説明

印字装置

【課題】印字された長さに応じてラベル用紙を切断する印字装置であって、切断刃への糊の付着を抑制した印字装置を提供する。
【解決手段】印字装置1のラベル用紙210には、粘着部211と非粘着部212とが、ラベル用紙210の長尺方向およびその長尺方向と直交する幅方向の両方向に対して傾斜する方向へ横切るように形成されているので、切断刃27は必然的に粘着部211と非粘着部212とを切断する。それゆえ、切断刃27と粘着部211とが接触する面積が減少し、切断刃27への糊の付着が抑制される。その結果、切断刃27のメンテナンス回数を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台紙無しのラベルに印字を行なう印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーマーケットなどで使用される印字装置として、例えば、特許文献1(特開平8−244260号公報)に記載されているような印字装置が広く普及している。
【0003】
この印字装置は、印字領域がミシン目で区切られている長尺状のラベル用紙、ラベル用紙を搬送する搬送手段、ラベル用紙の表面に印字する印字ヘッド、ラベル用紙を挟んで印字ヘッドに対向配置されているプラテンローラ、及びラベル用紙の表面に対向する当接板によって構成されている。
【0004】
ラベル用紙は、印字済みの先頭の印字領域の先端付近を把持して当接板に押し当てることによって、ミシン目から裂け、先頭の印字領域がラベルとして切り離される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような印字装置では、印刷される情報がラベル用紙のミシン目の間隔内に収まることが前提であり、印刷される情報量に応じてラベルの長さを変更することはできない。
【0006】
ラベル用紙の使い勝手の良さという観点から視ると、印字された長さに応じてラベル用紙を切断する方式が好ましいが、その場合、ラベル用紙の糊が切断刃に付着することによる不具合が生じ易く、切断刃のメンテナンスを頻繁に行なう必要がある。
【0007】
本発明の課題は、印字された長さに応じてラベル用紙を切断する印字装置であって、切断刃への糊の付着を抑制した印字装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点に係る印字装置は、被印字部材に印字し、印字された長さに応じて被印字部材を切断刃で切断する印字装置において、被印字部材が台紙無しのラベルである。ラベルには、印字面の裏側に、糊が付いている粘着部が送り方向に沿って所定ピッチで配列されている。粘着部は、送り方向および送り方向と直交する幅方向の両方向に対して傾斜する斜め方向に沿って形成されている。また、ラベルは、切断刃によって幅方向に沿って切断される。
【0009】
この印字装置では、粘着部がラベルの幅方向に対して傾斜する方向に形成され、切断刃がラベルを幅方向に沿って切断するので、切断刃は必然的に粘着部と非粘着部とを切断する。それゆえ、切断刃と粘着部とが接触する面積が減少し、切断刃への糊の付着が抑制される。その結果、切断刃のメンテナンス回数を低減することができる。
【0010】
本発明の第2観点に係る印字装置は、第1観点に係る印字装置であって、斜め方向と幅方向とが成す角度θ、ラベルの幅方向の寸法B、粘着部および糊が付いていない非粘着部それぞれの送り方向に沿った寸法L1、L2の関係が、L1=L2=0.5×B×sinθである。
【0011】
この印字装置では、切断刃がラベルをその送り方向のどの位置で切断しても、粘着部と非粘着部とを同じ比率で切断することができる。
【0012】
本発明の第3観点に係る印字装置は、第1観点に係る印字装置であって、粘着部が斜め方向に沿って間欠的に形成されている。
【0013】
この印字装置では、粘着部は、送り方向にも、幅方向にも糊のない非粘着部が隣接することになるので、切断刃が粘着部の糊と接触する面積がさらに減少し、切断刃への糊の付着がさらに抑制される。その結果、切断刃のメンテナンス回数を低減することができる。
【0014】
本発明の第4観点に係る印字装置は、第3発明に係る印字装置であって、粘着部が千鳥状に配列されている。
【0015】
この印字装置では、粘着部は、送り方向にも、幅方向にも糊のない非粘着部が隣接することになるので、切断刃が粘着部の糊と接触する面積がさらに減少し、切断刃への糊の付着がさらに抑制される。その結果、切断刃のメンテナンス回数を低減することができる。
【0016】
本発明の第5観点に係る印字装置は、第4観点に係る印字装置であって、印字面には、シリコンコートされているシリコンコート面と、シリコンコートされていない非シリコンコート面とが形成されている。非シリコンコート面は、印字面のうち粘着部と対面しない部分で且つ送り方向へ連続的に延びる領域に形成されている。
【0017】
この印字装置では、粘着部が千鳥状に配置されたとき、送り方向に延びる非粘着部分がラベル幅方向に複数列形成されるので、そこを非シリコンコート面とすることによって、例えば、スーパーマーケットなどでのマークダウンラベルの貼り付けがシリコンコート面によって妨害されるという不具合が防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の印字装置では、粘着部がラベルの幅方向に対して傾斜する方向に形成され、切断刃がラベルを幅方向に沿って切断するので、切断刃は必然的に粘着部と非粘着部とを切断する。それゆえ、切断刃と粘着部とが接触する面積が減少し、切断刃への糊の付着が抑制される。その結果、切断刃のメンテナンス回数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る印字装置の概略構成図。
