蓋体は、
閉じ状態においては前記積層体を前記積層体設置部に位置させるとともに、開き状態においては前記積層体を当該蓋体に付随させる、付随手段を備える
ことを特徴とする印字装置。
【請求項4】
請求項3記載の印字装置において、
前記付随手段は、
前記蓋部に設けられ、前記蓋体の開き状態において前記積層体の幅方向両側の縁部をそれぞれ係止する係止爪である
ことを特徴とする印字装置。
【請求項5】
請求項4記載の印字装置において、
前記係止爪の下端部は、
前記積層体設置部に設置された状態の前記積層体の底部よりも上方に位置している
ことを特徴とする印字装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項記載の印字装置において、
前記単票設置部に前記被印字媒体が設置されたことを検出する検出手段と、
前記検出手段で前記単票設置部への前記被印字媒体の設置が検出された場合には、当該単票設置部に設置された1枚の被印字媒体に対してのみ、前記ピックアップ及び搬送並びに印字を行うように、前記ピックアップローラ及び前記印字手段を連携して制御する制御手段と、
を有することを特徴とする印字装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−193024(P2012−193024A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58909(P2011−58909)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】