【図2】粘着面側から視たラベル用紙の平面図。
【図3A】変形例に係る印字装置のラベル用紙を粘着面側から視たときの当該ラベル用紙の平面図。
【図3B】変形例に係る印字装置のラベル用紙を印字面側から視たときの当該ラベル用紙の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0021】
(1)印字装置1の概略構成
図1は、本発明の一実施形態に係る印字装置の構成図である。図1において、印字装置1は、本体部20と制御部40とを備えている。
【0022】
(1−1)本体部20
本体部20は、ラベルロール21、サーマルヘッド23、プラテンローラ25、及び切断刃27を有している。
【0023】
ラベルロール21は、台紙無しのラベル用紙210が円柱状に巻かれた部材である。このラベル用紙210では、表側が印字面、その裏側が粘着面である。それゆえ、円柱状に巻かれたときに粘着面側の糊が印字面側に付着しないように、印字面にはシリコンコート処理が施こされている。また、ラベル用紙210の粘着面側には、糊が付いている粘着部211と糊がついていない非粘着部212とが形成されている(図2参照)。
【0024】
図2は、粘着面側から視たラベル用紙の平面図である。図2において、粘着部211と非粘着部212とは、ラベル用紙210に、その長尺方向およびその長尺方向と直交する幅方向の両方向に対して傾斜する方向へ横切るように形成されている。
【0025】
粘着部211と非粘着部212とは、ラベル用紙210にその長尺方向に沿って交互に配置されている。図2に示すように、粘着部211と非粘着部212はともに、同形の平行四辺形を成している。
【0026】
本実施形態では、ラベル用紙210の幅寸法がB、粘着部211及び非粘着部212の長辺とラベル用紙210の幅方向とが成す角度がθ、粘着部211及び非粘着部212それぞれの送り方向(ラベル用紙の長尺方向)に沿った寸法がL1、L2であるとき、L1=L2=0.5×B×sinθの関係が成立している。
【0027】
なお、この必ずしもこの関係が成立している必要はなく、少なくとも、粘着部211と非粘着部212とが、ラベル用紙210にその長尺方向に沿って交互に配置されていればよい。
【0028】
サーマルヘッド23は、ラベルロール21から引き出した帯状のラベル用紙210の印字面に商品情報等を印字する。印字項目としては、例えば、品名、添加物、広告文、レジコード、バーコード、記号、単価、内容量、金額、個数、加工日、加工時刻、賞味期限、賞味時刻、カロリー、品種、保存方法、店名、住所などである。
【0029】
プラテンローラ25は、ラベル用紙210を挟んでサーマルヘッド23に対向するように配置されている。サーマルヘッド23及びプラテンローラ25は、ラベル用紙210を間に挟み込んで、プラテンローラ25の回転駆動によってラベル用紙210を送りながら表面に所定の印字を行う。
【0030】
切断刃27は、印字後のラベル用紙210を所定位置で切断し、切断部分から先をラベルに仕上げる。切断刃27の動作は、制御部40によって制御される。
【0031】
(1−2)制御部40
制御部40は、表示部41、及び操作入力部43を有している。制御部40には、制御対象であるサーマルヘッド23、プラテンローラ25、及び切断刃27が接続されている。サーマルヘッド23によってラベル表面に印字される内容は、操作入力部43から入力された商品番号等の印字データや印字フォーマットデータ等を基に決定される。
【0032】
(2)印字装置1の動作
制御部40は、プラテンローラ25を回転させてラベルロール21からラベル用紙210を引き出しながら送り出す。また、制御部40は、ラベル用紙210の表面に、操作入力部43からの入力データに基づいて決定した所定情報をサーマルヘッド23の加熱によって印字する。
【0033】
さらに、制御部40は、ラベル1枚分の印字が終了した後、ラベル用紙210をラベル1枚分に相当する長さだけ送り出し、切断刃27の移動刃27aを固定刃27b側へ移動させラベル用紙210を切断する。
【0034】
なお、ラベル用紙210では、粘着部211及び非粘着部212それぞれの送り方向に沿った寸法L1、L2に、L1=L2=0.5×B×sinθの関係が成立しているので、切断刃27がラベル用紙210の送り方向のどの位置で切断しても、切断刃27は粘着部211及び非粘着部212それぞれと50%の比率で接触する。
【0035】
つまり、接着面全体に糊が付着しているラベル用紙を切断する方式との比較において、切断刃27が粘着部211の糊と接触する面積が半分となり、その分、切断刃27に付着する糊の量が低減される。
【0036】
(3)特徴
(3−1)
印字装置1のラベル用紙210には、粘着部211と非粘着部212とが、ラベル用紙210の長尺方向およびその長尺方向と直交する幅方向の両方向に対して傾斜する方向へ横切るように形成されているので、切断刃27は必然的に粘着部211と非粘着部212とを切断する。それゆえ、切断刃27と粘着部211とが接触する面積が減少し、切断刃27への糊の付着が抑制される。その結果、切断刃27のメンテナンス回数を低減することができる。
【0037】
(3−2)
また、印字装置1のラベル用紙210では、切断刃27がラベル用紙210の送り方向のどの位置で切断しても、切断刃27は粘着部211及び非粘着部212それぞれと50%の比率で接触する。その結果、切断刃27が粘着部211の糊と接触する面積は、接着面全体に糊が付着しているラベル用紙を切断する方式の半分となる。つまり、切断刃27のメンテナンス回数を半減することができる。
【0038】
(4)変形例
図3Aは、変形例に係る印字装置のラベル用紙を粘着面側から視たときの当該ラベル用紙の平面図である。なお、本変形例と上記実施形態とは、ラベル用紙の構成が異なるだけであるので、ラベル用紙以外の説明は省略する。
【0039】
図3Aにおいて、ラベル用紙310の粘着面側には、複数の矩形状の粘着部311が形成されている。粘着部311は、ラベル用紙310の長尺方向およびその長尺方向と直交する幅方向の両方向に対して傾斜する方向に沿って配置されている。
【0040】
また、粘着部311は、その傾斜した方向に沿って等間隔で間欠的に配置され、且つ、ラベル用紙310の送り方向に沿っても、等間隔で間欠的に配置されているので、粘着部311はラベル用紙310の接着面全体に対して千鳥状に配置されていることになる。
【0041】
非粘着部312は、長方形状の粘着部311の周囲を囲むように形成されており、ラベル用紙310の長尺方向に沿って連続的に延びる帯状非粘着部312aと、ラベル用紙310の長尺方向に沿って粘着部311と交互に位置する矩形状非粘着部312bとを含んでいる。
【0042】
切断刃27は、印字後のラベル用紙310を所定位置でその幅方向に切断し、切断部分から先をラベルに仕上げる。この第2実施形態では、切断刃27が同時に2つの粘着部311を切断するが、その際、切断刃27が粘着部311と接触する面積は、非粘着部312と接触する面積に比べて小さい。その結果、切断刃27への糊の付着がさらに抑制されるので、切断刃27のメンテナンス回数を低減することができる。
【0043】
図3Bは、変形例に係る印字装置のラベル用紙を印字面側から視たときの当該ラベル用紙の平面図である。
【0044】
図3Bにおいて、ラベル用紙310の印字面側にはシリコンコート処理が施されたシリコンコート域313と、シリコンコート処理が施されていない非シリコンコート域314とが形成されている。
【0045】
シリコンコート域313と非シリコンコート域314とは、ラベル用紙310の長尺方向に延びる帯状域である。シリコンコート域313の裏側には粘着部311が位置し、非シリコンコート域の裏側には帯状非粘着部312aが位置している。このため、ラベル用紙310が円柱状に巻かれたラベルロール21の状態でも、粘着部311の糊が印字面に付着することはない。
【0046】
また、印字面では、シリコンコート域313と非シリコンコート域314とがラベル用紙310の幅方向に交互に位置する。その結果、例えば、スーパーマーケットなどでよく行なわれる値引き後の価格を印字したマークダウンラベルが、ラベル用紙310によるラベルに貼り付けられるときには、非シリコンコート域314に確実に張り付くので、シリコンコート域313によって張り付き難いという不具合も解消される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明によれは、切断刃への糊の付着が抑制されるので、ラベルの印字装置に限らず、粘着面を有する帯状の部材を切断して使用する機器に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 印字装置
21 ラベルローラ
27 切断刃
40 制御部
210、310 ラベル用紙
211、311 粘着部
212、312 非粘着部
313 シリコンコート域
314 非シリコンコート域
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開平8−244260号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字部材に印字し、印字された長さに応じて前記被印字部材を切断刃で切断する印字装置において、
前記被印字部材は、印字面の裏側に、糊が付いている粘着部が送り方向に沿って所定ピッチで配列されている台紙無しのラベルであって、
前記粘着部は、前記送り方向および前記送り方向と直交する幅方向の両方向に対して傾斜する斜め方向に沿って形成されており、
前記ラベルは、前記切断刃によって前記幅方向に沿って切断される、
印字装置。
【請求項2】
前記斜め方向と前記幅方向とが成す角度θ、前記ラベルの前記幅方向の寸法B、前記粘着部および糊が付いていない非粘着部それぞれの前記送り方向に沿った寸法L1、L2の関係が、L1=L2=0.5×B×sinθである、
請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記粘着部は前記斜め方向に沿って間欠的に形成されている、
請求項1に記載の印字装置。
【請求項4】
前記粘着部は、千鳥状に配列されている、
請求項3に記載の印字装置。
【請求項5】
前記印字面には、シリコンコートされているシリコンコート面と、シリコンコートされていない非シリコンコート面とが形成されており、
前記非シリコンコート面は、前記印字面のうち前記粘着部と対面しない部分で且つ前記送り方向へ連続的に延びる領域に形成されている、
請求項4に記載の印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2013−11647(P2013−11647A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142711(P2011−142711)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】